第1版 20180402日(ver.1-1)

修正版 20181213日(ver.1-2)

渋谷栄一翻字(C) 

「早蕨」

【凡例】

1.『定家本源氏物語 行幸・早蕨』(八木書店 2018年1月)に拠って漢字仮名字母翻字した。

2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。

3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。

4.変体仮名はその字母で翻字した。

5.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。

6.同字母の異字形については、その崩しレベルに応じて、もっとも漢字の字形を留めている字形群(多少の幅有り)にはその仮名または字母の後に「1」と表示し、通行の仮名また一般的な字母の字形群とも異なる字形群(多少の幅有り)にはその字母の後に「2」と表示し、大きく3区分して表示し分けた。

7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記や付箋等は小字体で表示した。

8.行頭に同じ文字が並ぶ場合に、異なる字母は赤色で、また同じ字母は緑色で表示した。

 

  や布し王可ね者のひ可りをみ堂まふ尓つ

01【や布し王可ね者】−<朱合点> のひ可りやふしわ可ねハいそ/布り尓しさと尓もさき个り(付箋@ 見返し)

  遣てもい可て可くな可らへる尓个る月日らむとゆ

めのやう尓のミおほえゆき可ふ/\尓し多可ひ

者那とりのいろをもねをも尓おきふ

しみつゝ者可那きことをもゝとす衛をとりていひ

可者し本そのう佐もつらさもうち可多ら日

あ者せきこえしにこそくさむ可多もありし可

  お可しきことあ者れなるふしをもきゝしる

き満ゝ尓よろつ可きくらしひとつをく多き

て」(1オ)

 

のお者しまさすなり尓し可那志さよりもやゝ

うちま佐りてこひしくわ日しき尓い可尓せむと

あ个くるゝも志らすまと者れ多まへと尓と

  まるへき本と者可きりあるわさなり个れ盤志

れぬもあ佐ましあさりのもとよりとしあら

まりてハな可お者しますらむいのりハ

ゆみなくつ可うまつりりいまはひとゝころの

とをなむやす可らすねむしきこえ佐するな

きこえてわらひつく/\しお可しきこ尓いれて」(1ウ)

 

これ盤王らハへのくやうしてる者徒をな

とて堂てまつれりてハいとあしうてう多は

わさと可満しくひき者那ちてそ可き多る

    きみ尓とてあま多のをつみし可は

  つねをわ春れぬ者つわらひな

御前尓よみさしめ多まへとあり堂いしと

  ま者してよみい多しつらむとおほせハう多の

者へもいとあ者れ尓てなをさり尓佐しもお

さぬなめりとみゆることの者をめて多くこの」(2オ)

 

ましけ尓かきつくし多まへるふみよりは

こよ那くめとまりてなミ多もこ本るれ盤

可ゝせ

    この者るは堂れ尓可せむな

  可多み尓つめるミねのさわらひ

徒可ひにろくとらせさせいとさ可りにゝほ日

ほくお者するのさ満/\の御物もひ尓

すこしうちおもやせ多まへるいとあてにな

まめ可しきけしきまさりてむ可し尓も」(2ウ)

 

ほえへりならひ多まへりしおりハとり(□&り)/\尓

てさらにゝ多まへりともみえ佐りしをうち

  王すれてハふとそれ可とおほゆるまて可よひ

  多まへるを中納言殿の可らを堂尓とゝめて

  み堂てまつるらましかハとあさゆふ尓こ日

  きこえめる尓おなしくハみえ多てまつり

すくせならさり个むよと多てまつる/\ハ

くちおしかる可のあ多りのの可よひくる

堂よりにありさ満ハ多えすきゝか者し多

まひ个り」(3オ)

 

つきせすおもひ本れ多まひてあ多らしき

としともい者すいやめ尓なむなり多まへると

きゝてもけ尓うちつ遣のあさゝ尓者

  多ま者佐り个りといとゝいまそあ者れもふ可く

  おもひしらるゝハお者しますことのいとゝこ

ろせくあり可多个れ盤尓わ多しきこえむと

ほし多ち尓多りないえんなさ者可しき

ころすくして中納言君心尓あまることをも

ま多ゝれ尓可ハ可多ら(ら+者)むとおほし王ひて兵部」(3ウ)

 

