分離派建築博物館--山田 守の建築--

曲面ボリュームのシンフォニー 〜逓信省 局舎等より〜 -5-


甲府郵便局電話事務室(現甲府市役所南庁舎)

設計:山田 守..........................................場所:山梨県甲府市.............................................建築年代:1931(昭和6)年...................................現存(撮影2006年)




竣工当時の外観(「山田守建築作品集」より)



昭和4年に着工、同6年に竣工したこの建物は、角地に面する2階建ての棟(郵便業務の棟)と、3階
建ての棟(電話業務の棟、写真左隅)から成る。現在は交差点の入口部分や建具などに改修が加えら
れ市役所庁舎の一部として使用されている。電話業務棟の部分は既に取り壊し済である。 

現状外観 水平庇 窓廻り現状

意匠的に凝った建物ではないが、アールで満たされた細部処理は徹底している。壁の厚みを感じさせな
いよう壁面の凹凸を少なくして建物に軽快感もたらそうとする設計意図が読み取れる。
また裏側の階段室頂部の水平に突き出した庇などからもモダニズム的な造形指向が感じられる。
この建物は渡欧視察旅行直前の設計であり、デザインに迷いを感じた山田守の過渡的な時代の建物に思
える。山田は帰国後に荻窪電話局や東京逓信病院などで作風を一変させる。




 
甲府郵便局を眺めつつ、隣接して歩廊で接続する古い建物が妙に気になった。(これも市役所の一部とし
て使われている)この建物の由来等は今のところ全く不明だが、戦前の逓信省が設計に関与した建物では
ないかと思われた。その理由は柱型と深い軒の外観にある。逓信省で山田と机を並べた吉田鉄郎の作風を
思わせるからなのである。不思議なのは、柱型の隅が丁寧に丸く仕上げられていることであった。アール
の多い建物は山田の特徴であり、要するに吉田の特徴と山田の特徴がひとつの建物に融合していたのであ
る。

接続する同時代(?)の建物 細部−アールの付いた柱型