First updated 03/10/2002
Last updated 08/20/2025
渋谷栄一翻字(C)
橋姫
凡例
1.『大島本 源氏物語』(角川書店 平成8年5月)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名と区別するために太字で表示した。
3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で表示した。
4.変体仮名は字母で表示した。
5.片仮名はそのまま片仮名で表示した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、より元の字母の漢字に近い字形には「1」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「2」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記等は小字体で表示した。
8.本文中の朱点及び朱書きは朱色で表示した。
9.行頭に同字が並ぶ場合に、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。
「はし姫」(題箋)
そ2の古ろ世尓か春まへられ給者ぬ布る宮
0001【そのころ】−八宮△居時分をいふへし
0002【かすまへられ給はぬ】−桐壺御門の御子の数にかすへ△(△#ラ)れ給ハぬとなり
お1ハし个り・はゝ可多な2とも1やんこ2とな2くも能
0003【はゝかたなとも】−左大臣の女と見えたり
志多1まひて2・春ちこ2と那るへきおほえな2登
お者し遣るを・と起う徒りて世中尓者した
0004【はしたなめられ】−半の心なり
な2められ給个るまきれ尓・中/\いとな2こりな2
く御うしろミなとも1・も1のう羅めしき心/\
尓て・か多/\尓徒氣けて2・世越そむきさりつゝ・
おほや氣わ多くし尓より所なく佐し者(△&者)
な2堂れ給へる屋うな2り・き多能可多もむ可
0005【きたのかた】−姫ー母
志の1大臣の御む春めな2り个る・あハれ耳古ゝ」(1オ)
ろ本そ具おや多ち能おほしをきて多り
0006【おやたち】−北方ノ
志さ満な2と・おもひいて給ふ尓多1としへな2き
事おほ可れと・布るき御契のふ多つ1な2き2
者可りを・うき世能なくさめ尓て・か多ミ耳
又なく堂のミ可ハし給へり・登しこ2ろふる尓・
御こも能し給ハて・心もとな2可り个れハ・佐う/\
志く徒連/\なるな2くさめ尓・い可てお1可し
からむちこも可な2と・宮そと起/\お1ほし
0007【宮】−八宮
の多まひ遣流尓・めつら志く女君のいとう徒
0008【女君】−上巻之君
くし氣なるむまれ給へり・これを可起り」(1ウ)
なくあハれとおもひ可し徒きゝこえ給尓1・さ
志徒ゝき遣しき2者見給ひて2・こ能多ひ
ハお1とこ尓てもな2とおほし多る尓・おな2しさ満
0009【おなしさまにて】−中君誕生事(明融臨模本0005)
尓て堂ひら可尓1ハ志多まひな2可羅・いとい1多
く王つらひてうせ給ぬ・宮あさましうお1
0010【うせ給ぬ】−北方御事
ほしまと婦ありふる尓徒氣ても・いとはし
0011【ありふるにつけても】−北方誕生事(明融臨模本0006)
多1なく多へ可多起事おほ可る世な2れと・見
春てか多くあハれなる人の御ありさ満心
さ満尓・可けとゝめらるゝ本多し尓てこ2そ春
くしきつ連・ひとりと満りて・いとゝすさ満」(2オ)
志くも1あるへき可那・い者けな2き人/\をも・
ひとりはくゝ見多てむほと・可起りある身尓
ていとおこ可ましう人王ろかるへきこ2とゝお1
ほし多ちて・本ひも1とけま本しう志多ま
ひ个れと・みゆ徒るつる($(朱)、#(墨)可多(朱))なくて・の古しとゝめむ
をいみしうお本し多ゆ多1ひ徒ゝ・とし月
も1ふ連ハ・をの/\お21よすけ満さり給ふさ満
0012【およすけまさり給ふ】−姫君達の御事
可多ちのうつ1くしうあらま本しき越・明く
連の御な2具さめにて・をの徒可ら見すくし
給・後尓むまれ給し君をはさふら婦人/\も・」(2ウ)
いてやお1りふし心うくな2とうち徒ふやき
0013【いてや】−さてもなといふ詞なり
0014【心うくなと】−古今 いて我を人なと(古今508・古今六帖1804、花鳥余情・岷江入楚)
て・心尓い連てもあつ1可ひき古えさり个れと・
可き里能さ満尓てな尓事も1お本し王可
さりしほとな2可ら・これをいと心くるしとおも
ひて2・多ゝこの1君を可多身尓見給ひて2・
0015【たゝこの君を】−北方の遺言
あハれとおほせ2登ハ可り・堂ゝひとこ2とな2む宮
尓き古えをきたまひ个れハ・さ起の世の契
も徒らきおりふしな2れと・さるへき尓こ2そハ
あり遣めと・い満ハとみえしまて・いとあハれと
思ひて2・うしろめ多氣尓の多まひしをと・」(3オ)
お本しいて徒ゝ・この1君をしもいと可な2し
う志多てまつり堂まふ・か多ちな2む満こ2と尓
いとうつ1くしう・ゆゝしきまてものし給
个る・ひめ君ハ心者せ2志つ1可尓よしあ流可多
尓て・みるめもてな2しも1・遣多可く心尓く起さ満
そ志給へる・い多ハしくやむこ2とな2き春ち
0016【やむことなきすち】−いもうと姫君の事也
ハ満さりて・いつ連をもさ満/\尓おもひ可し徒
きき2こえ給へと・可な2ハぬ事おほくとし月
尓そへて2・宮のうちも($(朱))さひしくのミな2り満
さ流・さふらひし人も多つきな起心ち春」(3ウ)
流尓・盈志のひあへ春・徒き/\尓志多可ひて・
ま可てちり徒ゝ王可君の御めのとも1・さ流さ
0017【わか君】−妹
者起尓者可/\しき人をしも・えりあへ
給ハさり个れハ・ほと尓つけ多る心あさゝ尓1て2・
0018【心あさゝにて】−騒きによりて心のかは(△△&かは)るをいへり
をさな起ほと越み春て2堂てまつり耳
个れハ・堂ゝ宮そ者くゝ見給ふ・佐春可尓1
0019【はくゝみ】−養育<ハクヽム> 省同
ひろくおもしろき宮能いけ山な2との个し
き2ハ可り・む可しに可ハらて・いとい多うあれまさる
を・つ連/\とな2可め給ふ・氣いしな2ともむ年
0020【けいし】−家司
む年しき人も1なきまゝ尓・草あをや」(4オ)
可尓志个り・軒の志のふそ所盈可本尓・あ越
み王多れる・おり/\尓つけ多る花もみち能色
をも可をも1・おな2し心尓見者やし給ひし
尓こ2そ・なくさむこ2ともおほ可り个れ・い登ゝ
志く佐ひしく・より徒可む可多那な2起まゝ
尓・ち佛の御可さりハ可りをわさとせ2させ給て・
あけくれおこな2ひ給・可ゝる本多しとも尓・かゝ
徒ら婦多尓・おもひの本可尓くちおしう王可
心な2可らも・可那者さり个る契とおほゆるを・
まひて2な2尓1ゝ(#)可世の人めいてい満佐ら尓と能ミ・」(4ウ)
とし月にそへて2世中をおほし者な2れ徒ゝ・
心ハ可りハひし里尓なり者てたまひて・こ
君のうせたまひ尓1しこ2な2多ハ・連いの人農
さ満なる心者えな2と・堂ハふ連尓てもお本
しいて給ハさり个り・な2と可佐しもわ可る類
本との可な2しひハま多・世尓たくひな2起やう
尓能ミこ2そハ・お本ゆへ可めれとありふれハ・さの
みやハ猶世人(△&人)尓な2すら婦御心徒可ひをし
給ひて2・いと可くみくるしく・多つ1きな2
き2宮のうちも・をのつ可らもてな2さ類ゝ」(5オ)
わさもやと・人ハもときき古えて・な2尓1くれ
と・徒き/\志くき古えこつ1こ2とも1・る1る($ひ(朱))に
ふ連て2おほ可連とき古しめしいれさり个り・
御念春のひま/\尓ハ・この君多ちをもてあ
そ2ひ・やう/\およす希給へハ・こ2とな2らハし・五
うちへん徒きな2と者可な2き御あそひわさ
0021【へんつき】−篇突
尓つけて2も・心者へとも越み多てまつり給ふ尓・
ひめ君ハ・らう/\しく・ふ可くおもり可尓みえ
多1まふ・王可君ハおほと可尓1らう多けな2る
さ満して・もの徒ゝミ志多る遣ハひ尓・いとう徒」(5ウ)
くしうさ満/\尓おハす・春のう羅ゝ可な2る
日可け尓・池の水とりとも1の者ね1うち可ハし
徒ゝ・をの可志ゝ佐え徒るこ2ゑな2と越つ年ハ・
者可な2きこ2と尓み多まひし可とも1・つ1可
ひ者な2連ぬを・うらやましくな2可め給ひ
て・君多ち尓・御こ2とゝも1をしへきこえ堂
まふ・いとお可し遣尓ちひさ起御本と尓・とり
とり可起な2らし給ふも能ゝね1とも1・あハれ耳
お可しくきこ2ゆ連ハ・涙をうけたまひて2
うち春てゝ徒可ひさり尓1し水とりの1」(6オ)
0022【うちすてゝ】−宇治宮
可りのこ能世尓多ちをくれ个ん心徒くしな2り
0023【かりのこ】−鴨子の事也
0024【この世に】−子によせたり
0025【心つくしなり】−うつほ第二かひの中に命こめたるかりの子ハ君かやとにそかへさゝらなん(宇津保物語25、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚)
やと・めをしのこひ給可多ち・いときよけ尓1
