First updated 02/24/2003(ver.1-1)
Last updated 11/02/2015(ver.3-2 凡例5 修正)
渋谷栄一翻字(C)

花散里

 

【概要】

・定家本原本「花散里」帖(尊経閣文庫蔵)は全文非定家筆の写本である。

・引き歌を注記した付箋が2枚貼付されているが、その筆跡は本文筆写とは別の筆跡と見受けられる書体である。また定家の筆跡とも別書体である。

・本行本文中の引き歌箇所に朱筆による合点(掛け点)が1箇所ある。

・奥入は存在しない。

・和歌の書写様式は、地の文から改行して和歌の冒頭を2字下げて書き出し、上句と下句との間で改行し、下句の頭の位置を上句の頭の位置に揃えて書く(U類)。そして、和歌の下に直接地の文を続ける形式(D型C)と、1字空けて地の文を続ける形式(E型AB)、さらには和歌の下を余白にし改行して地の文を続ける形式(F型@)、という3種類の型が見られる。定家本原本「柏木」の定家親筆部の定家の和歌の書写様式(T類A型AB・B型@)とは明瞭な相違である。なお「花散里」の和歌の書写様式は明融臨模本「帚木」にも見られる。

・行頭の隣行に同字が来た場合は別の種類の字母で書き分けられている(17「堂」・8「多」・9「堂」)。

 

【凡例】

1.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。

2.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。

3.変体仮名はその字母で翻字した。

4.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。

5.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「と付記した。

6.「な(なめ)れと」(12)は、本行本文「な」と「れ」の間に補入符号がなく(「」)、右側行間に「め」と補入(「+」)されているという表示である。なおその補入文字は本文一筆である。また「おほ/さる(る&る)ゝ」(35)は、本行本文「る(留)」の上に重ね(&)て「る(留)」と修正したものいである。本文と同筆である。

7.本行本文は10.5ポイントで表示し、書入注記や付箋等は9ポイントで表示した。

 

ちる佐と」(題箋)

 

  ひとしれぬ御心徒可らのも者しさはいつと
  な
きことな(なめ)れとかくおほ可多のよ尓つけてさへ
  わつら者しうお
ほしみ堂るゝことのみまされハ

  ものほそく世中へていと者しうおほし
  な
らるゝにさす可なることおほ可りれい遣いてんと
  きこえしハ堂ちもお
者せす可くれさ勢
  堂まひてのちいよ/\あ者れな
ありさ満を
  多ゝこの大将殿御心尓もて可くされてすくし
  堂まふな
るへしをとうとのきみうち」(1オ・387E)

 

  わ多り尓て者可那う本の免き堂まひしなこり
  のれいの御心
れハさす可尓わ春れも者て多ま者す
  わさともゝてな
し堂ま者ぬ尓御心をのミ徒く
  し者て堂まふへ可免るをもこのころの
こること
  な
くおほしみ多るゝよのあ者れのくさ者ひ尓は
  いて堂まふ尓者しのひ可多くてさみ多れのそら
  めつらしく者れ多るくもまにわ多り
尓者可り能
  御よそひな
くうちや徒してせんなともなく志
  のひてな可ゝはの本とお
者しすくるにさゝや可な
  いへ能こ堂ちな
とよし者免る尓よくなることを」(1ウ・387K)

 

  あ徒ま尓しらへて可きあ者せ尓き者ゝしく
  ひきな
すなりみゝと満りて可とちかななれハ
  すこしさしいてゝみいれ堂まへハお
ほきな累可徒ら
  のき能お
ひ可せ尓まつりのころお本しいてられてそ
  こ者可となくけ者ひお
可しきを堂ゝひと免み
  しやとりな
りとみ多まふ堂ゝならすほとへ尓个る
  お
ほめ可しくやとつゝまし遣れとすき可てにやすらひ
  堂まふお
りしも本とゝきすなきてわ多るもよ
  をしきこえ可ほな
れハくるま越し可へさせて」(2オ・388C)

 

