First updated 03/10/2002
Last updated 08/20/2025
渋谷栄一翻字(C)

  

橋姫


凡例
1.『大島本 源氏物語』(角川書店 平成8年5月)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名と区別するために太字で表示した。
3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で表示した。
4.変体仮名は字母で表示した。
5.片仮名はそのまま片仮名で表示した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、より元の字母の漢字に近い字形には「1」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「2」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記等は小字体で表示した。
8.本文中の朱点及び朱書きは朱色で表示した。
9.行頭に同字が並ぶ場合に、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。


「はし」(題箋)

  その古ろ尓か春まへられ者ぬ布る
0001【そのころ】−八宮△居時分をいふへし
0002【かすまへられ給はぬ】−桐壺御門の御子の数にかすへ△(△#ラ)れ給ハぬとなり
  おハし个りはゝ可多なともやんことなくも能
0003【はゝかたなとも】−左大臣の女と見えたり
  志多まひて春ちこと那るへきおほえな
  お者し遣るをと起う徒りて世中尓者した
0004【はしたなめられ】−半の心なり
  なめられ个るまきれ尓/\いとなこりな
  くうしろミなとものう羅めしき/\
  尓てか多/\尓徒氣けて越そむきさりつゝ
  おほや氣わ多くし尓よりなく佐し者(△&者)
  な堂れへる屋うなき多能可多もむ可
0005【きたのかた】−姫ー母
  志の大臣む春めなり个るあハれ耳古ゝ」(1オ)

  ろ本そ具おや多ち能おほしをきて多り
0006【おやたち】−北方ノ
  志さ満なおもひいてふ尓多としへな
  おほ可れと布るき御契のふ多つ
  者可りをうき能なくさめ尓てか多ミ耳
  なく堂のミ可ハしへり登しころふる尓
  こも能しハてもとな可り个れハ佐う/\
  志く徒連/\なるなくさめ尓い可てお可し
  からむちこも可なそと起/\おほし
0007【宮】−八宮
  の多まひ遣流尓めつら志く女君のいとう徒
0008【女君】−上巻之君
  くし氣なるむまれへりこれを可起り」(1ウ)

  なくあハれとおもひ可し徒きゝこえ
  志徒ゝき遣しき者見ひてこ能多ひ
  ハおとこ尓てもなとおほし多る尓おなしさ満
0009【おなしさまにて】−中君誕生事(明融臨模本0005)
  尓て堂ひら可尓ハ志多まひな可羅いとい
  く王つらひてうせあさましうお
0010【うせ給ぬ】−北方御事
  ほしまと婦ありふる尓徒氣てもいとはし
0011【ありふるにつけても】−北方誕生事(明融臨模本0006)
  多なく多へ可多起おほ可るれと
  春てか多くあハれなるありさ満
  さ満尓可けとゝめらるゝ本多し尓てこそ春
  くしきつ連ひとりと満りていとゝすさ満」(2オ)

  志くもあるへき可那い者けな/\をも
  ひとりはくゝ見多てむほと可起りある
  ていとおこ可ましう王ろかるへきことゝお
  ほし多ちて本ひもとけま本しう志多ま
  ひ个れとみゆ徒るつる(朱)、#(墨)可多(朱))なくての古しとゝめむ
  をいみしうお本し多ゆ多ひ徒ゝとし
  もふ連ハをの/\お21よすけ満さりふさ満
0012【およすけまさり給ふ】−姫君達の御事
  可多ちのうつくしうあらま本しき越
  連の具さめにてをの徒可らすくし
  尓むまれをはさふら婦/\も」(2ウ)

  いてやおりふしうくなとうち徒ふやき
0013【いてや】−さてもなといふ詞なり
0014【心うくなと】−古今 いて我を人なと(古今508・古今六帖1804、花鳥余情・岷江入楚)
  て尓い連てもあつ可ひき古えさり个れと
  可き里能さ満尓てな尓お本し王可
  さりしほとな可らこれをいと心くるしとおも
  ひて多ゝこのを可多見給ひて
0015【たゝこの君を】−北方の遺言
  あハれとおほせ登ハ可り堂ゝひとことな
  尓き古えをきたまひ个れハさ起の
  も徒らきおりふしなれとさるへき尓こそハ
  あり遣めとい満ハとみえしまていとあハれと
  思ひてうしろめ多氣尓の多まひしをと」(3オ)

  お本しいて徒ゝこのをしもいと可な
  う志多てまつり堂まふか多ちなむ満こと尓
  いとうつくしうゆゝしきまてものし
  个るひめ者せ志つ可尓よしあ流可多
  尓てみるめもてなしも遣多可く心尓く起さ満
  そ志へるい多ハしくやむことなき春ち
0016【やむことなきすち】−いもうと姫君の事也
  ハ満さりていつ連をもさ満/\尓おもひ可し徒
  ききこえへと可なハぬおほくとし
  尓そへてのうち(朱))さひしくのミなり満
  さ流さふらひしも多つきな起ち春」(3ウ)

  流尓盈志のひあへ春徒き/\尓志多可ひて
  ま可てちり徒ゝ王可めのともさ流さ
0017【わか君】−妹
  者起尓者可/\しきをしもえりあへ
  ハさり个れハほと尓つけ多るあさゝ尓
0018【心あさゝにて】−騒きによりて心のかは(△△&かは)るをいへり
  をさな起ほと越み春て堂てまつり耳
  个れハ堂ゝそ者くゝ見佐春可尓
0019【はくゝみ】−養育<ハクヽム> 省同
  ひろくおもしろき能いけとの个し
  きハ可りむ可しに可ハらていとい多うあれまさる
  をつ連/\とな可め氣いしなともむ年
0020【けいし】−家司
  む年しきなきまゝ尓あをや」(4オ)

  可尓志个りの志のふそ盈可本尓あ越
  み王多れるおり/\尓つけ多るもみち能
  をも可をもおな者やしひし
  尓こなくさむこともおほ可り个れい登ゝ
  志く佐ひしくより徒可む可多那な起まゝ
  尓可さりハ可りをわさとせさせ
  あけくれおこな可ゝる本多しとも尓かゝ
  徒ら婦多尓おもひの本可尓くちおしう王可
  可らも可那者さり个るとおほゆるを
  まひて(#)可めいてい満佐ら尓と能ミ」(4ウ)

  としにそへて世中をおほし者なれ徒ゝ
  ハ可りハひし里尓なり者てたまひて
  のうせたまひ尓しこ多ハ連いの
  さ満なる者えな堂ハふ連尓てもお本
  しいてハさり个りと可佐しもわ可る類
  本との可なしひハま多尓たくひな起やう
  尓能ミこそハお本ゆへ可めれとありふれハさの
  みやハ猶世人(△&)尓なすら婦御心徒可ひをし
  ひていと可くみくるしく多つきな
  きのうちもをのつ可らもてなさ類ゝ」(5オ)

  わさもやとハもときき古えてくれ
  と徒き/\志くき古えこつとも($ひ(朱))に
  ふ連ておほ可連とき古しめしいれさり个り
  御念春のひま/\尓ハこの多ちをもてあ
  そやう/\およす希へハとならハし
  うちへん徒きなと者可なあそひわさ
0021【へんつき】−篇突
  尓つけて者へとも越み多てまつりふ尓・
  ひめらう/\しくふ可くおもり可尓みえ
  多まふ王可ハおほと可尓らう多けな
  さ満してもの徒ゝミ志多る遣ハひ尓いとう徒」(5ウ)

  くしうさ満/\尓おハすのう羅ゝ可な
  可け尓とりともの者ねうち可ハし
  徒ゝをの可志ゝ佐え徒るこゑなと越つ年ハ
  者可なきこと尓み多まひし可とも
  ひ者な連ぬをうらやましくな可め
  て多ち尓とゝもをしへきこえ堂
  まふいとお可し遣尓ちひさ起本と尓とり
  とり可起ならしふも能ゝねともあハれ耳
  お可しくきこゆ連ハをうけたまひて
    うち春てゝ徒可ひさり尓とりの」(6オ)
0022【うちすてゝ】−宇治宮

  可りのこ能尓多ちをくれ个ん徒くしな
0023【かりのこ】−鴨子の事也
0024【この世に】−子によせたり
0025【心つくしなり】−うつほ第二かひの中に命こめたるかりの子ハ君かやとにそかへさゝらなん(宇津保物語25、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚)
  やとめをしのこひ可多ちいときよけ尓
  おハしますとしおこなひ耳
  屋せ本そり尓多れとさてしもあて尓
  な満めきて多ちを可し徒き御心
  者え尓な越しのなえ者めるをきひて
  志とけなさ満いと者つ可し氣ひめ
0026【ひめ君】−姉
  君御すゝりを屋をらひきよせててな
  らひのやう尓可起ませふをこれ尓可き
  春ゝり尓は可きつけさなりとて可ミた」(6ウ)
0027【すゝりにはかきつけさなり】−硯をハ文殊のまなこといへり みる石の面に物ハかゝさりきふしの楊枝ハつかハさらめや 菅(出典未詳、河海抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)