おハします宮な2り・とし比の1御おこな2ひ耳・
屋せ本そり給尓多れと・さてしもあて尓1・
な2満めきて君多ちを・可し徒き給ふ御心
者え尓・な越しのな2え者めるをき給ひて・
志とけな2き御さ満いと者つ可し氣也・ひめ
0026【ひめ君】−姉
君御すゝりを屋をらひきよせて2・てな2
らひのやう尓可起ませ給ふを・これ尓可き2
給へ・春ゝり尓は可きつけさな2りとて・可ミた」(6ウ)
0027【すゝりにはかきつけさなり】−硯をハ文殊のまなこといへり みる石の面に物ハかゝさりきふしの楊枝ハつかハさらめや 菅(出典未詳、河海抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
てまつり給へハ・者ちらひて可起多まふ
い可て可くす多ち个るそ2と思ふ尓1もう起
0028【いかてかく】−姉君
0029【うき水とり】−身によせたり
水とりの契をそしるよ可らね1と・その1
おりハいとあ(+ハ)連な2り个り・てハおいさ起みえて
ま多よくも徒ゝ遣給者ぬほと也・王可君とか
0030【わか君】−妹
きたまへとあ連ハ・い満春古しおさ那遣尓・ひ
佐しく可きいて給へり
なく/\も1者ね1うちきする君な2くハ
0031【なく/\も】−中君
我そ春もり尓なりハ者てまし御そ2とも1
0032【すもりになりハはてまし】−拾七 鳥の子ハまたひななから立ていぬかいのみゆるハすもりなりけり(拾遺集383・拾遺抄478、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
な2と・な盈者見ておまへ尓・ま多人も1」(7オ)
なくいとさひしく・つれ/\遣なる尓・さ満/\
いとらう多け尓ても能し堂まふを・あハれ尓
心くるしう・い可ゝおほさゝらん・経を可多て尓1も
多1まいて2・可つよミ徒ゝ・佐う可をし給・ひめ
0033【さうか】−昌歌
君尓ひ王・わ可君尓佐うの御こ2と・ま多おさ那
个れと・つ年尓あハせ徒ゝ・な2らひ給へハ・きゝ尓
くゝも1あらていとおかしくきこゆ・ちゝみ可と
0034【ちゝみかとにも】−これよりハ昔の事をいへり
尓も・女御尓1も・とくをくれき古え給ひて・者可
者可しき2御うしろミ能とり多て多るお者勢
さり个れハ・さゑな2とふ可くも盈な2らひ多1」(7ウ)
満ハす・まいて世中にすミ徒く御心をきてハ・
い可て可ハ志り多1まハむ・多可き人ときこ2ゆ
流な可尓1も・あさましうあて尓おほと可なる・
女の1やう尓お者春れハ・布るき世の御多1可ら
物・おほちお1とゝの御そう婦んな尓や可やと・
0035【おほちおとゝ】−母方大臣
徒きすまし可り个れと・ゆくゑもな2く・者可
な具うせ者てゝ・御てうとな2登者可りな2ん・
わさとうるハしくてお本可り个る・満いりと
ふらひきこえ・心よせ多てまつる人もな2し・
つれ/\な2るまゝ尓・う多徒可さのものゝ志とも」(8オ)
0036【うたつかさ】−雅楽司<ウタツカ>
0037【ものゝしとも】−琴笛等
な2とやうの・春くれ多るをめしよせ徒ゝ・者可
なきあそひ尓心をいれておいゝて給へ連
ハ・そ2の可多ハいとお1可しう春くれたまへり・源氏
のお1とゝ能御おとうと尓おハせしを・連せ2い
0038【おとゝ】−藤なり
院の東宮尓おハしましゝと起・春佐く院
のおほきさ起の1・よこさ満尓お本し可まへて・こ
0039【おほきさき】−二条
能宮を世中尓多ちつき給ふへく・王可御と
きもて可し徒き多てまつり个るさハ起尓・
あひな2くあな2多さ満の御な2可らひ尓ハ・佐し
0040【あなたさまの】−源氏
者な2多れ給ひ尓个れハ・いよ/\可能御徒き/\尓」(8ウ)
な2り者てぬる世尓て・盈ましらひ給ハ春・
ま多この1としこ2ろ可ゝ流ひし里尓なり
ハてゝ・い満ハ可きりとよろつ1をお本し春て
多り可ゝるほと尓・春見給ふ宮や遣尓氣
0041【宮やけにけり】−焼失事(明融臨模本0017)
里・いとゝしきよ尓1・あさましうあえな2く
て・うつ1ろひすミ給ふ遍き所のよろしき2
も1な2可り个れハ・うちといふとこ2ろ尓よしある
0042【うちといふところに】−移住宇治事(明融臨模本0018)
山佐と・も多まへり个る尓わ多り給婦・おもひ
春て堂まへるよな2れとも1・い満ハとすミ者
な2れな2んを・あハれ尓お本さる・あしろ能遣」(9オ)
ハひち可く・みゝ可し可満しき・川のわ多り尓
て・志つ1可なる思日尓・可那ハぬか多も1あれと・い
可ゝハせ2む・花もみち水農な2可れ尓も・心をや
流堂より尓よせて・いとゝしくな2可め給よ
里本可能こ2とな2し・可く多1えこもりぬる野
山の春ゑ尓も・む可し能人も能し給ハまし可
0043【むかしの人】−北方
ハと・おもひき古え堂満ハぬおりな2可り个り
みし人も1宿も个ふり尓なり尓1しを
0044【みし人も】−宇治宮
な尓1とて我身きえのこり个んい个る可ひ
0045【いけるかひなく】−\(朱合点) 大和 雲井にてよそふる比ハ五月雨のあめの下ニそいけるかひなき(大和物語168、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
な2くそお本しこ可るゝや・いとゝ山可さな2れる・」(9ウ)
0046【山かさなれる】−六帖五 月よミの光ニきませ足引の山かさなりてと越からなくに(古今六帖2841、花鳥余情・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
御春み可尓多つ年満いる人な2し・あやしき2
下春な2とゐな2可ひ多る山可つ1とものミまれ尓・
0047【まれになれまいりつかうまつる】−大和 しほかまの浦ニハ海人のたえニけんなと漁のみゆる時なき(大和物語81、河海抄)
な2れまいり徒可うまつる・みね1のあさきりハる
0048【みねのあさきり】−\(朱合点) 古今 かりのくる嶺の朝霧たえすのミ思つきせぬ世中のうさ(明融臨模付箋01 古今935・新撰和歌255・古今六帖634、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
流おりな2くて・あ可しくらしたまふ尓・この1う
0049【うち山にひしりたちたるあさり】−喜撰隠居宇治山持密呪食松葉得仙道云々 古今 我庵ハ都(古今98・古今六帖885、花鳥余情・弄花抄・一葉抄・細流抄・孟津抄・岷江入楚)
ち山尓・ひし里多ち多るあさり春ミ个り・さへ
いと可しこくてよのおほえも1可ろ可らね1
と・おさ/\おほや遣こ2と尓も1いて徒可へ春・
古もりゐ多る尓・この1宮能可くち可き本と尓
春ミ給て2・さひしき御さ満尓・堂うとき
王さ越せ2させ給つゝ・法もんをよ見な2らひ」(10オ)
堂まへハ・多1うと可り・きこえて・つ年尓まいる・
としこ2ろまな2ひ志り給へる事ともの1・
布可き心越・ときき可せ多てまつり・いよ
いよこ(の1&こ)の世のいと可りそめ尓あち起なき
こ2と越申志ら春れハ・心者可りハ者ち春の
0050【心はかりハ】−宇治宮詞
0051【はちすのうへ】−\(朱合点) 拾遺 けふよりハ露の命もあしからす蓮の上の玉とちきれハ実方(拾遺集1340・実方集5、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 同 一たひも南無阿三陀仏といふ人の蓮のうへにのほらぬハなし空也上人(拾遺集1344、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚)
うへ尓思日の本り・にこりな2き池尓1も春見
ぬへきを・いと可くおさなき人/\をみ春て
む・うしろめ多さハ可り尓な2む・盈ひ多みち
尓・可多ちをも可へぬな2と・へ多てな2く物可多り
志給・この1あさりハ・連せい院尓1も志多しく」(10ウ)
さふらひて・御経な2とをしへきこゆる(=奉る)人な2り
个り・京尓いて多る徒ゐて尓満いりて・連いのさ
流へきふミな2と御らむして・とハせ給ふこ2とも
0052【ふみ】−文
ある徒ゐて尓・八の宮のいとかしこく・な2い遣う
0053【八の宮の】−聖物語申
0054【ないけう】−内教(明融臨模本0021)
の御佐え・さとりふ可くも能し給个る可那・さるへ
き尓てむまれ多1まへる人尓や・も能し給ら
む・心ふ可く思ひ春まし給へるほと・満こ2と
のひし里の1を起て尓な2むみえ給とき
こ2ゆ・いま多可多ちハ可へた満ハすや・そくひ
0055【いまたかたちは】−院御詞
0056【そくひしり】−東坡山谷なとも身つから有髪僧在家僧なと詩ニつくれり
し里と可・この王可き人/\・のつけ多1な2る・」(11オ)
あハれなるこ2と也な2との多まハす・さい相中
0057【さい相中将】−かほる大将の事也
将も1・御前尓さふらひ給て2・王れこ2そ世中
をは・いとすさましう思日志りな2可ら・おこな2
ひな2と人尓め登ゝめらるハ可りハ・徒とめす
くちおしくて・春くしくれと・人志連春お1
