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渋谷栄一翻字(C)

  

須 磨

凡例
1.『大島本 源氏物語』(角川書店 平成8年5月)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名と区別するため太字で表示した。
3.平仮名はそのまま平仮名で表示した。
4.変体仮名は字母で表示した。
5.片仮名はそのまま片仮名で表示した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、より元の字母の漢字に近い字形には「1」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し方には「2」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記等は小字体で表示した。
8.本文中の朱点及び朱書きは朱色で表示した。
9.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。

ま」(題箋)

  世中いと王つらハしくハし多起ことの
  まされハめて志ら春かほ耳ありへても
  こ連よ里まさ類こともやとおほしなりぬ
  かの春満ハむ可しこ春見可なとん(=<朱>)
  あり氣れい万ハいと佐と者なすこく
  てあ万のいゑ多耳まれ尓なときゝへと
  し遣くひ多ゝ遣多らむ春まゐハいと本
0001【ひたゝけ】-叨ハ人シケクカマヒスシキ心
  いな可る遍しさりとて見やこをと越さ可らん
  裳ふるさとおほつ可な可るへきを王るくそ
  おほしみ多るゝよろつときしか多ゆく」(1オ・395①)

  春ゑおもひ徒ゝ遣尓可なしきこといと佐万/\
  な里うき裳の日春て徒るい満
  ハとす見者なれなん事をおほ春尓ハいと春て
  か多起ことおほ可る可尓もひめあけくれ尓
0002【ひめ君】-紫上
  そへてハおもひなけきへるさ満のくるし
  うあ者れなるを遊きめくりてもあひ
0003【ゆきめくりて】-<朱合点>
0004【又あひ見む事】-古今 下ノ帯の道ハかた/\わかるとも行めくりてハあハんとそ思ふ(古今405・新撰和歌200・古今六帖3359・友則集59、岷江入楚・湖月抄)

  をかならすとおほさむ尓て多
  な越一二日ほとよそ/\にあ可しくらす
  おり/\多お本つ可なきもの耳おほえ
  本そうのミおもひへるをいくとせ」(1ウ・395⑥)

  そ能本とゝかきりあるみち尓もあらすあふ
  をかきり耳遍多ゝ里ゆ可ん裳さ多免
  なきや可て王可るへき可とて尓もやと
0005【かとてにもや】-<朱合点> 引 カリソメノ行カヒチトソ思コシ今ハカキリノカトテナリケリ(古今862・大和物語233、紫明抄・河海抄)
  い見しうおほえへハ志のひてもろとも耳
  もやとおほしよ類おりあれとさ類本そ
  可らんうミ徒らのより本可尓
  まし類もな可らん耳かくらう多
  さ満尓てひきくしつ(つ$<朱>)らむ裳いとつき那
  く王可尓も/\おもひの徒万なるへき
  をなおほし可へ春を女君ハいみし可らむ」(2オ・395⑪)

  みち尓もをくれきこ盈す多あらハと
  おもむけてうらめし遣尓おほい多かの
  ちるさと尓もおハしかよふことこ
  連な連本そくあ者れなるありさ満
  をこの可け尓かくれてものしへハお本し
  なけき多るさ満もいとことハりなり
  さり尓ても本の可尓てまつりかよひ
  /\志れぬをく多起給人
  おほ可り个る入道よりもゝのゝきこえ
0006【入道の宮】-藤ツホ御事
  やい可ゝとりなさむとわ可徒ゝまし」(2ウ・396③)

  个れと志のひ徒ゝとふらひつ年尓あり
  可しかやう耳あひおほしあハれをも
  多万ハまし可ハとうちおもひいて尓もさも
  さ満/\尓をのミ徒くすへ可り氣る
  ちきり可な徒らくきこ盈三月
0007【三月はつかあまりのほとに】-西宮左大臣安和二年三月廿六日左遷太宰府ニ
  者つ可あまりの本と尓なむ見やこを者
  なひ个る尓い徒とし裳志らせ
  ハすゝいとち可う徒可うまつりなれ多
  かきり七八人者可りとも尓ていとかす可尓
  いて多ち堂まふさるへき/\尓ふミ」(3オ・396⑧)

  者可りうちしのひひし尓もあ者れと
  の者類ハ可り徒くいへるハ見所もありぬへ
  可りし可と能おりのち農まきれ尓者可/\
0008【そのおりの】-作者詞
  しうもきゝを可すなり尓个り二三日か年
  てよ尓(△△&よ尓)かくれておほいとの尓わ多りへり
0009【おほいとのに】-摂政
  あんしろく類まのうちや徒連多る尓て
  くる満のやう尓てかくろへ△(△#い)りいと
  あ者れ尓ゆめとのミみ遊御方いとさひし
0010【御方】-葵上跡
  遣耳うちあれ多ちして王可
0011【わか君】-夕霧
  め能とゝ裳む可しさふらひし可尓」(3ウ・396⑬)

  ま可てちらぬかきりかく王多りへるを
  めつらしかり△(△#<墨朱>)こ盈てまう能ほりつとひ
  てみ多てまつる尓徒氣ても古と尓もの
  ふ可ゝ羅ぬ王可き/\さへよ能徒年な
  おもひ志ら連て耳くれ多わ可
0012【わか君】-夕霧
  いとうつくしうてされハし里おハし多
  さしき本と尓わ(△&わ)すれぬこあハれな連とて
  さ耳春ゑ多万へる遣しき志のひ
  可多氣那りおとゝこな多耳王多りひて
  多いめしへりつ連/\耳こもらせへ」(4オ・397④)
0013【つれ/\に】-摂政詞

  らむほとにとらぬむ可しも能か多
  裳万いりてきこ盈させむとおもふへ連
  とや万ひをもき耳よ里おほや遣
  尓も徒可うまつら春くら井をもかつ(つ$<朱>)し多て
  まつりて王多くしさ満尓はこし
0014【こしのへて】-蟄居人
  のへてむとものゝきこ盈日可/\し
  可るへきをいまは世中者可るへき尓も
  らねいち者やきよのいとおそろしう
0015【いちはやき】-最強 最早
  かゝ流御事堂まふ尓徒氣て
  いのちな可きハう具おもふえら類ゝ」(4ウ・397⑨)

  よの春ゑ尓も可那あめ能し多を佐可
  さ満尓なしてもおもふ多まへよらさりし
  ありさ満をまふれハよろついと
  あちきなくなんときこ盈日てい多う
  志ほ多とある古とも可ゝる裳さ起
0016【とあることも】-源詞
  のよのむくひ尓れハいひもて
  遊けハ多徒可ら能をこ多り尓なむ
  さしてかく官尺をとられ春あさ者可
0017【官尺をとられ】-除名事
  な類ことに可ゝ徒らひて多おほや遣
  のかしこまりなるうつしさ満尓て」(5オ・397⑭)
0018【うつしさま】-よのつねさまの心也

  世中耳ありふるハと可おも起王佐耳
0019【とか】-咎
  く尓ゝもしるをと越くハなち
  徒可者すへきさ多めなともるなるハ
  佐万ことなる徒ミ尓あ多るへき尓
  るな尓こりなき耳満可せてつれ
  なく春くしらむ裳いと者ゝ可りおほく
  これよりおほきなる者ち尓のそまぬ
  佐きをの可れなむとおもふ
  多ちぬるなこまやか耳きこ盈
  む可しのものか多り御事おほし」(5ウ・398⑤)

  の万ハせし御心者へな登きこ盈いて
  越しのてもえ日起者なち多
  万ハぬ尓もえ徒よくもてなし
  ハす王可きミのな尓くま起連
  ありきてこれ可連尓なれきこ盈
  い見しとおほい多り春起
0020【すき侍にし人】-葵上事
  おもふへ王するゝよなくのミい満尓可那
  しひこの御事なむもし
  らまし可ハい可やう耳おもひなけき
  らましよくそ見し可くて可ゝ類ゆめを」(6オ・398⑩)

  すなり尓个ると思給なくさめおさ
  那くものしう可かくよハひす起ぬる
  耳とまりなつさひきこえぬ
0021【なつさひ】-昵
  や遍多ゝ里ハむとまふるをな
  よろつとよ里も可なしうい尓しへ
  のも万こと尓お可しあ流尓てし裳
  か類耳あ多ら佐り个りさるへき
  尓て見可と尓も可ゝ類多くひおほう
  り氣りされといひいつる婦しありて
  こさること裳个れとさ満かうさ満尓」(6ウ・399①)

  思給へよらむ可多なくなむな尓(尓<朱>)おほくの
  ものか多りきこ盈三位中将裳万
  いりあひおほみきなと万いりふ尓
  ふけぬ連ハとまり/\まへ尓
  さふらハせもの可多りなとせさせ
  よりハこよなう志のひおほ春中納言
0022【中納言の君】-葵上女房
  のいへ盤盈尓可なしうおもへるさ満を
0023【いへはえに】-<朱合点> いえハえにふかくかなしき笛竹ノよこゑや誰ととふ人もかな<右>(新勅撰946・古今六帖3409、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄) いへはえにいはねはむねにさハかれて心ひとつになけく比哉<左>(新勅撰635・伊勢物語68・業平集107、異本紫明抄・河海抄)
  志れ春あ者れとおほ春ミな志つまり
  ぬる尓とり王きてか多らひこれ尓よ里
  と満りへるなるへしあけぬ連ハふ可う」(7オ・399⑥)

  いてふ尓ありあけのいとお可し
  ともやう/\佐可り春起て王つ可なるこ可け
  のいと志ろき尓ハ尓うすくきり王多り多
  こ者可となくかすミあひて能あハれ
  おほく多ち万されりすミのかうらむ
  をし可ゝりてとは可りな可め中納言
  君見多てまつりをくらむと尓や徒まとをし
  あ氣てゐ多いめむあら無ことこそ
0024【又たいめむあらむこと】-源氏御詞
  おもへハいとか多个れ可ゝ里けるよ越志らて
  や春く裳ありぬへ可里しろさしも」(7ウ・399⑪)

