分離派建築博物館-各地の建築物

混成するストリート -2-
〜商業ビル,事務所ビルなどのデザイン〜

旧赤坂区役所

場所:東京都港区...............................設計:東京市........................................................建築年代:1928(昭和3)年頃..............................................................現存しない
お役所的らしい様式建築風の基調を備えた上で、装飾を抑えたりアーチ窓や角の処理に曲面を多様するなど
表現主義的指向も感じられる。

三信ビル

場所:東京都千代田区..........................設計:横河工務所(松井貴太郎)..................................................建築年代:1929(昭和4)年.................................現存しない(2007年撤去)

アーチ状の高窓はロマネスク風でもあり分離派のようでもある。また窓枠など角をアールに処理するなど
表現主義的なディテール処理がなされており柔らかなファサードを形成している。
建物内部にはアール・デコ的装飾も見受けられ、初期の本格的大規模オフィス建築の雰囲気を堪能できる残
り少ない建物。

黒沢ビル (旧・小川眼科医院)

場所:東京都台東区..........................設計:不詳..................................................建築年代:1931(昭和6)年.....................................................現存

現状外観(2005年撮影)完成時の外観

外観全体はややスパニッシュ風を漂わせるが庇状の細部をシンプルな曲面としたり屋内の梁の角を丸く
するなど、部分的に当時の表現主義的な影響も感じられる。昭和初期の都市では黒沢ビルのようにこう
した折衷的な建物は意外と多かったが、むしろ町並みに華やかさと活気を与えることにつながったと思
う。

松葉館 (現・松岡九段ビル)

場所:東京都千代田区..........................設計:横河工務所..................................................建築年代:1929(昭和4)年.....................................................現存


竣工時外観(「建築世界」昭和4年6月号)

松葉館は横河工務所の三信ビルと同時期に建てられた同工務所による建物だが、竣工時の写真を見るとベイ・
ウィンドウや放物線形窓,緩い曲面などにより表現主義的な雰囲気を感じさせる。
通りに面した凹凸の多い外壁面全体が外装パネルで覆われ見るに忍びない姿で建っていることは以前から知
っており、久々に訪れてみたところサッシュ枠が交換され塗り替えられた程度でしっかり使用されていたの
でこの際取り上げてみた。
建物の裏側やパネルの隙間から顔をのぞかせる放物線形窓でどうにか往時の姿を偲ぶことができる。
余計なお節介を敢えて言えば、もし外装パネルを取り去り当初の姿に戻したならばそれだけでレトロ風のさ
ぞかし当世人気の建物に生まれ変わるであろうに。
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現在の外観(2006年撮影)