First updated 06/14/2001(ver.1-1)
Last updated 10/25/2022(ver.3-1)
渋谷栄一翻字(C)

  

明 石

凡例
1.『大島本 源氏物語』(1996年5月 角川書店)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名と区別するため太字で表示した。
3.平仮名はそのまま平仮名」で表示した。
4.変体仮名は字母で表示した。
5.片仮名はそのまま片仮名で表示した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、より元の字母の漢字に近い字形には「1」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し方には「2」と表示した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記は小字体で表示した。
8.本文中の朱点及び朱書きは朱色で表示した。
9.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。

「あかし」(題箋)

  な越雨風やますり志つまらて
  ころ尓なりぬいとゝ王ひ志起可春志ら
  須きしか多さ起可なしきありさ満
  尓徒ようしも盈おほしなさ春い可尓
  まし閑ゝ里とてんこともま多よ
0001【都に帰らんこと】-伊周<チカ>上洛例
  にゆる佐連裳なくてハ王らハれなるこ
  こまさらこれよ里ふ可きをも登
  めてやあと多えなましとおほ春尓
  可勢尓さハ可佐(佐<朱>△イ<墨>、△イ#)連亭な能いひ徒多
  へん事後まて(+△)いと可ろ/\志きや」(1オ・441①)

  なかし者てんとおほしみ多る尓も
0002【夢にもたゝおなしさまなる物】-すまの巻に見えたり
  おしさ満なるのミき徒ゝ万徒ハしき
  こ遊と見給万なくてあ氣く類ゝ
  尓そ遍ていとゝおほ徒可な
  く閑くな可らを者ふら可し徒る尓
  やとほそうおほせかしら佐しいつ
  遍くもあらぬそらの見多連尓いて堂ち
0003【そらのみたれに】-雨風はけしきをいふ
  まいるもな二条院よりそあな可ち
  尓あ屋しきす可多尓てをち万いれる
0004【あやしきすかたにて】-蓑かさきたるすかたをいふ
  みち可ひ尓て多尓とた尓御覧し」(1ウ・441⑥)
0005【みちかひにて】-[足+爰]<ミチカヒ><左> \<朱合点> 篁日記 玉ほこの道かひなりし君なれハ跡はかもなくなるとしらすや<右>(篁集14、花鳥余情・紹巴抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)

  王くへくもあら須まつをひハらひ徒遍き
  志つおのむ徒ましう尓お佐さるゝも
  王れな可らか多し氣なくし尓个る
0006【かたしけなく】-辱ノ字也 身もはつかしき心なり
  ほと日志ら類御文尓あさましくをやミ
  なきころの希しき尓いとゝさへとつる
0007【空さへとつる】-くもりふたかる心ナリ
  ちして可めやる可多なくな無
    浦風やい可尓らむおもひ屋る
0008【浦風や】-紫上
  うちぬらしまなきころ尓かなしき
  とも可起あつへり日起あくるより(日起あくるより<朱墨>)
  いとゝ見きハ満さりぬへく可起くら春ち」(2オ・441⑩)
0009【みきはまさりぬへく】-<朱合点> 水際<ミキハ> 君こふる涙おちそひ此川のみきハまさりて思ふへらなり 貫之(貫之集730、孟津抄・花屋抄)

  志尓もこの雨風いと(いと<朱墨>)あやしき
  佐としなりとて仁王會とおこなハるへし
  となむきこえ尓まいり可ん多
  めなとも春遍てみちとちて万徒りこ
  も
た多てなむ者可/\志うもあら
  春可多くなしう可多りな
  ことゝおほせハいふ可しうてまへ尓めしいてゝ
  とハせゝ連いの能をやミなくふりて
  /\いて(+て)つゝ(つゝ$)ろ尓な連い
  ならぬこと尓おとろきいと可くそこ」(2ウ・442①)

  とほる者可りの飛ふりい可つち能志つまら
0010【ひふり】-氷也 雹<アラレ>
  ぬことハさりきないみしきさ満尓
  おとろきおちてをる可本のいと可ら起丹も
0011【からき】-辛苦
  ほそさ満さり个るかくし徒ゝ盤つ起
  ぬへき尓やとおほさるゝ尓
  あ可つきよりい見しう布き志本多
  可うみちてをとあらい者本も
  もの古るましき个しきなのな
  日らめくさ満佐ら尓い者む可多なくて
  可ゝ里ぬとおほゆる尓ある可起り佐可しき」(3オ・442⑦)

  王れハい可なる徒ミ越を可してかく
  可なしき越みるらむちゝハゝ丹もあ飛
  ミす可なしきめこの可本をもミて志ぬへ
  きとゝな氣く御心を志つめてな尓
  者可りのあやまち(+尓)て可この起さ尓
  きハめんと徒ようおほしなといと
  可し个れハ/\のミて具ら佐ゝ氣させ
0012【ミてくら】-幣
  住吉ち可起佐可ひをし徒めまも
0013【住吉の神】-守往来舟
  里万こと尓阿と越多給神らは
  春氣へとほくの大願を多をの」(3ウ・442⑫)

  をのつ可らのをハさる尓て可ゝ流
  ま多な起連い尓志津ミぬへきこ
  能いみ志う可なしきをゝ古してす古し
  おほゆる可起りハ尓可盈てこ能御身
  ひとつをすくい多てまつらむととよみ
  てもろこゑ尓佛神し多てまつる
  帝王ふ可き尓屋しなハれ
  能多のしミ尓おこりし可と布可き
  う徒くしミおほ屋志万尓あ万ね志つ
0014【御うつくしミ】-慈
0015【しつめる】-沈

  めるとも可ら越こそおほくう可遍し可」(4オ・443③)

  い万な尓むくひ尓可古ゝ羅よこさ満な
  浪風尓ハお本ゝれハむ天地とハり
  ミなくて徒み尓あ多り徒可さをとら連
  を者な佐可ひをさりてくれや春
  きくなけき閑く可なしき
0016【かくかなしき】-これよりハ源氏の君の祈祷の趣なり上いへるハつきしたかふ人々の願をいふ
  め越さへ(+ミつきなんと春るハさきの
  むくひ可此世を可し可神仏あ起ら可尓
  まし万さハこ能う連へや春めへと見
  可多尓むきてさ満/\能を多
  又海可能里う王うよろつ堂」(4ウ・443⑧)

  ち尓を多てさせいよ/\なりとゝろ
  きてハしま春尓徒ゝき多る羅う尓
0017【おはしますにつゝきたる】-延長八年六月十八日清涼殿霹靂
  おち可ゝりぬ本の越も盈あ可り亭らうハ
  や遣ぬ万しゐなくてあ類可起り万
0018【たましゐ】-魂
  と婦うしろの可多なるおほ井とのとお本し
  きう徒し多て万つりて可ミとな
  く堂ちこみていと羅う可ハしくな
  とよむい可つち尓もをとら春ハ春
  み越春り多るやう尓て尓个りやう
  やうな越りあし志めりも」(5オ・443⑬)
0019【風なをり雨のあし】-桂嶺瘴来雲似墨洞庭春尽水如天折子原

  みゆる尓このおましいとめつら可なる
  もいとか多し氣なくて志ん殿尓可遍し
  う津してまつらむとする尓屋遣の
  里多る可多もうとまし希尓こら
  能ふミとゝろ可し満と編る尓み春なとも
  みなふきちらし亭个りをあ可してこ
  ハとたとりあ遍る尓ん春し
  ておほしめくら春尓いとあ者多ゝし
  佐しいてゝ志本のち可くみちき个る阿と
  もあらは尓こりよ勢帰波あらきを」(5ウ・444④)

  をしあけて可めをハしま春
  ち可起世界越志りきしか多
  さ起のうちおほえとやかくやと者可
  者可志う佐とるもなあやしき阿万
  ともなとの多可きお者する
  てあつまり満いりてきゝも志り者ぬ
  ことゝも越さ盈徒りあ遍るもいとめつ
  ら可なれと(+えイ<朱>、#)をひもハゝ(ゝ#らイ<朱>、イ#)者春この
  万志ハしや万佐らましかハ志ほの本りて
  のこる可らまし多春けをろ可」(6オ・444⑨)

  ならさり个りとい婦をきゝいと本そ
  志といへハをろ可
    尓ま春多すけ尓閑ゝ羅春ハ
0020【海にます】-源氏
0021【神】-底筒男中筒男表筒男
  志本のや越あひ尓佐春ら遍なまし日ね
0022【しほのやをあひ】-しは(は$ほ)の八百会 万葉ナリ ふかき心ナリ日本記ニハしほの八百重とあり同心ナリ あらしほの(の+シホノ)やをあひにやくしほのからくも我ハ老にけるかな 公任卿(和歌九品14、異本紫明抄・河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  春にいりもミ徒るのさハ起尓さこそいへ
  い多うこうし尓个れ盤尓もあら春うち
0023【こうし】-劫の字なるへし くたひれはてたる心ナリ
  まとろみ可多し遣なおまし
  ハ多ゝよ里居給へる尓故院ゝおハしまし
0024【故院】-桐
  志さ満な可ら堂ちとかくあやしき
  春るそとててをとりて日き多て」(6ウ・444⑭)