  いそ可てへ多てしよなとの堂まへハもの
  きこ盈春なく王可め能と農(△&
  してのおまへよりせうそ
0025【宮のおまへ】-葵上御母也
  こ盈へりつ可らきこ盈万本し
  か起くらすミ多ち多めらひ
  と尓いとよふ可ういてさせるもさ満か者り
0026【さまかはり】-葵上ノまします世ならハかくハあるましき心也
  ちのミし可なくるし起いき
  き本とハ志ハし裳やすらハせハてとき
  こ盈へれハうちな起堂まひて
    とりへも盈し个ふりもま可ふやと」(8オ・400②)
0027【とりへ山】-源ー
0028【けふりも】-葵上事也

  あ万のし本やくうら尓そゆく御返とも
  なくうちすしあ可王可れ盤かう
0029【あか月のわかれ】-<朱合点> 暁ノ別ハいつもおしめとも今日ノ今夜ニにる時そなき(出典未詳)
  のミやつくしなるし里遍るもあら
  む可しとのへハい徒となく王可れといふもし
0030【わかれといふもし】-江文通カ別賦ニ黯<アシキ>然トシテ銷魂者ハ唯別而已矣<ナリ>
  こそう多るなるな可尓も遣さハ
  くひある満しうおもふへらるゝほと可な
  者那こゑ尓てけ尓あさ可らすおもへりきこえ
  させ万本しき古とも々おもふ多まへな可ら
  多ゝ尓む春本ゝ連本とをし者可らせ
  き多な多まへむ尓徒遣ても/\」(8ウ・400⑧)
0031【いきたなき人】-若公事

  う起よの可れか多うおもふへられぬへ个れハ
  徒よう思給へなしていそきま可て
  きこ盈いてふ本とを/\のそきて
  多てまつるいりか多のいとあ可き耳
  いとゝな満め可しうきよら尓てものをお本い
  多る佐万とらおほ可ミ多耳なきぬへし
0032【とらおほかみたに】-おそろしき物も本心をうしなふ心也
  してい者遣なくおハせしほとより多て
  つりそめてし/\なれハとして(て<朱>へ<墨>)なき
  ありさ満をいみしとおもふ万ことや御返
    なき王可れやいとゝ遍多ゝらむ」(9オ・400⑭)
0033【なき人の】-大宮返し

  个ふりとなりし雲井ならてハとりそへて
  あ者れのミ徒きせ春いてひぬるなこり
  遊ゝし起まてなきあへりとの尓お者し多れハ
0034【とのに】-二条院
  王可御方/\裳まとろ万さりける遣し
  き尓て/\耳む連ゐてあさましと能ミ
  をおもへる个しきなりさ婦らひ尓ハ志多
  志う徒可ま徒るかきりハとも尓万いるへき
  まうけして王多くしの王可れおしむ
  本と尓やもなしさらぬ者とふらひま
  いるもをもきと可めあり王徒らハしきこと」(9ウ・401⑤)

  まされ者く徒とひしむまくる満の可多
  も那くさひしき尓ハう起ものり个里と
  お本し志ら類者むなともか多へハちりハミて
  多ゝミ/\ひきかへ(△&へ)し多るほと多
  かゝりましてい可尓あれゆ可んとお本春にしの
0035【にしのたいに】-紫上ノマシマス方
  多い尓王多りへれハかう志もまいらてな
  めあ可し多万ひ个れハすのこなと尓王可起
  らハへところ/\耳ふしていまそおきさ
  くとの井す可多ともお可しうているをみ
  多まふ尓も本そうとしへハ閑ゝ流」(10オ・401⑩)

  裳えしもあり者てゝやゆきちらむな
  佐し裳あるましき(<朱>)と佐へめ能見とまり
  遣りよ遍ハ志可/\してふ个尓し可ハなん
  連いのおも者すなるさ満尓やほしな
  つる可くて本と多め可れ春とおもふを
  かくよ越者なるゝき者尓くるし起ことの
  をのつ可らおほ可り个るひ多やこもり尓てやハ
  徒年なき尓もさけ那きものと
  をう(う#)可れ者てんといとおしうてなむとき
  こ盈へハ可ゝ流よ越るよりほ可尓おもハす」(10ウ・402②)
0036【かゝるよを】-紫詞

  なることハな可とハ可りの多満ひていみ
  しとおほしいれ多るさ満よりことなるを
  ことハり可しちゝ見こいとおろ可尓もとより
0037【ちゝみこ】-兵部卿宮
  おほし徒き尓ける尓ましてよ能きこ盈を
  王つらハし可りてをとつ連きこ盈者す
  とふらひ尓多尓わ多り者ぬをるらむ
  ことも者つ可しく/\志られ多てまつらて
  やミなましをまゝハゝ能き多のなとの
  尓王可なりしさい者ひのあ王多ゝしさ
  あなゆゝしやおもふ人方/\尓つ个て王可れ」(11オ・402⑦)
0038【方/\につけて】-紫上たのミ給へる人々に別給ふをいふ母君うは君今又源氏ノ君ニいきて別給ふをいへり

  可なとの多満ひ个る越さ類多より
  ありてもりきゝふ尓もい見しううけ
  連ハこれよりも多えてをとつ連きこ盈
  者すのもしきもなく遣尓
  あ者れなるありさ満なよ尓ゆるされ
  か多うてとしをへハい者ほの可尓も
  む可へ多てまつらむゝいまはきゝ能いと
  徒きな可るへきなりおほや遣尓閑しこ
  まりきこゆるハあきら可なる月日の
  可けを多耳み春やすら可尓みをふる」(11ウ・402⑬)

  ま婦こともいとつミをも可なりあやまち
  な个れとさるへき尓可ゝ流こともあらめと
  ましておもふ人具するハ連いなき
  ことなるをひ多おもむき耳ものくるをし起
  尓てちまさることもありなんなとき
  こ盈志らせくるまておほとのこも
  れり帥宮三位中将とおハし多り多いめ
0039【帥宮】-源ノ御おとゝ也
0040【三位中将】-紫兄

  し者むとてな越しなと多てまつる
  くら井なハとてむもん(+<朱>)な越し/\
  いとなつ可しきをきうちや徒連へる」(12オ・403④)

  とめて多日ん可きとてきやう多
  耳よりへる尓おもやせ遍るかけの
  な可らいとあて耳きよらなれハこよ
  なうこおとろへ耳个れこの可けのやう尓
  屋ゝせあ者れなるわさ可なとのへハ
  女君ミ多ひとめう个てをこせへる
  いと志のひ可多し
    ハかくてさすらへぬともかあ多り
0041【身はかくて】-源氏
0042【さすらへ】-流離

  さらぬ可ゝ見の可けハ者なれしときこ盈へハ
    王可れても可け多とまるものならハ」(12ウ・403⑨)
0043【わかれても】-紫上

  かゝみをも那くさめてまし者しら可
  くれ尓ゐ可くれてをまきらハしへ流
  さ満こゝらみるな可尓くひな可り个りと
  おほし志ら類ゝ)ありさ満な見こ盤
0044【みこ】-帥宮
  あ者れなるものか多りきこ盈くるゝ
  本と耳かへり日ぬ者那ちる佐との
  そ遣尓おほしてつ年尓きこ盈
  ハり尓てかのもい満ひと多ひみ春ハ徒
  らしとやおもハんとおほせハそいて
0045【いて給ふ】-花散へ
  ふもの可らいとものうくてい多うふ可して」(13オ・404②)

  おハし多れハ女御かく可すまへて多
0046【女御】-麗涼殿
  よらせへることゝよろこひきこ盈さ満
  かき徒ゝ遣む裳う流さしいといみしう
0047【かきつゝけむも】-作者詞
  本そありさ満多可け尓かくれてすく
  い多まへるとしいとゝあれまさらむほと
  おほしやられてと能ゝうちいと可す可なり
0048【とのゝうち】-麗ー
  おほろ尓佐しいてゝひろくこふ可起
  王多り本そ遣尓みゆる尓もす見者なれ多
  らむい者ほのな可おほしやら類しおもてハ
0049【いはほのなか】-<朱合点> いかならん岩ほの中ニすまハかハよのうき事ノキコえこさらん(古今952・古今六帖1002、岷江入楚)
  かうし裳王多り者すやとう地くしてお」(13ウ・404⑦)

  本し遣る尓あ者れそへ多る可遣のなまめ可
  志う志めや可なる尓うちふるまひへる
  ひにるものなくていと志のひや可尓いりへ者
  すこしゐさりいてゝや可てをみてお者すま多
  こゝに御物可多り能ほと尓あけ可多ち可うなりに个り
  みし可よの本とや可者可りのいめむ裳
  えし裳やとおもふこことなし尓て春くし
0050【ことなしにて】-無為 <朱合点> 古今 村鳥のたちにし<右>(古今674・新撰和歌272・古今六帖4430、異本紫明抄・紫明抄・河海抄) 床夏ノ花をたに見は事なしにすくる月日もミしかかりなん<左>(後撰200、異本紫明抄・河海抄・孟津抄)
  徒るとしころもくやしうきし可多遊くさ起の
  多めしになるへき尓てなにとなくとまる
  那くこあり个れとすき尓しか多のことゝも」(14オ・404⑬)

  のひてとりも志ハ/\なけハ徒ゝミて
  いそきいてれいのいり者つるほとよ
0051【れいの月の】-三条ノ宮より返り給し暁の月の光思よそへられてあはれ也故ニ例ノ月ノ入かたといふ也上にみえたり
  そへられてあ者れなり女君能こきそにう
0052【女君】-花散
  徒りて遣耳ぬるゝ可本なれハ
0053【ぬるゝかほ】-<朱合点> あひにあひて物おもふころの我袖ハやとる月さへぬるゝかほなり<朱>(古今756・後撰1270・古今六帖330・伊勢集、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
    可けのやとれるそてハせ者くとも
0054【月かけの】-花ちる
  とめても者やあ可ぬ日可りをい見しとおほい
  る可くるし个れハかつハなくさめきこえ
  まふ
    ゆきめくり徒ゐ耳すむへき个遣能
0055【ゆきめくり】-源し
  志ハしくもらむそらなゝ可めそおもへハ者可なしや」(14ウ・405⑤)

