高田祐子・作品紹介 その1(紅林天関連作品)

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作品紹介 その1

 まずは、紅林天関連作品です。
ポジション
 双葉社Young Jour1990年9月号掲載
 「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」(双葉社JOUR・COMICS YOUNG)収録
天才ピッチャーの紅林天(くればやしたかし)は、小学生の頃からなぜか酒屋の娘の真直にちょっかいを出していた。しかし、真直は同じチームのふつーの少年、鵜木を少しずつ気にかけてゆく……。
 天才天ちゃんのデビューです。しかし主役は真直と鵜木。天は脇役で終わり、この真直のことを心に残したまま他の作品に登場することとなるのです。
 野球をやってるだけならかっこいい男の子(単に価値観が異常なだけで性格は悪くないんだけど)と、その外見の派手さにはひかれない価値観を持つ少女、真直がしっかりとかかれています。みどりのグローブなど、細かいエピソードが切なさをそそります。
「あいつは知らないところでおれの『親友』なんだよね」鵜木(「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」p62より)

ポジションII
 双葉社Young Jour1990年10月号掲載
 「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」(双葉社JOUR・COMICS YOUNG)収録
天才ピッチャー紅林天はプロ野球入団。ジャパン・ハムと地味な球団ではあるが、金はもらえるし、交換条件も出せるし、満足できる生活、のはずだった。
 天才天ちゃんの地味な努力と派手な生活。マスコミ向けには愛想良く、身体は大事に、内ではわがまま(言ってもいい実力を持っているので)言いの、女はいくらでもくる。しかし、それだけではやっぱり、なんか足りないんだな。
 まだまだ天ちゃんが可愛かった時代ですね(笑)。天ちゃんの「やるとこはきっちりやる」ところがよくわかります。
 花子さんもちらっと電話で出演してます。
「……きっといい子が生まれるさ 真直の子だもん そうに決まってる」紅林天(「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」p119より)

スターな男
 Mannish 漫画アクション1991年6/10日号掲載
 「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」(双葉社JOUR・COMICS YOUNG)収録
天才ピッチャー紅林天のオフとオンの日常生活。オフは疲れをとることに専念するため、一人でおきにいりの部屋で過ごし、オンの日はマスコミに愛想振りまき、夜は女の子を遊ぶ。
 女とセックスしてるときでも、真直ちゃんのことを思いだしたりしてるし……。「きまりきった生活」とまあ言えないこともない、天自身が望んだ生活なんだけど、もっとしあわせになりたいなあと思っている。そういうことって、ありますよね。
おれはそこらのヤツとはまったくちがう種類の”特別”の人間 紅林天(「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」p176より)

エースナンバー
 双葉社Ami Jour1992年7月号掲載
 「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」(双葉社JOUR・COMICS YOUNG)収録
プロ野球チーム、ジャパンハムファイターズのエースナンバーは21。山家邦生は、入団時に21番をもらったが、プレッシャーに耐えられず成績はあまりよくなかった。そして二軍四年目、天才ピッチャー紅林天が入団条件に21を要求。気の弱い山家は背番号を返すしかなかった。そして紅林天のピッチングを見た山家は、その才能にがく然とする。
 紅林天が表は派手に裏は地道な努力、としたら裏も表も地道な山家くんを中心としたストーリー。プロの世界で勝者であることと、人としてしあわせであることとは、イコールじゃない。いかに、自分の道を選んで、自分のやることを楽しんで生きていくか。
「おめーもうれしいだろ おれのよーな天才に着てもらえるなんてなー」紅林天(「天才紅林天のおいしい生活Part.1 ポジション」p206より)

ベースボール・アーニー
 双葉社Ami Jour1992年10月号掲載
 「深呼吸の必要」1巻(双葉社JOUR・COMICS YOUNG)収録
悪質な追っかけがつきまとってきたため、球団の監視が厳しくなってろくに遊べない天才ピッチャー紅林天。天は真直にそっくなマサミ(ニューハーフ)に出会い、ぽーっとなってしまう。
 マサミがニューハーフだと知ってショックを受ける天がかわいい(笑)。天のロマンチストな部分がでてて楽しいです。
「惜しかったな それでもいいとか言われたら フラッとしそーだったのに」紅林天(「深呼吸の必要」1巻p93より)

