First updated 03/31/2002
Last updated 04/01/2024
渋谷栄一翻字(C)

  

早蕨

凡例
1.『大島本 源氏物語』(角川書店 平成8年5月)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体かなの字母と区別するため太字で表示した。
3.平仮名はそのまま平仮名で表示した。
4.変体仮名は字母で表示した。
5.片仮名はそのまま片仮名で表示した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、より元の字母の漢字に近い字形には「」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し方には「」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記等は小字体で表示した。
8.本文中の朱点、朱書きは朱色で表示した。
9.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母は茶色、同じ字母は緑色で表示した。

「佐王ら飛」(題箋)

  や布しわ可年ハひ可りを見給尓徒
0001【やふしわかねハ】−(朱合点) 「古今(墨) やふしわ可年ハいその可ミふり尓し佐と尓もさ起个り(朱)」(付箋01 古今870・古今六帖276、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄) 中君の御ありさま
  氣てもい可て可くな可らへる尓遣る月日
  むとのやう尓能ミおほえ可ふと起/\
  尓志多可ひとりのをもねをもおな
  尓おきふし徒ゝ者可なきことをも
  もと春ゑをとりていひ可ハしほそき
0002【もとすゑをとりて】−神楽譜本末(△△△&譜本末)の拍子あり哥なとよむに上句下句をいひかハす事也
  うさも徒らさもうちか多らひあハせ
  き古えし尓古そなくさむ可多もありし
  かお可しきことあハれなる布しをもきゝ
  志るもなまゝ尓よ(よ&よ)ろつ可きくらし」(1オ・1677@)

  ひとつをく多きておハし満さすな
  尓しかなしさよ里もやゝうちまさりて
  古ひしく王ひしき尓い可尓むとあ氣
  く流ゝも志らまとハれ多まへと尓登
  まるへきハ可起りあるわさなり个れハ志な
  連ぬもあさまし阿さりのもとより
0003【としあらたまりてハ】−文のことは
  あらまりてハな尓こと可おハしますら
  いのりハたゆミなく徒可うまつりい満
  ハひとゝ古ろのとをなや春可ら
  ねんしきこえさ春流なきこえ王ら」(1ウ・1677E)

  ひ徒く/\し可しき古耳い連て古れハわら
  ハへのくやうして者つをなりとて堂て
  つ連りてハいとあしうてうた盤王さ登可
  しくひき者なちてそ可き多
    尓とてあま多のを徒みし可は
0004【君にとて】−阿闍梨(右) 兼輔集都にハみるへき人もなき物越つねを思ひて春やきぬらん三条右大臣(左)(兼輔集116、花鳥余情・休聞抄・岷江入楚)
  徒年を王春連ぬ者つ王らひな御前
  よ見佐しめへとありいしとおもひ
  まハしてよ見い多し徒らむとおほせ
  多者えもいとあハれ尓て越佐り尓
  さしもお本さぬなめりとゆることの」(2オ・1677J)

  は越めて多くこのまし遣尓可起徒くし
  へる御文よりハ(ハ=もイ(墨)、もイ(朱))こよなくめとまりて
  もこほる連ハ返事可ゝせ
    このハ多れ尓可むな
0005【この春ハ】−中君
  か多み尓徒めるさ王らひ徒可ひ尓ろく
  とせさ勢いと佐可り尓尓本ひおほくお
  者する能さ満/\の御物おもひ尓春古し
  うちおもやせへるいとあて尓なまめ可し
  き氣色満さりて昔人尓もおほえ多満
  へりならへりしおりハとり/\尓て」(2ウ・1678B)

  佐ら尓に多まへりともさりしをうち
  わ春れてハふとそれ可とおほゆるまてかよひ
  へるを中納言と能ゝからをた尓とゝめて
  多てまつるまし可ハとあさゆふ尓
  古ひきこえめる尓おなしくハえたて
  まつり春くせさり个むよと
  多てまつる/\ハくちおし可るかのあ多
  里能能かよひくる多より尓ありさ
  満ハ多春きゝかハしひ个り徒きせ
  春おもひほ連あ多らしきとしとも」(3オ・1678G)

