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Last updated 01/16/2025

橋姫

【凡例】

1.『源氏物語(明融本)Ⅱ』(東海大学出版会 1990年7月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。
3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。
4.変体仮名はその字母で翻字した。
5.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「1」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記や付箋等は小字体で表示した。
8.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色で表示し、同じ字母字形が並ぶ場合は緑色で表示した。
9.行間注記のうち、本文と一筆の事書標題と振り漢字は小字ゴシック体で表示した。


橋姫」(題箋)

「上冷泉殿為和卿御息明融 琴山」(1オ)

  楚のころ尓か数満へられ者ぬ布る
0001【ふる宮おはしけり】-八宮事
  者し遣里者ゝか多なともやむことな
  くものし(+ひ)て須ちことな累へきおほえな
  お者し个るをう徒里て世中尓者し/多な
  免られ多まひ个る万きれ尓な可/\いとなこり
  なうしろみなともうらめしき/\尓て
0002【御うしろみ】-家司
  /\尓徒个てをそむきさりつゝお本やけ」(1ウ・1507④)

  王多くし尓よりく佐し者那多れへる
  やう也北もむ可しの大臣むすめな
  个るあ者れ尓ほそく乎(乎=お)や多ちのおほし
  をきて多りしさ満な日いて尓たと志
  へなきことおほ可れと布る(る$可)ちきりの婦
  多つなきをうきのなく佐め尓てか多
  み尓く多のみか者しへりころ婦
  類尓こものし者てと那かり个れ者」(2オ・1507⑨)

  佐う/\しく徒れ/\なるなく佐め尓い可てお
  し可らんちこも可那と/\お本しの多
  満ひ个る尓めつらしく女君のいとう徒くし
0003【女君】-総角ノコト
  けなるむ万れ多まへりこれをかきりなく
0004【むまれたまへり】-女君誕生事
  あ者れとおもひかしつきゝこ江尓さしつゝき
  个しき者みてこの多ひ者おとこ尓てもな
  とおほし多る尓おしさ満尓てたひら可
0005【おなしさまにて】-中君誕生事
  尓者し多まひな可らいとい多くわつらひて」(2ウ・1507⑬)

  うせあさ満しうおほし万とふあり
0006【うせ給ぬ】-北方逝去事
  布る尓徒个てもいと者し多なく堂へ可多き
  ことおほ可るれとすて可多くあ者れ
  なありさ万さ満尓かけとゝめらるゝ
  ほ多し尓てこそ数くしき徒れ飛とり
  と満りていとゝ数さ万しくもあるへき可那
  い者个な/\をも飛とり者くゝみ多てむ本
  とかきりある尓ていとおこ可満しうわろ」(3オ・1508④)

  かるへきことゝおほし多ちて本いもとけ万本
0007【ほい】-出家
  うし个れとゆつるくての
  とゝめむをいみしうお本し多ゆ多ひ
  徒ゝ年月も布れ者をの/\およす个万さり
  さ万可多ちのうつくしうあら万本しきを
  あ个くれのく佐め尓てをのつ可らみ
  数くしのち尓む万れしきみを者さ
0008【のちにむまれ給しきみ】-中君ユヘ母ノ死給トノ心
  布らふ/\もいてやおり布しうくなと」(3ウ・1508⑧)

  うちつ布やきつゝ尓いれてもあつ可ひきこ
  えさり个れとかきりのさ満尓てな
  もお本しわ可さりし本とな可らこれを
  いとくるしとて多ゝこのきみを可多ミ
  尓見給てあ者れとお本せと者可り多ゝひと
  ことな尓きこ江をき个れ者さ
  きのよのちきりも徒らきお里ふしなれと
  さるへき尓こそはあり个めといま者とえ/し」(4オ・1508⑫)

  満ていとあ者れとてうしろめ多个尓の
  多まひしをとおほしいてつゝこのきみを
  しもいとかなしうし多て万つりか多ちな
0009【いとかなしうしたてまつり給】-大君ハ勿論ト也
  んまこと尓(+いとうつくしう)ゆゝしき万てものし多万ひ个る
  ひめきみ者者せ志徒可尓よしある尓て
  るめもてなしも个多可く尓くきさまそ
  多万へるい多者しくやむことなきすち者万佐
  里ていつれをもさ万/\尓可しつき支こ江」(4ウ・1509③)

  多まへとかな者ぬことお本く年月尓そへて
  のうちも佐ひしくのみなり万さるさふら
  飛しも多つきなちする尓えしのひ
  あへす徒き/\尓し多可ひて満可てちりつゝ
  わ可きみのめのともさるさ者き尓者可/\しき
  をしもえりあへ多万者さり个連者本と
  尓つ个多るあさゝ尓ておさなき本とをすて
  多て万つり尓个れ者多ゝ者くゝみ多万ふ
  さす可尓ひろくおもしろきのいけとの」(5オ・1509⑧)
0010【宮のいけ山なと】-京ノコト

  遣しき者可りむ可し尓か者らていとい多うあ
  れ万さるを徒れ/\とな可め多万ふけいしな
  ともむね/\しきもなき満ゝ尓あ乎
  や可尓し个りのきの志のふそところえ可本尓
  あ乎みわ多れるおり/\尓つ个多る者那もみ
  ちのいろをも可をもお尓み者やし
  尓こそくさむこともお本可り个れいとゝ
  くさひしくよりつ可ん可多なきまゝ尓ち
  可さり者可りヲわさとせさせ多万ひて」(5ウ・1509⑬)

  あ个くれをこなかゝるほ多しとも尓かゝつ
  らふ多尓おもひのほ可尓くち乎しうわ可
  な可らもかな者さり个るちきりとお本ゆるを
  満いてな尓ゝ(ゝ=/\イ)かよのめいてい万佐ら尓との
  み年月尓そへて世中をおほし者那連
  徒ゝ者可りハ飛しり尓なり者ててこ
  のうせ尓しこな多者れいののさまな
0011【れいの人のさま】-好色
  こゝろ(こゝろ=者え(え=へ)と多者ふれ尓てもおほしいて
  多ま者さり个りなと可佐しもわ可るゝ本との」(6オ・1510④)

  かなし飛者又世尓堂くひなきやう尓のみこそ
  者おほゆへ可めれとありふれ者さのみや者
  世人尓なすらふ御心つ可ひをしていと可く
  くるしくたつきなのうちもをのつ可ら
  もてなさるゝわ佐もやと者もときゝこ江て
  な尓くれと徒き/\しくきこ江こつも累い尓
  布れてお本可れときこしめしいれさり个り御念
0012【きこしめしいれさりけり】-人ヲモヲカレヌ心
  すのひ万/\尓者この多ちをもてあそひやう/\
  およす个へ者ことならはしうちへんつき」(6ウ・1510⑨)
0013【へんつき】-文字ヲシヲスルコト

  なと者可那きあそひわさ尓つ个ても者へ
  と多て万つり尓ひめ者らう/\しく
  布可くおもり可尓わ可きみハおほと可尓
  らう多けなるさ満してものつゝみし多るけ者日
  尓いとうつくしうさ万/\尓お者す者るのうらゝ
  かなか个尓とりともの者ねうちか
  者し徒ゝをの可しゝさえつるこゑなとを徒
  ね者ゝかなきこと尓み多まひし可ともつ可日
  者なれぬをうらや万しくな可め多万ひて」(7オ・1510⑭)

  多ち尓とゝもをしへきこえいとお
  しけ尓ちひさきほと尓とり/\かきならし
  のゝねともあ者れ尓お可しく支こゆれハ
  なみ多をう个
    うちすてゝ徒可ひさり尓しみつとりの
    かりのこのよ尓多ちをくれ个ん
0014【かりのこ】-鴨
  徒くしなりやとめをしのこひか多ちいとき
  よ个尓お者します宮也年ころのをこなひ尓
  やせ本そり多まひ尓多れとさてしもあて尓」(7ウ・1511⑥)