もひ徒ゝ・そ2くな2可らひし里尓な2り給ふ心
の1をきてやい可尓と・みゝ登ゝめてきゝた
0058【いかにとみゝとゝめてきゝたまふ】−我身ニおもひくらへてきゝたまふ也
まふ・出家の心佐しハ・もとよりも1能し給へる
0059【出家の心さしハ】−阿闍梨詞
を・者可な2きこ2と尓おもひとゝこ本り・い満と
な2りてハ・心くるしき女子とも1の・御うへを」(11ウ)
盈・おもひ春てぬとな2んなけき侍り多1まふ
とそう春・佐春可尓も能ゝね1めつるあさり尓
て・遣尓者多この1ひめ君多ちのこ2とひき
あ者せ2てあそひ給へる・河なミ尓きをひて
き古え侍ハ・いとおもしろく・こくらく思ひ
0060【こくらく思ひやられ】−[辷-一+景]迹也すくれたる心ニいへり
屋ら連侍やと・こ多1いにめつ連者・み可登
0061【こたい】−古代也
0062【みかと】−冷院号後経言也
ほゝゑみ給ひて2・さるひし里のあ多り尓・
おひいてゝこのよ能可多さ満ハ・たと/\し閑
らむ(+と)・おし者可らるゝを・お1可し能こ2とや・
うしろめ多くおもひ春て可多かたく・もて王つ」(12オ)
らひ給らんを・もし志ハしも1をくれむほと
ハ・ゆつりやハ志多満者ぬな2とその多1まハする・
この1院のみ可とハ・十能みこ尓そおハしまし个る・
0063【院のみかと】−冷
0064【十のみこ】−ウ
春佐く院のこ六条院尓・あつけき古え給し
入道の宮能御多1めしをお1(/\&お)も本しいてゝ・か
0065【入道の宮】−女三宮御事
能君多ちを可那・徒連/\なるあそひか
多起尓な2と・うちお本し个り・中将君中/\
0066【中将君】−かほる御事
みこのおもひ春ましたまへらむ・御心者え
0067【みこ】−八宮
を多1いめむして・み多てまつらハやとおもふ
心そふ可くな2りぬる・さてあさりの可へりい流」(12ウ)
尓も・可な2ら春満いりて物ならひきこ2ゆへく・ま
徒うち/\尓1も个しき給ハり堂まへな2と・か
多らひ多1まふ・み可との御こ2とつて尓1て2・あハれ
0068【みかとの御ことつて】−院遣状於宇治宮事(明融臨模本0027)
なる御春満井を・人徒て尓きくこ2とな2と
き古え堂まうて
世をいとふ心ハ山尓かよへとも1やへ多つ
0069【世をいとふ】−院御門
雲を君や遍多つるあさりこの御徒可ひ
をさき2尓多てゝ・可能宮尓満いりぬ・な2能め
なるきハのさるへき人能徒可ひ多尓・まれ
な2る山可け尓いとめつら志くまちよろこひ」(13オ)
給て2・所尓つけ多るさ可な2なとして・さ流可多
尓もて者やし給御返し
あと堂えて心春むとハな2个れとも1世
0070【あとたえて】−宇治宮
をうち山尓屋とをこ2そ可れひし里能可多
0071【ひしりのかた】−院の御心中
をハひ氣してき古えな2し給へ連ハ・猶よ尓
うら見のこり个ると・いとおしく御らむ春・
あさり中将の多う志む布可け尓も能し給
0072【中将のたうしむふかけに】−聖物語
婦な2とか多りき古えて・法文な2との心え満
0073【法文なとの心えまほしき心さし】−宰相中将道心事(明融臨模本0029)
本しき心さしな2ん・い者氣な2可りしよ者ひ
より・ふ可くおもひな2可ら・盈さ羅春よ尓あり」(13ウ)
布るほと・おほや氣わ多くし尓いと満な2く
あけくらしわさと・とちこもりて・な2らひよミ
お本可多者可/\しくもあらぬ身尓1しも1・
世中をそむき可本な2らむも・者ゝ可るへき
尓あらね1と・をの徒可らうち堂ゆミ(+て)・ま起ら
ハしくてな2無・春くしくる越・いとあり可多起
御ありさ満を・うけたまハり徒多へしより・
可く心尓可にけてな2ん・多のミきこえさするな2
と・ね1むこ2ろ尓申給ひしな2と・可多りきこ
遊・宮よ能な2可を可りそめ能こ2とゝおもひとり(△△△△&おもひとり)・」(14オ)
0074【宮】−返答
いとハしき心の徒きそむる事も1・王可
身尓うれへあるとき・な2へて2能世もうらめ
志う・思日志流者しめありてな2ん・道心もおこ
流王さな2めるを・としわ可く世中おもふ耳・
可な2ひ・な尓こ2とも1あ可ぬこ2とハあらしとお
本ゆる身のほと尓・さ者多後の世をさへ多1
とり志り給らん可・あり可多かたさ・古ゝ尓はさへき2
尓や・多ゝいとひ・者な2連よとこ2と・佐ら尓佛
な2とのすゝめおも1む遣たまふ屋うな2るあり
さ満尓て・をの徒可らこそ志徒可な2る思ひ・可な2」(14ウ)
ひゆけとのこりすくな2き心ち春る尓・者可/\
志くもあらて・春きぬへ可めるをきしか多ゆく
春ゑ佐らに尓・盈多る所な2く・おもひ志ら流ゝ
を可へりてハ・心者つ可し遣なる・法のとも耳
0075【ともに】−友なり
こ2そハも能し給な2れな2との多まひて・可多ミ
尓御せう楚こ可よひ・みつ1可らもまうて給ふ・
遣尓きゝしよりも1(△&も1)・あハれ尓春まひ多満へる
0076【けにきゝしより】−かほる心中
0077【きゝしよりもあはれにすまひたまへるさま】−宰相中将対面宮事(明融臨模本0034)
さ満よりハしめて・いと可りなる草能い本り
尓おもひな2し・こ2とそ起多り・おな2しき山さ
とゝいへと・さる可多尓て・心とまりぬへくの1と」(15オ)
や可なるも1ある越・いとあら($ら(朱))ましき水農
をと・な2ミのひゝき尓も1の1王春れうちし・
よるな2と心とけて・夢を(を&を)多尓みるへきほと
もな2け尓・春こく布起者らひ多り・ひし里
堂ち多る御堂め尓・可ゝ流志もこ2そ・心と満
らぬもよ本しな2らめ・女君多ちな2尓心ちし
て・春くし給らむ・よ能つ年能女志く・な2よひ
たる可多ハ・と越くやとおし者可らるゝ御
ありさ満な2り・佛の御へ多て尓佐うしハ可り
をへ多てゝそ・お者すへ可める・春起心あらむ」(15ウ)
人ハ遣しき者ミよりて・人能御心者えをも
みま本しう・さす可尓い可ゝと・ゆ可志うもある
御遣ハひな2り・されとさる可多越おもひ者なる
0078【さるかた越】−好色の方の事なり
流ね1可ひ尓・山ふ可く多つね1きこえ多る本ひ
なく・春き/\しきなをさりこ2と越うち
いて・あされ者まむも・こ2と尓た可ひてやな2と・
おもひ可へして・宮能御ありさ満のいとあハれ
なるを・ね1むこ2ろ尓とふらひきこえ多1ま
ひ・多ひ/\満いり給ひ徒ゝ・おもひしやう耳・
う者そくな可羅・おこな2ふ山のふ可き心・法」(16オ)
0079【うはそく】−仏の四部の弟子の其一也 賀茂役公小角<エノキミヲス>年卅二にして家をはなれかつらき山へ入てをこないし人也 役優婆塞となつく山伏の行ハ是よりはしまれりとなん 六帖 うハそくかおこなふ山のしゐか本あなそハ/\しとこにしあらねハ(宇津保物語212・435、花鳥余情・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
もんな2とわさと佐可し遣尓はあらて・いとよく
0080【いとよくのたまひしらす】−中将与宮法談事(明融臨模本0039)
の多まひ志らす・ひし里多つ人・佐えある本う
しな2とハ・よ尓お本可れと・あまりこ者/\しう・
遣と越氣那る・志うとくのそう徒・そう正の2
0081【しうとく】−宿徳(明融臨模本40)
きハゝ・世にいとまな2くきすく尓て・も1(△&も1)能ゝ心
をとひあらハさむも・こ2と/\しくおほえ
たまふ・ま多そ能人な2らぬ佛の御てし能
いむこ2と越多もつハ可りの堂うとさはあれと・
遣ハひいやしく・こ2と葉堂ミて・こちな2け尓
0082【こちなけに】−無骨也
ものな2れ多る・いとも1のしくて・ひるハおほや」(16ウ)
氣こ2と尓いと満な2くなとし徒ゝ・志めや可な2る
よひのほと・遣ちかき御まくら可ミな2と耳・
めしい連可多らひ給ふ尓もいと・さす可尓物む
徒可しうな2と能ミあるを・いとあて尓こゝろく
流しきさ満して・の多まひいつるこ2との葉
も1・おな2し佛の御をしへをも・みゝち可き2
たとひ尓・ひきませいとこよな2くふ可き御
さとり尓ハあらね1と・よき人ハものゝ心をえ
0083【よき人】−たときをいふ
多まふ可多の・いとこ2と尓も1のしたまひ个れ
ハ・屋う/\みな2れ多てまつり給多ひこ2と耳・」(17オ)
つ年尓ねにみ多てまつら(+万)本しうて・いと満な2くなと
して・程布るときハ・恋志くお(△△△&志くお)ほえ給・この
0084【この君】−中将をいへり
君の可く堂うと可りき古え多満へ連者・
連せい院よりも・つ年尓御せ2うそこな2とあり
て・としころをと尓1も・おさ/\き古え給ハ春・
さひし遣な2りし・御春ミ可やう/\人めみる
と起/\あり(+おり(朱&墨))ふし尓・とふらいき古え給こ2と・い可
めしうこの君もまつさるへき事尓つけ
0085【この君】−かほる
徒ゝ・お可しきやう尓もまめや可なるさ満
尓も・心よせ徒可つかうまつり給こ2と・三年ハ可り尓」(17ウ)
なりぬ・秋の春ゑ徒可多四($四(朱))き尓あてゝ志給・御
0086【四きにあてゝ】−宮ー
念仏をこの河徒らハ・あしろのな2ミもこの2
こ2ろハいとゝみゝ可しかましく・志つ1可な2らぬを