  住吉のみち日起まゝにハ者や布
  なてしてこ能を佐りねとの者春いと
  うれしく亭閑しこき御影尓王可れ多て
  まつり尓しこな多さ満/\可なしき
  のミおほく連ハい万ハこの起さ尓
  をや春てましときこ盈へハ
  いとあるましきとこれハ多ゝいさゝ可な
  のむくひな尓ありしあや
  まつことな可りし可とをの徒可らを可しあ
  里个れハつミ越ゝ(ゝ$お)ふるいと万なくて」(7オ・445⑥)

  この越可へり佐りつれといみしきう
  連へ尓志徒むをる尓多へ可多くてうミ
  尓いりな起さ尓の本りい多く古うし尓多れと
  可ゝ類徒いて尓内裏尓そう春遍きことの
  ある尓よりないそ起の本りぬると(△&と)て
  ち佐りあ可す可なしくてとも尓万い
  里なんとなきいりあ氣へ連者
  もな可本能ミきら/\として
  のちもせ氣ハひと万連るこゝちし
  て雲哀尓たなひ个り年比夢」(7ウ・445⑪)

  尓もみ多てまつらてこひしうおほつ可な
  さ満を本の可なれと佐多个尓み多てまつり
  つるのミ可け尓おほえ可く可なしひ
  をきハめ徒きなんとしつる越多すけ耳
  可个りへると尓おほ春尓よくそ可ゝ流
  さ者起もあり个るとこりたのもしう
  うれしうおほえと可起りなむねつとふ多
  可りて/\なる御心まとひ尓うつゝの可な
  きこともうち尓もい羅へをい万春
  こしきこえ春なりぬることゝいふせ佐尓」(8オ・446②)

  やみえふとと佐ら尓ね入給へと佐ら
  めもあ者てあ可可多尓尓个り起さ
  尓ちいさや可なるよせ人二三人者可り
  このやとりを佐してまいる
  らむとゝへハ明石よ里さきの可見
  志本ちのふ年よそひて万いれる(△&源少
0025【しほち】-新発
0026【源少納言】-良清
  納言さふらひハゝいめして
  里さんとい婦よしきよおとろきて入道
  ハかの(+の)とくゐにてころあひ可多ら連(+つれイ)と
  わ多くし尓いさゝ可あひうらむること」(8ウ・446⑦)
0027【わたくしにいさゝか】-良清か明石入道の女を心かけたるを入道ゆるさぬ事をうらむる也

  るせうそこを多尓かよ者さてひさしう
  ぬるをまきれ尓い可なること可あ
  らむとおほめく御夢ともお本し
  あ者春ることもありてハやあへとのへ盤
  尓いきてあひ多りさハ可り者氣し可り
  つる可勢尓い徒のま尓可ふなて志徒ら
  と盈可多具おもへりいぬるつい多ち農
  ひさ満ことなる徒遣志ら春る
  こし可ハ志むし可多きとおもふ
  へし可と十三日尓あらたなる志類しミせ」(9オ・446⑬)

  舟よそひまう氣て可な雨風や万
  はこの尓をよせよ登かね志め春
  ことのし可ハみ尓能よそひをまうけ
  てまちし尓い可めしき雨風い可徒ち
  のおとろ可しつ連ハ可と尓(+を)
  志むしてをた春く類多くひおほう
  个る越もち井させハぬまてもこのい万
  志めの越春くさすこのよし越徒け
  んとてい多しつる尓あや志き
  ほそこの尓徒きるこ満こと尓」(9ウ・447④)

  志るへた可者春なん古ゝ尓(+も)もし志ろ
  志め春ことや徒らんとてないとハゝ可り
  おほくれとこのよしを(を<墨朱>)申給へといふ
  よしきよや可尓徒多へ申君おほし
  まハす尓遊めうつゝさ満/\志つ可な
  さとしのやうなる事共きし可た
  行末お本しあ者せよのきゝ徒
  多へんそし里も屋春可らさるへき
  を者ゝ可り亭万ことのの多すけ尓も
  あら無をそむくこれより満」(10オ・447⑨)

  さりて王らハれなるめをやみむう徒ゝ
0028【うつゝ】-現
  (+さ満<朱>)能くるし者可なきこと越
  も徒ゝミてよりよハひまさりもしハ
  多可くよのよせい万きハまさ流尓ハ
  なひき志多可ひてむ氣越堂
  るへきり个り志りそきてと可な
0029【しりそきてとかなし】-功成名遂<トケテ>身退者天之道 老子
  こそさ个志きもい日をき个れ
  个ふ(ふ$尓)かくをき者めよ尓起め(+の)可き
  里をくし徒さら尓のち能あとの
  ハふ具とて裳希起もあら」(10ウ・447⑭)

  能もちゝ御門をしへありつれ
0030【ちゝ御門】-桐
  ハな尓と可ハ(ハ#)う多可ハむとおほして
  志らぬせ可い尓めつらしきうれへの
0031【しらぬせかいに】-源
  可起りみつ連とこのよりとてとゝ
  ひをこ春るもなゑな
  月日者可里越故郷
  な可めうれしき徒りをな無かの
0032【うれしきつり舟】-<朱合点> 浪にのミぬれつる物を吹風のたよりうれしき海人の釣舟(後撰1224・古今六帖2862・貫之集553、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  志つや可尓かくろふ遍きく満
  なんやとの可起りなくよろこひ可しこま
  里ともあれ可くもあれ者て」(11オ・448⑤)

  ぬさき御舟尓多てまつれとて連い農
0033【御舟に】-源明石へ
  志多しき可起り四五人者可りして堂て
  まつりぬ連いのいてきてとふやう耳
0034【とふやうに】-舟をはやとりといふ事あり 風土記 住吉ノ大倉<オホクラ>むき(き+テトヘ)せ(せ#)ハこそはや鳥といはめいつれはや鳥(風土記18、休聞抄・紹巴抄・岷江入楚)
  あ可し尓つきゝ者ひ王多る可多
  まといへとあや志きまてみゆる
  の者満能さまけ尓いととな
  志氣うみゆるのミな可ひ尓そむき
  个る入道羅うしめ多る/\う見の徒ら
0035【入道の】-明石
0036【らうしめ】-領ナリ

  尓も可くれ尓もと起/\尓つけて遣ふを
  さ可春へきな起さのとまおこなひをし」(11ウ・448⑩)

  て後世と越日春まし徒へきミつ
  のつらい可めしき堂う越多てゝ三昧
  おこな此世まうけ尓の多(+<朱>)ミ越可りを
  さめのこり能よ者ひつむ遍きい年能くら
0037【よはひつむへき】-<朱合点> 拾秋ことにかりつるいねハつミつれと老にける身そ置所なき 忠見(拾遺集1124、河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  まちともなおり/\尓つけ多るみ
  ありて志あつめ多り可し本尓おちてこ
  のむ春めなとはを可への屋と尓う徒し
  て春ませ个れハこの者満能多ち尓
  すくおハしますより御車尓多てまつ
  里う徒る本とやう/\(△△&う/\)佐しあ可りて本の可尓」(12オ・449①)

  てまつるより王春れよハひのふる
  ち志てゑミさかへて(+まつ)住吉かつ/\
  お可ミ多てまつる月日をて尓盈た
0038【月日の光を】-わかなの巻に明石の入道の夢に月日の光を手にとるとみたりその夢に思あハすへし
  てまつり多るちしていとなミ徒可うまつ
  ることハりなりさ満をハ佐ら尓
  い者す徒くりなし多る者遍多ち多
  ていし無さいなとのありさ満盈もい者
  ぬ入江ゑ尓可ゝはのい多りすく
  な可らんゑしハ可起をよふましとみ遊
  ろの春ま井よりハ古よなくあきら可尓」(12ウ・449⑥)

  なつ可し(+き)志つらひな盈な春して
  春まゐ个るさ満な氣尓やむこ
  な/\尓ことなら須盈む尓ま者ゆき
  さ満ハまさりさ満尓そみゆる春こし
  志つまりてハ御文ともきこ盈
  いれ里し使ハい万ハいみしきミち耳い
  亭多ちて可なしきめ越みるとなき志
  徒ミてあ(+の)春万尓とまり多る越めして
  尓あ万連るともおほくたまひて
  つ可ハすむ徒ましきい能りの志ともさる」(13オ・449⑪)

  遍き/\尓ハこのありさ満くハ
  志くいひつ可ハすへし入道者可り尓盤
0039【入道の宮】-藤壺
  めつら可尓てよミさ満なときこ盈二條
  あ者れなりし本との可遍里ハ可起
  も屋り者春うちをき/\をしのこひ
  徒ゝきこ盈个しきとな
  い見しきめの可起りを徒くし者てつる
  ありさ満な連ハい満者と日者なるゝ
  のミまさり連と閑ゝ見をみてもと
0040【かゝみをみても】-紫上の哥須磨の巻に見えたり
  能可けのハな類ゝよな起をかくお」(13ウ・450②)

  本徒かなく(く#)く(+な)からやと古ゝら可なしきさ満/\
  のう連ハしさハ佐しを可れて
    者る可尓もおもひ屋る可な志らさりし
0041【はるかにも】-源氏返
  よりをち尓うらつ多ひして
  なるちのミしてさめ者てぬ本とい可耳
  ひ可ことおほ可ら無とけ尓そこ者可とな
  可起見多りへる志もそいとま本しき
  そ者めなるをいとこよな御心佐しの
  本とゝ/\てまつるをの/\古郷
  尓ほそ氣なること徒て春へ可めりをや」(14オ・450⑧)

