高田祐子・作品紹介 その2(氷見椿関連作品)

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作品紹介 その2

 氷見椿関連作品です。
右脳と左脳の恋物語I 耳の痛い話をしよう
 講談社Monthly Kiss1992年7月号
 「耳の痛い話をしよう」(講談社コミックスKiss)収録
幼稚園児の時に「自分はなんで自分なんだろう?」ということを考えるようなこどもだった氷見椿(男)。いろいろなことを考えながら生きてきた椿が選んだ職業は、救急医療の外科医師。天職だと思うほど仕事は楽しいけれど、恋愛は今までのめりこめるような相手に出会えなかった。そんな椿の「右脳」にひっかかった相手は、職場の先輩の妹で――。
 まさに「考え系」な作品です。
 つきあう女たちに「冷たい」と言われてきた椿は、実は「理由なんかないけど好きだなあ」(右脳的感性)という相手に出会いたいだけで、うまくいかないけど、絶望もしていない状態でミホと出会って、いろんなことを考えたり(左脳)、感じに任せたり(右脳)して恋愛をしていく様子が面白いです。
 「脳」という字が好きだという(笑)、高田祐子さんらしい作品ですね。
「あたしはねー 氷見椿が本気だったらウレシイ でも 自分が氷見椿に本気なのってもっとウレシイ 心に花のある人が勝ち でしょ?」菊池ミホ(「耳の痛い話をしよう」p58より)

右脳と左脳の恋物語II 胸の熱い話をしよう
 講談社Monthly Kiss1992年11月号
 「耳の痛い話をしよう」(講談社コミックスKiss)収録
氷見椿の恋人の菊池ミホは、救急医療である椿の仕事の先輩、菊池ヒロの妹。職場に児童虐待らしい子どもが連れ込まれた。その子どもの処置を相談するために出てきたケースワーカーは、菊池ヒロの恋人で、喧嘩している二人をミホは仲直りさせようとする。
 「しゃべり」が中心で、ストーリーは添え物になってきてます。
 キャラクター一人一人が考えて生きていて、「だれかの何」とかではなく、「自分」として生きているのがよく伝わってきます。「だれかがだれかを思う」気持ちが、あたたく描かれていて、いい気持ちになれますね。
「そーか 都合がいいってゆーのは 自分にラクだから 幸せになりやすいんだ」菊池ミホ(「耳の痛い話をしよう」p78より)

右脳と左脳の恋物語III 血のかよいあう話をしよう
 講談社Monthly Kiss1993年6月号
 「耳の痛い話をしよう」(講談社コミックスKiss)収録
氷見椿と菊池ミホは、らぶらぶな仲。氷見椿とピクニックの約束をしていたミホが、椿の家の中で帰りを待とうとしたとき、椿の母とはちあわせしてしまった。
 ふだん熱血どころか冷血なツバッキー(ミホ命名)が、「愛」を感じて走るシーンがなんか笑えて好き。
 ミホと椿母が、おしゃべりしている内容とか、たいしたことはないんだけれど、ほほえましくて、こういうのいいなあと思います。
「だれかに親切にしてもらったとするわね それでその人にその恩を返せないとする…… そーゆーときは自分の周りの人に返してゆけばいいんですって」氷見桜(「耳の痛い話をしよう」p164より)

Kissは天下のまわりもの
 講談社Monthly Kiss1994年12〜1995年4、7〜11月号
 「Kissは天下のまわりもの」1巻(講談社コミックスKiss)収録
 「Kissは天下のまわりもの」2巻(講談社コミックスKiss)収録
浜崎咲子は熱血天才外科医。自分の才能を知ってるし、自分のことを愛してる。ふられた時は医学生時代の男友達に電話してストレス解消していた。久しぶりに大学に戻ることになり、学生時代以来つきあいのなかった氷見椿と再会した咲子は、恋を感じ、猛烈なアタックを椿に浴びせるが、ミホという恋人のいる椿はそっけない。
 ぼうぼうに燃える女咲子に、ミホ以外には反応しないはずの椿もちょこっとよろめきつつ、暗い過去と素敵な声とオーラを見る能力をもつ謎の男戸江川はミホに近づき、こっそりと咲子に惚れていたユウジは告白するチャンスを伺い、とドラマのような配置と見せ方です。
 やっぱり、戸江川とミホの二人は異常なキャラクターをしていて、ひきつける魅力がありますねえ。「つらいこと」があった後の人がでてきて、その人たちがどういうふうにそれを消化して生きていこうとしているかを見ることができます。
「あたしはふたりやさしいいい子を産んだ ひとりはもうひとりに そのやさしさを与えて逝った だから残されたひとりは 2倍 強くてやさしい子になった」浜崎咲子の母(「Kissは天下のまわりもの」2巻p26より)

