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Last updated 09/08/2015(ver.3-1)
渋谷栄一翻字(C)

  

夢浮橋

凡例

1.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。

2.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。

3.変体仮名はその字母で翻字した。

4.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。

5.字母の崩し字形が複数あるものについては、その崩しレベルに応じて、もっとも漢字の字形を留めている字体群はその仮名または字母の後に「と表示し、次いでもっとも崩した字形との中間的字形を保っている字体群はその字母の後に「と表示し、大きく漢字字形―中間字形―仮名字形3段階群に区分して表示し分けた。

6.本行本文は10.5ポイントで表示し、書入注記や付箋等は9ポイントで表示した。

7.なお本文と一筆の親本に有った書き入れをそのまま書承したと考えられる書き入れは太字で表示したので注意されたい。

 

【概要】

54「夢浮橋」

・大島本「夢浮橋」帖(古代学協会蔵)は聖護院道澄筆である。

・本文中の引き歌箇所には朱筆による合点(掛け点)があり、その行間に墨筆で注記している。

・奥入は存在しない。

・本文訂正の方法は朱筆による細字訂正と墨筆による細字訂正とがある


能う起」(題箋)

  や満尓おハして連いせ佐勢ふ屋う尓経佛
0001【やまにおはして】−月の八日中堂にてかほる経供養し給ふ事手習巻にも見えたり
  具屋う勢させま多のハよか者尓おはした連ハ
  楚うつおとろきかし古ま里起こえ登しころ
  い能りなつ遣可多らひ飛け連とこと尓いと志多し支
  ことハな可里ける越多ひ一品御心ちの
  さ婦らひへ類尓すくれへ類个む个りと
  たまひてよ里古よなうたうとひい満春こし
  婦可きくは遍(
<>)てけ連はをも/\しうおハ春流
  とのゝかくわさとおハしましたることゝもてさハ起きこ
  え御物可多里なと古満や可尓してお者す連は」(1オ・2055F)

  ゆつ遣なと満いりすこし人々志つま里ぬる尓
  をのゝわ多里尓志りへ類屋と里やるととひへ者
0002【をのゝわたりに】−かほる御詞
  志可るいと古とやうなる尓なむな可し可はゝ
0003【しか侍る】−僧都返答
  なるくちあまのる越尓は可/\しからぬすミ可も
  らぬうち尓かくて古もるあひ多ハ夜中暁
  裳あひとふらハむと思給へをきてるな申給
  楚のわ多里尓ハたゝち可起ころをひまて本う
  す見ける越い満ハいとかす可尓こそな里ゆく免連
  なとのいますこしち可くゐよ里て志能ひや可尓
  いとう起多類ちもま多た徒ねきこえむ尓つ」(1ウ・2055M)
0004【またたつねきこえむに】−かほる心中

  けてい可な里けること尓閑登え春お本佐連ぬへき(き#
  起尓か多/\はゝ可られ連とかの佐と尓志るへ起
  の閑く路遍てる屋う尓きゝ里しをたしか
  尓てこそハい可な流佐ま尓と裳羅しきこえ
  免なとおもひたまふるほと尓てし尓な里ていむ
0005【御てしになりて】−かほる詞
  こと那登さつ遣ひて个りときゝ累ハ満こと可
  また裳わ可くお屋なともあ里しな連は古ゝ尓
  うしなひ多類屋う尓かこと閑く流ひとなる越
0006【かことかくる】−かこつ心也
  なとのたまふそうつ佐連はよたゝとみえさ里し
0007【されはよたゝ人と】−返答心中
  ひと能佐ま楚可しか具まてふハ可ろ/\しくハお」(2オ・2056E)

