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若 紫

凡例

1.『定家本源氏物語 若紫』(高精細原寸カラー版影印 八木書店 2020年3月)に拠って、漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。
2.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。
3.変体仮名はその字母で翻字した。
4.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。
5.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「」と付記した。
6.本行本文は普通字体で表示し、付箋は小字体で表示した。 奥入の後からの行間書き入れも小字体で表示した。朱合点はで表示した。
7.行頭に同字が並ぶ場合に、異なる字母は茶色、同じ字母は緑色で表示した。


「わ可むらさ起」(題箋)

  わらハやミにわ徒らひ堂まひてよろつ尓
  ましなひ可ちなと万いらせ多まへと志るし
  なくてあま多ゝひおこり堂まひ个れ盤ある
  き堂やま尓なむな尓可してらといふ
  尓かしこきをこなひゝとるこそ
  も尓おこりて/\ましな日わつらひしを
  や可てとゝむる堂くひあま多りきしゝこら
  可し徒る者う多てるをとくこそ心見させ」(1オ)

  堂ま者免なときこゆれハめし尓つ可ハし堂るに
  おい可ゝまりてむろのと尓もま可てすと多れハ
  い可ゝはせむいとしの日てせむとの多まひて
  とも尓むつましき四五人者可りしてま多あ可
  尓お者すやゝふ可ういるり个り三月
  つこもりなれハの者那さ可りハミ那すき尓
  遣りのさくらハま多さ可りにていりもてお者する
  まゝ尓可すミの堂ゝすまひもお可しうみゆれ者
  可ゝるありさ満もならひ堂ま者すところせき」(1ウ)

  御身尓て免つらしうおほされ个りてらのさ満
  もいとあ者れなりミね堂可くふ可きい者の
  そひ志りいり井多り个るのほり堂まひて多れ
  ともしらせハすいとい堂うや徒れ多まへれと
  しるきさ満なれハあ那可しこや一日めし
  志尓やお者しますらむいま者このとを
  おもひ堂まへね者遣む可多のをこなひもすて
  わすら(ら$)れてるをい可て可うお者しましつらむと
  おとろきさはきうちゑミ徒ゝ多てまつる」(2オ)

  いと堂うとき堂いとこなり遣り佐るへきつくり
  てす可せ堂てま徒るかちなとまいるほと
  可くさしあ可りぬすこし堂ちいて徒ゝみ王多し
  堂まへハ多可き尓てこゝかしこそう者うとも
  あら者にミおろさるゝ堂ゝこの徒ゝらおりの
  も尓おしこしハなれとうるわしく志わ多
  てきよ个なるやらうなとつゝ遣てこ多ちいと
  よしあるはなのすむ尓可とゝひ堂まへハ
  ともなこれなむな尓可しそうつのこのふ多と/せ」(2ウ)

  こもりる可多尓者徒可しきすむな
  尓こそあなれあやしうもあまりや徒し个る
  可那きゝもこそすれなとの堂まふきよ个な
  わらハなとあま多いてきてあ可多てまつり
  なとするも阿ら者にミゆ可しこにこそあり遣れ
  そうつハよもさやう尓ハすへ堂ま者しをい可な
  らむとくち/\いふおりてのそくもありお
  し遣なることもわ可きわらハへな
  るといふきミはをこ那日し堂(□&堂)まひつゝひ多くる/まゝ尓」(3オ)

  い可ならむとおほし堂るをと可う満きらハさせ多
  まておほしいれぬなむよくるときこゆれハ志り
  への尓堂ちいてゝの可多を多まふ者る可に
  可すミわ多りてよも能こす衛そこ者可となう遣
  ふり王多れる本とゑ尓いとよくも尓多る可那可ゝる
  ところ尓すむ人心尓おもひのこすことはあらし可し/と
  の堂まへハこれハいとあさくのく尓なとに
  るうみやまのありさ満なとをらむせさせて
  者へらハい可尓ゑいミしうまさらせ多ま者む」(3ウ)

  ふしの尓可しの堂个なと可多りきこゆるも
  あり尓しく尓のおもしろきうら/\いそのうへを
  いひつゝくるもありてよろ徒尓まきゝらハしきこゆ
  ち可き尓ハ者りまのあ可しのうらこそとに
  れな尓能い堂りふ可きく満ハな个れと堂ゝうみの
  おもてをみ王多し多るほとなむあやしくこ
  尓ゝすゆ本ひ可なるかのく尓の佐きの可ミ
 01 ミよしのゝおほ可者のゆ本ひ可尓/あらぬもの可らなミ能多つらむ(付箋①)
  し本ち能むす免可し徒き多るいゑいとい多し可志
  大臣のゝち尓ていて多ちもすへ可り个るのよのひ可」(4オ)