  多ゝ志らぬのミこをくらすものなれなと
  の多まひてあけくれのほと尓いてひぬよ
  ろつとも志多ゝめさせ志多しう徒可
  まつり耳なひ可ぬ可きりの/\との
  とりをこなふへき可みしも佐多めを可せ
  ともに志多ひきこ遊るかきりハえりいて
  へりかの佐とのすミ可能くハえさらす
  とり徒可ひ多まふへきものともと佐らよ
0056【よそひ】-粧<ヨソヲヒ>
  そひ裳なくことそきてさるへきふミとも
0057【ことそきて】-略
  文集といり多る者こさてハひと徒そ」(15オ・405⑪)
0058【文集なと】-白楽天ノ詩賦をあつめたる七十二巻アリ長慶集トいへり長慶年中にあつめたる故也

  も多せところせてうと者なや可なる
  よそひな佐ら尓くしハすあや(+志)の可つ
  きてもてなしさふら婦/\よりハし
  よろつとみ那尓しの多い尓きこ盈
  王多し里やうしみさうみ万きよりハ
  しめてさるへき/\ミなてまつり
  を起れより本可能見くらまちおさ免
  と能なといふまて少納言者可/\しき
0059【少納言】-紫乳母
  もの尓をきへれハ志多しき氣いし
  ともくして志ろしめすへきさ満とも」(15ウ・406②)

  ひあつわ可御方徒可さ中将とやう農
  /\つれなもてなしな可ら
  まつるほとこくさめつれなつけて
  可とおもへともありてこのかへるやう裳
  あらむをまち徒遣むとおも者むハこな多に
  さふらへとの多まひて2・可見し裳ミなまうの
  ほらせ王可め能と多ちるさと
  なともお可しきさ満の者さるもの尓てまめ/\
  しきすち耳おほしよらぬことなし内侍
0060【内侍のかみ】-おほろ月
  かミのもと尓王りなくしてきこ盈とハせ」(16オ・406⑧)

  多まハぬも古とハり尓へな可らい満者と
  をおもひ者つるほ△(△#<朱墨><朱>)のうさも徒らさも多
  くひなきことにこ个れ
    あふせなきなミ多の志徒ミしや
0061【あふせなき】-源し
  な可類ゝみおのハしめなり个むと思給い徒
  累のミなむ徒ミの可れか多个る本と
  裳あやう个れハこ満可にハきこ盈者す
  いとい見しうおほえ志のひへと
  よりあまるもところせうなん
    なみ多可ハう可ふ見なハ裳きえぬ遍し」(16ウ・406⑬)
0062【なみたかハ】-おほろ返し

  な可れてのちの越もま多すてなく/\見
  連可きへるていとお可し遣ない満ひと
  ひ堂いめなくやとおほ春ハくちおし个れと
  本し可へしてうしとおほしな春ゆ可りお本うて
0063【うしと】-朧
0064【ゆかり】-大后
  ほろ遣ならす志のひへハいとあな可ち尓
  きこ盈者すなりぬあすとてくれ耳ハ
  者可お可ミ多てまつりとてき多
0065【院】-桐
0066【御はか】-山陵
0067【きた山へ】-内大臣家百首ニ定家卿春ハたゝ霞斗の山のはに
  へまうてあ可可遣ていつるれ者
  入道宮まうてち可き見春の
  へ尓おまし万いりて御身つ可らきこ盈」(17オ・407⑥)

  させ東宮御事をいみしううしろ
0068【東宮】-冷泉
  め多起もの耳きこ盈可多ミ尓ふ可
  きとちのものか多りハよろつあ者れまさ里个ん
  可しうめて多遣ハひのむ可しに
  ハらぬ尓徒ら可りし(+<朱>)者へもかすめきこ盈
  せま本し个れといまさらにう多てとおほ
  るへし我御心尓も可/\い満ひときハ見
  多れまさりぬへ个れハねむし可へして
  かく日可遣ぬ徒ミ尓あ多りもおもふへあ
  者することのひと婦し耳なむそらもおそろ」(17ウ・407⑫)
0069【ひとふしに】-薄事

  しう・おし遣なハなき尓なしても
  御世尓多と那くおハしまさハとのミ
0070【宮】-薄ー
  きこ盈そことハりなるやもみなお本し
0071【宮】-薄ー
  志ら類ゝこと尓しあれハ御心のミうこきてき
  こ盈やり者す大将よろつ可き
0072【大将】-源ー
  あつめおほし徒ゝ遣てなきへる氣し
  きいと徒きせ春なまめき多り御山万いり
0073【御山】-ミ 山陵をいふ
  とつてやときこ盈とみ尓
  のもきこ盈者すハりなく多めらひ
  多まふ遣しきなり」(18オ・408③)

    しハなくあ類ハ可なしきよ能者てを
0074【見しはなく】-藤ツホ 桐ー あるハなくなきハ数そふ世中ニあハれいつれの日まてなけかん(新古今850・小町集51・為頼集26、河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
0075【あるハ】-源ー

  そむきし可ひもなく/\そ布るい見しき
  まとひともおほしあつむ類ともゝ
  えそ徒ゝ遣させハぬ
    王可れし耳可なしきハ徒き尓しを
0076【わかれしに】-源し
  ま多そこの能うさハまされるまちいてゝ
  いてとも尓五六人者可り志も
  むつましきかきりしてむま尓てそお者
  するさらなるれとありしあり
  き尓古となりみないと可なしうりな可尓」(18ウ・408⑨)

  かの見そきのひ可りのみ春いしん尓て徒可う
0077【みそき】-禊
  まつりし右近のそう能くらうへき可うふり
0078【右近のそう】-蔵人左近将監伊与守子紀伊守弟
0079【うへき】-得
0080【かうふり】-叙爵

  裳ほとす起徒るを徒井尓見ふた遣つら連
0081【ほとすき】-蔵人巡給
0082【みふたけつられ】-除籍

  徒可さもとられて者し多な个れハとも尓
  万い類うちなりかもの志ものミやしろを
  可れとハ多す本と婦とおもひいてられており
  てむま能くちをと類
    ひき徒連てあふひ可佐しゝそ能可ミを
0083【ひきつれて】-義清
  おもへハ徒らしかものミつ可きといふを遣尓
  い可尓おもふらむより遣尓者那や可なりし」(19オ・408⑭)

  ものをとおほ春もくるしむまより
  おり見やしろの可多お可ミ尓ま可り
  
    うきをハい満そ王可類ゝとゝまらむ
0084【うき世をは】-源し
  をハ多ゝすの耳ま可せてとの多満
  さ満ものめて春るわ可き尓てしミて
  あ者れ尓めて多しと多てまつるや万に
0085【御やま】-ミ
  まうておハしましゝありさ満多ゝめ
  のまへのやうにおほしいてら類かきりなき
0086【かきりなき】-うらやむ
  尓ても尓なくなりぬるいハむ可多なく」(19ウ・409⑤)

  くちおしきわさなり遣流よろつと越
  なく/\申給日てもそと者りをあら者尓
  うけ者り多まハ年ハさハ可りおほしの多満
  ハせし佐万/\のゆいこんハいつち可きえ
  せ尓けんといふ可ひなし者可ハみちの
  志けくなりて王遣いり本といとゝ徒遊
  けき尓もかくれてもりのこ多ちこふ可
  くすこしかへりいてん可多もなきして
  お可見ありしをも可けさや可尓
  へるゝ路さむき本となり」(20オ・409⑩)

    なき可けやい可ゝるらむよそへ津ゝ
0087【なきかけや】-源ー
  な可むる可くれぬるあけ者つる本と尓
  かへり日て春宮尓もせうそこきこ盈
  わう命婦かハり尓てさふらハせへハ
0088【御かハりにて】-藤ツホ中宮御出家ノ後三条宮ニおハしますを申侍也
  そつ本(△&本)ね(+)とて个ふなんミやこ者な
  万いり者へらすなりぬるなんあま多のうれへ
  尓満佐りておもふへられよろつをし者
  かりて遣いし多まへ
    い徒可ま多者類の見やこの者那をミん
0089【いつかまた】-源ー
0090【みやこのはな】-春宮をよそへ給へる也

  と起うしなへる可つしてさくらのちり春起」(20ウ・410③)

  多るえ多尓徒遣へりかくなむとらんせ
  さすれ者おさな御心ち尓まめ多ちて
0091【おさなき御心ち】-春宮八也
  おハします御返いかゝものしらむと遣い
  すれ者志ハしぬ多しきものを
  と越くハましてい可尓といへ可しとの多万ハす
  も能者可な御返やとあ者れ尓てまつる
  あちきな起こと尓御心をく多き日し
  む可しのおり/\のありさ満徒ゝけ
  らるゝ尓ものおもひ那くてもすく
  い多まひ徒へ可りけるよ越とおほしなけき」(21オ・410⑨)

  氣るをくやしうわ可日とつ尓可ゝらむこと能
  う尓おほ遊る御返ハ佐らにきこえさせ
  らすおまへ尓ハ遣いし本そ遣尓
  おほしめし多る氣しきもい見しくなむと
  そこハ可と那くの見多れ个るなるへし
0092【心のみたれ】-二ノ心アリ
    さきてとくちるハう个れとゆく
0093【さきてとく】-王命婦
  の見やこ越多ちかへりよときしあらハ
0094【ときしあらは】-<朱合点> 哥可勘 古今光なき谷ニハ春ノよそなれハさきてとくちる物おもひもなし(古今967・古今六帖1012・深養父集31、異本紫明抄・花鳥余情・休聞抄・紹巴抄・孟津抄)
  ときこ盈てなこりもあ者れなるも能
  か多りを志つゝひとうち志のひて
  なきあへりひとめもてまつれるハ」(21ウ・410⑭)

  かくお本しく徒をれぬるありさ満をなけき
  おし見きこ盈ぬまして徒年尓
  万いりなれ多りしハ志里をよひましき
0095【しり】-知
  おさめミ可ハやうとまてあり可多き可へりミ
0096【おさめ】-下女
0097【みかはやうと】-厠 樋洗也 行幸之後騎ニ厠長女洗女供奉也