  な満めきて多ちをかしつき給御心者え尓な
  しのなえ者めるをきてしとけなさ万いと
  者つ可しけ飛めきみすゝりをやをらひきよせて
  てならひのやう尓かき満せヲこれ尓可き
  へすゝり尓者かきつけさなりとてかみ多て万つり
  へ者ゝちらひてかき
    伊可て可くす多ち个るそとおもふ尓も
  うきとりのちきりをそしるよ可らねと
  そのお里者いとあ者れなり个りて者おいさき」(8オ・1511⑫)

  えておいさきえて(おいさきえて$)満多よくも徒ゝけ
  多ま者ぬほとなりわ可きみもかき多万へと
  あれ者いますこしおさなけ尓飛さしく
  かきいて多万へり
    なく/\も者ねうちき須るきみなくハ
  われそ春もり尓なり者ゝてましとも
  なとなえ者みておまへ尓又人もなくいと
  佐飛しくつれ/\个なる尓さ万/\いとらう多け尓
  てものしをあ者れ尓くるしうい可ゝお」(8ウ・1512②)

  ほさゝらんをか多て尓も多万ひてかつよみつゝ
  う可をし飛めきみ尓飛はわ可きみ尓
  うのと満多おさな个れとつね尓あハせ
  徒ゝならひ多万へ者きゝ尓くゝもあらていと
  お可しくきこゆちゝみ可と尓も女御尓もとくをく
0015【ちゝみかとにも】-八宮ノコト
  れきこ江て者可/\しきうしろみのとり多て
  多るお者せさり个れ者さえなと布可くもえな
  らひ多ま者須万いて世中尓すみ徒く御心
  きて者い可て可はし里者ん多可きときこゆる」(9オ・1512⑧)

  尓もあさ満しうあて尓おほと可なる
  のやう尓お者す連者布るき
  からほちおとゝの御處ふんな尓や可や
  と徒きす万しかり个れとゆくゑもなくは可
  なくうせ者てゝてうとなと者可りな
  わさとうるわしくておほ可り个る万いりとふら
  飛きこえよせ多て万つるもなしつれ/\
  なるまゝ尓う多つ可さのものゝしともなとやう」(9ウ・1512⑫)

  の数くれ多るをめしよせつゝ者可那きあそ
  飛尓をいれておいゝてた万へれ者そ
  いとお可しうすくれへり源氏のおとゝの
  乎とうと尓お者せし(尓お者せし$八宮とそえし)冷泉院
  尓お者しましゝ時朱雀院のお本き
  さきのよこ佐万尓お本しかまへてこの
  を世中尓多ち徒き多万ふへくわ可御時もてか
  し徒き多て万つり个るさはき尓あいなくあ」(10オ・1513②)
0016【あなたさま】-源ノ方

  な多さ満の可らひ尓者さし者な多れ
  多万ひ尓个れ者いよ/\かの徒き/\尓な
  者てぬる尓てえ満しらひ者すこの
  としころかゝるひし里尓なり者てゝいま者可き
  里とよろつをお本しすて多りかゝる本と尓
  数み給宮やけ尓个りいとゝしき尓あさ万し
0017【宮やけにけり】-焼失事
  うあえなくてうつろひすみへきのよ
  ろしきもな可り个れ者宇治といふところ
0018【宇治といふところに】-移住宇治事
  尓よしあるさとも多万へり个る尓わ多り」(10ウ・1513⑦)

  すてへるれともいま者とすみ者なれな
  んをあ者れ尓おほさるあしろのけ者ひち
  かくみゝかし可満しきのわ多り尓て志つ可な
  累おもひ尓かな者ぬもあれとい可ゝ者せん
  花紅葉水のな可れ尓もをやる多より
  尓よせていとゝしくな可めよりほ可の
  なしかく多えこもりぬる野山のすゑ尓もむ
  かしのものし者万し可はときこ江ハぬ
  乎りな可り个り」(11オ・1513⑫)

    しひともやとも个ふり尓なり尓しを
  尓とてわ可きえのこり个んい个る可日
0019【いけるかひなく】-\(合点)
  くそ本しこ可るゝやいとゝ可さなれる
  春み可尓多つね万いるしあやしき
  すなとゐな可ひ多る可徒とものみ万れ尓
  なれ万いりつ可う万つるのあさきり者るゝ
0020【峯のあさきりはるゝをりなくて】-\(合点)のくる朝霧者れ春のミ/徒きせぬ世中のうさ(付箋①)
  乎りなくてあ可しくらし尓この宇治山
  飛しり多ち多る阿闍梨すみ个りさえいと
  かしこくてのお本えもかろ可らねと乎さ/\」(11ウ・1514③)

  お本やけ尓もいて徒可へすこもりゐ多る尓
  こののかくち可き本と尓すみてさひしき
  さ万尓多うときわさをせさせつゝ法文
  よみならひへ者多うと可りきこえてつね
  尓万いるころ万なひしりへるともの
  布可きをときゝかせ多て万つりいよ/\こ能
  のいとかりそめ尓あちきな
  らすれ者心許者はちすのうへ尓日の本りに
  こりな尓もすみぬへきをいと可くおさなき」(12オ・1514⑨)

  /\をすてんうしろめ多さ者可り尓なんえ
  ひ多みち尓か多ちをもかへぬなとへ多てなく
  か多りしこのあさり者冷泉院尓もし多しく
0021【あさりは冷泉院にもしたしくさふらひて】-阿闍梨参院事
  さふらひて御経とをしへきこゆるり个り
  尓いて多るついて尓万いりてれいのさるへき
  布みな御覧してと者せ給事もあるついて
  尓のいと可しこくないけうのさえさとり
0022【ないけう】-内教
  布可くも能し个る可那さるへき尓てむ万
  れ多万へる尓やものしらん布可く日」(12ウ・1514⑭)

  数万しへるほと満ことの飛しりのをきて尓
  なときこゆいま多か多ち者かへ多万
0023【いまたかたちは】-冷詞
  者すやそくひしりと可このわ可き/\のつけ
  多なるあ者れな事也との多万者須
  宰相中将御前尓さふらひこそ
0024【宰相中将】-カホル
  世中を者いとすさましうしりな可ら
  乎こなひな尓めとゝめらる者可り者つと
  めすくちおしくてすくしくれとしれす
  つゝそくな可らひしり尓な給心のをきてや」(13オ・1515⑤)

  い可尓とみゝとゝめてきゝ給出家さしハ
  もとよりものし多万へるを者可那き
  ゝこほりいまとなりて者くるしき
  とものうへをえすてぬとなんな个き
  り多うふとそうすさ須可尓ものゝねめつる
  さり尓て个尓者多このひめきみ多ちのこと
  飛きあ者せてあそひ多万へる河波尓きお
  て起こえ者いとおもしろくこくらくやら/連」(13ウ・1515⑩)

  やとこ多い尓めつれ者み可と本ゝゑみ多万日て
0025【みかと】-冷
  るひしりのあ多り尓おひいてゝこのよの可多
  万者多と/\しからんとをし者可らるゝを
  乎可しのやうしろめ多くすて可多く
  もてわつらひらんをもしゝはしもを
  くれん本と者ゆつりや者し者ぬなとそ
0026【ゆつりやはし給はぬ】-姫タチノコト
  多ま者するこののみ可と者のみこ尓そ
  お者しまし个る朱雀院故六條院尓あつ
  けきこ江多万ひし入道多めしを」(14オ・1516①)