  尓てましらひもせす近衛中将をすてゝ
  堂ま者れり个るつ可さなれと可のく尓の尓もす
  こしあなつられてな尓のめいほく尓て可又宮こ尓
  も可へらむとい日てかしらもおろしり尓个るを
  すこしおくまり堂るやますミもせてさるうみつ
  ら尓いて井堂るひ可/\しきやうなれと遣尓可のく尓
  のうち尓佐ものこもり井ぬへき/\ハありな可ら
  ふ可きさとはひと者なすこくわ可きさいしの
  おもひわひぬへき尓より可つハをやれるすまひ尓」(4ウ)

  なるさい徒ころま可りく堂りてりしついて尓
  ありさ満み多まへ尓よりてりし可ハ尓てこそ
  ところえぬやうなり个れそこら者る可にい可免しう
  めてつくれるさまさはいへとく尓の徒可さ尓て
  をき个ることなれハのこりのよ者ひゆ堂>可にふへ
  き可まへも尓那くし堂り个りのちのの徒と
  めもいとよくして/\本うしまさりし堂る
  尓なり个るとせはさてそのむす免ハとゝ
  ひ堂まふけしうハあらす可多ち者へな/り」(5オ)

  堂い/\のく尓の徒可さなとよういことにしてさ
  累者へミすなれとさらにう遣ひ可すわ可みの可く
  い堂つらにし徒める多尓あるをこのひとり
  尓こそあれおもふさまことなりもしわれ尓を
  くれてそさしとけすこのおもひをき徒るすく
  せ堂可ハゝうミ尓いりねとつね尓ゆいこし越きて
  るときこゆれ者きみもお可しときゝ給人/\か
  いりうわうのきさき尓なるへきい徒きむす免
  なゝり堂可佐くるしやとてわらふ可くいふ者ゝり」(5ウ)

  まの可みのこのくらよりことしかうふりえ多る
  なり个りいとすき堂るれハ可の尓う多うの
  ゆいこんやふり徒へき者あらむ可しさて堂ゝ
  すみよるならむといひあへりいてな尓しにさいふと
  もゐひ堂らむおさなくよりさる尓お
  いてゝふる免い堂るおや尓のミし堂可ひ多
  らむハ者ゝこそゆへあるへ个れよきわ可うとわらハ
  なとこのやむこと那き/\より累(+い)尓ふれて多
  つねとりてま者ゆくこそもてなすなれなさけ」(6オ)

  なりてゆ可ハさてやすくてしもえを
  き堂らしをやなといふもありありて
  うみのそこまてふ可うおもひいるらむそこのみる
 02 あまのすむそこのるめも者つ可しく/いそにおい多るわ可めをそ可る(付箋②)
  免もむつ可しうなとの堂まひて堂ゝならす
  おほし堂り可やう尓てもなへてならすもてひ可
  み多る(□&る)ことこのみ多まふ御心れハみゝとゝまら
  むをやとみ堂て万つるくれ可ゝりぬれとおこらせ
  ハすなりぬる尓こそはあめれ者や可へらせ多まひ
  なむとあるを堂いとこものゝ遣なとく者ゝれる」(6ウ)

  さ満尓お者しまし个るをこよひ者しつ可尓
  可ちなとまいりていてさせ多まへとす佐もある
  ことゝみな人申も可ゝる堂ひねもならひ
  者ねハさす可尓お可しくてさらはあ可尓との多まふ
  くてつれ/\なれハゆふくれのい堂う可すミ多る
  尓まきれて可のこしハ可きの本と尓堂ちいて
  /\ハし堂まひてこれミつのあそむとのそ
  堂まへハ多ゝこの尓しおもて尓しもすへ多てま
  つりてをこなふあまなり遣りす多れすこしあ遣/て」(7オ)

  者那多てま徒るめりの者しらによりゐてけ
  うそくのうへ尓をゝきていとなやましけ尓よミ
  井多るあま多ゝとみえす四十よ者可り尓て
  いとしろうあて尓や勢堂れと徒らつきふくら可に
  まみの本と可みのうつくし遣尓そ可れ多るす衛も
  /\な可きよりもこよ那ういま免可しき可那と
  あ者れ尓み多まふきよ个なるおと那ふ多り者可り
  さてわらハへそいていりあそ者可りやあらむと
  みえてしろきゝぬやまふきなとのなへ多るきて」(7ウ)