とて・可能あさりの春む寺の堂う尓・うつろ
0087【すむ寺】−今の橋寺辺歟
0088【うつろひたまひて】−宮ー
ひ多まひて2・七日能ほとおこな2ひ給ふ・ひめ
君多ち者いと心ほそく・つれ/\満さりて2
な2可め給个るこ2ろ・中将の君ひ佐しくまいら
0089【中将の君ひさしくまいらぬかなと】−薫 中将向宇治事(明融臨模本0041)
ぬ可な2と思ひいてき古え給个るまゝ尓・あり
明の月のま多夜ふ可く佐しいつる本と尓・いて
多ちて・いと志のひて・御とも尓人な2ともな2く」(18オ)
て・や徒連ておハし个り・川のこ2な2多な2れハ・
舟な2とも1王つらハて御馬尓てな2り氣り・
いりもてゆくまゝ尓・霧ふ多可りて・道も見
えぬ志けきの中をわけ給ふ尓・いとあらま
0090【しけきの中を】−しけ木中 親行語
しき風のき本ひ尓・本ろ/\(+と(朱&墨))おちみ多るゝ
木葉の露のちり可ゝるも・いとひやゝ可尓人
屋りな2らす・い多くぬ連給ひぬ・可ゝるあり
きな2とも1・お1さ/\な2らひ多1満ハぬ心ち耳・
心本そくお可しくお本され个り
山おろし尓多1えぬこの葉の露よりも」(18ウ)
0091【山おろしに】−薫大将
あやなくもろき我涙可な2山可つのおとろ
0092【我涙かな】−俊成卿此哥によりて嵐吹嶺の木葉の(定家十体245)
くもう流佐しとて・春い志んのをともせさ
せ2給ハす・志者のま可きを王け徒ゝそこ者
0093【しはのまかき】−柴
可とな2き水のな2可連とも越・ふミ志多くこ満
0094【ふみしたく】−踏
のあしをとも1・猶志のひてと・ようひし給
へる尓・可くれな2き御尓本ひそ風尓志多可ひ
て・ぬし志らぬ可とおとろく・ね1さめ能家々あ
0095【ぬししらぬかと】−\(朱合点) 古今 主しらぬ香こそにほへれ秋のゝニ誰ぬきかけし藤袴そも(古今241・古今六帖3727・和漢朗詠290・素性集20、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
里个る・ち可くなる本と尓・そのこ2とゝも1・きゝ
王可連ぬものゝね1とも1・いと春こけ尓き2こ
遊・徒年尓可くあそひたまふときく越・徒いて」(19オ)
なくて・みや能御こ2とのね1の1な2多可起も盈
0096【みやの御ことのね】−中将聞比巴箏事(明融臨模本0048)
き可ぬそ可し・よ起お1りなる遍しとおもひ
徒ゝ・いり給へハ・ひ王のこ2ゑの1ひゝきな2り个り・
王う志きてう尓しらへて2・よのつ年能
可きあ者せな2れと・所可ら尓やみゝな2連ぬ
心ちして・可き可へ春者ちのおとも1物きよ
け尓1おもしろし・佐う能こ2とあハれ尓な2満めひ
多るこゑして・多1え/\きこゆ・志ハしき可
満本しき尓志のひ給へと・御遣ハひ志るくき
きつけて2・とのひ人め(+く)おのこ・な2満可多くなし」(19ウ)
き2いてき多り・志可/\な2んこもりおハします
0097【しか/\なん】−とのゐ人の詞
御せ2うそ2こをこ2そき古えさせめと申春・な
0098【なにかしかかきりある】−かほるの詞
尓1可・し可かき里ある御おこな2ひの程を・ま起
らハしき古えさせ2む尓・あひな2し・可くぬ
連ぬれ満いりて・い多つら尓可へらむうれへを・
ひめ君の御可多尓き古えてあハれと能給
者せハな2む・なくさむへきとの多まへハ・み
尓くき可本うちゑミて・申させ侍らむとて
0099【うちゑミて】−とのい人
多つ1を・志ハしやとめしよせて・としころ
0100【しハしやと】−かほる
人徒て尓のミきゝて・ゆ可しくおもふ御こ2と」(20オ)
のね1とも1を・うれしきおり可な2・志ハし春
古し多1ち可くれて・きくへきものゝく満あ
里や・徒きなく佐し春きてまいりよらむ
ほと・みな2こ2とやめ給ひて2ハいと本ひな2可
らんとの給・御氣ハひ可本か多ち能さるな
0101【御けはひかほかたちの】−とのゐ人の心中詞なり
をなをしき心ち尓1も・いとめて多く可多
志けなくおほ遊連ハ・人き可ぬと起ハ・あけ
くれ可くな2んあそハせと・しも1人尓ても宮
この可多よりまいり多ちましる人侍ると
きハ・をとも1せ2させ給ハす・おほ可多かくて」(20ウ)
女堂ちお1ハしますこ2とをは・可くさせ給ひ・
なへての人尓志らせ多てまつらしとお本
しの多満ハするなりと申せハ・うちわらひ
0102【うちわらひて】−かほる
て・あちきなき御もの可へ($く(朱))しな2(+な2(朱))り・し可志
のひ給ふな2れと・みな2人あり可多起世能堂
めし尓きゝいつ1へ可めるをとの給て・な越
志るへせ2よ・王れハ春き/\しき心な2とな
き2人そ2・可くておハしますらむ御ありさ
満の1あやしく・遣尓なへて尓おほえ給
ハぬな2りと・こまや可尓能多まへハ・あな2可し」(21オ)
0103【あなかしこ】−とのゐ人
こ心な2きやう尓後のき古えや侍らむとて・
あな2多能御まへハ・多けの春い可ひ志こめて・
ミ那へ多てこ2となるを・ゝ志へよせ多てまつ1
連り・御ともの人ハ尓1しの1らう尓よひすへて・
このとの井人あひ志ら婦・あな2多尓かよふへ
可め流・春ひ可ひのとを・春古しをしあけ
て見給へハ・月お1可しき本と尓・霧わ多れる
をな2可めて・す多れをみし起くまきあけて2・
人/\ゐ多り・春のこ尓いとさむ遣尓身本
そくな2え者め流王らハひと里・おな2しさ」(21ウ)
満なるお1とな2なとゐ多り・うちなる人一
0104【うちなる人】−姫ー
人・者し羅尓春古しゐ可くれて・ひ者をま
へ尓をきて・者ちをてまさくり尓し
徒ゝゐ多る尓・雲可くれ多りつる月能尓1ハ
可尓・いとあ可く佐しいて多れハ・あふきな2ら
0105【あふきならて】−姫君
てこれしても・月ハま年きつ1へ可り氣り
とて・佐しのそ起多る可本・いみしく羅う多
0106【さしのそきたる】−姫
け尓1尓本い屋可なるへし・そひふし多る
人ハこ2とのうへ尓・か多ふき可ゝりて・いる日を
0107【いる日をかへすはち】−\(朱合点) 返日撥事(明融臨模本0054) 女房答 還城楽陵王ニ入日ヲカヘス撥アリ
可へ春者ちこ2楚あり个れ・さ満こ2と尓も1・お1も1」(22オ)
ひ・をよひ給ふ・御心可な2とて・うち王らひ多1
流遣ハひ・い満春古しおもり可尓よし徒き
多り・をよハすとも1・こ連も月尓者な2るゝ
0108【をよはすともこれも】−又姫君隠月の事をおもひよせ侍る心詞なり
物可はな2と・者可な2きこ2と越うちとけの給
可ハし多る遣者ひとも1・佐ら尓よそに思ひ
やりし尓ハ尓す・いとあ者れ尓な2つ可しう
お可し・む可し物可多りな2と尓・か多り徒多へ
0109【むかし物かたりなとに】−住吉物語姫君の琴引給ふを中将きゝつけ侍る事みえたり又うつほ第四月おもしろき夕暮ハ君いま宮ひめ宮みす巻あけて琴とも引あはせあそひ給ふ事あり
て王可き女房な2とのよむをもきく尓1・
可な2ら春可やうの事をいひ多る・佐しも1あ
らさり个むと・尓1くゝお1し者可羅るゝを・希」(22ウ)
尓1あハれなる物のく満ありぬへき世な2り个り
0110【物のくま】−かくれなり
と心う徒りぬへし・きりの布可个れハ・さや
可尓みゆへくもあらす・又月佐しいてな2んと
お本春ほと尓・お1くの可多より人おハす登・
つ氣きこ2ゆる人やあら無・す多れおろし
てミ那いりぬ・おとろき可本尓ハあら春・な2
こや可尓もてな2して・屋をら可くれぬる遣
ハひとも1・きぬのを(△&を)とも1せ2(△&せ2)す・いとな2よら
可尓心くるしくて・いみしうあて尓みやひ
可なるを・あはハれとおもひ給ふ・やをらいて(△△&いて)」(23オ)
て・京尓御車ゐ(=持<モテ>)てまいるへく・人ハしらせ2
0111【御車ゐて】−薫
徒あり(=かはし)つる・さふらひ尓おりあしく満いり
0112【さふらひに】−かほる消息し給ふ
0113【おりあしく】−折 悪
侍尓个れと・中/\うれしくおもふこ2と春こし
なくさめてなむ・可くさふら婦よしき2古え
よ・い多1うぬれ尓多る・可こ2とも1きこえさせ2む
可しとの多まへハ・まいりてきこ2ゆ・可くみえや
0114【まいりてきこゆ】−とのゐ人つけたてまつる也
0115【かくみえやしぬらんとハ】−姫君
志ぬらんとハ・お本しも2よらて・うちとけ多り
徒る事とも1を・きゝや志多まひ徒らむと・
いといみしく・者可かし・あやしく・かう者し
く尓本ふ風能吹徒るを・おもひ可けぬほと」(23ウ)
な2れ盤・おとろ可さり个る・心をそ佐よと・心
も1満とひて2・はちをハさうす・御せ2うそこな2
と・徒多ふる人も・いとうゐ/\しき人な2める
を・おり可ら尓こ2そ2・よろつ1のこ2ともと・お本ひ
て・ま多霧のまきれな2連ハ・ありつるみ春の
まへ尓あゆミいてゝ・徒ゐい給ふ・山さとひ多る・
王可人とも1ハ・佐しいら遍むこ2との者もお1
ほえて・御志とね1佐しい徒るさ満も・たと/\
志けな2り・このみ春能まへ尓は・者し多1な2く
侍り个り・うちつけ尓あさ起心者可り尓てハ・」(24オ)
0116【うちつけに】−かほる詞