  てまつりへハ者ちらひて可起多まふ
    い可て可くす多ち个るそふ尓もう起
0028【いかてかく】−姉君
0029【うき水とり】−身によせたり
  とりのをそしるよ可らねその
  おりハいとあ(+ハ)連なり个り・てハおいさ起みえて
  ま多よくも徒ゝ遣者ぬほと王可とか
0030【わか君】−妹
  きたまへとあ連ハい満春古しおさ那遣尓
  佐しく可きいてへり
    なく/\も者ねうちきするくハ
0031【なく/\も】−中君
  そ春もり尓なりハ者てましとも
0032【すもりになりハはてまし】−拾七 鳥の子ハまたひななから立ていぬかいのみゆるハすもりなりけり(拾遺集383・拾遺抄478、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  なな盈者見ておまへ尓ま多」(7オ)

  なくいとさひしくつれ/\遣なる尓さ満/\
  いとらう多け尓ても能し堂まふをあハれ尓
  くるしうい可ゝおほさゝらんを可多て尓
  多まいて可つよミ徒ゝ佐う可をしひめ
0033【さうか】−昌歌
  尓ひ王わ可尓佐うのま多おさ那
  个れとつ年尓あハせ徒ゝらひへハきゝ尓
  くゝもあらていとおかしくきこゆちゝみ可と
0034【ちゝみかとにも】−これよりハ昔の事をいへり
  尓も女御とくをくれき古えひて者可
  者可しきうしろミ能とり多て多るお者勢
  さり个れハさゑなとふ可くも盈ならひ多」(7ウ)

  満ハすまいて世中にすミ徒く御心をきてハ
  い可て可ハ志り多まハむ多可きときこ
  流な可尓あさましうあて尓おほと可なる
  やう尓お者春れハ布るき可ら
  おほちおとゝのそう婦んな尓や可やと
0035【おほちおとゝ】−母方大臣
  徒きすまし可り个れとゆくゑもな者可
  な具うせ者てゝてうとな登者可りな
  わさとうるハしくてお本可り个る満いりと
  ふらひきこえよせ多てまつるもな
  つれ/\なるまゝ尓う多徒可さのものゝ志とも」(8オ)
0036【うたつかさ】−雅楽司<ウタツカ>
0037【ものゝしとも】−琴笛等

  とやうの春くれ多るをめしよせ徒ゝ者可
  きあそひ尓をいれておいゝてへ連
  ハの可多ハいとお可しう春くれたまへり源氏
  のおとゝ能おとうと尓おハせしを連せ
0038【おとゝ】−藤なり
  東宮尓おハしましゝと起春佐く
  おほきさ起のよこさ満尓お本し可まへて
0039【おほきさき】−二条
  世中尓多ちつきふへく王可
  きもて可し徒き多てまつり个るさハ起尓
  あひなくあな多さ満の可らひ尓ハ佐し
0040【あなたさまの】−源氏
  者な多れひ尓个れハいよ/\可能徒き/\尓」(8ウ)

  なり者てぬる尓て盈ましらひハ春
  ま多このとしころ可ゝ流ひし里尓なり
  ハてゝい満ハ可きりとよろつをお本し春て
  多り可ゝるほと尓春見や遣尓氣
0041【宮やけにけり】−焼失事(明融臨模本0017)
  里いとゝしきよ尓あさましうあえな
  てうつろひすミふ遍きのよろしき
  も可り个れハうちといふところ尓よしある
0042【うちといふところに】−移住宇治事(明融臨模本0018)
  佐とも多まへり个る尓わ多りおもひ
  春て堂まへるよなれともい満ハとすミ者
  なれなんをあハれ尓お本さるあしろ能遣」(9オ)

  ハひち可くみゝ可し可満しきのわ多り尓
  て志つ可なる日尓可那ハぬか多もあれと
  可ゝハせもみち農な可れ尓もをや
  流堂より尓よせていとゝしくな可め
  里本可能ことな可く多えこもりぬる
  の春ゑ尓もむ可し能も能しハまし可
0043【むかしの人】−北方
  ハとおもひき古え堂満ハぬおりな可り个り
    みし宿も个ふり尓なり尓しを
0044【みし人も】−宇治宮
  とて我身きえのこり个んい个る可ひ
0045【いけるかひなく】−(朱合点) 大和 雲井にてよそふる比ハ五月雨のあめの下ニそいけるかひなき(大和物語168、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  くそお本しこ可るゝやいとゝ山可さなれる」(9ウ)
0046【山かさなれる】−六帖五 月よミの光ニきませ足引の山かさなりてと越からなくに(古今六帖2841、花鳥余情・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)

  春み可尓多つ年満いるあやしき
  春なとゐな可ひ多る可つとものミまれ尓
0047【まれになれまいりつかうまつる】−大和 しほかまの浦ニハ海人のたえニけんなと漁のみゆる時なき(大和物語81、河海抄)
  なれまいり徒可うまつるみねのあさきりハる
0048【みねのあさきり】−(朱合点) 古今 かりのくる嶺の朝霧たえすのミ思つきせぬ世中のうさ(明融臨模付箋01 古今935・新撰和歌255・古今六帖634、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  流おりなくてあ可しくらしたまふ尓この
0049【うち山にひしりたちたるあさり】−喜撰隠居宇治山持密呪食松葉得仙道云々 古今 我庵ハ都(古今98・古今六帖885、花鳥余情・弄花抄・一葉抄・細流抄・孟津抄・岷江入楚)
  ちひし里多ち多るあさり春ミ个りさへ
  いと可しこくてよのおほえも可ろ可らね
  とおさ/\おほや遣こと尓もいて徒可へ春
  古もりゐ多る尓この能可くち可き本と尓
  春ミさひしきさ満尓堂うとき
  王さ越せさせつゝもんをよ見ならひ」(10オ)

  堂まへハうと可りきこえてつ年尓まいる
  としころまなひ志りへるともの
  布可きときき可せ多てまつりいよ
  いよこ(の&こ)ののいと可りそめ尓あち起なき
  こと越志ら春れハ者可りハ者ち春の
0050【心はかりハ】−宇治宮詞
0051【はちすのうへ】−
(朱合点) 拾遺 けふよりハ露の命もあしからす蓮の上の玉とちきれハ実方(拾遺集1340・実方集5、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 同 一たひも南無阿三陀仏といふ人の蓮のうへにのほらぬハなし空也上人(拾遺集1344、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚)
  うへ尓日の本りにこりなも春見
  ぬへきをいと可くおさなき/\をみ春て
  むうしろめ多さハ可り尓な盈ひ多みち
  尓可多ちをも可へぬなへ多てな可多り
  志このあさりハ連せいも志多しく」(10ウ)

  さふらひて御経とをしへきこゆる(=奉る)
  个り尓いて多る徒ゐて尓満いりて連いのさ
  流へきふミならむしてとハせふことも
0052【ふみ】−文
  ある徒ゐて尓のいとかしこくい遣う
0053【八の宮の】−聖物語申
0054【ないけう】−内教(明融臨模本0021)
  の佐えさとりふ可くも能し个る可那さるへ
  き尓てむまれ多まへる尓やも能し
  むふ可くひ春ましへるほと満こ
  のひし里のを起て尓なむみえとき
  こいま多可多ちハ可へた満ハすやそくひ
0055【いまたかたちは】−院御詞
0056【そくひしり】−東坡山谷なとも身つから有髪僧在家僧なと詩ニつくれり
  し里と可この王可き/\のつけ多」(11オ)

  あハれなることの多まハすさい相中
0057【さい相中将】−かほる大将の事也
  御前尓さふらひ王れこ世中
  をはいとすさましう日志りな可らおこな
  ひな尓め登ゝめらるハ可りハ徒とめす
  くちおしくて春くしくれと志連春お
  もひ徒ゝくな可らひし里尓な
  のをきてやい可尓とみゝ登ゝめてきゝた
0058【いかにとみゝとゝめてきゝたまふ】−我身ニおもひくらへてきゝたまふ也
  まふ出家佐しハもとよりも能しへる
0059【出家の心さしハ】−阿闍梨詞
  を者可なきこと尓おもひとゝこ本りい満と
  なりてハくるしき女子ともうへを」(11ウ)