  ほされ佐里ける尓こそあめれとおもふ尓ほうし登
  いひな可らもなくたちま地尓かたちを屋徒して
  けることゝむね徒ふ連ていら遍き古えむやうおもひ
  満ハさ類たし可尓きゝへ類尓こそあめれかは可り
  えたまひてうかゝひたつハむ尓閑くれあ累
  邊起こと尓もあら春中/\阿ら可ひかくさむ耳阿い
  な可る邊しなゝは可里おもひえてい可な類こと尓
  个むこのころうち/\尓あ屋し見ふ類ひ
  とのこと尓屋とてかしこ尓るあまともの者つ勢尓
  く王んりてまうてゝ可遍りけるみち耳うち濃」(2ウ・2056K)

  登い婦尓登ゝま里てりける尓はゝのあまの
  羅う遣ハ可尓おこりてい多くなわつら婦とつ遣尓
  ひとの満うてき多里しかは満可里む可ひ堂里し尓
  まつあ屋し起ことなむと佐ゝめ起て屋能志耳
  可遍るをはさしをき(き=
き)てもてあつ可ひなけきて
  なむ里しこのくなへ類佐まな可ら
  さす可尓いきハかよひておハしけ連はむ可し可多り
  尓た万殿尓を起多里个むひとのたとひ越おもひ
0008【たま殿にをきたりけむひとのたとひ】−<朱合点> 入棺して火屋なとにをきたる人のよみかへりたる事の有へきなり
  いてゝさやうなること尓やとめ徒らし可りてし
  はらのな可尓个んあ累とも越よひよ勢徒ゝか者り」(3オ・2057D)
0009【はら】−原

  か者里尓可ちせさ勢なとなむ可しハ
  おしむ遍きよハひならねはゝの多ひの
  まひをも起をたす遣て念仏をもみ多れ春勢さ
  せむとをねむしたて満津りおもふたま遍し
  尓そ濃あり佐まくハしう裳たまへ春な
  者遍りしことのをしは可里おもふ堂ま婦る尓てん
0010【てんく】−天狗といふハ星の名也 本朝ニハ天魔の類にいへり
  具こたまなと屋う能ものゝあさむきいて多て満つり
  多里ける尓やとなう気ひ(ひ$
ハり)したす遣てゐて
  多て満徒りて能ち裳三月は可里ハな起
0011【三月】−み
  なむものしひける越な尓可し可いもう登こゑもんの」(3ウ・2057J)

  可見のか多尓て里し可あ満尓な里て
  ひとりもちて者遍里し古越うしなひて能ち
  ハおほくへ多てしか登かなしひたえ春なけき
  おもひ遍る尓那しとみゆるの可く
  か多ちいとう類ハしくきよらなる越いて多て満
  つ里てくハんをむのへ類とよろ古ひおもひてこの
  い多徒ら尓し多て満つらしとまとひいられ
  具/\いミし起ことゝも佐連しか者能ち尓なむ可能
  佐可もと尓ミ津可らおりてこしむなと徒可万つ
0012【さかもとにミつからおり侍りて】−恵心千日山籠時西坂下マテ下山事
0013
【こしむ】−護身
  里し尓屋う/\い起いてゝとな里へりけ連とこの」(4オ・2058B)

  羅うし多里けるものゝはな連ぬちなむするこの
0014【らう】−霊
  阿し起ものゝ佐ま多けを能可連て者んなと
  可那し遣尓ふこと(
<>)もの者遍里しかはほうし尓てハ
  すゝ免も徒遍起こと尓こそハとて満こと尓す遣せ/し
0015【すけ】−出家
  め多て満津里てし尓佐ら尓志ろしめ春へ支
0016【てし】−弟子(弟子#
  ことゝハいかてそら尓佐とりらん免徒らしきことの
  佐ま尓もある越よか多り尓ぬ遍可里し可登き
  古え阿りてわつらハし可類へ起こと尓もこそとこのお
  いともの登可くて古のころをとなくてつる尓
  なむと申給へハ佐てこそあな連とほのきゝ
<>)てかく」(4ウ・2058I)
0017【さてこそあなれと】−かほる心中詞

