First updated 03/10/2002(ver.1-1)
Last updated 11/02/2016(ver.3-2 凡例5 修正)

 橋姫

【概要】

・明融臨模本「橋姫」帖(東海大学桃園文庫蔵)は全文定家親筆本「橋姫」を臨模した写本であると考えられる。

・引き歌を注記した付箋が4枚貼付されているが、その筆跡は本文筆写とは別の筆跡と見受けられる書体である。また定家の筆跡とも別書体である。

・本行本文中の引き歌付箋箇所には合点(掛け点)がある。

・奥入が存在するが、その筆跡は定家筆を臨模したものではない。

・和歌の書写様式はⅠ類A型:上句/下句+地の文…②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑪、C型:上句/下句+余白…⑩⑫⑬、Ⅱ類F型:上句/下句(頭揃え)+余白…①

・行頭の隣行に同字が来た場合は別の種類の字母で書き分けられている(32「し」・3「志」、57「し」・8「志」、142「さ」・3「佐」、192「の」・3「能」、203「の」・4「能」、221「し」・2「志」、223「し」・4「志」・5「し」、258「あ」・9「阿」、326「ま」・7「万」、332「の」・3「能」、341「数」・2「春」、387「せ」・8「せ」、404「さ」・5「佐」、511「か」・2「可」)計14例。例外は、(4445「て」)の1例だけである。なお同じ漢字が行頭に並んだ事例が1例(4945「侍」)ある。

・「橋姫」は裏面書き起こし(裏面から始まる)である。

 

【凡例】

1.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。

2.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。

3.変体仮名はその字母で翻字した。

4.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。

5.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「と付記した。

6.本行本文は10.5ポイントで表示し、書入注記や付箋等は9ポイントで表示した。

 

橋姫」(題箋)

 

「上冷泉殿為和卿御息明融 琴山」(1オ)

 

  楚のころ尓か数満へられ者ぬ布る
0001【ふる宮おはしけり】-八宮事
  者し遣里者ゝか多なともやむことな
  くものし(+
ひ)て須ちことな累へきおほえな
  お者し个るをう徒里て世中尓者し/多な
  免られ多まひ个る万きれ尓な可/\いとなこり
  なうしろみなともうらめしき心/\尓て
0002【御うしろみ】-家司
  方/\尓徒个てをそむきさりつゝお本やけ」(1ウ・1507④)

 

  王多くし尓よりく佐し者那多れへる
  やう也北もむ可しの大臣むすめな
  个るあ者れ尓ほそく乎(乎=
お)や多ちのおほし
  をきて多りしさ満な日いて尓たと志
  へなきことおほ可れと布る(る$
可)きちきりの婦
  多つなきをうきのなく佐め尓てか多
  み尓く多のみか者しへりころ婦
  類尓こものし者てと那かり个れ者」(2オ・1507⑨)

 

  佐う/\しく徒れ/\なるなく佐め尓い可てお
  し可らんちこも可那と時/\本しの多
  満ひ个る尓めつらしく女君のいとう徒くし
0003【女君】-総角ノコト
  けなるむ万れ多まへりこれをかきりなく
0004【むまれたまへり】-女君誕生事
  あ者れとおもひかしつきゝこ江尓さしつゝき
  个しき者みてこの多ひ者おとこ尓てもな
  とおほし多る尓おしさ満尓てたひら可
0005【おなしさまにて】-中君誕生事
  尓者し多まひな可らいとい多くわつらひて」(2ウ・1507⑬)

 

  うせあさ満しうおほし万とふあり
0006【うせ給ぬ】-北方逝去事
  布る尓徒个てもいと者し多なく堂へ可多き
  ことおほ可るれとすて可多くあ者れ
  なありさ万さ満尓かけとゝめらるゝ
  ほ多し尓てこそ数くしき徒れ飛とり
  と満りていとゝ数さ万しくもあるへき可那
  い者个な人/\をも飛とり者くゝみ多てむ本
  とかきりある尓ていとおこ可満しうわろ」(3オ・1508④)

 

  かるへきことゝおほし多ちて本いもとけ万本
0007【ほい】-出家
  しうし个れとゆつるくての
  志とゝめむをいみしうお本し多ゆ多ひ
  徒ゝ年月も布れ者をの/\およす个万さり
  さ万可多ちのうつくしうあら万本しきを
  あ个くれのく佐め尓てをのつ可らみ
  数くしのち尓む万れしきみを者さ
0008【のちにむまれ給しきみ】-中君ユヘ母ノ死給トノ心
  布らふ人/\もいてやおり布しうくなと」(3ウ・1508⑧)

 

  うちつ布やきつゝ尓いれてもあつ可ひきこ
  えさり个れとかきりのさ満尓てな
  もお本しわ可さりし本とな可らこれを
  いとくるしとて多ゝこのきみを可多ミ
  尓見給てあ者れとお本せと者可り多ゝひと
  ことな尓きこ江をき个れ者さ
  きのよのちきりも徒らきお里ふしなれと
  さるへきに尓そはあり个めといま者とえ/し」(4オ・1508⑫)

 

  満ていとあ者れとてうしろめ多个尓の
  多まひしをとおほしいてつゝこのきみを
  しもいとかなしうし多て万つりか多ちな
0009【いとかなしうしたてまつり給】-大君ハ勿論ト也
  んまこと尓(+いとうつくしう)ゆゝしき万てものし多万ひ个る
  ひめきみ者者せ志徒可尓よしある尓て
  るめもてなしも个多可く尓くきさまそし
  多万へるい多者しくやむことなきすち者万佐
  里ていつれをもさ万/\尓可しつき支こ江」(4ウ・1509③)

 

  多まへとかな者ぬことお本く年月尓そへて
  のうちも佐ひしくのみなり万さるさふら
  飛しも多つきなちする尓えしのひ
  あへす徒き/\尓し多可ひて満可てちりつゝ
  わ可きみのめのともさるさ者き尓者可/\しき
  をしもえりあへ多万者さり个連者本と
  尓つ个多るあさゝ尓ておさなき本とをすて
  多て万つり尓个れ者多ゝそ者くゝみ多万ふ
  さす可尓ひろくおもしろきのいけとの」(5オ・1509⑧)
0010【宮のいけ山なと】-京ノコト

 

  遣しき者可りむ可し尓か者らていとい多うあ
  れ万さるを徒れ/\とな可め多万ふけいしな
  ともむね/\しきもなき満ゝ尓あ乎
  や可尓し个りのきの志のふそところえ可本尓
  あ乎みわ多れるおり/\尓つ个多る者那もみ
  ちのいろをも可をもお尓み者やし
  し尓こそなくさむこともお本可り个れいとゝ
  志くさひしくよりつ可ん可多なきまゝ尓ち
  可さり者可りヲわさとせさせ多万ひて」(5ウ・1509⑬)

 

  あ个くれをこなかゝるほ多しとも尓かゝつ
  らふ多尓おもひのほ可尓くち乎しうわ可
  な可らもかな者さり个るちきりとお本ゆるを
  満いてな尓ゝ(ゝ=
/\イ)かよのめいてい万佐ら尓との
  み年月尓そへて世中をおほし者那連
  徒ゝ者可りハ飛しり尓なり者ててこ
  のうせ尓しこな多者れいののさまな
0011【れいの人のさま】-好色
  こゝろ(こゝろ=)者え(え=へ)なと多者ふれ尓てもおほしいて
  多ま者さり个りなと可佐しもわ可るゝ本との」(6オ・1510④)

 

  かなし飛者又世尓堂くひなきやう尓のみこそ
  者おほゆへ可めれとありふれ者さのみや者
  世人尓なすらふ御心つ可ひをしていと可く
  くるしくたつきなのうちもをのつ可ら
  もてなさるゝわ佐もやと者もときゝこ江て
  な尓くれと徒き/\しくきこ江こつも累い尓
  布れてお本可れときこしめしいれさり个り御念
0012【きこしめしいれさりけり】-人ヲモヲカレヌ心
  すのひ万/\尓者この多ちをもてあそひやう/\
  およす个へ者ことならはしうちへんつき」(6ウ・1510⑨)
0013【へんつき】-文字ヲシヲスルコト