可くもた多つね1まいるましき2山の可けち耳・
0117【山のかけちに】−\(朱合点) 古今 世ニふれハうさこそまされ三吉のゝ岩のかけ道ふミならしてん(古今951、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
おもふ給ふるをさ満こ2と尓こ2そ・可く露氣
き多1ひを可さねて2ハ・佐りとも1御らむし
志るらむとな2ん・多1のもしう侍と・いとまめや
可尓の給・王可き人/\のな2多ら可尓・も1の
きこ2ゆへきも1なく・きえ可へり・可ゝや可し
遣なるも1・可多ハらい多个れハ・女者ら能・おく
0118【女はら】−達の心なり原也後撰詞衆僧はらなとある同事也
布可きを・お1こしい徒るほとひ佐し具
な2りて・わさとめひ多るもくるしうて・な
0119【くるしうて】−姉宮通言事(明融臨模本0064)
尓こ2ともおもひ志らぬありさ満尓て・志り可本」(24ウ)
尓1も・い可ゝハきこ2ゆへく登・いとよしあり・あて
なるこ2ゑして・ひきいりな2可ら・本の可尓能多
まふ・可つ1志りな2可ら・う起を志ら春可本な2る
0120【かつしりなから】−詞
も1・よ可さかとおもふ多1ま遍志る越・ひと登
こ2ろしも・あまりお本め可せ給らんこ2そ・くち
お1し可るへ个れ・あり可多うよろつ1を・お1もひ
春まし多る・御春ま井な2と尓・たくひき2
古えさせ給・御心の1うちハ・な尓1こ2ともすゝし
0121【御心のうちハ】−\(朱合点) 拾遺廿 さゝ浪やしかの浦かせいかはかり心のうちのすゝしかるらん公任(拾遺集1336、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
く・をし者可られ侍連ハ・猶可く志のひあ
まり侍・布可さあさゝのほとも・王可せ給ハん」(25オ)
こ2そ・可ひハ侍らめ・よ能徒年の春き/\しき
春ち尓は・お本しめし者な2つ1へくや・さやう
の可多ハ・わさとすゝむる人侍りとも1・な2ひく
へうも1あらぬ・心徒よさ尓な2ん・をの徒可ら・き
古しめしあハするやうも1侍りな2ん・つれ/\
とのミ・春くし侍よ能物可りも・き古盈
させ所尓・多1のミきこえさせ・又可く世者な2
連て2・な2可めさせ給らん・御心のま起らハし
尓ハ・佐しもおとろ可させたまふハ可りき2こえ
な2れ侍らハ・い可尓思ふさ満尓侍らむな2とお本」(25ウ)
くの給へハ・徒ゝましく・い羅へ尓くゝて・おこし
つるおい人の・いてき多1る尓そゆつり堂ま婦・
0122【おい人のいてきたるに】−左女弁対面事(明融臨模本0069) 弁君といふ人なり左中弁女
0123【ゆつりたまふ】−姫ー
たとしへな2く・佐し春くして・あな2か多し遣
0124【たとしへなく】−老人詞
なや・可多ハらい多き・おましのさ満尓1も侍可な2・
み春のうち尓こ2そ・王可き人/\ハも能ゝほと
志らぬやう尓侍こそな2と・し多ゝ可ゝ尓いふ
こ2ゑの・佐多春起多るも可多ハらい多く・君
0125【さたすきたるも】−かほる心中
多ちハおほ春・いとも1あやしく世中尓
0126【いともあやしく】−老人ノ詞
春ま井給人の可す尓1もあらぬ御ありさ満
尓て・さもありぬへき人/\多尓・とふらひ・可す」(26オ)
まへき古え給も・みえき古え春のミ・なり
満さり侍める尓・あり可多起御心佐しのほとハ・
可す尓1も侍らぬ心尓もあさましきまて・お1
もひ多1まへ侍を・王可き御心ち尓も・お本し
志りな2可ら・き古えさせたまひ尓1くき尓や
侍らむと・いと徒ゝミなくも能な2れ多1るも・
0127【いとつゝミなく】−かほる心中詞
な2満尓くき2も能可ら・遣ハひい多う人めきて・
よしあるこ2ゑな2れハいと・多つきも志らぬ心ち
0128【たつきもしらぬ】−\(朱合点)
し徒る尓・うれしき御遣ハひ尓こそ・な尓1
こ2とも1遣尓おもひし里給个る・多のミ・こよ」(26ウ)
な2可り个りとて・より井給へるを・き丁能そ2
0129【き丁のそはよりみれハ】−うちより見るなり
者よりみ連ハ・あけ本のゝ($(朱))・やう/\も能ゝ色王
可類ゝ尓・遣尓や徒し堂まへると見ゆる・
可りきぬ春可多の・いとぬ連志めり多るほと・
う多てこの1世の本可能尓本ひ尓やと・あや
しきまて可本りみち多り・このおい人盤・
うちな2きぬ・佐し春起多る徒ミもやと・お
もふ多1まへ志のふ連と・あハれな2るむ可しの
御物可多りの・い可な2らむ徒いて尓・うちいて2
き古えさせ・可多ハしをも・本のめ可し・志ろ」(27オ)
志めさせ2むと・としこ2ろね1ん春の徒いて尓1も・
うちませおもふ給へわ多る志るし尓や・うれ
しきおり尓侍を・ま多起尓・お本ゝ連侍・涙
尓くれて・盈こ2そきこえさせ春侍个れと・う
ち王な2ゝ具个しき・満こ2と尓いミ志くも1の
0130【けしきまことに】−かほる心中詞
可な2しと思へり・おほ可多佐多すき多る人ハ・
0131【さたすきたる人】−年たけたるをいふ
涙もろなる物とは見きゝ給へと・いとかう
志も1おもへるも・あや志うな2り給て2・古ゝ耳
可く満いるこ2とハ・多ひ可さな2りぬるを・可くあハ
連志りたまへる人もな2くてこ2そ・露个起」(27ウ)
みちのほと尓・ひとりのミ・そ本ち徒連・う連
しき2・徒ゐてな2め流を・こ2とな2・のこひたまひ
そ・可しとの多まへハ・可ゝる徒ゐてしも1侍ら
0132【かゝるつゐてしも】−老人詞
志可し・又侍りとも1夜のま能ほと志らぬ命
の多1のむへき尓も侍らぬを・佐らハ多ゝかゝる
布るもの・世尓侍个りと者可り・志ろしめされ
侍らなむ・三条の宮尓侍しこ志ゝう・者可
0133【三条の宮に】−女三
0134【こしゝう】−弁尼小侍ー一腹也
なくな2り侍尓个流と・本のきゝ侍し・そ能
可見・む徒ましうおもふ給へし・おな2し程の
人おほくうせ侍尓个る・世の春ゑ尓・者る」(28オ)
可なるせ可いより・徒多つたハりまうてきて・この1
0135【せかい】−世界
いつ1とせむとせの1ほとな2無・これ尓可くさ
ふらひ侍・志ろしめ佐し可し・この1こ2ろ登う
0136【とう大納言】−紅ー
大納言と申なる・御この可ミの右衛門の可見
0137【右衛門のかみ】−柏
尓て・可くれ給尓1しハ・も能ゝ徒ゐてな2と尓や・
0138【ものゝつゐてなとにや】−弁語出権大納言問事(明融臨模本0075)
可能御うへとてき古しめし徒多ふる事も
0139【かの御うへ】−柏
侍らむ・春き給て2・いく者具もへ多ゝらぬ
0140【すき給て】−過
心ちのミし侍・そ2能おりの可な2し佐も・ま多
袖の1可ハくおり侍らすおもふ多満へらるゝ
を・可くおとな2しくな2らせ給尓个る御よ」(28ウ)
者ひのほとも1・夢のやう尓な2ん・可能権大納言
の御め能と尓侍しハ・弁可ハゝ尓な2む侍し・あ
0141【弁かはゝ】−母
さ夕尓徒可うまつりな2れ侍し尓・人可す尓1も
侍らぬ身な2れと・人尓志らせ2す・御心よりハ多
あまり个るこ2と越・おり/\うち可すめの多満
いしを・い満ハ可起り尓なり給尓1し・御やまひ
の春ゑ徒可多尓・めしよせて・い佐ゝ可の給を
くこ2とな2む侍しを・き古しめすへきゆへ
な2ん・ひとこ2と侍連と・可ハ可りき古えいて侍
尓・のこりをとお本しめす・御心侍らハ・のと可」(29オ)
0142【のこりをと】−尼物語の
尓な2ん・き古しめし者て侍へき・王可起人/\
も1・可多ハらい多く佐し春起多りと・徒き2
志ろひ侍もこ2とハり尓な2むとて・佐す可尓
うちいて春な2りぬ・あや志く夢可多り・可む
0143【あやしく夢かたり】−かほる心中
0144【かむなきやう】−巫<カン>覡 文選 男<カンナ>女<カンナ>
な2きやうのも能ゝ・とハすか多りすらむやう
尓・めつら可尓お本さる連と・あハれ尓お本徒
可なく・お本し王多るこ2との春ちを・きこゆ
連ハ・いとおくゆ可し个れと・氣尓人めも志
氣し・佐しく見尓布る物可多り尓・可ゝ徒ら
ひて・夜をあ可し者てむも1・ちこ/\しか流」(29ウ)
へ个れハ・そ2こハ可登かとおもひわくこ2とハな2起も1の
可ら・い尓1しへの事と・きゝ侍も物・あハれ尓な2ん
佐らハ・可な2らすこの1農こりき可せ給へ・霧者
0145【さらハかならす】−薫詞
連ゆ可者ハしたな2可るへきやつれを・おもな2
く御らん志と可めら連ぬへきさ満な2れハ・おも
婦たまふる心のほとよりハ・くちお1しうな2む
とて・多1ち多1まふ尓・可能おハしますてら
0146【かのおハしますてら】−宮ー念仏ニ
の可ね1の1こ2ゑ・可す可尓き古えて・きりいと
布可く多ちわ多れり・み年能やへ雲おもひ
0147【みねのやへ雲おもひやる】−後 白雲の八重ニかさなるをちにても思ハん人ニ心へたつな(古今380・貫之集721、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚) おもひやる心斗ハさわらしをなにへたつらん嶺の八重雲 直幹<タヽモト>(後撰1306・古今六帖528・和漢朗詠638、花鳥余情・紹巴抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