  いハすいやめ尓なむなへるときゝ
  ても遣尓うち徒遣のあさゝにハ
  志ハさり个りといとゝいまそあ者れもふ
  可くひ志ら流ゝハおハしますことの
  いとと古ろせくあり可多个れハ尓わ多し
  きこえむとお本し多ち尓多りいえんな
  とさハ可しき古ろすくして中納言
  尓あまることをもま多多れ尓可ハか多ら
  ハむとお本し王ひて兵部卿御方
  尓まいりへり志めや可なるくれなれハ」(3ウ・1678M)

  うちな可めハしち可くそおハし満し
  氣る佐うのと可きなし徒ゝ連いの
  御心よせなるむめの可をめておハするし
  徒えをおしおりてまいりへる尓本ひ
  のいとえん尓めて多きをおりお可しう
  お本して
    お流尓かよ婦者那な連や
0006【おる人の】−にほふ 中の君のことをおもひよせ侍り
  尓ハいて春志多尓にほへるとのへハ
    尓かことよせ遣る者那能えを
0007【見る人に】−中納言
  してこそおるへ可り个れ王徒らハしく」(4オ・1679D)
0008【心してこそ】−後ー 大方にをく白露も今よりハ心してこそみるへかりけれ(後撰291・是則集12、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚)

  とハふ連可ハしへるいとよきあ者
  ひなこまや可なる御物可多りとも耳
  なりてハ可の佐と能と越そまつ
  い可尓と見やハきこ盈中納言
  きし可多のあ可す可なしきこ
  可ミより个ふまておもひの多ぬよし
  おり/\尓徒遣てあハれ尓もお可しくも
  なミ王らひみと可いふらむやう耳
  きこえいてましてさハ可りいろめ可
  志くろなるくせハうへ尓て」(4ウ・1679K)
0009【人の御うへにてさへ】−(朱合点) 古今 我身からうき世の中と歎つゝ人のうへさへかなしかるらん(古今960、異本紫明抄・花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)

  佐へそても志ほるハ可り尓なりて可ひ/\し
  くそあひ志らひきこえめる
  遣尓そあハれ志り可本尓かすみ王
  多れるよる尓なりて者遣しうい徒る
  氣しきま多ふゆめきていとさむ遣
  尓おほとなふらもきえ徒ゝやミハあやな
0010【やミハあやなき】−(朱合点)
  多と/\しさなれと可多み尓きゝ佐し
  くもあら徒きせもの可多りをえハる
  遣やりハてもい多うふけぬ尓ためし
  あり可多可り遣る可能むつひをいてさり」(5オ・1680B)

  ともいとさのミハあらさり个むとのこりあ
  里遣尓ひな王りな御心
  らひなめる可し佐りな可ら
  ひてけ可しきうちもあきらむハ可
  里可つハなくさめま多あハれをもさまし
0011【さまし】−詞 増
  さ満/\尓可多らさ満のお可しき
  尓春可され多てまつりて氣尓尓あまる
  まておもひむ春本るゝことゝも春古し
  徒ゝ可多りきこえこよなくむ年のひ
  まあくちしも可のち可くわ多」(5ウ・1680E)

  志き古えてんとするのことと可多ら
  きこえいとうれしきと尓も
  なあいな徒可ら能あやまちとなん
  ふ多まへらる(△△&らる)ゝあ可ぬむ可しのこり
  をま多堂つぬへき可たもお本
  可多尓ハな尓こと尓徒遣てもよせきこ
  ゆへきとなんおもふ多まふるを
  ひなくやおほしめさるへきとて可能こ
  となおもひ王き楚とゆつり
  きてをも春古しハ可多りきこえたまへと」(6オ・1680L)