  お(+も)ほしいてゝかのきみ多ちを可那つれ/\な
  あそひ可多き尓なとうちお本し个り中将
  のきみ/\みこのす万し多万へらん御心
0027【みこ】-八宮
  えをたいめんして多て万つら者やと
  布可くなりぬるさてあさりのかへりいる尓もか
  ならす万いりてらひきこゆへく万つうち/\
  尓も个しき多万者りへなと可多らひ多万ふ
  み可とのとつて尓てあ者れなす万ゐを
0028【みかとの御ことつて】-院遣状於宇治宮事
0029【あはれなる御すまゐを】-勅書

  ひとつて尓きくことなときこ江多万うて」(14ウ・1516⑥)

    をいとふ尓可よへとも
  やへ多徒くもをきみやへ多つる阿闍梨この
  御使をさき尓多てゝかの尓万いりぬな
  めなるきはのさるへきの徒可ひ多尓万れ
  なか个尓いとめつらしく万ちよろこひ
  多万うて尓つけ多るさ可那ゝとしてさる
  尓もて者やし給御返
    あと多えてすむと者な个れとも
  をうち尓やとをこそかれ飛しりの」(15オ・1516⑪)

  か多を者ひ个してきこ江なし多万へれ者
  猶世尓うらみのこり个るといとおしく御覧
  すあさり中将道心ふ可け尓ものし
  か多りきこ江て法文とのえ万本しき
0030【法文なとの心えまほしき心さし】-宰相中将道心事
  さしなんい者けな可りしよ者ひより布可
  く可らえさらすよ尓ありふる本と乎本や
  けわ多くし尓いと満なくあけくらしわさと
  とちこもりてならひよみお本可多者可/\しく
  もあらぬ尓しも世中をそむきか本な」(15ウ・1517②)

  らんも者ゝ可るへき尓あらねとをのつ可らうちた
  ゆみ万きらはしくてなんすくしくるをいと
  あり可多きありさ万をうけ多ま者りつ多へ
0031【ありかたき御ありさま】-八宮ノコト
  しよりかく尓か个てなん多のみきこえさす
  累なとねんころ尓申給しなとか多りきこゆ
  宮世中をかりそめのことゝおもひとりいと者し
  きの徒きそむることもわ可尓うれへある
  へてのよもうらめしうしる者しめ
  あ里てな道心もおこるわさなめるをとしわ可く/世中」(16オ・1517⑧)

  おふ尓可なひな尓こともあ可ぬことハあらし
  とお本ゆるの本と尓さ者多のちのをさへ
  堂とりし里らん可あ里可多さこゝ尓者さ
  へき尓や多ゝいとひ者那れよとこと佐ら尓
  なとのすゝめおもむけ多万ふやうなるありさ万
  尓てをのつ可らこそしつ可なるおもひかな
  ゆ个と能こりすくなちする尓者可/\しく/も
  あらてすきぬへ可めるをきし可多ゆくすゑさら
  尓え多(+と)しらるゝをかへりて者」(16ウ・1517⑭)
0032【思しらるゝ】-カホルノコト

  者徒可し个なるのりのとも尓こそ者も
  しれなとの多まひてか多み尓せうそ
0033【かたみに】-カホト八宮ノコト
  こかよひみつ可らも満うてけ尓きゝしより
0034【けにきゝしより】-薫心
0035【きゝしよりもあはれにすまひたまへるさま】-宰相中将対面宮事

  もあ者れ尓す万ひ多万へるさ万より者し
  めていとかりなのいほり尓しこと
  そき多りおなしきさとゝいへとさる可多尓て
  と万りぬへくのとや可なるもあるをいとあら万
  しきのをとのひゝき尓わすれうちし
  よるなと个てゆめを多尓みるへき本ともな/个尓」(17オ・1518④)
0036【ゆめをたに】-\(合点)

  数こく布き者らひ多りひしり多ち多る
  め尓かゝるしもこそと万らぬもよ本し
  ならめ女君多ちな心地してすくしらん
  のつねのしくなよひ多る可多ハとをくやと
  をし者可らるゝありさ万也仏へ多て尓
  さうし者可りをへ多てゝそ者すへ可めるす
  きあらん者个しき者みよりて御心
0037【人は】-姫君ノコト
  者えをもみま本しうさす可尓い可ゝとゆ可し
  うもある个者ひされとさる可多を」(17ウ・1518⑨)

  者なるゝね可ひ尓ふ可く多つねきこ江多る
  いなくすき/\しきなをさりをうちいて
  あされ者まんもと尓多可ひてやな
  かへしてありさ満のいとあ者れなるを
  ねんころ尓とふらひきこえ多万ひ多ひ/\万
  いりつゝしやう尓うはそくな可らをこな
0038【うはそく】-俗ノコト
  ふの布可き心法文とわさとさ可しけ
0039【山のふかき心】-ヤヽロ
  尓者あらていとよくの多万ひしらすひしり
0040【いとよくのたまひしらす】-中将与宮法談事
  たつさえある法師とハよ尓お本可れと」(18オ・1519①)

  あ万りこは/\しうけと乎个なるしうとく
0041【しうとく】-宿徳
  のそう徒そのき者ゝよ尓いと万なく
  きすく尓てをとひあら者さんもこと/\
  しくお本え給又らぬてしの
  いむことを多もつ者可り能多うとさ者あれとけ
  者ひいやしくことは多みてこちな个尓もの
  なれ多るいとものしくてひる者お本やけこと尓
0042【ひるはおほやけことに】-カホルノコト
  いと万なくなとしつゝ志めや可なるよゐの本と
  けち可き満くら可みなと尓めしいれ可多」(18ウ・1519⑥)

  らひ尓もいとさす可尓ものむつ可しうな
  みあるを伊とあてにくるしきさ万して
  多万ひいつるもおをし
  へをもみゝち可き多とひ尓ひき万せいとこよ
  なくふ可きさとり尓はあらねとよき
0043【よき人】-カホルノコト
  ものゝをえ可多のいとこと尓ものし多万日
  个れ者やう/\れ多て万つり多ひこと
  尓つね尓み多て万つら万ほしうていと万な
  なとして本とふる者こひしくお本え多万ふ」(19オ・1519⑪)

  こののかく多うとかりきこ江多まへれ者
  泉院よりもつね尓せうそこなとありて
  ころをと尓も乎さ/\きこえ多ま者すさ日
  し个なりしすみ可やう/\/\あり
  お里ふし尓とふらひきこ江とい可めしう
  このもまつさるへき尓つ个つゝお可しき
0044【この君】-薫
  やう尓も万めや可なるさ万尓もよせつ可う万
  徒り三年者可り尓なりぬのすゑつ
  か多四季尓あてゝし給御念仏ヲこの可ハ」(19ウ・1520②)

  徒ら者あしろのもこのころ者いとゝみゝか
  し可満しく志つ可ならぬをとてかのあさり
  すむてらのたう尓うつろひ多まひて七日
  ほとをこなひめきみ多ち者いと
  そくつれ/\万佐りてな可め多万ひ个るころ
  中将のきみひさしく万いらぬ可那と日いてきこ
0045【中将のきみひさしくまいらぬかなと】-中将向宇治事
  え个るまゝ尓ありあ个のの万多よふ
  かくさしいつる本と尓いて多ちていとしの日て
  とも尓ともなくてやつれておハし个り」(20オ・1520⑦)

  のこな多なれ者ともわつら者て御馬
  尓てなり个りい里もてゆく満ゝ尓きりふ多
  かりてもみえぬしけの=き(可=流)をわけ
  多万ふ尓いとあら万しきのき本ひ尓
  ほろ/\とおちみ多るゝこの能つゆのちり
  かゝるもいとひやゝか尓やりならすい多くぬ
  れ多万ひぬかゝるありきなともおさ/\な
  飛多万者ぬ心地本そく越可しくお本
  され个り」(20ウ・1520⑪)