  みな可りし个しきこりなく春
  ミわ多りてあさり春るあ万とも本こら
0042【あさりする】-<朱合点> あさりするよさのあま人ほこるらし浦風ぬるみ霞わたれり(恵慶集1、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  氣な春満ハいと本そくあ万のい者
  屋もまれなりしを志氣きいとひハ
  志し可と古ゝ盤佐万ことにあハれな
  ことおほくてよろつ尓おほしなくさまる
  あ可しの入道おこなひ徒とめ多るさ満
  いみしう日春まし多る越多ゝこの
  む春め日とりをもて王つらひ多る个し
0043【むすめ】-明石上
  きいと可多者らい多きまて/\もらし」(14ウ・450⑭)

  うれへきこゆ御心ち尓もお可しときゝを起
0044【おかしときゝをき】-わかむらさきの巻にて北山にてよし清か物語せしなり
  れ盤かくおほ盈なくてめくり
  ハしたるも・さるへき契あるにやと
  ほしな可ら可うを志つめ多る
  こなひよりほ可のハし
  のも多ゝなるよりハい日(日$<朱>)し尓可ふと
0045【いひしにたかふ】-<朱合点> ほとふるもおほつかなさもおもほえすいひしにたかふとはかりハうし(出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  おほさむも者つ可しうおほさる連盤
  个しき多となしとにふ連て
  者せありさ満な遍てな春もあり个る
  可な遊可しうおほされぬる(る<墨><朱>)しもあら須」(15オ・451⑤)

  古ゝ尓は閑しこまりてみ徒可らをさ/\
  まいらもの遍多ゝり多る志ものや耳
  佐ふらさるハあけくれミ多てまつら
0046【さふらふ】-入道
  本しうあ可すおもひきこ盈ておもふ
  可なへ舞と仏神をいよ/\ねんし多てま
  徒るとしは六十者可り尓なり多れといとき
  よ遣尓あら万ほしうおこなひさら本ひ
0047【おこなひさらほひ】-勤行によりてやせさらほいたる心ナリ 髐ナリ
  て
能本とのあ亭者可なれハ尓やあら無
  うちひ可ミ本れ/\しきことハあれと
  尓しへのか(か$こ)と越も志りてきたな可ら」(15ウ・451⑨)

  よし徒きることもまし連ゝハ昔物
  可多りなとせさせてきゝ尓春こし
  徒連/\のま起連なとしおほや遣
  わ多くしいとまなくてさ志もきゝを起
  者ぬよの婦ることゝも具徒しいてゝかゝ
  類をもをもさらまし可ハ佐う/\
  志くやとまて个婦ありとおほ春
0048【けふあり】-興
  ましるかう者なれきこ遊連といと氣多
  ハつ可しきありさ満尓さこそいひし
  つゝましうなりておもふことハまゝ」(16オ・452①)

  尓も盈うちいてきこえぬをもとなうく
  ちおしと者ゝといひあ者せてけく
0049【はゝ君】-尼
  佐うし見ハをしなへてめや春
0050【さうしみ】-明石上
  きぬせ可ひ尓尓ハ可ゝ流もおハ
  志个りとてまつり志尓徒希て
  の志られていとハる可尓日きこえ个る
  おや多ちのかくおもひあつ可ふをきく尓
  もに氣なと可な多ゝなるよ
  里ハあハれな四月尓なりぬ可遍の
  さうそく御丁の可多ひらとよしある」(16ウ・452⑥)

  さ満尓しいて徒ゝよろつ尓つ可うまつりい登
  なむをいとおしう春ゝろなりとおほ勢登
  さ満のあくまてあ可り多るさ満の
  てなさ(さ$る)尓おほし遊るして見給よりも
  うち志きり多とふらひとも遊ミな
  くおほ可りのとや可なる夕月夜尓うミ
  のう遍くもりな盈王多れるも春み
  な故郷池水思日ま可へられ
  い者む可多なくこひしきこい徒可多登
  なゑなちし多ゝめのまへ」(17オ・452⑪)

  尓みやらるゝハあ者ち志万个りあハと
0051【あはと】-<朱合点> 阿波渡也 渡ナリ 躬恒哥 淡路にてあわとはるかにミし月のちかき今夜ハ所からかも(新古今1515・古今六帖332・躬恒集463、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  者類可尓(+なと)の
    あ者とみる阿者ちの志万能あ者れさへ
0052【あはとみる】-此哥のあハと見るハ海のうへにあはのやうに淡路嶋のうかひ出たる心ナリ 日本記にも潮水のあハこりて嶋となるといふ事あり
  のこるくまなく春めるよ能ひさしう
  てふれ者ぬきむを布くろよりとりいて
  者可なく可起ならへるさ満を・ミ
  多てまつるもや春可ら尓可なしう
  おもひあへりかう連うといふてをある可起り
0053【かうれう】-<朱合点> 廣陵
0054【てを】-琴ノ秘曲 嵆康か花陽の亭にして神人に会テ傳たる曲也 此神人ハ昔の伶倫の変化也
  日き春ましへる尓かのを可への
  日ゝき尓あひて者せあるわ可」(17ウ・453②)

  尓志ミておもふ遍可めりとも
  (+きゝ)王くましきこのも可のも能志者ふる
0055【このもかのも】-此おもてかの面なり
0056【しはふる人】-柴振人 皺古人
  ともゝ春ゝろ者しくて者まを日きあ
  里く入道盈多へて具やう多ゆミ
0057【くやう法】-三密六度供養法也
  ていそきまいれり佐ら尓そむき尓
  もとり可遍し日いてぬへくのち
  の尓ね可ひところのありさ満も日(日#おもふへ)やら
  類ゝさ満可ななく/\めてきこゆ
  #)御心尓もり/\能あそ可能
  と布えもしハこゑのいてし佐万尓」(18オ・453⑧)

  /\尓つけてよ尓めてられしありさ満
  み可とより者しめ多てまつりてもて可し
  徒きあ可め多てまつりしを能う遍
  も我御身のありさ満もおほしいてられて
  ちしまゝ尓可起なへるこ
  も春こくきこゆ流もとゝめあへ
  春を可遍尓ひ王)のととり尓屋りて
0058【笙】-箏歟
  入道ひ王の法師尓なりていとお可しうめつ
  らしきて日とつ布多徒日き多り佐うの
0059【ひとつふたつひきたり】-四の緒におもふ心をしらへつゝ引あるけ共しる人もなし 兼盛集 小右記ニもあり
  とまいり多連ハ春こし日起さ満/\」(18ウ・453⑬)

  いミしうのミ日きこ盈多りいと佐し
  もきこ盈ぬのね(+た)尓おり可らそハ満
  さるものなる越はる/\と物のとゝこほり
  なつらる尓/\春秋の者那も
  みちのさ可りなるよりハゝそこ者可と
  なう志个れる可氣とも満め可しき耳
  くひなのうち多ゝき多るハ
0060【たか門さして】-<朱合点> またよひにうちきてたゝく水鶏かなたか門さしていれぬなるらん(出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  佐してと尓おほゆもいと尓
0061【ねも】-琴
  いつることゝも越いとなつ可しう日起な
0062【こと】-琴
  らし多るも御心とまりてこれハ」(19オ・454④)

  徒可しきさ満尓て志と氣なうひき多る
  こお可し个れと大方尓の入道
  あひな具うちゑミてあそ者すよりな
  しきさ満なるハいつこの可な尓
  延喜てより日起徒多へ多ること
  志(=イ)多い尓なんなぬるをかうつ多な
  尓てこののことは春てわ春れぬる
  をのせち尓いふせおり/\ハ可起な
  しをあ屋志うま年ふものゝ
0063【あやしう】-明石上事箏上手也
  ねむ尓可の大王て尓かよひて」(19ウ・454⑨)
0064【せむ大王】-延喜帝御事

  ふしのひ可見ゝ尓ま徒可勢をきゝ
0065【山ふしの】-<朱合点> 松風に耳なれにける山伏ハ琴をことゝもおもハさりけリ 寿玄法師<左>(出典未詳、花鳥余情・弄花抄・一葉抄・細流抄・休聞抄・紹巴抄・花屋抄・孟津抄・岷江入楚)
0066【まつかせ】-
<朱合点> 琴のねに峯の松風通らしいつれのをよりしらへそめけん 斎宮女御<右>(拾遺集451・拾遺抄514・古今六帖3397・和漢朗詠集469・斎宮女御集57、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  わ多し尓やあらんい可てこれの(の#も<朱墨>)志のひ
  てきこしめさせてし可なきこ遊
  類まゝにうちわなゝきておとすへ
  可めりと越こと登も聞給まし可り
0067【君こと越】-<朱合点> 上手ニテマシマセハ
  氣るあ多り尓ね多きわさ可なとてをし
  やりあやしうよ里(△&)ハん日
0068【あやしう】-入道
0069【笙】-女箏ヲモ引ハ入道かめ此云出ナリ

  きとるり个る佐可のつ多へ尓て女五
0070【女五の宮】-嵯峨の御女五宮繁子内親王
  の佐るのな可能す尓氣る
0071【上す】-上手
  を春ち尓てとり多てゝ徒多ふる」(20オ・454⑭)

