First updated 04/02/2018
Last updated 06/24/2024

渋谷栄一翻字(C)

「早蕨」
【凡例】
1.『定家本源氏物語 行幸・早蕨』(八木書店 2018年1月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。
3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。
4.変体仮名はその字母で翻字した。
5.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記や付箋等は小字体で表示した。
8.行頭に同じ文字が並ぶ場合に、異なる字母は茶色で、また同じ字母は緑色で表示した。


  や布し王可ね者のひ可りをみ堂まふ尓つ
01 のひ可りやふしわ可ねハいそ/布り尓しさと尓もさき个り(付箋@)
  遣てもい可て可くな可らへる尓个る月日らむと
  めのやう尓のミおほえゆき可ふ/\尓し多可ひ
  者那とりのいろをもねをも尓おきふ
  しみつゝ者可那きことをもゝとす衛をとりていひ
  可者し本そのう佐もつらさもうち可多ら日
  あ者せきこえしにこそくさむ可多もありし可
  お可しきことあ者れなるふしをもきゝしる
  なき満ゝ尓よろつ可きくらしひとつをく多き/て」(1オ)

  のお者しまさすなり尓し可那志さよりもやゝ
  うちま佐りてこひしくわ日しき尓い可尓せむと
  あ个くるゝも志らすまと者れ多まへと尓と
  まるへき本と者可きりあるわさなり个れ盤志
  なれぬもあ佐ましあさりのもとよりとしあら
  まりてハな可お者しますらいのりハ
  ゆみなくつ可うまつりりいまはひとゝころの
  とをなむやす可らすねむしきこえ佐するな
  きこえてわらひつく/\しお可しきこ尓いれて」(1ウ)

  これ盤王らハへのくやうしてる者徒をな
  とて堂てまつれりてハいとあしうてう多は
  わさと可満しくひき者那ちてそ可き多る
    きみ尓とてあま多のをつみし可は
  つねをわ春れぬ者つわらひな
  御前尓よみさしめ多まへとあり堂いしと
  ま者してよみい多しつらむとほせハう多の
  者へもいとあ者れ尓てなをさり尓佐しもお
  さぬなめりとみゆることの者をめて多くこの」(2オ)

  ましけ尓かきつくし多まへるふみよりは
  こよ那くめとまりてなミ多もこ本るれ盤
  可ゝせ
    この者るは堂れ尓可せむな
  可多み尓つめるミねのさわら
  徒可ひにろくとらせさせいとさ可りにゝほ日
  おほくお者するのさ満/\の御物もひ尓
  すこしうちおもやせ多まへるいとあてにな
  まめ可しきけしきまさりてむ可し尓も」(2ウ)

  おほえへりならひ多まへりしおリハとり/\尓
  てさらにゝ多まへりともみえ佐りしをうち
  王すれてハふとそれ可とおほゆるまて可よひ
  多まへるを中納言殿の可らを堂尓とゝめて
  み堂てまつるらまし可ハとあさゆふ尓こ日
  きこえめる尓おなしくハみえ多てまつり
  すくせならさり个むよと多てまつる/\ハ
  くちおしかる可のあ多りのの可よひくる
  堂よりにありさ満ハ多えすきゝか者し多
                 まひ个り」(3オ)

  つきせすおもひ本れ多まひてあ多らしき
  としともい者すいやめ尓なむなり多まへると
  きゝてもけ尓うちつ遣のあさゝ尓者
  多ま者佐り个りといとゝいまそあ者れもふ可く
  おもひしらるゝハお者しますことのいとゝこ
  ろせくあり可多个れ盤尓わ多しきこえむと
  おほし多ち尓多りないえんなさ者可しき
  ころすくして中納言君心尓あまることをも
  ま多ゝれ尓可ハ可多ら(+者)むとおほし王ひて兵部」(3ウ)

  可多尓まいり多まへりしめや可な
  ゆふくれなれハうちな可免多まひて者し
  ち可くそ者しまし个る佐うのと可きな
  しつゝれいの御心よせなるむ免の可をめてお
  者するしつえをゝしおりてまいりへる尓本
  ひのいとえん尓めて多きをおりお可しうおほして
    お尓可よふ者那ゝれや
  いろ尓者いてすし堂尓ゝ本へる
  との多まへハ
    みる尓かことよせ个るのえを」(4オ)

