●故石本喜久治宅を訪ねて
昨年(2005年)5月、分離派建築家の石本喜久治の孫にあたるH.I氏の方が当ホームページをご覧頂いたことが
縁で、熱海の御自宅を訪問する機会を得ました。
伺った熱海の家は、熱海の海岸からは高台に位置し故石本喜久治氏が戦前に別宅として購入し戦後は自宅として居住し
たという閑静な和風の佇まいで、石本氏の位牌もそこに大切に祀られていました。当時飛ぶ鳥を落とすが如きのスター
建築家が人里から離れた場所にひっそりと仏壇に納まってしまっている有様になんとなく違和感を感じましたが、何せ
他界されてから既に約45年、それでも私にとって座敷の片隅の遺影が今でも我々を叱咤激励するかの如く見守り続け
ている様に感慨を覚えてしまうのは恐れ多くも同業の不出来な後輩の身だからなのでしょうか。
和風の家の隣には、石本氏が自ら家族の為に設計した寿司店舗付きの木造3階建ての住宅が離れとして建っています。
それは当時多忙を極めたはずの石本氏がちょっとした隙をみて設計した作品性を離れた目立たぬプライベートな建物で
す。ですのでここではその紹介を控えますが、家族思いの氏がこだわりつつ楽しんで設計した様子が偲ばれる結構複雑
な建物なのでした。
H.I氏から離れの建物を案内され、また石本氏の家族に対する愛情と気遣いなどのエピソードの話が披露されると、こ
れまであまり知られてこなかった石本氏の人間味溢れる人となりが伝わってくる思いがしました。
石本氏亡き後も石本氏が設立した設計事務所が組織事務所として発展を続けていることは周知のとおりですが、石本氏
が活躍していたころの図面などの資料の大半もその建築事務所の方へ引き継がれているとのことでした。H.I氏によれ
ば現在では石本家と事務所との関わりも歳月を経て途絶えた状態にあるとのことです。
それでも石本家には石本氏個人の資料(写真アルバム)や数点の事務所の資料、戦前に設計された石本氏自邸の資料な
どが遺されており拝見することができました。中でも写真は分離派石本氏をとりまく当時の建築家の交流の一端を垣間
見る貴重な資料として、このたび当ホームページ等での使用のお許しを得ることもできました。
そういったいきさつで、ここでは石本氏とところで保管されている写真のいくつかを紹介いたします。
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