  なし春へてゝい万をとれ
  類/\かきなての屋り者可り尓
0072【かきなて】-掻 撫
  のミある越こゝ尓可うひきこめへり个る
  いと个うあり氣る可ない可て可ハきく
  遍きとのきこしめさむ尓ハな
0073【きこしめさむ】-入道
  者ゝ可り可らんおまへ尓めし亭もあき
0074【あき人のなかにて】-<朱合点> 琵琶引ノ女ハ商人ノ成妻
  のな可尓て多尓こ婦ることきゝ者
0075【ふること】-楽天なかされて江州の司馬なれる時事似源
  や春个れひ王なむ満こと能ね
  日起志つむるい尓しへも可たうしを
  おさ/\とゝこほることななつ可しき亭」(20ウ・455⑤)

  なと春ちこと尓んい可てたとる尓
0076【いかてたとるにか】-たと/\しきにハあらすよくたつねしりたる心ナリ
  らんあらのこゑ尓まし類ハ可な
  くもおもふへられな可ら可起徒むる
  氣可しさま起るゝおり/\裳りなと
  春起ゐ多れハお可しとおほして佐うの
0077【すき】-数寄
0078【さうのこと】-入道はしめハひわを引たるを又箏を給てひかせきゝタマヘル也 △△(△△#)

  とり可へ亭堂万者せ多りけ尓いとすく
  して可い日き多りいまの尓きこえ
  春地ひきつけててつ可ひいとい多うから
  め起遊のね布可う春万し多り伊勢
0079【ゆのね】-由の音に上手へたのあるナリ
0080【伊勢の海】-催馬ー

  のときよ起なき佐尓可ひや」(21オ・455⑩)
0081【きよきなきさに】-<朱合点> 伊せの海のきよきなきさのしほかひになのりそやつまんかひやひろハん 伊せ海(催馬楽「伊勢海」、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)

  日ろ者むなゑよ起尓う多者せ
  王れも/\(△&)しとりてこゑうちそへ
0082【われも】-源氏の君のとき/\拍子をとりてうたひ給ふ
  をと日起さし徒ゝめてきこ遊く多
  なとめつらしきさ満尓てまいら/\尓
  さけしひそしなとしてを能徒可らわ春
0083【しひそし】-殺也 つよく酒をしゐてうれへしめたる心ナリ
  連しぬへきのさ満ない多く深行
  まゝに者万春ゝしうて裳いり
  可多尓なる満ゝ尓すミ万さり志つ可なる本と
  尓御物語のこりなくきこ盈てこの
  す見ハしめし本との徒可ひを徒と」(21ウ・456①)

  むるさ満可きく徒しきこえこのむ春
0084【むすめ】-明石上事
  めのありさ満とハす可多り尓きこ遊お可し
0085【おかし】-源心中
  きものゝさす可にあハれときゝ布しも
  阿りいととりか多きれと王可きミ
0086【いととり申かたき】-入道詞
0087【わかきミ】-源

  かうおほえきせ可い尓可り尓てもうつろひ
  おハしまし多るハもしとしころおいほうし
  のいのり申侍神仏能あ者れひおハしまして
  志ハしの本と御心越もなやましたてまつる
  尓やとなんおもふたまふるゆゑハ春
  みよしの可ミをたのミ者しめ多てまつりて」(22オ・456⑥)

  この十八ねん尓なめの王らはい登
0088【めのわらは】-むすめの事なり
  きなしよ里おもふ心侍としこ
  能春秋と尓可なら須可能や(△△&や)しろ尓まい
  類ことなひるよるの六時能徒とめ
  尓ミつ可らの者ち春能うへのね可ひをハ
  さるも能尓て多ゝこのをた可き本い可
  なへたまへとなんしさ起のよ能ちき
  里徒多なくてこそかくくちおしき
  可つとな氣めをや大臣のくら井を
0089【をや大臣】-入道
  たもち堂まへりきミつ可らかく井な可」(22ウ・456⑪)

  のたミとなり尓て徒き/\さのミお
  とりまから(□#ら)はな尓尓可なんと
  かなしく思侍これハむまれしと起
  よ里多のむところない可尓して
  このた可き尓多てまつらんと
  布可き尓よ里本と/\尓徒氣てあま多
0090【ほと/\につけて】-わか紫の巻に代/\の国のつかさなとさる心はへみすれとさらにうけひかすとあり あまたの人のそねミをふとハこの事なり
  のひとのそねミをおひ見の多め可ら
  め越ミるをり/\もお本く連と佐ら
  くるしミとおもひの可起りハ
  せ者き衣尓も者くゝみ閑く」(23オ・457②)
0091【せはき衣にも】-<朱合点> 後拾遺いとけなき衣の袖ハせはくともこふのうへをハなてつくしてん 公任<右>(後拾遺434・公任集555、花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 同 おもひやれ△(△#また)鶴の子のおさなきを千代もとなつる袖のせはき越 藤三位<左>(後拾遺444)

  な可ら春てなハ可尓もまし
  里う勢ねとなんをきてと春へて
  まねふ遍くもあらぬことゝも越うちな
  きうちなききこ遊をさ満/\
0092【君も】-源氏
  おほし徒ゝくるおり可らうちくミつゝ
  きこしめすよこさ満の徒ミ尓あ多りて
  日可氣ぬせ可いにたゝよふもな尓の徒ミ
  尓可とおほつ可な日徒るこよひ農
  可多り尓きゝあ者春れハけ尓あさ可ら
  さ起の能ちきり尓こそハと尓な」(23ウ・457⑦)

  なと可ハかく佐多可尓日志り个るこ
  をいまゝてハ徒希者さり徒ら
  れしよ里のつ年な起もあちき
  おこなひよりほ可のくて月日
  をふる尓もみなくつを連尓个りかゝる
  とハ本のきゝな可らい多つらをハ
  ゆゝ志起尓こそおもひ春てめと
  くしつる越さらハみち日きへき尓こ
  あな本そき日とりねくさめ尓
  もとの可起りなくうれしとへり」(24オ・457⑫)
0093【かきりなく】-入道

    日と里ねも志りぬやつれ/\と
0094【ひとりねハ】-明石入道
  日あ可しのうらさひしさをまして
  おもひへ王多るいふせさ越をし者可
  らせへときこ遊類希者ひうち王な
  きれとさ春可尓ゆへな可らされとうら
0095【されとうらなれ】-<朱合点> 浦なれたるや浦の浦哉風ハふかねとさゝら浪立 葛城 催馬楽(出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  なへらハとて
    堂ひころもうら可なしさ尓あ可し可ね
0096【たひころも】-けんし
  もむ春者須とうちみ多れ
  へるさ満ハいとそあいきやう徒きいふ
  よしな氣者ひな志らとも」(24ウ・458④)

  きこ盈徒くし堂れとう類さしやひ可
  ことゝも尓可起なし多連ハいとゝをこ尓
  可たくなしき入道ハへもあらハれぬ
  遍可めりおもふこと可つ/\可なひぬる
0097【おもふこと】-源心入道ノ心歟
  して春ゝ志う日ゐ多る尓農ひる
  徒可多を可へ尓御文徒可ハす者つ可しき
  さ満なめるも/\可ゝ類くま尓
  日の本可なることもこもるへ可めると
  可ひし古万のくる見の可ミ尓盈
0098【くるみ色】-面薄青裏白
  なら須・日起徒くろひて」(25オ・458⑨)

    をち古ちも志らぬゐ尓な可め王ひ
0099【をちこちも】-源氏
  可すめし屋との春衛をそとふおもふ尓
0100【おもふにハ】-<朱合点> 古今おもふにハしのふる事そまけにける色にハいてしと思ひし物を 業平(古今503・古今六帖2682、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  ハと者可りやあり个ん入道し連須
  まちきこ遊とてかの尓きゐ多り
  个るも志る氣れハ徒可ひいとま者遊き
  まてゑ者す御返いとひ佐しうち尓いり
  てそゝの可せとむ春めは佐ら尓き可す
  者つ可し希な御文のさ満尓佐しいてむ
  て徒きも者つ可し(+う)徒ゝまし御程
  我身の本と日(日#丹)こよなくてちあしと」(25ウ・458⑭)

  てよりふしぬいひ王日て入道かくいと
0101【かく】-返事
  可しこきハゐな可日てるたもと尓徒ゝ見
0102【たもとにつゝみ】-<朱合点> うれしさを何につゝまんから衣たもとゆたか(か+ニ)たてといはましを<右>(古今865・新撰和歌317・古今六帖3276、河海抄・一葉抄細流抄・岷江入楚) うれしさ越昔ハ袖につゝみけり今夜ハ身にもあまりぬる哉<左>(新勅撰456・和漢朗詠773、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  あ万里ぬる尓や佐ら多まへもをよ
  ひぬ可しこさ尓なさるハ
    な可むらんおなゐをな可むるは
0103【なかむらん】-入道返し
  日もおな日なるら無とな見給
  いと春起/\志やときこ盈多りみちの
  く尓かミ尓い多うふるめ起多れと可きさ満
  よし者ミ多り氣尓も春起多る可な
  めさ満しうみつ可ひ尓なへ亭なぬ」(26オ・459④)

