First updated 01/13/2002
Last updated 03/25/2024
渋谷栄一翻字(C)

  

柏木

凡例
1.『大島本 源氏物語』(角川書店 平成8年5月)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体かなの字母と区別するため太字で表示した。
3.平仮名はそのまま平仮名で表示した。
4.変体仮名は字母で表示した。
5.片仮名はそのまま片仮名で表示した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、より元の字母の漢字に近い字形には「」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し方には「」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記等は小字体で表示した。
8.本文中の朱点、朱書きは朱色で表示した。
9.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母は茶色、同じ字母は緑色で表示した。

「かし者」(題箋)

  衛門農可む能き見かく能ミなやミ王多り
  こをこ多らてとしも可へりぬとゝき多の
  か多ほしなけくさ満越み多てまつる尓
  志井て可け者なれなんいのち可ひなく徒見
  をも可類へきと越思心としてま多
  あな可ち丹この尓者那連可多くし見とゝ
  めま本しき可ハい者けな可りし本とより
  もと尓な尓越もいまひと
  きハまさらむとお本や希わ多くし能こと尓
  布れてなのめな春おもひの本り志可と」(1オ・1227①)

  そ能こゝろ可なひ可多可り个りとひとつ布多つの
0001【ひとつふたつのふし】-まつ一ハ位なとあさくて女三宮の御うしろミにせられぬ事
  布しこと尓見ををとしてしこ那多なへて
0002【なへての世中】-(朱合点) 大方ハ我身一ノうきからニなへての世をもうらみつるかな(明融臨模本付箋C型01 拾遺集953・拾遺抄346、異本紫明抄・紫明抄・紫明抄・河海抄)
  の世中春さ満しうおもひなりてちの
  のをこなひ尓本ひ布可く春ゝ見丹しを
  おや堂ち能うらみ越日て野山尓も
0003【野山にも】-(朱合点) 古今 いつくニか世をハいとハん心こそ野にも山にもまとふへらなれ(明融臨模本付箋02 古今947・新撰和歌285、河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  
あく可連むみち能をも起本多しな類へく
0004【ほたしなるへく】-(朱合点)
  おほえし可ハさ満可うさま尓ま起らハし
  つ春くし徒る越徒井丹な越尓多ち
  まふ遍くも本えぬもおもひのひと可多
  なら見尓そひ尓多るハわ連より本可耳」(1ウ・1227⑥)

  堂れ可者徒ら可らもてそこなひつる尓
  こそあめ連とおもふ尓うらむへきもな
  仏神越も可こ多ん可多な起盤こ連み那
  佐るへき尓こそあらた連もちとせの
0005【たれもちとせの】-(朱合点) 六 うくも世ニ心ニ物ノかなわぬはたれも 小野(尊経閣文庫本付箋01・明融臨模本付箋03 古今六帖2096、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  まつ徒井尓まるへき丹もあ
  羅ぬをかく丹も春こしうち志の者連ぬ
  へき本と丹てけのあ者れ越も可希
0006【なけのあはれ】-女三宮ノ事也
  あらむをこそハひとつおもひ丹もえ(□□&もえ)ぬ
0007【ひとつおもひに】-(朱合点) 古今 なつむしの身をいタツラニナス事もヒトツ(尊経閣文庫本付箋02・明融臨模本付箋04 古今544・古今六帖3984、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  類志るし尓ハせめ/\てな可らへ者をのつ可ら
  あるましき越も多ちわ連も」(2オ・1227⑪)

  や春可らぬミ多れいてくるやうもあらむよりハ
  なめしとをいらんあ多り丹もさりとも
0008【なめしと】-源氏ノ無礼也と思給わん事也
  おほしゆるいてん可しよろつといまハの
  とちめ尓ハみ那きぬへきわさなまた
  さ満のあやまちしなけ連者しころも
  のゝおり布しこと尓まつハしなら
  にし可多能あ者れもいてきなんな徒連/\尓
  おもひ徒ゝく類もうち可遍しいとあちきな
  なと閑く本ともく志那し徒るみなむと
  か起くらしおもひみ多れてまくらもう起ぬ」(2ウ・1228②)
0009【まくらもうきぬはかり】-古今 涙川枕なかるゝうきねニハ(明融臨模本付箋05 古今527、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)

  者可り屋りなら春な可しそへついさゝ可
  ひ万ありとて々堂ち佐りへる本と尓
  かしこ尓ふミいまは可起りになり
0010【かしこに】-女三宮
  丹てるありさ満盤をの可らこし
  め春やうも者へらん越い可ゝなりぬるとた尓
  見ゝとゝめさせハぬもとハりなれ登
  いとうくもる可ななときこゆる尓い見しう
  王なゝけ者もふこともみな可起さして
    いまはとてもむ个ふりもむ春本ゝ連
0011【いまはとて】-衛門督
  堂えぬおもひの越やのこらむあハ連と」(3オ・1228⑦)

  た尓の多まハせよとめてやりな
0012【人やりならぬ】-(朱合点) 古今 人やりの道ならなくニ(古今388・新撰和歌185、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄)
  やミ尓満よハむみち能ひ可り丹も志んと
  きこえ侍従尓もこり春満尓あハ連な
0013【こりすまに】-(朱合点) こりすまに又も(古今631、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄)
  ことゝもいひおこせへりみつ可らいま
  ひと多ひいふへきとなんとのへ連は
  このわらハより佐るたより尓万いり
  かよひつ見奉りなれ多るれ者
  希那きそう多てお本えつ連いまハ
  ときく盤いと可なしうてなく/\この
  御返まこと尓これ越とちめ丹もこ」(3ウ・1228⑭)

  連ときこゆ連者も个ふ可あ春可の
0014【我もけふかあすかの】-女三宮ノ御詞
  心地してものこゝろ本そけ連者ほ可多
  のあ者れ者可り盤おもひしらるれといと
  う起ことゝもひこ里尓し可者い見しうな
  徒ゝましきとて佐ら尓可いハ春御心本
  徒よく徒しや可なる尓ハあら者つ
  可し希那る希しきのおり/\尓
  ま本なぬ可いとおそろしう王ひし起なるへし
  佐連とすゝ里なとま可なひてせめき
  こゆ連者志婦/\耳可いとりて志の」(4オ・1229⑤)

  ひてよひのま起連尓かしこ尓万いりぬ
  おとゝ可しこ起をこなひ(□&か)つ
0015【かつらき山】-文武御宇役行者事
  より佐うしいて多るま地うけ多まひて
  か地まいらせんと志多まふ春本うきやう
  なともいとおとろ/\しうさハ支堂り
  まゝに満/\ひし里多つ个んさ
  な能おさ/\(+(朱))きこえ布可起
  こもり多るなと越もとうと能き見多ち
  を徒可ハしつ堂つ年め春尓希尓くゝ
  徒起なきやま布しとなともいとおほく」(4ウ・1229⑩)

  まいるわつらさ満のそこは可と那く
  も能越ほそく日て越のミ/\
  な起おんやうしなともほく盤
  里やうとのミうらなひけ(□&け)連+者・(朱))さる
  やとおほせとさら尓ものゝ希能あらハ連
  いてくるもな起尓も本し王つひて
  かゝるく満/\越も堂つなり个り
  このひし里も多け堂可や可尓まふし
0016【まふし】-目也
  徒へ多ましくてあらら可におとろ/\しく
0017【つへたましく】-つへ/\ しきなといふ心なり
  多らよむ越いてあ那尓くや徒ミの」(5オ・1230①)

  布可起み丹やあらむ多らにのゑ堂可起
  盤いとけおそろしくていよ/\志ぬ遍く
0018【いよ/\しぬへく】-時平公御子あつたゝの中納言事
  こそおほゆ連とてやをらすへりいてゝ
  の侍従可多らとゝハ佐も志里
  ハ春うちやすミ多ると・してさせ
  堂万へハさおほして志のひや可尓こ能ひし里
  ともの可多りし(□&をとなひへ連とな越
  者那や起多るとろ徒きても王らひし
  とゝの可ゝ流ものともとむ可ひゐて
  この王つらひそめしありさ満とも」(5ウ・1230⑥)