可多尓まいり多まへりしめや可な

ゆふくれなれハうちな可免多まひて者し

ち可くそ者しまし个る佐うのと可きな

しつゝれいの御心よせなるむ免の可をめてお

者するしつえをゝしおりてまいりへる尓

ひのいとえん尓めて多きをおりお可しうおほして

    お尓可よふ者那ゝれや

いろ尓者いてすし堂尓ゝ本へる

との多まへハ

    みる尓かことよせ个るのえを」(4オ)

 

してこそるへ可り个れ

王つらハしくと堂者ふれ可者し堂まへるいと

よきあ(あ+者)ひなりこまやかな御物可多りとも

尓なりてハ可能さとのと越そまつは

  い可尓とハきこえ給中納言もすき尓し

可多のあ可す可なしきことその可みよりけふま

ておもひの堂えぬよしおり/\尓つけてあ者れ

尓もお可しくもなきみわらひみと可いふらむ

やう尓きこえいて尓まして佐者可りいろめ

  可しくなみ多もろなくせはうへ」(4ウ)

 

尓てさへそてもし本る者可り尓りて可ゐ/\

  しくそあひしらひきこえめるそらのけし

  きも个尓そあ者れしりかほ尓可すミ

わ多れるる尓なりて者けしうふきいつ

  可勢の个しきま多ふゆめきていとさむけ尓

  おほとなふらもきえつゝやみ者あやなき多と/\

しさなれとか多み尓きゝ佐し多まふへくも

あらすつきせぬ御物可多りをえはるけやり

堂ま者てもい多うふ个ぬ尓多めし」(5オ)

 

  あり可多かり个るのむつひをいてさりともいと

さのみ者あらさり个むとのこりあり遣尓とひ

し堂まふそわりな御心らひなめる可

さりな可らもえ多まひてな个か

のうちもあきらむ者可り可つ者な

さめま多あ者れをもさまし佐ま/\尓可多ら

ひ多まふさまのお可しき尓す可され堂て

まつりて个尓尓あまるまておもひむす本ゝ

るゝことゝもすこしつゝか多りきこえ

よ那くむねのひまあくちし多まふも」(5ウ)

 

可能ち可くわ多しきこえてむとするほとの

とゝもか多らひきこえをいとうれしきこ

尓も可那あいなつ可らのあやまちとな

  おもふ多まへらるゝあ可ぬむ可しのなこりをま多

堂つぬへき可多もらねハおほ可多尓者な尓こ

と尓つ个てもよせきこゆへきとなむおもふ

堂まふるをもしひなくやおほしめさるへき

とて可のことなもひ王きそとゆつり

をきてをもすこしハ可多りきこえへと

い者せのもり能よふことりめい多りしよのことは

02【い者せのもり能】−<朱合点>」(6オ)

 

のこし堂り遣りのうち尓者可くなくさめ可多

可多み尓も个尓佐てこそ可やう尓もあつ可ひ

こゆへ可り个れとくやしきことやう/\まさ

りゆ个と(□&と)いま者可ひなゆへつね尓かうのみ

も者ゝある満しきもこそいてくれ多可堂

め尓もあちきなくおこ可ましからむと者な

  さてもおハしまさん尓つけてもまことにおもひう

しろみきこえん可多はま多ゝれ可者とおほせハ

王多りのことゝもゝまうけせさせかしこ

尓もよきわ可王らハなともとめて/\ハ」(6ウ)

 

ゆき可本尓いそきおもひ多れといま者とて

このふしみをあらし者てむもいミしくほそ

个れ盤な个可れとつきせぬをさりとても

せめてこ者く堂えこもりても堂个可る

ましくあさ可らぬのちきりも多え者てぬへ

  きす(す+ま)ゐをい可尓おほしえ多るそとのみうら

  みきこえもすこしハこと者りなれハい可ゝすへ

可らむとおもひみ多れ多まへりき佐らきのつい

多ちころとあれ盤ほとち可くなるまゝに者那

の」(7オ)

 

ともの遣しき者むものこりゆ可しくみねの

可すミの堂つをみすてむこともおの可とこよ

03【堂つをみすてむことも】−<朱合点>

尓て堂尓あらぬ多ひね尓てい可尓者し多な

王ら者れなることもこそとよろつ尓つ

ましくひとつ尓おもひあ可しくら志多まふ

  くも可きりあることなれ盤ぬきすて多まふ尓

みそきもあさきちそするおやひとゝころ者

多てまつらさりし可ハこひしきことはおも本えす

可者り尓もこの多ひのをふ可くそめむと」(7ウ)

 