  堂万もなと可つけ多りんし可き
0104【たまも】-<朱合点> 伊勢の海に年へてすミし海人なれとかゝる見るめハかつかさりしを いせ(後撰1279、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
0105【せんしかき】-宣旨かきとハ仰かきなり さきの文を入道のかきたるをいふナリ

  ハ志らんとて
    い婦せ具も古ゝろ尓もの越なやむ可な
0106【いふせくも】-源氏
  やよやい可尓とゝ婦もなミい日可多ミとこ
0107【やよやいかに】-古今やよやまてやよ時雨 ヤマ也(古今152・古今六帖4446・小町集7、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
0108【いひかたミ】-
<朱合点> 恋シトモマタ見ヌ人ハイヒカタミ心ニ物ノナケカシキ哉(出典未詳、花鳥余情・孟津抄・岷江入楚)
  の多ひハいとい多うなよひ多るう(△&う)すやう
0109【なよひたるうすやうに】-うつくしき紙をいふ
  尓いとう徒くし氣尓可きたまへり王可起
  能めてさらむもいとあまりむもれい多
  可らめてたしとハみ連と春らひな
  ぬのいミしう可ひな个れハ/\
  尓あるものと多つ年志り尓つけて」(26ウ・459⑩)

  くまれて佐ら尓連いのとうな
0110【とうなき】-動
  せめてい者れてあさ可らす志め多るむら
0111【せめて】-入道ニ責ラレテ
0112【しめたる】-たき物にしめたる也

  さ起の可ミ尓春見徒きこくう春く万
  きらハして
    おもふらんこゝろ(ろ+の)ほとやゝよい可耳
0113【おもふらん】-明石上
  ま多能きゝ可なやま無ての
0114【また見ぬ人】-明石上 我身事
  さ満可きたるさ満なやむことな
  い多うをとるましう春め起多り
  ことおほえお可しと見給へとうち志き
  里て徒可者さむもめつゝ(ゝ#&徒<朱墨>)まし个れハ」(27オ・460①)

  二三日遍多て徒ゝつれ/\なるくれもし
  あ者れなる本のなとやうにま起ら
  してり/\おなし里ぬへ
  きをし者可りて可起可ハしに氣
  な可ら布可う日あ可り多る个しき
  も亭ハやましとおほ春可らよし
  きよか羅うしていひし遣志きもめさ満
0115【らうして】-領
  志う年比心つけてあらむをめのま遍
  尓日た可へんもいとおしうおほしめくら
  されてすゝミまいらさる可多尓ても」(27ウ・460⑤)

  ま起らハしてんとおほせ者多/\
  やむことなき者(△&者)のよ里もい多
  日あ可りて多け尓もてなしきこ盈
  多れハくら遍尓てそ春起个る
  をかく遍多ゝりてハいよ/\お本徒可な
  く日きこ盈い可尓せ満したハふ
0116【たハふれにくゝ】-<朱合点> ありぬやと心ミかてらあひミねハたわふれにくきまてそ恋しき(古今1025、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  連尓くゝもある可な志のひてやむ可へ堂
0117【しのひてや】-紫上の事也
  てまつりてましとおほしよハるをり/\
  あれとさりとも可くてやハとしを可さ
  ねんとい万佐ら王ろきをハと」(28オ・460⑩)

  おほし志つめ多りとしおほや遣
  尓ものゝ佐とし志起りてさハ可しき
  おほ可り三月十三日可みなり日ら
0118【三月十三日】-これハ須磨にての事也
  め起雨風さハ可しきみ可と能御夢
  尓御門御まへの見者しのもと耳
0119【院の御門】-桐
  多ゝせ氣しきいとあしうて
  らみきこ盈させ閑しこま里てお
  ハしま春きこ盈させともおほ可り
  源氏御事り个ん可しいとおそろし
0120【いとおそろしう】-朱
  ういとおしとおほし亭き佐き尓きこえ」(28ウ・461①)
0121【いとおし】-源シ
0122【きさき】-大后

  させ个れハなとふりみ多れ多
  しなることは佐そ可ろ/\
  志きやう尓おほしおとろくましきこ
  とゝきこ盈志尓めあハ
0123【にらミ給し】-桐
  せし希尓やめ△(△#)王徒らひ
0124【御めわつらひ】-朱雀院の御目わつらひ給ふ事ハ三条天皇即位の後御耳目あきらかならさる事をおもひよせたり それハ民部卿元方の霊又寛算供奉か霊ともいへり
  てへ可多うなやミ徒ゝ志見
  も尓も可起りなくせさ勢
0125【おほきおとゝ】-二条太政大臣
  きおとゝうせとハりのよ者ひ
  な連と徒き/\尓をのつ可らさ者可し
  きことある尓大宮こ者可となう王」(29オ・461⑥)
0126【大宮】-大后

  徒らふれハよハりやうなる
  尓おほしなけくことさ満/\な
  此源氏満ことにお可しなき尓
0127【おかし】-犯
  可く志徒無な可な春このむくひ
  ありなんとなむおほ盈いまは
  とのくら井をも多まひてむと多ひ/\
  お本しのもとき可ろ/\志き
  やうなるへし徒ミ尓おちてをさりし
  んを多尓春くさす遊るされむ
0128【三ねん】-獄令云凡流移人至配所六載以後聴仕即本犯不応流而特配流者三載以後聴仕
  ことハよのい可ゝいひつ多へんなき」(29ウ・461⑪)

  さ起か多くいさめほし者ゝ可るほと
  尓月日可さなりてやミとも佐万/\尓
  をもりまさらあ可し尓連いの
  のことなる尓日とりねも満めや可尓
  王ひしうて入道尓もおり/\か多らハせ
  と可くま起らハしてこち万いら勢よと
  の多まいて王多りハむこと越ハある万
  志うお本し多る越佐うし見ハ多佐ら
0129【さうしみ】-明石上事
  多つ遍具もあらいとくちおしきゝ
  ハの中人可り尓く多り多能」(30オ・462②)

  うちと遣こと尓徒きてさやう尓可ろら可尓
  か多ら婦者(者$王)さをも春な人数尓もお本
  さ連さらゆへ王れハいみしき物思
  をやそ遍ん可くをよひな越おもへ
  類おや多ちもよこもりてすく春
0130【よこもりて】-世にこもりゐたるをいふ又人のおさなき程をも世こもるといふ
  あいなのミ尓春ゑくゝ
  /\なをや徒くさむと
  て多ゝこの尓をハせ可ゝる御文
  可りをきこ盈可ハさむこそをろ可な
  ね年比をと尓のミいつ可ハさる」(30ウ・462⑦)

  能ありさ満をほの可尓多てまつ
  らんな日可けさ里し春まゐ尓て
  ま本な本の可尓多てまつり
  よになときゝ徒多へしと能ね
0131【御こと】-琴
  をも尓つけてきゝくれのありさ
  満おほつ可な可ら可くまてよ尓ある
  とお本し多つぬるなとこかゝ流あま
  のな可尓くちぬる尓あまることな
  連なとおもふ尓いよ(△&よ)/\者徒可しうて
  も遣ち可きこ
とは・日よらおや」(31オ・462⑫)

  多ちハ古ゝ羅の年比いのり能可な
0132【こゝら】-多
  遍きを日な可ら遊くり可尓多て
  まつりてお本しまへさらんい可な累
  なけきを可せんとやる尓遊ゝし具
  亭めて多きときこ遊とも徒ら
  い見しうもある遍きめ尓もみえぬ
  仏神を多のミ多てまつりて御心
  もすくせをも志らてなうち可遍し
  日み多れ多りハこののをと
0133【君】-源氏
  尓可ののねをき可者やさらすハ可ひな」(31ウ・463・③)

  くことつ年ハの志のひてよろしき
  ミて者ゝと可く日王つら婦をき
0134【思ひわつらふ】-明石上
  きいれ春てしともなと尓多尓志ら
0135【てしとも】-弟子入道のゆへにいふ
  日とつ尓多ちゐ閑ゝやく者可り志徒ら
  ひて十三日や可尓佐しいて多る
  尓堂ゝあ多ら能ときこ盈多り
0136【あたら夜の】-<朱合点>「あ多らとをゝなしくハ/阿ハれ志れらんせハや<朱>」(付箋01 後撰103・信明集99、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄) 万葉に新夜とも又悋夜ともかけり
  すきのさ満やとおほせ越し多て
  まつり日起徒くろひてふ可していて
  くる万はになく徒くり多連と
  とてむま尓て出給これミつと者可り」(32オ・463⑦)

  を佐ふら者せやゝと越くい流
  个りみちのもよもの/\わ多し
  おもふとちみ万本しき入江
0137【おもふとち】-<朱合点> 六帖 おもふとちいさ見にゆかん玉津嶋入江の底にしつむ月かけ(出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  尓もまつこひしき御事
  きこ盈や可てむ万日き春起て
0138【むまひきすきて】-すくに都へのほらはやとおもひ給ふナリ
  おもむきぬへくおほ春
    よの氣能こ満よ王可こふる
0139【秋のよの】-けんし岡の道にて 久方の月毛の駒を打はやめきぬらんとのミ君を待かな(古今六帖1430、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  ゐを可け連ときのまもみんとうち
  日とりこ多徒く連るさ満こふ可くい
0140【ひとりこたれ給】-都の事也
  たきまさりて見所ある春ま井な」(32ウ・463⑫)