  まてとひいてへ類ことな連とむ遣尓
  とおもひ者て尓しひと越さ者満こと尓ある尓こそ
  ハと本春ゆ免のちしてあさましけ連ハ徒ゝミも
0018【ゆめの心ちして】−此巻の名これによれり
  あ遍春く満連ひぬる越そうつの者つ可し遣な
  尓閑くまてみゆ遍きこと可はとおもひか遍して
  徒連なくもてなし遍とかくお本しけること越この
0019【かくおほしけること越】−僧都心中詞
  尓ハな起とお那し屋う尓したることゝあやまち
  志多流ちして徒ミふ可け連ハあしき羅うせら連
  ひ个むもさるへき佐きのふ尓た可き
  いゑのこ尓こそものしけ免い可なるあ屋まり尓て」(5オ・2059B)

  かくまて者ふ連个む尓可と登ひたま遍ハ
0020【とひ申たまへは】−問
0021
【なまわかむと越り】−かほる御詞
  わ可むと越りなとい婦へきすち尓やあり个んこゝ
0022【こゝにも】−僧都詞
  尓ももとよ里わさ登おもひしこと尓ら春の者
  可那くてみ徒気そめて里しか登いと閑く
  まてちあ婦るへき起ハとおもひ遍さ里しを
  め徒ら可尓阿ともなくきえうせ尓し可は身越な
  多る尓やなさ満/\尓うた可ひおほくてたし可な
  ことは盈きゝらさ里徒る尓なむ徒ミかろめてもの
  すな連ハいとよし登屋すくなみ徒可らハおもひた
  ま遍なりぬる越はゝななむいみしく古ひ可なし婦」(5ウ・2059H)

  なる越可くなむきゝいてたると徒遣志らせま本しく者へ
  連登ころかく佐せけるほいた可ふ屋う尓ものさ
  ハ可しくやらん屋古の可のおもひたえ春可な
  ひ尓た遍てと婦らひものしなとしん可しなとの
  さていとひなき志るへとハおほ春ともかの佐可
  もと尓りたまへかハ可りきゝてめ尓おもひすく須
  遍くハ思侍らさ里しなる越の屋うなることゝも
  裳いま多尓か多りあ者せんとなむおもひたまふると
  のたまふけしきいと阿は連登おもひたま遍連ハ
0023【いとあはれと】−僧都心中詞
  多ちをか遍よをそむき尓起とほえた連登可ミひ遣」(6オ・2060A)

  をそ里たるほうした尓あ屋しき盤う勢ぬも
  なまして御身ハい可ゝあらむいとおしう徒ミえぬ
  へきわさ尓もある遍き可な阿ち起なく古ゝろみ
  た連ぬ満可里おりむこと个婦あ春はさハ里
  ちてせうそこ越佐せらんと申給
  いともとなけ連とな越/\とうち徒遣尓いら連むもさ満
0024【いと心もとなけれと】−かほる
0025
【いられむも】−いそかんもなり
  あしけ連ハ佐らはとてか遍りかのせうとの王ら
0026【かの御せうとのわらハ】−うき舟の連枝也 たねハ別也
  ハとも尓いておハし堂里个りことはらからともよ里
  盤か多ち裳きよ遣なる越よひいて古連なむ
0027【これなむ】−かほる御詞
  そののち可起ゆ可里なる越古連をかつ/\ものせん」(6ウ・2060G)

  布見ひとく多りたま遍そのとハなくてたゝ堂つ
  ねき古遊るむあるとは可り能越志ら勢へと
  のへハな尓可し古の志る遍尓可なら春徒ミえ
0028【なにかしこの】−僧都詞
  ことのあり佐まはくハしくと里い満ハみ津可ら
  たちよらせひて阿るへからむことハせ佐勢ハむ
  尓な尓登可ゝ者遍らむと申給へハうちわらひて徒ミ
0029【うちわらひて】−かほる心中詞
  えぬへき志るへとおもひなしたまふらんこそ者つ可しけ連
  古ゝ尓ハ楚くのか多ち尓ていまゝてすく須いとあ屋
  志きい者気な可里しよりおもふさし婦可くる越三条
  のほそけ尓たのもし遣な日とつをよ春」(7オ・2061@)