尓者おほしの多まへと佐す可にさるゆ(ゆ$)へきゆ

へもなき王さなれ盤あ可す可なしきことか

きりなし中納言とのよりくるま御前/\

者可せなと堂て(□&て)まつれ多まへり

    者可なしやかすみのころも堂ちしまに

04【堂つをみすてむことも】(72)−春霞多徒をすてゝゆく可りハ/き佐と尓す見やならへる(付箋A)

  のひもとくおりもき尓个り

遣尓いろ/\いときよら尓て堂てまつれ多

まへり王多りの本との可つけものともなと

と/\し可らぬ可らしな/\尓こまや可尓」(8オ)

 

ほしやりつゝいとおほ可りおり尓つ个てハわす

れぬさまな御心よせのあり可多く者ら可ら

ともえいとかうまてハお者せぬわさそ

  /\ハきこえ志らすあさや可ならぬふるとも

尓者かゝるか多を尓しめてきこゆわ可き

(□&)/\もみ多てまつりならひていまはとこ

と佐ま尓なり多ま者むを佐う/\しくい可尓こ

ひ(□&ひ)しくおほえさせ多ま者んときこえあへり

つ可らハわ多り者むことあすとてのま多」(8ウ)

 

つとめてお者し多りれいのまらうとゐの可多尓

者する尓つ遣てもいまはやう/\れて

われこそより佐き尓かうやう尓もおもひ

めし可なとありしさ満の多まひし者へ

いてつゝさす可尓かけ者なれことのほ可に

とは者し多な免多ま者佐りしをわ可

もてあやしうもへ堂ゝり尓し可那とむね

  い多くおもひつゝ遣られ可い者みせし

さうしのあ那もいてらるれハより(り+て)多まへ

と」(9オ)

 

  このをはおろしこめ堂れ盤いと可ひな

うち尓も/\おもひいてきこえつゝうちひそ

みあへりハましてもよを佐るゝ

堂の可者尓あすの王多りもほえハす

本れ/\しけ尓てな可免ふし多まへる尓つきこ

ろのつもりもそこ者可とな个れといふせく

堂まへらるゝを可多者しもあきらめきこえ

させてなく佐めら者やれいの者し多な

佐し者な多せ多まひそいとゝあらぬの」(9ウ)

 

ちしりときこえへれ者ゝ志多なしと

も者れ多てまつらむとしもおも者ねとい(い+さ)や

ちもれいのやう尓もおほえす可きみ多りつゝいとゝ

  者可/\し可らぬひ可こともやとつゝましうてな

くるし遣尓おほい多れといとおしなとこれ可

れきこえてのさうしのくち尓て堂いめんし

多まへりいと者つ可しけ尓なまめきてま多

この堂ひ者ね日まさり多まひ尓个りとめ

もおとろくまて尓本日おほく尓も尓ぬ

ようゐなとあ那めて多のやとのみゝえ」(10オ)

 

堂まへるをひめハおも可けさらぬ

を佐へおもひいてきこえ尓いとあ者れとみ多

てまつりつきせぬもの可多りなともけふ者

といみすへくやなといひさしつゝわ多らせへき

ところち可くこのころすくしてう徒ろ日へけ

れ者よあ可とつき/\しきのいひめる

  な尓ことのをり尓もうと可らすおほしの多まハ

せはらむ可きりハきこえ佐せう遣

者りてすくさ満本しくなるをい可ゝハお本」(10ウ)

 

しめすらむさ満/\尓れハあいな

くやなとひと可多尓もえこそもひらねと

きこえへハやとをは可れしと思心ふ可く者へるを

ち可くなとの多ま者する尓つ遣てもよろつ尓み多

  れりてきこえ佐せやるへき可多もなくな/\

い日遣ちていミしくあ者れとおもひ堂まへるけ

者ひなといとようおほえ多まへるを可らよそ

尓みなしつるといとくやしくおもひゐ多まへ

れとかひな个れ盤そのよのことか个てもい者すわ

すれ尓个る尓やとみゆるまてけさや可尓もてなし」(11オ)

 

  堂まへりまへち可きこう者いのいろもかも

可しき尓うくひす多尓み春くし可多け尓うち

なきて王多るめれ盤まして者るやむ可しのと

05【者るやむ可しのと】−<朱合点> やあらぬやむ可しのらぬ/わ可飛とつハもとの尓して(付箋B・9ウ3に誤貼付)

