旅とバイクのページ
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取り合えず国道4号線をどんどん走って距離を稼ぎ、頃合をみて高速に乗って夕方迄に八甲田に着けばいいや、と、一日が始まる頃家を出る。深夜の国四は大型トラックがびゅんびゅん走ってるけど、信号は点滅だし、車の流れも速いし、追い越しも楽で結構ハイペースで走れる。適度な緊張の連続で高速を走るより眠気も感じない。
夜が明ける頃には日常生活を脱出し旅情を感じられるディスタンスを稼ぐことが出来る。ロングツーリングに出かけるのなら旅立ちは極力夜の明ける前だ。
しかし、そんな時間帯にまず最初の疲労のピークがやってくる。交通量も増え信号も動き出す。そんな久しぶりの信号待ちで妻がパタリとバイクを倒してしまった。
ミラーを折り、クランクケースに少しヒビが入ってしまう。バイクを起こしてているときは何でもないが、サイドスタンドに車体をあずけると少しオイルが漏れる。ガムテープで目張りしてみたがまったく用をなさなかった。でも走っている分にはほとんど影響なさそうだと、仙台を過ぎたところで交通量も増えペースも落ちてきたことだし高速に乗ることにした。
始めは車の流れに乗って走っていたんだけど、悪い癖で少しずつペースが上がっていってしまう。それでも割とおとなしく走っていると後ろからパッシングで回りの車を蹴散らせながらあっという間に車が一台迫ってきた。やり過ごしてみるとAudiだった。なんか胸に熱くくるものがあって、車も楽しそうに見えたのでついて行くことにした。旅は道連れなのだ。でもおかでで妻のバイクはあっというまに後方に消え去った。
私の追従に気付いた車は更に速度を増し、大台を20ばかし越えた所まで引っ張り上げた。が、それが限度らしく、結構ふらふらと危なっかしい。スーパーカーではなく、スポーツカーなのだなと変に納得する。自分のバイクはそれでも未だ少し余裕があるようだ。風圧でカウリングから体こそ出せないけど車体はまだ安定していた。一応スーパーバイクの端くれなのだ。
そのうち車が混んできてAudiのほうもなかなか前に出られなくなってきたので、先に行くことにした。しかし、一度ついてしまった勢いを抑えることは難しい。動くシケインと化した車をかわしつつ1100ccのパワーを存分に楽しんで走る。一度前方に車が一台も見えなくなったので、シフトダウンして思いっきり引っぱってみる。さすがに緊張したのかシフトアップを忘れてしまったのだが、4速のままで(GSX-Rはトップが5速)回転計は1万を大きく越え針はレッドゾーンに深々と入っていた。秒速にして70メートル位だろうか、凄いの一語だ。カールルイスの約7倍である。
その時はそれで止めたけど、シフトアップして更に加速すればまだまだ出そうなイレブンなのだ。
盛岡で高速を降りる。料金所を出たところで妻を待っているとだいぶ経ってからやってきた。オイル漏れの心配もあるのだろう、マイペースで走ってきたようだ。
国道沿いのバイク屋でミラーの交換をする。でもクランクケースのヒビのほうは簡単な応急処置しか出来なかった。それでも一生懸命やってくれたバイク屋に感謝し補充用にオイルを買って先に進むことにした。
そのうち空はすっかり曇ってしまい、気温もさがり、十和田市を越える頃には霧雨となった。急いでカッパを着る。
バイクはいつでも自然と一体だ。真夏の暑い日差しの中では背中に汗をにじませて、真冬の寒風の中では体を凍らせて、風を肌で感じながら走る。そこが同じエンジンが付いていても車と違うところ。と、かっこつけても本音はやっぱり寒いのいや、雨もいや。しかたなくぶつぶつ言いながらも雨の中を走ることになる。
奥入瀬の手前で八甲田山方面へ折れグングン標高をあげると次第に残雪が増え世界は一気に冬に逆戻りしてゆく。この日の宿泊地谷地温泉で何があったかはここをクリック。
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