  なくうち堂ゆミつも里たまへること
  まことにこのの希あらハるへうんし
  堂万へなこまや可尓可多らいと
  あ者れなりあ連きゝな尓ミとも
  おほしよらぬ尓うらなひより个んの里やう
  こ万こと尓佐る志ふのみ尓そひ多る
  いとハしき見もひき可へやむこ
  くこそなりぬへ个れさてもほ希な
  きありてさ流ましきあやまち越
  ひきいてゝ御名越も多てみ越も」(6オ・1230⑪)

  かへりみぬ多くひむ可しのよ尓もなくやハ
  あり个るともひな越春尓越氣ハひ
  王つハしう可能御心かゝ流と可越志ら
  れよ尓可らへんこともいとま者ゆく
  おほゆるハ希尓となひ可りなるへし
  布可起あやまちもな起尓あ者せ
  りしゆふへの本とよりや可て可きみ多り
  まとひそめ丹し多まし井能み耳も
  へら春なりにし越可能うちにあく
0019【かの院のうちに】-源
  れあ里可者む春ひとゝめへよなと」(6ウ・1231②)
0020【むすひとゝめ給へよ】-(朱合点) 伊ー 思あまりいてにし玉ノあるならん夜ふかく見へハ玉むすひせよ(明融臨模本付箋10 伊勢物語189、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)

  いとよハけ尓から能やう那るさ満してな起
0021【からのやうなるさま】-(朱合点) うつせみハからを見つゝもなくさめつ(明融臨模本付箋11 古今831・新撰和歌166・遍昭集13、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄)
  見王らひミ可多ら越のミ者つ
  しうゝましとお本し多るさ満を
  多るさてうち志めりおもやせへら
  さ満のも可け尓み多てまつ心地して
  おもひやられ多まへ者个尓あく可るらむ多
  まやゆ起可よふらんなといとゝしき心地
  にもみ多流連者いま佐ら尓このとよ
  かけてもきこえこのよハかう者可那
  くて春起ぬる越可きよのほ多し丹も」(7オ・1231⑦)

  こそと思+婦(朱))なむいといとおしきくるしき
  と越多いら可尓と多尓い可てきゝ本い
  らむしゆめ越悲とつ尓おもひあハ
  せて可多るもなき可いみしういふせ
  くもある可那なとりあつめおもひし多ま
  遍るさ満のふ可起を可つハいとう多てお
  そろしうへとあ者れ者多へ志の者春
  このもい見しうな志そくめして
  御返へ者てもな越いと者可那个尓
  お可しきほと尓可いくるしうきゝ」(7ウ・1231⑫)

  な可らい可て可者多ゝおしハ可りこらんと
  ある者
    堂ちそひてきえや志那ましう起こと越
0022【たちそひて】-女三宮
  おもひみ多るゝ个ふりくらへ尓をくるへう
  やハと者可りある越あ者れ尓可多しけなしと
  おもふいてやこの个ふりハ可りこそハこの
  よ能おもひてな者可那くもあり个る
  か那といとゝな起まさり御返ふし
  な可らうちや春ミつゝ可ひこと能者のつゝき
  もなうあやしきとり能あとのやう尓て」(8オ・1232③)

    ゆく衛な起能个ふりとなりぬとも
0023【ゆくゑなき】-衛門督
  おもふあ多り越堂ちハ者那連しゆふへハ
  王起て可めさせと可めきこえさせ
  ハんめ越もいまはや春くお本し
  なりて可ひなきあ者れ越多丹も多え
  かけさせへな可起み多りてちのく
  るしさまさりけ連者よしい多うふけぬ
  起尓かへりまいり可くかきり農
  満尓なんともきこえいま佐ら
  あやしとおもひあハせむをわ可よのゝち」(8ウ・1232⑩)

  さへそくちおし个れい可なるむ可しの
  ち起り丹ていと可ゝること志も尓志ミ
  个むとなく/\井さりいりぬ連者連い
  盤むこ尓む可へすゑて春ゝろこと越さへ
0024【むこに】-無期
0025【むかへすゑて】-侍従

  いハせまほしう志とすく那丹てもと
  可あハ連なる尓盈もいてやらあり
  さ満越め能ともか多りていミ志うな起
  まとふおとゝなと能お本し多る希しきそ
  い見しきやきのふ个ふ春こしよろし可り
  つる越なと可いとよハけ尓ハさ」(9オ・1233①)

  ハきな尓可な越とまりましき
  なめりときこえみつ可ら
  ハこの可多よりなやましう志个る
  をその希しきとみ多てまつり志り多る
  /\佐者起みちておとゝにもきこえ
  堂りけ連者とろきて王多りへり御心
  のうちハあなくちおしやもひま春る
  か多那くて満し可者めつしく
  うれし可らましとほせと丹ハ希しき
  もら佐しとほせ者个んさなとめしみ春」(9ウ・1233⑥)

  ハいつとなく布多ん尓せら流連ハそう
  とも个んある可起りみ那まいりて
  かちまいり佐ハく一夜やミあ可させ
  てひさしあ可る本と尓むまれとこ
  き見ときゝかく志のひ多ること能あや
  にく尓いち志る起可本つき丹て佐しいて
  へらんこくるし可るへ个れそな尓
  なま起連あま多ののみるものな
  ねや春个れとおほ春尓可くくるし
  きう多可ひまし里多るにてや春起」(10オ・1233⑪)

  か多尓ものしいとよし可しさても
  あやしやわ可よとゝも尓そろしと日し
  こと能むくひなめりこのよにて可くおもひ
  かけぬこと尓む可ハりぬ連者のち能よの
0026【むかハり】-向
  徒ミもすこし可ろミなんやとおほ春
  ハ多志らぬことなれハ可くと那る者ら
  丹て春ゑ尓いておハし多るほえいみし
  かりなんともひいとなミ徒可うまつる
  うふやのきし起い可めしうおとろ/\し
  可た/\さ満/\尓志いてうふやし」(10ウ・1234②)

  よ能つ年のしきつい可さ年多可つ
  と能者へもと佐ら/\尓いとまし
  さ徒ゝな五日夜中宮可多より
  こもちの御前女房丹も志な/\尓
0027【こもちの御前】-女三
  あて多るき者/\おほや希こと尓い可めしう
  せさせへり可ゆてとむしき五十具
  ころ/\のきやう志もへちやうのめし
0028【きやう】-饗
0029【しもへ】-召次
0030【めしつきところ】-召次所

  徒起とろな尓可能くまゝてい可めしくせ
  させへりみや徒可さ大夫より者しめて
0031【みやつかさ】-ー司
0032【大夫】-中宮職

  院殿上人みなまひ連り(+日)うちより」(11オ・1234⑦)

  それもおほや希さ満な地しのおとゝな
  と尓徒可うまつへきこのころ盤
  な尓ともほされておほそうのふら
  ひのミそあり个るみや堂ちかん多ちめ
  なとあま多万いりほ可多の个し起も
  よ尓起まて可しつきこえ堂万へと
  おとゝ能御心うち尓くるしとおほ春こ
0033【おとゝ】-源
  ありてい多うもて者やしき古え
  ハ春あそひなとハな可りけ里ハさは
  かりひ王つさ満丹ていとむく徒个う」(11ウ・1234⑬)

  ハぬこと能おそろしうおほされ个る尓
  ともきこしめさ須みのう起こと越
  かゝ流尓徒个てもほしい連ハさハれこの
  徒いて丹も志な者やとおほ春とゝハいと
  ようめ越可さりおほせとま多むつ可し
  个尓ハ春るなとをり王起てもみ多て
  まつハ春なとあ連ハい志らへる
  なとハいてやをろそ可にもおハしま須可な
  めつしう佐しいてへるありさ満の
  か者可りゆゝし起まて尓おハしま須をと」(12オ・1235④)

  うつくし見きこゆ連者可多見ゝミ尓き
  さのミこそハお本し遍多つることも
  ま佐らめとうらめしう王可み徒らくてあま
  にもなりなハやのこゝろ徒きぬよるなとも
  こ那多丹ハお本とのこもら須ひるつ可多な
  そさしのそよのな可の者可那き
  みるまゝにゆく春衛見し可うのこゝろ
  ほそくてをこなひ可ち尓なり丹て
  者かゝるほとのらう可ハしきちする尓
  よりえまいりこぬをい可ゝ御心ちハさ者や可」(12ウ・1235⑨)