  者しりき堂るこあま多みえ徒ることも尓ゝ
  るへうもあらすいミしくおひさきみえてうつくし
 03 い徒こ尓可屋とりとならんあさ/この/さ春やお可への多万佐ゝの/うへ(付箋③「帚木」の誤貼付)
  けなる可多ちなり可み者あふきをひろ遣多る
  やう尓ゆら/\として可をはいとあ可くすりなして
  堂てりな尓ことそやわらハへとはら多ち堂まへる
  可とてあまのみあ遣多る尓すこしおほえ多る
  ところあれ者こな免りとみ堂まふすゝ免のこを
  いぬき可に可し徒るふせこのうち尓こめ多り徒る
  (+ヲ)とていとくちおしとおもへりこの井多るおと那」(8オ)

  れいのし能可ゝるわさをしてさいなまるゝこそ
  いと心月个れいつ可多へ可ま可りぬるいとお可しう
  やう/\なり徒るを可らすなともこそみつくれ
  とて堂ちてゆく可みゆるゝか尓いと那可くめやす
  きめり少納言の免のとゝそいふめるはこの
  このうしろミなるへしあまきみいてあ那お
  なやいふ可ひなし堂まふ可那をの可ゝく遣
  ふあす尓おほゆるいのちをハな尓ともおほし
  堂らてすゝめし堂ひ多まふ本とよつミうる」(8ウ)

  ことそとつね尓きこゆるをうくとてこちやといへハ
  ついゐ多り徒らつきいとらう堂个尓てまゆのわ
  堂りうち遣ふりい者けなく可いやり堂るひ多日
  つき可むさしいみしうゝつくしねひゆ可むさ満
  ゆ可しき可那と免とまり多まふさるは可きり
  なを徒くしきこゆる尓いとよう尓堂て
  まつれる可まもらるゝなり遣りとおもふ尓もなミ多
  そつるあま可みを可きなてつゝけつることを
  う累さ可り堂まへとお可しのくしやいと者可なう」(9オ)

  し堂まふこそあ者れ尓うしろめ多个れ可者
  可り尓なれハいと可ゝらぬもあるをこひめ
  は者可り尓て殿尓をくれ堂まひし本といミ
  しう者おもひしり多まへりし可志堂ゝいま
  越のれミすて堂てまつらハい可て尓お者勢むと
  すらむとていミしくなくを堂まふもすゝろ尓
  可なしおさなち尓もさす可にうちまもりて
  ふしめ尓なりてうつ婦し堂る尓こほれ可ゝり
  堂る可みつや/\とめて多うミゆ」(9ウ)

   おひ堂ゝむありかもしらぬわ可くさを
   をくらすつゆそきえむそらなき
  ゐ多るおとな遣尓とうちなきて
   者徒くさのお日ゆくす衛もしらぬま尓
   い可て可つゆのきえむとすらむ
  ときこゆるほと尓そうつあな多よりきてこ那多
  者あらハ尓やらむ遣ふしもはし尓お者しまし
  个る可那この可みのひ志りの可多尓しの中将
  わらハやミ満しなひ尓し堂まふ个るを多ゝいま」(10オ)

  なむきゝつけ者へるいミしうしのひ多まひ个れハ
  しりらてこゝ尓りな可らとふらひ尓もまて
  り个るとの堂まへハあ那いミしやいとあやしき
  まをつらむとてす多れおろしつこの
  尓のゝしり堂まふひ可るし可ゝる徒いてに
  み多てまつり多ま者むやをすて堂る本うし
  のち尓もいミしうのうれへわすれよ者ひのふる
  ありさ満なりいてせうそこきこえむとて
  堂つをとすれハ可へり堂まひぬあ者れなを」(10ウ)

  み徒る可那可ゝれハこのすきともハかゝるありきを
  のミしてよくさるましきをも徒くるな
  遣り堂まさ可に多ちいつる堂尓可く日のほ可
  なることをるよとお可しうおほすさてもいと
  うつくし可りつ累ちこ可なゝ尓らむ可の
  者りにあけくれのなくさめ尓もみ者やとおもふ
  ふ可うつきぬうち婦し多まへるにそうつのてし
  これみつをよひいてさす本と那きれハ
  や可てきゝ堂まふよきりお者しまし个るよし」(11オ)

  堂ゝいまな人申す尓おとろきな可らさふら婦
  へきをな尓可しこのてらにこもりりとはしろ
  しめしな可ら志の日さ勢多まへる越うれ者しく
  おもひ堂まへてなむくさのむしろもこの者う
  尓こそまう遣へ个れいと本いなきことゝ多まへり
  いぬるのほとよりわらハやみ尓わつらひるを
  堂ひ可さなりて堂可(可〈朱〉)へ可多くつれハの越しへの
  まゝ尓ゝ者可尓多つねいり者へりつれとかやうやう
  なるのしるしあら者さぬ者し多な可るへきも」(11ウ)