  可尓本し堂る可佐りか多起ほ多し尓本えりて
  かゝ徒らひつるをのつ可らくら井なとい婦ことも
  た可くなをきても尓可なひか多くなとして
  もひな可らすきる尓ハえ佐らぬこともか春のミ
  ひ徒ゝハすく勢と本や気わ多くし尓の可連可多起こと
  尓つ遣てこそさもら免さらてハほと遣能せいし
  か多のこと越わ徒可尓もきゝをよ者むハい可てあ屋ま多/し
  登徒ゝしミてのうちハひし里尓おとりらぬもの越
  ましていとは可な起こと尓つ遣てしもをも起徒ミうへ
  きことハなとて可おもひたま遍む佐ら尓あ類まし支」(7ウ・2061G)

  こと尓うた可ひおほ春ましたゝいとおしきおやの
  おもひなと越きゝあ起ら免らんは可里なう連し
  う古ゝろ屋春かるへきなむ可しよ里婦可ゝ里しか多能
  越か多りそうつも遣尓とうな徒きていとゝたう
  と起ことな登き古えたまふほと尓く連ぬ連ハ
0030【なかやとりも】−かほる
  可屋と里もいとよ可里ぬへけ連とう者の尓てものし
  たらんこそな越ひな可るへ个れとおもひわつらひて可へ
  里ふ尓古のせうと能わらハ越楚うつめと免てほめ
  たまふ古れ尓つ遣てまつほのめ可しへときこえへハ
0031【これにつけて】−かほる詞
  かきてとら勢時/\尓お者してあそひたまへ」(8オ・2062@)
0032【文かきて】−僧都
0033
【時/\ハ山におはして】−童に僧都物語し給ふなり

  よ登すゝろな累屋う尓ハおほ春ましきゆ遍もあり
  个里登うちか多らひたまふ古のこハえねふ見
  とりてほんとも尓いつ佐可もと尓連ハせんの人々
  すこしたちあ可れて志のひや可尓をとのをの尓盤
0034【あかれて】−別也
0035
【をのには】−後のありさま
  いと婦可く志个り多るあ越尓む可ひてま起るゝ
  ことな屋りほ多る者可里越無可しお本ゆるな
  さ免尓てな可免ゐ多ま遍る尓連いの者る可尓み屋ら
  累ゝ者よ里佐きこと尓をひていとお本うとも/し
0036【谷の軒はより】−谷にある家よりむかひの山をくたる人の軒のはつれより見ゆるなるへし
  堂るのと可ならぬ日可里越みるとてあま多ち
  裳はし尓いてゐ多りた可お者する尓可阿らんせんなと」(8ウ・2062F)

  いとお本くこそみゆ連ひ累あな多尓ひきほし多て満
0037【ひきほし】−海草
  徒連多里徒るか遍りこと尓大将殿おハしましてある
  志のこと王可尓す類をいとよ起おりな里登こそ阿り
  つ連大将殿とハこの女二宮おとこ尓やおハしつらん
  なといふもいと古のよと越くゐひ尓多りや満こと尓
0038【いとこのよと越く】−尼君達の物語をうき舟きゝ給ふて心中におかしくおもひ給ふなり
  さ尓やあらん時/\可ゝ流わ遣おハせしいと志る閑
0039【いとしるかりし】−うき舟君の聞知給ふ心也
  里しすい志んのこゑもうち徒気尓まし里てきこ遊
  月日ゆくまゝにむ可しのこと能可くおもひわす連ぬ
  もい満ハな尓ゝす遍きこと楚登うけ連ハあ見多
  尓おもひ満きらハしていとゝもい者てゐ多りよか者尓」(9オ・2063@)