  盈おもひ春てぬとなんなけきり多まふ
  とそう春佐春可尓も能ゝねめつるあさり尓
  て遣尓者多このひめ多ちのことひき
  あ者せてあそひへるなミ尓きをひて
  き古えいとおもしろくこくらく
0060【こくらく思ひやられ】−[辷-一+景]迹也すくれたる心ニいへり
  屋ら連やとこ多いにめつ連者・み可登
0061【こたい】−古代也
0062【みかと】−冷院号後経言也
  ほゝゑみひてさるひし里のあ多り尓
  おひいてゝこのよ能可多さ満ハたと/\し閑
  らむ(+と)おし者可らるゝを可し能ことや
  うしろめ多くおもひ春て可多かたくもて王つ」(12オ)

  らひらんをもし志ハしもをくれむほと
  ハゆつりやハ志多満者ぬなとその多まハする
  こののみ可とハ能みこ尓そおハしまし个る
0063【院のみかと】−冷
0064【十のみこ】−ウ
  春佐くのこ六条院あつけき古え
  入道めしをお(/\&お)も本しいてゝ
0065【入道の宮】−女三宮御事
  能多ちを可那徒連/\なるあそひか
  多起尓なうちお本し个り中将君中/\
0066【中将君】−かほる御事
  みこのおもひ春ましたまへらむ御心者え
0067【みこ】−八宮
  を多いめむしてみ多てまつらハやとおもふ
  そふ可くなりぬるさてあさりの可へりい流」(12ウ)

  尓も可なら春満いりてならひきこゆへく
  徒うち/\尓も个しきハり堂まへな
  多らひ多まふみ可とのとつて尓あハれ
0068【みかとの御ことつて】−院遣状於宇治宮事(明融臨模本0027)
  なる春満井を徒て尓きくことな
  き古え堂まうて
    をいとふ尓かよへともやへ多つ
0069【世をいとふ】−院御門
  や遍多つるあさりこの徒可ひ
  をさき尓多てゝ可能尓満いりぬ能め
  るきハのさるへき能徒可ひ多尓まれ
  可け尓いとめつら志くまちよろこひ」(13オ)

  尓つけ多るさ可ななとしてさ流可多
  尓もて者やし給御返
    あと堂えて春むとハな个れとも
0070【あとたえて】−宇治宮
  うち尓屋とをこそ可れひし里能可多
0071【ひしりのかた】−院の御心中
  ハひ氣してき古えなへ連ハよ尓
  うら見のこり个るといとおしくらむ春
  あさり中将の多う志む布可け尓も能し
0072【中将のたうしむふかけに】−聖物語
  婦なとか多りき古えて法文とのえ満
0073【法文なとの心えまほしき心さし】−宰相中将道心事(明融臨模本0029)
  本しきさしない者氣な可りしよ者ひ
  よりふ可くおもひな可ら盈さ羅春よ尓あり」(13ウ)

  布るほとおほや氣わ多くし尓いと満な
  あけくらしわさととちこもりてらひよミ
  お本可多者可/\しくもあらぬしも
  世中をそむき可本ならむも者ゝ可るへき
  尓あらねをの徒可らうち堂ゆミ(+て)ま起ら
  ハしくてな春くしくる越いとあり可多起
  ありさ満をうけたまハり徒多へしより
  可く尓可にけてな多のミきこえさするな
  とむころ尓申給ひしな可多りきこ
  遊よ能な可を可りそめ能ことゝおもひとり(△△△△&おもひとり)」(14オ)
0074【宮】−返答

  いとハしきの徒きそむる王可
  尓うれへあるときへてもうらめ
  志う日志流者しめありてな道心もおこ
  流王さなめるをとしわ可く世中おもふ耳
  可なな尓こともあ可ぬことハあらしとお
  本ゆるのほと尓さ者多をさへ多
  とり志りらん可あり可多かたさ古ゝ尓はさへき
  尓や多ゝいとひ者な連よとこ佐ら尓
  なとのすゝめおもむ遣たまふ屋うなるあり
  さ満尓てをの徒可らこそ志徒可な可な」(14ウ)

  ひゆけとのこりすくなち春る尓者可/\
  志くもあらて春きぬへ可めるをきしか多ゆく
  春ゑ佐らに尓盈多るおもひ志ら流ゝ
  を可へりてハ者つ可し遣なるのとも耳
0075【ともに】−友なり
  こそハも能しれなとの多まひて可多ミ
  尓せう楚こ可よひみつ可らもまうて
  遣尓きゝしよりも(△&もあハれ尓春まひ多満へる
0076【けにきゝしより】−かほる心中
0077【きゝしよりもあはれにすまひたまへるさま】−宰相中将対面宮事(明融臨模本0034)
  さ満よりハしめていと可りなる能い本り
  尓おもひなとそ起多りおなしき
  とゝいへとさる可多尓てとまりぬへくのと」(15オ)

  や可なるもある越いとあ($(朱))ましき
  をとミのひゝき尓も王春れうちし
  よるなとけてを(を&を)多尓みるへきほと
  もなけ尓春こく布起者らひ多りひし里
  堂ち多る堂め尓可ゝ流志もこと満
  らぬもよ本しならめ女君多ちなちし
  て春くしらむよ能つ年能志くよひ
  たる可多ハと越くやとおし者可らるゝ
  ありさ満なへ多て尓佐うしハ可り
  をへ多てゝそお者すへ可める春起あらむ」(15ウ)

  ハ遣しき者ミよりて御心者えをも
  みま本しうさす可尓い可ゝとゆ可志うもある
  遣ハひなされとさる可多越おもひ者なる
0078【さるかた越】−好色の方の事なり
  流ね可ひ尓ふ可く多つねきこえ多る本ひ
  なく春き/\しきなをさりこと越うち
  いてあされ者まむもと尓た可ひてやな
  おもひ可へしてありさ満のいとあハれ
  なるをむころ尓とふらひきこえ多
  ひ多ひ/\満いりひ徒ゝおもひしやう耳
  う者そくな可羅おこなのふ可き」(16オ)
0079【うはそく】−仏の四部の弟子の其一也 賀茂役公小角<エノキミヲス>年卅二にして家をはなれかつらき山へ入てをこないし人也 役優婆塞となつく山伏の行ハ是よりはしまれりとなん 六帖 うハそくかおこなふ山のしゐか本あなそハ/\しとこにしあらねハ(宇津保物語212・435、花鳥余情・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)

  もんなとわさと佐可し遣尓はあらていとよく
0080【いとよくのたまひしらす】−中将与宮法談事(明融臨模本0039)
  の多まひ志らすひし里多つ佐えある本う
  しなとハよ尓お本可れとあまりこ者/\しう
  遣と越氣那る志うとくのそう徒そう
0081【しうとく】−宿徳(明融臨模本40)
  きハゝにいとまなくきすく尓て(△&も)能ゝ
  をとひあらハさむもと/\しくおほえ
  たまふま多そ能らぬてし能
  いむこと越多もつハ可りの堂うとさはあれと
  遣ハひいやしく堂ミてこちなけ尓
0082【こちなけに】−無骨也
  ものなれ多るいとものしくてひるハおほや」(16ウ)

  氣こと尓いと満なくなとし徒ゝ志めや可な
  よひのほと遣ちかきまくら可ミなと耳
  めしい連可多らひふ尓もいとさす可尓
  徒可しうなと能ミあるをいとあて尓こゝろく
  流しきさ満しての多まひいつることの
  もおなをしへをもみゝち可き
  たとひ尓ひきませいとこよなくふ可き
  さとり尓ハあらねよきハものゝをえ
0083【よき人】−たときをいふ
  多まふ可多のいとこと尓ものしたまひ个れ
  ハ屋う/\みなれ多てまつり多ひこと耳」(17オ)

  つ年尓ねにみ多てまつら(+万)本しうていと満なくなと
  して布るときハ志くお(△△△&志くお)ほえこの
0084【この君】−中将をいへり
  の可く堂うと可りき古え多満へ連者
  連せいよりもつ年尓うそこなとあり
  てとしころをと尓おさ/\き古えハ春
  さひし遣なりし春ミ可やう/\めみる
  と起/\あり(+おり(朱&墨))ふし尓とふらいき古えい可
  めしうこのもまつさるへき尓つけ
0085【この君】−かほる
  徒ゝお可しきやう尓もまめや可なるさ満
  尓もよせ徒可つかうまつり三年ハ可り尓」(17ウ)

  なりぬの春ゑ徒可多($(朱))き尓あてゝ志
0086【四きにあてゝ】−宮ー
  念仏をこの徒らハあしろのなミもこの
  ころハいとゝみゝ可しかましく志つ可ならぬを
  とて可能あさりの春むの堂う尓うつろ
0087【すむ寺】−今の橋寺辺歟
0088【うつろひたまひて】−宮ー
  ひ多まひて七日能ほとおこなひめ
  多ち者いと心ほそくつれ/\満さりて
  な可め个るこ中将ひ佐しくまいら
0089【中将の君ひさしくまいらぬかなと】−薫 中将向宇治事(明融臨模本0041)
  ぬ可なひいてき古え个るまゝ尓あり
  のま多ふ可く佐しいつる本と尓いて
  多ちていと志のひてとも尓ともなく」(18オ)