  能し多なりつるを志ハし尓ても
  まつらぬ本とやへむとおもひなけき个り
  おほ可多のも多れ可ハよろしく
  きこえゝ徒耳なりしこのかみゝ(ゝ<朱>)ミ
  可とのおまへ尓よるひ累さふらひうし
  給事らぬハな可りし可ハこのい多ハり尓」(22オ・411⑥)
0098【御いたはり】-御はくゝミの心也

  可ゝらぬ那くとくをよろこ者ぬや者あ
  里しやむことなき可む多ちめ弁官との
  尓もおほ可りれよ里志もハ可す志らぬを
  日志らぬ尓ハあらねさしあ多りていち者や
0099【いちはやき】-二条大臣朧母
  きよ越ハゝ(ハゝ&ハゝ)かりて万いりよるも那しよゆ春り
0100【ゆすり】-動といふ心也
  ておしミきこ盈え(え#)し多おほや遣越
0101【おほやけ】-朱雀院
  し里うら見多てまつれとを春てゝと
  ふらひ万いらむ尓もにの可ひ可ハとおもふ尓や
  可ゝ類おりハ王ろくうらめしきおほく
  世中ハあちきな起もの可なとのミよろつ尓」(22ウ・411⑪)

  徒个ておほ春女君もの可多り能
0102【女君】-紫上
  と可尓きこ盈くらし連いのよ婦
  可くいて可り能と多ひの△(△#)よそ
0103【御そ】-狩衣
  ひい多く屋ついて尓个りなゝ越
  春こしいてゝみ多をくり多まへ可し
  可尓きこゆへきおほく徒もり尓个りと
  おほえむとすらん日とひふつ可多万さ可尓
  遍多ゝ類おり多あやしうい婦せ
  ちするものをとて見春ま起あけてハし尓
  いさなひきこ盈へハ女君なき志つミ」(23オ・412③)
0104【女君】-紫上

  多まへる(+を)多めらひてゐさりいてへる月影
  尓いミしうお可し遣尓てゐ多まへり王可
  かくて者可なきよ越王可れな者い可なるさ
  満尓さすらへ多ま者むとうしろめ多く可な
  し个れとおほしいり多る尓いとゝ志可るへ个れハ
0105【いとゝしかる】-詞
    い氣るよ能王可れを志らてちきりつゝ
0106【いけるよの】-源ー
  耳可きりける可な者可なしなとあさ
  者可尓きこ盈なしへハ
    おし可らぬいのち尓かへてめのまへ能
0107【おしからぬ】-紫上返し おしからぬ命ニかへて暁ノ別ノ道ヲいかてやめてん(源氏物語186)
  王可れを志ハしとゝめてし可な遣尓佐そ」(23ウ・412⑧)

  おほさるらむといと春て可多个れとあけ
  者てなはし多可るへき尓よりいそきいて
  春可らおも可遣尓つとそひてむ年裳
0108【おもかけ】-紫
  ふ多可りな可らふ年尓のり日ぬな可き
  ころな連ハおひ可せさへそひてま多さる能
0109【さるの時】-申
  ハ可り尓かのうらに徒き可りそめ能みち
0110【かのうら】-大江
  尓ても可ゝ類多ひをならひ者ぬち耳
  本そ佐もお可しさもめつら可なりおほ盈と
0111【おほえとの】-斎ノ王帰京ノ時ノ旅館也
  のといひ个るハい多うあれて者可りそ
  志類しな流」(24オ・413①)

    からく尓をのこし遣るよりも
0112【からくにゝ】-源ー
0113【名をのこしける人】-代々たえす立也

  遊くゑ志られぬいへ井をやせむなきさ尓
0114【なきさに】-楼岸
  よるなミの可つ可へるを見給うらやまし
0115【うらやましくも】-<朱合点> イトヽシク過行方ノ恋シキニウラヤマシクモカヘルナミカナ(後撰1352・伊勢物語8、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  くもとうちすし多まへるさ満さるよ能ふる
  なれとめ徒らしうきゝなされ可なしとのミ
  とも/\おもへりうちかへり多万
  遍る尓こし可たのハ可すミ者る可尓て
  こと尓三千里本可能ちする尓かいの
0116【三千里のほかの心ち】-<朱合点>
0117【かいのしつくも】-
<朱合点> 此夕ふりくる雨ハひこほしのとわたる舟のかひの雫か 赤人(万葉2056・赤人集314・家持集102、紫明抄・河海抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 我上に露そをくなるあまの川とわたる舟ノカヒノシツクカ 赤人(古今863・新撰和歌207・伊勢物語108、紫明抄・河海抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
  志つくも多へ可多し
    ふる佐と越み年の可すミハ遍多つれと」(24ウ・413⑦)
0118【ふるさとを】-源ー

  可むるそらハお那し雲井可徒ら可らぬもの
  くなお者すへきゆきひらの中納言
0119【ゆきひらの中納言】-<朱合点>
  のもし本多れつゝ王ひ个るいへ井ち可き
0120【もしほたれつゝ】-<朱合点> わくらハにとふ人あらはすまの浦にもしほたれつゝわふとこたへよ<朱>(古今962・新撰和歌315・古今六帖1793・業平集79、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  王多りなり个りう見徒らハ屋ゝいりて
  あ者れ耳すこ遣な山中なりかきのさ満
  よ里ハしめてめつら可尓見給かやゝともあし
  ふけるらうめくやなとお可しう志徒らひな
0121【らうめく】-
  
つけ多る春満ひやうかハりて可ゝ
  らぬおりならハお可しうもありなましとむ
  可しの御心のすさひおほしい徒ち可き/\」(25オ・413⑫)

  の見さうの徒可さめしてさるへき古とゝもな
  よしきよ能あそん志多しき遣いし尓てお本せ
  をこなふもあハれなりまにいと見所
  ありて志なさせふ可うや里なしうへ
  きともとしてい万ハとし徒まり
  うつゝならすくにの可ミも志多しきと能
  なれハ志のひてよせ徒可うまつるかゝる多
  ともなさハ可し个れともハ可/\しう
  ものをもの多まひあハすへきしな个れハ
  志らぬくにのちしていとむもれいたく(ゝ&く)い可て」(25ウ・414④)

  としを春くさましとおほしやら類やう/\
  こと志つまり遊く尓可あめ能ころ尓なりて
  もおほしやら類ゝ尓こいしき
  ほく女君お本し多りしさ満春宮御事
0122【女君】-紫上
  王可のなも那くまきれ多まひし
0123【わか君】-夕霧
  なと越ハしめこゝ可しこ日やりきこえ
  い多し多て二条院へ多
0124【二条院へ】-紫
  つり入道のとハかきも屋り
  者すくらされへり尓は
0125【宮には】-薄
    し満のあ万能と満屋裳い可ならむ」(26オ・414⑨)
0126【松しまの】-源ー 入道宮ヲたとへ侍り

  春満のうら志本多るゝころい徒とらぬ
  な可尓もきし可多遊くさ起かきくらし
  見きハま佐りてなん内侍の可ミのもとに
0127【みきはまさりて】-<朱合点> 君こふる涙おちそひ此川ノみきハまさりてかへるへら也 貫之(貫之集730、異本紫明抄・花鳥余情・細流抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚)
0128【内侍のかみ】-おほろ月

  連いの中納言の王多くしこと能やう尓て
  なる尓つれ/\とすき尓しか多思給
0129【つれ/\と】-源文ノ詞
  いてら類ゝ尓徒氣て
    古り春満のうら能見るめの遊可しき越
0130【こりすまの】-源氏<墨> 白波は立さハくともこりすまのうらのみるめハかへらんとそおもふ<朱>(新古今1434・古今六帖1870、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  し本やくあ万やい可ゝおもハんさ満/\かき徒
  くしとの者ひやるへし大殿(+丹)も
  農め能と尓もつ可うまつるへきなとか起」(26ウ・415①)

  徒可者す尓はこのふミ/\尓見給ひ(日#ひ)つゝ
  御心見多れ多まふ/\のミおほ可り二条院
  のハそのまゝにおきもあ可りハす徒き
  せぬさ満耳おほしこ可るれハさふら婦/\も
  こしらへ王ひつゝ本そうおもひあへりもて
  ならしてうとゝもひきならし
  ひしぬき春てつる能尓本ひ
0131【御こと】-琴
  なと尓徒个てもい満ハとな可らむ
  う尓のミおほし多れハか徒ハ遊ゝしうて
  少納言ハそうつ尓いのりのなときこゆ」(27オ・415⑦)
0132【少納言】-紫乳母
0133【そうつに】-北山

  ふ多可多尓見す本うなとせさせ布(布#)可つ
  ハおほしなけ具御心志つひて日な
  よ尓あらせ多てまつりへとくるしき
  まゝにいのり申給ひのとのゐも能な
  てうして多てまつり可とりの越し
  佐しぬきさ満かハり多ちするもいみ
  しき尓さらぬ可ゝミとの多まひしおも可遣
0134【さらぬかゝみ】-源御哥
  の氣尓耳そひ多まへ(つ&へ)るも可ひ那(△&那)し
  いていりひし可たより井多まひしま起
0135【まきはしら】-槙柱 六ーわきもこかきてハより立槙柱そもむつましやゆかりとおもへハ(出典未詳、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  ハしらなと越まふにもむ年のミふ多」(27ウ・415⑫)

  可りて能をと可うひめくらしよに志ほ
  しミぬるよハひのありましてな
  むつひきこ盈ちゝ者ゝにもなりてお本
  し多てならハしへれハこひしう日き
  こ盈へることハりなりひ多すら
  なりなむハい者む可多なくてやう/\王すれ
0136【わすれくさ】-<朱合点> 古今こふれともあふよのなきハわすれ草夢ちニさへやおもひしけからん(古今766、河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  くさもおひやすらんきくほとハち可个れと
  い徒まてとかきりあ類王可連尓裳あらて
0137【いつまてと】-<朱合点> わかれてハいつあいミんとおもふらんかきりあるよの命ともなし 伊勢(後撰1319・古今六帖2357・伊勢集217、花鳥余情・一葉抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  おほ春尓徒きせすなむ入道宮耳裳
  春宮御事耳よりおほしな氣く」(28オ・416③)