  堂ゝなるよりハいと本しう多まへつゝみてな
  い多うしのひつるいまそ多尓もとの多まへり
  すな者ちそうつまいり堂まへり本うしなれといと
  者つ可しく可らもやむこと那くよ尓おも者れ
  へ累れ盤可る/\しきありさ満を者し堂な
  おほす可くこもれる本との御物可多りなときこえ
  堂ま日ておしゝ者のい本りなれとすこしすゝし
  きのな可れもらむせさ勢むとせちにきこえ
  堂まへハ可のま多ミぬ/\尓こと/\しういひき可勢」(12オ)

  徒るをつゝましうおほ勢とあ者れなりつるあり
  さ満もいふ可しくてお者しぬ遣尓いととによし
  ありておしきくさをもうへなし多まへりもな
  きころなれハやり尓可ゝりともしとうろな
  尓もまいり多りミ那みおもていときよ个にしつらひ
  堂まへりそら堂きいと尓くゝかほりいてみやう
  可う能可なとに本ひミち多るにきミのをひ可せ
  いとこと那れ者うちの/\も徒可ひすへ可めり
  そうつよのつねな御物可多りのち能のことなと」(12ウ)

  こえしらせ多まふわ可つミのほとおろしうあち
  きことにを志めてい个る可きりこれをおも日
  なやむへきなめりましてのち能いミし可へき
  ほしつゝ遣てかうやうなるすまひもせま本しう
  本え多まふもの可らひるのおも可遣尓可ゝりて
  こひし个れハこゝ尓者堂れ尓可多つね
  きこえま本しきゆ免を多まへし可な遣ふ
  なあ者せ徒るときこえ堂まへハうちわらひて
  うちつ遣なゆ免可多りにそる多つねさせ」(13オ)

  堂まひても御心をとり勢させ多まひぬへし
  こあせちの大納言尓なくてひさしくな
  ぬれ者江しろし免さし可しそのき多の可多な
  な尓(+可、可&か)し(し&し)可いもうとにる可のあせち可くれての
  そむきてる可このころわつらふこる尓より
  可く尓もま可てね者堂のもし尓こもりて
  るなりときこえ可能大納言のミむすめ
  ものし堂まふときゝ多まへしハすき/\しき
  可多尓ハあらてまめや可尓きこゆるなりとをし」(13ウ)

  の堂まへハむす免多ゝひとりしうせてこの
  よねん尓やなりぬらむこ大納言内尓堂て
  まつらむなと可しこういつきしをそのほいの
  ことくもらてすき者へり尓し可ハ多ゝこ
  のあまひとりもてあつ可日し本と尓い可な
  のしわさ尓可兵部卿むしのひて
  可堂らひつき多まへり个るをもとのき多の可多
  やむことなくなとしてやす可らぬことおほくてあ遣
  くれものをおもひてなむなくなりり尓し物思日尓」(14オ)

  やまひつくと免尓ち可くみ堂まへしな
  堂まふさらはそのこなり个りとおほしあ者せつ
  みこのすち尓て可の尓も可よひきこえ多る尓
  やといとゝあ者れ尓みま本しの本ともあて尓お
  しう/\のさ可しらくうちか堂らひてのまゝ
  尓をしへおほし堂てゝみ者やとおほすいとあハれ/尓
  し堂まふこれ者とゝ免多まふ可多みも
  なき可とおさな可り徒るゆく衛の多し可に志ら
  まほしくてとひ多まへハなくなし本と尓こ/そ」(14ウ)

  りし可それも尓てそゝれ尓つ遣てもひの
  もよ本し尓なむよ者ひのす衛尓おもひ多まへ
  な个きめるときこえされ者よとおほさ累
  あやしきことなれとおさなうしろミ尓お
  ほすへくきこえ堂まひてんやおもふありてゆ
  きかゝ徒ら婦可多もりな可らのしまぬ
  尓やあらむひとりすミ尓てのミなむま多尓けな
  ほとゝつねの尓おほしなすらへて者し多なく
  やなとの多まへハいとうれし可るへきおほ勢(+こと)なる/を」(15オ)

