本作品は、「Fantasist」
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Fantasist 2
Green-Blue tales
斎木 直樹
エピローグ
弥生とみどりは、学校で駆け落ちしたと噂になっており、しばらくは苦労が絶えな
かったが、二週間もするとそれも静まったということだ。
ニャーオは、城の近くの日当たりのいい丘に座っていた。目を閉じ、顔を天へ向け
る。暖かい日差しと、足をくすぐる草が心地よい。
あれから、私から離れた人もいたけれど、近づいてきた人も、変わらない人もいた。
ばばさま、どうやらあなたの言ったとおりだったようです。
私は、私が思っていたほどには一人ではなかった。私はもっと自分の好きな人たち
のことを、そして自分のことを信じても良かった。信じる勇気を持つべきだった。自
分が相手のことを信じずに、信じられることなどあり得ないことだから。私がするべ
きことは、皆が離れていくのをじっと待つことではなく、自分から近づいていき、自
分の好きな人のことを信じることだった。
私はそのことを、みどりとあおい、ばばさま、S・リーザ、ティス、リム、そして
弥生に教えられた。
「ニャーオ、ちょっと見てみろよ。みどりが、うわっ、やめろよっ」
弥生はあれから、時々みどりに連れられてグリーン=ブルーに遊びに来る。
ニャーオは、皆の方を見た。何やらみどりが怒り狂って弥生を追っかけていて、ナ
イトとあおいとリィンが笑いころげている。ニャーオは里の方を向いた。ティスとリ
ム、そしてグヴェン達が忙しそうに動き回っている姿が思い浮かべられる。
「ね、ニャーオ、助けて」
弥生が、へろへろとニャーオの方へ歩いてくる。ニャーオは目をくりっとさせて笑
った。
「よし。みどり、捕まえてあげるから仕返ししな」
「ちょっ、ニャーオ、俺への恩を忘れたかっ」
「忘れたっ」
そんなあ、と情けない声を出しながらも、弥生の目は笑っている。
ばばさま。私、とにかくやってみる。いつまでこんな風に笑っていられるか判らな
いけれど、私はもう、あの頃には戻りたくない。毎日毎日、いつばれるかと怯えて過
ごしていたあの頃には、私には誰もいないのだと言い聞かせていたあの頃には。
私は、私がとても弱かったということに気付かされた。もっと、つよくなりたい。
助けてもらったお礼をするために。私である私を、信頼してもらえるように。自分を
信じられるようになるために。もっと、つよくなりたい。
ファンタジスト。皆がないというものを、あると信じている人。そして、それが実
在するかどうかは、その人が実在すると信じるかどうかにかかっている。
信じるだけでは、何も起こらない。だが信じ、勇気を持って行動に移すことによっ
て、何かは起こるだろう。いや、起こすのだ。
おわり
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Last modified 2007.6.12.
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