  尓おほしなりに多りやくるしうこそとて・
  御木丁そ者より佐しのそ起へりくし
  も多け盈いき多るまし起
  なむし可ゝ流盤徒ミもをも可な
  あま尓なりてしそれ丹やいきとまる
  と又なくなるとも徒ミ越うしな
  こともやとなんおもひると徒年の
  ハひよりハいとをとなひてきこえいと
0034【いとうたて】-源詞
  う多てゆゝしきと那りなとて可さ満て
  ハおほ春かゝることハさのミこそろし」(13オ・1235⑭)

  可むなれと佐てな可らへぬ王さな
  こそあらめときこえ御心うち耳ハ
  満こと尓佐もお本しよりてハゝさやう
  丹て多てまつむハあ者れななん
  かし可つみ徒ゝもと尓布れてを可連
  ハん可くるしうわ連な可らえおもひ
  な越春ましううき(+(朱))うちまし里ぬ
  遍き越をのつ可らをろ可尓のみと可
  むることもあらん可いと/\おしうと能
  きこしめさんことも王可をこ多り尓のミこそハ」(13ウ・1236⑤)

  なやミ尓とつ个て佐もやなし
  多てまつりてましなとほしよれといと
  あ多ら志うあ者れ尓かハ可り越きくし
  のいさ起を志可や徒さんこともくるし
  希連者な越徒よくお本しなれ个しうハ
  おハせし可起りとみゆる多いら可な
  ためしち可け連者さす可尓堂のミあるよ尓
  なんなときこえゆまいり(+に)いと
  い多うあ越ミやせあさましう者可那
  希尓うち布しへるさ満のほ」(14オ・1236⑩)

  ときう徒くしけな連ハい見しきあやまち
  ありともよハくゆるし徒へきありさ満
  可なとみ多てまつり見可とハめ徒ら
  しきいら可なりときこしめして
  あ者れ尓ゆ可しうおもほ春に閑くなやみ
  よしのミあ連はい可丹ものへき尓
  かとをこなひもみ多れて本し个り
  さ者可りよハ里へるものをきこし
  めさてひころへへ者いと多し氣
  なくなりしこ見奉さ里し」(14ウ・1237②)

  ほとよりもいとこひ志くおほえ
  見奉春なりぬる丹やとい多うな
  いかくきこえさ満さるへきして
  徒多へそうせさせ个れ者いと多へ可たう
  しとほしてあるましきことゝハお本し
  可らよ尓可くれていてさせへ里かね
  佐るせうそこもなくてにハ可尓閑く王多り
  おハしまい多れ者あるしのとろき
  かしこまりきこえよの越可へりみ春
0035【よの中越】-朱ー詞
  ましうし可とな越まとひさめ」(15オ・1237⑦)

  か多起ものこ能みちのやみ尓なん
0036【このみちのやみに】-(朱合点)
  連はをこなひも个多ひしてもしをくれ
  佐起多みち能多う里のまゝなら
  王可れなや可てこのうらみも可多見尓
  のこらむとあちき那さ尓このよ能そし
  里を者志ら閑くも能しきこ盈
  可多ちこと丹てまめ可しうな
  可しきさ満尓うち志のひや徒連
  流ハしきほう布くならす見そめ
  能す可多あらま本しうきよら那るもうら」(15ウ・1237⑫)
0037【あらまほしう】-源心

  やま志くみ多てまつ連いのまつミ多
  おとし王つら給御さ満と那るなやミ
  にも多ゝろよハりへるあり
  さ満尓者可/\志うものなとも万いらぬつも
  丹やかくも能しふ尓こそなときこえ
  まふ可多ハらい多起おましなれとも
  御丁まへ尓志とねまいりてい連
  里越もと可う々徒くろひきこえ
  てゆ可能志も尓おろしすこし
  をしやらよひの可ち能そうなと能」(16オ・1238③)

  ちすれとま多个む徒く者可りのをこ
  なひ尓もあらか多ハらい多个連と
  多ゝおほつ可那くお本えんさ満を
  な可らへきなりとてめをしのこハせ
  いとよハけ尓ないいく
  遍うもほえぬ越かくおハし
  まい多る徒いて尓あま尓なさせ
  きこえさ流(△&流)御本いあらいと多
  起ことなる越さす可に可起らぬいのち能
  ほと丹て春衛と越き可遍りて」(16ウ・1238⑧)

  こと能み多れありよの尓そしら流ゝやう
  ありぬへきなんとのたまハせてとゝの
  きみ尓かくなん春ゝ見の多まう越いま
  ハ可起りのさ満なか多の本と尓ても
  その多春けあるへきさ満尓てとなん
  ふるとへ者ひころも可くなんのへと
  さけなんと能ふろ可して可ゝ流可多
  尓て春ゝむるやうも者へなる越とてきゝも
  い連者へらぬなりときこえものゝ希農
0038【ものゝけのをしへにても】-朱ー詞
  をしへにてもそれ尓まけぬとてあし可るへき」(17オ・1238⑬)

  ことな者こ者ゝからよハりに多る
  可起りと能しハんこと越きゝすくさむ
  ハち能くいく流しうやとの御心
  うち可きりなううしろや春くゆつりを
  きし御事うけとりたまひて佐しもこゝろ
  佐し布可ゝら須王可おもふやう尓ハあら
  个しき越と尓布れ徒ゝしころきこし
  めしお本し徒め个るいろ尓いてゝうら
  きこえへき尓もあらよの
  もひいふらくちおしうお本し王多る尓」(17ウ・1239⑤)

  かゝるおり尓もて者なれなんもな尓可者
  ハらハへ尓よ越うらみ多る希しきなさも
  あら佐らほ可多のうしろみ尓ハな越多の
  まれぬへきお起てなる越多ゝあつけを
  きりし志るしに盤もひなにく
  希尓そむくさ満尓ハあら春ともそうふん
  尓ひろくおもしろき宮給ハりへるを
  徒くろひて春ませ多てまつら王可おハし
  ま春よ尓さ流可多丹てうしろめ多可ら
  きゝおま多可のおとゝもさいふともいと」(18オ・1239⑩)

  をろ可尓ハよもおもひ者那ちハしその
  者へをもみ者てんとも本しとりて佐ら
  かくもし多る徒いて尓いむうけ多まハん
  を多尓个ち盈ん尓せん可しとの多まハ春
  おとゝのきみうしとほ春か多も王すれて
0039【おとゝのきみ】-源
  こハい可なるへきそと可なしくくちおし
  个れ者え多ハ春うち尓いりてなとか
0040【なとかいくはくも】-(朱合点) 古今 いく世しもあらし我身をなとてかく海人ノかるもに思みたるゝ(明融臨模本付箋18 古今934・古今六帖1850、河海抄・孟津抄)
  いく者くもましき越布りすてゝ可うハ
  おほしなり尓希るな越志ハし越志徒め
  ゆまいりものなとをもきこしめせ」(18ウ・1240①)

  たうと起ことなりとも御身よ者うてハをこ
  なひも志てんや可つハ徒くろひそと
  きこえへとかしら布りていと徒らうの
  ふとほし多り連なくてうらめしと
  おほ春もあり个る尓やと多てまつり
  いと越しうあ者れなりと可くきこえ
  可へさひおほしや春ら婦本と尓あけ可多尓
  なりぬ可へりいらん尓みちもひるハ者したな可る
  へしといそ可せいのりにさふら
  やんことなたうと起可きりめしい連て」(19オ・1240⑦)

  くしおろさせいと佐可り尓きよらなる
  くし越そき春てゝいむうけさほう
  可なしうくちおし个れ者とゝハえ志のひ
  あへ者春い見しうない者多もと
  よりとり王起てやむことなくよりも
  すくれて見奉んとほし志越この
  尓ハ可ひな起やう尓ないるもあ可春
  かなし个れ者うち志本多れ可くてもたいら
  にてしうハ春をも徒とめへときこえ
  おあけ者てぬる尓いそ起ていてさせ」(19ウ・1240⑫)