  うミの徒らハい可めしうおもしろくこれハ
  心ほそくすミ多るさ満こゝ尓ゐて
  のこ須ことはあらしとおほしやら類ゝ尓
  物哀三昧うち可くて可ね
0141【たう】-堂
  可勢尓日ゝきあ日て可なしうい者
0142【いはにおひたる】-古今 たねしあれは(古今512・古今六帖2556、源注拾遺・源注余滴)
  尓おひ多佐しも者へあるさ満
  なり(り+前栽とも尓こゑを徒くし多り)古ゝ可しこのありさ満な御覧
  む春めすませ多と尓み可きて
  い連多るまくち氣しきこと(こと#)
0143【月いれたる】-<朱合点> 槙の戸をやすらひにこそさゝさらめいかに明ぬる秋の夜ならん<右>(出典未詳、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄) 月いれたる槙戸口ハ源氏第一詞と定家卿ハ申侍ると也<左>
  尓(尓#者かり)をしあけ多りうち屋春らひな可と能」(33オ・464③)

  かうまてハ盈多てまつらしと
  布可う氣可しうてうちと遣ぬ
  さ満をこよなうもめき多る可なさし
  もあるましききハの多尓可ハ可りいひ
  よりぬ連ハ徒ようしもあら須ひた
  里しをいと可くやつれ多る尓あな徒らハしき
  尓やと多うさ満/\尓おほしなやめり
  なさけなうをし多ゝむもことのさ満尓
  た可へりくら遍尓ま个んこ王ろ氣
  連なと見多れうらさ満遣尓物思日志」(33ウ・464⑨

  らむ尓こみせ万本し个れち可起
  ひも尓佐うのことの日きなされ
  多るも氣者ひ志と氣なくうちとけな
  可らかきまさくり个るみえてお可し希
  連ハこのきゝなし多ることをさへや
0144【きゝならしたる】-このほと入道の物かたりにせし事なとをかたり給ふ也
  なとよろつ尓の多まふ
    む徒こと越可多りあ者せも可な
0145【むつことを】-けんし 六帖 今更にむつことのねに引かゝりこけの山路をわすれやらなん(古今六帖1447、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  うきもな可ハさむやと
    あ氣ぬ尓や可てまと(と#と)遍る
0146【あけぬ夜に】-明石上
  いつれをとわきて可多ら無本の可なる」(34オ・464⑭)

  氣者ひ伊勢のミや春尓いとようお
  え多りな尓もなくうちとけてゐ多り
0147【なに心もなく】-明石上
  个る越かうおほえぬ尓いとわりなくてち可
  可り个る佐うしのうち尓い可亭可多め
0148【さうし】-障子
  个る尓可いと徒よ起を志ゐてもをし堂
0149【をしたち】-源ノ
  ち者ぬさ満なされとさのミもい可て可
  あらさ満いとあて尓そひ遍て者つ
  可しき氣ハひそ志多るかうあな可ちな
  个るをおほ春にもあさ可ら阿者れ
  なり御心さしのち可満さり春るなるへし」(34ウ・465⑥)

  徒ねハいとハしき可さもとく
  類ち春れハ尓志られしとおほ春も
  あ者多ゝ志うてこま可尓閑多らひをき
  ていて御文いと志のひて个婦ハある
0150【御文】-明石上
  あひな御心お尓なりや古ゝ尓も可ゝる
0151【あひなき御心のおに】-京のきこえなと思給ふをいふなり
  とい可てもら佐しと徒ゝミてつ可ひこ
  と志うももてなさぬをむ(+)い多くおも
  へりかくてハ志のひつゝ/\おハ春
  も春こし者なれ多る尓をのつ可らいひ
  さ可なあ万の古もや多ちましらん登」(35オ・465⑪)

  おほし者ゝ可るされ者よ登日な
  き多る越遣尓い可なむと入道
  可ひをハゝこの个しき
  をまつこと尓ハ春い万佐ら越見多るも
  いと/\おし氣な二條能つ
0152【二条の君】-紫
  尓ももりきゝ者むハ多者ふ連尓
  遍多てあり个るとうと満連
  多てまつらこゝろくるしうハ徒可しう
  おほさるゝ裳あな可ちなる御心佐しの本
  となり可し可ゝ類能こと越を(を#<朱墨>)ハ(ハ&ハ)さす可尓」(35ウ・466②)

  とゝめてうら遍里しおり/\なとて
  あやなき春さひこと尓つけても(+さ)ハれ堂
  てまつり个むなとゝ里可へさ満ほしう
  能ありさ満をみ尓つけてもひしさの
  なくさむ可多な氣連(+)れいよりも御文
  こまや可尓可起満ことや王れな可ら
0153【まことや】-文詞
  よりほ可なる佐りこと尓てうとまれ多て
  まつりし布し/\を思出(+<朱>)佐へむねい多き
  尓あやしうも能者可なをこそみ
  し可かうきこ遊ると者春可多り尓遍多」(36オ・466⑦)

  てなきハおほしあ者せよち可ひし
0154【ちかひしことも】-<朱合点>「れしとち可ひしことを(&を<墨>)あやまたは(多春ハ&たす<墨>)/み可さのもことハれ<朱>」(付箋02 出典未詳、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  こともと可起てな尓ことにつけて
    志ほ/\とまつそな可類ゝ可りそめの
0155【しほ/\と】-源氏何事に付けてもにつゝけてしほ/\と
0156【かりそめの】-あかしのうへの事也

  みるめハあ万能すさひなれともとある
  な尓く羅う多遣尓可起て者て尓(者て尓#)
  日可年多御夢可多り尓つけて
0157【忍ひかねたる】-これハ二条の君の返事の詞也
  あハせらるゝことおほ可るを
    うらくも日个る可那ち起りしを
0158【うらなくも】-紫の上也 心に表裏なきをいふ
  よりハ古盈しとおひら可なる
0159【松より波ハ】-古今 君ををきてあたし心を(古今1003、花鳥余情・休聞抄・孟津抄・岷江入楚) 浦ちかくふりくる雪ハ白波ノ末ノ松山コスカトソミル(古今326・拾遺集239・古今六帖717・興風集7・63・寛平后宮歌合143、孟津抄・岷江入楚)
  可らゝな可春め遍るをいと尓」(36ウ・466⑫)

  うちを起閑多くみこりひさしう
  のひのハす女思しも
0160【しのひの旅ね】-明石ノ上と
0161【女思しも】-明石上心中ありさま

  るき尓いまそ満こと尓もなけ徒へ
0162【身もなけつへき】-<合点> 拾おなしくハ君とならひの池ニこそ身もなけつとも人にきかれめ 興風(後撰855・古今六帖1678、異本紫明抄・紫明抄・河海抄) たつねくる身をしとわすハよさの海に身もなけつへき心ちこそすれ(出典未詳)
  きち春類春ゑ見し可けなるお
  や者可りを堂のもしき尓てい徒の
  尓見/\尓なるへき者さり
  志可とゝそこハ可となくて春くし徒る
  としハなと越可をもなやまし
  个むかうい見しう物思者しき耳こ
  そあり个れと閑ね亭をしハ可り日し」(37オ・467④)

  よりもよろつ尓可なし个れと多ら可尓
  もてなしてく可らぬさ満尓
  まつるあ者れとハ月日尓そへておほしま
0163【あはれと】-源心中
  せやむことなか多のおほつ可な
0164【やむことなき】-紫
  て年月を春くしひ(△&ひ)ゝなうち
  日をこ勢ら無可いとくるし个れハひ
  とりふし可ち尓て春くしゑを佐万/\
0165【ゑを】-源
  可起あつめてとゝも越可きつけ
  き具へきさ満尓志那しへりみむ
  尓志見ぬ遍きさ満(+なり)い可て可尓」(37ウ・467⑨)

  かよ婦御心二條あハれ尓
0166【二条の君】-紫
  なくさむなくおほ盈おり/\おな
  志やう尓ゑを可きあつ徒ゝや可て
  ありさ満尓きやう尓可起遍りい可
0167【にき】-日記
  なるへきさ満とも尓可あら可ハ
0168【年かハりぬ】-源氏廿七になり給ふ也
  里ぬく春りのとあり亭世中
  佐万/\尓のゝ志類う堂いのこハ
0169【たうたい】-朱
  大臣む春め承香殿女御者羅
0170【むすめ】-鬚妹
  尓とこ見こむまれ遍る尓な
0171【おとこみこ】-今上
0172【二に】-二歳事始具也

  へはいとい者氣那し春宮尓こそハ遊つ」(38オ・467⑭)
0173【春宮】-冷ー

  里きこ盈者めおほや氣のうし
  ろミをしをまつりこ徒遍き
  本しめくら春尓この源氏の可く志つ
  いと阿多ら志うあるましきと那
  連盤徒ゐ尓いさめ越むきて
  類され遍き佐多めいてきぬより
  御物の氣なやミさ満/\の
  佐としゝきりさハ可しきをい見しき
  徒ゝ志ミともをし志類し尓やよろ
  志うおハしまし个るめのなやみさへこの」(38ウ・468⑤)
0174【御めのなやみ】-朱ー