 

  なと者可那きあそひわさ尓つ个ても者へ
  とも多て万つり尓ひめ者らう/\しく
  布可くおもり可尓わ可きみハおほと可尓
  らう多けなるさ満してものつゝみし多るけ者日
  尓いとうつくしうさ万/\尓お者す者るのうらゝ
  かなか个尓とりともの者ねうちか
  者し徒ゝをの可しゝさえつるこゑなとを徒
  ね者ゝかなきこと尓み多まひし可ともつ可日
  者なれぬをうらや万しくな可め多万ひて」(7オ・1510⑭)

 

  多ち尓ことゝもをしへきこえいとお
  しけ尓ちひさきほと尓とり/\かきならし
  のゝねともあ者れ尓お可しく支こゆれハ
  なみ多をう个
    うちすてゝ徒可ひさり尓しみつとりの
    かりのこのよ尓多ちをくれ个ん
0014【かりのこ】-鴨
  徒くしなりやとめをしのこひか多ちいとき
  よ个尓お者します宮也年ころのをこなひ尓
  やせ本そり多まひ尓多れとさてしもあて尓」(7ウ・1511⑥)

 

  な満めきて多ちをかしつき給御心者え尓な
  しのなえ者めるをきてしとけなさ万いと
  者つ可しけ飛めきみすゝりをやをらひきよせて
  てならひのやう尓かき満せヲこれ尓可き
  へすゝり尓者かきつけさなりとてかみ多て万つり
  へ者ゝちらひてかき
    伊可て可くす多ち个るそとおもふ尓も
  うきとりのちきりをそしるよ可らねと
  そのお里者いとあ者れなり个りて者おいさき」(8オ・1511⑫)

 

  えておいさきえて(おいさきえて$)満多よくも徒ゝけ
  多ま者ぬほとなりわ可きみもかき多万へと
  あれ者いますこしおさなけ尓飛さしく
  かきいて多万へり
    なく/\も者ねうちき須るきみなくハ
  われそ春もり尓なり者ゝてましそとも
  なとなえ者みておまへ尓又人もなくいと
  佐飛しくつれ/\个なる尓さ万/\いとらう多け尓
  てものしをあ者れ尓くるしうい可ゝお」(8ウ・1512②)

 

  ほさゝらんをか多て尓も多万ひてかつよみつゝ
  佐う可をし飛めきみ尓飛はわ可きみ尓
  さうのこと満多おさな个れとつね尓あハせ
  徒ゝならひ多万へ者きゝ尓くゝもあらていと
  お可しくきこゆちゝみ可と尓も女御尓もとくをく
0015【ちゝみかとにも】-八宮ノコト
  れきこ江て者可/\しきうしろみのとり多て
  多るお者せさり个れ者さえなと布可くもえな
  らひ多ま者須万いて世中尓すみ徒く御心
  きて者い可て可はし里者ん多可きときこゆる」(9オ・1512⑧)

 

  尓もあさ満しうあて尓おほと可なる
  のやう尓お者す連者布るき
  からほちおとゝの御処ふんな尓や可や
  と徒きす万しかり个れとゆくゑもなくは可
  なくうせ者てゝてうとなと者可りな
  わさとうるわしくておほ可り个る万いりとふら
  飛きこえよせ多て万つるもなしつれ/\
  なるまゝ尓う多つ可さのものゝしともなとやう」(9ウ・1512⑫)

 

  の数くれ多るをめしよせつゝ者可那きあそ
  飛尓をいれておいゝてた万へれ者その
  いとお可しうすくれへり源氏のおとゝの
  乎とうと尓お者せし(尓お者せし$
八宮とそえし)を冷泉院
  尓お者しましゝ時朱雀院のお本き
  さきのよこ佐万尓お本しかまへてこの
  を世中尓多ち徒き多万ふへくわ可御時もてか
  し徒き多て万つり个るさはき尓あいなくあ」(10オ・1513②)
0016【あなたさま】-源ノ方

 

  な多さ満の可らひ尓者さし者な多れ
  多万ひ尓个れ者いよ/\かの徒き/\尓な
  者てぬる尓てえ満しらひ者すこの
  としころかゝるひし里尓なり者てゝいま者可き
  里とよろつをお本しすて多りかゝる本と尓
  数み給宮やけ尓个りいとゝしき尓あさ万し
0017【宮やけにけり】-焼失事
  うあえなくてうつろひすみへきのよ
  ろしきもな可り个れ者宇治といふところ
0018【宇治といふところに】-移住宇治事
  によしあるさとも多万へり个る尓わ多り」(10ウ・1513⑦)

 

  すてへるれともいま者とすみ者なれな
  んをあ者れ尓おほさるあしろのけ者ひち
  かくみゝかし可満しきのわ多り尓て志つ可な
  累おもひ尓かな者ぬもあれとい可ゝ者せん
  花紅葉水のな可れ尓もをやる多より
  尓よせていとゝしくな可めよりほ可の
  なしかく多えこもりぬる野山のすゑ尓もむ
  かしのものし者万しかはときこ江ハぬ
  乎りな可り个り」(11オ・1513⑫)

 

    しひともやとも个ふり尓なり尓しを
  な尓とてわ可きえのこり个んい个る可日
0019【いけるかひなく】-\<合点>
  なくそお本しこ可るゝやいとゝ可さなれる
  春み可尓多つね万いるしあやしき
  すなとゐな可ひ多る可徒とものみ万れ尓
  なれ万いりつ可う万つるのあさきり者るゝ
0020【峯のあさきりはるゝをりなくて】-\<合点>のくる朝霧者れ春のミ/徒きせぬ世中のうさ(付箋01
  乎りなくてあ可しくらし尓この宇治山
  飛しり多ち多る阿闍梨すみ个りさえいと
  かしこくてのお本えもかろ可らねと乎さ/\」(11ウ・1514③)

 

  お本やけ尓もいて徒可へすこもりゐ多る尓
  こののかくち可き本と尓すみてさひしき
  さ万尓多うときわさをせさせつゝ法文
  よみならひへ者多うと可りきこえてつね
  尓万いるころ万なひしりへるともの
  布可きをときゝかせ多て万つりいよ/\こ能
  のいとかりそめ尓あちきな
  らすれ者心許者はちすのうへ尓日の本りに
  こりな尓もすみぬへきをいと可くおさなき」(12オ・1514⑨)

 

  人/\すてんうしろめ多さ者可り尓なんえ
  ひ多みち尓か多ちをもかへぬなとへ多てなく
  か多りしこのあさり者冷泉院尓もし多しく
0021【あさりは冷泉院にもしたしくさふらひて】-阿闍梨参院事
  さふらひて御経とをしへきこゆるり个り
  尓いて多るついて尓万いりてれいのさるへき
  布みな御覧してと者せ給事もあるついて
  尓のいと可しこくないけうのさえさとり
0022【ないけう】-内教
  布可くも能し个る可那さるへき尓てむ万
  れ多万へる尓やものしらん布可く日」(12ウ・1514⑭)

 

  数万しへるほと満ことの飛しりのをきて尓
  なときこゆいま多か多ち者かへ多万
0023【いまたかたちは】-冷詞
  者すやそくひしりと可このわ可き人/\のつけ
  多なるあ者れな事也との多万者須
  宰相中将御前尓さふらひこそ
0024【宰相中将】-カホル
  世中を者いとすさましうしりな可ら
  乎こなひな尓めとゝめらる者可り者つと
  めすくちおしくてすくしくれとしれす
  つゝそくな可らひしり尓な給心のをきてや」(13オ・1515⑤)

 

  い可尓とみゝとゝめてきゝ給出家さしハ
  もとよりものし多万へるを者可那き
  とゝこほりいまとなりて者くるしき
  とものうへをえすてぬとなんな个き
  り多うふとそうすさ須可尓ものゝねめつる
  さり尓て个尓者多このひめきみ多ちのこと
  飛きあ者せてあそひ多万へる河波尓きお
  て起こえ者いとおもしろくこくらくやら/連」(13ウ・1515⑩)