  さ満いとさらなすくせのほとをおほ春尓
  盤い可ゝあさくおほされんしころハ多ゝ裳
0138【ものゝきこえ】-源薄ト
  のゝきこ盈なと能徒ゝましさ尓すこし
  なさけある遣しきれ尓徒个て
  のと可めいつる裳こ<朱>)のミひとへ尓お本し
  志のひ徒ゝあ者れをもおほうらむし春
  くし春くすくしうもてなひしを
0139【すくすくしう】-健<スクヤカ>
  か者可りうきよ能となれと閑けて裳
  この可多尓はいひいつることなくてやミぬる
  ハ可り能をもむ个もあな可ちなりし」(28ウ・416⑧)

  ひく可多尓ま可せ春可つハめやすくもて
  かくし徒るそ可しあ者れ尓こひしうもい可ゝ
  おほしいてさらむ御返もすこしこまや可尓て
  このころハいとゝ
    志ほ多るゝこと越やく尓てまつ志万尓
0140【しほたるゝ】-藤ツホ
  とし婦るあ万裳なけきをそつむ可無能
  御返尓は
    多くあ万多徒ゝ無こひなれハ
0141【浦にたく】-おほろ
  く遊る个ふりよゆく可多そなきさらな
0142【くゆるけふり】-後ー風をいたミくゆる煙ノ立出ても猶こりすまのうらそかなしき(後撰865、花鳥余情・弄花抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
  ともえな無とハ可りいさゝ可かきて中納言」(29オ・416⑭)
0143【えなむと】-エイハス也

  ののな可尓ありほしなけ具さ満な
  いみしういひ多あ者れと日きこえ
  ふし/\も阿連ハう地な可れ日ぬひめ
0144【ひめ君】-紫
  ふミハこゝろことにこ満可なりし御返れハ
  あハれなることおほくて
    浦人しほくむそて尓くらへ
0145【浦人の】-紫上
  な遍多つるよるのころもをものゝいろ
0146【ものゝいろしたまへる】-二条院より須磨へ衣裳をして送り給へるを物のいろとハいへり
  志多まへるさ満なといときよらなりな尓
  ともよ(よ$羅)う/\しうものしふをおもふさ満
  尓てい万ハこと/\耳あハ多ゝしうゆき」(29ウ・417⑥)

  かゝつら婦可多もな志めや可尓てあるへきもの
  をとおほ春耳い見しうくちおしうよる
  ひるおも可け尓おほえて多(え$へ)か多う日いて
  られへハな越志のひてむ可へましと
  おほ春うち可へしなやかくうき
  徒ミを多うしなハむとおほせハや可て
0147【御さうしん】-精進
  う志ん尓てあけくれをこなひてお者す
  とのゝわ可御事とある尓もいと可な
  个れとをの徒可らあひてん多のもしき
  /\ものしへ者うしろめ多うハあらすと」(30オ・417⑫)

  おほしなさるゝハ/\こののまとハれぬ
0148【この道】-子ノ道をこの道とかける也
  尓やあらむまことやさハ可し可りしほとの
0149【まことや】-作者詞
  まきれ尓もらして个りかの伊勢
0150【伊勢の宮】-秋好
  へもつ可ひあり个り可れよりもふり者へ
0151【ふりはへ】-打
  堂つまいれりあさ可らぬこと(と+と)もかき
  へりことの者ふて徒可ひなとハより
  こと尓万め可しくいた里ふ可う多り・
  うつゝとハおもひ多まへられぬすま井を
  う遣ハるもあけぬまとひ可とな
0152【あけぬ夜の】-夢のやうなるをいふ心也
  さりともとしへ多て多万ハしとおもひ」(30ウ・418④)

  屋りきこ盈さする尓も徒ミふかき
0153【つみふかき身】-斎宮にてハ仏経なとに事をふれぬをいふ也
  ミこきこ盈させむことも者る可なる
  遍个れ
    う起め可流いせをのあ万をひやれ
0154【うきめかる】-伊勢宮す所
  もし本多るて婦春満のうら尓てよろつ
  おもひ多まへ見多るゝよのありさ満もな
  い可尓なり者つ遍き尓可とおほ可り
    いせしまやし本ひの可多にあさりても
0155【いせしまや】-同
  いふ可ひな我身なり个りものをあハ
  連とおほしけるまゝにうちをき/\可き」(31オ・418⑨)

  へるしろき可らの可ミ四五まい者可り越
  まきつ(+<朱>)けてすミ徒きなとミあり
0156【あはれに思ひきこえし人】-葵上事
  者れ尓日きこ盈しを日とふしうしと
  おもひきこ盈しあやまり尓かの見や
  春うして王可れひ尓しとお本せ
  ハいまにいとおしうか多し遣な起もの耳
  日きこ盈おり可ら能ふミいとあ者れ
  なれハつ可ひさへむつましうて二三日
  春ゑさせ可しこのものか多りな
  せさせてきこしめす王可や可耳遣しき」(31ウ・419①)

  あるさふらひのなり个李かくあ者れなる
  春まひなれハかやうのもをのつ可ら
  裳のと越可らて本のてまつるさ満
  可多ちをい見しうめて多しとなミ多おとし
  をり个り御返可きとの者おもひや流
  遍しかくを者なるへき日多まへ
  まし可ハおなしくハ志多ひきこ盈まし
  ものをなとなむつ連/\と本そきまゝに
    伊勢人能うへ古くをふ年尓も
0157【伊勢人の】-源ー いせ人ハあやしき物そなといへはをふねにのりてなミのうへこく 風俗伊勢人
  うきめハからてのらましも能を」(32オ・419⑥)

    あ万可つむなけきのな可尓し本多れて
0158【あまかつむ】-同
0159【なけきのなかに】-浜木ニよせたり

  い徒まてまのうら尓可めむきこえさせ
  むいつともらぬこ徒きせ心地
  しれなとそありけるかやう尓い徒こ尓も
0160【かやうに】-作者詞
  おほつ可な可らすきこ盈可ハしちる佐と
  裳可なしとおほし遣るまゝにかきあつめ
  へる御心/\見給お可しきもめなれぬ心地
  していつれもうちつゝなくさめへと
  ものおもひのもよ本しくさなめり
    あれまさるのきの志の婦をな可め津ゝ」(32ウ・419⑫)
0161【あれまさる】-花ちるより返し

  志个く裳可ゝ類可なとあるを个尓
0162【むくら】-葎
  くらより本可能うしろミもなきさ満尓てお
  者すらんとおほしやりてな可あめ尓徒い地
  /\くつれてむときゝへハ遣いし(し&いし)
  のもとにおほせ徒可ハしてち可きく尓/\能み
  さうのも能なともよ越させて徒可うまつるへ
  きよしの多万者すかむのわらへ尓
0163【かむの君】-朧
  いみしうおほしくつをるゝをおとゝいと可な
0164【おとゝ】-二条太政大臣
  しう志きミ尓てち尓尓裳尓も
0165【宮】-大后
0166【内】-朱雀

  そうし个連ハかきりあ類女御みや春尓も」(33オ・420③)

  お者せすおほや遣さ満の徒可へとお本し
  な可能にく可りしゆへこい可めしきこ
0167【又】-源
  裳いてこし可ゆるされひて万いりふへき
0168【ゆるされ給ひて】-朧
  尓徒个ても猶心耳志見尓しか多そあ者れ尓
  おほ盈多万ける七月耳なりてまいり
0169【いみしかりし】-朱雀
  見し可りしおもひのこりなれハ
  そし里も志ろしめされ春れいのうへ尓徒と
  さふら者せよろつ尓うらみ可つハあハれ
  耳ちきらせ給御さ満可多ち裳いとな満め可し
  うきよらなれと日い徒ること能ミおほ可る能」(33ウ・420⑨)

  うちそ可多し遣なあそひの徒いて尓そ
0170【その人の】-朱雀御詞源氏ノ事
  の能なきこいとさう/\し个れい可にま
  してさおもふおほ可らむな裳ひ可り
  なきちする可なとの多まハせておほ
0171【院の】-桐
  しの多万ハせし御心を多可へ徒る可那つミ
  うらむ可しとてくませ尓盈ねむし多
  万者す世中ある尓徒遣てもあちき
  なきものなり个れとおもひし類まゝに
  しくよにあらむものとなさらにおもハぬ
  もなりなむ尓い可ゝお本さるへきち可起本との」(34オ・420⑭)

  王可れ尓おもひおとされんこ多个れい遣る
0172【わかれに】-源
0173【いける世に】-
<朱合点> 拾ーこひしなん後ハ何せんいけるよの為こそ人ハ見まくほしけれ(拾遺集685・拾遺抄247・万葉2597・古今六帖1981、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  尓とハ遣耳よ可らぬいひを起个むと
  いとなつ可しきさ満尓てものをまこと耳
0174【御さまにて】-中よからぬ人ノ詞也 御門我御身ニよそへて
  あ者れとおほしいりての多万者する尓
  氣て本ろ/\とこほ連いつ連ハさりやいつ連尓
0175【さりやいつれに】-御門詞
  おつる尓可との多万ハすいまゝてみこ多ち能
  なきこさう/\し个れ東宮のゝ
  多まハせし佐万尓おもへとよ可らぬとも
  いてくめれハくるしうなとよを御心本可
  尓まつりこち那し給人/\のあ類耳」(34ウ・421⑥)

  王可き御心の徒よき起本と尓ていとおし
  とおほし多ることもおほ可り春満尓はいとゝ
  徒くしの秋風耳う見ハすこしと越个連
0176【心つくしの】-<朱合点> 古今 木間よりもりくる月の影見れは心つくしの秋ハ来にけり(古今184・古今六帖293・小町集106、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  とゆきひらの中納言起ふきこゆると
0177【ゆきひらの中納言】-<朱合点> 天暦御時屏風哥忠見 秋風の関ふきこゆるたひゝとにこゑ打そふる須磨ノ浦浪(新古今1599・忠見集8、源氏釈・花鳥余情・一葉抄・細流抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚) 続古今集 津の国須磨と云所に侍ケル時よミ侍ケル中納言行平 旅人のたもとすゝしく成にけり関ふきこゆるスマノウラ風(浪&風)(続古今868、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄) 忠見哥あひかなへり
  いひ个んうらなミよ類/\ハ希尓いとち可く
  きこ盈てま多なくあ者れなるものハ可ゝる
  なり个り御前いとすくな尓て
  うちやす見王多れる尓ひとりめ越さまして
  まくらをそハ多てゝよものあらしをきゝ
0178【まくらをそはたてゝ】-<朱合点> 遺愛寺鐘欹枕聴矣
  尓なミ多ゝ古ゝもとに多ちく類ちして」(35オ・421⑪)