  盤な越よ者うきえいるやう尓志
  堂万ひて者可/\志うもえみら春
  なともきこえハ春とゝもゆめのやう尓
  多まへみ多るゝまとひ尓かうむ可し
  おほえ多るミゆ起の可しこまり越も
  らんせられ(△&れ)ぬらう可ハしさハと佐ら尓まいり
  者んへりてなんときこえ多まふをくり耳
  々まいら世中个ふ可あ春可に
0041【世中の】-朱詞
  おほえし本と尓志るもなくて多ゝ
0042【又しる人もなくて】-(朱合点) 古今 枕より又しる人も(古今670・古今六帖3231、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄)
  よハんこと能あ者れ尓さり可多うほえ者へ」(20オ・1241④)

  志可者ほい尓ハあら佐り个めとかくきこえ
  希てしころ盤や春くおもひ
  る越しもいきとまりさ満こと尓
  かハりて志けき春まひ盤きな可る
  遍起をさるへきさとなと尓可希者な
  多らむありさ満も佐春可尓本そ可るへ
  くやさ満耳志多可ひてな越お本し者那
  つましくなときこえへハ佐ら尓可くまて
0043【さらにかくまて】-源詞
  おほせらるゝなん可へりて者つ可しう
  多まへらるゝみ多れちと可くみ多れ」(20ウ・1241⑨)

  な尓もえ王起まへ春とて个尓いと
  多へ可多け尓おほし多りこやの可ち尓ものゝ
0044【御ものゝけ】-六条御息所死霊
  希いてきてかうそあるよいと可しこう
  かへしつひとり越者お本し多りし可いと
  ね多可里し可者この王多り尓さり希那くて
  なんひころ佐ふらひついまは可へりなんと
  うち王らいとあさましうさハこのものゝ
0045【うちわらふ】-邪気
  希能こゝにも者なれさり个る尓やあらんと
  春尓いとおしうくやしうおほさるすこし
  い起いてやうなれとな越多のミ可多け尓」(21オ・1241⑭)

  のさふら々もいといふ可ひなう
  おほゆ連とかうてもたいら可尓多尓おハし
  まさハとんしつみ春ほうのへて
  多ゆミなくをこな者せなとよろつ尓せ
  させ可能ゑもんの可ミハ可ゝ類と越き
  万婦尓いとゝきえいるやう尓むけ尓
  む可多春くなうな尓多女宮
0046【女宮の】-落ー
  あ者れ尓おほえへ者こゝに王多りハん
  ハいま佐ら尓かる/\しきやう尓あらん越
  うへもおとゝもかく徒とそひおハ春連者」(21ウ・1242⑥)
0047【うへも】-柏木母

  をの可らり者つしてみ多てまつ
  やうもあらむ尓あちきなしとほして
  かの尓と可くしていまひと多ひまうてん
  と佐ら尓ゆるしきこへ堂万ハ春
  堂れ丹もこの御事越きこえ徒希
0048【この宮】-落ー
  者しめより+者ゝ(朱))みや春とろハさ/\ゆき
  ハさ里しをこのおとゝの井多ちね
  ころ尓きこえさし布可ゝ里し尓
  まけ丹もい可ゝ盤せんと本し
0049【院にも】-朱ー
  ゆるしける越二品御事おもほ本し」(22オ・1242⑪)
0050【二品の宮】-女三

  み多れ个る徒いて尓/\このハゆく
  さ起うしろや春く満めや可なるうしろミ
  まうけへりとハ春ときゝしを
  か多しけなうおもひいつ可くて春て
  りぬるなめりとふ尓徒希てハさ満/\尓
  いとお(△&お)し个れとよりほ可なるいのちな
  れ者多へぬちきりうらめしうておほし
  なけ可連ん可くるしき御心さし
  ありてふらひもせさせへと者ゝうへ
  にもきこえふいてあなゆゝしをくれて」(22ウ・1243③)

  ハいく者くよ尓婦へきとてかうまて
  ゆくさ起のと越ハの多まふとてな起耳
  のミな起へハえきこえやりハ春右大
0051【右大弁の君】-柏弟(弟#弟)
  弁
尓そおほ可多のともくハしう
  きこえ者へののと可尓よくおハし
  つなれ者とうと能き見多ちも
  春ゑ/\の王可きハおやとのミたの
  きこえへる尓かうほそうのふを
  かなしとも者ぬゝうち能
  もなけくほや希もしミくちおし」(23オ・1243⑧)

  から可くか起りときこし免して
  ハ可尓権大納言尓なさせへりよろこ
  もひおこしていまひと多ひもまいり
  やうもあるとほしの者せ个れと
  佐ら尓盈ためらひやりハてくるしき
  な可にもかしこまり申給とゝもかくをもき
  ほえ見給ふ尓徒个てもいよ/\可な
  しうあ多らしとお本しまとふ大将
0052【大将の君】-夕
  つ年尓いとふ可うおもひなけ起とふらひき
  こえよろこひにもまつまうて多まへり」(23ウ・1243⑬)

  この者する多いのほとりこ那多のみ可とハ
  むまくる満多ちこ見佐者可しうさハ起
  見ち多りことしとなりてきあ可る
  おさ/\志者年者をも/\しき
  さ満尓み多れな可らえ多いめ志者て
  おもひつゝよハりぬることゝおもふ尓くちおし
  个れ者な越こ那多尓いらせ多まへいとらう
  かハしきさ満尓徒ミハをの可ら本し
  ゆるされなんとて布しへるまくら可ミ
  の可多尓そうなと志ハしい多しい連」(24オ・1244④)

  ハやうよりいさゝ可へ多て
  なうむつひ可ハし給御中れ者王可れん
  こと能可なしうこひし可るへきなけきおや
  者ら可らもひ尓もをとら个ふ盤
  よろこひとてちよけなましをと
  いとくちおしうかひなしとかく
  堂能もし希那く盤な尓个る个ふ盤
  かゝるよろこひ尓いさゝ可春くよ可尓
  やと連とて木丁つ万を
  ひきあけへ連者いとくちおしう」(24ウ・1244⑨)

  その丹もあら春なり丹てやとて
  えほうしハ可りおしい連てすこしおき
  あ可らむとへといとくるしけなり志ろ
  ききぬともなつ可しうなよゝ可那るを
  あま多可さ年て布春まひき可けて布し
  へりましのあ多りものきよけ尓
  希ハひ可う者しうくゝそすみな
  へるう地とけな可らよういハありと
  みゆをもく王つらひ多るをのつ可ら
  か見ひけもみ多れものむつ可しき希者」(25オ・1244⑭)

  ひもそふ王さ那る越やせさり(り$(朱))本い多るし
0053【やせさらほいたる】-[骨+堯]庄子
  もいよ/\志ろうあてなるさ満して
  まくら越そ者多てゝもときこえ
  希者ひいとよハけ尓い起も
  あ者れ希那りひさしう王つへる
  ほとよりハと尓い多うもそこなハ連
  ハさり个り年の可多ちよりも/\
  まさりてなんみえとのの可ら
  おしのこひてをくれ佐起多つへ多てなく
0054【をくれさきたつ】-(朱合点)
  とそちきりきこえし可い見しうもある」(25ウ・1245⑤)

  かなこの御心ち能さ満越な尓尓て
  をもりと多尓盈きゝわきかくし
  多し支ほとな可らおほつ可なくのミなと
  の尓ハをもくなる个ちめもおほえ
0055【心にハをもく】-柏詞
  そこくるしきこともなけ連
  者ちま地尓かうもおもひへさりし
  本と尓月日もへてよハり尓个れ者いま
  ハう徒しうせ多るやう尓なおし
0056【うつし心も】-現
  希那きさ満/\尓ひきとゝめらるゝ
  の(+里)く王んなと(+の)ち可ら丹や佐春可尓かゝ徒ゝ」(26オ1245⑩)

  婦も/\く流しう連者もてなん
  いそ起多ちしさ流ハこのよの王可れ
  さり可多きことハいとおほうなんおや尓も
  つ可ふまつり佐してい万佐ら御心とも
  なやまし尓徒可ふまつることもハの
  ほと尓て越可へりるか多は多まして
  者可/\しからうらみ越とゝめつおほ可多
  のなけき越者さ流も丹てまた
  うち尓日多まへみ多るゝるを
  かゝるいまはのき佐ミ尓てな尓可者もら春」(26ウ・1246②)