 

  侍やとこ多い尓めつれ者み可と本ゝゑみ多万日て
0025【みかと】-冷
  さるひしりのあ多り尓おひいてゝこのよの可多
  佐万者多と/\しからんとをし者可らるゝを
  乎可しのやうしろめ多くすて可多く
  もてわつらひらんをもしゝはしもを
  くれん本と者ゆつりや者し者ぬなとその
0026【ゆつりやはし給はぬ】-姫タチノコト
  多ま者するこののみ可と者のみこ尓そ
  お者しまし个る朱雀院故六条院尓あつ
  けきこ江多万ひし入道多めしを」(14オ・1516①)

 

  お(+も)ほしいてゝかのきみ多ちを可那つれ/\な
  あそひ可多き尓なとうちお本し个り中将
  のきみ中/\みこのす万し多万へらん御心
0027【みこ】-八宮
  えをたいめんして多て万つら者やと
  布可くなりぬるさてあさりのかへりいる尓もか
  ならす万いりてらひきこゆへく万つうち/\
  尓も个しき多万者りへなと可多らひ多万ふ
  み可とのことつて尓てあ者れなす万ゐを
0028【みかとの御ことつて】-院遣状於宇治宮事
0029
【あはれなる御すまゐを】-勅書
  ひとつて尓きくことなときこ江多万うて」(14ウ・1516⑥)

 

    をいとふ尓可よへとも
  やへ多徒くもをきみやへ多つる阿闍梨この
  御使をさき尓多てゝかの尓万いりぬな
  めなるきはのさるへきの徒可ひ多尓万れ
  なか个尓いとめつらしく万ちよろこひ
  多万うて尓つけ多るさ可那ゝとしてさる
  尓もて者やし給御返
    あと多えてすむと者な个れとも
  をうち尓やとをこそかれ飛しりの」(15オ・1516⑪)

 

  か多を者ひ个してきこ江なし多万へれ者
  猶世尓うらみのこり个るといとおしく御覧
  すあさり中将道心ふ可け尓ものし
  か多りきこ江て法文とのえ万本しき
0030【法文なとの心えまほしき心さし】-宰相中将道心事
  さしなんい者けな可りしよ者ひより布可
  く可らえさらすよ尓ありふる本と乎本や
  けわ多くし尓いと満なくあけくらしわさと
  とちこもりてならひよみお本可多者可/\しく
  もあらぬ尓しも世中をそむきか本な」(15ウ・1517②)

 

  らんも者ゝ可るへき尓あらねとをのつ可らうちた
  ゆみ万きらはしくてなんすくしくるをいと
  あり可多きありさ万をうけ多ま者りつ多へ
0031【ありかたき御ありさま】-八宮ノコト
  しよりかく尓か个てなん多のみきこえさす
  累なとねんころ尓申給しなとか多りきこゆ
  宮世中をかりそめのことゝおもひとりいと者し
  きの徒きそむることもわ可尓うれへある
  へてのよもうらめしうしる者しめ
  あ里てな道心もおこるわさなめるをとしわ可く/世中」(16オ・1517⑧)

 

  おふ尓可なひな尓こともあ可ぬことハあらし
  とお本ゆるの本と尓さ者多のちのをさへ
  堂とりし里らん可あ里可多さこゝ尓者さ
  へき尓や多ゝいとひ者那れよとこと佐ら尓
  なとのすゝめおもむけ多万ふやうなるありさ万
  尓てをのつ可らこそしつ可なるおもひかな
  ゆ个と能こりすくなちする尓者可/\しく/も
  あらてすきぬへ可めるをきし可多ゆくすゑさら
  尓え多(+
と)るしらるゝをかへりて者」(16ウ・1517⑭)
0032【思しらるゝ】-カホルノコト

 

  者徒可し个なるのりのとも尓こそ者も
  しれなとの多まひてか多み尓せうそ
0033【かたみに】-カホト八宮ノコト
  こかよひみつ可らも満うてけ尓きゝしより
0034【けにきゝしより】-薫心
0035
【きゝしよりもあはれにすまひたまへるさま】-宰相中将対面宮事
  もあ者れ尓す万ひ多万へるさ万より者し
  めていとかりなのいほり尓しこと
  そき多りおなしきさとゝいへとさる可多尓て
  と万りぬへくのとや可なるもあるをいとあら万
  しきのをとのひゝき尓わすれうちし
  よるなと个てゆめを多尓みるへき本ともな/个尓」17オ・1518④)

0036【ゆめをたに】-\<合点>

 

  数こく布き者らひ多りひしり多ち多る
  め尓かゝるしもこそと万らぬもよ本し
  ならめ女君多ちな心地してすくしらん
  のつねのしくなよひ多る可多ハとをくやと
  をし者可らるゝありさ万也仏へ多て尓
  さうし者可りをへ多てゝそお者すへ可めるす
  きあらん者个しき者みよりて御心
0037【人は】-姫君ノコト
  者えをもみま本しうさす可尓い可ゝとゆ可し
  うもある个者ひされとさる可多を」(17ウ・1518⑨)

 

  者なるゝね可ひ尓ふ可く多つねきこ江多る
  本いなくすき/\しきなをさりをうちいて
  あされ者まんもこと尓多可ひてやな
  かへしてありさ満のいとあ者れなるを
  ねんころ尓とふらひきこえ多万ひ多ひ/\万
  いりつゝしやう尓うはそくな可らをこな
0038【うはそく】-俗ノコト
  ふの布可き心法文とわさとさ可しけ
0039【山のふかき心】-ヤヽロ
  尓者あらていとよくの多万ひしらすひしり
0040【いとよくのたまひしらす】-中将与宮法談事
  たつさえある法師とハよ尓お本可れと」(18オ・1519①)

 

  あ万りこは/\しうけと乎个なるしうとく
0041【しうとく】-宿徳
  のそう徒そうのき者ゝよ尓いと万なく
  きすく尓てをとひあら者さんもこと/\
  しくお本え給又そのらぬてしの
  いむことを多もつ者可り能多うとさ者あれとけ
  者ひいやしくことは多みてこちな个尓もの
  なれ多るいとものしくてひる者お本やけこと尓
0042【ひるはおほやけことに】-カホルノコト
  いと万なくなとしつゝ志めや可なるよゐの本と
  けち可き満くら可みなと尓めしいれ可多」(18ウ・1519⑥)

 

  らひ尓もいとさす可尓ものむつ可しうな
  のみあるを伊とあてにくるしきさ万して
  能多万ひいつるもおをし
  へをもみゝち可き多とひにひき万せいとこよ
  なくふ可き御さとり尓はあらねとよき
0043【よき人】-カホルノコト
  ものゝをえ可多のいとこと尓ものし多万日
  个れ者やう/\れ多て万つり多ひこと
  尓つね尓み多て万つら万ほしうていと万な
  なとして本とふる者こひしくお本え多万ふ」(19オ・1519⑪)

 

  こののかく多うとかりきこ江多まへれ者
  泉院よりもつね尓せうそこなとありて
  ころをと尓も乎さ/\きこえ多ま者すさ日
  し个なりしすみ可やう/\時/\あり
  お里ふし尓とふらひきこ江ことい可めしう
  このもまつさるへき尓つ个つゝお可しき
0044【この君】-薫
  やう尓も万めや可なるさ万尓もよせつ可う万
  徒りこと三年は可り尓なりぬのすゑつ
  か多四季尓あてゝし給御念仏ヲこの可ハ」(19ウ・1520②)

 

  徒ら者あしろのもこのころ者いとゝみゝか
  し可満しく志つ可ならぬをとてかのあさり
  のすむてらのたう尓うつろひ多まひて七日
  能ほとをこなひめきみ多ち者いと
  そくつれ/\万佐りてな可め多万ひ个るころ
  中将のきみひさしく万いらぬ可那と日いてきこ
0045【中将のきみひさしくまいらぬかなと】-中将向宇治事
  え个るまゝ尓ありあ个のの万多よふ
  かくさしいつる本と尓いて多ちていとしの日て
  とも尓ともなくてやつれておハし个り」(20オ・1520⑦)