  ま多む遣尓い者けなきほと尓めれ者堂者ふ
  れ尓てもらむし可多くやそも/\尓もて
  なされておと那尓もなり堂まふものなゝれ者
  く者しくハえとりまう佐す可のを者に可堂らひ
  りてきこえさせむとすくよ可にいひてこ者き
  さまし堂まへれ者わ可き御心尓者つ可しくてえ
  よくもきこえ堂ま者すあミ多ものし多まふ
  堂うにするこるころ尓なむそやいま多つと
  免らすゝくしてさふら者むとてのほり日ぬ」(15ウ)

  ちもいとなやましき尓あ免すこし
  うちそゝき可せひやゝか尓ふき堂る尓
  堂きのよとみもまさりて越と多可うきこゆ
  すこしねふ多遣なの堂え/\すこくき
  こゆるなとすゝろな累可らあ者れな
  ましておほし免くらすことおほくてまとろまれ
  堂ま者すそやといひし可ともよもい多うふけ
  尓遣りうち尓ものねぬ遣者ひしるくて
  いとしのひ堂れとすゝのけうそく尓ひきなら」(16オ)

  さるゝをとほのきこえなつ可しうゝちそよめく
  をと那日あて者可なりときゝ堂まひてほとも
  なくち可遣れ盤と尓堂てわ多し多るひやうふの
  をすこしひきあ个てあふきをならしへハ
  おほえなちすへ可めれときゝしらぬやう尓
  やとてゐさりい徒るあなりすこしゝそきて
  あやしひ可みゝ尓やと堂とるをきゝ堂まひて
  ほと个能しるへハくらき尓いりても佐らに堂可
  婦まし可なをとの多まふこ衛のいとわ可う」(16ウ)

  あてなる尓うちいてむこはつ可ひも者つ可し遣
  れとい可な累可多のしるへ尓可はおほつ可なくと
  きこゆ遣尓うちつ遣なりとおほめき堂ま者む
  もこと者りなれと
   者徒くさのわ可者のうへをみ徒るより
   堂ひねのそてもつゆそ可者可ぬ
  ときこえ堂まひてむやとの多まふさらに可うやう
  のせうそこう遣者りわくへき
  堂ま者ぬさ満ハしろしめし多りけなる越多れ/尓可ハ」(17オ)

  ときこゆをのつ可らさるやうありてきこゆるならむと
  おもひなし多まへ可しとの堂まへハいりてきこゆあ那
  いま免可しこのきみやよつい多るほと尓お者するとそ
  おほすらむさる尓てハかのわ可くさをい可てきい
  多まへることそとさ満/\あやしき尓ミ多れて
  ひさしうなれ者なさ个なしとて
   まくらゆふこよひ者可り能つゆ个佐を
   みやまのこけ尓くらへさらな
  ひ可多うをときこえ可(+う)やうのつい(い〈朱〉)てなる」(17ウ)

  せうそこはま多さらにきこえしらすならハぬ
  こと尓なむ可多しけなくともかゝるついて尓まめ/\
  しうきこえ佐すへきことなむときこえへれハ
  あまひ可こときゝ堂まへるならむいとむつ可し
  き个は日尓な尓ことを可ハいらへきこえむと
  の多まへハ者し堂那うもこそほ勢と/\き
  こゆ遣尓わ可や可なこそう多てもあらめま
  めや可尓の多まふ可多しけなしとて井さりより
  へりうちつ遣尓あさは可なりとらむせられぬへ/き」(18オ)

  ついてなれと尓者佐もおほえらねハ本とけハ
  をのつ可らとておとな/\しう者つ可しけなる尓つゝ
  まれてとみ尓もえうちいて多ま者すけ尓おもひ多ま
  へよりか多き徒いて尓可くまての堂ま者せきこえ
  さするもい可ゝとの多まふあ者れ尓う遣多ま者累
  ありさ満を可のすき尓个む可者りにお
  しないてむやいふ可ひなきほとのよ者ひ尓てむつ
  まし可るへき尓も多ちをくれり尓个れハあや
  しうゝき堂るやう尓てとしをこそ可さねれ」(18ウ)

  おしさ満尓し堂まふなる越多くひ尓なさせ
  まへといときこえま本しきを可ゝるおり可
  くてなむおほされむをも者ゝからすうちいて
  りぬるときこえ多まへハいとうれしうおもひ多まへ
  ぬへきとな可ら(ら&ら)もきこし免しひ可免多るこ
  なとやらむと徒ゝましうなむあやしきひとつ
  を堂のもし尓するれといとま多いふ
  可ひなきほと尓てらむしゆる佐るゝか多も
  り可多けなれハえなむう遣者りとゝめられ」(19オ)

