分離派建築博物館-各地の建築
死者のための都市景観 -1- 〜公共墓地の建築〜
公共施設の拡充は、ヨーロッパにおいて近代都市デザインの大きなテーマのひとつであった。20世紀初頭には、
ペーター・ベーレンス設計の火葬場のような傑作が生み出されるのだが、日本においても震災の復興を契機に顕著
になる。
公共墓地という性格上、ある宗派や伝統の趣に偏らない新たな表現が必要になったのか、内面的表現を重んじる
表現主義風も墓地施設の格好のモチーフだったのかもしれない。
久保山墓地 納骨堂
場所:神奈川県横浜市...................................設計:山本外三郎.......................................建築年代:1925(大正14)年........................現存
無縁仏を埋葬するために建てられた納骨堂。
コンクリートの複雑な三次元曲面の壁体で構成されており、例えばシュタイナーのゲーテアヌムかメン
デルゾーンのアインシュタイン塔を想起させる。
一部改修を受けたようだがほぼ竣工当時の外観を久保山墓地の片隅で保っていた。
竣工時の写真−「建築新潮」(大正14年4号)より
竣工時に掲載された雑誌の解説によれば、内部は白色に仕上げられ、色ガラス窓の光線によって淡緑色に彩ら
れた空間に仕上げられたという。
設計者の山本外三郎についてはほとんど知られていない。ある雑誌のプロフィールによれば早稲田大学出身で
特許局や横浜市に在籍して設計活動を行なったと記されていた。