 

  のこな多なれ者ともわつら者て御馬
  尓てなり个りい里もてゆく満ゝ尓きりふ多
  かりてもみえぬしけの(の=
き野)な可(可=流)をわけ
  多万ふ尓いとあら万しきのき本ひ尓
  ほろ/\とおちみ多るゝこの能つゆのちり
  かゝるもいとひやゝか尓やりならすい多くぬ
  れ多万ひぬかゝるありきなともおさ/\な
  飛多万者ぬ心地本そく越可しくお本
  され个り」(20ウ・1520⑪)

 

    乎ろし尓多へぬこのの徒ゆよりも
  あやなくもろきわ可なみた可那可つの
  乎とろくもうる佐しとてすいしんのをとも
  せさせ者須志はの万可きをわけて(て$
つゝ)そこ
  は可となのな可れともをふミし多く
  こ万のあし越ともしのひてとようい
  した万へる尓可くれな尓ほひそ
  尓志多可ひてぬしゝらぬ可とおとろくねさ
0046【ぬしゝらぬかと】-\<合点>
  めのいゑ/\あり个るち可くなる本と尓その」(21オ・1521②)

 

  ことゝもきゝわ可れぬのねともいとすこけ尓
  きこゆつね尓かくあそひときくをついて
  なくて
無イ)のねのな多可きもえき可ぬ
0047【宮】-ミコ
0048
【琴】-キン
  そ可しよき乎りなるへしとつゝいりへハ
0049【よきをりなるへしと思つゝ】-中将聞比巴筝事
  琵琶のこゑのひゝきなり个りわうしきてう
  尓しらへてよのつねのかきあ者せなれと
  可ら尓やみゝなれぬちしてかき可へす
  者ちのをともゝのきよ个尓おもしろし
  佐う能ことあ者れ尓な万めい多るこゑ」(21ウ・1521⑦)

 

  して多え/\きこゆしはしき可万本しき尓
  志の日多万へと个者ひしるくきゝつ个て
  と能ひ(ひ=
ゐ)ゝとめく乎のこな万か多くなしきい
  てき多り志可/\なんこもりお者します
0050【しか/\なんこもりおはします】-八宮念仏ニ行給ト也
  せうそこをこそきこえさせめとすな尓可
0051【なにかしかかきりある】-薫詞
  し可かきりあるをこなひの本とを満き
  ら者しきこえさせん尓あいなしかくぬれ/\
  万いりてい多つら尓かへらんうれへをひめきミの
  御方尓きこえてあ者れとの多万者せ者なん」(22オ・1521⑪)

 

  なくさむへきとの多万へ者み尓くきか本うちゑ
  みてさせらんとて多つをしはしやとめ
  しよせてとしころ徒て尓のみきゝてゆ可
  志くことのねともをうれしき乎り可那
  しはしすこし多ち可くれてきくへきものゝく万
  ありや徒き那くさしすきて万いりよらむ本と
  み那ことやめ多万ひて者いとほいな可らんと
  の多万ふ个者ひか本可多ちのさるな/\
  しき心地尓もいとめて多くか多し个なく」(22ウ・1522③)

 

  お本ゆれ者き可ぬ者あ个くれかくなむ
  あそ者せとしも尓てもみやこのより万
  い里多ち満しるひと侍時者をともせさせ
  者須おほ可多かくて多ちお者しますこと
  を者かくさせ多万ひなへての尓しらせ
  多てまつらしとお本しの多ま者する
  せ者うちわらひてあちきな御物
  かくし志可しのひ多万ふなれとみな」(23オ・1522⑦)

 

  あり可多きの多めし尓きゝい徒へ可めるヲ
  との多万日てしるへせよ者すき/\しき
  となそかくてお者しますらん
  ありさ満のあやしくけ尓なへて尓お本え
  多万者ぬとこ万や可尓の多万へ者あ那可しこ
  きやう尓のちのきこ江やらむとく(く$
て)
  あな多のお万へ者のすい可いしこめてみ
  なへ多てことなるをゝしへよせ多て万つ」(23ウ・1522⑫)

 

  れ里ともの者尓しのらう尓よ日すへて
  このとのゐあいしらふあ那多尓かよふへ
  かめるすい可いのとをすこしをしあ个て
0052【すこしをしあけて見たまへは】-見両息女事
  多まへ者可しきほと尓きり王多れる
  をな可めてす多れをみし可く万きあ个て
  ひと/\ゐ多りすのこ尓いとさむけ尓み本そ
  くなえ者免るわらはひとりおしさ万
  なる乎となゝとゐ多り人一人
0053【一人】-中君
  しら尓すこしゐ可くれて飛はをまへ尓」(24オ・1523②)

 

  をきて者ちをて万佐くり尓志徒ゝゐ多る尓
  くも可くれ多りつるの尓は可尓いとあ可く
  さしいて多れ者あふきならてこれしても
  者万ねき徒へ可り个りとてさしのそき
  多るかほいみしくらう多け尓ゝほひや可な
  るへしそ飛布し多る者ことのうへ尓可多ふ
0054【そひふしたる人】-大君
  き可ゝりているをかへすそあり个れ
0055【いる日をかへすはち】-\<合点> 返日撥事
  さまこと尓もおもひをよ日給御心可那とて
  うちわらひ多る个者ひいますこし乎も」(24ウ・1523⑦)

 

  里可尓よし徒き多りをよ者すともこれも
  尓者那るゝ可者なと者可那きをう
0056【月にはなるゝ物】-隠月
  ちとけの多まひか者し多るけ者ひともさらに
  よそ尓日やりし尓者尓すいとあ者れ尓な
  徒可しうお可しむ可し可多りなと尓か多り
0057【むかし物かたりなとに】-住吉物語ニアリ
  つ多へてわ可き(わ可き$)わ可き女房とのよむをも
  きく尓かならすかやうのことをいひ多るさしも
  あらさり个んと尓くゝをし者可らるゝを个尓
  阿者れなのく万ありぬへきり个りと」(25オ・1523⑫)

 

  う徒りぬへしきりの布可个れ者さや可尓
  ゆへくもあら須又月さし(さし$
)いてなんとお
  ほす本と尓おくの可多より者すとつけ
  きこゆるやあらんす多れ乎ろしてみな
  里ぬ乎とろき可本尓者あら須なこや可尓もて
  なしてやをらかくれぬるけ者ひともきぬのを
  ともせすいとなよゝか尓くるしくていみしう
  あて尓みやひ可なるをあ者れとおもひ多万ふ
0058【みやひかなる】-閑ナル心
  やをらいてゝくる万ゐて万いるへく」(25ウ・1524③)
0059【やをらいてゝ】-薫詞

 

  者しらせ徒ありつるさふらひ尓おりあしく
0060【さふらひに】-宿直
  万いり尓个れと中/\うれしくおもふこと
  すこしなくさめてなんかくさふらふよしきこ
  えよい多うぬれ尓多る可こともきこえさせ
  む可しとの多万へ者万いりてきこゆかくみえや
0061【かくみえや】-形ノ心
  しぬらんと者お本しもよらてうちとけ多り
  徒ることゝもをきゝやしつらんといといみし
  く者つ可しあやしくかう者しく尓本ふ可せ
  の布きつるを可个ぬ本となれ者おとろ可」(26オ・1524⑧)

 

  佐り个るそさよとも万とひて者ちお
  者さうすせうそと(と$
こ)なと徒多ふるもいと
0062【御せうそこ】-薫ノ心
  うゐ/\しきなめるをゝり可ら尓こそよ
  ろ徒のこともとお本いて満多きりの万きれ
  なれ者ありつるみすのまへ尓あゆみいてゝつい
0063【ありつるみすのまへに】-カホルノ体
  ゐ多万ふさとひ多るわ可とも者さし
  いらへんことのはもお本えてしとね佐
  しいつるさ万もたと/\しけこのみすの万へ」(26ウ・1524⑫)
0064【このみすのまへには】-薫詞