  い者せのもり能よふことりめい多りしよ能
0012【いはせのもりの】−(朱合点) いはせの森のよふこ鳥の事しかとかなひたる古哥侍らすと岩田森とかける本もありと(右) 古今 恋しく(く+ハ)きても見よかし人つてにいはせの杜のよふこ鳥かも(出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)引哥ニ合薫ニ中君事を姉ノ云置シマテハ(△&テハ)匂ニ語共会合ノ事をいふ語心也
  ことはのこし+多り(墨朱))个りうち尓ハ可くなくさ
  め可多きか多ミ尓氣尓さてこ可やう
  尓もあつ可ひきこゆへ可り个れとくやし
  きやう/\まさりゆ遣といまは可ひ
  なきものゆへ徒年尓かうのミおもハゝあ類
  ましきもこいてくれ可多め尓もあ
  ちきなおこ可満し可らむと者な
  さてもおハし満さむ尓徒遣てもまこと尓
  ひうしろきこえん可多ハまたゝ連可ハ」(6ウ・1681C)

  とおほせわ多り能ことゝもゝまう遣+せ(朱))
  せ可しこ尓もよき王可王らハなとも
  とめて/\ハゆき可本尓いそきひ堂
  連登い満ハとてこの布しみをあらし者
0013【いまはとて】−(朱合点)
0014【ふしみをあらしはてむ】−
(朱合点) かくしつゝ我世ハへなんすか原や伏見の里のあれまくもおし(古今981・古今六帖1288、花鳥余情・弄花抄・細流抄・休聞抄・紹巴抄孟津抄・花屋抄・岷江入楚)宇治ふる宮をあらさん事をいはんとてなり
  てむもいみしくほそ个れハけ可連
  と徒きせぬを佐りとてもめて
  ハく多こもりても遣可るましくあ
  さ可ら者てぬ遍き
  春ま井をい可尓お本しえ多るそと能ミ
  うら見き古え春こしハことハりなれ」(7オ・1681I)

  ハい可ゝ春へ可らむとひみ多れへりき佐ら
  きの徒い多ちころとあれハほとち可具
  なるまゝ尓ともの个しき者む
  ものこりゆ可しくみ年の可すミ能多つ
0015【たつをみすてんことも】−(朱合点) 「古 可すミ多つをみ春てゝ可りハき佐と尓春ミやなへる(朱)」(付箋02 古今31・新撰和歌35・古今六帖4374・和漢朗詠326・伊勢集303、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  み春てんこともをの可とこよ尓て多尓あら
  ぬ堂ひ年尓てい可尓ハしたな王ら
  ハれなることもよろつ尓徒ゝまし
  くひとつ尓おもひあ可しくら
  ふくも可きりあることなれハぬきすて
0016【ふくもかきりあること】−姉服三ケ月
  尓みそきもあさきちそするおやひと」(7ウ・1682@)
0017【みそき】−解除
0018【あさき心ち】−軽服を川の瀬にたとふ

  とろハ多てまつらさりし可ハこひしき
  ことハおもほえ可ハり尓もこの多ひ
  のふ可くそめむと尓はお本しのへと
  さす可尓佐るへきゆへもなきわさなれハ阿可
  春可なしきと可起りな中納言殿より
  くる満御前/\者可せなと多てまつれ
0019【はかせ】−太刀
  へり
    者可なしや可春ミのろも多ちしま尓
0020【はかなしや】−かほる
0021【かすみのころも】−服

  ひもとくおりもき尓个りけ尓いろ/\
0022【ひもとく】−除服事
  いときよら尓て多てまつれへりわ多り」(8オ・1682E)

  のほとの可つけともと/\しから
  ぬもの可ら志那/\尓こまや可尓お本しやり
  徒ゝいとおほ可りり尓つけてわ春連ぬ
  さ満なる御心よせのあり可多くハら可ら
  もえいとかうまてハお者せぬわさそ
  /\ハきこえ志らあさや可なぬ布る
  とも尓ハ可ゝ流か多を尓志めてきこ
  遊王可き/\も多てまつりな
  ひてい満ハととさ満尓なり多まハむを
  佐う/\しくい可尓こひしくおほえさ勢」(8ウ・1682K)