  てや徒連ておハし个りのこ多なれハ
  とも王つらハて御馬尓てなり氣り
  いりもてゆくまゝ尓ふ多可りて
  えぬ志けきのをわけふ尓いとあらま
0090【しけきの中を】−しけ木中 親行語
  しきのき本ひ尓本ろ/\(+(朱&墨))おちみ多るゝ
  木葉のちり可ゝるもいとひやゝ可尓
  屋りならすい多くぬ連ひぬ可ゝるあり
  きなともさ/\ならひ多満ハぬち耳
  本そくお可しくお本され个り
    おろし尓多えぬこのよりも」(18ウ)
0091【山おろしに】−薫大将

  あやなくもろき我涙可な可つのおとろ
0092【我涙かな】−俊成卿此哥によりて嵐吹嶺の木葉の(定家十体245)
  くもう流佐しとて春い志んのをともせさ
  せハす志者のま可きを王け徒ゝそこ者
0093【しはのまかき】−柴
  可となのな可連とも越ふミ志多くこ満
0094【ふみしたく】−踏
  のあしをとも志のひてとようひし
  へる尓可くれな尓本ひそ尓志多可ひ
  てぬし志らぬ可とおとろくさめ能々あ
0095【ぬししらぬかと】−(朱合点) 古今 主しらぬ香こそにほへれ秋のゝニ誰ぬきかけし藤袴そも(古今241・古今六帖3727・和漢朗詠290・素性集20、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  里个るち可くなる本と尓そのことゝも・きゝ
  王可連ぬものゝねともいと春こけ尓き
  遊徒年尓可くあそひたまふときく越徒いて」(19オ)

  なくてみや能とのね多可起も盈
0096【みやの御ことのね】−中将聞比巴箏事(明融臨模本0048)
  き可ぬそ可しよ起おりなる遍しとおもひ
  徒ゝいりへハひ王のこゑのひゝきなり个り
  王う志きてう尓しらへてよのつ年能
  可きあ者せなれと可ら尓やみゝな連ぬ
  ちして可き可へ春者ちのおともきよ
  け尓おもしろし佐う能ことあハれ尓な満めひ
  多るこゑしてえ/\きこゆ志ハしき可
  満本しき尓志のひへと遣ハひ志るくき
  きつけてとのひめ(+く)おのこ満可多くなし」(19ウ)

  きいてき多り志可/\なんこもりおハします
0097【しか/\なん】−とのゐ人の詞
  うそこをこそき古えさせめと
0098【なにかしかかきりある】−かほるの詞
  尓し可かき里あるおこなひのま起
  らハしき古えさせむ尓あひな可くぬ
  連ぬれ満いりてい多つら尓可へらむうれへを
  ひめ可多尓き古えてあハれと能
  者せハななくさむへきとの多まへハ
  尓くき可本うちゑミてさせらむとて
0099【うちゑミて】−とのい人
  多つ志ハしやとめしよせてとしころ
0100【しハしやと】−かほる
  徒て尓のミきゝてゆ可しくおもふと」(20オ)

  のねともうれしきおり可な志ハし春
  古し多ち可くれてきくへきものゝく満あ
  里や徒きなく佐し春きてまいりよらむ
  ほとみなとやめひてハいと本ひな
  らんとの氣ハひ可本か多ち能さるな
0101【御けはひかほかたちの】−とのゐ人の心中詞なり
  をなをしきち尓いとめて多く可多
  志けなくおほ遊連ハき可ぬと起ハあけ
  くれ可くなんあそハせとしも尓ても
  この可多よりまいり多ちましる人侍ると
  きハをともさせハすおほ可多かくて」(20ウ)

  堂ちおハしますことをは可くさせ
  なへての尓志らせ多てまつらしとお本
  しの多満ハするなりとせハうちわらひ
0102【うちわらひて】−かほる
  てあちきなきもの可($(朱))しな(+(朱))りし可志
  のひふなれとみなあり可多起能堂
  めし尓きゝいつへ可めるをとのな越
  志るへせ王れハ春き/\しきとな
  き可くておハしますらむありさ
  満のあやしく遣尓なへて尓おほえ
  ハぬなりとこまや可尓能多まへハあな可し」(21オ)
0103【あなかしこ】−とのゐ人

  こきやう尓のき古えやらむとて
  あな多能まへハ多けの春い可ひ志こめて
  ミ那へ多てことなるをゝ志へよせ多てまつ
  連りとものハ尓しのらう尓よひすへて
  このとの井あひ志ら婦あな多尓かよふへ
  可め流春ひ可ひのとを春古しをしあけ
  て見給へハ可しき本と尓霧わ多れる
  をな可めてす多れをみし起くまきあけて
  /\ゐ多り春のこ尓いとさむ遣尓
  そくなえ者め流王らハひと里おなしさ」(21ウ)

  満なるおとななとゐ多りうちなる人一
0104【うちなる人】−姫ー
  者し羅尓春古しゐ可くれてひ者をま
  へ尓をきて者ちをてまさくり尓し
  徒ゝゐ多る尓可くれ多りつる能尓
  可尓いとあ可く佐しいて多れハあふきな
0105【あふきならて】−姫君
  てこれしてもハま年きつへ可り氣り
  とて佐しのそ起多る可本いみしく羅う多
0106【さしのそきたる】−姫
  け尓尓本い屋可なるへしそひふし多る
  ハことのうへ尓か多ふき可ゝりている
0107【いる日をかへすはち】−(朱合点) 返日撥事(明融臨模本0054) 女房答 還城楽陵王ニ入日ヲカヘス撥アリ
  可へ春者ちこ楚あり个れさ満こと尓も」(22オ)

  ひをよひ御心可なとてうち王らひ多
  流遣ハひい満春古しおもり可尓よし徒き
  多りをよハすともこ連も尓者なるゝ
0108【をよはすともこれも】−又姫君隠月の事をおもひよせ侍る心詞なり
  可はな者可なきこと越うちとけの
  可ハし多る遣者ひとも佐ら尓よそに
  やりし尓ハ尓すいとあ者れ尓なつ可しう
  お可しむ可し可多りなと尓か多り徒多へ
0109【むかし物かたりなとに】−住吉物語姫君の琴引給ふを中将きゝつけ侍る事みえたり又うつほ第四月おもしろき夕暮ハ君いま宮ひめ宮みす巻あけて琴とも引あはせあそひ給ふ事あり
  て王可き女房とのよむをもきく尓
  可なら春可やうのをいひ多る佐しも
  らさり个むとくゝおし者可羅るゝを希」(22ウ)

  尓あハれなるのく満ありぬへきり个り
0110【物のくま】−かくれなり
  とう徒りぬへしきりの布可个れハさや
  可尓みゆへくもあらす又月佐しいてなんと
  お本春ほと尓くの可多よりおハす登
  つ氣きこゆるやあら無す多れおろし
  てミ那いりぬおとろき可本尓ハあら春
  こや可尓もてなして屋をら可くれぬる遣
  ハひともきぬのを(△&を)とも(△&せ)すいとなよら
  くるしくていみしうあて尓みやひ
  なるをあはハれとおもひやをらいて(△△&いて)」(23オ)

  て御車ゐ(=持<モテ>)てまいるへくハしらせ
0111【御車ゐて】−薫
  徒あり(=かはし)つるさふらひ尓おりあしく満いり
0112【さふらひに】−かほる消息し給ふ
0113【おりあしく】−折 悪
  尓个れと/\うれしくおもふこと春こし
  なくさめてなむ可くさふら婦よしき古え
  よい多うぬれ尓多る可こともきこえさせ
  可しとの多まへハまいりてきこ可くみえや
0114【まいりてきこゆ】−とのゐ人つけたてまつる也
0115【かくみえやしぬらんとハ】−姫君
  志ぬらんとハお本しもよらてうちとけ多り
  徒るともきゝや志多まひ徒らむと
  いといみしく者可かしあやしくかう者し
  く尓本ふ徒るをおもひ可けぬほと」(23ウ)

  なれ盤おとろ可さり个るをそ佐よと
  も満とひてはちをハさうすうそこな
  と徒多ふるいとうゐ/\しき人なめる
  をおり可ら尓こよろつのこともとお本ひ
  てま多のまきれな連ハありつるみ春の
  まへ尓あゆミいてゝ徒ゐいさとひ多る
  王可とも佐しいら遍むことの者もお
  ほえて志とね佐しい徒るさ満もたと/\
  志けなこのみ春能まへ尓は者し多
  り个りうちつけ尓あさ起者可り尓てハ」(24オ)
0116【うちつけに】−かほる詞