  かよ婦のミなこのわ多り尓ハち可起たよ里なりける
  可の登能ハ古濃をや可て屋らんとおほしけ連と
0040【この子】−童事
  お本くてひんなけ連ハ殿尓か遍りま多のこ登
  佐ら尓そい多したてむつましくお本春こと/\し
  からぬ二三人をくり尓てむ可しもつね徒可ハしゝすい
  志んそ遍へりき可ぬま尓よひよ勢あこ可
0041【あこかうせにし】−かほる御詞
  う勢尓いもうとの可本ハお本ゆやい満ハよ尓
  おもひはてし越いとたし可尓こそものしうと
  き尓ハき可勢しとおもふをいきて堂つ者ゝ尓
  いまたし起尓い婦な中/\おとろ支さハ可むほと耳」(9ウ・2063F)

  志累まし起も志りなそのお屋のもひ能い登
  おし佐尓こそかくも堂つぬ連とまたき尓いとくち
  かためをさなち尓もはらからハお本可連と
0042【ををさなき心ちにも】−童心中
0043
【はらから】−連枝也
  古のか多ちをハ尓しとおもひ志ミ多里し尓うせ
  ひ尓个りときゝていと可なし登おひわ多る尓可くの
  へハうれし起尓もなみ多のお徒る越者つ可しとおもひ
0044【なみたのおつるを】−なくへき事になかるゝもはつかし(し+0キ)物なり
  てをゝとあらゝか尓き古えゐ多りかしこ尓徒とめて
0045【をゝとあらゝかに】−領掌の心なり唯也
  そうつのも登よ里よへ大将殿徒可ひ尓て
0046【大将殿の御つかひにて】−小野へ状の詞也
  屋まうてたま遍りしことのう遣ハ里し尓あちきな
  具可へりておくしむとひ免尓き古え見」(10オ・2063M)

  徒可らき古え佐春遍起ことも本可れ个婦あ春す
  くして佐婦ら布へしとか起へり古連ハな尓ことそと
  あまおとろきてこな多へもわ多りてみせ多てまつ
  里へハもてうちあ可ミてのゝき古え能ある尓や登
0047【おもてうちあかミて】−うき舟気色心中
  くるしうかくし志けるとうら見ら連んをおもひ徒ゝくる
  尓いら遍む可多なくてへ流尓のたまハせようく
0048【猶のたまはせよ】−尼君詞気色
  お本しへ多つることゝいミしくうら見てこと能古ゝろを志らね
  者あ者たゝしきまておもひ多るよ里そうつ
0049【山よりそうつの】−昨日の僧都文童のもてきたる也
  せう楚こ尓て満いり多るむあるといひい連多り
  屋しけ連と古連こそハさは多しかなるせう楚こなら」(10ウ・2064F)

  免とて古なた尓とい者勢た連ハいと起よ遣尓志な
0050【しなやかなる】−差是 白
  屋可な流わらハのえなら春佐うそきたるそあ遊見
  き多るわらうたさしいてた連ハすた連のもと尓徒いゐ
  てか屋う尓てハさふら婦ましくこそハそうつハのし可と
  い遍ハあまそいらへなとしと里い連てみ連ハ
  入道ひ免きミの可た尓よ里とて可起へり
0051【入道のひめきミ】−かほるのふミのうハかきをいへり
  あらしな阿ら可ふへきやうもないと者したなくお
0052【あらしなと】−うき舟
  ほえていよ/\ひきいら連てひと尓可本裳みあ者せ春
  徒ねほこりかなら須のしひと可らな連といとう多て
  古ゝろうしなといひてそうつふミみ連ハけさ古ゝ尓」(11オ・2064M)

