内部に露出させた木製トラス構造を持つ簡素な教会堂。三角形の尖った屋根と傾斜した板張り の外壁によるシンプルな立体の建物で、大正期の田園風の作品群のひとつとして位置づけられ る。その外観から信者の間では「箱舟教会」というニックネームで親しまれていた。 蔵田は建物だけでなく家具やステンドグラスなどと共にトータルにデザインしたことを建物の 解説記事の中で語っており、戦後に建て替えられた教会の内部にも会衆席(2脚)などの一部 の家具とステンドグラスが残されている。 蔵田は家具の設計に際して、同僚の東京高等工芸学校教授森谷延雄から塗装や制作業者につい てのアドバイスを得たことも記されている。 森谷延雄はあくまでもアドバイスしただけで、この建物のデザインを直接行ったわけではない。 しかしながらここ最近、森谷延雄展が行われた際に森谷の現存作品が皆無であったため、少し でも関与した意味でこの会衆席が展示された。どうもそれが原因で家具の作者が森谷であると いう誤った情報が定着してしまった感がある。 家具類をデザインしたのは間違いなく蔵田である。 |
老朽化の為1966(昭和41)年にシオン会堂は建替えられ教会名称も変更された。(奇しくも取壊さ れた年は、蔵田の没年でもあった)しかし建物本体のうち木製トラス梁は他の教会堂を新築す る際に再利用された(今ではその建物も現存しない)。 |
このステンドグラスについて、分離派の仲間からクリムトの作風に似ているとの評を得たと伝え られる。 |