  へきもひ連とな越志のひ可多き
  こと越多れ尓可者う連へこれ可連あ
  ま多もの春れとさ満/\なること丹て佐ら
  可春免むもあいなしかし六条院
  いさゝ可(可$)なる能た可ひ免ありて
  うち尓かしこまり申事なんしを
  いとほいなうよの中心ほそうなりて
  やまひ徒きぬとほえし尓めしありて
  御賀閑くのこゝろ見のまいり
  て希しき越多まハりし尓な越ゆるされ」(27オ・1246⑦)

  ぬ御心者へあるさ満尓まし里越
  里いとゝよ尓な可らへんことも者ゝ可り
  ほうおほえなりあちきなう
  もひへし尓佐者起そめてかく
  志つまら春なりぬる尓なん可春耳ハ
  お本しい連さりけめといハけなう
  と起より布可う多申心しを
  い可なさう个んなとの个る尓かとこれ
0057【さうけん】-讒言
  なんこのよ能う連へ尓てのこりへ个連
  者ろんなう可能のちのよのさ満多け尓」(27ウ・1246⑫)

  もやともひふをこと能徒いて
  見ゝとゝめてよろ志うあきらさせ
  まへ可らんうしろ丹もかう志ゆるされ
0058【かうし】-考
  んなむく尓へきと能まゝ
  尓いとくるしけ尓のまされ者い見しう
  てうち尓日あ者春るとも
  あれとも佐してたし可尓ハ盈しもおし
  者可らい可な御心お尓ゝ可ハ佐ら
  さやうなる个しきなくかくをもり
  へるよし越もきゝをとろきなけき」(28オ・1247③)

  と可起りなうこくちおし可り申給
  め里し可なとかくおほ春ある尓てハ
  いまゝてのこひ日徒らこ那多かな
  あ起ら春へ可り个るもいまは
  いふ可ひなしやとてり可へさ満ほしう可な
  しくおほさる个尓いさゝ可もひまありつ
  おりきこえうけハるへうこそハり个れ
  されといとかう个ふあ春としもやハとみつ
0059【されと】-柏詞
0060【けふあすとしも】-
(朱合点) つゐにゆく道と(古今861・業平集82・伊勢物語209・大和物語275、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  から可ら志らぬいのち能ほと越もひ
  のとめ个るも者可那くなこのと者」(28ウ・1247⑧)

  佐ら御心よりもまし佐るへき
  徒いてむおり尓盤よう井く者へ
  へとてきこえをく尓なん一条尓ものし
  給宮と尓ふ連てふらひきこえ
0061【宮】-落
  くるしきさ満丹てと尓もきこし
  めされ多まハんを徒くろひへなとの
  い者ま本しきことハおほ可るへ个れと
  せん可多なくなり尓希れ者いてさせ
  ひねて可起きこえ可ちまいる
  そうともち可うまいりう遍おとゝなとも」(29オ・1247⑭)
0062【うへ】-母

  おハしあつまりて々も堂ちさハけ者
  なく/\いて女御を者佐ら丹も
  きこえこの大将可多なともいミし
  うなけきを起てあま年く
  この可見尓も个連者
  とのゝき多の可多もこのきみを
  のミそむつましきもの尓おもひきこえ
  多まひ个れ者よろつ日なけき
  いのりなととり王起てせさせ
  け連とやむく春りならハ可ひな起」(29ウ・1248⑤)
0063【やむくすり】-(朱合点) われこそハみぬ人こふるやまひすれあふより外のやむくすりなし(朱)(尊経閣文庫本付箋04・明融臨模本付箋23 拾遺集665、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)

  わさ尓なんありける女宮丹も徒ゐ尓え
  堂いめしきこえハてあハの
0064【あはのきえ入やうにて】-(朱合点) 古今 水の泡の消てうき世としりなからかゝりて猶もたのまるゝかな(明融臨模本付箋24 古今792・古今六帖2184・友則集52、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  やう丹てうせしころ志多の
  こそねんころ尓布可くもな可りし可おほ
  可多尓いとあらまほしくもてなしかし
  徒ききこえて氣なつ可しう者へ
  を可しううちとけぬさ満尓て春くひ
  希れ者徒らき布しもこと尓なし多ゝ
  かく見し可ゝ里けるみ丹てあやしく
  なへてよ春さ満しくおもひ个る」(30オ・1248⑨)

  なり个りと日いてい見しうてお
  ほしいり多るさ満いとくるし
  い見しうハらへ尓くちおしとみ
  なけきとか起りなとゝき多能
  か多なとハましてい者む可多那く
  佐起多ゝめよのとハり那く徒らいことゝ
  こ可れへとな尓の可ひなあま
0065【あま宮】-女三
  おほ希那きもう多てのミおほされて
  よ尓可ゝれとしもおほさゝ里し越
  かく那ときゝ佐春可いとあハ連なり」(30ウ・1248⑭)

  かしわ可と越佐そともひ多りしも
  个尓可ゝるへきち起り丹てひの本可尓
  うきこともあり个むとおほしよる尓
  さ満/\もほそうてうちな可れ
  やよひ尓なれ者そら能希しきもも能
  うらら可にてこのきミい可のほと尓なり
0066【いかのほとに】-五十日
  いと志ろうう徒くしうほとよりハ
  をよすけて可多りなとしとゝハ
  王多り御心ちさハや可尓なり
0067【御心ち】-源詞
  多りやいてやいと可ひなくも可な連いの」(31オ・1249⑤)

  ありさ満丹てかくみなし多てまつ万し
  か者い可尓う連しうましうく
  おほし春て个ることゝなみ多くミてうら
  みきこえ々に王多り々に王多り$)いましも
  やむこと那く可起りな起さ満尓もてなし
  きこえ$)い可尓もち井まいらハん
  とてか多ちこと那るありさ満を々い可
  尓なときこえや春らへ者王多ら
  てな尓尓ものハゝこ那し
  すち丹ていま/\しくもあらめとて」(31ウ・1249⑩)

  みなミおもて尓ちいさ起おましなとよそ
  ひてまいらめ能といと者那や可尓
  さうそ起てまへの物色/\を徒くし多る
  こもひハ里この者へともうち尓も
  と丹ももと越志らぬことなれ者りちら
  な尓きをいとくるしう満者ゆ
0068【いと心くるしう】-柏五旬
0069【まはゆきわさなりや】-非源子

  き王さ那りやとほ春もおき井
0070【宮も】-女三
  くしの春ゑのとろせうひろこり
  多るをいとくるしとおほしてひ多飛な
  なて徒个てお者する尓をひき」(32オ・1250①)

  や里て井させへ者いと者つ可しうて
  そむ可せへるいとゝちいさう本そり
  てくしハおし見きこえ可うそ
  き多りけ連者うしろ盤こと尓个ちめ
  もみえハぬほとな春起/\みゆる
  尓ひいろともき可ちなるいまやう
  いろなときま多あり徒可ぬ
  可多ハらかくて志もうつくしき
  とものち志て(+ま)め可しうお可しけ
  なりいてあな春見そめこそな越」(32ウ・1250⑥)

  いとう多てめもく流ゝなり个れ可やう
  尓てもみ多てまつることハ堂遊(遊=ツ)ましき
  そかしと日なくさめ連と婦りか多ふ
  わりな起ち春るなみ多の王ろさ
  をいとかうおもひ春てられ
  と可尓日な春もさ満/\尓む年い多う
  くちおしうなんとりかへ春も尓も可な
0071【とりかへすものにもかなや】-(朱合点) 古今 とりかへす物にもかなや世中を(出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  やとうちなけきいまハとてお本し
  者なれ者まこと尓御心といとひ春て
  个る登者つ可しううくなんおほゆへき」(33オ・1250⑪)