  可くもた多つねまいるましきの可けち耳
0117【山のかけちに】−(朱合点) 古今 世ニふれハうさこそまされ三吉のゝ岩のかけ道ふミならしてん(古今951、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  おもふふるをさ満こと尓こ可く
  き多ひを可さねて佐りともらむし
  志るらむとなのもしういとまめや
  可尓の王可き/\のな多ら可尓
  きこゆへきもなくきえ可へり可ゝや可し
  遣なるも可多ハらい多个れハ者ら能おく
0118【女はら】−達の心なり原也後撰詞衆僧はらなとある同事也
  布可きをこしい徒るほとひ佐し具
  なりてわさとめひ多るもくるしうて
0119【くるしうて】−姉宮通言事(明融臨模本0064)
  尓こともおもひ志らぬありさ満尓て志り可本」(24ウ)

  尓い可ゝハきこゆへく登いとよしありあて
  なるこゑしてひきいりな可ら本の可尓能多
  まふ可つ志りな可らう起を志ら春可本な
0120【かつしりなから】−詞
  もよ可さかとおもふ多ま遍志る越ひと登
  ころしもあまりお本め可せらんこくち
  おし可るへ个れあり可多うよろつもひ
  春まし多る春ま井なと尓たくひき
  古えさせ御心うちハな尓ともすゝし
0121【御心のうちハ】−(朱合点) 拾遺廿 さゝ浪やしかの浦かせいかはかり心のうちのすゝしかるらん公任(拾遺集1336、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  くをし者可られ連ハ可く志のひあ
  まり布可さあさゝのほとも王可せハん」(25オ)

  こ可ひハらめよ能徒年の春き/\しき
  春ち尓はお本しめし者なへくやさやう
  の可多ハわさとすゝむる人侍りともひく
  へうもあらぬ徒よさ尓なをの徒可ら
  古しめしあハするやうもりなつれ/\
  とのミ春くしよ能可りもき古盈
  させのミきこえさせ可く者な
  連て可めさせらん御心のま起らハし
  尓ハ佐しもおとろ可させたまふハ可りきこえ
  ならハい可尓ふさ満尓らむなとお本」(25ウ)

  くのへハ徒ゝましくい羅へ尓くゝておこし
  つるおいいてき多る尓そゆつり堂ま婦
0122【おい人のいてきたるに】−左女弁対面事(明融臨模本0069) 弁君といふ人なり左中弁女
0123【ゆつりたまふ】−姫ー
  たとしへな佐し春くしてあなか多し遣
0124【たとしへなく】−老人詞
  なや可多ハらい多きおましのさ満尓可な
  み春のうち尓こ王可き/\ハも能ゝほと
  志らぬやう尓こそなし多ゝ可ゝ尓いふ
  こゑの佐多春起多るも可多ハらい多く
0125【さたすきたるも】−かほる心中
  多ちハおほ春いともあやしく世中
0126【いともあやしく】−老人ノ詞
  春ま井給人の可す尓もあらぬありさ満
  尓てさもありぬへき/\多尓とふらひ可す」(26オ)

  へき古えみえき古え春のミなり
  さりめる尓あり可多起御心佐しのほとハ
  可す尓らぬ尓もあさましきまて
  もひ多まへ王可き御心ち尓もお本し
  志りな可らき古えさせたまひ尓くき尓や
  らむといと徒ゝミなくも能なれ多るも
0127【いとつゝミなく】−かほる心中詞
  な満尓くきも能可ら遣ハひい多うめきて
  よしあるこゑなれハいと多つきも志らぬ
0128【たつきもしらぬ】−(朱合点)
  し徒る尓うれしき遣ハひ尓こそな尓
  ことも遣尓おもひし里个る多のミこよ」(26ウ)

  な可り个りとてより井へるを能そ
0129【き丁のそはよりみれハ】−うちより見るなり
  者よりみ連ハあけ本の(朱))やう/\も能ゝ
  類ゝ尓遣尓や徒し堂まへるとゆる
  りきぬ春可多のいとぬ連志めり多るほと
  う多てこのの本可能尓本ひ尓やとあや
  しきまて可本りみち多りこのおい
  うちなきぬ佐し春起多る徒ミもやと
  もふ多まへ志のふ連とあハれなるむ可しの
  御物可多りのい可ならむ徒いて尓うちいて
  き古えさせ可多ハしをも本のめ可し志ろ」(27オ)

  志めさせむととしころねん春の徒いて尓
  うちませおもふへわ多る志るし尓やうれ
  しきおり尓ま多起尓お本ゝ連
  尓くれて盈こそきこえさせ春个れと
  ち王なゝ具个しき満こと尓いミ志くも
0130【けしきまことに】−かほる心中詞
  可なしとへりおほ可多佐多すき多る
0131【さたすきたる人】−年たけたるをいふ
  もろなるとはきゝ給へといとかう
  志もおもへるもあや志うな古ゝ耳
  可く満いることハ多ひ可さなりぬるを可くあハ
  連志りたまへるもなくてこ个起」(27ウ)

  みちのほと尓ひとりのミそ本ち徒連う連
  しき徒ゐてなめ流をとなのこひたまひ
  そ可しとの多まへハ可ゝる徒ゐてしも
0132【かゝるつゐてしも】−老人詞
  志可し又侍りとものま能ほと志らぬ
  の多のむへき尓もらぬを佐らハ多ゝかゝる
  布るもの个りと者可り志ろしめされ
  らなむ三条しこ志ゝう者可
0133【三条の宮に】−女三
0134【こしゝう】−弁尼小侍ー一腹也
  なくな尓个流と本のきゝそ能
  可見む徒ましうおもふへしおな
  おほくうせ尓个るの春ゑ尓者る」(28オ)

  可なるせ可いより徒多つたハりまうてきてこの
0135【せかい】−世界
  いつとせむとせのほとなこれ尓可くさ
  ふらひ志ろしめ佐し可しこのろ登う
0136【とう大納言】−紅ー
  大納言なるこの可ミの右衛門の可見
0137【右衛門のかみ】−柏
  尓て可くれしハも能ゝ徒ゐてなと尓や
0138【ものゝつゐてなとにや】−弁語出権大納言問事(明融臨模本0075)
  可能うへとてき古しめし徒多ふる
0139【かの御うへ】−柏
  らむ春きいく者具もへ多ゝらぬ
0140【すき給て】−過
  ちのミし能おりの可なし佐もま多
  可ハくおりらすおもふ多満へらるゝ
  を可くおとなしくならせ尓个るよ」(28ウ)

  者ひのほとものやう尓な可能権大納言
  のめ能と尓しハ可ハゝ尓な
0141【弁かはゝ】−母
  さ尓徒可うまつりなし尓可す尓
  らぬれと尓志らせ御心よりハ多
  あまり个ること越おり/\うち可すめの多満
  いしをい満ハ可起り尓なりやまひ
  の春ゑ徒可多尓めしよせてい佐ゝ可の
  くことなしをき古しめすへきゆへ
  なひとこ連と可ハ可りき古えいて
  尓のこりをとお本しめす御心侍らハのと可」(29オ)
0142【のこりをと】−尼物語の

  尓なき古しめし者てへき王可起/\
  も可多ハらい多く佐し春起多りと徒き
  志ろひもことハり尓なむとて佐す可尓
  うちいて春なりぬあや志く可多り可む
0143【あやしく夢かたり】−かほる心中
0144【かむなきやう】−巫<カン>覡 文選 男<カンナ>女<カンナ>
  なきやうのも能ゝとハすか多りすらむやう
  尓めつら可尓お本さる連とあハれ尓お本徒
  可なくお本し王多ることの春ちをきこゆ
  連ハいとおくゆ可し个れと氣尓めも志
  氣し佐しく見尓布る可多り尓可ゝ徒ら
  ひてをあ可し者てむもちこ/\しか流」(29ウ)

  へ个れハこハ可登かとおもひわくことハな起も
  可らい尓しへのきゝあハれ尓な
  佐らハ可ならすこの農こりき可せ
0145【さらハかならす】−薫詞
  連ゆ可者ハしたな可るへきやつれをおもな
  くらん志と可めら連ぬへきさ満なれハおも
  婦たまふるのほとよりハくちおしうな
  とてち多まふ尓可能おハしますてら
0146【かのおハしますてら】−宮ー念仏ニ
  の可ね可す可尓き古えてきりいと
  布可く多ちわ多れりみ年能やへおもひ
0147【みねのやへ雲おもひやる】−後 白雲の八重ニかさなるをちにても思ハん人ニ心へたつな(古今380・貫之集721、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚) おもひやる心斗ハさわらしをなにへたつらん嶺の八重雲 直幹<タヽモト>(後撰1306・古今六帖528・和漢朗詠638、花鳥余情・紹巴抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
  やるへ多ておほくあ者れなる尓な越この」(30オ)