 

  尓者ゝしたなり个りうちつけ尓あさき
  者可り尓て者かくも多つね万いる万しき
  の可けち尓おもふ多万ふるをさ万こと尓
  こそかく徒ゆ个きたひをかさねて者さ
  りとも御覧しゝるらんとなん多のもし
  うといと万めや可尓の多万ふわ可き人/\
  な多ら可尓きこゆへきもなくきえ可へり
  かゝや可しけなるもか多はらい多个れ者」(27オ・1525②)

 

  乎んな者らのおく布可きをおこしい徒る
  ほと飛さしくなりてわさとめいたるも
  くるしうてな尓こともしらぬありさ万
0065【くるしうて】-姉宮通言事
0066
【なにことも思しらぬ】-大姫詞
  尓て志り可本尓もい可かはきこゆへくと
  いとよしありあてなるこゑしてひきいりな
  らほの可尓の多万ふかつ(つ=
ツ)しりな可らうきをし
0067【かつしりなから】-薫詞 カクノ心
  羅す可本なるもよのさ可とふ多万へしるを
0068【よのさか】-祥 世ノナラヒト同心
  ひとしもあ万りおほめ可せらんこそ」(27ウ・1525⑦)

 

  くち乎しかるへ个れあり可多うよろつを
  数万し多るす万ゐなと尓多くひきこ江させ
  多万ふ御心者な尓ことも数ゝしくを
  し者可られれ者可くしのひあ万り
  布可さあさゝの本ともわ可せ者んこそ
  かひ者らめのつねのすき/\しきすち尓ハ
  お本しめし者那徒へくやさやうの者(者$
ハ)わ
  さとすゝむる人侍りともなひくへうもあらぬ
  こゝろへよさ尓なん乎のつ可らきこしめし」(28オ・1525⑫)
0069【をのつからきこしめしあはするやうも】-薫ノシホウノ心ハ姫君モシラセ給ハンノ心

 

  あ者数るやうもん徒れ/\とのみすくし
  侍世のもの可多りもきこえさせところ尓
  多のみきこ江させかく者なれてな可め
  させらん御心の万きらはし尓者さしも
  おとろ可せ者可りきこ江なら者い可
  尓ふさ万尓らんなとお本くの多万へは
  徒ゝ万しくいらへ尓くゝて乎こしつるお
0070【おい人のいてきたるに】-老女弁対面事
  いてき多る尓そゆつり多万ふ多としへなくさ
0071【たとしへなく】-老詞
  しすくしてあなか多しけなやか多者らい多き」(28ウ・1526③)

 

  お満しのさ万尓も可那みすの尓こ(こ$)そ
  わ可き人/\の本としらぬやう尓こそ
  なとし多(+
た)かゝ(ゝ$)尓いふこゑのさ多すき多るも
  か多者らい多くきみ多ち者お本すいともあ
  やしく世中尓す万ひ給人のか須尓もあら
  ぬありさ万尓て佐もありぬへき人/\多尓とふ
  らひかす万へきこ江えきこえすのみな
  り万さりめる尓あり可多き御心さしの本とハ
  かす尓もらぬ尓もあさましき万て」(29オ・1526⑧)

 

  思給をわ可き御心地尓もお本しゝりな
  からきこ江させ日尓くき尓やらんといとつゝ
  みなれ多るもな万尓くきもの可ら
  け者ひい多うめきてよしあるこゑなれ者
  いと多つきもしらぬ心地しつる尓うれしき
0072【たつきもしらぬ心地しつるに】-\<合点>をちこちの多つきも志らぬ尓/おほつ可なくもよふことり(付箋02
  遣者ひ尓こそな尓こともけ尓しり多万日
  个る多のみこよな可り个りとてよりゐ多万へる
  を木丁のそ者よりれ者あけ本のやう/\」(29ウ・1526⑫)

 

  ものゝいろわ可るゝ尓个尓やつしへるとみゆる
  かりきぬす可多のいとぬれしめり多る本とう多て
  このよのほ可の尓ほひ尓やとあやしき万てか
  ほりみち多りこのお者うちなきぬ
  佐しすき多るつみもやとふ多万へ志のふれと
  あ者れなるむ可しのもの可多りのい可ならん
  徒いて尓うちいてきこえさせか多者しをも本
  のめ可しゝろしめさせんところねんすの
  ついて尓もうち万せおもふ多万へわ多るしる/し尓や」(30オ・1527④)

 

  うれしき乎り尓を満多き尓越本ゝれ
  み多尓くれてえこそきこ江させす
  れとうちわなゝく个しき満こと尓いみしく
  もの可なしとおもへりおほ可多さたすき多る/
  者なみ多もろなと者きゝへといとか
  うしももへるもあやしうな日てこゝ尓
  かく万いるをハ多ひ可さなりぬるをかくあ者れし
  り多万へるもなくてこそつゆ个きみちの本と
  尓ひとりのみそ本ちつれう連しきついて」(30ウ・1572⑧)

 

  なめるをことなのこい多万日そ可しとの多万へハ
  かゝるついてしもらし可し又侍りともよの万の
0073【かゝるついてしも】-老詞
  本としらぬいのちの多のむへき尓もらぬを
  さらは多ゝかゝるふる物世个りと者可り志
  ろしめされ(+
ら)な三条小侍従
0074【小侍従】-女三ノメノトノコト
  者可那くな尓个ると本のきゝしその
  かみむつ万しうふ多万へしおし本との
  乎本くうせ尓个るよのすゑ尓者る可な
0075【はるかなるせかい】-田舎
  累せ可いよりつ多者り満うてきてこのいつとせ」(31オ・1527⑭)

 

  むとせのほとなむこれ尓かくさふらひ志ろ
  しめさし可しこのころ藤大納言
0076【藤大納言】-紅梅
  このかみの右衛門督尓てかくれ尓しハ
  ものゝついてなと尓やかのうへとてきこしめし
0077【ものゝついてなとにや】-弁語出権大納言問事
  つ多ふるらんすき多万日ていく者くもへ
  たゝらぬちのみしそのおりのかなしさも
  ま多そての可はく乎りらすおもふ多万へ
  らるゝを(+
テカソヘレハ)かくおとなしくならせ尓个るよ者
  飛の本ともゆめのやう尓なんかの(+
権大納言」(31ウ・1528⑤)

 

  のめのと尓し者可はゝ尓な
  あさゆふ尓つ可う万つりなし尓可す
  尓もらぬれと尓しらせ須御心より
  者多あ万り个るを乎り/\うち可すめの
  多まひしを者かきり尓な尓し
  まひのすゑつ可多尓めしよせていさゝかの多
  万日をくしをきこしめすへき
  ゆへなんひとことれとか者可りきこえいて
  尓のこりをとお本しめす御心侍らはのと可/尓なん」(32オ・1528⑩)

 

  きこしめし者てへきわ可き人/\もか多ハら
  い多くさしすき多りと徒きしろひもこと者
  り尓なんとてさす可尓うちいてすなりぬあ
0078【あやしくゆめかたり】-薫心
  やしくゆめ可多りかむなきやうののとはす
0079【かむなきやう】-神ノツキテ物イハスル人ナトノコト
  か多りすらんやう尓めつら可尓お本さるれと
  あ者れ尓お本つ可なくお本しわ多るのすち
  をきこゆれ者いとおくゆ可し个れとけ尓めも
  志个しさしくみ尓布るもの可多り尓可ゝつら日
  てをあ可し者てんも(+
こ)ちこ(こ$)/\し可るへ个れハ」(32ウ・1529①)

 