深呼吸の必要
 双葉社Ami Jour1993年7〜12月号、1994年2月号
 「深呼吸の必要」1巻(双葉社JOUR・COMICS YOUNG)収録
 「深呼吸の必要」2巻(双葉社JOUR・COMICS YOUNG)収録
夢のない中学三年生の雪丸風子は、愛想よく毎日をなんとなく過ごしていたが、いつもすぐ眠くなってしまう。ピッチャーの紅林天が外面の裏に冷たい面を持っていることを知った風子は、彼を嫌いつつも興味を持っていく。毎日が退屈で眠い風子を心配した担任の紅林花子先生(天の母)は、夏休みの間風子を天と生活させ、存分に観察させることに決めた。ぼーっと考えるばかりの風子と、自分のやりたいことをやっている天。相性は最悪だと思っているのに、なぜか風子は今の自分にはこの人が必要なのではないかと思えてしかたがない。
 風子と天の組み合わせが絶妙で楽しく、かつ、「考え」系に走りすぎてもいないでストーリーになっている。「考え」系のストーリーがとてもうまくいった形だと思う。私の中では、「深呼吸の必要」全2巻は、高田祐子の最高傑作です。
 金銀パールプレゼントでは、二人の子どもである三つ子の話が読めます。
「な 相棒 波瀾万丈人生GOGO行こーぜっ」紅林天(「深呼吸の必要」2巻p144より)

金銀パールプレゼント PART1 長男・大1
 集英社コーラス1994年8月号
 「金銀パールプレゼント」1巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
天と風子の間に生まれた三つ子の兄弟、大(ひろし)、強(つよし)、運(はこび)。三人は高校生になり、長男の大は生徒会副会長となり、人の和を大事にして毎日を過ごしていた。しかし、帰国子女の美紅はそんな大をおかしーと言う。大は自分がこんなふうになったきっかけを話す。
 私は、楽しいことがあるだけよりも、辛いことがあって、それをどうやってやりすごしていくか、それを過ごしたから味わえるものを描いた作品が好きです。
「”自分のことをいっぱい好きになれること”がシアワセだ」紅林天(金銀パールプレゼント」1巻p20より)

金銀パールプレゼント PART2 三男・運1
 集英社コーラス1995年1月号
 「金銀パールプレゼント」1巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
天と風子の間に生まれた三つ子の兄弟、大(ひろし)、強(つよし)、運(はこび)。三男の運はセックスフレンドを三人持って、ふらふらやっている。天は三人に一人ずつ一千万円を与え、高校を出たらこれ以上は一銭もやらないと伝えた。セックスフレンドの一人に、子どもができたと言われた強は、一千万円を育児費用にすることを決意した。
 何が欲しいのかわからない運だけど、やさしい気持ちも持ってるし、何が間違っているかはわかる。手を伸ばす方向がわからないのって、辛いよなと思う。
「海外へふらふら放浪の旅もいいぞ 3人のうちひとりくらい道ふみはずして 波乱にみちた人生やってくれよ」紅林天(金銀パールプレゼント」1巻p54より)

金銀パールプレゼント PART3 次男・強
 集英社コーラス1995年5月号
 「金銀パールプレゼント」1巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
天と風子の間に生まれた三つ子の兄弟、大(ひろし)、強(つよし)、運(はこび)。次男の強は無口で無表情。サッカーをしているときだけは心の中は燃えている強は、Jリーグにスカウトされた。しかし、進路希望で将来は考えてないと書く。その心の内は?
 「喋らない無表情な主人公」の考えてることって、わからん(笑)。強が昔のサヨちゃんとの思い出を大事にしているのがよく伝わってきました。
「このおれサマとおまえのお子サマなんだぜ? 不幸なワケねーじゃんよ どー考えたって」紅林天(金銀パールプレゼント」1巻p120より)

金銀パールプレゼント PART4 長男・大2
 集英社コーラス1995年7月号
 「金銀パールプレゼント」1巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
天と風子の間に生まれた三つ子の兄弟、大(ひろし)、強(つよし)、運(はこび)。大は地道で平凡な道をつい選んでしまう。しかしその父は万事が波乱を好む人。母もいきなり女の子が欲しいと言い出す。三人の内自分だけが童貞だと知った大は焦ってしまう。
 いつも天のフォローに回る風子だけど、今回はいきなり子作り宣言します。この夫婦のらぶらぶや言い合いもこの作品の楽しみの一つです。
「あんたの手はいい手だよ ヒロシ」紅林風子(金銀パールプレゼント」1巻p153より)