  してこそるへ可り个れ
  王つらハしくと堂者ふれ可者し堂まへるいと
  よき(+者)ひなりこまやかな御物可多りと
  尓なりてハ可能さとのと越そまつは
  い可尓とハきこえ給中納言もすき尓し
  可多のあ可す可なしきことその可みよりけふま
  ておもひの堂えぬよしおり/\尓つけてあ者れ
  尓もお可しくもなきみわらひみと可いふらむ
  やう尓きこえいて尓まして佐者可りいろめ
  可しくなみ多もろなくせはうへ」(4ウ)

  尓てさへそてもし本る者可り尓なりて可ゐ/\
  しくそあひしらひきこえめるそらのけし
  きも个尓そあ者れしリかほ尓可すミ
  わ多れるる尓なりて者けしうふきいつ
  可勢の个しきま多ふゆめきていとさむけ尓
  おほとなふらもきえつゝやみ者あやなき多と/\
  しさなれとか多み尓きゝ佐し多まふへくも
  あらすつきせぬ御物可多りをえはるけやり
  堂ま者てもい多うふ个ぬ尓多めし」(5オ)

  あり可多かり个るのむつひをいてさりともいと
  さのみ者あらさり个むとのこりあり遣尓と
  なし堂まふそわりな御心ひなめる可
  さりな可らもえ多まひてな个か
  のうちもあきらむ者可り可つ者な
  さめま多あ者れをもさまし佐ま/\尓可多ら
  ひ多まふさまのお可しき尓す可され堂て
  まつりて个尓尓あまるまておもひむす本ゝ
  るゝことゝもすこしつゝか多りきこえ
  よ那くむねのひまあくちし多まふも」(5ウ)

  可能ち可くわ多しきこえてむとするほとの
  ことゝもか多らひきこえをいとうれしきこ
  尓も可那あいなつ可らのあやまちとな
  おもふ多まへらるゝあ可ぬむ可しのなこりをま多
  堂つぬへき可多もねハおほ可多尓者な尓こ
  と尓つ个てもよせきこゆへきむおもふ
  堂まふるをもしひなくやおほしめさるへき
  とて可のこもひ王きそとゆつり
  しをきてをもすこしハ可多りきこえへと
  い者せのもり能よふことりめい多りしよのことは」(6オ)

  のこし堂り遣りのうち尓者可くなくさめ可多
  可多み尓も个尓佐てこそ可やう尓もあつ可ひ
  こゆへ可り个れとくやしきことやう/\まさ
  りゆ个と(□&と)いま者可ひなゆへつね尓かうのみ
  おも者ゝある満しきもこそいてくれ多可堂
  め尓もあちきなくおこ可ましからむと者な
  さてもおハしまさん尓つけてもまことにおもひう
  しろみきこえん可多はま多ゝれ可者とほせハ
  王多りのことゝもゝまうけせさせかしこ
  尓もよきわ可王らハなともとめて/\ハ」(6ウ)

  ゆき可本尓いそきおもひ多れといま者とて
  このふしみをあらし者てむもいミしくほそ
  个れ盤な个可れとつきせぬをさりとても
  せめてこ者く堂えこもりても堂个可る
  ましくあさ可らのちきりも多え者てぬへ
  き(+ま)ゐをい可尓おほしえ多るそとのみうら
  みきこえもすこしハこと者りなれハい可ゝすへ
  可らむともひみ多れ多まへりき佐らきのつい
  多ちころとあれ盤ほとち可くなるまゝに者那/の」(7オ)

  ともの遣しき者むものこりゆ可しくみねの
  可すミの堂つをみすてむこともおの可とこよ
  尓て堂尓あらぬ多ひね尓てい可尓者し多な
  王ら者れなることもこそとよろつ尓つ
  ましくひとつ尓おもひあ可しくら志多まふ
  くも可きりあることなれ盤ぬきすて多まふ尓
  みそきもあさきちそするおやひとゝころ者
  多てまつらさりし可ハこひしきことはおも本えす
  そ可者り尓もこの多ひのをふ可くそめむと」(7ウ)

  尓者おほしの多まへと佐す可にさるゆ(ゆ$)へきゆ
  へもなき王さなれ盤あ可す可なしきことか
  きりなし中納言のよりくるま/\
  者可せなと堂て(□&て)まつれ多まへり
    者可なしやかすみのころも堂ちしまに
02 春霞多徒をすてゝゆく可りハ/き佐と尓す見やなへる(付箋A)
  のひもとくおりもき尓个り
  遣尓いろ/\いときよら尓て堂てまつれ多
  まへり王多りの本との可つけものともなと
  こと/\し可ら可らしな/\尓こまや可尓」(8オ)