  ひめ多ちの御心うちともくるしう
  な尓こと越お本しのこすらむ可くいとお
  まり多まへるもとハりそ可しなとおほゆ
    あさほら氣家路みえ春多つ
0148【あさほらけ】−かほる
  古しま起のをこめて个りほそく
  も侍可なち可へり屋春らひへるさ満
0149【たちかへりやすらひ】−薫ノ
  をこの能めな連多る多いとこ
  尓おもひき古え多るをまいていかゝハめ徒ら
  しうみきこえ佐らん御返きこえ徒多へ
0150【御返】−弁尼
  尓く遣尓おもひ多れハ連いのいと徒ゝまし」(30ウ)

  氣尓
    の井るの可けちをきりのいとゝ
0151【雲のゐる】−姉君
  へ多徒るころ尓もある可那春古しうちな
  ひ多まへる个しきあさ可らすあハれな
  尓ハ可りお可しき布しハみえぬあ多り
  れとけ尓こゝろくるしきことおほ可類
  尓あ可うなりゆ氣ハさす可尓ひ多おもて
  なるちして/\なるほと尓うけ多満
  ハり佐し徒ることお本可るのこり者い満春
  古しおもなれてそハうらみきこえさす」(31オ)

  へ可めれさるハ可くめひてもてな
  へくハハす尓お本し王可さり个りと
  うらめしうなんとてと能井可志徒らひ
  多るしおもて尓おハしてな可めあし
0152【あしろハ】−内膳司式云山城国近江国氷魚網代各処一△(△$)其氷魚始九月迄十二月卅日供之
  ろハさハ可し遣なされとひをもよらぬ
  尓やあらむすさまし氣なる遣しき
  なりとともの/\みし里ていふあやし
  きとも尓志者可り徒ミをの/\な
  なのいとなミとも尓ゆき可ふさ満とも
  の者可なのうへ尓う可ひ多る多れもお」(31ウ)

  もへハお那しことなるよ能つ年なさな
  王れハう可者す満のうてな尓志徒希
0153【たまのうてな】−(朱合点) 今日ミれハ玉のウてなもなかりけりあやめの草ノいほりのミして(拾遺集110、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  きとおもふへき可ハ登・おもひ徒ゝ遣
0154【おもひつゝけらる】−遣状於姫君事(明融臨模本0083)
  らるすゝりめしてあな多尓き古え
0155【あなたに】−姫
    ひめのをくみて可せさすさ本
0156【橋ひめの】−かほる 離宮神此橋姫明神へ通給云也 さ筵ニ衣かたしきハ住吉の御哥也
  の志つく尓そぬ連ぬるな可めふらむ
  可しとてとのひ尓も多せ多まへりい登
  さむ氣尓い羅ゝき多る可本してもて満
0157【いらゝきたる】−鳥はた立也
  いる可へり可ミの可なとお本ろ氣ならむハ
0158【かなと】−香
  者徒可し遣なるをときをこ可ゝ流お」(32オ)
0159【ときをこそ】−早

  里尓ハとて
    佐し可へるうちのおさあさ
0160【さしかへる】−姉君
  徒くやをく多し者徒らむさへう起
0161【身さへうきて】−(朱合点) さす棹(△&棹) のしつくにぬるゝ袖ゆへニ身さへうきてもおもほゆるかな(明融臨模本付箋03 出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  てといとお可し氣尓可起へりまお尓め
0162【まおにめやすくも】−かほる心中
  や春くもも能し个りとと満りぬ連
  と御車ゐて満いりぬと/\さハ可しきこ
  ゆれハとの井ハ可りをめしよせて可へり
0163【かへりわたらせたまハむほとに】−かほる詞 宮ー
  わ多らせたまハむほと尓可なら春満いるへ
  しなとの多まふぬ連多るとも
  みなこの尓ぬき可けひてとり尓徒」(32ウ)
0164【この人に】−宿直人たふ

  かハしつるをし尓多てまつり可へ徒
  い可多りに可ゝりてお本しいてらる
  おもひしよりハこよなく満さりて可し可り
0165【おかしかりつる】−姫ー
  つる遣ハひとも尓そひて
  ひ者なれ可多起り个りとよハく
  らるふミ多てまつり遣佐う多ちて
  もあら春志ろき志きしのあつ古え多る
  尓布てひき徒くろひえりて春見つ
  きみところありて可きうちつけな
0166【うちつけなるさまにや】−かほる文のこと葉
  さ満尓やとあひなくとゝめのこりお」(33オ)

  本可るも((朱))くるしきわさ尓な無可多ハし
  き古えをきつるやう尓い満よりハみ春能
  まへもや春くお本しゆるすへくな
  こもり者てらむ可すもうけ多満ハり
  をきていふせ可りしきりの満よひも者る
  氣らむなとそいとすくよ可尓可起へる
  さこんの楚うなる人御徒可ひ尓て可能お
  多つね布ミもとらせよ登の多まふ
  とのひ可さむ遣尓てさ満よひしなとあ
  ハれ尓お本しやりておほきなるひ者里こ」(33ウ)

  やうのも能あま多せさせま多能可能
  てら尓も多てまつりこもりのそうとも
0167【たてまつり給ふ】−送物事(明融臨模本0087)
  こののあらし尓ハいと本そくく流しか
  らむをさておハします本との布せ
0168【ふせ給ふ】−かほる方より
  へ可らんとおほし屋りてきぬわ多なとお本
  可り个りおこなひ者てゝいて多まふあし
  多り个れハをこなひとも尓王多きぬ
  遣さすへてひとく多り能ほと徒
  徒ある可きりのとこ多ち尓との井
  ぬき春てのえむ尓いみしき可り」(34オ)

  とも盈ならぬ志ろきあやの
  よ/\といひ志ら春尓本へ流をう徒し
  きてをハ多え可へぬもなれハ尓徒可者
  し可らぬ可をと尓と可められ
  て羅るゝなむ/\可り个る
  ま可せてを屋春くも布る満ハれ春
  とむく徒个起まて能おとろく尓本ひ
  をうしなひて者やとおもへと
  うつり可尓てえも春ゝき春てぬそあま
  里なるやハひめ御返いとめや」(34ウ)
0169【君は】−かほる

  春くこめ可しき越お可しく見給
  かくせうそこありきな/\き古え
  させらむせさす連ハな尓可ハ遣さう多ち
  てもてなひハむも/\う多てあら
  む連いの王可ゝぬ見ハえなめ流を
  可らむもなひとことうち本のめ可し
  てし可ハさやう尓てとめ多らむな
  个りみつ可らもさ満/\のとふらひ
0170【御みつからも】−宮ー
  のい者や尓あまりしことなとの多
0171【のたまへるにまうてんと】−語宇治宮事於三宮事(明融臨模本0092)
  へる尓まうてんとお本しての可やう」(35オ)
0172【まうてんと】−薫ー
0173【三の宮】−匂兵部卿

  尓おくまり多らむあ多りのまさりせ
0174【おくまりたらむ】−奥フカキ
  こ可し可るへ个れとあらましこと尓た尓
  の多まふき古え者けまして御心さハ
  可し多てまつらむとお本してのとや可な
  くれ尓まいりへ里連いのさ満/\なる
0175【まいり給へり】−匂へ
  御物可多りき古え可ハしふ徒いて尓うち
  の御事可多りいてゝみ志あ可のあり
  さ満なくハしくきこえふ尓い登
  せち尓お可しとおほひ多りされハよと
0176【されハよと】−かほる心中
  しきをみていとゝ御心うこきぬへくいひ」(35ウ)

  徒ゝ遣たまふさてそのあり个ん可へりこ登ハ
0177【さてそのありけん】−匂宮の御詞
  なと可みせハさりしまろならまし可ハ
  とうら見佐可しいとさ満/\らむ春
  へ可めるハしを多尓みせさ勢たまハぬ可能王
0178【かのわたり】−かほる
  多りハ可くいともむもれ多ひき
  こめてやむへき遣ハひ尓もらね可な
  春らむせさせ者やとおもひ連とい可
  て可多つ年よらせへき可や春きほと
  こす可ま本しくハいとよくすきぬへ
  きよ尓り个れうち可くろへ徒ゝおほ可」(36オ)

  める可那さるか多尓みところありぬへき
0179【さるかたに】−匂宮
  のハしきうち志のひ多る春み可
  とも山里めひ多るく満なと尓を能徒可ら
  へ可めりこのき古えさするわ多りハいとよ
  徒可ぬひし里さ満尓てこち/\志うそあら
  むととしこあな徒りみゝを多尓
  ことゝめらさり个れ本の可なりし月影
  のをとりせすハま越な羅ん者や遣ハひ
  ありさ満者多さハ可りならむをそあらま本
  しきほとゝハおほえへきなきこえ」(36ウ)