  をもくな物心ほそくおほさ
  連个れ盤七月廿可さね
  てへ可へりへき宣旨く多る徒ゐ能こ
0175【つゐの】-遂
  とゝおもひ志可とよのつ年なき尓つけて
  い可尓なり者つ遍き(+○尓)可となけき可う
  尓ハ可なれハうれしき尓そ遍てもこ能
  者と者なれ無こと越おほし
  なけく尓入道佐るへき日な
  可らうちきくよりむ年ふ多可りてお本
  遊連と日のことさ可へハゝこ」(39オ・468⑩)

  もひのかな2婦尓ハあらめな日な越春
  そのころハよ可なれなくか多ら六月
  可りよりく類しき个しきありてな
0176【心くるしきけしき】-みな月の比より明石の上たゝもなくなり給ふ也
  見个りかく王可連へき本となれハあや
  くなる尓屋あり个むありしよりも
  お本してあやしう物思へき尓も
  个る可那とお本しみ多るハ佐ら尓もい者
  春おもひ志つミ多りいとことハりなりや
  日の本可尓可那しき見ち尓い亭多ち
  し可と徒ゐ(=<朱>)尓ハめくりきな無と可」(39ウ・469①)

  徒ハおほしめも(めも#)なくさめきこの多ひハ
  うれしきいて多ち能や者
  みるへきとおほ春尓あハれなさふら
  /\ほと/\尓徒氣てよろこ
  おもふよりもむ可遍尓/\万いり
  心地よけなる越あ類しの入道涙
  くれても多ちぬさへ
0177【月もたちぬ】-七月になる也
0178【程さへ哀なる空】-これよりハ源氏の君の御心といふ

  氣しき尓そや徒可ら
  春ゝろなる尓てをハふら可春ら
  とさ満/\尓お本し見多れ多る越志れる」(40オ・469⑥)

  /\ハあなにくれいの具勢そと
  てまつりむつ可るめりころハ露人
  氣しき/\者ひまきれなと志
  へるつれなさ越このあや尓く尓/\(+の)
  徒くし尓可と徒きしろふ少納言
0179【少納言】-良清か事也
  志るしてきこ盈いてしハしめ能な(+と)
  ゝめ起あ遍るを多ゝなおもへり
  て者可り尓連いのやう尓い多くも
  ふ可さてわ多りへりさや可尓もま多み多
  万ハぬか多ちないとよし/\志う氣多」(40ウ・469⑩)

  きさ満してめさ満しうもあり个る
  春て可多くゝ地をしうお
  佐るさ流遍きさ満尓してむ可へむとお
  本しなりぬさやう尓そ可多らひなくさめ
  おとこの可多ちありさ満者多佐ら
  もいハ春としころのおこなひ尓い多く
  おもやせ遍るしもい婦可多なくめて多
  きありさ満尓てくるし遣なる个しき
  尓うちくミ徒ゝあハれふ可く契給へる者
  た可ハ可りをさい者ひ尓亭もなと可や万」(41オ・470②)

  佐らむとまてそ遊めれとめ亭多起耳
  志も我身をおもふも徒きせ
  聲秋尓ハ日ゝきことなやく
  可す可尓多ひきてとりあつめ堂る
  のさ満な
    この多ひハ堂ち王可るとももし本やく
0180【このたひハ】-源氏
  个ふりハおなしか多尓なひ可むとの多まへハ
    かき徒めてあ万の堂くも能おもひ尓
0181【かきつめて】-明石上
  いまは可ひなうら見多尓せ
  うちな起てこと春くなゝ類可ら佐るへき」(41ウ・470⑦)

  ふしのいらへなとあさ可らすきこ遊
0182【このつねに】-詞
  のつね尓遊可し可り給物佐ら
  き可せ多てまつらさり徒る越いみ志う
  うらさらは可多見尓も志のふ者可りの
  と越多尓とのよりもてをハし
  多りしきんのとゝ里尓徒可ハして
  ことなる志らへをほの可尓可起ならし
  類ふ可きの春めるハたとへん可多な
  入道え多へて佐うのととりて佐しいれ
  多りつ可らもいとゝさへそゝの可され」(42オ・470⑬)

  てとゝむへきか多な起尓佐そ者るゝなる
  遍し志のひや可尓志らへ多るいと春め
  き多り入道とのねを多ゝいまの
0183【入道の宮】-薄
  日きこ盈多るハいまめ可し
  うあなめてたときくゆきて可多
  ち佐へやらるゝことハけ尓いと可起りな
  とのねこれハあくまて日起春万
  しくゝね多きそまされるこ能
  御心尓多尓ハしめてあハれ尓なつ可しうま多
  みゝなハぬてなやましきほと尓」(42ウ・471④)

  日き佐し徒ゝあ可春おほさるゝ尓
  ころなとしゐてもさ佐り徒ら
  とくやしうおほさるの可起りさ起
  のをのミ志きんハ可起あ者する
  まての可多ミに登の多まふおんな
    さり尓多めをくめるひとこと越
0184【猶さりに】-明石上
0185【ひとことを】-琴によせたり
  徒きせぬね尓や可けて志の者んいふとも
0186【ねにやかけて】-なくねによせたり
  なきくち春さひをうら
    阿ふまての可多見尓ち起る能をの
0187【あふまての】-けんし
0188【中のを】-六より十まての緒をいふにや調子のをなるへし

  志らへハことに可ハら佐ら無このた可」(43オ・471⑨)
0189【たかはぬさき】-早速心

  ハぬさ起尓可な春あひみむと堂のめ
  めりされと多ゝ王可れむ王りな
  をおもひむせひ(ひ#)多るもいとことハりなり
  堂ちあ可ふ可くいてむ可
0190【たち給】-源京へ七月
  へ能/\もさハ可し个れハ
  とま越者可らひて
    うち春てゝ堂つも可なしきうら
0191【うちすてゝ】-けんし
0192【たつもかなしき】-帰京の心をよせたり

  なこりい可尓と日やる可な可へり(可へり<朱>)
    遍徒るとまもあれてう起
0193【年へつる】-明石上 この哥の心ハうらみたる心ナリ
  可へる可多尓やを多くへましとうち日」(43ウ・472②)

  个るまゝなるをみ尓志のひへと本ろ/\
  とこほ連ぬ志ら/\ハ可ゝる春さ(さ#万)
  ひな連ととし古ろといふ者可りなへる
  をい万者とおほ春ハ佐もあることそ可し
  なとミ多てまつるよしきよ△(△#)なとハを
  ろ可なおほ春な無めり可しと尓くゝ
  そうれしき尓も氣尓个ふを可起り尓
  このな起さ越わ可るゝことな可りて
  くち/\志本多れい日(△&日)あへるともあめ
  里されとな可ハとてな入道遣婦の」(44オ・472⑦)

  まうけいとい可めしう徒可うまつれり
  志もの志なまて佐うそくめつら
0194【さうそく】-装束
  しきさ満ない徒のま尓可しあ遍个無
  と多りよそひハいふ遍くもあら
  みそ日つあま多可けた万ハす満ことの
  のつと尓志徒へきをくりとも遊へ徒
  きて日よらぬく万な氣婦多てまつる
  へき可りの佐うそく耳
    よ類尓多ち可さね多る堂ひ
0195【よる波に】-入道
  志本と个しとやのいと者むとある越」(44ウ・472⑫)
0196【しほとけし】-しほたれたる心ナリ

  御覧し徒氣てさ者可し个れと
    閑多見尓そ可ふへ可り个るあふこと能
0197【かたみにそ】-源氏
  可す遍多てんのころも越とて佐し
  ある越とて多てまつり可ふ御身尓なれ多る
0198【御身になれたる】-この用と御身になれたる御そを形見にとてとゝめおき給ふナリ
  とも越徒可者春け尓いま日とへ志のハれ
  きこと越そふる形見めり盈な
  尓尓本ひのうつり多るを可ゝ尓も
  志めさら入道いま者とを者な
  れとも个ふのをくり尓徒可うまつら
  ぬことなと申て可ひを徒くるもいと越し」(45オ・473③)

  な可らわ可きハわ(+ら)ひぬへし
    よ越う見尓古ゝ羅し本しむ
0199【よ越うみに】-入道 よ越いとふを海によそへたる也
  このきし越盈こそ者なれねのやミハ
0200【このきし】-このきしとハうき世のきしなり
  いとゝ満とひぬへく連ハ佐可ひまてた尓と
0201【さかひまて】-在所ノ
  きこ盈て春起/\しきさ満なれとお本し
  てさ勢おりハなと遣しきハる
  ミ志うとお本して/\うちあ可ミ
0202【うちあかミ給へる】-なかんとてハまつかほのあかくなるをいふなり
  遍るま見の王多りない者無可多な
  くみえ日春て可多起ちもあめれハ
  い満いとゝくミな越してむゝこ能春」(45ウ・473⑨)

  見可こ春亭可多个れい可ゝすへきとて
    こいてしけき尓おとらめや
0203【宮こいてし】-源氏
  登し布るを王可れぬるとてをしの
  こひ遍る尓いとゝほえ春志本多れ満
  さるち井もあさましうよろ本ふ佐う
0204【よろほふ】-父母恩重経云阿嬢懐子十月之中起座不安擎重担飲不下如長病人
  志ミのち堂とふへき可多なくて可うし
  も人尓見盈しと思日志つむ連と
  う起をもと尓て王りなとなれとうち
  春て遍るうら見の屋るか多な
  堂氣きことゝハ多尓志つめり者ゝ」(46オ・474①)
0205【はゝ君】-明石上母