  おほしやリつゝいとおほ可りおり尓つ个てハわす
  れぬさまな御心よせのあり可多く者ら可ら
  なともえいとかうまてハお者せぬわさそ
  /\ハきこえ志らすあさや可なぬふるとも
  の尓者かゝるか多を尓しめてきこゆわ可き
  (□&)/\もみ多てまつりなひていまはと
  と佐ま尓なり多ま者むを佐う/\しくい可尓こ
  ひ(□&ひ)しくおほえさせ多ま者んときこえあへり
  つ可らハわ多り者むことあすとてのま多」(8ウ)

  つとめてお者し多りれいのまらうとゐの可多尓
  お者する尓つ遣てもいまはやう/\れて
  われこそより佐き尓かうやう尓もおもひ
  そめし可なとありしさ満の多まひし者へ
  をいてつゝさす可尓かけ者なれことのほ可に
  なとは者し多な免多ま者佐りしをわ可
  もてあやしうもへ堂ゝり尓し可那とむね
  い多くおもひつゝ遣ら可い者みせし
  さうしのあ那もいてらるれハより(+て)多まへ/と」(9オ)

  このをはお1ろしこめ堂れ盤いと可ひな2し
  うち尓も/\お1もひいてきこえつゝうちひそ2
  みあへりハましてもよを佐るゝな2み
  堂の可者尓あすの王多りも1お1ほえハす
  本れ/\しけ尓てな2可免ふし多まへる尓つきこ
  ろのつもりもそ2こ者可とな2个れといふせく
  堂まへらるゝを可多者しもあきらめきこえ
  させてな2く佐めら者やれいの者し多な2く
  な2佐し者な2多せ多まひそ2いとゝあらぬの」(9ウ)

  ちしりときこえへれ者ゝ志多な
  おも者れ多てまつらむとしもおも者ねとい(+さ)
  ちもれいのやう尓もおほえす可きみ多りつゝいとゝ
  者可/\し可らぬひ可こともやとつゝましうてな
  くるし遣尓おほい多れといとおしなとこれ可
  れきこえてのさうしのくち尓て堂いめんし
  多まへりいと者つ可しけ尓なまめきてま多
  この堂ひ者ね日まさり多まひ尓个りと
  もおとろくまて尓本日おほく尓も尓ぬ
  ようゐなとあ那めて多のやとのみゝえ」(10オ)

  堂まへるをひめハおも可けさら
  を佐へおもひいてきこえ尓いとあ者れとみ多
  てまつりつきせぬもの可多りなともけふ者
  こといみすへくやなといひさしつゝわ多らへき
  ところち可くこのころすくしてう徒ろ日へけ
  れ者よあ可とつき/\しきのいひめる
  な尓ことのをり尓もうと可らすおほしの多まハ
  せはらむ可きりハきこえ佐せう遣
  者りてすくさ満本しくなるをい可ゝハお本」(10ウ)

  しめすらさ満/\尓れハあいな
  くやなとひと可多尓もえこそもひねと
  きこえへハやとをは可れしと思心ふ可く者へるを
  ち可くなとの多ま者する尓つ遣てもよろつ尓み多
  れりてきこえ佐せやるへき可多もなくな/\
  い日遣ちていミしくあ者れとおもひ堂まへるけ
  者ひなといとようおほえ多まへるを可らよそ
  の尓みなしつるといとくやしくおもひゐ多まへ
  れとかひな个れ盤そのよのことか个てもい者すわ
  すれ尓个る尓やとみゆるまてけさや可尓もてなし」(11オ)

  堂まへりまへち可きこう者いのいろもかも
  可しき尓うくひす多尓み春くし可多け尓うち
  なきて王多るめれ盤まして者るやむ可しのと
03 やあらぬやむ可しのぬ/わ可飛とつハもとの尓して(付箋B・9ウ3に誤貼付)
  まと者し堂まふとちの(□&)もの可多りにおりあハれ
  なり可し可せのさとふきいるゝ尓者那の可もまら
  うと尓本日も多ちねとむ可しおもひ
  いてらるゝつまなりつれ/\のまきらハし尓も
  うきなくさめ尓もとゝめてもてあそひ多まひ
  しをなと尓あまり多まへハ
    みるもあらしにまよふさとに」(11ウ)