  多まふ者て/\ハ満め多ちていとね多く
0180【はて/\ハ】−匂宮
  お本ろ氣のう徒るましき可く
  婦可具おも遍るをおろ可ならしとゆ可し
  うお本春こと可起かきりなくなりひぬ
  ま多/\よく个しき多まへとを春
  すめ可きりある御身のほと能よ多け
  さ越いとハしきまてもとなしとお本し
  多れハお可しくていてやよしなくそ
0181【おかしくて】−かほる心中
  ハし世中とゝめしとやうある
  尓てな越さりことも(△&も徒ゝましう」(37オ)

  可ら可那ハぬ徒きそめなおほき
  おもひ尓多可ふへきことなへきと
  古えへハいてあなと/\し連ひのおとろ
0182【いてあなこと/\し】−匂宮
  おとろしきひし里ことは者てゝし
0183【ひしりことは】−聖人詞也
  可なとて王らひのうち尓ハ可能布る
0184【心のうちにハ】−かほる心中
  本のめ可し志春ちなとのいとゝうち
  おとろ可れてあハれなる尓お可しとみる
  こともめや春しときくあ多りもな尓
  可り尓もと満らさり个り十月尓なりて
  五六日能ほと尓うちへまうて堂ま婦あ」(37ウ)

  志ろをこそこのらむせめときこゆる
  /\あれとな尓可そのひをむし尓あらそ
0185【ひをむし】−△(△$郭)撲詩借問蜉蝣輩寧知亀鶴年 [虫+秀]ヒヲムシ 蜉蝣イ(明融臨模本0104) 白小虫如蜻朝ニ生夕死
  ふ尓て阿しろ尓もよらむとそきすて
  連いのいと志のひや可尓ていて多ち
  可ろら可尓あしろく流(△&流)ま尓てかとり農
0186【かとりのなをし】−昔ハ公卿も直衣に平絹を用たるへし
  なをし佐しぬきぬはせと佐らひき
0187【ことさらひき給へり】−詞字 着
  へりまちよろこひ尓つけ多る
0188【宮】−八
  あるしな可志う志那したまふく連
0189【御あるし】−饗
  ぬ連ハおほとなふらち可くてさ起/\
  佐し多まへるふミとものふ可きなあさり」(38オ)

  も佐うしおろしてきなといハせ
0190【きなといはせ給ふ】−義 議論心なり
  ちもまとろます可せのいとあらまし
  き尓木葉のちり可ふをとのひゝき
  なあハれもすきておそろしく
  そきのさ満なあけ可多ち可くな
  ぬらんとふほと尓ありし志のゝめおも
  ひいてら連てのねあハれな
  の徒いて徒くりいてゝさ起の多ひ能
  まとハされ本の尓いとめつらしき
  ものゝねひとこゑうけ多満者りしのこり」(38ウ)

  な/\尓いといふ可しうあ可すおもふ
  多まへらるゝなき古えたまふをも
0191【色をもかをも】−宇治宮御返答
  可をもおもひすてゝしむ可しきゝし
  こともみな王春れてむとのたまへと
  めしてとりよせていとくな
0192【いと月なく】−宮法談之比召楽器事(明融臨模本0110)
  尓多りや志るへ春るものゝね尓徒氣て
  なおもひいてらるへ可り个るとてひ王
  めしてまらうと尓そゝの可しとり
0193【まらうとに】−かほる也
  て志らへ堂まふ佐ら尓本の可尓きゝ
  しおなしものともふ多まへら連」(39オ)

  さり个りとのひゝき可ら尓やとこ
0194【御ことのひゝきからにや】−かほる詞
  おもふ多まへし可とてとけても可き
  多て多満ハ春いてあなさ可なや志可
0195【あなさかなや】−宮の御詞
  見とまるハ可りのてなとハい徒くより可
  ゝまてハ徒多ハりこむあるましき
  となりとてきむ可起ならしたまへ流
  いとあハれ尓春こし可多遍はみ年能まつ
0196【かたへはみねのまつ風】−(朱合点) 後撰夏夜ふかやふか琴引をきゝて 短夜のふけ行まゝニ高砂のミねの松かせふくかとそ(△&そ)きく兼輔(後撰167、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 拾ー琴のねに嶺の松風かよふらしいつれのをこそしらめそむらん斎宮女ー(明融臨模本付箋04 拾遺集451・拾遺抄514・古今六帖3397・和漢朗詠469・斎宮集57、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  もて者や春なる遍しいとたと/\
  志け尓おほめき者えありてひと
  つ者可り尓て屋め堂まひ徒このわ多り尓」(39ウ)

  おほえなくてり/\本のめく佐う能こ
0197【さうのこと】−姫ー
  の年こえ多る尓やときくおり
  ととゝめてなともあらてひ佐しうな
  尓个りや尓満可せをの/\可きなら
  春へ可め流ハミハ可りやうちあハすら
  むろなうも能ゝよう尓春ハ可りの者う
0198【ろなう】−無論
0199【ように】−用ニスル
  しなともと満羅しとなおほえ
  て可きならしへとあな多尓きこえ
  多まへとおもひよらさりしひとりこ
0200【おもひよらさりし】−姫ー達
  をきゝひ个ん多尓あるいと可多」(40オ)

  ハならむとひきいり徒ゝみなきゝ
  春ひ/\そゝの可したまへとと可く
  きこえ春さひてやミひぬめれハい登
0201【いとくちおしう】−かほる心
  くちおしうおほゆその徒いて尓可く
0202【そのついてにも】−宮の御詞
  あや志うよ徒可ぬおもひやり尓てすく
  春ありさ満とものおもひの本可な
  なはつ可しうお本ひ多り尓多尓い可
  て志らせしと者くゝ見すくせ个ふ
  あ春とも志らぬ能のこりすくなさ尓
  さす可尓ゆくすゑと越きおちあふ」(40ウ)

  連てさすら遍んこ連のミこ遣尓
  よ越者な連んきハのほ多しなり个れ登
  うち可多らひへハくるしうみ多て満
0203【心くるしう】−かほる心中詞
  徒り多まふわさとのうしろミ堂ち
  可者可しき春ち尓ハ春ともうと/\
  し可らすお本しめさ連んとなおもふ多
  まふる志ハしもな可らへらむいのちの
  者ひとことも可くうちいてき古えさ勢
  てむさ満を可へましくなむなと
  申給へハいとうれしきことゝおほしの」(41オ)
0204【いとうれしきことゝ】−宮の御詞

  のさてあ可可多のおこなひ
  志多まふ本と尓可のおいめしいてゝあひ多
0205【おい人】−弁尼
  まへりひめうしろミ尓てさふら者せ
  とそいひ个る六十
  春古し多らぬほとなれとみやひ可尓ゆへ
  あるけハひ志てときこゆ古権大納言
0206【古権大納言の君の】−柏 弁達故大納言遺言事(明融臨模本0121)
  のよととも尓のをおもひ徒ゝ
  まひ徒き者可なくなりたまひ尓しあり
  さ満をきこえいてゝなくこと可起りな
0207【けによその人の】−かほる心中詞
  尓よその能う遍とき可む多尓あハれ」(41ウ)

  なるへき布ることゝも越ましてとしこ
  ろおほつ可なく遊可志うい可なり个んこ登
  のハしめ尓可ともこのを佐多可耳
  志らせへとんし徒る志るし尓や閑く
  のやう身あハれなるむ可し可多りをお本
  えぬ徒いてきゝつけ徒らむとおほ春尓
  とゝめ可多可り个りさても个く楚のよ能
  志り多るのこり多まへり个るをめつ
  ら可尓も者つ可しうもおほゆることの
  春ち尓可くいひ徒多ふるたくひやも」(42オ)

  あらむとしころ可けてもきゝをよはさり
  个ると能多まへハこ志ゝうと者な
0208【こしゝうと弁とはなちて】−老人ノ詞
  てま多志る人侍らしひとこと尓てもま多
  ことひと尓うちま年ひら春可くも能者
  可なく可すならぬの本と尓連とよる
  ひる可能可け尓徒き多てまつりて
  可ハをの徒可らものゝ氣しきをもみ多て
  まつり楚めし尓御心よりあまりて本し
  个る々多ゝふ多りのな可尓なん多満さ可の
  せうそこのかよひも可多ハらい多氣」(42ウ)

  連者くハし具きこえさせ春い満者農
  とちめ尓なりい佐ゝ可の多満いを具
  ことのしを可ゝ流尓ハをき
  婦せくおもふへわ多り徒ゝい可尓して可ハ
  こ志めし徒多ふへきと者可/\しからぬ
  春の徒いて尓もふたまへ徒るを
  尓おハしまし个りとなおもふ多まへ
  志りぬるらむせさすへきものもい満
  ハな尓可ハやきも春て可くあさ
  のきえを志らぬうち春て」(43オ)