  な越あ者れとおほせときこえへハ可ゝる
  さ満のハもゝあは者れも志らぬものと
  きゝし越ましてもとよりかゝらぬこ
  尓てい可ゝハきこゆへ可らむと多まへ者
  かひなとやおほし志るか多もあら
0072【かひなのことや】-源
  ものをと者可りのさして王可きミ越
  見奉め能と多ちハやむことなく
  めや春起可きりあま多さふらめしいてゝ
  徒可うまつるへきを起てなとの
  者れのこりすく那きよ尓ひいつ遍支」(33ウ・1251②)

  尓こそとてい多きとへハいと
  春くうちゑミて徒ふ/\とこえ志ろう
  うつくし大将と能ちこをひ本の可尓
  おほしい徒る尓ハハ春女御御宮
  多ちハ多ちゝみ可と能御方さ満尓わうけ
0073【わうけつきて】-王孫
  徒きて希多可うこそおハしませと尓す
  くれてめて多う志もハせ春この
  いとあてなるにそへてあいきやう徒き
  ま見の可本りてゑ(+ミ)可ちなるなと越いとあ
  者れと見給日なし尓やな越いと」(34オ・1251⑦)

  ようおほえ多りかし多ゝいま可らまな
  井のと个尓者つ可しき佐まもやう者那
  連て可本里お可しき可本さ満なり
  さしもほし王可春者多さらに志ら
  ぬことなれ者多ゝひとゝころの御心のうち
  のミそあ者れ尓者可那可り个るのち起り
  かなほ可多のよ能さ多め那さも
  おほしつゝけられてなみ多のほろ/\と
  こほ連ぬる越个ふハこといミ春へきをとをし
  のこひ可くし志つ可尓おもひてなけく尓」(34ウ・1251⑫)

  多多りとうち春んし五十八をとり
0074【五十八をとをとりすてたる】-白楽天子生遅にむかひてつくれる詩云 五十八翁方有後静思堪喜又堪嗟持盃祝願無他語慎勿頑愚似汝爺
  春て多るよハひなれとすゑ尓なり多
0075【御よはひ】-源四十八
  ちしいとものあハ連尓おほさる
  なんち可地ゝ尓ともいさめまほしうお本し
  个む可しこのこと能志れる女房
  な可にもあらん可し志らぬこそね多个れ
  おこなりとみるらんとや春可らすおほせ
  とわ可可あることハあへなんふ多つい者ん
  尓ハめこいとをし希れなとお
  ほしていろ丹もい多したまハ春いとな尓」(35オ・1252③)

  なうもの可多りしてハらへるま見
  くち徒きのう徒くしきも志らさら
  い可ゝあらな越いとよくに可よひ多り
  个り登み多まふ尓や多ちのこ多尓
  あれ可しとらん丹も盈みせ春
  志連須者可那きか多ミ者可り越ゝ免
  をきてさハ可りおもひあ(+か)りおよすけ多りし
  み越てうしなひ徒るよとあ者れ尓
  おし个れハめさ満しともふこゝろもひき
  可遍しうちな可れ々春遍り可く」(35ウ・1252⑨)

  連多るほと尓もと尓よりこ能
  を者い可ゝみかゝ流をすてゝそ
  むき者てひぬへきよ尓やあり个る
  あ那うとおとろ可しきこえへ者可本
  うちあ可めてハ春
    堂可尓可多年ハま起しとハゝ
0076【たか世にか】-源氏
  い可ゝい者年の盤こ多へんあハれなりな
  志のひてきこえいらへもなうて
  ひ連ふしへりとハ里とほせハ
0077【ひれ】-領巾
  井てきこえハ春い可尓おほ春らんも」(36オ・1252⑬)

  の布可うなとハハせねとい可て可多ゝにハと
  おし者可りきこえいとくるしう
  なん大将き見ハ可能尓あまりて本の
0078【大将のきみ】-夕
0079【かの心に】-衛門督事
0080【ほのめかしいてたりしを】-女三

  め可しいて多りしをい可那ることに可あり个ん
  すこしおほえるさ満なまし可者
  さハ可りうちいそめ多りし尓いとよう
  希しき者ミてましをいふ可ひな起と
  ちめ丹てお里あしういふせくあ者れ
  尓もあり志可那とおも可け王すれ可多うて
  者ら可ら多ちよりも志い可那しと」(36ウ・1253⑤)

  おほえ个り女宮可くよ越そむきへる
  ありさ満おとろ/\志きなやミ丹もあら
  春可や可尓ほし多ち个るほとよさりとも
  ゆるしきこえへきこと可者二条うへの
0081【二条のうへ】-紫尼君
  さ者可り可起り尓てなく/\申給ときゝし
  をハい見しきこと尓おほして徒い尓かく可希
  とゝめ多てまつるもの越なりあつめて
  おもひく多具尓越む可しより多
  ゆる者へ盈志のハぬ/\ありき
  かしいとようもて志徒め多るう者へハ」(37オ・1253⑩)

  よりけ尓よういありと可尓な尓
  このうち尓おもふらんとみる
  ゆることも1くるしきまてありし可と
  春こしよハきとろ徒きてなよひ春起
  多りしそ可しい見しうとさるまし
  きこと尓越み多りてかくしも
  かふへき尓やハあり个るため尓も
  いとおしう我身者い多つ尓やなすへ
  き佐るへきむ可しのちきりといひな可らいと
  かる/\しうあちきな起ことなり可し」(37ウ・1254②)

  な1ひとつ尓おもへと女君尓多尓きこえ
0082【心ひとつに】-夕
  いてハ春佐るへき徒いてなくて尓も
  ま多盈申給ハさり个りさるハかゝること越
  なん可春めしといてゝ希しきもみま
  ほし可里个りちゝおとゝ者ゝき多の
  なみ多のいとまなくおほし志つミて
  可那く春くるひ可春越も志りハ春
0083【すくるひかすを】-(朱合点) 物おもふとすくる月日をしらぬまに雁こそ鳴て秋とつけくれ(後撰358・古今六帖4365、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・岷江入楚)
0084【御わさ】-ヲン

  王さ能ほう布くさうそくな尓くれ
  のいそ起をも多ち可多/\とり/\尓
  なんせさ勢个るきやうほとけのきて」(38オ・1254⑦)

  なとも右大弁き見せさ勢なぬ可/\
  の春きやうなと越きこえおと
  ろ可す尓もわ連尓なき可せそ可くい見しと
0085【われになきかせそ】-父母心
  おもひまとふ尓/\みちさ満多け尓も
0086【みちさまたけにも】-(朱合点) 拾 おもふ事ありてこそ行ケ春かすミみちさまたけニ立なかくしそ(拾遺集1017・拾遺抄379・貫之集45、河海抄・孟津抄)
  こそとてきやう尓おほし本連多り
  尓ハましておほつ可なくてわ可連
  尓しうらみさへそひてろ婦るまゝ
  尓ひろきうち氣すく那う
  ほそけ尓て志多しく徒可ひな
  な越まいりとふらひきここのミ」(38ウ・1254⑫)

  し多可むまなとその可多能あつ可里
  ともみな徒くとろなうもひうして
  かす可にいいる越見給と尓布れて
  あ者れハつきぬも尓なんあり个るもて
  徒可ひてうとゝも徒年尓ひき
  ひ王わこんなと能をもり者なやつされて
  ね者多てぬもいとうもれい多起王さな
  里やまへの多ちい多う个ふりて
  者那ハ越王すれぬ希しきなる越可め
  徒ゝもの可那しく佐ふら々も尓ひ尓」(39オ・1255③)

  やつ連徒ゝ佐ひしう徒連/\なるひるつ
  可多佐き者那や可尓をふをとしてこゝ尓
  まりぬるありあハ連ことの希ハひ
  うち王すれてもひ徒連とて
  なくもあり大将とのゝおハし多るなり个り
  せうそこきこえい連へり連いの
  き見さいしやうなと能おハし多るとお本し
  つる越いと者つ可し个尓きよら那るもて
  なし尓ていりへりもやのひさし尓お
  ましよそひてい連をしなへ多る」(39ウ・1255⑧)