  む可しおほゆるの可そす累 い(□&い)ふとてなくほ
  の可尓て堂え/\きこえ多るをなつ可しけ尓うち
  すんしなして
    そてふれしむ免者可者らぬ尓本日尓て
  ねこ免うつろふやとやこと那る 堂えぬな
  堂を佐まよくのこひ可くしてことおほくもあ
  らすま多も可やう尓てなむな尓こともきこ
  えさせよ可るへきなときこえをきて堂ち
  わ多りにあるへきことゝも/\尓の多まひをく
  このやともりに可のひ个可ち能との井とハさふ(さふ$)
  さふら婦へ个れハこの王多りのち可きさうとも」(12オ)

  なと尓そのことゝもゝの堂まひあつけな□まめ
  や可なることゝもをさへ佐多めをき給弁かやう
  のとも尓ももひ可けすな可きいのちいとつらく
  おほえるをもゆゝしくみおもふへ个れ盤いまハ
  尓あるともひと尓志らしとて可多ち
  も可へて遣るをしゐてめしいてゝいとあ者れとみ
  堂まふれいのむ可し可多りなとせさせてこゝ
  尓はき/\ハまいりくへきをいと多つきな
  (□&)ほそ可るへき尓可くてし多ま者んハいとあハ
  れ尓うれし可るへきこと尓なむなとえもいひ」(12ウ)

  やらすないとふ尓はえてのひるいのち能
  つらくま多い可尓せよとてうちすてさせ个ん
  とうらめしくへてのをおもひ堂まへしつむ尓
04 おほ可多のわ可ひとつのうき可ら/に/なへてのをもうらみつる(付箋C)
  徒みもい可尓ふ可くむと个ることゝもをうれへ
  可遣きこゆるもか多くなしけなれといとよくいひ
  なくさめい多くね日尓堂れとむ可しきよけな
  り个るなこりをそきすて多れ盤ひ多ひの本と
  さま可者れる尓すこしわ可くなりてさる可□に
  みやひ可なりおもひ王日てハなと可ゝ累さま
                     尓も」(13オ)

  なし堂てまつら佐り个むそれ尓のふるやうもや
  らましさてもい可尓ふ可く可多らひきこえて
  ら満しなとひと可多ならすおほえ尓この
  さへうらやまし个れ盤可くろへ多る木丁
  すこしひきやリてこま可にそ可多らひ
  遣尓む个尓おもひ本け多るさ満な可ら
  うちいひ多るけしきようゐくちおし可らす
  ゆへあり个るのなこりとみえ多り
    佐き尓堂つなみ多の可者尓みをなけハ」(13ウ)

  尓をくれぬいのちな満し とうちひそ
  みきこゆそれもいとつみふ可ゝなることにこそ
  可能きし尓い多ることなと可佐しもあるま
  しきこと尓て佐へふ可きそこ尓志つみすく
  さむもあいなしすへてなへてむなしくおもひ
  とるへき尓なむなとの
    をな个むなミ多の可者にしつみても
  こひしきせゝ尓わ春れしもせし い可な
  尓すこしもおもひなくさむることありなむと
  者てもなちし可へらむ可多もなく」(14オ)

  な可免られてもくれ尓个れとすゝろ尓多ひ
  ねせむものと可むることやとあいな个れ盤
  堂まひぬおも本しの多まへる佐まを可多り
  て者いとゝなくさめ可多くゝれまとひ多り
  ミ那ゆき堂る个しき尓てぬひ
  いと(+なみつゝおひゆ可め累可多ちもしらすつくろ日
  さまよふ尓いよ/\やつして
    者みないそき堂つ免るそてのうらに
  ひとりもし本越多るゝあまうれへきこゆれハ」(14ウ)

    し本堂累ゝあまの尓ことなれや
  うき多るなみ尓ぬるゝわ可そ
  尓すみつ可むこともいとあり可多可るへきわさと
  おほゆれ盤さま尓し堂可ひてこゝをハあれ
  者てしとなむおもふをさらハ堂いめんもあり
  ぬへ个れとし者しの本ともほそくて多ち
  とまり多まふをみをく尓いとゝもゆ可す
  なむ可ゝるか多ちなるも可なすひ多
  ふる尓しも堂えこもらぬわさなめるを」(15オ)