  そこは可とわく者な可らい尓しへの
0080【そこはかと】-詞
  ことゝきゝあ者れ尓なんさらはかな
  らすこの能こりき可せへきり者れゆ可者
  者し多なかるへきやつれを越もな御覧
  しと可められぬへきさ万なれ者ふ多万
  ふるの本とより者くち乎しうなんとて
  多ち多万ふ尓かのお者しますてらのかね
  のこゑかす可尓きこえてきりいと布可く多
  ちわ多れりみねのやへくもやるへ多てお本/く」(33オ・1529⑥)

 

  あ者れなる尓(+ま起のお、ま起のおこのひめきみ多ちの御心
0081【ひめきみたちの御心】-薫ノ姫ノ心ヲ思ヤル心
  のうちともくるしうな尓ことをお本し
  能こすらんかくいとおく万りへるもこと者り
  そ可しなとお本ゆ
    あさ本らけいへ地もえす多つねこし
  満きのを者きりこめて个り本そくも
  可那と多ち可へりやすら日多万へるさ万を
  こののめなれ多る多尓いとこと尓
  きこえ多るを万いてい可ゝはめつらしうみきこ江」(33ウ・1529⑪)

 

  さらん御返きこ江つ多へ尓くけ尓多れ者
  れいのいとつゝましけ尓て
    くもの井るみねの可け地をあきゝりの
0082【くものゐる】-大君
  いとゝへ多つるころ尓もある可那すこし
  うちなけい多万へる个しきあさ可らすあ者
  連な尓者可りお可しき布し者えぬ
0083【なにはかりおかしき】-其辺ノ体
  あ多りなれと个尓くるしき本可る尓
  もあ可うなりゆ个者さす可尓ひ多おもて
  な心地してな可/\なる本と尓う个多万
  者りさしつることおほ可るのこり者い万」(34オ・1530③)

 

  数こし乎もなれてこそ者うらみきこ江さ
  春へ可め連さる者かくよのめいてもてな
  しへく者おも者す尓本しわ可さり
  个りとうらめしうなんとてとの日可しつ
  らひ多る西をもて尓お者してな可め多万ふ
  あしろ者さ者可しけされとひ乎も
  よらぬ尓やあらんすさまし个なる个しき
  なりとともの人/\見しりていふあやし
  き布ねとも尓しはかりつみをの/\」(34ウ・1530⑦)

 

  な尓と那きのいとなみとも尓ゆき可
  ふさ満ともの者可那きのうへ尓う可
  ひ多る多れもおもへ者お
  のつねな也我者う可者す多万のうて
0084【うかはす】-水ノコト
  な尓し徒个きとおもふへき可はと
  つゝけらるすゝりめしてあな多尓きこ
0085【あなたにきこえたまふ】-遣状於姫君事
  え多万ふ
    者しひめのをくみて堂可せさ須
0086【はしひめの】-薫
  さほのしつく尓そてそぬれぬる」(35オ・1530⑪)

 

  な可めらん可しとてとのゐ尓も多せ
  堂満へりいとさむ个尓いらゝき多るか本し
0087【いらゝきたる】-鳥ハタヽツ心
  てもて万いる御返かみのかなとお本ろけ
  ならむ者ゝ徒可しけなるをときをこそ
0088【ときをこそ】-早カヨキト也
  かゝる乎り尓者とて
    佐しかへる宇治をさあ佐ゆふの
  志徒くやそてをく多し者つらんさへ
0089【身さへうきて】-\<合点>さす尓ぬるゝゆへ耳/身さへうきてもおもほゆる(付箋03
  うきてといと乎可しけ尓かき多万へり」(35ウ・1531②)

 

  満お尓めやすくも(+も)のし日个りとと万り
  ぬれとくる満ゐて万いりぬと人/\さ者
  かしきこゆれ者とのゐ者可りをめしよ
  せてかへ里わ多らせ多ま者む本と尓かならす
  万いるへしなとの多万ふぬれ多るそとも者
  み那この尓ぬき可个多万ひてとり尓つ可
  者し徒るし尓多て万つりかへ徒お
  のもの可多り尓可ゝりてお本しいてらる」(36オ・1531⑥)

 

  おひしより者こよ那く万佐りてお
  しかり徒るけ者ひともおも可け尓そひ
  て猶思日者那れか多きり个りと
  よ者くおもひしらるふみ多て万つり
  けさう多ちてもあらすしろきしきしの
  あつこえたる尓布てひきつくろひえりて
  すみ徒きみありてかき多万ふうちつけな
  累さ万尓やとあいなくとゝめて能こりお」(36ウ・1531⑩)

 

  本可るもくるしきわさ尓なんか多者しき
  こえをきつるやう尓いまより者みすの万へも
  やすくお本しゆるすへくな御山こもり
  者てらんかすもうけ多ま者りをき
  ていふせ可りしきりの万よひも者るけ
  らんなとそいとすくよ可尓かき多万へる
  近
のそうな人御つ可ひ尓てかのお
  たつねて布みもとらせよとの多万ふとのゐ可」(37オ・1532①)

 

  さむ个尓てさ万よひしなとあ者れ尓
  おほしやりておほきなるひわりこやう
  のあ万多せさせ給又かのみてら尓も
  堂て万つり給山こもりのそうともこのころの
0090【たてまつり給】-贈物事
  あらし尓者いと本そくゝるしからんを
  さてお者します本との布せ多万ふへ可ら
  むとおほしやりてきぬわ多なとお本可り个
  りをこなひ者てゝいてあし多なり」(37ウ・1532⑤)

 

  个れ者をこなとも尓わ多きぬけさ
  なと数へてひとく多りのほとつゝあるかき
  りのとこ多ち尓たまふとの日
  きすてのえむ尓いみしきかりのそとも
  えならぬしろきあやのそ能なよ/\と
  いひしらす尓本へるをう徒しきてを者
  たえかへぬものなれ者尓つ可者し可らぬそて
  の可をこと尓と可められめてらるゝな
  むな可/\ところせかり个る尓万可せて」(38オ・1532⑨)

 

  をやすくも布る万者れすいとむくつ
  けき万ての乎とろく尓ほひをうし
  なひて者やとおもへとせきうつり
  か尓てえもすゝき春てぬそあ万りなるや
  者ひめきみの御返こといとめやすくこめ
0091【君は】-カホル詞
  かしきをゝかしくみ多万ふ尓もかく
  せうそこありきな人/\きこ江させ御覧
  せさすれ者な尓可は遣さう多ちて」(38ウ・1532⑬)
0092【なにかは】-八詞

 

  もてない多万者んもな可/\う多てあらん
  れいのわ可尓ゝぬみ者えなめるをな
0093【わか人に】-カホルノコト
  からむのちもなとひとことうち本のめ可し
  てし可はさやう尓てそとめ多らむな
  の多万ふ个りみつ可らもさ万/\のとふ
0094【御みつからも】-薫ノコト
  らひののい者や尓あ万りし
  の多万へる尓万うてむとお本して
0095【のたまへるにまうてむと】-語宇治宮事於三宮事
0096
【三の宮】-匂ノコト
  のかやう尓おく万り多らむあ多り能」(39オ・1533③)

 

  万さりせんこそお可し可るへ个れとあら
  満しこと尓多尓の多万ふものをきこ江
  者个万して御心さ者可し多て万つらんと
  お本してのとや可なるゆふくれ尓まいり
0097【まいり給へり】-匂へ参給
  へりれいのさ万/\なる御物可多りきこ江か者
  し多万ふついて尓宇治御事か多り
  いてゝしあ可つきのありさ万なとくはし
  くきこ江ふ尓いとせち尓お可しとお」(39ウ・1533⑧)

 

  ほい多りされ者よと御気しきを
0098【されはよと】-薫心
  伊とゝ御心うこきぬへくいひつゝけさて
0099【さてそのありけん】-匂詞
  そのあり个んこと者なと可せ多万は
  さりし万ろなら万し可者とうらみ多万ふ
  佐かしいとさ満/\御覧すへ可める者しを
0100【さかしいとさま/\】-薫詞
  多尓せさせ多ま者ぬかのわ多り者かく
  いともむもれ多る尓ひきこめてやむへき
  け者ひ尓もらね者かならすらんせ
  させ者やと思給れとい可て可多つねよらせ」(40オ・1533⑫)