  うちゝ流やうもこそといとうしろめ堂具
  おもふ多まふ連とこの王多里尓と起
0209【この宮わたり】−八宮
  とき本のめ可せ多まふ越まちいて堂て
  まつりて志は春古し多のもしく可ゝるお
  里もやとんしへるちか($ら)いて(いて=△△#)まうて
  きてな佐ら尓これハこの能古と尓も
  らしとなく/\こ満可尓むまれたまひ
  个るほとのこともよくおほえ徒ゝきこゆ
  むなしうなりしさハ起尓者ゝに
0210【はゝに侍し人】−弁の君か母をいふ
  屋可てやまひ徒きてほともへ春かく」(43ウ)

  連し可ハいとゝおもふ堂まへ志つふち
0211【ふち衣たちかさね】−(朱合点) [糸+衰]<フチ>衣 喪<フチ>衣 かしは木の服と母の服とを着したるをいふ 六 一重たにきるハわひしき藤衣かさなる秋を思ひやらなん貫之(兼輔集121、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  多ち可さね可なしきことをおもひ多満
  へしとしころよ可らぬをつけ
  多り个る可ハ可りこちてしのうミ
0212【人をハかりこちて】−弁ノ君か人ニたはかられてつくしの方へ($く)たりたるをいふ
  者てまてとりもてま可り尓し可ハ
  とさへあと多えて可しこ尓
  てうせとゝせあまり尓てなん
  あらぬよ能ちしてま可りの本り多りし
  をこのちゝ可多尓つけて王らハよ
0213【この宮】−八ー
0214【ちゝかたにつけて】−弁遠類也 ハヽ北方
  里満いりかよふゆへし可ハい満ハ可う尓」(44オ)

  まし羅ふへきさ満尓らぬを連せ
  の女御殿可多なとこそハむ可しきゝな
0215【女御殿】−柏妹弘ー
  連多てまつりしわ多り尓て満いりよるへく
  し可とハし多なくおほええ佐し
  いてらて可くれのくち尓なり尓
0216【み山かくれのくち木】−(朱合点) 古今 かたちこそ深山かくれの朽木なれ(古今875・古今六帖1440、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・紹巴抄・弄花抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
  てなりこ志ゝうハい徒可うせ尓个ん
  の可ミ能王可佐可りと見侍可すゝく
  なくな尓个る春ゑのよ尓おほくの
  をくるゝいのちを可なしくおもひ
  へて佐春可尓めくらひ連なとき」(44ウ)

  こゆるほと尓連ひ能あ氣者てぬよしさ
0217【よしさらは】−かほる詞
  ら者このむ可し可多りハ徒きすへ具
  なんあらぬま多き可ぬや春き尓て
  きこえん志ゝうといひし本の可耳
0218【しゝう】−小ー
  おほゆる者い徒ゝむつ者可りなりし
0219【いつゝむつはかりなりし程に】−かほるの
  や尓ハ可尓む年をやミてうせ尓起とな
  きく可ゝ流堂ひめむなくハ徒ミお
  尓て春きぬへ可り个ると能多
  まふさゝや可尓おしま起あ王せ多る本く
0220【さゝやかに】−老人
0221【ほくとも】−反古
  ともの可ひ(△&ひ)くさきをふくろ尓ぬひい連」(45オ)
0222【かひくさき】−ふるくさ(+(朱))越いふ

  多とりいてて多てまつるおまへ尓
  うしなハせ王れな越いくへくもあら春
  なり尓多りと能多満者せてこのふミ
  をとりあつめて堂まハせ多りし可ハ
  志ゝう尓ま多あひ見侍らむ徒いて耳
  佐多可尓徒多へまい羅せ無とおもひ多
  まへしを屋可て王可れしもわ多くし
  こと尓ハあ可す可なしうなんおもふふると
  きこゆつれなくてこれハ可くい多まい徒
0223【かやうのふる人ハ】−かほる心中
  やう能布るとハす可多り尓やあやしき」(45ウ)

  ことの多めし尓いひいつらむとくるしく
  おほせと可へ春/\もちらさぬよしをち
  可ひつるさもやとま多おもひみ多れ多まふ
  可ゆこ者いひなと満いりたまふ昨日
0224【こはいひ】−強飯
  いとまひなりしを个ふハうちの御物いミも
0225【いとま】−暇
  あきぬらん女一やミ
0226【院】−冷
  とふらひ尓可ならすまいるへ个れハ可多/\
  いと満なま多このろ春くして
  のもみちらぬさ起尓満いるへきよしき
  古え多まふ可く志ハしハ多ちよらせたま」(46オ)
0227【かくしはしはたちよらせたまふ】−宇治宮

  婦ひ可り尓の可けも春古しものあき羅
  むるちしてなんなよろ(△&ろ)こひき古え
  多まふ可へりひてまつこのふくろをみ
0228【かへり給ひて】−薫
  へハ可らの布せむ連うをぬひて
  いふもしをうへ尓可起多りほそ起くミして
0229【くミして】−組
  くち能可多越ゆひ多る尓可能御名能・ふう
  徒き多りあくるもおそろ志うおほえ堂満
  婦/\可見尓てま佐可尓かよひ个る
  ふミのい徒ゝむつそあるさてハ可能
  て尓屋まひハおもく可き里になり」(46ウ)
0230【やまひハおもく】−柏木文のこと葉

  尓多る尓ま多本の可尓もきこえむこか多く
  なりぬるを遊可しうおもふことハそひ尓
  多可多ちも可ハりておハしますらむ可
  さ満/\可なしきことをみちのく尓可み
  五六枚徒ふ/\とあや志きとりのあ
0231【とりのあと】−蒼頡<ケツ>作文字
  とのやう尓可起て
    めのまへ尓このをそむくよりも
0232【めのまへに】−衛門督
  よそ尓わ可るゝそ可なしきハしに
0233【よそにわかるゝ玉そかなしき】−古今 声をたにきかてわかるゝ玉よりもなき床にねん君そかなしき(古今858・古今六帖2497、花鳥余情・細流抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  めつらしくきゝるふ多ほとも
0234【ふた葉のほと】−かほるの事
  志ろめ多うおもふ多まふるか多ハ个れと」(47オ)

    あらハそれともみまし志連ぬ
0235【命あらハ】−衛門のかみ
  年尓とめしい春ゑ可起佐し
  多るやう尓いとみ多り可ハしうてこ志ゝう
  の尓登うへ尓ハ可きつけ多り志ミといふ
0236【しミといふむし】−紙魚
  むしの春み可尓なりてふるめき多る可ひ
  くさゝな可らあとハきえ春ゝい満可き
0237【あとはきえす】−(朱合点) 書つくる跡ハ千とせもありぬへしわすれすしのふ人やなからん(古今著聞集219、異本紫明抄・河海抄・細流抄・孟津抄・岷江入楚)
  多羅ん尓も多可ハぬことのともこ満/\
  と佐多可なるを見給ふ尓遣尓$お(朱))ちゝ里
  多$ら(朱))ましよとう志ろめ多ういとおしき
  とも可ゝるこ尓ま多あらむ」(47ウ)

  やとひとつ尓いとゝ物思ハしさそひて
  うちへまいらむとお本しつるもいて堂ゝ
  連春能おまへ尓満いりへ連ハいとな
0238【宮のおまへ】−女三
  もなく王可や可なるさ満しひて
  よみ多まふを者ちらひてもて可$く(朱))し
  へりな尓可ハ志り尓个りとも志られ多て
  まつらむなこゝろ尓こめてよろつ
  おもひゐ多まへり」(48オ)

(白紙)」(48ウ)

【奥入01】一還城楽陵王をあや布めむとす
    くるゝ尓者ちしてをむ万尓可起可へ春
    といふ事也くハし具志らす
    此等事可否難弁
    史記
    魯陽以戈廻落日事歟
    同時哥歟不可為証哥歟

【奥入02】宇治河さめてよるハ者し
      ひめいやねさるらん」(49オ)

イ本
以哥詞為巻名一の名ハ優婆そくの宮薫中将十六歳の事有此巻
匂兵部卿紅梅竹河同時の事と見えたり
  号莵道巻事
宇治十帖ハ式部娘大弐三位書たる也云々然は斑彪〔ハンヒウ〕か史記を書さし
たるを其子斑固〔コ〕書続たるに似たるへし大弐三位は右衛門佐藤宣
孝か女賢子後一条院御乳叙三位也
応神天皇ト申ハ宇佐宮の八幡大菩薩の御事也御子に大鷦鷯御子其
御弟莵道稚子と東宮をたかひに論給へるにたとへて桐壺御門
の御子第十御子冷泉第八宮宇治東宮の事ニより第十宮東宮ニ
立給へハ八宮莵道へ隠居シ給ヘル事ヲ模彼書之也云々
  以師説書付之 良鎮」(49ウ)

二校了(朱)」(前遊紙1オ)