  大将殿のしあり佐またつねとひふ尓
  はし免よ里あ里し屋う具ハしくき古えりぬ御心
  さし婦可ゝりける御中をそむきひてあ屋しき
  閑つの出家へ類ことか遍りてハのせ免
0053【せめそふ】−咫
  そ婦へきことなる越なう気た満者里おとろき
  い可ゝハせむもとのちきりあやまちハてあいし婦の
  つミ越者類可(
<>)き古え一日出家の倶とくハ者
  可里なきものな連は越堂のま勢遍とな古登
0054【ことことにハ】−悉
  こと尓ハみ徒可らさふらひて申侍らん可つ/\この古
  きこえてんとかい多り満可ふへくもあら春可起阿きら」(11ウ・2065F)
0055【まかふへくも】−うき舟心中

  免たま遍連と古とえ春古のハた連尓
0056【この君はたれにか】−うき舟ニ尼君のたつね給ふ詞也
  お者すらんな越いとうしい満さへ可くあな可ち尓
  多て佐せふとせ免られてすこしとさ満尓むきて
0057【すこしとさまにむきて】−うき舟気色心中
  見給へハ古のハい満ハとよ越おもひな里し夕暮
  いとしとおもひしな里个りお那し尓てみし
  いとさ可那くあ屋尓く尓おこ里て具可里しかと
  はゝのいと可なしく志てうち尓時/\ゐておハせし可は
  すこしおよす遣し満ゝ尓か多見尓おも遍りわらハ
  おもひい徒る尓の屋うなまつはら(ら
<>)能ありさ満
  いとと者満ほしくこと人々のう遍ハをの徒可ら屋う/\と」(12オ・2065L)

  き遣(遣=ケ)登屋のお者すらむ屋うハほの可尓もえき可須
  かしと中/\古連越みる尓いと可なしくてほろ/\とな可連
  ぬいとお可し遣尓すこしうちおほえへ類ち裳
  す連ハはらから尓こそお者すめれき古えま本しく
0058【きこえまほしく】−尼君達の詞
  お本須こともあらむうちにい連たて万つらんといふを
0059【なにかいまハ世に】−うき舟心中詞尼君にかたり侍る也
  尓可い満ハ尓あ累ともハさらむ尓阿屋しきさ満尓
  おか者里してふとみえむも者つ可しとおも遍ハ
  ためらひてけ尓へ多てありとお本しな春らん可く類し
  佐尓ものもい者れてあさましか里个んあり佐まは
  め徒ら可なることゝ見給个んをう徒しうせた満」(12ウ・2066E)

  志ひなとい婦らむあらぬ佐ま尓なりに个る尓やあらん
  い可尓も/\しか多能こと越わ連な可ら佐ら尓えお
  もひいてぬ尓きの可ミ登可あ里しよ能可多り△(

0060【きのかミとかありし人】−紀伊守浮母中将君ノ兄小野尼孫也
  め里しな可尓みしあ多りのこと尓やとほの可尓おもひ
  いてらるゝことあるちせしそ能ゝちとさ満かう佐ま尓お
  もひ徒ゝく連と佐ら尓は可/\しくもほえぬ尓たゝひとり
  ものしのいかてとをろ可なら春おもひため里し越
0061【ものし給し人】−母の事
  ま多やよ尓お者すらんとそ連は可りな尓者なれ春
  なしきおり/\る尓个婦み連ハ古のわらハの可本ハちい
  さくてみしちする尓いと志能ひか多け連とい満さら尓」(13オ・2066M)

  かゝ流尓もあ里とは志ら連てや見なむとなん
  閑のハゝそ連ひと里尓なむたいめんせ満
  ほしくおもひ者遍るこのそうつ能のへ流と尓
0062【そうつのの給へる人なとにハ】−かほる事
  羅尓志ら連たてまつらしとこ楚おもひつ連かま遍て
  ひ可ことな里个りと起こえなしてもてかくしへとのへハ
  いとかたいこと可なそうつの御心ひし里といふな可尓
0063【いとかたいことかな】−尼君返答
  あま里くま那くものしへハ満さ尓のこひてハき古え
  ひてんやのち尓かくれあらしめ尓可ろ/\し起御程
  尓もおハし満さ春ないひさハ起てよ尓志ら春古ゝろ
  徒よくおはしま春こ楚とみないひあハ勢てやのき」(13ウ・2067F)