  さりけ累との多まふミ那おほつ可な可らすう遣ハる
  ものをところせうおほし者ゝからておもひ多まへ
  よる佐まことなのほとをらむせよときこえ
  堂まへといと尓けなきことを佐もしらての多まふ
  とおほしてと个多るいらへもなしそうつお
  しぬれ盤よし可うきこえそりぬれハいと多
  のもしうなむとてをし堂て多まひつあ可可多に
  なり尓个れハ法花三昧をこなふたうの懺法
  こ衛ろし尓つきてきこえくるいと多うとく」(19ウ)

  堂きのをと尓ひゝきあひ多り
   ふき満よふミやまをろしにゆ免さめて
   なミ多もよほす堂きのをと可那
   佐しくみ尓そてぬらし个る山水
   す免累者佐者きやハ春る
  みゝなり尓个りやときこえあけゆくそらは
  いとい多う可すミてやまのとりともそこ者可と那う
  さへつりあひ多りなもしらぬきくさのともい
  ろ/\尓ちりましり尓しきをしけ累とゆるに」(20オ)

  し可の堂ゝすミありくもめつらしくみ多まふ尓
  なやまし佐もまきれ者てぬひしりうこきもえ
  せねとと可うしてしん万いらせ可れ多るこ衛の
  いとい多うすきひ可めるもあ者れ尓くうつきて多らに
  ミ多りむ可への/\まいりてをこ多り多まへる
  ろこひきこえよりもとふらひありそう徒
  みえぬさ満のく多尓くれと堂尓のそ
  まてほりいていとな那ミきこえとし者可りの
  ち可ひふ可うりてをくりにもえまいりる」(20ウ)

  ましきこ/\尓もおもひ多まへらるへき可那ゝと
  きこえておほミき万いり給山水とまり
  りぬれとよりもおほつ可な可らせへるもかし
  こ个れハなむいまこののおりすくさすまいり/こむ
   みや尓ゆきて可堂らむさくら
   可勢よりさき尓きてもるへく
  との多まふもてなしこわつ可ひさへめもあや
  なる尓」(21オ)

   うとむの者那まちえ多るちして
   みやま佐くらにめこそう徒らね
  ときこえ多まへハほゝゑミてありてひと堂ひゝ
  らくなるは可多可なるものをとの多まふひしり
  可者らけ多ま者りて
   おのま徒のと本そ越まれ尓□□□
   ま多ミ>ぬ者那の可ほを
  うちなきて多てまつるひしりまもりに
  こ堂てまつるみ堂まてそうつ佐うとく堂い」(21ウ)

  しのく多らよりえ堂まへりけるこむ可うし
  のすゝの堂まのさうそくし堂るや可てそのく
  尓よりいれ多る者この可らめい多累をすき多る
  ふくろ尓いれてこえうのえ多尓つけてこむる
  り能つ本とも尓くすりともいれてふち佐くら
  なとにつ个てところ尓つ个堂るをくり
  も佐ゝ遣多てまつり堂まふひしりよりハしめ
  し徒る本うしのふ勢ともまうけのとも
  さま/\尓とりにつ可ハし多り个れハそのわ多りの」(22オ)

  やま可徒まてさるへきとも多まひ
  していてうち尓そうついり堂まひて可のきこ
  え多まひしことまね日きこえへととも可くも
  堂ゝいま者きこえむ可多な御心さしあらはいま
  四五ねんをすくしてこそハとも可くもとの多まへハ
  さなむとおしさ満尓のミあるをほいなしと
  おほすせうそこそう徒のもとなるちゐさき
  わらハして
   ゆふまくれ本の可に者那のいろをみて」(22ウ)

   けさは可すミの堂ちそわつらふ
  御返
  まこと尓やのあ多りハ堂ちうきと
  可すむるそらのけしきをも
  とよしあるてのいとあてなるをうちすて可い多まへ/り
  くるま尓多てまつるほと大殿よりいつちともな
  てお者しまし尓个ることゝてむかへの/\きみ
  堂ちなとあま多まいり多まへり頭中将左中弁
  さらぬきみ多ちもし堂ひきこえて可(+う)やうのとも/ハ」(23オ)

  徒可うまつりらむとおもひ多まふるをあさましく
  をくら佐せ多まへることゝうらみきこえていといミし
  き者那の可遣尓しハしもやすら者す多ち可へり(□&り)
  らむハあ可ぬわさ可那とのい者可くれのこけの
  うへ尓なミゐて可わらけまいるおちくるのさ満
  なとゆへある堂きのもとな頭中将ふところな
  个るふえとりいてゝふきすまし多り
  ふきは可なうゝちならしてとよらのてらの尓し
  なるやとう多ふよりハこと那るきみ多ちを」(23ウ)