  ハむときこえあへり徒可ら王多り
  ハんことあ春とてのま多徒とめておハし
  多連いのまらうと井のか多尓おハする尓
  つけてい満ハやう/\ものなれて王れこ
  よりさき尓かうやう尓もひそめし可な
  とありしさ満のたまひしハえいて
  徒ゝさす可尓可け者なとのほか尓な
  ハはし多はさりしを我心もてあ
  やしうも遍多ゝ里尓し可なむ年い
  堂くひ徒ゝ遣ら可い者(者#(朱))ミせさ」(9オ・1683C)

  うしのあなひいてら類連ハよりて
  へとこの可越ハおろしこめ多れ者いと
  可ひなしうち尓も/\ひいてきこ盈
  つゝうちひそミあへりハまして
  よ本さるゝ御涙可ハにあ春のわ多りもお
0023【御涙のかハにあすのわたりも】−明日京へわたり給ハん事を川によせていふ
  ほえ者す本れ/\し遣尓てな可め布し
  へる尓古ろの徒もりもこ者可とな
  个れといふせ多まへら流ゝを可多ハしも
  あきらめきこ盈させくさめ
  やいのハし多くなさし者なせ」(9ウ・1683H)

  ひそいとゝあらちしりときこえ
  へれハ者し多しとおもハれ多てまつ
  ら無としもおもハ年といさやちもれ
  のやう尓もおほえ可きみ多里徒ゝいとゝ
  者可/\しからひ可こともやと徒ゝまし
  うてなく流し遣尓お本い多れといとお
  なとこれ可連きこえ可能さうし能く
  ち尓ていめむ志へりいと者つ可し遣
  尓な満めきてこの多ひハねひ満さり
  ひ尓个りとめもおとろくまて尓本ひおほく」(10オ・1683M)

  尓もにぬよういなあ那めて多のひと
  やとのミへるをひめみやハおも可遣さ
0024【おもかけさらぬ人】−故姫
  らぬとをさへおもひいてきこえ
  尓いとあハれとみ多てまつりきせ
  もの可多りなとも个ふハこといミ春へくやな
  といひ佐し徒ゝ王多らへきところち可
  くこのろ春くしてうつろひへ个れハ
0025【うつろひ侍へけれハ】−三条宮造出て薫渡
  可あ可徒き/\しき能いひめる
  尓ことのおり尓うと可らすおほしの
  多まハせハむ可きりハきこえさせ」(10ウ・1684E)

  う氣多まハりてすくさ満本しくな
  るをい可ゝハお本しめすらさ満/\
  尓侍世れ盤(盤$(朱))あいなくやなとひと可多尓
  もえこおもひきこえへ者
  やと越ハ可れしと思心ふ可くち可具
0026【やとをはかれし】−(朱合点) 古今 今そしるくるしき物と人またん宿越ハかれすとふへかりけり(右)(古今969・新撰和歌303・古今六帖1290・業平集65・伊勢物語89、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄) 中務集 花のかの妻越わすれぬ(△&ぬ)春ことに宿越かれにし君をしそ思ふ(左)(出典未詳、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚)
  なとの多まハする尓徒遣てもよろつ
  見多れりてきこえさせやるへき可多も
  なくな/\いひ遣ちてい見しく
  ものあハれとおもひへる遣ハひないとよう
  おほえへるを可らよそ能もの尓し」(11オ・1684J)

  徒るといとくやしくひゐ多まへれと可ひ
  な个れハよ能古と可けてもい者すわ春れ
  尓个流尓やとゆるまて遣さや可尓も
  へり御前ち可きこう者いの可も
  つ可しき尓うくひ春多春くし
  可多け尓うちなきて王多るめ連ハまして
  者るやむ可しのとをまとハしふとち
0027【はるやむかしのと】−(朱合点) 「やあらぬ能者るならぬ我身日とつハもとのして(朱)」(付箋03 古今747・古今六帖2904・業平集37・伊勢物語5、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  能御物可多り尓おりあハれなり可しのさと
  い類ゝ尓者那の可もまら尓本ひも
0028【たちはなゝらねと】−(朱合点)
  ち者なゝ羅ねむ可しひいてゝ(ゝ$ら(朱))類ゝ徒」(11ウ・1685A)