  猶世のつね尓おもひなして/\もみえへな
  いとなつ可しく可多らむ可しののもてつ
  可ひ多まひし佐るへきてうとゝもなとは
  ミ那この尓とゝ免をきて可くよりふ
  可くおもひしつみ多まへるをみれ盤佐きの
  もとり王き多るちきりもやし堂まひ
  个むとおもふさへむつましくあ者れ尓なむと
  の多まふ尓いよ/\わらハへのこ日てなくやう尓
  さめん可多なくおほゝれゐ多りみな」(15ウ)

  可き者らひよろつとりし堂ゝめてくるま
  ともよせてせんの/\ゐいとお
  可り御身つ可らもいミしうお者しま佐ま本し
  遣れとこと/\しくなりて/\あし可るへ个れハ
  堂ゝしのひ多る佐ま尓もてなしてもと那く
  おほさる中納言殿よりもせんの可すおほく
  堂てまつれ多まへりおほ可多のことをこそ
  よりハおほしをきつめれこまや可な
  うち/\のあつ可ひ者堂ゝこの殿よりおもひ」(16オ)

  よらぬこ那くとふらひきこえ給日くれぬへしと
  うち尓もとにもゝよ本しきこゆる尓あ者
  堂ゝしくいつちなむとおもふ尓もいと者可な
  可なしとのみおも本え堂まふ尓くるま尓
  のる堂い(+ふ)といふのい布
    ありふれ盤うれしきせ尓もあひ个るを
  をうち可者にな个てまし可ハ うちゑみ
  堂るをのあまの者へ尓こよ那うもあ
  る可那とつきなうもみ多まふいまひとり」(16ウ)

    すき尓し可こひしきこともわ春れねと
  遣ふ者多まつもゆく可那 いつれもしへ
  堂る/\尓てみな可の可多をはよせ
  ましきこえ多めりしをいま者可くおもひ
  あら堂免てこといみするもうのやと
  ほえ多まへハもい者れ多ま者すみちの本と
  の者るけく者けしきみちのありさ満を
  み多まふ尓そらき尓のみおもひなされし
  御中の可よひをこと者りの多え満なり个り/と」(17オ)

  すこしおほし志られ个る七日のさや可尓
  さしいて堂るか个お可しく可すミ堂るをみ
  堂まひつゝいとゝほき尓なら者すくるし
  个れ盤うちな可免られて
    な可むれ盤よりいてゝゆく
  尓すミわひてやま尓こそいれさ満可者り
  てつゐ尓い可ならむとのみあやうくゆくす衛
  うしろめ堂き尓としころな尓ことを可
  おもひ个んととり可へさま本しきやよひ」(17ウ)

  うちすきてそ者しつき多るみも志ら
  さま尓めも可ゝやくやうな殿つくりのみつは
  よつ者な尓ひきいれてみやいつし可と
  まちお者しまし个れハくるまのもとに
  可らよらておろし多てまつり給御
  らひなとあるへき可きりして者うのつ本ね/\
  まて御心とゝめさせ个る本としるくみえて
  いとあらま本しけなりい可者可りのこと尓可と
  みえ多まへるありさ満の尓者可尓可く佐多ま/リ」(18オ)

  多まへハおほろ个ならすおほさるゝことな
  めりと世人尓くゝおもひお(を&お)とろきけり
  中納言三条尓この廿のほとに
  わ多り多ま者んとてこのころ者ひゝ尓お
  しつゝみ堂まふ尓このち可きほとなれハ
  者ひもき可むとてよふくるまてお者し
  る尓多てまつれ多まへるせんの/\
  可へりまいりてありさ満なと可多りきこゆ
  いみしく(く$う)御心尓いりてもてなし多まふなるを」(18ウ)

  きゝ尓もかつ者うれしき可らさす可にわ可
  可らおこ可ましくむねうちつふれてもの
  尓も可なやと可へす/\ひとりこ多れて
    しなてるや尓ほのみつうみ尓こく
  ま本なねともあひミしを といひく
  堂さ満本しき(+の)ほとの者のきみを
  尓多てまつり者んことこの(+尓)とおほし
  さ多め堂り个る尓可くおもひのほ可のをこの
  本とより佐き尓とおほしか本尓可しつきすゑ」(19オ)