 

  へきかやすき本とこそ数可万本しくハ
0101【かやすきほと】-薫ノ我トヒケノ心
  いとよく須きぬへきり个れうち可
  くろへ徒ゝおほ可める可那さる可多尓
  みありぬへきも者しきうち志
  のひ多る(る=
る)すみ可ともさとめい多るく万な
  と尓をのつ可ら者へ可めりこのきみも(みも$
こえ)さ
  するわ多り者いとよつ可ぬひしりさ万尓て
  こち/\しうそあらんとゝしころあなつり
  りてみゝを多尓こそとゝめらさり个れ」(40ウ・1534③)

 

  ほの可なりし可个のみをとりせす者万お
  ならん者やけ者ひありさ万者多さハ可り
  ならむをそあら万ほしき本とゝはおほ
  えへきなときこ江多万ふ者や(者や$
)者て/\ハ
  万め多ちていとね多くお本ろけの
  うつる万しきのかく布可くおもへる
  を越ろ可ならしとゆ可しうお本すこと
  かきりなくなり日ぬ猶又/\よく个し/き見給へと」(41オ・1534⑦)
0102【猶又/\よく】-匂詞

 

  をすゝめてかきりある御身の本との
  よ多けさをいと者しき万てもとなし/と
0103【よたけさ】-コト/\シキコト
  お本し多れ者お可しくていてやよしな
0104【おかしくて】-薫詞
  そしはし世中とゝめしと多万ふ
  るやうある尓てなをさりこともつゝ万し
  う可らかな者ぬつきそめな
  お本き尓おもひ尓多可ふへき
  きときこ江へ者いてあ那こと/\し」(41ウ・1534⑪)
0105【いてあなこと/\し】-匂詞

 

  れいの越とろ/\しきひしりことは者て
  てし可那とてわらひ給心尓者かのふ
0106【心の内には】-薫心
  るの本のめ可しゝすちなとのいとゝうち
  乎とろ可れてものあ者れなる尓お可し
  とみるもめやすしときくあ多りも
  な尓者可り尓もと万らさり个り十月
  尓なりて五六日の本と尓宇治へ万うて
  あしろをこそこのころ者御覧せめときこ/ゆる」(42オ・1535②)

 

  人/\あれとな尓可その飛おむし尓あらそ
0107【ひおむし】-蜏ヒヲムシ 蜉蝣イ
  ふ尓てあしろ尓もよらんとそきすて
  てれいのいと志のひや可尓ていて多ちかろら可
  尓あしろくる万尓てかとりのなしさしぬき
  ぬ者せてこと佐らひき多万へり万ちよろこひ
  多万ひて尓つけ多るあるしなとお可しう
  志なくれぬれ者乎本となふらち可くて
  さき/\さし多万へる布みともの布可きな
  とあさりもさうし乎ろしてとい者」(42ウ・1535⑦)
0108【さうし】-請
0109
【義】-キ

 

  せうちも満とろ万す河風のいとあら万し
  き尓こののちり可ふをとのひゝきな
  あ者れも数きて乎そろしく本そき
  のさ万あけ可多ち可くなりぬらんとふ本と
  尓ありしゝのゝめいてられてのねの
0110【琴のねの】-薫詞
  あ者れなることのついてつくりいてゝさきの多
0111【あはれなることのついて】-八宮ノ琴ノ上手也
  飛のきり尓万とはされしあけ本の尓いと
  めつらしきのねひとこゑう个多万者りし
  のこりな中/\尓いといふ可しうあ可すふ」(43オ・1535⑫)

 

  たまへらるゝなときこ江多万ふいろをも可をも
0112【いろをもかをも】-八詞
  日すてゝしのちむ可しきゝしもみなわす
  れてなんとの多万へとめしてとりよせて
  いとつきなくなり尓たりや志るへするものゝね
0113【いとつきなく】-宮法談之次召楽器事
  尓徒个てな日いてらるへ可り个るとて琵琶
  めして万らうと尓そゝの可しとりてしらへ
0114【とりてしらへたまふ】-薫也
  多万ふ佐ら尓本の可尓きゝしおとも
  おもふ多万へられさり个りことのひゝき可/ら尓や」(43ウ・1536③)
0115【御こと】-姫君ノコト
0116
【ひゝきからにや】-薫ノヒケノ詞

 

  とこそふ多万へし可とてと个てもかき多て
  多万者須いてあ那さ可那やし可みゝと
0117【いてあなさかなや】-八詞
  まる者可りのなと者い徒くより可こゝ万
  て者徒多者りこんある万しきことなりと
  てきむかきならしへるいとあ者れ尓
  こしか多へ者松風のもて者やすな
0118【峯の松風のもてはやすなる】-\<合点>ことの松風可よふらし/い徒れのおより志らへそめ个ん(付箋04
  へしいと多と/\しけ尓乎本めき多万日て
  えあり(り$
ル)てひとつ者可り尓てやめたまひつ」(44オ・1536⑦)

 

  このわ多り尓おほえ那くており/\本のめく
0119【このわたりに】-八詞 姫君タチノコト
  のことのねこそえ多る尓やときくお
  れととゝめてなともあらて飛さしう
  なり尓个りや尓万可せてをの/\かきならす
  へ可める者河波者可りやうちあ者すらんろな
  うものゝよう尓す者可りの者うしなともと
  まらしとなんお本えとてかきならし
  へとあ那多尓きこ江へとよら佐りし」(44ウ・1536⑫)

 

  飛とりことをきゝ日个ん多尓あるヲいと
  か多者ならんとひきいりつゝみ那きゝハす
  多ひ/\そゝのかしへとと可くきこ江すさ(さ$
ま)ひ
  てやミぬめれ者いとくちおしうお本ゆ
0120【いとくちおしうおほゆ】-薫ノ心
  そのついて尓もかくあやしうよつ可ぬ
0121【そのついてにも】-八心
0122
【あやしうよつかぬ思ひやりにて】-姫タチノコト世ヲノカレタルヤウニソアルコト
  やり尓てすくすありさ万とものおもひの
  ほ可なと者つ可しうおほい多り
  尓多尓い可てしらせしと者くゝみすくせと」(45オ・1537②)

 

  遣ふあすともしらぬの能こりすくな
  尓さす可尓ゆくすゑとをき者おちあふ
  れてさすらへんこ連のみなん(なん$
)こそけ
  尓を者那れんき者のほ多しなり个れと
  うち可多らひ多万へ者くるしう多て万つり
  わさとのうしろみ多ち者可/\しきすち
0123【わさとの御うしろみたち】-薫詞
  尓者らすともうと/\し可らすお本しめさ
  れんとなふ多万ふるしはしもな可らへ
  らんいのちの本と者ひとこともかくうちいて」(45ウ・1537⑦)

 

  きこ江させてむさ万をた可へましくな
  な申給へ者いとうれしきことゝお本しの
0124【いとうれしきことゝ】-八ノ心
  の多万ふさてあ可つき可多のをこな
  し本と尓かのおめしいてゝあひ多万
  へりひめきミのうしろみ尓てさふらハせ
  給弁のきみとそいひ个るとしも(も=
者)六十尓す
  こし多らぬ本となれとみやひ可尓ゆへある
  遣者ひしてときこゆ故権大納言の」(46オ・1537⑪)
0125【故権大納言のきみの】-弁達故大納言遺言事

 

  きみのとゝも尓つゝや万ひつき者
  かなくな尓しありさ万をきこえいてゝ
  なくことかきりなし个尓よそののうへと
  き可む多尓あ者れなるへき布ることゝもヲ
  満してとしころおほつ可なくゆ可しうい可な
  り个んことのはしめ尓可と尓もこの
  佐多可尓しらせへとねむしつるしるし尓や
  かくゆめのやう尓あ者れなるむ可し可多りを」(46ウ・1538②)

 