  もなくさめ王ひてハな尓ゝかく徒くし
  なること越日そめ个無春遍てひ可/\
  志き尓志多可ひ个るをこ多りそ
  いふあな可まやおほし春つましきことも
  めれハ佐りともお本春登ころあら
  くさめて悠なと越た尓まいれ阿な
  遊ゝしやとてか多すミ尓より多りめ能
  と母君と日可める越いひあ者せ徒ゝ
  つし可い可亭おもふさ満尓て多てまつ
  ら無と年月を多のミ春くしいまや」(46ウ・474⑦)

  可なふとこそたのミきこ盈つれくる
  志きをもハしめ尓る可なとなけく
  をみる尓もいとおし个れハいとゝ本けられて
0206【ほけられて】-耄<ホレタリ>
  ひるハゝとひいをのミねくらよる者
0207【ひるは日ゝとひ】-一日ハぬる事はかりする心也 明石入道のありさま也
  くよ可尓おきゐてすゝのゑも志ら
  り尓个りとてて越ゝし春里亭あふ
0208【て】-手
  き井多りてしとも尓あ者められて月夜
0209【てし】-弟子
  尓いてゝ行道春るものハやり尓たふ連
  尓个りよしあるい者の可多そハ尓古しも
  徒きこなひてやミふし多る尓な」(47オ・474⑫)

  春古しま起連个るハな者の可た尓
0210【君は】-源氏
  わ多りて者ら遍志住吉尓もたいらか可
  尓て/\の者多しへきよし徒可
  ひしてさせ尓者可尓せう(+)見徒可ら
  ハこのひ盈まうてハすとなる
0211【せうえう】-逍遥
  盈うなとなくていそ起ま(ま#)いり二條
  尓おはし(+まし<朱>)徒きてこのとの
  もちしてゆきあひよろこひな
  とも遊ゝ志きまて多ちさ者き多
  女君も可ひな尓お本し春て徒る」(47ウ・475③)
0212【女君】-紫上

  うれしうおほさるら無も(も#)かしいとうつくし
  氣尓ひとゝの本りて御物思日の本と尓
  可りしくしの春こし(つ#へ)可連多る
  志もいみしうめて堂き越いまは可く亭
  みるへきそ可しと御心おち井る尓つけ亭
  ハ(ハ&ハ)可能阿可春わ可連し能おも遍りし
0213【かのあかすわかれし人】-明石上事
  さ満くるしうおほしやらるよ(よ&よ)とゝも
  尓かゝ類可多尓て御心いとまそなきや
  能とゝもなときこ盈いてへり
  ほしいて多遣しきあさ可らすみゆる」(48オ・475⑧)

  をゝなら春やてまつりわさ
  となをハハ春なほのめ可し
0214【身をハ思ハす】-<朱合点> 拾わすらるゝ身をハおもハすちかひてし人の命のおしくもあるかな(拾遺集870・拾遺抄351・古今六帖2967、大和物語118、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  を可しう羅う多くおもひきこえ
  可つみる尓多尓あ可ぬさ満をい可て可/\(可/\#)
  遍多て徒る年月あさましきまて
  おも本春尓とり可遍し世中もいとうら
  志うなほともなくもとの御位あらたまり
0215【もとの御位】-この間のくらゐハ参議の大将なれハすなハちその官位にあらたまりてやかて権大納言にあかり給ふ也
  てより本可能権大納言尓な徒き/\
0216【数よりほかの権大納言】-職員令大納言二人 寛平遺誡大納言勿過正権三人
  のもさるへき可起りハもとの徒可さ
  ハり尓ゆるさるゝ本と可れ多りし」(48ウ・475⑬)

  尓あへるちしていとめて堂遣なめしあり
  て尓まいり御前尓さふら
  まさりてい可てさるむ徒可しき春ま井
  尓とし遍徒ら無と多てまつる女房
  なとの御時さふらひて志ら遍類
  とも可なしくてい万佐ら尓なきさハき
  てきう遍も者つ可しうさへお本し
  されてよそひなとこと尓日起徒くろひ
  ていておハします御心ち連いな
  ろへさせ个れハい多うおとろへさせへるを」(49オ・476⑤)

  昨日个ふそ春こしよろ志うおほされ个る
  御物可多り志めや可尓ありて十五
  おもしろう志つ可なる尓む可し能
  こと可き(+<朱>)くつ(つ<朱>)しおほしいてられて志本多
0217【かきつくし】-詞
  連させ物心本そくを本さるゝなるへし
  あそひなともせきゝし
  もき可てうなり尓个る可なな(な#)との多満
  ハ春る耳
    わ多徒尓しなへうらふれ日類のこ農
0218【わたつ海に】-\<朱合点> 源氏 古今秋萩にうらふれおれハ足引の山したとよミ鹿そ鳴なる(古今216、河海抄・孟津抄・岷江入楚)
0219【ひるのこの】-蛭の子をよめるハ三とせといはん為也
  あし多ゝさりしハ遍尓个りときこえ」(49ウ・476⑩)
0220【あしたゝさりし】-かそいろハいかに哀とおもふらん三とせになりぬ足たゝすして(和漢朗詠697、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)

  へりいと阿者れ尓者つ可しうおほされて
    ハしらめくりあひ个ると起しあれ盤
0221【宮ハしらめくり】-御門返し 伊弉諾伊弉冊の尊天の御柱をめくりて一面にあひ給ふ事をいへり蛭の子足たゝぬともよせ侍り
  王可連しうら見のこす那いとな万め
  可しきありさ満な多め尓八講
0222【院の】-桐
  こな者るへきまついそ可せ春宮
  をてまつり古よなくおよ春け
  させめつらしうおほしよろこひ多る
  を可起りな多てまつり給御さへ
  も古よな具満さら越たも多せ
  者む尓者ゝ可りあるましく閑しこく」(50オ・477①)

  み盈させたまふ入道御心春こ
0223【入道の宮】-藤壺
  志ゝ徒めて多いめんの尓も
  もあらむ可し満ことやかのあ可し尓は可へ
0224【かへる浪に】-打おへりの人のかへりにつけて文やり給ふ也
  類御文徒可ハす日起可くしてこまや可
  尓かきめりよる/\い可尓
0225【波のよる/\】-<朱合点> 伊勢集 あまを舟われも思をつけてしを浪のよる/\まつと思ハん(出典未詳、異本紫明抄・花鳥余情・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
    なけき徒ゝあ可し能尓あさ
0226【なけきつゝ】-けんし 明石の浦をたちて都へのほるかと待給ふ心ナリ
  多つやと日屋る可那かのそち農
  む春め五節あいなくし連ぬおもひ
0227【物おもひ】-まさる心にいへり
  さめぬるちしてまくなき徒くらせて
0228【まくなき】-摩愚那岐別可習也
  しを可勢个り」(50ウ・477⑥)

    春満の越よせしふ那
0229【すまの浦に】-五節君
  屋可てく多せ越ミせ者やてなとこ
  よな満さり尓个りとおほせ
  者す
    てハかことやせましよせ多りし
0230【帰てハ】-源氏
0231【かことやせまし】-かこちやせまし也

  なこり尓ひ可多可りしをあ可春を可
0232【なこり】-浪をいへり 後いたつらに立かへりにし白浪の名残に袖のひる時もなし(後撰884・朝忠集12、異本紫明抄・花鳥余情・一葉抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  志登おほし志なこりなれハおとろ可され
  いとゝおほしいつ連とこのハさや
  うのふるまひ佐ら尓つゝミめりちる
  佐となと尓も多せうそこなとハ可り」(51オ・477⑬)

  尓ておほつ可な/\うらめし希な

  源氏廿六歳の三月十三日須磨より明石に浦つたひして
  廿七の七月帰京まて二年の事あり以哥并詞為
  巻名」(51ウ)

    せきふきこゆる行平中納言哥可尋
               能宣朝臣哥似之
  三五夜中新月色 二千里外故人心
  去年今夜侍清涼 秋憶詩篇獨断腸
  恩賜御衣今在此 捧持毎日拝餘香
  馬長無驚時變改 一葉一落是春秋
  史記
   趙高指鹿謂馬<秦二世時>
  王昭君
  翠黛紅顔錦繍粧 泣尋沙塞出家郷
」(52オ)

  邊風吹断秋心緒 瀧水流添夜涙行
  胡角一聲霜後夢 漢宮万里月前腸
  昭君若贈黄金賂 寔是終身奉帝王

  堂ゝこれ西尓ゆくなり 未勘
  うれし支尓もひとつなミ多そこ本れ个り
   文集 香鑪峯下社卜山居草堂
  五架之間新草堂 石階松柱竹編墻
  十年三月卅日別徽之於澧上
  十四年三月十一日遇徽之於峡中
  停舟夷陵三宿之別言不然者以詩終寔
」(52ウ)

  七言十七誼之中
  一別五年方見面 語到天明竟不眠
  生涯共寄蒼波上 郷国倶抛白日邊
  往事渺茫都似夢 𦾔遊零落半帰泉
  酔悲灑涙春盃裏 吟苦支顛暁燭前

   已上す満の万きの奥書也
             謬書之
」(53オ)

二校<朱>」(表表紙蓋紙)