  堂満日て者なれお者すれ盤いとしけ尓
  おほし堂りときゝもいとおし个れハふミ
  者/\多てまつり給御もきのこ尓ひゝきて
  いそへるをのへ堂ま者んもわらへな
  へ个れ盤者つ可あまり尓きせ多てまつり
  おしゆ可り尓めつらしけなくともこの中納言
  をよそ尓ゆつらむ可くちおしき尓佐もや
  なしてましとしころしれぬもの尓おもひ
  遣むをもなくなしてものほそくな可」(19ウ)

  免井多まふなるをなとおほしよりてさるへ
  きしてけしきと个れとの者可那
  さをめ尓ち可くみし尓いとうくもゆゝ志
  うおほゆれハい可尓も/\さやうのありさ満者
  うくなむとす佐ましけなるよしきゝ
  い可て可このきみさへおほな/\こといつることを
  うくハもてなすへきそとうらみ多まひ个
  れとし多しき御中らひな可らさ満の
  いと者つ可しけ尓へハえしゐてしも」(20オ)

  きこえうこかし堂ま者佐り个り者那さ可り
  のほと二条のさくらをみやりぬし
  なきやと能まつやられ多まへハやすくや
  なとひとりこちあまりてもとにまいり
  多まへりこゝかち尓お者しましつきていとよう
  すみなれ多まひ尓多れ盤めやすのわさやとみ多て
  まつるもの可られいのい可尓そやおほゆるのそ
  ひ多るそあやしきやされとしちの御心者へハ
  いとあ者れ尓うしろやすくそきこえ」(20ウ)

  个るな尓くれと御物可多りきこえ可ハし多ま日て
  ゆふつ可多へまいり者んとくるまの
  さうそくして/\おほくまいりあつまり
  なとすれハ堂ちいてて堂いの可多へ万いり
  多まへりさとのけ者ひゝき可へてみすのうち
  尓くゝすみなしてお可しけなるわらハの春き
  可遣ほのみゆるしてせうそこきこえ
  れ盤し(□&し)とねさしいてゝむ可しのしれる
  なるへしいてきて御返きこゆあさゆふのへ多て/も」(21オ)

  あるましうおもふ多まへらるゝほとな可らそ
  ことゝなくてきこえ佐せんも/\なれ/\しき
  と可免やとつゝみる本とに世中可者り尓多る
  ちのみそるやまへのこす衛も可すミ
  へ堂てゝみえる尓あ者れなることおほく
  もる可那ときこえてうちな可めて
  けしきくるし遣なるをけ尓おハせまし可ハ
  おほつ可な可らすゆき可多み尓のいろとり
  のこゑをも越り尓つけつゝすこしゆきて」(21ウ)

  すくし徒へ可り个るをなとおほしいつる尓
  つ遣てハひ多ふる尓堂えこもり多まへりし
  春満井のほそさよりもあ可す可なしう
  くちおしきことそいとゝまさり个る/\も
  のつね尓うと/\しくなもてなしきこえ佐せ
  可きりな御心の本とをはいましも
  こそみ多てまつり志らせ多まふさ満をも
  え堂てまつらせ多まふへ个れなときこゆれと
  ひとつてなすふと佐しいてきこえむことの」(22オ)

  なをつゝましきをやすらひ多まふ本と尓
  いて堂ま者んとま可り志尓わ多
  り多まへりいときよらにひきつくろ日けさう
  し堂まひてみる可ひあるさ満な
  中納言ハこな多尓なり个りとみ多ま日て
  なと可む个尓さし者那ちて者い多しすゑ
  多まへるあ多り尓はあまりあやしと
  まてうしろやす可りしよせをわ可多め
  者おこ可ましきこともやとおほゆれとさ」(22ウ)

  す可にむ遣尓へ多ておほ可らむハつみもこそ
  うれち可や可尓てむ可し可多りもうち可多ら日
  多まへ可しなときこえもの可らさはあり
  ともあまりゆるひせんもま多い可尓そ
  う多可者しきし多の尓そあるやとうち可へし
  の堂まへハひと可多なす王つらハし遣れとわ可
  御心尓もあ者れふ可くおもひしられ尓し
  御心をいましも越ろ可なるへきなねハ可能
  もおもひの堂まふめるやう尓い尓しへの可」(23オ)

  者りとなすらへきこえて可うおもひ志り
  けリ(□&リ)とみえ堂てまつるふしもあら者やと
  おほ勢と佐す可にと可くやと可多/\尓やす可ら
  すきこえなし堂まへ(□&へ)ハくるしうおほさ
                      れ个り」(23ウ)

  墨付弐拾三枚」(24オ)

(白紙)」(24ウ)