  まと者し堂まふとちの(□&もの可多りにおりあハれ

り可し可せのさとふきいるゝ尓者那の可もまら

うとの尓本日も多ちらねとむ可しおもひ

いてらるゝつまなりつれ/\のまきらハし尓も

うきなくさめ尓もとゝめてもてあそひ多まひ

  しをなと尓あまり多まへハ

    みるもあらしにまよふさとに」(11ウ)

 

  む可しおほゆるの可そす累 い(□&い)ふともなくほ

  の可尓て堂え/\きこえ多るをなつ可しけ尓うち

すんしなして

    そてふれしむ免者可者らぬ尓本日尓て

  ねこ免うつろふやとやこと那る 堂えぬな

  堂を佐まよくのこひ可くしてことおほくもあ

らすま多も可やう尓てなむな尓こともきこ

えさせよ可るへきなときこえをきて堂ち

わ多りにあるへきことゝも/\尓の多まひをく

このやともりに可のひ个可ち能との井とハさふ(さふ$)

さふら婦へ个れハこの王多りのち可きさうとも」(12オ)

 

と尓そのことゝもゝの堂まひあつけな□まめ

や可なることゝもをさへ佐多めをき給弁かやう

とも尓ももひ可けすな可きいのちいとつらく

ほえるをもゆゝしくみおもふへ个れ盤いまハ

あるともひと尓志られらしとて可多ち

も可へて遣るをしゐてめしいてゝいとあ者れとみ

  堂まふれいのむ可し可多りなとせさせてこゝ

尓はとき/\ハまいりくへきをいと多つきな

(□&ほそ可るへき尓可くてし多まはんハいとあハ

れ尓うれし可るへきこと尓なむなとえもいひ」(12ウ)

 

やらすないとふ尓はえてのひるいのち能

06【いとふ尓はえて】−<朱合点>

らくま多い可尓せよとてうちすてさせ个ん

とうらめしくなへてのをおもひ堂まへしつむ尓

07【なへてのを】−<朱合点>ほ可多のわ可ひとつのうき可ら/に/なへてのをもうらみつる(付箋C)

  徒みもい可尓ふ可くらむと个ることゝもをうれへ

可遣きこゆるもか多くなしけなれといとよくいひ

くさめい多くね日尓堂れとむ可しきよけな

  り个るなこりをそきすて多れ盤ひ多ひの本と

さま可者れる尓すこしわ可くなりてさる可□に

みやひ可なりおもひ王日てハなと可ゝ累さま

尓も」(13オ)

 

し堂てまつら佐り个むそれ尓のふるやうもや

らましさてもい可尓ふ可く可多らひきこえて

ら満しなとひと可多ならすおほえ尓この

さへうらやまし个れ盤可くろへ多る木丁

  すこしひきやりてこま可にそ可多らひ

  遣尓む个尓おもひ本け多るさ満な可ら

  うちいひ多るけしきようゐくちおし可らす

  ゆへあり个るのなこりとみえ多り

    佐き尓堂つなみ多の可者尓みをなけハ」(13ウ)

 

  尓をくれぬいのちなら満し とうちひそ

みきこゆそれもいとつみふ可ゝなることにこそ

可能きし尓い多ることなと可佐しもあるま

しきこと尓て佐へふ可きそこ尓志つみすく

さむもあいなしすへてなへてむなしくおもひ

とるへき尓なむなとの

    をな个むなミ多の可者にしつみても

  こひしきせゝ尓わ春れしもせし い可ならむ

  尓すこしもおもひなくさむることありなむと

者てもなちし可へらむ可多もなく」(14オ)

 

可免られてもくれ尓个れとすゝろ尓多ひ

ねせむものと可むることやとあいな个れ盤

堂まひぬおも本しの多まへる佐まを可多り

者いとゝなくさめ可多くゝれまとひ多り

ミ那ゆき堂る个しき尓てぬひ

いと(と+)みつゝおひゆ可め累可多ちもしらすつくろ日

さまよふ尓いよ/\やつして

    者みないそき堂つ免るそてのうらに

  ひとりもし本越多るゝあまとうれへきこゆれハ」(14ウ)

 

    し本堂累ゝあまの尓ことなれや

うき多るなみ尓ぬるゝわ可そ

尓すみつ可むこともいとあり可多可るへきわさと

  おほゆれ盤さま尓し堂可ひてこゝをハあれ

  者てしとなむおもふをさらハ堂いめんもあり

ぬへ个れとし者しの本ともほそくて多ち

とまり多まふをみをく尓いとゝもゆ可す

む可ゝるか多ちなるも可ならすひ多

ふる尓しも堂えこもらぬわさなめるを」(15オ)

