第6回分離派展(1927年)に出品した「病院設計図」、第7回分離派展(1928年)において出品 した同病院の竣工写真(上図)、そして下は取り壊し直前の北野病院の建物である。 当時の森田慶一の建築に関する思考は、第6回展開催時の「雑題」(*1)、あるいは第7回展 開催時の「『いみたちを・こるぶしえり』その他」(*1)などに示されている。 前者の論考においては主に機能主義に関する考察が示され、後者においては古代ギリシャ の古典主義建築の考察が行われた。ル・コルビュジエの建築の中に(「住居機械」を標榜して はいたが)ギリシャ古典建築の幾何学的秩序の形成を見出し、森田自身もそれに沿う設計を 試みた。 *1:『建築新潮』1927(昭和2)年第3号(分離派建築会第6回展覧会号)掲載 *2:『建築新潮』1928(昭和3)年第11号(分離派建築会第7回展覧会号)掲載 |
湯川記念館 『森田慶一建築作品』(京都大学工学部)より |
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十六銀行熱田支店 『森田慶一建築作品』(京都大学工学部)より |
十六銀行熱田支店は、湯川記念館などと同様戦後の設計である。RCの柱と梁 による構造体そのものを強調、シンメトリーで均整のとれた立面を指向してい る。図面を見る限り、当初は正面中央に入口があったようである。装飾は最小 限に抑えられているが、それでも軒蛇腹を単純化したような頂部の軒庇を見る と、森田の古典主義建築に対する強い思い入れを窺わせる。 |
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中之島図書館に隣接し事務部門を担う建物。RCの柱と梁を強調した外観であるが、 頂部の深い軒庇は特に印象的である。 |