  れいのこれみついれ
    お
ち可へりえそしの者れぬ本とゝき須
    本の可堂らひしやとの
可きね尓
  志ん殿とお
ほしきやの尓しのつま尓人/\ゐ多り
  さき/\もきゝしこゑな
れ者こわつくり遣し
  きとりてせうそこきこゆわかや可な
る个しき
  ともしてお
ほ免くなるへし
    本とゝきすことゝふこゑ者それな
れと
    あ那お
ほつ可なさミ多れのそら こと佐ら堂」(2ウ・388I)

 

  と累とみれ者よし/\うへし可きねもとてい徒る

0001うへし可きねも】−<朱合点>
  をしれぬ尓者ね堂うもあ者れ尓も个り
  さもつゝむへきことそ可しことわり尓もあれハさ
  す可な
り可やうのき者につくし能こせち可らう
  堂个なりし者やとま徒お
ほしいついかな
  尓つ遣ても御心のいとま那くゝ累し遣な
りとし
  をへても可やう尓みしあ多りな
さけす
  くし堂ま者ぬ尓しもな
可/\あま多の
  ものおもひくさなり可能本いのところ者おほし」(3オ・389@)

 

  やり徒るもしるくめなくしつ可尓てお者する
  ありさ満をみ堂まふもいとあ者れな
りまつ女御
  の可多尓てむ可しのもの可多りな
ときこえ
  ふ个に遣り廿日さしい徒る本とにいとゝ
  こ堂可き可けともこくらくみえわ多りてち可き
  堂ち者那の可本りなつ可しく尓本日て女御
  者ひね日尓堂れとあくまてよういありあてに
  らう堂个な
りすくれて者なや可なるをほえ
  こそな
可りし可とむつましうなつ可しき可多にハ」(3ウ・389E)

 

  おほし堂りしをないてきこえ尓つけ
  てもむ可しのこと可きつらねお
ほされてうちな
  堂まふ本とゝきすありつるかきねの尓やお

  こゑ尓うちなくし堂ひき尓个るよとお

  さる(る&る)ゝほともえんな
り可しい可尓しりて可な
0002い可尓しりて可】−<朱合点> い尓しへのことか多らへハほとゝき春/い可尓し里て可なくこゑ能する(付箋01
  しのひや可にうちすんし
    堂ちの可をなつ可しミほとゝきす
0003堂ち花の可をなつ可しミ】−堂ち可本なつ可し見ほとゝき須/か多らひしつゝな可ぬそ那き(付箋02
    者那ちるさとを堂つねてそとふ い尓しへの
  わすれ可多きな
くさめにハなをまいりぬへ可り」(4オ・389K)

 

  遣りこよ那うこそ満きるゝことも可すそふ
  ことも者へり个れお
ほ可多のよ尓し堂可ふもの
  な
れ者む可し可堂りも可きく徒すへき春く
  なうな
りゆくをましてつれ/\も満きれなくお
  ほさるらんときこえ堂まふ尓いとさらなるよ
  な
れとものをいとあ者れ尓おほしつゝ遣堂累
  けしきの
あさ可らぬもさ満可らにやお
  くあ者れそゝひ尓个る
    ひと免な
くあれ多るやとは堂ち者那の」(4ウ・390C)

 

    者那こそのき能つまとなり遣れと者可り
  の堂まへるさはいへと尓者いとことな
り遣り
  とお
ほしくらへらる尓しおもてにハわさとなく志
  のひや可尓うちふ累まひ多ま日てのそきへる
  も免つらしき尓そへてよ尓免な
れぬさ満
  な
れ盤徒ら佐もわすれぬへしな尓や可やとれいの
  なつ可しく可堂らひ堂まふもお
ほさぬことにあ
  らさるへしかり尓もみ堂まふ可きりハをしな
へて
  のきは尓ハあらすさ満/\につ遣ていふ可ひな

と」(5オ・390H)

 

  おほさるゝはな个れ者尓や尓く遣なくわれも
  もな
さけを可者しつゝすくし堂まふなり遣り
  それをあいな
しと思人者と尓可くにか者るも
  こと者りのよのさ可とお
もひなし堂まふあり
  つるかきねもさやう尓てありさ満可者り尓多る
  あ堂りな
り遣り」(5ウ・390L)