  満な徒連/\のまきらハし尓ものう起
  なくさめ尓とゝめてもてあそひ
  しものをな尓あまりへハ
    もあらし尓満よふや満佐と尓
0029【見る人も】−中君
  む可しおほゆる可そするいふとも
  本の可尓て/\きこえるをなつ
  可し遣尓うちすんしなして
    ふれしハか者らぬ尓本飛尓て
0030【袖ふれし】−かほる
  ねこめう徒ろふ屋とやことなる多え
0031【ねこめうつろふ】−後 垣越にちりける花を見るよりハねこめに風のふきもこさなん伊せ(後撰85、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  さ満よくのこひ可くしてとお本」(12オ・1685G)

  くもあらま多もな越可やう尓てな
  な尓古ともきこえさせよ可るへきな
  きこえをきて多ち多まひぬわ多り尓
  あるへきことゝも/\尓の多まひをく
  の宿もり尓可のひ遣可ちのと能井とハ
  佐ふら婦へ个れハこのわ多り能ち可きみさ
  うともと尓とゝもゝのひ阿
  徒遣なこまや可なることゝもをさへ佐多
  めをきそ可やうのとも可け
  春な可きいのちいと徒らくおほえ」(12ウ・1685L)

  もゆゝ志く見思ふへ个れハいまは尓ある
  とも尓志らしとて可多ちも
  へて遣るを志井てめしいてゝいとあハれとみ
  連いのむ可しも能可多りなとせさせ
  て古ゝ(△ゝ&古ゝ)尓ハなを/\ハ満いりくへきいと多つ
  きなくほそかるへき尓可くても能し
  者むハいとあハれ尓うれし可るへきこと尓な
  なえもいひやら春ないとふ耳
0032【いとふにはえて】−(朱合点) 拾 あやしくもいとふにはゆる心哉いかにしりてかおもひたゆへき(右)(後撰608・拾遺集996、河海抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚) 拾 大方の我身一のうきからになへての世をも恨つるかな(左)(拾遺集953・拾遺抄346)
  者え△(△#)のひいのちの徒らくま多
  い可尓せよとてうちすてさせ个んとう」(13オ・1686C)

  らめしくなへておもひへ志つ
0033【なへての世を】−(朱合点) 「おくにもある御返し不審まちかくこへしイ(墨)/ お本可多能う起日とつのうき可らへてのをもうらミつる(朱)」(付箋04 拾遺集953・拾遺抄346、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  む尓徒ミもい可尓ふ可くむとおもひ氣
  流こととも越うれへ可遣きこゆるも閑多く
  なし希な連といとよくいひなくさめ
  い多くねひ尓多れとむ可しきよ遣な
  遣るなこりをそき春て多れ者ひ多ひ
  のさ満可ハれる尓春古し王可くなり
  て佐る可多尓みやひ可なおもひわひてハ
0034【みやひかなり】−潤麗
  なと可ゝ流さ満尓もなし多てまつらさり
  个むれ尓のふるやうもやあらましさて」(13ウ・1686I)

  も可尓不布可くか多らひきこえあら
  志なひとか多なら春おほえこ能
  さへうらやまし个れハ可くろへ多ちやう
  をす古しひきやりてこ満可尓そ可多ら
  遣尓む氣尓ひ本遣多るさ満な可ら
  うちいひ多氣色よういくちおし可ら
  春ゆへあり氣るこりとみえ多り
    さ起尓多をなけ者
0035【さきにたつ】−弁の尼(右) さきにたつ涙の道にさそわれてかきりの旅に思ひけるかな(左)(兼澄集32、休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
  耳をくれぬいのちなましとうち
  ひそミきこれもいと徒ミふ可くなる」(14オ・1687@)