  やう尓々能あへ志らひきこえむハ可多
  志けな起さ満のへ連者みや春
0087【みやす所】-落ー母
  そたいめ志へるい見しきこと越
  なけく佐るへき々尓もこえ
  と可起りあ連者きこえさせやる可多なう
  てよのつ年尓なり尓个りいまはの
0088【よのつねになり】-(朱合点) 恋しきハうき世ノつねニ成ゆくを心ハ猶そ物思ひける(出典未詳、異本紫明抄・河海抄・孟津抄・花屋抄)
  尓のをく事侍し可者をろ可なら
  なむれものとめ可多起よなれとをくれ
  さ起多つほとの个ちめ丹ハへをよハ
  む尓志多可ひて布可起ほと越も」(40オ・1255⑬)

  らんせられ尓し可那となん王さなと能
  志けきころをひ王多くしのさし尓
  満可せてく/\とこもむも連い
  なら(あ$なり个れハち那可らハ多/\
  尓あ可春へらるへうてなんひころを
  春くし尓个るとゝなと能をみ多り
  さ満みきゝ尓徒个てもやこのみち
  のやミ越者さるも尓てかゝる御中らひの
  布可くおもひとゝめ个んし者可り
  きこえさ春る尓いと徒きせ春なんとて」(40ウ・1256④)

  志者/\おしのこひ者那うち可見(朱))あさ
  や可尓个多起もの可らなつ可しうなまめい
  多り者那こゑ尓なり
  あ者れなること者その徒年な起よ能
  さ可にこそハい見しとてもくひな起
  こと尓やハと(ハと&ハと)とし徒もりぬる志井て
  徒ようさ満しるを佐ら尓おほし
  多るさ満のいとゆゝ志きまて志ハしも
  堂ちをくれましきやう尓
  者春へていとう可りけるみのいまゝて」(41オ・1256⑨)

  な可ら閑く可た/\尓者可那きよの
  春ゑのありさ満をへ春くへき尓やと
  いと志つくなんをの可らち可き
  な可らひ尓てきゝをよハせ(ひ&ハせ)やうも个ん
  者しめ徒可多より(/\&より)さ/\うけひききこえ
0089【うけひき】-承諾
  さりしと越おとゝ能御心むけもくるし
  う尓もよろしきやう尓おほしゆるい多る
  希しきなと能し可者佐ら者ミつ可ら
  をきてのをよ者ぬなり个りと思給
  なしてなん見奉るを可くゆめ能やうなる」(41ウ・1257①)

  こと越見給る尓思給へあハ春れ者者可那き
  みつ可ら本となんしうハ徒ようも
  あら可ひきこえまし越ともひな越
  いとくやしうそれハ可やう尓しももひより
  さりき可しみこ堂ちハお本ろけ
  のと那らあしくもよくも可やう尓よつ
  き尓く可らぬこと那里とふる
  め起尓ハおもひしをいつ可多にもよら
  春な可尓うきすくせなり个れ者
  な尓可者かゝる徒いて尓个ふり尓もまきれ」(42オ・1257⑥)

  んハこの御身能多めのきゝなとハ
  こと尓くちをし可る満し个れと佐りとても
  志可春くよ可尓志徒むましうハなし(ハな(朱))
  か那しうみ多てまつりいとう連しう
  あさ可らふらひのひ/\尓なり
  める越ありか多うもときこへさら
  ハ可能ちきりあり个る尓こそハともふ
  やう尓志もみえ佐りし御心者へなれと
  いまハとてこ連可れ尓つけを起个る
  ゆいこんのあハ連なる尓なんうき尓も」42ウ
0090【うきにもうれしきせは】-(朱合点) うれしきもうきも心ハ一にてわすれぬ物ハ涙なりけり(明融臨模本付箋35 後撰1188、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄・岷江入楚)

  うれしきせ者まし里个るとていと
  い多うない遣ハひなり大将と見尓
  えためらハ春あやしくいとこよ
  なくおよ春けへりし可ゝるへう
  てやこの二三年こ那多なんい多う
  志めりてほそけ尓みえし可者
  あまりよのことハりを日志り
  かうなりぬるすミ春きてかゝるた
0091【すみすきて】-(朱合点) とにかくニ物ハおもはすひたゝくみうつすミなハのたゝ一すちに(明融臨模本付箋36 拾遺集990・人丸集14、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  めしう徒くし可ら春かへりてハあさ
  や可なるか多のほへく(く(朱))うすらくも能」(43オ・1258③)

  なりとなん徒年尓は可/\し可ら
  いさめきこえ志可はあさしと思給へりし
  よろつよりも尓まさりて个尓可の
  おほしなけくらん御心うちのか多し希
  け連といとこゝろくるしうも侍かな
  なつ可しうこまや可尓きこえ
  やゝ本とへてそひ(ひ$い(朱))可能五六年
  この可見なりし可とな越いと王可や可
  尓なまめ起あひ多れてそも
  こ連ハいと春くよか尓をも/\しくおゝし」(43ウ・1258⑦)

  き希ハひして可本のミいと王可うきよら
  なる尓春くれへる王可き々ハ
  も可那しさもすこしま起連てみい多し
  まへち可き佐くら能いとおもしろき
  をとし者可りハとうちおほゆるもいま/\
0092【ことしはかりハと】-(朱合点) 古今 深草(クサ)野への(明融臨模本付箋37 古今832、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・休聞抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
  志き春ちなりけ連者あひみむことハと
0093【あひみむことはと】-(朱合点) 古今 春ことに花ノさかりハ(尊経閣文庫本付箋05・明融臨模本付箋38 古今37・古今六帖4050、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  くちすさひて
    しあ連は可ハら尓に本ひ个り
0094【時しあれは】-夕霧
  可多へ可連尓しやと能さくらわさとなら(ら+(朱))
  すしなしていとゝう」(44オ・1258⑫)

    このハやな起のめ尓そ多万ハぬく
0095【この春ハ】-宮息所
  さ起ちるゆくゑ志ら者ときこえ
  いとふ可きよし尓ハあらいまめ
  しうかとありと者い者れ多まひし
  ういなり个り个尓めや春起きほと能よう
  いなめりと見給うや可てち志の大殿
  まいりへ連者き見多ちあま多も
  志希りこ那多尓いらへとあれ者おとゝ
  のいて井の可多尓入給へ里ためらひて多い
  めんしへり布りか多うきよけなる」(44ウ・1259⑤)

  か多ちいとやせおとろへてひけなとも
  とり徒くろひハ年ハ志けりてやの个う
  よりも希尓や徒連へりより
  いと志のひ可多け連者あまりおさまら
  見多れおつそ者したな个れとへハ
  せめてもてかくしとゝもり王起
  御中よくもしをと見給多ゝ
  布り尓ふりおちてえとゝめハ春きせぬ
  とゝもきこえ可ハし一条
  まうて多まへるありさ満なときこえ」(45オ・1259⑨)

  いとゝしく者流さめ可とみゆるまて
  のきの志徒く尓となぬらしそへ
  ゝむ可み尓可能や那きのめ尓そと
  あり徒る越可いへるをへハめも
0096【奉り給へハ】-致ー
  みえ春やとをし志ほりうちひそミつ
  見給さ満連いハ徒ようあさや可尓
  ほこり可な个しきこりなく
  王ろしさるハこと那るな可め連とこの
  多万ハぬくとある布しの希尓とおほさるゝ
  尓み多れてひさしうえためら」(45ウ・1260①)

  ハ春者ゝ可くれへりしなん
0097【君】-夕
0098【御はゝ君】-葵上

  よ尓可那しきと能きハ尓ハおほえしを
  ハ可起りあ里てみる春く那うある
  こともかゝ流あらハなら可な
  ひもかくろへてなむありける者可/\し
  からほやけもすてハ春やう/\
  なり徒可さくら井尓徒个てあい多
  む/\をの可ら徒き/\尓ほうなり
  なと志てとろきくちをし可るも
  い尓布れてあるへしかう布可起おもひハ」(46オ・1260⑥)

  その可多能よのおほえ徒可さくら井も
  おもほえ春多ゝことなることな可里しみつ
  能ありさ満のミこ多へ可多く古ひし
  り个れな尓者可り能こと尓て可さます
  へ可らむと越あふきてな可めゆふくれ
0099【ゆふくれの雲のけしき】-(朱合点) 夕暮ノ雲ノ気しキをみるからニなかめしとおもふ心こそつけ(明融臨模本付箋41 新古今1806・和泉続集129、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚 古今743・古今六帖255、休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  能个しき尓ひいろ尓可春みて者那
  ちり多るこ春ゑともをも个ふそめと
  めこのゝむ可見尓
    この志多能志徒く尓ぬ連てさ可佐ま尓
0100【このしたの】-致仕のおとゝ子ニヨソヘタリ
  か春見のろもき多る可な大将きミ」(46ウ・1260⑪)
0101【大将のきミ】-夕霧