    おつともほえぬ尓う具ハ可り尓なり尓
0179【枕うくはかりに】-<朱合点> 拾 涙川水まされはや敷妙ノまくらのうきてとまらさるらん(拾遺集1258、花鳥余情・休聞抄・孟津抄・花屋抄・岷江入楚) ひとりねの床にたまれる涙にハ石ノ枕もうきぬへら也(古今六帖、異本紫明抄・河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  个りをすこし可きならしへる可
  な可らいとすこうきこゆれハひき佐し
    王ひてなくね耳ま可ふうらなミハ
0180【恋わひて】-源ー
  おもふ可多よ里やふくらんとう多ひへる尓
0181【おもふかたより】-浪たゝハ奥ノ玉もゝよりぬへしおもふかたより風も吹なん(玉葉2106、異本紫明抄・河海抄・孟津抄・岷江入楚)
  /\おと路きてめて多うおほゆるに志の
  ハれてあいなうおき井徒ゝ者なを志のひ
0182【はなを】-鼻
  や可尓可見王多す遣尓い可尓おもふらむ王可
  日とつ尓よ里おや者ら可らか多
  者なれ可多くほと尓つけつゝおもふらむを」(35ウ・422②)

  王可れてか具まとひあへるとおほ春尓にいみ
  くていとかく日志つむさ満を本そ
  とおもふらむとおほせハひるハなにくれと
  うちのる(る&日)まきらハしつれ/\なるまゝ耳
  いろ/\の可見を徒きつゝてならひを志多
  まひめつらしきさ満なる可ら能あやなと尓
  佐万/\のゑともをかき春さひへる屏風
  のおもてともいとめて多見所阿里
  /\のか多りきこえしうミやまのあり
0183【人/\のかたりきこえし】-若紫巻ある事也 やう/\明石浦事いひいつるなるへし
  さ満を者る可尓おほしやりしをめ尓ち可く」(36オ・422⑧)

  亭ハ遣尓をよハぬいそゝすまひ(+)なく
  かきあつめへりこのころ能上手尓すめ流
  千枝つ年能りなとをめして徒くりゑ徒可う
0184【つねのり】-常則
  まつらせハやともとな可りあへり可しう
  めて多さ満尓ものひ王すれて
  ち可うなれ徒可うまつるをうれしきこと尓て
  四五人者可りそつとさふらひ个るむさいの
  花色/\さき見多れおもしろきゆふくれ尓
  う見ゝやらるゝらうにいてゝす見
  さ満のゆゝしうきよらなる可らハ」(36ウ・422⑭)

  ましてこの能ものとみえ者す志ろき
0185【しろきあやの】-花直衣地ハ平絹ノ無文色ハ年齢ニヨルヘシ白紫苑色其以衣ノ色之重也
  あやのよゝ可なる志(=志)をんいろなと多てまつり
  てこまや可なるな越しおひしとけなくうち
  見多へる佐万尓て釈迦牟尼仏(+ノ)
  となのりてゆるゝ可尓よミへるま多
  志らすきこゆおきよりふねとものう多
  のゝ志りてこきゆくなともきこゆ本の可尓
  多ゝちひさきとりのう可へるとやらるゝも
  本そ遣なる尓かりの徒らねく聲
  可ちのをと尓ま(+可)へ類をうちな可め日て」(37オ・423⑤)
0186【かちのをとに】-雁櫓

  こほるゝをかき者らひ多まへるて徒き
  くろきすゝ尓はえへるふる佐との
  こひしき/\見なゝ具さ見尓个り
    者徒可りハ古ひしき徒らなれや
0187【はつかりハ】-源氏 まつ人に 我為遷客
  多ひのそらとふこゑの可なしきとのへは
  よしきよ
    かき徒らねむ可しのとそおもほゆ類
  かりハそよ能ら年とも民部大輔
0188【民部大輔】-惟光
    こゝろ可らとこよ越すてゝなく可りを
0189【とこよ越すてゝ】-仙境をいへり 春秋のかハりもなき故ニ常世トハいへり おきもせぬ我とこよこそかなしけれ春かへりにし雁も鳴也 赤染衛門(後拾遺275・赤染衛門集611、河海抄・孟津抄
  くものよそ尓もおもひ遣る可なさきの右近」(37ウ・423⑪)
0190【右近のそう】-常陸子

  の
    とこよいてゝ多ひのそらなるかり可ね
  も徒ら尓をくれぬほとそなくさむともまと
0191【ともまとハして】-<朱合点> 可考哥
  ハしてハい可尓らましといふおやのひ多ち尓
0192【ひたちに】-伊与守
  りてく多りし尓さそハれてまいれる
  り个り志多尓はおもひくた多へ可めれと本
  こり可尓もてなしてつれなきさ満尓志あり
0193【つれなきさまに】-恋サマス心ナリ
  くいと者なやか耳佐しいて多る耳
  こよひハ十五夜なり个りとおほしいてゝ殿
  あそひこひしく/\な可めらむ」(38オ・424④)

  可しと日やりふ尓徒个ても可本のミ
  まもられ二千里外故人(+ノ)とすし
0194【二千里外故人ノ心】-<朱合点>
  へるれいのもとゝめられ春入道
  きりやへ多つるとの多まハせしほとい者む
0195【きりやへたつる】-榊ノ巻ニアル哥ノ詞也
  可多なくしくおり/\能おもひいて
  耳よゝとな可れふよふ遣ぬときこゆ
0196【よゝとなかれ給ふ】-あけまきの巻にもしやくりをよゝとなくといふ詞アリ
  連と越いり者す
    るほとそ志ハしなくさむめくりあハん
0197【見るほとそ】-源ー
  みやこハ者る可なれともようへ能
  いとなつ可しうむ可しもの可多里(△&里)なと志多」(38ウ・424⑨)
0198【むかしものかたり】-榊ノ巻ニアリシ事也

  まひしさ満の尓ゝ多てまつりへりし
  もしくいてきこ盈ひて恩賜
0199【恩賜の御衣ハ】-<朱合点>
  の御衣ハい万こゝにありとすし津ゝいり日ぬ
  ハまことにを者那多すか多ハらに
0200【御そハまことに】-朱雀院ノ御門ノ源氏ニ御そ給ヘル事以前みえさる事ナレト此物語ノならひとしてさきになき事をも事次ニいひ出スル也
  を起へり
    うしとのミ日とへ尓も能ハおもほえて
0201【うしとのみ】-源ー
  ひ多り見き尓もぬるゝ可那そ能ころ
  大弐ハのほり遣るい可めしく流いひろく
0202【大弐】-大宰府筑前
  む春めかちにて可り个れハき多能可多ハ
  ふ年尓ての本るうら徒多ひ尓せうよう志」(39オ・425①)

  徒ゝくる尓本可よりもおもしろき王多りな
  ハと満る耳大将かくてお者すときけハ
  あいなう春い多るわ可きむ春め多ちハ
  うちさへ者つ可しう遣さうせ羅るまして
  五節ハ徒なてひきすくるもくちお
0203【五節の君】-<朱合点> 大弐女源花ちる巻逢給
  しき尓のこゑ可せ尓徒きて者る可尓
0204【琴】-キン
  こ遊る尓佐万ほとも能ゝね
  本そさとりあつある可きりみななき
  尓个りうそこきこえりいと者る
0205【そち】-帥
  可なるほとよ里ま可りのほりてハまつい徒」(39ウ・425⑥)

  し可さふらひて見やこのも能可多りもと
  こそおもひりつれ本可耳かくて
  おハしまし遣る屋と越ま可り春き可多
  志氣なう可なしう裳可なあひ志りて
  /\さるへきこれ可れまてきむ可ひて
  あま多連ハさ越へ者ゝ可り
  ことゝもりてえさふらハぬこと古と佐らに万
  いりらむなとこえ多りこのちくせむ能
  見そ万いれるこの殿のくらなし
0206【この殿の】-源
0207【くら人に】-筑前守

  へりまひしれハいとも可なし」(40オ・425⑪)

  いみしとおもへともま多/\能あれハ
  きこ盈をおもひて志ハしもえ多ちとまらす
  見やこ者那連てのち志多し可りし
  /\あひ可多うのミなり尓多るに
  かく王さと多ちよりも能し多ることゝ能
  御返もさやうになむ可見なく/\かへりて
  者するありさ満か多ちよりハしめ
0208【そち】-帥
  む可への/\満可/\しうなき見ち多り
  五節ハと可くしてきこ盈多
    古とのひきとめら類ゝ徒なハ」(40ウ・426③)
0209【ことのねに】-五節
0210【ひきとめらるゝ】-源氏引琴

  多遊堂ふ心君志るらめや春起/\しさも
0211【人なとかめそ】-<朱合点> 古今いて我を人なとかめそ大船のゆたのたゆたに物思ふ身を(古今508・古今六帖1804、源氏釈・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  なと可めそときこ盈多り本をゑミて見給いと
  者つ可し遣那り
    古ゝろありてひきて能つ那のゆたハゝ
0212【こゝろありて】-源ー
  う地春起ましや春満のうらいさりせむと
0213【いさりせむとハ】-<朱合点> 思きやひなの別におとろへてあまのなわたきいさりせんとは(古今961・新撰和歌235・古今六帖2360、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  ハおもハ佐りしハやとありむまやのおさ尓
0214【むまやのおさに】-<朱合点> 菅丞相ハ物もしらぬ馬屋のをさに対シテタニ哥作給ヘリ 駅長莫驚時変改一栄一落是春秋
  しとらするもありけるをましておち
0215【おちとまり】-五節
  とまりぬへくなむおほ盈氣るみやこ尓
  月日すく流まゝにみ可とをハしめ多
  まつりて古ひきこゆるおり婦しおほ可り」(41オ・426⑧)