  者尓木丁多てゝい連多り古のさハ起き徒連とを
  さな个れハ婦といひよらむも徒ゝましけ連登者遍る
0064【又はへる御ふミ】−童詞 かほる御文なり
  婦ミいかてたて満徒らん僧都志類へハたし可な
  を閑くおほつ可なこそと婦し免尓てい遍ハそゝやあな
0065【そゝや】−尼公詞 驚破<ソヽヤ>
  う徒くしなといひてふミらんす遍き古ゝ尓も
  せ佐勢めり気そうのなむい可なること尓可登
0066【けそうの人】−見証也 そはあたりの人をいふ
  か多くる越ハ勢よをさなほとな連登可ゝる
  志る遍尓た能ミき古えふ屋うもあらむなとい遍登
  お本しへ多てゝお本/\しくもてな佐せふ尓ハな尓こと
0067【おほしへたてゝ】−童詞
  を可き古えらんうとくお本しな里尓け連ハきこゆ遍」(14オ・2067M)

  きこともら春たゝこの婦ミ越徒てならてたて
  徒連とてりつるいかて多て満つらむとい遍ハいとことハり
0068【いとことハりなり】−尼公返答
  な里越いと可くう多てな者せそ佐す可尓むくつ遣起
0069【なをいとかく】−尼公うき舟に申詞
  御心尓こそ登き古えうこかして木丁もと尓をし
0070【をしよせたてまつり】−童をおしよせたるなり
  よ勢多て満徒りた連ハあ連尓も阿らてゐへ類気
  ハひこと尓ハ尓ちすれハ楚こもと尓よ里て
  て満徒りつ可遍りとく満いりなと可くう登
  うとしき越古ゝろうしとおもひていそくあま君御
  ふ見ひきと起てみせ多て満つるあ里しな可ら能
0071【ありしなからの御て】−<朱合点> 奥入 取かへす物にもかなや世の中を有しなからの我身とおもはん
  尓かミのと連いのよつ可ぬまて志見多りほ」(14ウ・2068E)

  の可尓みて連いのめて能さしす起いとありか多くお
  可し登おもふ遍し佐ら尓き古えむ可たなくさ満/\尓
0072【さらにきこえむかたなく】−ふみの詞
  徒ミをも起古ゝろをは楚うつ尓おもひゆるしきこえ
  てい満ハい可てあさましか里しよのか多りをた尓と
  いそ可類ゝわ連な可らもと可し起になましてめハい
  可尓可起も屋り者春
    のしと堂つぬるみちを志類遍耳て
0073【法のしと】−かほる
  おも者ぬ尓婦見まとふ可なこのハミやわす連
  ひぬらん古ゝ尓ハゆくゑなか多ミ尓みる
  てなんなとこ満やかなかく徒ふ/\と可起へ累」(15オ・2068L)

  さ満のま起らハさむか多なき尓さ里とてそ能
  尓もあらぬ佐ま越おもひの本可尓み徒个ら連きこ
  えたらん者したなさ那とをおもひみ多れていとゝ
  者れ/\しからぬ古ゝろハいひ屋るへきかたもなしさ
  す可尓うちなきてひ連ふしたま遍連ハいとよつ可ぬ
  ありさま可なわつらひぬい可ゝきこえんなと勢
0074【いかゝきこえん】−返事を
  めら連てちの可起み多る屋う尓るほとためらひて
  い満きこえむ無可しのことおもひい徒連登佐ら尓お本遊
  類ことなあやしうい可なりける可とのミ古ゝろも
  え春なむすこし志徒ま里てこのふ見なと裳」(15ウ・2069E)