やるへ多ておほく・あ者れなる尓・な越この」(30オ)
ひめ君多ちの御心の1うちとも1・心くるしう・
な尓こ2と越お本しのこすらむ・可くいとお2く
まり多1まへるも・こ2とハりそ2可しな2とおほゆ
あさほら氣家路も1みえ春多つ1ね1
0148【あさほらけ】−かほる
古しま起のを山ハ霧こめて个り心ほそく
も侍可な2と・多1ち可へり屋春らひ給へるさ満
0149【たちかへりやすらひ】−薫ノ
を・宮この人能めな2連多る多1尓・猶いとこ2と
尓おもひき古え多るを・まいていかゝハめ徒ら
しうみきこえ佐らん・御返きこえ徒多へ
0150【御返】−弁尼
尓く遣尓おもひ多れハ・連いのいと徒ゝまし」(30ウ)
氣尓1て2
雲の井る嶺の可けちを秋きりのいとゝ
0151【雲のゐる】−姉君
へ多徒るこ2ろ尓もある可那春古しうちな2け
ひ多まへる个しき・あさ可らすあハれな2り・
な尓ハ可り・お可しき・布しハみえぬあ多り
な2れと・け尓1こゝろくるしきこ2とおほ可類
尓1も・あ可うな2りゆ氣ハ・さす可尓ひ多お1もて
なる心ちして・中/\なるほと尓うけ多満
ハり佐し徒るこ2とお本可る・のこり者い満春
古しおもな2れて2こ2そハ・うらみきこえさす」(31オ)
へ可めれ・さるハ可く世の人めひて2もてな2し
給へくハ思ハす尓物お本し王可さり个りと・
うらめしうな2んとて・と能井人可志徒らひ
多る・尓1しおもて尓お1ハしてな2可め給ふ・あし
0152【あしろハ】−内膳司式云山城国近江国氷魚網代各処一△(△$)其氷魚始九月迄十二月卅日供之
ろハ人さハ可し遣な2り・されとひをもよらぬ
尓や・あらむすさまし氣なる遣しき2
な2りと・御ともの人/\みし里ていふ・あやし
き舟とも尓志者可り徒ミ・をの/\な2尓1登
な2き世のいとな2ミとも尓・ゆき可ふさ満とも
の者可な2き水のうへ尓う可ひ多る・多れもお」(31ウ)
もへハ・お那しこ2となるよ能つ年な2さな2り・
王れハ・う可者す・多1満のうてな尓・志徒希
0153【たまのうてな】−\(朱合点) 今日ミれハ玉のウてなもなかりけりあやめの草ノいほりのミして(拾遺集110、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
き2身とおもふへき世可ハ登・おもひ徒ゝ遣
0154【おもひつゝけらる】−遣状於姫君事(明融臨模本0083)
らる・すゝりめして・あな2多尓き古え給ふ
0155【あなたに】−姫
橋ひめの心をくみて2多1可せさすさ本
0156【橋ひめの】−かほる 離宮神此橋姫明神へ通給云也 さ筵ニ衣かたしきハ住吉の御哥也
の志つ1く尓袖そぬ連ぬるな2可め給ふらむ
可しとて・とのひ人尓も多せ多1まへり・い登
さむ氣尓い羅ゝき多る可本して・もて満
0157【いらゝきたる】−鳥はた立也
いる・御可へり可ミの可な2とお本ろ氣ならむハ・
0158【かなと】−香
者徒可し遣なるを・ときをこ2そ2可ゝ流お1」(32オ)
0159【ときをこそ】−早
里尓ハとて
佐し可へるうちの河おさあさ夕の1志
0160【さしかへる】−姉君
徒くや袖をく多し者徒らむ身さへう起
0161【身さへうきて】−\(朱合点) さす棹(△&棹) のしつくにぬるゝ袖ゆへニ身さへうきてもおもほゆるかな(明融臨模本付箋03 出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
てと・いとお1可し氣尓可起給へり・まお尓め
0162【まおにめやすくも】−かほる心中
や春くもも1能し給个りと・心と満りぬ連
と・御車ゐて満いりぬと・人/\さハ可しきこ
ゆれハ・との井人ハ可りをめしよせて・可へり
0163【かへりわたらせたまハむほとに】−かほる詞 宮ー
わ多らせたまハむほと尓・可な2ら春満いるへ
しな2との多まふ・ぬ連多る御そ2とも1は・
みな2この人尓ぬき2可け給ひて2・とり尓徒」(32ウ)
0164【この人に】−宿直人たふ
かハしつる・御な2をし尓多1てまつり可へ徒・お
い人能物可多り・心に可ゝりてお本しいてらる・
おもひしよりハ・こよなく満さりて・お1可し可り
0165【おかしかりつる】−姫ー
つる御遣ハひとも1・お1も影尓そ2ひて2・猶お1も
ひ者な2れ可多起世な2り个りと・心よハく思志
らる・御ふミ多てまつり給ふ・遣佐う多ちて2
も1あら春志ろき志きしの・あつ1古え多る
尓・布てひき徒くろひえりて・春見つ
き・みとこ2ろありて可き給ふ・うちつけな2る
0166【うちつけなるさまにや】−かほる文のこと葉
さ満尓やと・あひなくとゝめ侍て・のこりお」(33オ)
本可るも(+心(朱))くるしきわさ尓な無・可多ハし
き古えをきつるやう尓・い満よりハ・み春能
まへも・心や春くお本しゆるすへくな2む・御
山こもり者て侍らむ日可すも1・うけ多満ハり
をきて・いふせ2可りしきりの満よひも・者る
氣侍らむな2とそいとすくよ可尓可起給へる・
さこんの楚うなる人御徒可ひ尓て・可能お1い
人多つね1て2布ミもとらせよ登の多まふ・
とのひ人可さむ遣尓て・さ満よひしな2とあ
ハれ尓お本しやりて・おほきなるひ者里こ」(33ウ)
やうのも能・あま多せ2させ給ふ・ま多能日可能御
てら尓も多てまつり給ふ・山こもりのそうとも・
0167【たてまつり給ふ】−送物事(明融臨模本0087)
この比のあらし尓ハ・いと心本そくく流しか
らむを・さておハします本との布せ給ふ
0168【ふせ給ふ】−かほる方より
へ可らんと・おほし屋りて・きぬわ多な2とお本
可り个り・御おこなひ者てゝいて多1まふ・あし
多1な2り个れハ・をこなひ人とも尓・王多きぬ
遣さ・衣な2と・すへて2ひとく多り能ほと徒
徒・ある可きりの大とこ多1ち尓給ふ・との井
人可・御ぬき春ての・えむ尓いみしき・可り」(34オ)
の御そ2とも1・盈な2らぬ志ろきあやの御そ
能・な2よ/\といひ志ら春尓本へ流を・う徒し
きて身をハ多え可へぬもな2れハ・尓徒可者
し可らぬ袖の1可を・人こ2と尓と可められ・め
て羅るゝなむ・中/\所せ2可り个る・心尓1
ま可せて・身を屋春くも布る満ハれ春・い
とむく徒个起まて・人能おとろく尓本ひ
を・うしな2ひて者やとおもへと・所せ2起人の
御うつり可尓て・えも春ゝき春てぬそ・あま
里なるや・君ハひめ君の御返こ2と・いとめや」(34ウ)
0169【君は】−かほる
春く・こめ可しき越・お可しく見給ふ・宮尓1も・
かく御せうそ2こありきな2と・人/\き古え
させ御らむせ2さす連ハ・な尓可ハ遣さう多ち
て・もてなひ給ハむも・中/\う多てあら
む・連いの王可人尓1ゝぬ見心ハえな2め流を・な
可らむ後もな2と・ひとこ2とうち本のめ可し
てし可ハ・さやう尓て心そ2・とめ多らむな2と
の給个り・御みつ1可らも・さ満/\の御とふらひ
0170【御みつからも】−宮ー
能・山のい者や尓あまりしこ2とな2との多1満
0171【のたまへるにまうてんと】−語宇治宮事於三宮事(明融臨模本0092)
へる尓・まうてんとお本して・三の宮の可やう」(35オ)
0172【まうてんと】−薫ー
0173【三の宮】−匂兵部卿
尓・おくまり多1らむあ多りの・見まさりせ2む
0174【おくまりたらむ】−奥フカキ
こ2そ・お1可し可るへ个れと・あらましこ2と尓た尓・
の多まふ物を・き古え者けまして2・御心さハ
可し・多てまつらむとお本して・のとや可な2る
夕くれ尓・まいり給へ里・連いのさ満/\なる・
0175【まいり給へり】−匂へ
御物可多りき古え可ハし給ふ徒いて尓・うち
の・宮の御事可多りいてゝ・み志あ可月のあり
さ満な2と・くハしくきこえ給ふ尓・宮い登
せ2ち尓お可しとおほひ多り・されハよと御氣
0176【されハよと】−かほる心中
しきをみて2・いとゝ御心うこきぬへく・いひ」(35ウ)
徒ゝ遣たまふ・さてそのあり个ん可へりこ登ハ・
0177【さてそのありけん】−匂宮の御詞
なと可みせ給ハさりし・まろな2らまし可ハ
と・うら見給ふ・佐可し・いとさ満/\御らむ春
へ可めるハしを多尓・みせさ勢たまハぬ・可能王
0178【かのわたり】−かほる
多りハ・可くいとも1むもれ多1る身尓・ひき2
こめて・やむへき・遣ハひ尓も侍らね1ハ・可な2ら
春御らむせ2させ者やと・おもひ給連と・い可
て可多1つ年よらせ2給へき・可や春きほと
こ2そ・す可ま本しくハ・いとよくすきぬへ
き2よ尓1侍り个れ・うち可くろへ徒ゝ・おほ可」(36オ)
める可那・さるか多尓みとこ2ろありぬへき女
0179【さるかたに】−匂宮
の・も1能思ハしき・うち志のひ多る春み可
とも・山里めひ多る・く満な2と尓・を能徒可ら
侍へ可めり・このき古えさする・わ多りハ・いとよ
徒可ぬひし里さ満尓て・こち/\志うそあら
むと・としこ2ろ思あな2徒り侍て2・みゝを多尓
こ2そ・とゝめ侍らさり个れ・本の可な2りし月影