  春宮ハまして徒ね尓おほしいてつゝ志のひ
  てなてまつるめ能とまして
  ハいみしうあハれ尓てまつる
  入道春宮御事を遊ゝしうのミ
  おほし志尓大将もかくさすらへ多まひぬる
  をいみしうおほしなけ可る者らからの
  こ多
ちむつましうきこ盈ひし
  可む多ちめなとハしめつ可多ハとふらひきこえ
  なとありきあ者れなるふミを徒くりか
  ハしそれ尓徒氣ても世中のミめてられ」(41ウ・426⑬)

  へハきさいのきこしめしていミ志う能
  个りおほや遣能かうしなる尓ま可せて
0216【かうし】-考辞 勘事
  のあち者ひを多志るか多
  あなもしろきいへ井して世中
  そし里もときてかの志可をむまといひ个む
0217【しかをむまといひけむ】-<朱合点> 秦二世之御門ニ趙高鹿ヲ馬ト云事也
  ひ可めるやう尓徒いせうするなとあしき
  ことゝ裳きこ盈个れハ王つらハしとてせうそ
  こきこえ二条院ひめ
  ほとふるまゝにおほしなくさむおりなひん
  可しのい尓さふらひし/\もみな王多り」(42オ・427④)

  万いりしハしめはと可佐しもあらむと
  おもひし可とまつりな類ゝまゝに
  な可しうお可しきありさ満まめや可なる
  御心者へもひ屋りふ可うあ者れなれハ
  ま可てちるもなしなへてらぬきはの/\
  尓は本のみえとしこら能
  すくれ多御心さしもことハりなり个りと
  多てまつるかの春満井尓はひさしく
  なるまゝに盈ねむしすく春ましうおほえ
  へとわ可あさましきすくせと」(42ウ・427⑩)

  おほ遊るすま井尓い可て可ハう地くしてハ徒
  きな可らむさ満をおもひ可へし尓つ
  个てよろつ佐万かハり見給へ志らぬ
  しものうへを裳見給ひなら者ぬ御心地
  めさ満しう可多し遣なう見つ可らおほさる
  いとち可く/\多ちく類をこれやあ
  万能し本やくならむとおほし王多るハおハし
0218【しほやくならむと】-<朱合点> 古今 スマノ浦ニしほやく煙風をいたミ立ハのほらて山にたなひく(新古今1592・古今六帖707)
  ますうしろの尓志ハといふも能ふすふるな
  李个(△&个)りめつら可尓て
    可つい本り尓多けるし者/\裳」(43オ・428①)
0219【山かつの】-源ー

  ことゝひこなんこふる佐と人冬尓なりて
  ふりあれ多るころそら能遣しきもとに
  春こくな可めをひき春さひ日て
  よしきよにうたう多ハせ大輔よこふえ布き
0220【大輔】-民部大輔惟光
  てあそとゝめてあ者れなるてなとひ
  きまへる尓とも能ゝこゑともハ屋めてな
  み多をのこひあへりむ可しのく尓ゝ徒
0221【むかし胡のくにゝ】-<朱合点>
  可ハし个むをおほしやりてましてい可なり
0222【女を】-王昭君事
  个んこの王可きこ遊ると越さや
  う尓者なちや里多らむことなとおもふ裳」(43ウ・428⑦)

  あらむことのやう尓遊可(可<朱>)しうてのゝち能
0223【霜のゝちの夢】-<朱合点> 胡角一声霜後夢漢宮万里月前腸 王昭君 心ヲ朝綱卿
  とすしふ(△&ふ)いとあ可う佐しいりて
  者可なき多ひのおましおくまてく満な
  しゆ可能うへ尓ふ可きそら裳いり
  可多の可けすこくみゆる尓ゝこれ
0224【たゝこれにしにゆくなり】-<朱合点> 河云 天廻玄鑒将霽唯是西行テ不左遷
  尓しにゆくなりとひとりこち多万て
    い徒可多の雲路もまと(と$よ<朱>)ひなむ
0225【いつかたの】-源ー
  みるらむことも者つ可しとひとりこち
  多地(多地#)連いのまとろまれぬあ可
  そらにとりいとあハれ尓なく」(44オ・428⑫)

    ともちとりもろこゑ尓なくあ可
0226【ともちとり】-源ー
  ひとりねさめ能とこも多能もしおき多る
  もなけ連ハ々ひとり古ちてふし
  へりよ婦可くてう徒万いり(+イ、イ#)ねん春なとし
  ふもめつらしきやう尓めて多う能
  ミおほえへハてまつり春て春
  あ可らさ満耳裳えいてさり个りあ可し能
  うらハ多ゝ者ひ王多るほとなれハよしきよ能
0227【はひわたる】-日本記ニ八マタノ大蛇ノ事ヲいふに八のおか八の谷ニはひわたるとかけり蔓延ノ二字をはひわたるとヨメリ
  朝臣可能入道む春めを日いてゝふミな
  屋り个れと返事裳せすちゝ入道き」(44ウ・429④)

  こゆへきなむあ可らさ満尓多いめんも
  といひ个れとうけひ可さらむも能ゆへ遊き
  ゝ里てむなしくかへらむうしろてもおこ
  なるへしとくむしい多うてい可す志ら
  春可くおもへる尓くにの者可(+ミ)のゆ可り
  のミこハ可しこき耳春めれとひ可
  めるはさらに佐もおも者てとしをへ
  遣る尓こ能可くてお者すときゝて者ゝき
0228【はゝきみ】-明ー尼
  ミ耳か多ら婦やうきり徒本の更衣
0229【きりつほの更衣の】-入道ノ詞
  者らの源氏ひ可るおほや遣能」(45オ・429⑨)

  可しこまり尓て春満のうらにものし
  あこのすくせ尓ておほえぬこと能あ類
0230【あこ】-後明石上
  い可てかゝる徒いて尓このにを多
0231【この君に】-源
0232【をたてまつらむ】-明石上

  まつらむといふ者ゝあ那可多者や
0233【はゝ】-明石上ノ母
  可多類をきけハやむことなめともいとお本
  くもちひてあまり志のひ/\見可と
  のめさへあやまち日てかくもさハ可れ
0234【御め】-ミ 妃<ミメ>
  ふなまさ尓かくあやしき可徒
  をとゝめてむやといふ者ら多ちて
0235【はらたちて】-入道詞
  志り多まハしおもふとなりさるをし」(45ウ・429⑭)

  へ徒いてして古ゝ尓もおハしまさせむと
  を屋りていふもかた多くなしくみゆ万者
  遊きまて志つらひ閑し徒き个り者ゝ
  と可めて多くともも能ゝハしめ尓徒ミ尓
0236【なとか】-母ノ詞
  あ多りて可されてハし多らむをし裳
  ひ可个むさてもこゝろをとゝめ婦へくハ
  こあらめハふれ尓てもあるましきこ
  なりといふをいとい多く徒ふやく徒ミ尓あ多る
0237【いといたく】-入道ノ詞
  ハもろこし尓も王可見可と尓もかく
  すくれな尓尓こと尓なりぬる」(46オ・430⑥)

  可なら須あるなりい可尓も能し
  こハゝみや春をの可をちにも能し
  ひし按察大納言のむ春めなりいとかう
  さくなるな越とりてミや徒可へ尓い多したまへり
  し尓古くわうすくれてときめ可し給事
  ならひな可りける本と尓ミをもくて
  うせし可と此君とまりへるいとめて
0238【此君】-源氏
  多し閑し可くつ可婦へきも能なり
  をのれ可ゝるゐ中人りとてお本し春てし
  なといひゐ多りこのむ春めすくれ多る可多ち」(46ウ・430⑪)
0239【このむすめ】-明石上事

  ならねつ可しうあて者可尓者せある
  さ満なとそ遣尓やむことなき尓おと流
  まし可り遣るありさ満越くちおしき
0240【身のありさま越】-明石上心中
  も能尓おもひ志りて可起をな
  可す尓もおほさし本と耳つけ多るをハさらに
  いのちな可くておもふ/\尓をくれ
  あ万尓もなりなむう見のこ尓
  むなとそ日遣るちゝき見ところせ
  おもひ可し徒きてとし耳ふ多ゝひす見
  よしにまうてさせ个り志るしを」(47オ・431②)

  そひと志れす多のミおもひ个る春満尓
  とし可へりて可く徒連/\なる尓うへ
  しわ可能さくら本の可尓さ起そめて
  氣しきう羅ゝ可なる尓よろつ
  ほしいてられてう地な起ふおりお本可り
  二月廿日あまりい尓しとしを王可れし
  くるし可りし/\のあり佐万ないと
  しく南殿さくらさ可りになりぬらん
  ひとゝせの遣しきうち
  のうへのいときよらになまめいて王可徒くれる」(47ウ・431⑧)

  く越すしひし裳おもひいてきこ盈
    いつとなく大宮人古ひしき尓
0241【いつとなく】-源ー
  さくら可佐し志个ふもき尓个りいとつ連/\
0242【さくらかさしし】-百シキノ大宮人はいと(新古今104・万葉1887・古今六帖2327・和漢朗詠25・赤人集176、花鳥余情・弄花抄・細流抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚)
  なる尓大殿三位中将いまは
0243【大殿】-致仕
  て可ら能いとよ个れハ時世おほえをもくて
  も能しへと世中あ者れ尓あちきなくも
  のゝおりこと尓しくおほ盈へハとの
  きこ盈ありて徒ミ尓あ多るともい可ゝハせむ
  とおほしなして尓者可尓まうてうち
  みるよりめつらしううれしき尓ひとつ」(48オ・431⑬)
0244【ひとつなみた】-<朱合点> うれしさもうきも心ハ一にてわかれぬ物ハ涙成けり(後撰1188、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)