金銀パールプレゼント PART5 三男・運2
 集英社コーラス1995年9月号
 「金銀パールプレゼント」1巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
天と風子の間に生まれた三つ子の兄弟、大(ひろし)、強(つよし)、運(はこび)。運はセックスフレンドとは別れた。同じクラスの真知子が気になるのだが、遊び人の運と真面目グループの彼女は世界が違う。思い切って告白してみたら、きっぱり断られてしまうが、運はあきらめきれない。
 「深呼吸の必要」というタイトルの本がでてきます。
 この台詞の後で登場する天ちゃんがけっこー好きなんだな。
「だって好きなんだもん しかたねーじゃん」紅林運(金銀パールプレゼント」1巻p194より)

金銀パールプレゼント PART6 叔母・月子
 集英社コーラス1995年12月号
 「金銀パールプレゼント」2巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
風子の妹月子は、スポーツニュースのアナウンサーをしている。野球人しか好きになれない月子の今の恋人は、ピッチャーのセガリン。セガリンはピッチングで絶不調で、ぜんぜんかっこよくないけど月子は見捨てられない。
 困ったきかんぼうのセガリンを見捨てられない、ということはどういうことなのか、ということを月子が考えます。「天才」天ちゃんのような人はそういないけど、それでも別にいいじゃない、と思えます。……つーかそんな人ばっかいられても困るな。
人は親を選んで生まれてこない それといっしょでキョーダイも選べない けど やっかいなことに 恋人は選べてしまうのだ…………
紅林月子(金銀パールプレゼント」2巻p19より)

金銀パールプレゼント PART7 長男・大
 集英社コーラス1996年1月号
 「金銀パールプレゼント」2巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
天と風子の間に生まれた三つ子の兄弟、大(ひろし)、強(つよし)、運(はこび)。大は恋人の美紅とらぶらぶなクリスマスを過ごすことにしていたが、美紅のアメリカ時代の友達、マットがやってきて――。
 人を平気で傷つけてしまう人はいる。そういう人に傷つけられることはとても辛いことだし、苦しいことだけれど、自分がそういうことをしていいことのいいわけにはならない。
「……あたしは やさしい人になる」栗田美紅(金銀パールプレゼント」2巻p73より)

金銀パールプレゼント PART8 母・風子
 集英社コーラス1996年3月号
 「金銀パールプレゼント」2巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
風子はようやく妊娠発覚。大と強のことは心配していないけど、「生きる気力がない」と静かに笑う運のことが最近心配だ。風子は、そう言う運が昔の自分に似ていることに気付く。
 深呼吸の必要時代の風子の姿が強へ語られます。「愛がある家族」ですね。(仲良し、ではなく)
「あたしにはみんなきれいに見えるよ ヒロシもツヨシもあんたの生命も みんな『宝石』」紅林風子(金銀パールプレゼント」2巻p106より)

金銀パールプレゼント PART9 父・天
 集英社コーラス1996年5月号
 「金銀パールプレゼント」2巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
プロ野球選手時代は、自分の身体を第一にしていた天は波瀾万丈を愛する男。卒業式の日、強が恋人のサヨちゃんと家を出るのにも大喜び。
 三つ子たちの見えないところでこういうことをしている天と、それを見守っている風子が好きです。
「風子サマ裏切っていい?」紅林天(金銀パールプレゼント」2巻p156より)

金銀パールプレゼント PART10 フォーエバー
 集英社コーラス1996年7月号
 「金銀パールプレゼント」2巻(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
前世で自殺した少女が、死後の世界で、紅林家に生まれることを薦められる。少女は「声」によって一家の未来を教えられる。
 希望って、楽しいことだけをのぞむことじゃないんだと思う。
 葉子を溺愛する家族がかわいいです。
生まれていく意味なんかしらない 生きてゆこうとする意味もしらない つらいこともあるだろうけれど いいことのほうが多いかも それが『希望』(金銀パールプレゼント」2巻p179より)


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