    乎ろし尓多へぬこのの徒ゆよりも
  あやなくもろきわ可なみ多可那可つの
  乎とろくもうる佐しとてすいしんのをとも
  せさせ者須志はの万可きをわけて(て$つゝ)
  は可となのな可れともをふミし多く
  こ万のあし越ともしのひてとようい
  し多万へる尓可くれな尓ほひそ
  尓志多可ひてぬしゝらぬ可とおとろくねさ
0046【ぬしゝらぬかと】-\(合点)
  めのいゑ/\あり个るち可くなる本と尓その」(21オ・1521②)

  ことゝもきゝわ可れぬのねともいとすこけ尓
  きこゆつね尓かくあそときくをついて
  なくて=無イ)のねのな多可きもえき可ぬ
0047【宮】-ミコ
0048【琴】-キン

  そ可しよき乎りなるへしとつゝいりへハ
0049【よきをりなるへしと思つゝ】-中将聞比巴筝事
  琵琶のこゑのひゝきなり个りわうしきてう
  尓しらへてよのつねのかきあ者せなれと
  可ら尓やみゝなれぬちしてかき可へす
  者ちのをともゝのきよ个尓おもしろし
  佐う能ことあ者れ尓な万めい多るこゑ」(21ウ・1521⑦)

  て多え/\きこゆしはしき可万本しき尓
  の日多万へと个者ひしるくきゝつ个て
  と能ひ(ひ=ゐ)ゝとめく乎のこな万か多くなしきい
  てき多り志可/\なんこもりお者します
0050【しか/\なんこもりおはします】-八宮念仏ニ行給ト也
  せうそこをこそきこえさせめとすな尓可
0051【なにかしかかきりある】-薫詞
  志可かきりあるをこなひの本とを満き
  ら者しきこえさせん尓あいなしかくぬれ/\
  万いりてい多つら尓かへらんうれへをひめきミの
  御方尓きこえてあ者れとの多万者せ者なん」(22オ・1521⑪)

  なくさむへきとの多万へ者み尓くきか本うちゑ
  みてさせらんとて多つをしはしやとめ
  よせてとしころ徒て尓のみきゝてゆ可
  とのねともをうれしき乎り可那
  はしすこし多ち可くれてきくへきものゝく万
  ありや徒き那くさしすきて万いりよらむ本と
  み那ことやめ多万ひて者いとほいな可らんと
  の多万ふ个者ひか本可多ちのさるな/\
  しき心地尓もいとめて多くか多し个なく」(22ウ・1522③)

  お本ゆれ者き可ぬ者あ个くれかくなむ
  あそ者せとしも尓てもみやこのより万
  い里多ち満しるひと侍時者をともせさせ
  者須おほ可多かくて多ちお者しますこと
  を者かくさせ多万ひなへての尓しらせ
  多てまつらしとお本しの多ま者する
  せ者うちわらひてあちきな御物
  かくし志可しのひ多万ふなれとみな」(23オ・1522⑦)

  あり可多きの多めし尓きゝい徒へ可めるヲ
  との多万日てしるへせよ者すき/\しき
  となかくてお者しますらん
  ありさ満のあやしくけ尓なへて尓お本え
  多万者ぬとこ万や可尓の多万へ者あ那可しこ
  きやう尓のちのきこ江やらむとく(く$て)
  あな多のお万へ者のすい可いしこめてみ
  なへ多てことなるをゝしへよせ多て万つ」(23ウ・1522⑫)

  れ里ともの者尓しのらう尓よ日すへて
  このとのゐあいしらふあ那多尓かよふへ
  かめるすい可いのとをすこしをしあ个て
0052【すこしをしあけて見たまへは】-見両息女事
  多まへ者可しきほと尓きり王多れる
  をな可めてす多れをみし可く万きあ个て
  ひと/\ゐ多りすのこ尓いとさむけ尓み本そ
  くなえ者免るわらはひとりおしさ万
  なる乎となゝとゐ多り人一人
0053【一人】-中君
  しら尓すこしゐ可くれて飛はをまへ尓」(24オ・1523②)

  をきて者ちをて万佐くり尓志徒ゝゐ多る尓
  くも可くれ多りつるの尓は可尓いとあ可く
  さしいて多れ者あふきならてこれしても
  者万ねき徒へ可り个りとてさしのそ
  多るかほいみしくらう多け尓ゝほひや可な
  るへしそ飛布し多る者ことのうへ尓可多ふ
0054【そひふしたる人】-大君
  き可ゝりているをかへす者ちこそあり个れ
0055【いる日をかへすはち】-\(合点)返日撥事
  さまこと尓もおもひをよ日給御心可那とて
  うちわらひ多る个者ひいますこし乎も」(24ウ・1523⑦)

  里可尓よし徒き多りをよ者すともこれも
  尓者那るゝ可者なと者可那きをう
0056【月にはなるゝ物】-隠月
  ちとけの多まひか者し多るけ者ひともさらに
  よそ日やりし尓者尓すいとあ者れ尓な
  徒可しうお可しむ可し可多りなと尓か多り
0057【むかし物かたりなとに】-住吉物語ニアリ
  つ多へてわ可き(わ可き$)わ可き女房とのよむをも
  きく尓かならすかやうのことをいひ多るさしも
  らさり个んと尓くゝをし者可らるゝを个尓
  者れなのく万ありぬへきり个りと」(25オ・1523⑫)

  う徒りぬへしきりの布可个れ者さや可尓
  ゆへくもあら須又月さし(さし$)いてなんとお
  ほす本と尓おくの可多より者すとつけ
  きこゆるやあらんす多れ乎ろしてみな
  里ぬ乎とろき可本尓者あら須なこや可尓もて
  なしてやをらかくれぬるけ者ひともきぬのを
  ともせすいとなよゝか尓くるしくていみしう
  あて尓みやひ可なるをあ者れとおもひ多万ふ
0058【みやひかなる】-閑ナル心
  やをらいてゝくる万ゐて万いるへく」(25ウ・1524③)
0059【やをらいてゝ】-薫詞

  者しらせ徒ありつるさふらひ尓おりあしく
0060【さふらひに】-宿直
  万いり尓个れと/\うれしくおもふこ
  すこしなくさめてなんかくさふらふよしきこ
  えよい多うぬれ尓多る可こともきこえさせ
  む可しとの多万へ者万いりてきこゆかくみえや
0061【かくみえや】-形ノ心
  しぬらんと者お本しもよらてうちとけ多り
  徒ることゝもをきゝやしつらんといといみし
  く者つ可しあやしくかう者しく尓本ふ可せ
  の布きつるを可个ぬ本となれ者おとろ可」(26オ・1524⑧)

  佐り个るさよとも万とひて者ちお
  者さうすせうそ(と$こ)と徒多ふるもいと
0062【御せうそこ】-薫ノ心
  うゐ/\しきめるをゝり可ら尓こそ
  ろ徒のこともとお本いて満多きりの万きれ
  なれ者ありつるみすのまへ尓あゆみいてゝつい
0063【ありつるみすのまへに】-カホルノ体
  ゐ多万ふさとひ多るわ可とも者さし
  いらへんことのはもお本えてしとね佐
  しいつるさ万も多と/\しけこのみすの万へ」(26ウ・1524⑫)
0064【このみすのまへには】-薫詞

  尓者ゝし多なり个りうちつけ尓あさき
  者可り尓て者かくも多つね万いる万しき
  の可けち尓おもふ多万ふるをさ万こと尓
  こそかく徒ゆ个きたひをかさねて者さ
  りとも御覧しゝるらんとなん多のもし
  うといと万めや可尓の多万ふわ可き/\の
  な多ら可尓きこゆへきもなくきえ可へり
  かゝや可しけなるもか多はらい多个れ者」(27オ・1525②)