  おほえぬついて尓きゝつけつらんとお本す尓
  なみ多とゝめ可多かり个りさてもかくその
  しり多るものこり多万へり个るヲ
  めつら可尓も者つ可しうもお本ゆることのす
  ち尓かくいひつ多ふる多くひやもあ
  らんとしころかけてもきゝをよ者さり个る
  との多万へ者こしゝうとと者那ちて
  志る人侍らしひとこと尓てもこと
  うち万ねひらすかくもの者可那くかす」(47オ・1538⑥)

 

  ならぬの本と尓れとよるひるかの
0126【かの御かけに】-柏ノコト
  个尓つき多て万つりてし可はをのつ可ら
  ものゝ个しきをもみ多て万つりそめし尓
  御心よりあ万りてお本し个る時/\多ゝふ多り
  のな可尓なん多万さ可のせうそこの可よ日
  もしか多者らい多个れ者く者しくきこ江
  させすいま者のとちめ尓なていさゝかの
  多万日をくことのしをかゝる尓はをき」(47ウ・1538⑪)

 

  ところなくいふせくふ多万へわ多りつゝい可尓
  して可者きこしめしつ多ふへきと者可/\し
  からぬねんすのついて尓もふ多万へ徒るを
  者よ尓お者しまし个りとなんおもふ多万
  へしりぬる御覧せさすへきりい万
  者な尓可はやきもすてんかくあさ
  ゆふのきえをしらぬのうちすて
  乎ちゝるやうもこそといとうしろめ多く
  ふ多万ふれとこのわ多り尓も時/\」(48オ・1539②)

 

  ほのめ可せを万ちいて多て万つりてしは
0127【まちいてたてまつりて】-カホルノ成人ヲ待タルト也
  すこし多のもしくかゝるおりもやとねむし
  つるち可らいて万うてきてなん佐ら尓
  これ者この尓もらしとなく/\こ
  ま可尓む万れ个るほとのもよくお
  えつゝきこゆむなしうなしさハき尓
0128【むなしうなり給し】-柏ノコトヲ思故ニ弁母ハシタルト也
  はゝ尓者や可てや万ひつきて本と
  もへすかくれ尓し可者いとゝふ多万へ」(48ウ・1539⑥)

 

  しつみ布ち多ち可さねかなしきことヲ
  思給へし本と尓としころよ可らぬ
0129【としころよからぬ人】-弁カ男
  つ个多り个る可をは可りこちて尓しの
0130【人をはかりこちて】-大弐ニツレテ弁モ行タルト也
  うみの者て万てとりもて万可り尓し可は
  さへあと多えてそのもかしこ尓
  てうせ尓しのちとゝせあ万り尓てな
  あらぬ心地して万可りの本り多りし
  をこの者ちゝ可多尓つ个てわらはより
  万いり可よふゆへし可者いま者可う」(49オ・1539⑪)

 

  尓満しらふへきさ万尓もらぬを冷泉
  女御殿御方とこそ者む可しきゝな
  れ多て万つりしわ多り尓て万い里よるへく
  し可と者し多なくおほえてえさしいて
  らてみ可くれのくち尓なり尓て侍也
  こしゝう者い徒可うせ尓个んその可みの
  わ可さ可りと見侍者かすゝくなくな
  尓个るすゑのよ尓お本くの尓をくるゝ」(49ウ・1540①)

 

  いのちをかなしく多万へてこそさす可尓め
  くらひれなときこゆる本と尓れいのあ
  け者てぬよし佐らはこのむ可し可多り
0131【よしさらは】-薫詞
  者つきすへくなんあらぬ又人き可ぬ
  すき尓てきこえん侍従といひし
  ほの可尓お本ゆる者い徒ゝむつ者可りな
  し本と尓や尓者可尓むねをやみてう
  せ尓きとなんきくかゝる多いめんなくは」(50オ・1540⑤)

 

  徒み乎もき尓てすきぬへ可り个る/と
  の多万ふさゝや可尓をし万きあ者せ多る
0132【さゝやかに】-ホソキ心
  ほくとものかひくさきを布くろ尓ぬ日
  いれ多るとりいてゝ多て万つるおまへ尓てう
0133【おまへにて】-弁詞 柏ノ詞ヲ読女三ノ前也
  しな者せへわれいくへくもあらすな
  り尓多りとの多万者せてこのふみをとり
  あ徒めて多万者せ多りし可者こしゝう尓
  あひ見侍らんついて尓さ多可尓つ多へ」(50ウ・1540⑩)

 

  万いらせんと思給へしをや可てわ可れ尓し
  もわ多くしこと尓者あ可すかなしうな
  多万ふるときこゆ徒れなくてこれ者可く
0134【つれなくて】-薫詞
  いたまひつかやうのふる者とハす可多り
  尓やあやしきの多めし尓いひいつらん
  とくるしくおほせと返/\もちらさぬよ
  しをち可ひつるさもやと又思日み多れ
  可ゆこ者いひなと万いり多万ふきのふ者」(51オ・1541⑭)

 

  いと万りしを个ふ者ものいミ
  もあきぬらん女一やみ多万ふ
  とふらひ尓かならす万いるへ个れ者
  か多/\いと万なこのころすくして
  のもみちゝらぬさき尓万いるへきよし
  きこ江多万ふかくしは/\多ちよらせ
0135【かくしは/\たちよらせ給】-八詞
  飛可り尓の可けもすこしものあきらむ
  るちしてな2んなとよろこひきこ江」(51ウ・1541④)

 

  かへりてまつこの布くろを多まへは
  可らのふせんれうをぬ日てといふもしを
  うへ尓可き多り本そきくみしてくちの
  か多をゆ日多るを(を$
)尓かの御名の布うつき
0136【かの御名】-柏ノコト
  つき(つき$)多りあくるもおそろしうおほえ
  多万ふいろ/\のかみ尓て多万さ可尓かよひ
  个るふみのことい徒ゝむつそある
  さて者かのて尓てや万ひ者をもくかき/り尓」(52オ・1541⑧)

 

  なり尓多る尓ほの可尓もきこえん
  か多くなりぬるをゆ可しうおもふ
  そひ尓多り可多ちもか者りてお者し万
  すらん可さ万/\かなしきをみちのくに
  かみ五六枚尓徒ふ/\とあやしきとりのあ
  とのやう尓かきて
    めのまへ尓このよをそむくきみよりも
  よそ尓わ可るゝ多万そ可那しき
  者し尓めつらしくきゝ布多者の本と」(52ウ・1541⑬)

 

  もうしろめ多うおもふ多万ふるハな个れと
0137【うしろめたうおもふ】-源ノ子分ナレハ也
    いのちあらはそれともまししれぬ
  伊者ね尓とめし万つのおいすゑ
  かきさし多るやう尓いとみ多りかはしう
  てこしゝうのきみ尓とうへ尓者かきつけ
  多り志みといふむしのすみ可尓なりて
  布るめき多るかひくさゝな可らあとは
  きえす多ゝい万かき多らむ尓も多可ハぬ」(53オ・1542④)

 

  ことのはとものこ万/\と佐多可なるをみ多
  万ふ尓け尓乎ちゝり多らましよとうしろ
  め多ういとおしきことゝもかゝるよ尓
  あらんやとひとつ尓いとゝも者し
  さそひてへ万いらんとお本しつるもいて
  堂ゝれすのおまへ尓万いりへれ者
0138【宮のおまへ】-入道宮
  いとな尓もなくわ可や可なるさ万し
  てよみ多万ふヲ者ちらひてもて可」(53ウ・1542⑧)

 

  くし多万へりな尓可はしり尓き(き$个り)とも
0139【なにかはしりにけり】-柏ノコト
  志られ多てまつらんな尓こめてよろ
  徒尓おもひゐ多万へり」(54オ・1542⑨)

 

【奥入01還城楽陵王をあや布めむとす
    のくるゝ尓者ちしてをむ万尓かき
    可へすといふ事也
        く者しくしらす
    <此等事可否難弁>
    史記
    魯陽以戈廻落日事歟
    <同時哥歟不可為証哥歟>
【奥入02宇治河さめて
    よる者ゝしひめいやねさるらむ」(54ウ)