ル・コルビュジェが「建築をめざして」を著わして新しい建築空間を提唱した頃、日本におい ては今だ古典的な感覚に基づく堂々たる正面作りが設計上の主要なテーマであった。塔はその ポイントとなる要素であった。 しかしながら時代の流れを反映して、プランニング的な変革やモダニズム的な洗練には至らぬ までもなんとか新しい時代の到来を予感し模索した数少ない事例に私は愛着を感じる。 過渡期的なデザインも今やほんの僅かに残るのみとなった昨今、ここに古くからの塔の要素を 捉え返した例として記録しておきたい。 (2007年4月 記述更新) |
この燃料研究所は、設計者渡辺仁が逓信省から独立して間も無い作例であるが、逓信省時代よりも装飾と様式性 が抑えられており尖塔アーチの塔などに表現主義的雰囲気を感じさせる。 渡辺仁は、逓信省に在籍した後独立し、服部時計店(現 和光),東京帝室博物館(現 東京国立博物館),日本 劇場などの大建築物の設計を手掛けた。作風は歴史様式からモダニズムまで多様なデザインをこなした。 (更新 2007年2月) |