  乎んな者らのおく布可きをおこしい徒る
  ほと飛さしくなりてわさとめいたるも
  くるしうてな尓こともしらぬありさ万
0065【くるしうて】-姉宮通言事
0066【なにことも思しらぬ】-大姫詞

  尓て志り可本尓もい可かはきこゆへくと
  いとよしありあてなるこゑしてひきいりな
  ほの可尓の多万ふかつ(つ=ツ)しりな可らうきをし
0067【かつしりなから】-薫詞 カクノ心
  す可本なるもよのさ可とふ多万へしるを
0068【よのさか】-祥 世ノナラヒト同心
  ひとしもあ万りおほめ可せらんこそ」(27ウ・1525⑦)

  くち乎しかるへ个れあり可多うよろつを
  数万し多るす万ゐなと尓多くひきこ江させ
  多万ふ御心者な尓ことも数ゝしくを
  し者可られれ者可くしのひあ万り
  布可さあさゝの本ともわ可せ者んこそ
  かひ者らめのつねのすき/\しきすち尓ハ
  お本しめし者那徒へくやさやうの(者$ハ)
  さとすゝむる人侍りともなひくへうもあらぬ
  こゝろへよさ尓なん乎のつ可らきこしめし」(28オ・1525⑫)
0069【をのつからきこしめしあはするやうも】-薫ノシホウノ心ハ姫君モシラセ給ハンノ心

  あ者数るやうもん徒れ/\とのみすくし
  侍世のもの可多りもきこえさせところ尓
  多のみきこ江させかく者なれてな可め
  させらん御心の万きらはし尓者さしも
  おとろ可せ者可りきこ江なら者い可
  尓ふさ万尓らんなとお本くの多万へは
  徒ゝ万しくいらへ尓くゝて乎こしつるお
0070【おい人のいてきたるに】-老女弁対面事
  いてき多る尓そゆつり多万ふ多としへなくさ
0071【たとしへなく】-老詞
  しすくしてあなか多しけなやか多者らい多き」(28ウ・1526③)

  お満しのさ万尓も可那みすの尓こ(こ$)そ
  わ可き/\者の本としらぬやう尓こそ
  なとし多(+た)かゝ(ゝ$)尓いふこゑのさ多すき多るも
  か多者らい多くきみ多ち者お本すいともあ
  やしく世中尓す万ひ給人のか須尓もあら
  ぬありさ万尓て佐もありぬへき/\多尓とふ
  らひかす万へきこ江えきこえすのみな
  り万さりめる尓あり可多き御心さしの本とハ
  かす尓もらぬ尓もあさましき万て」(29オ・1526⑧)

  思給をわ可き御心地尓もお本しゝりな
  からきこ江させ日尓くき尓やらんといとつゝ
  みなれ多るもな万尓くきもの可ら
  け者ひい多うめきてよしあるこゑなれ者
  いと多つきもしらぬ心地しつる尓うれしき
0072【たつきもしらぬ心地しつるに】-\(合点)をちこちの多つきも志らぬ尓/おほつ可なくもよふことり(付箋②)
  者ひ尓こそ尓こともけ尓しり多万日
  る多のみこよな可り个りとてよりゐ多万へる
  を木丁のそ者よりれ者あけ本のやう/\」(29ウ・1526⑫)

  ものゝいろわ可るゝ尓个尓やつしへるとみゆる
  かりきぬす可多のいとぬれしめり多る本とう多て
  このよのほ可の尓ほひ尓やとあやしき万てか
  ほりみち多りこのお者うちなきぬ
  佐しすき多るつみもやとふ多万へ志のふれと
  あ者れなるむ可しのもの可多りのい可ならん
  徒いて尓うちいてきこえさせか多者しをも本
  のめ可しゝろしめさせんところねんすの
  ついて尓もうち万せおもふ多万へわ多るしる/し尓や」(30オ・1527④)

  うれしき乎り尓を満多き尓越本ゝれ
  み多尓くれてえこそきこ江させす
  れとうちわなゝく个しき満こと尓いみしく
  もの可なしとおもへりおほ可多さ多すき多る
  者なみ多もろなと者きゝへといとか
  うしももへるもあやしうな日てこゝ尓
  かく万いるをハ多ひ可さなりぬるをかくあ者れし
  り多万へるもなくてこそつゆ个きみちの本と
  尓ひとりのみそ本ちつれう連しきついて」(30ウ・1572⑧)

  なめるをことなのこい多万日そ可しとの多万へハ
  かゝるついてしもらし可し又侍りともよの万の
0073【かゝるついてしも】-老詞
  本としらぬいのちの多のむへき尓もらぬを
  さらは多ゝかゝるふる物世个りと者可り志
  ろしめされ(+ら)三條小侍従
0074【小侍従】-女三ノメノトノコト
  者可那くな尓个ると本のきゝしそ
  かみむつ万しうふ多万へしおし本との
  乎本くうせ尓个るよのすゑ尓者る可な
0075【はるかなるせかい】-田舎
  累せ可いよりつ多者り満うてきてこのいつとせ」(31オ・1527⑭)

  むとせのほとなむこれ尓かくさふらひ志ろ
  しめさし可しこのころ藤大納言
0076【藤大納言】-紅梅
  このかみの右衛門督尓てかくれ尓しハ
  ものゝついてなと尓やかのうへとてきこしめし
0077【ものゝついてなとにや】-弁語出権大納言問事
  つ多ふるらんすき多万日ていく者くもへ
  たゝらぬちのみしのおりのかなしさも
  ま多そての可はく乎りらすおもふ多万へ
  らるゝを(+テカソヘレハ)かくおとなしくならせ尓个るよ者
  飛の本ともゆめのやう尓なんかの(+権大納言」(31ウ・1528⑤)

  のめのと尓し者可はゝ尓な
  あさゆふ尓つ可う万つりなし尓可す
  尓もらぬれと尓しらせ須御心より
  者多あ万り个るを乎り/\うち可すめの
  多まひしを者かきり尓な尓し
  ひのすゑつ可多尓めしよせていさゝかの多
  日をくしをきこしめすへき
  ゆへなんひとこれとか者可りきこえいて
  尓のこりをとお本しめす御心侍らはのと可/尓なん」(32オ・1528⑩)

  きこしめし者てへきわ可き/\もか多ハら
  い多くさしすき多りと徒きしろひもこと者
  り尓なんとてさす可尓うちいてすなりぬあ
0078【あやしくゆめかたり】-薫心
  やしくゆめ可多りかむなきやうののとはす
0079【かむなきやう】-神ノツキテ物イハスル人ナトノコト
  か多りすらんやう尓めつら可尓お本さるれと
  あ者れ尓お本つ可なくお本しわ多るのすち
  をきこゆれ者いとおくゆ可し个れとけ尓めも
  志个しさしくみ尓布るもの可多り尓可ゝつら日
  てをあ可し者てんも(+こ)ちこ(こ$)/\し可るへ个れハ」(32ウ・1529①)

  そこは可とわく者な可らい尓しへの
0080【そこはかと】-詞
  ことゝきゝあ者れ尓なんさらはかな
  らすこの能こりき可せへきり者れゆ可者
  者し多なかるへきやつれを越もな御覧
  しと可められぬへきさ万なれ者ふ多万
  ふるの本とより者くち乎しうなんとて
  多ち多万ふ尓かのお者しますてらのかね
  のこゑかす可尓きこえてきりいと布可く多
  ちわ多れりみねのやへくもやるへ多てお本/く」(33オ・1529⑥)