  みし羅るゝこともあらむ个ふハな越もて満いり
  ひ年ところた可遍尓も阿らん尓いと可たハらい多可る遍/し
  とてひろ遣な可らあま尓さし屋りへ連ハいとみくる
0075【いとみくるしき】−尼公詞
  志きこと可なあま里个しからぬハみ多て満徒るつミさり
  可類遍しなといひさハくもうたてきゝ尓くゝお本遊
0076【うたてきゝにくゝ】−うき舟
  連ハ可本もひきい連てふしへりあ類しそこの
0077【あるしそ】−尼公の事
  か多りすこしき古えてものゝ気尓やおハすらん連いのさ満
  尓みえふおりなくな屋ミわ多りか多ちもこと
  尓なりたま遍る越た徒ねきこえ給人あらハいとわつらハし
  可類へきことゝみ多て満徒りけきしも志るくかくいと尓」(16オ・2069L)

  くるし起ことゝもける越い満なむいとかたし遣那く
  おもひ者遍るころもうちは遍なやませめる越いとゝ
  かゝ流ことゝも尓ほしみ多類ゝ尓や徒ねよ里もものお本え
  佐せハぬさ満尓むときこ遊ところ尓徒遣てお可し
  きあ類しなと志多れとをさなちハそこは可となく阿
  者て多類ちしてわさとたて満徒連させへ類志るし尓
  な尓こと越可ハき古えさ勢むとすらんたゝひとこと越の
  ハ勢よかしなとい遍ハ遣尓なといひてかくなむと
0078【うつしかたれと】−尼公童の詞をうつしかたる也
  徒しか多れとものハね可ひなくてたゝ可くおほつ可な
  きあり佐ま越きこえさせへきなめ里くもの者類」(16ウ・2070E)
0079【くものはるかに】−古今 逢事ハ雲井はるかになる神のをとにきゝつゝ恋やわたらん

  可尓へ多ゝらぬほと尓るめ類を可勢婦くとも
  かなら須たちよら勢む可しとい遍ハすゝろ尓井くら
0080【すゝろに】−童気色心中
  さんもあ屋しかるへけ連ハか遍りなむと春志れ
  ゆ可しきありさ満をも盈み春なりぬる越お本つ可
  なく具ちおしくてゆ可春な可ら満いりぬい津し閑登
  まちお者する尓可くたと/\し具てか遍りきた連ハ
0081【すさましく】−かほる御心中
  佐ましく中/\な里とお本春ことさ満/\尓ての可くし
  す遍多類尓やあらむとわ可古ゝろのおもひよらぬく満
  なくとしを起たまへ里しならひ尓とそ尓者へめる」(17オ・2027K)
0082【おとしをきたまへりし】−かくしすへたる人ニおとされて返事をもし給ハぬと我心ならひにおもひ給ふ也

巻名無哥詞 一名法の師 薫廿四歳自春至夏
定家卿春のよの夢の 凡盛者必衰之理無非夢事
涅槃経生死無常猶如昨日夢 大円覚経始知衆生
本来成仏死涅槃猶如昨日夢 唯我論未得真
覚恒処夢中故仏説為生死長夜
五ケ所ニ夢ト云詞アリ 人間事譬夢経文多之
卅七夢浮橋 或表卅七尊
源氏一部五十四帖雖為新写之本依有数奇之
志附属良鎮大僧正者也
文正元年十一月十六日 桃華老人在判
うつしをくわかむらさきの一本は
いまもゆかりの色とやハみぬ
右光源氏一部五十四帖令附属政弘朝
臣以庭訓之旨加首筆用談義之處」(17ウ)

秘本也堅可被禁外見者也
延徳二年六月十九日 前大僧正在判
あはれこのわかむらさきの一本に
心をそめてみる人もかな 右言書奥書異本
夢浮橋新御門跡様道澄御手跡也
長門府中長福寺御在寺之時也同巻
桐壺者大御門跡道増様御手跡也
聖護院殿様之事也
永禄七年七月八(八)日 吉見大蔵大輔正頼(花押)」(後見返し)