の・見をとりせ2すハ・ま越な2羅ん者や遣ハひ
ありさ満・者多さハ可りな2らむをそ・あらま本
しき2ほとゝハ・おほえ侍へきな2と・きこえ」(36ウ)
多1まふ・者て/\ハ満め多ちて・いとね1多く
0180【はて/\ハ】−匂宮
お本ろ氣の人尓・心う徒るましき人能・可く
婦可具おも1遍るを・おろ可な2らしと・ゆ可し
うお本春こ2と可起かきりな2くなり給ひぬ・な2を
ま多/\・よく个しき見多まへと・人を春
すめ給て2・可きりある御身のほと能・よ多け
さ越・いとハしきまて・心もとな2しとお本し
多れハ・お可しくて・いてやよしなくそ侍・志
0181【おかしくて】−かほる心中
ハし世中尓・心とゝめしと思ふ給る・やうある
身尓て・な越さりこ2とも1(△&も1)・徒ゝましう侍を・」(37オ)
心な2可ら可那ハぬ心徒きそめな2ハ・おほき2尓・
おもひ尓多1可ふへきこ2とな2む侍へきと・き
古え給へハ・いてあな2こ2と/\し・連ひのおとろ
0182【いてあなこと/\し】−匂宮
おとろしき・ひし里こ2とは・見者てゝし
0183【ひしりことは】−聖人詞也
可な2とて・王らひ給ふ・心のうち尓ハ・可能布る
0184【心のうちにハ】−かほる心中
人の・本のめ可し志春ちな2との・いとゝうち
おとろ可れて2・物あハれなる尓・お可しとみる
こ2とも・めや春しときくあ多りも・な尓1者
可り・心尓もと満らさり个り・十月尓な2りて・
五六日能ほと尓・うちへまうて堂ま婦・あ」(37ウ)
志ろをこ2そこの1比ハ・御らむせ2めときこゆる
人/\あれと・な尓可そのひをむし尓・あらそ
0185【ひをむし】−△(△$郭)撲詩借問蜉蝣輩寧知亀鶴年 [虫+秀]ヒヲムシ 蜉蝣イ(明融臨模本0104) 白小虫如蜻朝ニ生夕死
ふ心尓て・阿しろ尓も1よらむと・そきすて
給て・連いのい1と志のひや可尓て・いて多ち
給・可ろら可尓・あしろく流(△&流)ま尓て・かとり農
0186【かとりのなをし】−昔ハ公卿も直衣に平絹を用たるへし
なをし佐しぬきぬはせ2て・こ2と佐らひき
0187【ことさらひき給へり】−詞字 着
給へり・宮まちよろこひ給て2・所尓つけ多る
0188【宮】−八
御あるしな2と・お1可志う・志那したまふ・く連
0189【御あるし】−饗
ぬ連ハ・おほとな2ふらち可くて・さ起/\見
佐し多まへるふミとものふ可きな2と・あさり」(38オ)
も・佐うしおろして・きな2といハせ給ふ・う
0190【きなといはせ給ふ】−義 議論心なり
ちも1まとろます・河可せのいとあらまし
き尓・木葉のちり可ふをと・水のひゝき
な2と・あハれもすきて・物おそろしく心本
そき所のさ満な2り・あけ可多ち可くな2り
ぬらんと・思ふほと尓・ありし志のゝめおも
ひいてら連て2・琴のね1の1あハれな2る・こ2と
の徒いて・徒くりいてゝ・さ起の多ひ能・霧尓
まとハされ侍し明本の尓・いとめつらしき2
ものゝね1・ひとこ2ゑうけ多満者りしのこり」(38ウ)
な2む・中/\尓いといふ可しう・あ可すお1もふ
多1まへらるゝな2と・き古えたまふ・色をも
0191【色をもかをも】−宇治宮御返答
可をも・おもひすてゝし後・む可しきゝし
こ2とも・みな2王春れて2な2むとのたまへと・人
めして琴とりよせて2・いと月な2くな2り
0192【いと月なく】−宮法談之比召楽器事(明融臨模本0110)
尓多りや・志るへ春るものゝね1尓徒氣て
な2ん・おもひいてらるへ可り个るとて・ひ王
めしてまらうと尓・そゝの可し給ふ・とり
0193【まらうとに】−かほる也
て志らへ堂まふ・佐ら尓本の可尓きゝ侍
し・おな2しものとも1・思ふ多まへら連」(39オ)
さり个り・御こ2とのひゝき可ら尓やとこ2そ・
0194【御ことのひゝきからにや】−かほる詞
おもふ多1まへし可とて・心とけても・可き2
多て多満ハ春・いてあな2さ可な2や志可・御み
0195【あなさかなや】−宮の御詞
見とまるハ可りのてな2とハ・い徒くより可・
古ゝまてハ・徒多ハりこむ・あるましき2・御
こ2とな2りとて・きむ可起な2らしたまへ流・
いとあハれ尓心春こし・可多遍はみ年能まつ
0196【かたへはみねのまつ風】−\(朱合点) 後撰夏夜ふかやふか琴引をきゝて 短夜のふけ行まゝニ高砂のミねの松かせふくかとそ(△&そ)きく兼輔(後撰167、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 拾ー琴のねに嶺の松風かよふらしいつれのをこそしらめそむらん斎宮女ー(明融臨模本付箋04 拾遺集451・拾遺抄514・古今六帖3397・和漢朗詠469・斎宮集57、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
風の・もて者や春な2る遍し・いとたと/\
志け尓・おほめき給て2・心者えありてひと
つ者可り尓て・屋め堂まひ徒・このわ多り尓・」(39ウ)
おほえなくて・お1り/\本のめく・佐う能こ2と
0197【さうのこと】−姫ー
の年こ2そ・心え多る尓やと・きくおり侍連
と・心とゝめてな2とも1あらて・ひ佐しうな2り
尓个りや・心尓満可せ2て・をの/\可きなら
春へ可め流ハ・川な2ミハ可りや・うちあハすら
む・ろな2うも能ゝよう尓・春ハ可りの・者う
0198【ろなう】−無論
0199【ように】−用ニスル
しな2とも1・と満羅しとな2む・おほえ侍と
て・可きな2らし給へと・あな2多尓きこえ
多1まへと・おもひよらさりし・ひとりこ2と
0200【おもひよらさりし】−姫ー達
を・きゝ給ひ个ん多尓ある物を・いと可多」(40オ)
ハならむとひきいり徒ゝ・みな2きゝ給者
春・多1ひ/\・そゝの可したまへと・と可く
きこえ春さひて・やミ給ひぬめれハ・い登
0201【いとくちおしう】−かほる心
くちおしうおほゆ・その徒いて尓1も・可く
0202【そのついてにも】−宮の御詞
あや志う・よ徒可ぬおもひやり尓て・すく
春ありさ満ともの・おもひの本可な2る事
な2と・はつ1可しうお本ひ多り・人尓多尓・い可
て志らせ2しと・者くゝ見・すくせ2登・个ふ
あ春とも・志らぬ身能のこりすくな2さ尓1・
さす可尓ゆくすゑと越き人ハ・おちあふ」(40ウ)
連て2・さすら遍ん事・こ連のミこ2そ・遣尓
よ越者な2連ん・きハのほ多しな2り个れ登・
うち可多らひ給へハ・心くるしうみ多て満
0203【心くるしう】−かほる心中詞
徒り多1まふ・わさとの御うしろミ堂ち・者
可者可しき春ち尓ハ侍春とも1・うと/\
し可らすお本しめさ連んとな2む・おもふ多1
まふる・志ハしもな2可らへ侍らむいのちの1程
者・ひとこ2とも1・可くうちいてき2古えさ勢
てむさ満を・多1可へ侍ましくな2むなと
申給へハ・いとうれしきこ2とゝおほしの」(41オ)
0204【いとうれしきことゝ】−宮の御詞
の給・さてあ可月可多の宮能御おこなひ
志多まふ本と尓・可のおい人めしいてゝあひ多1
0205【おい人】−弁尼
まへり・ひめ君の御うしろミ尓て・さふら者せ
給ふ・弁の君とそいひ个る・年も六十尓
春古し多1らぬほとな2れと・みやひ可尓・ゆへ
あるけハひ志て・物な2とき2こゆ・古権大納言
0206【古権大納言の君の】−柏 弁達故大納言遺言事(明融臨模本0121)
の君能・よととも尓・も1のをおもひ徒ゝ・や
まひ徒き・者可な2くなりたまひ尓1しあり
さ満を・きこえいてゝ・なくこ2と可起りな2し・遣
0207【けによその人の】−かほる心中詞
尓よその人能う遍とき可む多尓・あハれ」(41ウ)
なるへき布るこ2とゝも越・ましてとしこ
ろおほつ可な2く遊可志う・い可なり个んこ登
のハしめ尓可と・仏尓1もこの事を佐多可耳
志らせ給へと・ね1んし徒る志るし尓や・閑く
夢のやう身あハれなる・む可し可多りを・お本
えぬ徒いて2尓・きゝつけ徒らむと・おほ春尓
涙とゝめ可多可り个り・さても个く楚のよ能
心志り多る人も・のこり多1まへり个るを・めつ
ら可尓も・者つ1可しうも1おほゆるこ2との1
春ち尓・猶可くいひ徒多ふるたくひや・又も」(42オ)
あらむとしこ2ろ可けても1・きゝをよはさり
个ると能多まへハ・こ志ゝうと・弁と・者な2ち
0208【こしゝうと弁とはなちて】−老人ノ詞
てま多志る人侍らし・ひとこ2と尓ても・ま多
こ2とひと尓うち・ま年ひ侍ら春・可くも能者
可な2く可すな2らぬ身の本と尓侍連と・よる
ひる可能御可け尓・徒き多てまつりて侍し
可ハ・をの徒可らものゝ氣しきをもみ多て
まつり楚めし尓・御心よりあまりて・お1本し
个る・時々多1ゝふ多りのな2可尓なん・多満さ可の
御せうそ2このかよひも侍し・可多ハらい多氣」(42ウ)
連者・くハし具き2こえさせ春・い満者農
とちめ尓なり給て2・い佐ゝ可の多満いを具
こ2との侍しを・可ゝ流身尓ハ・をき所な2く・い
婦せ2くおもふ給へわ多り徒ゝ・い可尓1して可ハ・き
こ志めし徒多ふへきと・者可/\しからぬ・