 

猶世のつね尓おもひなして/\もみえへな

いとな可しく可多らひむ可しののもてつ

可ひ多まひし佐るへきてうとゝもなとは

ミ那この尓とゝ免をきて可くよりふ

可くおもひしつみ多まへるをみれ盤佐きの

もとり王き多るちきりもやし堂まひ

个むとおもふさへむつましくあ者れ尓なむと

の多まふ尓いよ/\わらハへのこ日てなくやう尓

さめん可多なくおほゝれゐ多りみな」(15ウ)

 

可き者らひよろつとりし堂ゝめてくるま

ともよせてせんの/\ゐいとお

可り御身つ可らもいミしうお者しま佐ま本し

遣れとこと/\しくなりて/\あし可るへ个れハ

堂ゝしのひ多る佐ま尓もてなしてもと那く

ほさる中納言殿よりもせんの可すおほく

  堂てまつれ多まへりおほ可多のことをこそ

  よりハおほしをきつめれこまや可な

  うち/\のあつ可ひ者堂ゝこの殿よりおもひ」(16オ)

 

  よらぬこと那くとふらひきこえ給日くれぬへしと

うち尓もとにもゝよ本しきこゆる尓あ者

堂ゝしくいつちならむとおもふ尓もいと者可な

可なしとのみおも本え堂まふ尓くるま尓

のる堂い(い+ふ)のといふのい布

    ありふれ盤うれしきせ尓もあひ个るを

  をうち可者にな个てまし可ハ うちゑみ

  堂るをのあまの者へ尓こよ那うもあ

  る可那とつきなうもみ多まふいまひとり」(16ウ)

 

    すき尓し可こひしきこともわ春れねと

  遣ふ者多まつもゆく可那 いつれもとしへ

  堂る/\尓てみな可の可多をはよせ

ましきこえ多めりしをいま者可くおもひ

あら堂免てこといみするもうのやとお

ほえ多まへハもい者れ多ま者すみちの本と

の者るけく者けしきみちのありさ満を

み多まふ尓そらき尓のみおもひなされし

御中の可よひをこと者りの多え満なり个り

と」(17オ)

 

すこしおほし志られ个る七日のさや可尓

  さしいて堂るか个お可しく可すミ堂るをみ

  堂まひつゝいとゝほき尓なら者すくるし

个れ盤うちな可免られて

    な可むれ盤よりいてゝゆく

  尓すミわひてやま尓こそいれさ満可者り

  てつゐ尓い可ならむとのみあやうくゆくす衛

  うしろめ堂き尓としころな尓ことを可

もひ个んとそとり可へさま本しきやよひ」(17ウ)

 

  うちすきてそ者しつき多るみも志らぬ

  さま尓めも可ゝやくやうな殿つくりのみつは

よつ者な尓ひきいれてみやいつし可と

まちお者しまし个れハくるまのもとに

可らよらせておろし多てまつり給御

らひなとあるへき可きりして者うのつ本ね/\

まて御心とゝめさせ个る本としるくみえて

いとあらま本しけなりい可者可りのこと尓可と

みえ多まへるありさ満の尓者可尓可く佐多ま

り」(18オ)

 

多まへハおほろ个ならすおほさるゝことな

めりと世人尓くゝおもひお(を&)とろきけり

中納言三条尓この廿のほとに

わ多り多ま者んとてこのころ者ひゝ尓お

しつゝみ堂まふ尓このち可きほとなれハ

遣者ひもき可むとてよふくるまてお者し

ける尓多てまつれ多まへるせんの/\

可へりまいりてありさ満なと可多りきこゆ

いみしく(く$う)御心尓いりてもてなし多まふなるを」(18ウ)

 

きゝ尓もかつ者うれしき可らさす可にわ可

可らおこ可ましくむねうちつふれてもの

08【もの尓も可なやと】−<朱合点>

  尓も可なやと可へす/\ひとりこ多れて

    しなてるや尓ほのみつうみ尓こく

  ま本ならねともあひミしを とそいひく

  堂さ満本しきの)おほとの者のきみを

尓多てまつり者んことこの尓)とおほし

さ多め堂り个る尓可くおもひのほ可のをこの

本とより佐き尓とおほしか本尓可しつきすゑ」(19オ)

 