  こと尓こかのきし尓い多ることなと閑
  佐しもあるましきこと尓てさへ布可き
  楚こ尓志つミすくさむもあひなすへ
  てなへてむなしくおもひとるへき
  尓なむとの
    をな遣む尓志つミても
0036【身をなけむ】−中納言返し(右) 拾 涙川底のもくつとなりはてゝ恋しき瀬々になかれこそすれ(すれ#)順(拾遺集877・拾遺抄313、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  しきせゝ尓王春れしもせしい可な
  む尓春こしもひなくさむることあ
  里なむと者てもな古ゝちし可へら
  可多もなくな可められてもくれ尓个れと」(14ウ・1687E)

  すゝろ尓多ひ年せ(朱)も(墨)、も#(朱))のと可むることやと
  ひな个れハ可へりおもほしのへるさ満
  を可多りてハいとゝくさめか多くくれ満
  とひ多ミ那ハ古ゝろゆき多る个しき
  尓ても能ぬひいとなミ徒ゝおひゆ可める可多
  ちも志ら徒くろひさ満よふ尓いよ/\
  や徒して
    ハミ那いそ起多めるうら
0037【人ハミな】−弁の尼(右) 後 から衣袖しの浦(=周防)のうつせ貝独りしほたるゝ海人かな(出典未詳)
  飛とりもし本を多るゝあま可なとう連
  へきこゆ連ハ」(15オ・1687J)

    志ほ多るゝあ満の古ろも尓ことなれや
0038【しほたるゝ】−中君(右) 後 心からうきたる舟にのりそめてひといも浪にぬれぬ日そなき小町(左)(後撰779・古今六帖1816・小町集2、河海抄・弄花抄・細流抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  うき多尓ぬるゝ(△&袖世尓春見
  徒可むこともいとあり可多可るへきわさと
  おほゆ連ハさ満尓志多可ひて古ゝを者あ
  連者てしとなんおもふを佐らハたいめん
  もありぬへ个れと志ハしのほとも古ゝろ
  ほそくてちとまりふをを具
  尓いとゝもゆかすな可ゝる可多ちなる
  も可なひ多ふる尓志も堂えこもら
  ぬわさなめるをな越よ能つ年尓おもひ」(15ウ・1688B)

  なしてとき/\もへないとなつ
  可しく可多らむ可しの能もて徒可ひ
  飛しさるへきてうとともなとハミ那
  このゝめ越き可くより布可く
  ひ志つへるをミれ(れ#、$(朱))さきもとり
0039【さきの世も】−(朱合点) 君とわれいかなる事越契けん昔の世こそしらまほしけれ(新千載1033・和漢朗詠739、河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  王き多も能しひ个む登
  ふさへむつましくあハれ尓なんとの
  尓いよ/\王らハへのこひてなくやう尓
  さめむ可多なくをほゝ連い多里みな可き
  ハら飛よろつとり志多ゝめてくる満とも」(16オ・1688G)

  よせ御前/\四位五位いとおほ可り御身
  徒可らいみしうおハしまさ満ほし个れと
  こと/\志くなりてな可/\あし可るへ个れハ多ゝ
  志のひ多るさ満尓もてなしてもとなくお
  本さる中納言とのよりも御前可すお本
  く多てまつれへりおほ可多の古とをこ
  そみやよりハお本しを起徒めれこまや可那る
  うち/\能あつ可ひハ多ゝこの殿よりお
  ひよらぬ古となふらひきこえくれ
  ぬへしとうち尓もにももよ本しきこゆる」(16ウ・1688L)

  あハ多ゝ志くい徒ちならむともふ
  いと者可なく可なしとのミおもほえ
  くる満尓のるいふのといふのい婦
    ありふれハうれしきせ尓もあひ遣るを
0040【ありふれハ】−かゝる世も有ける物をとまりゐて身越うち川と思ひけるかな(右) (出典未詳、河海抄・細流抄・孟津抄・岷江入楚) 後 心ミに猶おりたゝむ涙川うれしき瀬にもなかれあふやと(左)(後撰612、異本紫明抄・河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  をうち尓なけてまし可可ハうちゑ見
  多るをのあま能者えこよなうもある
  徒きなうも見給いまひとり
    春き尓し可しきことも王春れね
  个ふ者たまつ行心可ないつれもとしへ
  多/\尓てみな可能可多をハよせま+本(朱))し+く(朱))」(17オ・1689D)