念春の徒いて2尓も・思ふたまへ徒るを佛ハ
世尓おハしまし个りとな2ん・おもふ多1まへ
志りぬる・御らむせ2さすへきものも侍り・い満
ハな尓可ハ・やきも・春て侍な2む・可くあさ
夕のきえを志らぬ身能・うち春て侍な2ハ・」(43オ)
うちゝ流やうもこ2そと・いとうしろめ堂具
おもふ多1まふ連と・この宮王多里尓1も・と起
0209【この宮わたり】−八宮
とき本のめ可せ多1まふ越・まちいて堂て
まつりて志は・春古し多のもしく・可ゝるお1
里もやと・ね1んし侍へる・ちかく($ら)いて(いて=△△#)まうて
きてな2む・佐ら尓これハ・この世能古と尓も2
侍らしと・なく/\こ満可尓・むまれたまひ
个るほとのこ2とも1よく・おほえ徒ゝきこゆ・
むな2しうなり給しさハ起尓・者ゝに侍し
0210【はゝに侍し人】−弁の君か母をいふ
人ハ・屋可てやまひ徒きて・ほともへ春かく」(43ウ)
連侍尓1し可ハ・いとゝおもふ堂まへ・志つ1ミ・ふち
0211【ふち衣たちかさね】−\(朱合点) [糸+衰]<フチ>衣 喪<フチ>衣 かしは木の服と母の服とを着したるをいふ 六 一重たにきるハわひしき藤衣かさなる秋を思ひやらなん貫之(兼輔集121、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
衣多ち可さね1・可な2しきこ2とをおもひ多満
へし程尓・としこ2ろよ可らぬ人の・心をつけ
多り个る可・人を・ハ可りこちて・尓1しの1うミ
0212【人をハかりこちて】−弁ノ君か人ニたはかられてつくしの方へ人($く)たりたるをいふ
の者てまて・とりもてま可り尓1し可ハ・京
能こ2とさへ・あと多1えて・そ2の人も・可しこ尓
てうせ侍尓1し後・とゝせあまり尓てなん・
あらぬよ能心ちして・ま可りの本り多りし
を・この宮盤・ちゝ可多尓つけて2・王らハよ
0213【この宮】−八ー
0214【ちゝかたにつけて】−弁遠類也 ハヽ北方
里・満いりかよふゆへ侍し可ハ・い満ハ可う世尓」(44オ)
まし羅ふへきさ満尓1も侍らぬを・連せ2い院
の女御殿の御可多な2とこ2そハ・む可しきゝな2
0215【女御殿】−柏妹弘ー
連多てまつりしわ多り尓て・満いりよるへく
侍し可と・ハし多1なくおほえ侍て2・え佐し
いて侍らて・見山可くれのくち木尓な2り尓
0216【み山かくれのくち木】−\(朱合点) 古今 かたちこそ深山かくれの朽木なれ(古今875・古今六帖1440、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・紹巴抄・弄花抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
て侍なり・こ志ゝうハ・い徒可うせ侍尓个ん・そ
の可ミ能王可佐可りと見侍し人ハ・可すゝく
なくな2り侍尓个る・春ゑの1よ尓おほくの
人尓・をくるゝいのちを・可な2しくおもひ給
へて2こ2そ・佐春可尓めくらひ侍連な2とき」(44ウ)
こゆるほと尓・連ひ能あ氣者てぬ・よしさ
0217【よしさらは】−かほる詞
ら者・この1む可し物可多りハ・徒きすへ具
な2んあらぬ・ま多人き可ぬ心や春き所尓て・
きこえん・志ゝうといひし人ハ・本の可耳
0218【しゝう】−小ー
おほゆる者・い徒ゝむつ者可りな2りし程尓
0219【いつゝむつはかりなりし程に】−かほるの
や・尓ハ可尓・む年をやミて・うせ尓起とな2む
きく・可ゝ流堂ひめむな2くハ・徒ミお1も1き
身尓て・春きぬへ可り个る事な2と能多
まふ・さゝや可尓お1しま起あ王せ多る本く
0220【さゝやかに】−老人
0221【ほくとも】−反古
ともの・可ひ(△&ひ)くさき2をふくろ尓ぬひい連」(45オ)
0222【かひくさき】−ふるくさ(+キ(朱))越いふ
多1る・とりいてて多てまつる・おまへ尓1て2・
うしな2ハせ給へ・王れな越いくへくもあら春
なり尓多1りと能多満者せて・この1御ふミ
をとりあつ1めて・堂まハせ多りし可ハ・こ
志ゝう尓ま多あひ見侍らむ徒いて耳・
佐多可尓徒多へまい羅せ2無とおもひ多1
まへしを・屋可て王可れ侍尓1しも1・わ多くし
こ2と尓ハあ可す・可な2しうな2んおもふ給ふると
きこゆ・つれな2くて・これハ・可くい多1まい徒・可
0223【かやうのふる人ハ】−かほる心中
やう能布る人ハ・とハす可多り尓や・あやしき」(45ウ)
こ2との多1めし尓・いひいつらむと・くるしく
おほせと・可へ春/\も1ちらさぬよしをち
可ひつる・さもやとま多おもひみ多れ多まふ・
御可ゆ・こ者いひな2と満いりたまふ・昨日ハ・
0224【こはいひ】−強飯
いとまひな2りしを・个ふハ・うちの御物いミも
0225【いとま】−暇
あきぬらん・院の1女一の宮・な2やミ給ふ・御
0226【院】−冷
とふらひ尓・可な2らすまいるへ个れハ・可多/\
いと満な2く侍を・ま多この1こ2ろ春くして2・
山のもみち散らぬさ起尓・満いるへきよしき
古え多1まふ・可く志ハしハ多1ちよらせたま」(46オ)
0227【かくしはしはたちよらせたまふ】−宇治宮
婦ひ可り尓・山の可けも1・春古しものあき羅
むる心ちしてな2んな2と・よろ(△&ろ)こひき古え
多1まふ・可へり給ひて2・まつこの1ふくろをみ
0228【かへり給ひて】−薫
給へハ・可らの布せむ連うをぬひて・上と
いふもしをうへ尓可起多り・ほそ起くミして
0229【くミして】−組
くち能可多越ゆひ多る尓・可能御名能・ふう
徒き多り・あくるもおそろ志うおほえ堂満
婦・色/\可見尓て・多1ま佐可尓かよひ个る・
御ふミの返こ2と・い徒ゝむつそある・さてハ可能
御て尓1て2・屋まひハおもく可き里にな2り」(46ウ)
0230【やまひハおもく】−柏木文のこと葉
尓多1る尓・ま多本の可尓1もきこえむこ2と・か多く
なりぬるを・遊可しうおもふこ2とハ・そひ尓
多1り・御可多ちも・可ハりて・おハしますらむ可・
さ満/\可な2しきこ2とを・みちのく尓可み・
五六枚尓・徒ふ/\とあや志きとりのあ
0231【とりのあと】−蒼頡<ケツ>作文字
とのやう尓可起て2
めのまへ尓この1世をそむく君よりも
0232【めのまへに】−衛門督
よそ尓わ可るゝ玉そ可な2しき又ハしに
0233【よそにわかるゝ玉そかなしき】−古今 声をたにきかてわかるゝ玉よりもなき床にねん君そかなしき(古今858・古今六帖2497、花鳥余情・細流抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
めつらしく・きゝ侍るふ多葉の1ほとも・う
0234【ふた葉のほと】−かほるの事
志ろめ多うおもふ多1まふるか多ハ・な2个れと」(47オ)
命あらハそれとも1みまし人志連ぬ
0235【命あらハ】−衛門のかみ
岩年尓とめし松の1い春ゑ可起佐し
多るやう尓・いとみ多り可ハしうて・こ志ゝう
の君尓登・うへ尓ハ可きつけ多り・志ミといふ
0236【しミといふむし】−紙魚
むしの・春み可尓なりて・ふるめき多る・可ひ
くさゝな2可ら・あとハきえ春・多1ゝい満可き2
0237【あとはきえす】−\(朱合点) 書つくる跡ハ千とせもありぬへしわすれすしのふ人やなからん(古今著聞集219、異本紫明抄・河海抄・細流抄・孟津抄・岷江入楚)
多1羅ん尓1も多1可ハぬこ2との葉とも1の・こ満/\
と・佐多可なるを見給ふ尓・遣尓う($お1(朱))ちゝ里
多1ゝ($ら(朱))ましよと・う志ろめ多ういとお1しき
事とも1な2り・可ゝるこ2と世尓ま多あらむ」(47ウ)
やと・心ひとつ尓・いとゝ物思ハしさそひて2・
うちへまいらむとお本しつるも・いて堂ゝ
連春・宮能おまへ尓満いり給へ連ハ・いとな2尓
0238【宮のおまへ】−女三
心もなく・王可や可なるさ満し給ひて・経
よみ多1まふを・者ちらひて・もて可へ($く(朱))し給
へり・な尓可ハ・志り尓个りとも1・志られ多て
まつらむな2と・こゝろ尓こめてよろつ1耳・
おもひゐ多まへり」(48オ)
(白紙)」(48ウ)
【奥入01】一還城楽陵王をあや布めむとす日の
くるゝ尓者ちして日をむ万尓可起可へ春
といふ事也くハし具志らす
此等事可否難弁
史記
魯陽以戈廻落日事歟
同時哥歟不可為証哥歟
【奥入02】宇治河の1浪の枕尓夢さめてよるハ者し
ひめいやね1さるらん」(49オ)
イ本
以哥詞為巻名一の名ハ優婆そくの宮薫中将十六歳の事有此巻
匂兵部卿紅梅竹河同時の事と見えたり
号莵道巻事
宇治十帖ハ式部娘大弐三位書たる也云々然は斑彪〔ハンヒウ〕か史記を書さし
たるを其子斑固〔コ〕書続たるに似たるへし大弐三位は右衛門佐藤宣
孝か女賢子後一条院御乳叙三位也
応神天皇ト申ハ宇佐宮の八幡大菩薩の御事也御子に大鷦鷯御子其
御弟莵道稚子と東宮をたかひに論給へるにたとへて桐壺御門
の御子第十御子冷泉第八宮宇治東宮の事ニより第十宮東宮ニ
立給へハ八宮莵道へ隠居シ給ヘル事ヲ模彼書之也云々
以師説書付之 良鎮」(49ウ)
二校了(朱)」(前遊紙1オ)