堂満日て者なれお者すれ盤いとしけ尓

ほし堂りときゝもいとおし个れハふミ

/\多てまつり給御もきのこ尓ひゝきて

いそへるをのへ堂ま者んもわらへな

へ个れ盤者つ可あまり尓きせ多てまつり

しゆ可り尓めつらしけなくともこの中納言

をよそ尓ゆつらむ可くちおしき尓佐もや

してましとしころしれぬもの尓おもひ

遣むをもなくなしてものほそくな可」(19ウ)

 

免井多まふなるをなとおほしよりてさるへ

してけしきとらせ个れとの者可那

さをめ尓ち可くみし尓いとうくもゆゝ志

うおほゆれハい可尓も/\さやうのありさ満者

うくなむとす佐ましけなるよしきゝ

い可て可このきみさへおほな/\こといつることを

うくハもてなすへきそとうらみ多まひ个

れとし多しき御中らひな可らもさ満の

いと者つ可しけ尓へハえしゐてしも」(20オ)

 

きこえうこかし堂ま者佐り个り者那さ可り

  のほと二条のさくらをみやり尓ぬし

09【ぬしなきやと能】−<朱合点>

  きやと能まつやられ多まへハやすくや

10やすくやなと】−<朱合点>

  とひとりこちあまりてもとにまいり

多まへりこゝかち尓お者しましつきていとよう

すみなれ多まひ尓多れ盤めやすのわさやとみ多て

まつるもの可られいのい可尓そやおほゆるのそ

ひ多るそあやしきやされとしちの御心者へハ

いとあ者れ尓うしろやすくそきこえ」(20ウ)

 

个るな尓くれと御物可多りきこえ可ハし多ま日て

ゆふつ可多へまいり者んとてくるまの

さうそくして/\おほくまいりあつまり

とすれハ堂ちいてて堂いの可多へ万いり

多まへりさとのけ者ひゝき可へてみすのうち

尓くゝすみなしてお可しけなるわらハの春き

可遣ほのみゆるしてせうそこきこえ

れ盤し(□&し)とねさしいてゝむ可しのしれる

るへしいてきて御返きこゆあさゆふのへ多て

も」(21オ)

 

あるましうおもふ多まへらるゝほとな可らそ

とゝなくてきこえ佐せんも/\なれ/\しき

  と可免やとつゝみる本とに世中可者り尓多る

ちのみそるやまへのこす衛も可すミ

へ堂てゝみえる尓あ者れなることおほく

る可那ときこえてうちな可めて

けしきくるし遣なるをけ尓おハせまし可ハ

ほつ可な可らすゆき可多み尓のいろとり

  のこゑをも越り尓つけつゝすこしゆきて」(21ウ)

 

すくし徒へ可り个るをなとおほしいつる尓

つ遣てハひ多ふる尓堂えこもり多まへりし

春満井のほそさよりもあ可す可なしう

くちおしきことそいとゝまさり个る/\も

のつね尓うと/\しくなもてなしきこえ佐せ

可きりな御心の本とをはいましも

こそみ多てまつり志らせ多まふさ満をも

え堂てまつらせ多まふへ个れなときこゆれと

  ひとつてならすふと佐しいてきこえむこの」(22オ)

 

をつゝましきをやすらひ多まふ本と尓

  いて堂ま者んとてま可り志尓わ多

  り多まへりいときよらにひきつくろ日けさう

し堂まひてみる可ひあるさ満な

中納言ハこな多尓なり个りとみ多ま日て

と可む个尓さし者那ちて者い多しすゑ

多まへるあ多り尓はあまりあやしと

まてうしろやす可りしよせをわ可多め

者おこ可ましきこともやとおほゆれとさ」(22ウ)

 

す可にむ遣尓へ多ておほ可らむハつみもこそ

うれち可や可尓てむ可し可多りもうち可多ら日

多まへ可しなときこえもの可らさはあり

ともあまりゆるひせんもま多い可尓そ

う多可者しきし多の尓そあるやとうち可へし

の堂まへハひと可多ならす王つらハし遣れとわ可

御心尓もあ者れふ可くおもひしられ尓し

御心をいましも越ろ可なるへきならねハ可能

  もおもひの堂まふめるやう尓い尓しへの可」(23オ)

 

者りとなすらへきこえて可うおもひ志り
  けり(□&り)とみえ堂てまつるふしもあら者やとハ

ほ勢と佐す可にと可くやと可多/\尓やす可ら

すきこえなし堂まへ(□&へ)ハくるしうおほさ

れ个り」(23ウ)

 

墨付弐拾三枚」(24オ)