  あ者れなる尓(+ま起のお、ま起のお#)このひめきみ多ちの御心
0081【ひめきみたちの御心】-薫ノ姫ノ心ヲ思ヤル心
  うちともくるしうな尓ことをお本し
  こすらんかくいとおく万りへるもこと者り
  そ可しなとお本ゆ
    あさ本らけいへ地もえす多つねこし
  満きのを者きりこめて个り本そくも
  可那と多ち可へりやすら日多万へるさ万を
  こののめなれ多る多尓いとこと尓
  きこえ多るを万いてい可ゝはめつらしうみきこ江」(33ウ・1529⑪)

  さらん御返きこ江つ多へ尓くけ尓多れ者
  れいのいとつゝましけ尓て
    くもの井るみねの可け地をあきゝりの
0082【くものゐる】-大君
  いとゝへ多つるころ尓もある可那すこし
  うちなけい多万へる个しきあさ可らすあ者
  連な尓者可りお可しき布し者えぬ
0083【なにはかりおかしき】-其辺ノ体
  あ多りなれと个尓くるしき本可る尓
  もあ可うなりゆ个者さす可尓ひ多おもて
  な心地してな可/\なる本と尓う个多万
  者りさしつることおほ可るのこり者い万」(34オ・1530③)

  こし乎もなれてこそ者うらみきこ江さ
  へ可め連さる者かくよのめいてもてな
  しへく者おも者す尓本しわ可さり
  个りとうらめしうなんとてとの日可しつ
  らひ多る西をもて尓お者してな可め多万ふ
  あしろ者さ者可しけされとひ乎も
  よらぬ尓やあらんすさまし个なる个しき
  なりとともの/\しりていふあやし
  き布ねとも尓しはかりつみをの/\」(34ウ・1530⑦)

  な尓と那きのいとなみとも尓ゆき可
  ふさ満ともの者可那きのうへ尓う可
  ひ多る多れもおもへ者お
  のつねな也我者う可者す多万のうて
0084【うかはす】-水ノコト
  な尓し徒个きとおもふへき可はと
  つゝけらるすゝりめしてあな多尓きこ
0085【あなたにきこえたまふ】-遣状於姫君事
  え多万ふ
    者しひめのをくみて堂可せさ須
0086【はしひめの】-薫
  さほのしつく尓そてそぬれぬる」(35オ・1530⑪)

  な可めらん可しとてとのゐ尓も多せ
  堂満へりいとさむ个尓いらゝき多るか本し
0087【いらゝきたる】-鳥ハタヽツ心
  てもて万いる御返かみのかなとお本ろけ
  ならむ者ゝ徒可しけなるをときをこそ
0088【ときをこそ】-早カヨキト也
  かゝる乎り尓者とて
    佐しかへる宇治をさあ佐ゆふの
  志徒くやそてをく多し者つらんさへ
0089【身さへうきて】-\(合点)さす尓ぬるゝゆへ耳/さへうきてもおもほゆる(付箋③)
  うきてといと乎可しけ尓かき多万へり」(35ウ・1531②)

  満お尓めやすくも(+も)のし日个りとと万り
  ぬれとくる満ゐて万いりぬと人/\さ者
  かしきこゆれ者とのゐ者可りをめしよ
  せてかへ里わ多らせ多ま者む本と尓かならす
  万いるへしなとの多万ふぬれ多るとも者
  み那この尓ぬき可个多万ひてとり尓つ可
  者し徒るし尓多て万つりかへ徒お
  のもの可多り尓可ゝりてお本しいてらる」(36オ・1531⑥)

  おひしより者こよ那く万佐りてお
  しかり徒るけ者ひともおも可け尓そ
  て猶思日者那れか多きり个りと
  よ者くおもひしらるふみ多て万つり
  けさう多ちてもあらすしろきしきしの
  あつこえたる尓布てひきつくろひえりて
  すみ徒きみありてかき多万ふうちつけな
  累さ万尓やとあいなくとゝめて能こりお」(36ウ・1531⑩)

  本可るもくるしきわさ尓なんか多者しき
  こえをきつるやう尓いまより者みすの万へも
  やすくお本しゆるすへくな御山こもり
  者てらんかすもうけ多ま者りをき
  ていふせ可りしきりの万よひも者るけ
  らんなとそいとすくよ可尓かき多万へる
  近
のそうな人御つ可ひ尓てかのお
  多つねて布みもとらせよとの多万ふとのゐ可」(37オ・1532①)

  さむ个尓てさ万よひしなとあ者れ尓
  おほしやりておほきなるひわりこやう
  のあ万多せさせ給又かのみてら尓も
  堂て万つり給山こもりのそうともこのころの
0090【たてまつり給】-贈物事
  あらし尓者いと本そくゝるしからんを
  さてお者します本との布せ多万ふへ可ら
  むとおほしやりてきぬわ多なとお本可り个
  りをこなひ者てゝいてあし多なり」(37ウ・1532⑤)

  个れ者をこなとも尓わ多きぬけさ
  なと数へてひとく多りのほとつゝあるかき
  りのとこ多ち尓たまふとの日
  きすてのえむ尓いみしきかりのとも
  えならぬしろきあやの能なよ/\と
  いひしらす尓本へるをう徒しきてを者
  たえかへぬものなれ者尓つ可者し可らぬそ
  の可をと尓と可められめてらるゝな
  むな可/\ところせかり个る尓万可せて」(38オ・1532⑨)

  をやすくも布る万者れすいとむくつ
  けき万ての乎とろく尓ほひをうし
  なひて者やとおもへとせきうつり
  か尓てえもすゝき春てぬそあ万りなるや
  者ひめきみの御返といとめやすくこめ
0091【君は】-カホル詞
  かしきをゝかしくみ多万ふ尓もかく
  うそこありきな/\きこ江させ御覧
  さすれ者な尓可は遣さう多ちて」(38ウ・1532⑬)
0092【なにかは】-八詞

  もてない多万者んもな可/\う多てあらん
  れいのわ可尓ゝぬみ者えなめるをな
0093【わか人に】-カホルノコト
  からむのちもなとひとことうち本のめ可し
  てし可はさやう尓てとめ多らむな
  の多万ふ个りみつ可らもさ万/\のとふ
0094【御みつからも】-薫ノコト
  らひののい者や尓あ万りし
  の多万へる尓万うてむとお本して
0095【のたまへるにまうてむと】-語宇治宮事於三宮事
0096【三の宮】-匂ノコト

  のかやう尓おく万り多らむあ多り能」(39オ・1533③)

  万さりせんこそ可し可るへ个れとあら
  満しこと尓多尓の多万ふものをきこ江
  者个万して御心さ者可し多て万つらんと
  お本してのとや可なるゆふくれ尓まいり
0097【まいり給へり】-匂へ参給
  へりれいのさ万/\なる御物可多りきこ江か者
  し多万ふついて尓宇治御事か多り
  いてゝしあ可つきのありさ万なとくはし
  くきこ江ふ尓いとせち尓お可しとお」(39ウ・1533⑧)

  ほい多りされ者よと御氣しきを
0098【されはよと】-薫心
  伊とゝ御心うこきぬへくいひつゝけさて
0099【さてそのありけん】-匂詞
  そのあり个んと者なと可せ多万は
  りし万ろなら万し可者とうらみ多万ふ
  かしいとさ満/\御覧すへ可める者しを
0100【さかしいとさま/\】-薫詞
  多尓せさせ多ま者ぬかのわ多り者かく
  いともむもれ多る尓ひきこめてやむへき
  け者ひ尓もらね者かならすらんせ
  させ者やと思給れとい可て可多つねよらせ」(40オ・1533⑫)

  へきかやすき本とこそ数可万本しくハ
0101【かやすきほと】-薫ノ我トヒケノ心
  いとよく須きぬへきり个れうち可
  くろへ徒ゝおほ可める可那さる可多尓
  みありぬへきも者しきうち志
  のひ多る(+可)すみ可ともさとめい多るく万な
  と尓をのつ可ら者へ可めりこのきみも(みも$こえ)
  するわ多り者いとよつ可ぬひしりさ万尓て
  こち/\しうそあらんとゝしころあなつり
  りてみゝを多尓こそとゝめらさり个れ」(40ウ・1534③)