  きこえめりしをいまは可くおもひあら
  めてといミ春るもう能やとおほえ
  ハい者れハ春みちの者る遣く
  者个しきみちのありさ満を見給ふ尓(+そ)
  徒らき尓のミひなされしな可の
  かよひをとハりの多まなり个りとすこ
  しお本し志られ个る七日さや可耳
  佐しいて多るお可しく可春ミ多るを
  徒ゝいとと越き尓なハすく流し个れハ
  うちな可められて」(17ウ・1689J)

    な可む連ハよりいてゝゆく徒きも
0041【なかむれハ】−中君
  よ尓春見王ひて尓こいれさ満可ハりて
  徒ゐ尓い可な可らむとのミあやうく春ゑ
  うしろめ多きにし古ろな尓ことを可
  もひ个んとそとり可へさま本しきやよひ
0042【とりかへさまほしき】−(朱合点)
  うち春きてそおハし徒き多るみも志ら
  さ満尓めも可ゝやくやうなる殿徒くり能み
0043【殿つくりのみつ葉よつは】−(朱合点)
  よつ者なる尓ひきいれて
  し可とまちおハしまし个れハくる満能
  もと尓徒可らよらおろし多て」(18オ・1690B)

  まつり志つらひなとあるへき可きり
  して女房の徒本年/\まて御心ゝめさせ
  个るほと志るくいとあらま本し
  遣ない可者可り能こと尓可とへる
  ありさ満の尓ハ可尓可く佐多まりへハお本
0044【おほろけならす】−不少縁(ヲホロケナラス)
  ろ遣な春おほさるゝことなめりと世人
  尓くゝおもひおとろき个り中納言三条
  のこの廿のほと尓わ多り者む
  とてこのころハひゝ尓おハし徒ゝミふ尓
  のち可きほとなれハ遣ハひもき可むとて」(18ウ・1690G)

  よふく流まておハし个る尓てまつれへる
  御前/\可へり満いりてありさ満なか多り
  きこゆい見しう御心尓いりててな
  なるをきゝ尓も可つハうれしき可ら
  さす可尓我心可らおこ可満しくむ年
  うち徒ふ連て尓も可なやと々ひとり
0045【物にもかなやと】−(朱合点) 古今 取返す物にもかなや世中を有しなからの我とおもハんイ(イ#)(出典未詳、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  こ多れて
    志なてるや尓本のみつうミに古く
0046【しなてるや】−中納言(右) 万 しなてるやにほの水うミにこく舟のまほならすとも(ならすとも#)あひ見てし哉(哉#)人丸(出典未詳、原中最秘抄・河海抄・弄花抄・一葉抄・細流抄・休聞抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
  ま本なともあひをとそいひ
  く多さま本しきのおほ殿を」(19オ・1690L)
0047【くたさ】−腐
0048【右のおほ殿】−夕

  みや尓堂てまつりハんここの尓とお
  ほし佐多め多り遣る尓可くおもひの本か
  能このほとよりさ起尓とお本し可本尓
  可し徒き春遍ひて者なれおハ春れ者
  いとも能し遣尓おほし多りときゝいと
  おし个れハ/\多てまつりもきの
  事世尓ひゝきていそへるをのへ者む
  も王らへなるへ个れハ廿日あま(△&ま)里尓きせ
  多てまつりおなしゆ可り尓めつらし遣な
  くともこの中納言をよそ尓ゆつらむ可」(19ウ・1691D)
0049【この中納言】−夕ー心六君を

  くちおしき尓さもやなしてまし登し
  古ろ志れぬも能尓ひ个むをも
0050【人】−大ー
  してものほそくな可めゐふなるを
  おほしよりて佐るへきして氣色
  と个れと者可なさ越めにち可く
  し尓いとうくもゆゝ志うお本ゆ連
  ハい可尓も/\さやうのありさ満ハう具な
  とすさまし遣なるよしきゝい可て
  可このきみさへおほな/\とい徒ることを
  うくハもてなすへきそうら个れと」(20オ・1691J)