  なミ多そこ本れ个る春まひへるさ満い
  者む可多なくからめい多さ満ゑ尓
  かき多らむやうなる尓あめるかきし
0245【竹あめるかき】-<朱合点>
  王多していしのハしのハしらおろそ
0246【いしのハし】-<朱合点>
  なるも能可らめつら可にお可し可つめきて
  ゆるしいろ能き可ちなる尓あ越尓ひの
0247【ゆるしいろの】-ユルシ色ノウチキ青鈍ノ指貫也<左>
  可りきぬさしぬきう地屋つ連てと佐ら
0248【かりきぬ】-狩衣
  尓ゐな可ひもてなしへるしもい見しう
  る尓ゑまれてきよらなりとり徒可ひ
  多まへるてうともかりそめ尓志那して」(48ウ・432④)

  おましもあらハ尓いれらるこすくろく
0249【こ】-碁
  者むてうと堂き能くなとゐ王さ尓志那
  してん春能くをこなひつとめ个りと
  多りも能まいれるなと佐ら尓つけゝう
  ありて志なし多りあまともあさりして可い徒
  も能もて万いれな(な$流)越めしいてゝらむす
  うら尓としふる佐万なとゝ者せさ満/\
  や春氣なきみ能う連へをこ者
  可となくさ盈つるもゆくゑ盤お
  こな尓可ことなるとあ者れ尓見給そとも」(49オ・432⑨)

  な可徒氣させふをい个るかひありと
  おもへりむ万ともち可う多てゝやりな
  くら可な尓そるい年とりいてゝか婦なと
0250【くら】-蔵
0251【かふ】-馬ニかう也

  めつらしう見給阿春可ひすこしう多
0252【あすかひ】-<朱合点> 催馬楽あすか井にやとりハすへしおけかけもよしみもひ(みもひ=寒氷)もさむしみまくさもよし飛鳥井
  ひて徒きころのも能可多りなきミわらひ
  ミ王可ともよ越おほさても能し
0253【わか君】-夕霧
  しさをおとゝのあけくれ尓徒个ておほし
  けくなとか多へ可多くお本し
  多徒きすへくもあらね可/\可多ハし裳
0254【つきすへくも】-作者詞
  盈ま年者すよもす可らまとろますふミ」(49ウ・433①)

  徒くりあ可しさいひな可ら裳も能(+<朱>)きこ盈
  を徒ゝミていそき可へりいと/\なり
  可ハら遣万いりてゑいの可なしひゝく
0255【ゑいのかなしひ】-<朱合点> 楽天江州左遷時三月卅日夷陵之所作詩詞也 もろ共ニめくりあひける旅枕なミたそそゝく春ノ盃 定家卿(拾遺愚草1726)
  さ可つきのうちともろこゑ尓すし
  とものをな可すをの可(+志ゝ)者つ可な
  王可れおしむへ可めりあさほら遣能そらに
  つれて王多るあ類しのきミ
    布る佐とをい徒連の者る可ゆきてミん
0256【ふるさとを】-源ー
  うらやましきハ可へる可り可年佐ら尓
  いてんちせて」(50オ・433⑥)

    あ可なく尓かりのとこよ越多ち王可れ
0257【あかなくに】-宰相
  見やこ尓みちやまとハむさるへき見
  やこの徒となとよしあるさ満尓てありあるし
  のかく可多し遣なきをくり尓とて
0258【くろこま】-<朱合点> 拾よそニアリテ雲井ニ見ゆる妹か家ニはやくいたらんあゆめ黒駒 人丸(拾遺集910・拾遺抄301・人丸集220、河海抄・休聞抄・紹巴抄・孟津抄・岷江入楚) 我かへる道ノ黒駒心アラハ君ハこすともをのれいなゝけ(拾遺集911、河海抄・休聞抄・孟津抄・岷江入楚)
  ろこ万多てまつり遊ゝしうおほされぬ
  へ个連と尓あ多りてい者へぬへ个れハな
0259【風にあたりてハ】-<朱合点>
  と申給尓あり可多けなるむ万能さ満な
  か多ミ尓志のひへとていみしきふえ能
  あり个るなとハ可りと可め徒へき
  可多ミにえし多まハすやう/\佐し」(50ウ・433⑬)

  あ可りてこゝろあハ多ゝし个れハかへりのミ
  しつゝいてをくりふ遣しき
  いとな可/\なりいついめむハと申給
  あるし
    ち可くとひ可ふ多もそらに
0260【雲ちかく】-源氏
0261【たつも】-三位中将をよそへたる也

  ハはるくもりなきそ可つハ多
  まれな可らかくなりぬるむ可しの閑しこき
  尓者可/\しうましら婦
  可多く个れハに可見やこのさ可ひを
  みんとな思侍らぬなとの」(51オ・434④)

    多つ可なき雲井尓ひとりねをそな
0262【たつかなき】-宰相返し たつきなき也 かときと五音通セリ 又つるをかくしてよめり
  徒者さなら遍しとも徒ゝか多し遣
0263【つはさならへしともを】-源氏によそへたり
  なくな連きこ盈いとし裳とくやし
0264【いとしも】-<朱合点> 拾 おもふとていとしも人にむつれけんしかならひてそミねハ恋しき(拾遺集900・拾遺抄326、源氏釈・異本紫明抄・河海抄)
  う思給へらるゝおりおほくな志めや可尓
  あらてかへりひぬるなこりいとゝ可なしう
  な可めくらしやよひの徒い多ち尓いて
  き多るみ能个ふなむ可くおほ春ことある
  ハみそきし多まふへきと万佐可しき
  きこ遊連ハう見徒ら裳ゆ可しうて
  いていとおろそ可尓しやうをひき」(51ウ・434⑪)
0265【せしやう】-軟障 センシヤウトヨムヘシ<左>
0266【許】-ハカリ

  くらしてこのく尓ゝかよひ遣る陰陽師
  してハらへせさせふ年尓こと/\しき
  人形のせてな可春を見給ふ尓よそへられて
    志らさりしおほう見のハらにな可れきて
0267【しらさりし】-源ー
  ひと可多尓やハも能ハ可なしきとてゐへる
  さ満さる者れ尓いてゝいふよしなくみえ
0268【はれ】-晴
  う見のおもてうら/\となき王多りて遊く
  ゑも志らぬ尓こし可多ゆくさ起おほし
  徒ゝ遣られて
    屋をよろつもあ者れとおもふらむ」(52オ・435②)
0269【やをよろつ】-源ー

  を可せる徒ミのれとな个れハとの尓ハ
  可尓ふきいてゝそら裳かきくれぬ者らへ
  裳志者てす多ちさハき多ひち可さあめ
0270【ひちかさあめ】-<朱合点> いもか門行過かね<墨>)ひちかさの雨もふら△△△&もふら<墨>)なんあまかくれせんあまかくれせん$カサヤトリせん<墨>)<朱>(古今六帖448・万葉2693、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
  と可ふりきていとあハ多ゝし个れハみな可へり
  むとする尓かさもとりあへ春さ流もな起耳
  よろつふきちらしなきなミいと
  い可めしう多ちて/\のあしをそ
  なりうミのおもてハ布すま越者り多らむ
0271【ふすま越はりたらむやうに】-<朱合点> 明月記云雨脚融<トヲ>地ニ電光張衾 道成集 年ことに冬ふる物としりなから床めつらしき衾雪哉(道成集2)
  やう尓ひ可り見ちてなりひらめくおち
  可ゝ流ちしてからうして多とりきて閑ゝ流」(52ウ・435⑦)

  めハすもある可ななとハふくも遣しき
  徒きてこあれあさましうめつら可な
  とまとふ尓やますなりみちてあめ農
  あし阿多累とおりぬへく者らめきお徒
  くてよハ徒きぬる尓やと本そまとふ尓
  ハのとや可尓う地すしてお者すくれぬ
  連ハ春こしなりやミてよ類裳
  ふくおほく多て徒るち可らなるへし
  い万志ハしかくあらハなミ尓ひ可れていりぬ遍
  可り个り可し本といふもの尓なむとりあへ春」(53オ・435⑬)

  こなハるゝとハきけといと可ゝ類ハま多
  志らすといひあへりあ可可多みなう地や
  春見たりきて(て$ミ)もいさゝ可ねいりへれハ
  さ満ともきてなとよ里めし
  ある尓ハ万いりハぬとてとりありくと
  類尓おとろきてさはう見の可能龍王能いと
0272【龍王】-彦火々出見尊を源氏にたとふ 龍神ノ豊玉姫ニあわせたてまつるに明石上をたとふ也
  い多うものめてするも能尓てい連多るな
  个りとおほ春尓いとも能む徒可しうこの
  ま井多へ可多くおほしなりぬ」(53ウ・436④)

  伊勢海>(明石 奥入01)
  しなつ(つ$へ)うら布れひるのこの(明石 奥入02)
  日本世紀故略
   二男蛭児生而體如蛭及三年
   不起其父母之乗葦船而流
  文集
琵琶引>(明石 奥入03)
  今年歓笑後明年秋春風等閑度
  弟走従軍河夷死暮去朝朱顔色
  故門前寒落鞍馬稀老大嫁作商人婦
」(54オ)

  商人重利軽離別前月浮梁買茶花
  去来江口守空船遶船月明江水寒
  夜深忽夢少年事夢啼粧渡紅蘭

  我聞琵琶已嘆息又聞此語重喞々
  同是天涯淪落人相悲何無曽相識
  我従去年辞帝京謫居病臥尋陽城
  尋陽小處無音樂終歳不聞糸竹聲
  今夜聞君琵琶語如聴仙樂耳暫明
  莫辞更坐弾一曲為君翻作琵琶行
  咸我此言良久却坐従絃々轉急
」(54ウ)

  悽々不似向前聲満座重聞皆淹泣
  就中泣下誰最多江別司馬青衫湿

  まくなき(明石 奥入04)
   可尋勘但凡俗之詞有之是
  晋書嵆康傳
(明石 奥入05)
  嵆康嘗遊洛西暮宿美陽中
  引琴弾夜分忽有客詣々称是
  古人与康共談音律辞致清辨
  因索琴弾之而為庵陵散聲調
」(55オ)

  絶倫遂以桴康仍誓不傳人亦不言
  其姓字
   以上陬磨巻也誤而書此巻
」(55ウ)

  イ本
  源氏廿五六歳事 以哥并詞為巻名」(55ウ)

  す満<墨> 一校了<墨> 二校了<朱>」(表表紙蓋紙)