  ほの可なりし可个のみをとりせす者万お
  らん者やけ者ひありさ万者多さハ可り
  らむをそあら万ほしき本とゝはおほ
  えへきなときこ江多万ふ者や(者や$)者て/\ハ
  万め多ちていとね多くお本ろけの
  うつる万しきのかく布可くおもへる
  を越ろ可ならしとゆ可しうお本すこ
  かきりなくなり日ぬ猶又/\よく个し/き見給へと」(41オ・1534⑦)
0102【猶又/\よく】-匂詞

  をすゝめてかきりある御身の本との
  よ多けさをいと者しき万てもとなし/と
0103【よたけさ】-コト/\シキコト
  お本し多れ者お可しくていてやよしな
0104【おかしくて】-薫詞
  そしはし世中とゝめしと多万ふ
  るやうある尓てなをさりこともつゝ万し
  う可らかな者ぬつきそめな
  お本き尓おもひ尓多可ふへき
  きときこ江へ者いてあ那こと/\し」(41ウ・1534⑪)
0105【いてあなこと/\し】-匂詞

  れいの乎とろ/\しきひしりことは者て
  てし可那とてわらひ給心尓者かのふ
0106【心の内には】-薫心
  るの本のめ可しゝすちなとのいとゝうち
  乎とろ可れてものあ者れなる尓お可し
  とみるもめやすしときくあ多りも
  な尓者可り尓もと万らさり个り十月
  尓なりて五六日の本と尓宇治へ万うて
  あしろをこそこのころ者御覧せめときこ/ゆる」(42オ・1535②)

  /\あれとな尓可その飛おむし尓あらそ
0107【ひおむし】-蜏ヒヲムシ 蜉蝣イ
  ふ尓てあしろ尓もよらんとそきすて
  てれいのいと志のひや可尓ていて多ちかろら可
  尓あしろくる万尓てかとりのなしさしぬき
  ぬ者せてこと佐らひき多万へり万ちよろこひ
  多万ひて尓つけ多るあるしなとお可しう
  志なくれぬれ者乎本となふらち可くて
  さき/\さし多万へる布みともの布可きな
  とあさりもさうし乎ろしてとい者」(42ウ・1535⑦)
0108【さうし】-請
0109【義】-キ


  せうちも満とろ万す河風のいとあら万し
  き尓こののちり可ふをとのひゝきな
  あ者れも数きて乎そろしく本そ
  のさ万あけ可多ち可くなりぬらんとふ本と
  尓ありしゝのゝめいてられてのねの
0110【琴のねの】-薫詞
  あ者れなることのついてつくりいてゝさきの多
0111【あはれなることのついて】-八宮ノ琴ノ上手也
  飛のきり尓万とはされしあけ本の尓いと
  めつらしきのねひとこゑう个多万者りし
  のこりな/\尓いといふ可しうあ可すふ」(43オ・1535⑫)

  たまへらるゝなときこ江多万ふいろをも可をも
0112【いろをもかをも】-八詞
  日すてゝしのちむ可しきゝしもみなわす
  れてなんとの多万へとめしてとりよせて
  いとつきなくなり尓たりや志るへするものゝね
0113【いとつきなく】-宮法談之次召楽器事
  尓徒个てな日いてらるへ可り个るとて琵琶
  めして万らうと尓そゝの可しとりてしらへ
0114【とりてしらへたまふ】-薫也
  多万ふ佐ら尓本の可尓きゝしおとも
  おもふ多万へられさり个りとのひゝき可/ら尓や」(43ウ・1536③)
0115【御こと】-姫君ノコト
0116【ひゝきからにや】-薫ノヒケノ詞


  とこそふ多万へし可とてと个てもかき多て
  多万者須いてあ那さ可那やし可みゝと
0117【いてあなさかなや】-八詞
  まる者可りのと者い徒くより可こゝ万
  者徒多者りこんある万しきとなりと
  きむかきならしへるいとあ者れ尓
  こしか多へ者松風のもて者やすな
0118【峯の松風のもてはやすなる】-\(合点)ことの松風可よふらし/い徒れのおより志らへそめ个ん(付箋④)
  へしいと多と/\しけ尓乎本めき多万日て
  えあり(り$ル)てひとつ者可り尓てやめたまひつ」(44オ・1536⑦)

  このわ多り尓おほえ那くており/\本のめく
0119【このわたりに】-八詞 姫君タチノコト
  のことのねこそえ多る尓やときくお
  れととゝめてなともあらて飛さしう
  なり尓个りや尓万可せてをの/\かきならす
  へ可める者河波者可りやうちあ者すらんろな
  うものゝよう尓す者可りの者うしなともと
  まらしとなんお本えとてかきならし
  へとあ那多尓きこ江へとよら佐りし」(44ウ・1536⑫)

  飛とりことをきゝ日个ん多尓あるヲいと
  か多者ならんとひきいりつゝみ那きゝハす
  多ひ/\そゝのかしへとと可くきこ江すさ(さ$ま)
  てやミぬめれ者いとくちおしうお本ゆ
0120【いとくちおしうおほゆ】-薫ノ心
  そのついて尓もかくあやしうよつ可ぬ
0121【そのついてにも】-八心
0122【あやしうよつかぬ思ひやりにて】-姫タチノコト世ヲノカレタルヤウニソアルコト

  やり尓てすくすありさ万とものおもひの
  ほ可なと者つ可しうおほい多り
  尓多尓い可てしらせしと者くゝみすくせと」(45オ・1537②)

  遣ふあすともしらぬの能こりすくな
  尓さす可尓ゆくすゑとをき者おちあふ
  れてさすらへんこ連のみなん(なん$)こそ
  尓を者那れんき者のほ多しなり个れと
  うち可多らひ多万へ者くるしう多て万つり
  わさとのうしろみ多ち者可/\しきすち
0123【わさとの御うしろみたち】-薫詞
  尓者らすともうと/\し可らすお本しめさ
  れんとなふ多万ふるしはしもな可らへ
  らんいのちの本と者ひとこともかくうちいて」(45ウ・1537⑦)

  きこ江させてむさ万をた可へましくな
  な申給へ者いとうれしきことゝお本し
0124【いとうれしきことゝ】-八ノ心
  の多万ふさてあ可つき可多のをこな
  し本と尓かのおめしいてゝあひ多万
  へりひめきミのうしろみ尓てさふらハせ
  給弁のきみとそいひ个るとしも(も=者)六十尓す
  こし多らぬ本となれとみやひ可尓ゆへある
  遣者ひしてときこゆ故権大納言の」(46オ・1537⑪)
0125【故権大納言のきみの】-弁達故大納言遺言事

  きみのとゝも尓つゝや万ひつき者
  かなくな尓しありさ万をきこえいてゝ
  なくことかきりなし个尓よそのうへと
  き可む多尓あ者れなるへき布ることゝもヲ
  満してとしころおほつ可なくゆ可しうい可な
  り个んことのはしめ尓可と尓もこの
  佐多可尓しらせへとねむしつるしるし尓や
  かくゆめのやう尓あ者れなるむ可し可多りを」(46ウ・1538②)

  おほえぬついて尓きゝつけつらんとお本す尓
  なみ多とゝめ可多かり个りさてもかくそ
  しり多るものこり多万へり个るヲ
  めつら可尓も者つ可しうもお本ゆることのす
  ち尓かくいひつ多ふる多くひやもあ
  らんとしころかけてもきゝをよ者さり个る
  との多万へ者こしゝうとと者那ちて
  志る人侍らしひとこと尓ても
  うち万ねひらすかくもの者可那くかす」(47オ・1538⑥)