  志多しき可らひな可らさ満能いと
  者つ可し遣尓へハえ志井てしも
  きこえうこ可しハさり个り佐可りの
  程二条さくらやりぬし
0051【ぬしなきやとの】−(朱合点) 拾ー 浅茅原ぬしなき宿の桜花心やすくや風にちるらん(拾遺集62・拾遺抄・恵慶集38、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・花鳥余情・弄花抄・一葉抄・細流抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
  なやとのまつやらへハやすく
0052【心やすくやなと】−(朱合点)
  やなとひとりこちあまりてもと耳
  まいりへり古ゝ可ち尓おハしまし徒きていと
  よう春見なひ尓多れハめやすの王さや
  と多てまつる可らいのい可尓そやお本
  ゆるひ多るそあやしきやされと志ち」(20ウ・1692A)
0053【しち】−実

  の御心者えいとあハれ尓うしろやすくそ
  ひきこ盈遣るな尓くれと御物可多りき
  こえ可ハしひてゆふ徒可多ハうちへまいり
  者むとて御車佐うそくして/\おほ
  くまいりあつまりなと春れハちいて
  多いの御方へ満いりへり佐との遣ハひ
  き可へてみ春のうちくゝ春見なしてお可
  遣なる王ら者の春き可け本のみゆる
  うそこきこ盈へ連ハ志とね
  いてゝむ可しの志れるなる遍しい」(21オ・1692F)

  てきて御返きこあさゆふのへ多てもある
  ましうへら類ゝほとな可ら能こ
  となくてきこ盈させむも/\なれ/\
  しきと可めやと徒ゝ見ほと尓よ能な
  可かハりに多るちのミ楚しるや御前
  のこ春ゑも可すミへ多てゝみえる尓あハ
  連なることおほくもる可なとき古盈
  てうちな可めても能し遣しき
  流し遣なるを遣尓おハせまし可ハお本徒可
  な可ら可へりか多ミ尓いろとりの」(21ウ・1692L)

  こゑをもおり尓つけ徒ゝ春古しゆきてすく
  し徒へ可り个るをなお本しいつる尓つけ
  てハひ多ふる尓多こもりへりしすま井
  のほそさよりもあ可す可なしうくちおし
  きとそいとゝ満さり个るひともよ能つ年
  尓と/\しくなもてなしきこえさせ
  そ可きりな御心ほとをハいましもこ
  てまつり志らまふさ満をも
  多てまつら婦(△&婦)へ个れなきこゆ連登
  徒てふと佐しいてきこえんこと」(22オ・1693C)

  のなを徒ゝましきや春らふ本
  と尓いてハむとてま可り志尓王
  多りへりいときよらひき徒くろひ遣
  佐うしみる可ひあるさ満な中納言
  ハこ多尓なり个りと見給と可む遣
  尓佐し者なちてハい多し春ゑへるあ多
  里尓ハあまりあやしとおもふまてうしろ
  や春可りしよせをめハおこ可満し
  きともやとお本ゆ連とさす可尓む遣
  尓遍多てお本可らむハ徒ミもこそうれち可や」(22ウ・1693I)

  可尓てむ可し可多りもうちか多らへ可し
  なきこ盈もの可らさハありともあまり
  ゆるひせんもま多い可尓そうた可ハし
  き志多の尓そあるやとうち可へしの
  へハひと可多なす王徒らハし个れと我御
  尓もあハれふ可くひ志ら連尓こゝ
  ろをいましもをろ可なるへきな
  のひのふめるやう尓い尓しへの
  可ハりとすらへきこえかうおもひし
  里个りとミ盈多てまつる布しもあら」(23オ・1694@)

  ハやとハおほせさす可尓と可くやと可多/\
  尓や春可らすきこえへハく流しう
  お本され个り

以哥詞為巻名但詞ニワ蕨トアリ
薫廿一歳の春の事あり 異本」(23ウ)

二交了(朱)」(前遊紙1オ)