  しのいとい多うゝちなやミてい者に(に&に)よりゐ多
  まへるは堂くひなくゆゝしきありさ満尓そ
  な尓こと尓も免うつるまし可り个るれいのひち
  りきふくすいしん佐うのふえも多せ堂るすき
  とありそうつきむをつ可らもてまいりて
  これ堂ゝてひと徒あそハしておしうハ
  とりもおとろ可しらむとせちにきこえ多まへハ
  み多りちいと多へ可多きをときこえへと
  遣尓く可らすかきならしてミ那多ち堂ま日/ぬ」(24オ)

  あ可すくちおしといふ可ひなき本うしわらはへも
  なミ多をゝとしあへりましてうちに者とし
  おい堂るあま多ちなとま多佐らに可ゝる
  のありさ満をさりつれ者このとも
  おほえ多ま者すときこえあへりそう徒もあ
  者れな尓のちきり尓て可ゝるさ満な可らいと
  むつ可しきひのもと能すゑの尓うまれ多まへ
  らむとみる尓いと那む可なしきとてめをし
  のこひ多まふこのわ可さ那ちにめて多/き」(24ウ)

  可な多まひてありさ満よりも
  まさり多まへる可那ゝとの堂まふ佐らは可能
  こ尓なりてお者しませよときこゆれハ
  うちうなつきていとようありなむとおほし多り
  ひゝなあそひ尓もゑ可い堂まふ尓もし能
  きみと徒くりいてゝきよらな累きぬきせ可し
  つききミはまつ尓まいり堂まひて
  ろの御物可多りなときこえいとい多うおとろへ
  尓遣りとてゆゝしとおほし免し多りひし/りの」(25オ)

  堂うと可り个ることなとゝハせ堂まふくハしく
  そうし堂まへハあさりなと尓もなるへき
  尓こそあなれをこなひのらうハつもりてお
  や遣尓しろし免されさり个ることゝらう
  堂可りの多ま者せ遣り大殿まいりあひ多ま日
  てむ可へ尓もとおもひ多まへつれとしのひ多る
  ありき尓い可ゝと日者ゝ可りてなむのとや可に
  一二日うちやすミへとてや可てをくり徒可う
  ま徒らむと堂まへハさしもおほさねと」(25ウ)

  ひ可されてま可てわ可くるまにのせ堂てま
  徒り堂まうてつ可らハひきいりて多てまつれり
  もて可しつきゝこえへる御心者へのあ者れなるを
  そさす可にくるしくおほし遣累殿尓もおハし
  ますらむとつ可ひし堂まひてひさしくみ多ま
  者ぬ本といとゝ堂満のうてなにみ可きしつらひ
  よろつをとゝのへ多まへり女君れいの者ひ可くれて
  とみ尓もいて多ま者ぬをおとゝせちにきこえ
  多まひてからうしてわ多り多まへり堂ゝゑ尓」(26オ)

  可き堂るのひめのやう尓しすへられてうち
  みしろき堂まふことも可多くうるわしうて
  し多まへハおもふこともうち可す免みちの
  もの可多りをもきこえむいふ可ひありてお可しうゝ
  ちいらへ多ま者ゝこあ者れならめよ尓は
  もとけすうとく者つ可しき尓おほしてと/し
  の可さなる尓そへて御心のへ多てもま佐るを
  いとくるしくおも者すに/\ハのつねな
  个しきを者や堂え可多うわつらひ」(26ウ)

  しをもい可ゝと堂尓とう多ま者ぬこそ
  免つらし可らぬことなれとうらめしうときこえ
  多まふからうしてと者ぬハつらき尓やあらむと
 04 きみをい可ておも者む尓わすらせて/と者ぬ者つらきとしらせむ(付箋④)
  志りめ尓をこせ堂まへるまみいと者つ可し
  遣尓け多可うゝつくしけな可多ちな
  まれ/\ハあ佐ましのとやと者ぬなといふき
  者ゝことにこそうくもの多まひな
  す可なよとゝも尓者し堂なきもてなしを
  もしおほしなほ累おりもやとゝ佐ま可う」(27オ)

  さ満尓みきこゆるほといとゝおほしうとむ
  なめり可しよしやいのち堂尓とてよる能お
 05 いのち多尓尓可なふものならは/な尓可者をうらみしもせむ(付箋⑤)
  まし尓いり多まひぬ女君ふともいり多ま者す
  きこえわつらひ堂ま日てうちなけきてふし
  まへるもな徒きなき尓やあらむねふ
  け尓もてなしてと可うをおほしみ多るゝ
  ことおほ可りこのわ可くさのおひいてむほとの
  ゆ可しきを尓けないほとゝおもへりしも
  ことはりそ可しいひより可多きこと尓もある」(27ウ)