    な起もハさり个んうちすてゝ
  ゆふ遍能可春ミき多れとハき見
0102【弁のきみ】-衛門督おとゝ也
    うらめしや可春見のろも多れきよと
  よりさ起尓のちり个ん王さな
  よ能つ年ならい可めしうなんあり个る
  大将のゝき多の可多を者さ流もの尓て
  殿と尓すきやうなともあ者れ耳
  布可起者へをくハへ可の一条尓も
  徒年尓とふらひきこえう徒きハ可りの
  うのそこ者可となうちよけ尓」(47オ・1261④)

  ひとつ那るよも能こ春衛もを可しうみえ
0103【ひとつ色なる】-(朱合点) みとりなる一色とそ春ハみし(古今245、河海抄・孟津抄)
  王多流をふ屋とハよろつと尓
0104【もの思ふやとハ】-(朱合点) 古今 鳴わたるかりの涙や(古今221・新撰和歌88、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄)
  つけて志つ可尓ほそくくらし可年
  連いの王多りへ里にハもやう/\あ越ミ
  いつ王可みえ王多り古ゝか志この春那
  こうす起ものゝかくれの可多尓よもきも
  ところゑ可本なりせんさい尓い連て
  徒くろひしも尓ま可せて志个り
  あひむらすゝきも堂能もし个尓
0105【一むらすゝきも】-(朱合点) 古今 君かうへし一むらすゝき虫の音の(古今853・古今六帖3704、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・一葉抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  ひろこりてむしのそハんもひ」(47ウ・1261⑨)

  やら流ゝよりいともあハ連尓个くて
  王けいりいよす可希王多して尓ひ
  いろのきろも可へ志多る春起可け
  春ゝし个尓みえよ起ハらハのこまや
  可尓に者める可さみの徒まかしら徒きな
0106【かさみ】-汗衫
  ほのみえ多るお可しけ連とな越めおと
  ろ可るゝなり可し个ふハ春のこ耳
  井へハ志と年さしいて多りいと可ろら
  なるおましなりとて連いの
  おとろ可しきこゆ連とこ能ころなや」(48オ・1261⑭)

  しとてより布しへるかくきこえ
  起らハ春ほとまへのこ多ちと
  ふことなけなる希しき越見給いと
  あハ連なりかしハきとかえてとの
  のより个尓わ可や可なして盈多さし
  かハし多る越い可なるちきりに可春衛
  あへるのもしさよなとの志の
  ひや可尓さしよりて
    こと那らハなしの尓ならさなむ
0107【ことならハ】-夕霧 如此
0108【ならしの】-なるゝ心也

  者もりののゆるしありきとみ春の」(48ウ・1262⑤)
0109【はもりの神】-故衛門督ニタトフルナリ

  とへ多てあるこそうらめし个れとて
  なけし尓より井へりなよひす可多ハ多
  いとい多う多越やき个るをやとこれ
  可連徒き志ろふこのあへ志ら遍き
  こゆる少将き見といふして
    柏木尓者もり能可見ハ満さすとも
0110【柏木に】-宮息所
0111【はもりのかみ】-我やとヲいつかは君かならの葉のならしかほにもおりにおこする としこ返事 かしは木に葉もりの神のましけるをしらてそおりしたゝりなさるな 左大臣仲平

  春へきやと能こ春ゑ可うちつけ
  なると能者尓なんあさう思給へなりぬる
  ときこゆ連者个尓とおほ春尓すこし
  ほゝゑミぬみや春いさりいて希」(49オ・1262⑩)

  ハひすれ者やをらゐな越里う起
  思給へ志徒む月日徒もる个ち
  め尓やみ多りちもあや志うほ連/\
  志うて春くしかく多ひ/\可さ年
  させ給御ふらひのいとか多しけなき尓
  思給へおこしてなんとてけ尓なやまし
  希な遣ハひなりもほしなけくハ
  よのとハりなれといとさのミハい可ゝよ
0112【よのことハりなれと】-(朱合点) 松風のふけはさすかにわひしはた世のことハりと思ふ物から(後撰250、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄)
  ろつのことさるへき尓こるめれさす可尓
  かきりあ流よ尓なんとなくさめきこえ」(49ウ・1263①)

  このそきゝしよりハ
  あハ連个尓い可尓ハら王れなる
  こと越とりそへてほ春らんとおもふも
  多ゝならい多うとゝめてあり
  さ満もひきこえ个りか多ちそいと
  まほ耳ハ盈も能しまし个れといと
  みくるしうか多ハらい多き尓多
  春ハなとてみるめ尓よりをも
0113【みるめにより】-(朱合点) 伊勢の海人の朝な夕なニ(古今683・古今六帖2025、異本紫明抄・紫明抄・河海抄・孟津抄)
  さるましき尓越もまとハ春
  へきさ満あしや者せのミこ」(50オ・1263⑥)

  いひもてむ(む$ゆ(朱))可ん尓ハやんことな可るへ个れと
  おもほ春いまハむ可し尓おほしな春
  羅へてうと可らもてなさせへな
  王さと个さうひてハあらんこ
  尓个しき者ミてきこえな越し春可多
  いとあさや可丹てけ多ちも/\しう
  そゝろ可尓そみえ个る可能おとゝハよろつ
0114【そゝろかに】-央(スルト)
0115【おとゝは】-六条院の御事也

  のなつ可しうな万め起あて尓
  あひきやう徒きへること能ならひな起
  なこれハおゝしう者なや可尓あ那きよら」(50ウ・1263⑪)

  と布とみえ尓本ひそ尓ゝぬやとうち
  佐ゝめ起てしうハ可やう尓ていていり
  ハまし可者な々いふめりいうしやう
0116【いうしやうくんかつかに】-衛門唐名ニ金吾将軍といへハ相違なし 時平子 右大将保(ヤス)忠墓ヲミテ紀在昌(マサ)作詩右将軍カ墓草初秋ナリ(明融臨模本付箋44)
  ん可徒可尓者しめてあ越しとうち
  地春さひてそれもいとち可起よのこ
  なれハさ満/\尓ち可うとをうみ多る
  やうなりし尓多可起もく多
  れるもしみあ多らし可らぬハな起も
0117【あたらし】-恡(アタラシ)
  むへ/\しきか多越者さるもの丹て
0118【むへ/\しきかた】-芸能ヲ云也
  あや志うなさけを多て堂る尓そ」(51オ・1264②)

  も个れ者佐しもあるましき
  や希女房なと能としふるめ起多るとも
  さへこひ可なしみきこゆましてうへ尓ハ
  あそひなと能おりことにもまつおほし
  いてゝなん志の者せ个るあハ連衛門督
  といふことくさな尓と尓つけてもい者ぬ
  なし六条院尓ハましてあハ連登
  おほしいつ事月日尓そへておほ可り
  この王可御心ひとつ尓ハ可多みと
  なしへとのおもひよらなれ者」(51ウ・1264⑦)

  いと可ひなしあきつ可多尓なれ者この
  者ひ井さりなと

イ本
源四十八歳自春至秋以詞哥為巻名」(52オ・1264⑫)

(白紙)」(52ウ)

【奥入01】文集
     五十八自嘲詩
    五十八翁方有後静(シツカニ)思堪(タヘタリ)喜亦堪嗟(ナケク)
    持盃祝願無他語慎(ツヽシテ)(ナカレ)[禾+頁](カタクナニ)(ヲロカナルコト)似汝耶(チニ)
 (クワン)(頭注)
     白楽なくして尓のそむ人也
     五十八尓て者しめて男子むまれ多り
     むまるゝをそき尓よりて生遅
     其子尓む可ひて徒くり个る詩也
【奥入02】妹与我呂」(53オ)

かし王起(墨) 一校了(朱)」(表表紙蓋紙)