  ならぬの本と尓れとよるひるかの
0126【かの御かけに】-柏ノコト
  个尓つき多て万つりてし可はをのつ可ら
  ものゝ个しきをもみ多て万つりそめし尓
  御心よりあ万りてお本し个る/\多ゝふ多り
  のな可尓なん多万さ可のせうそこの可よ日
  もしか多者らい多个れ者く者しくきこ江
  させすいま者のとちめ尓なていさゝかの
  多万日をくことのしをかゝる尓はをき」(47ウ・1538⑪)

  ところなくいふせくふ多万へわ多りつゝい可尓
  して可者きこしめしつ多ふへきと者可/\し
  からぬねんすのついて尓もふ多万へ徒るを
  者よ尓お者しまし个りとなんおもふ多万
  へしりぬる御覧せさすへきりい万
  者な尓可はやきもすてんかくあさ
  ゆふのきえをしらぬのうちすて
  乎ちゝるやうもこそといとうしろめ多く
  ふ多万ふれとこのわ多り尓も/\」(48オ・1539②)

  ほのめ可せを万ちいて多て万つりてしは
0127【まちいてたてまつりて】-カホルノ成人ヲ待タルト也
  すこし多のもしくかゝるおりもやとねむし
  つるち可らいて万うてきてなん佐ら尓
  これ者この尓もらしとなく/\こ
  ま可尓む万れ个るほとのもよくお
  えつゝきこゆむなしうなしさハき尓
0128【むなしうなり給し】-柏ノコトヲ思故ニ弁母ハシタルト也
  はゝ尓者や可てや万ひつきて本と
  もへすかくれ尓し可者いとゝふ多万へ」(48ウ・1539⑥)

  しつみ布ち多ち可さねかなしきことヲ
  思給へし本と尓としころよ可らぬ
0129【としころよからぬ人】-弁カ男
  つ个多り个る可をは可りこちて尓しの
0130【人をはかりこちて】-大弐ニツレテ弁モ行タルト也
  うみの者て万てとりもて万可り尓し可は
  さへあと多えてそもかしこ尓
  てうせ尓しのちとゝせあ万り尓てな
  あらぬ心地して万可りの本り多りし
  をこの者ちゝ可多尓つ个てわらはより
  万いり可よふゆへし可者いま者可う」(49オ・1539⑪)

  尓満しらふへきさ万尓もらぬを冷泉
  女御殿御方とこそ者む可しきゝな
  れ多て万つりしわ多り尓て万い里よるへく
  し可と者し多なくおほえてえさしいて
  らてみ可くれのくち尓なり尓て侍也
  こしゝう者い徒可うせ尓个んその可みの
  わ可さ可りと見侍者かすゝくなくな
  尓个るすゑのよ尓お本くの尓をくるゝ」(49ウ・1540①)

  いのちをかなしく多万へてこそさす可尓め
  くらひれなときこゆる本と尓れいのあ
  け者てぬよし佐らはこのむ可し可多り
0131【よしさらは】-薫詞
  者つきすへくなんあらぬ又人き可ぬ
  すき尓てきこえん侍従といひし
  ほの可尓お本ゆる者い徒ゝむつ者可りな
  し本と尓や尓者可尓むねをやみてう
  せ尓きとなんきくかゝる多いめんなくは」(50オ・1540⑤)

  徒み乎もき尓てすきぬへ可り个る/と
  の多万ふさゝや可尓をし万きあ者せ多る
0132【さゝやかに】-ホソキ心
  ほくとものかひくさきを布くろ尓ぬ日
  いれ多るとりいてゝ多て万つるおまへ尓てう
0133【おまへにて】-弁詞 柏ノ詞ヲ読女三ノ前也
  しな者せへわれいくへくもあらすな
  り尓多りとの多万者せてこのふみをとり
  あ徒めて多万者せ多りし可者こしゝう尓
  あひ見侍らんついて尓さ多可尓つ多へ」(50ウ・1540⑩)

  万いらせんと思給へしをや可てわ可れ尓し
  もわ多くしこと尓者あ可すかなしうな
  多万ふるときこゆ徒れなくてこれ者可く
0134【つれなくて】-薫詞
  いたまひつかやうのふる者とハす可多り
  尓やあやしきの多めし尓いひいつらん
  とくるしくおほせと/\もちらさぬよ
  しをち可ひつるさもやと又思日み多れ
  可ゆこ者いひなと万いり多万ふきのふ者」(51オ・1541⑭)

  いと万りしを个ふ者ものいミ
  もあきぬらん女一やみ多万ふ
  とふらひ尓かならす万いるへ个れ者
  か多/\いと万なこのころすくして
  のもみちゝらぬさき尓万いるへきよし
  きこ江多万ふかくしは/\多ちよらせ
0135【かくしは/\たちよらせ給】-八詞
  飛可り尓の可けもすこしものあきらむ
  るちしてなんなとよろこひきこ江」(51ウ・1541④)

  へりてまつこの布くろを多まへは
  らのふせんれうをぬ日てといふもしを
  うへ尓可き多り本そきくみしてくちの
  か多をゆ日多るを(を$)尓かの御名の布うつき
0136【かの御名】-柏ノコト
  つき(つき$)多りあくるもおろしうおほえ
  多万ふいろ/\のかみ尓て多万さ可尓かよひ
  个るふみのとい徒ゝむつそある
  さて者かのて尓てや万ひ者をもくかき/り尓」(52オ・1541⑧)

  なり尓多る尓ほの可尓もきこえん
  か多くなりぬるをゆ可しうおもふ
  そひ尓多り可多ちもか者りてお者し万
  すらん可さ万/\かなしきをみちのくに
  かみ五六枚尓徒ふ/\とあやしきとりのあ<
  とのやう尓かきて
    めのまへ尓このよをそむくきみよりも
  よそ尓わ可るゝ多万そ可那しき
  者し尓めつらしくきゝ布多者の本と」(52ウ・1541⑬)

  もうしろめ多うおもふ多万ふるハな个れと
0137【うしろめたうおもふ】-源ノ子分ナレハ也
    のちあらはそれともまししれぬ
  者ね尓とめし万つのおいすゑ
  かきさし多るやう尓いとみ多りかはしう
  てこしゝうのきみ尓とうへ尓者かきつけ
  多り志みといふむしのすみ可尓なりて
  布るめき多るかひくさゝな可らあとは
  きえす多ゝい万かき多らむ尓も多可ハぬ」(53オ・1542④)

  ことのはとものこ万/\と佐多可なるをみ多
  万ふ尓け尓乎ちゝり多らましよとうしろ
  め多ういとおしきことゝもかゝるよ尓
  あらんやとひとつ尓いとゝも者し
  さそひてへ万いらんとお本しつるもいて
  堂ゝれすのおまへ尓万いりへれ者
0138【宮のおまへ】-入道宮
  いとな尓もなくわ可や可なるさ万し
  てよみ多万ふヲ者ちらひてもて可」(53ウ・1542⑧)

  くし多万へりな尓可はしり尓き(き$个り)とも
0139【なにかはしりにけり】-柏ノコト
  志られ多てまつらんな尓こめてよろ
  徒尓おもひゐ多万へり」(54オ・1542⑨)

【奥入01】還城楽陵王をあや布めむとす
    のくるゝ尓者ちしてをむ万尓かき
    可へすといふ事也
        く者しくしらす
    此等事可否難弁
    史記
    魯陽以戈廻落日事歟

    同時哥歟不可為証哥歟
【奥入02】宇治河さめて
    よる者ゝしひめいやねさるらむ」(54ウ)

(遊紙表)
(遊紙裏)