百年の孤独
 講談社mimi Carnival1995年12月号
 「百年の孤独」(講談社コミックスKiss)収録
戸江川烈は、母親の雪子がレイプされてできた子どもだった。雪子はどうしても烈を愛することができなくて、烈は雪子のホステス仲間に育てられた。その延長で、レンタルボディを仕事としていた烈は中学三年になり、進路を決めるときがきた。
 けっして燃え上がるような話ではなく、淡々とした語り口でいて、その中に「愛されたい」気持ちがあることがすごく伝わってきます。秀作です。
影のある母の横顔は 美しくみえた 覚悟を決めていたからだろう もうすこしこの世界とつきあってみよう どうせ百年あるかないかの「孤独」と――――
戸江川烈(「百年の孤独」p91より)

愛も天下のまわりもの
 講談社mimi Carnival1996年6月号
 「百年の孤独」(講談社コミックスKiss)収録
戸江川烈と咲子夫婦と息子の繁雪とるうは一家仲良くくらしている。烈の勤める保育園に、未婚のヤンママの子どもが入ってきた。
 「自分は一生独りなんだろうと思っていた」烈が、はたから見れば幸せいっぱいだけれど、すこしずつ足もとを見ながら進んでいく様子が伺えます。
「結婚をして子どもをつくり 転職もしました 幸せにやってますが それでもときどき『ウソみたいだな』と思ってしまいます」戸江川烈(「百年の孤独」p142より)

夢も天下のまわりもの
 講談社mimi Carnival1996年10月号
 「百年の孤独」(講談社コミックスKiss)収録
戸江川烈と咲子夫婦と息子の繁雪とるうは一家仲良くくらしている。最近繁雪が反抗的で、烈は心配。
 繁雪が自分の母親に似ているのではないかとつい心配してしまう、もと精神科医の烈が、おたおたしていてかわいい。
「うちの子にうまれてきてくれて ありがとう」戸江川烈(「百年の孤独」p186より)

これが、その夏の話。
 集英社コーラススペシャル1996年Summer号
 「恋愛のバカ。」(集英社ヤングユーコミックスコーラスシリーズ)収録
つきあっていた人が事故で死んだという、死んだ母の日記を読んだ千佳子は、母の初恋の人、倉本聡と母のことを知りたいと思った。母の故郷にたどりついた千佳子は、倉本くんが助けた女の子の実家の旅館で働くことにした。
 ただ母の思い出の場所をたどる、のではなく、そういうことをしようとした自分の心にはこういうことがあって、という理由づけをちゃんとしている。くどいと言えばそうだけど、そういう設定をしている話って、少ないと思う。
 情緒的なところがありつつも、主人公の千佳子が明るくて元気な子なので、うまくバランスがとれていてよい作品だと思います。
 どこが「ツバッキー」なのかというと、倉本聡くんが助けた女の子が、戸江川烈の同級生だったのだ。「百年の孤独」で看護婦になると言っていた貴子がちゃんと看護婦になっています。……家が旅館なのになぜ転校してきたかは謎(笑)。
「殺してなんかいないよ そのお兄ちゃんは守ったの……『たかこ』って名前の女の子を」橋野多佳子(「恋愛のバカ。」p180より)

あしたきみに優しくできる
 講談社別冊フレンド1987年9月号
 「Eクライシス」3巻(講談社コミックスフレンド)収録
多佳子と聡は喫茶店で出会い、何か感じるものがあったが、お互いの気持ちを言い出すことなく離れてしまった。合宿先で貴子という子どもになつかれた聡は、戻ったら多佳子に会おうと思うが――。
 若い時だからかけたのかもなあと思う。登場人物が青くて、そしてきれい(美しいのではなく)。その分、「これが、その夏の話。」で貴子におばあちゃんが言ったことばが思い出されて腹立たしい。
 ……で、どこが「ツバッキー」なのかというと、貴子ちゃんは戸江川烈の中学の時の同級生となり、一度、一緒に旅に出る。
「こいつらはちっとでもこの世にあらわれることができたのがうれしくて 楽しくて鳴いてるんだ…って しあわせなんだなと聞いてれば よろこびのうたにも思えんじゃねえの?」倉本聡(「Eクライシス」3巻p205より)


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Last modified 2007.6.12.
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