  可那い可尓可まえて堂ゝやすくむ可へとりて
  遣くれのなくさめ尓みむ兵部卿者いと
  て尓な(+ま)免い多まへれと尓ほ日や可になとも
  らぬをい可て可能ひとそう尓おほえらむ
  ひとつきさき者らなれハ(+尓)やなとおほすゆ可り
  いとむつましきにい可て可とふ可うおほゆ
  のひふミ堂てまつれ多まへりそう徒尓
  ほの免可し多まふへしあまうへ尓はもて」(28オ)

  者なれ多りし个しきのつゝまし佐尓
  おもひ堂まふるさまをもえあらハし者て
  らすなりにしをなむ可者可りきこゆる尓て
  も越しなへ多らぬさしの本とをらむし
  しらハい可尓うれしうなとあり尓ちゐさく
  ひきむす日て
   おも可けハ越も者なれすさくら
   の可きりと免てこし可と」(28ウ)

  よのまの可勢もうしろめ堂くなむとあり
  てなとはさる尓て多ゝ者可那うをし
  つゝみ多まへる佐まもさ多すき堂累めとも
  尓はめもあや尓このましうゆあ那可多ハら
  い多やい可ゝきこえむとおほしわつらふゆくて
  のとハなを佐りにもおもひ多まへなされ
  しをふりハへさせ堂まへる尓きこえさせむ
  可多なくなむま多な尓者つを多尓者可/\し
  うつゝ遣らさめれハ可ひなくなむさても」(29オ)

   あらしふくおのへ能さくらちらぬまを
   と免个るほとの者可那さ
  いとゝうしろめ多うとありそうつの御返もお
  なしさ満なれハくちおしくて二三日ありて
  これみつをそ堂てまつれ給少納言のめ能とゝいふ
  あへし堂つねてくハしう可堂らへなとの
  多まひしらす佐も可ゝらぬくまな御心可那
  さ者可りい者けな个なりしけ者ひをとまお」(29ウ)

  ならねともみし本とおもひやるもお可しわさと
  可うふミあるをそうつもかしこまりきこえ
  堂まふ少納言にせうそこしてあひ多りくハしく
  おほしの堂まふさ満おほ可多のありさま
  なと可多ることはおほ可る尓てつき/\しう
  いひつゝくれといとわりな本と越い可尓お
  す尓可とゆゝしうなむ多れも/\おほし遣累
  ふみ尓もいとねむころ尓可い多まひてれいの
  尓可の者那ち可きなミ多まへま本しき/とて」(30オ)

   あ佐可やまあさくもをゝも者ぬ尓
   な能可遣者なるらむ
  御返
   くみそ免てくやしときゝし
   あさきな可らや可けをるへき
  れみつもおしことをきこゆこのわつらひ
  とよろしくハこのころすくして殿尓わ
  多り多まてなむきこえ佐すへきとあるをもと
  なうおほすふちつ本のやミ多まふことあり/て」(30ウ)

  ま可てへりうへのおほつ可な可りなけきゝこえ
  堂まふ个しきもいと/\おしうみ多てまつり
  な可らかゝるおり堂尓ともあく可れまとひて
  いつく尓も/\まうて多ま者す尓ても佐と
  尓てもひるハつれ/\とな可免くらしてくるれハ
  わう命婦をせめありきい可ゝは堂者可りけむ
  いとわりなくてみ多てまつるほとさへうつゝとは
  おほえぬそわひしきやもあ佐まし可り
  しをおほしいつる多尓よとゝもの御物思日」(31オ)

  なるを佐て堂尓やミなむとふ可うおほし
  堂累尓いとうくていミしき个しきな
  可らなつ可しうらう堂个にさりとてうちと
  けすふ可う者徒可しけなもてなしなとの
  猶人尓ゝさせ者ぬをなと可な能免なるこ
  堂尓うちましり堂ま者佐り个むとつらう
  佐へそほさるゝな尓ことを可ハきこえつくし
  堂ま者むくら婦のやま尓やとりもとらま本
  しけなれとあや尓くなるみし可尓て」(31ウ)

  あさましう/\な
    みてもあふよまれなるゆ免のうちに
    や可てまきるゝわ可とも可那
  とむせ可へり堂まふさまも佐す可にいミし遣れハ
   よ可多りにや徒多へむ堂くひな
   うきみをさ免ぬゆめ尓なしても
  おほしみ多れ多る佐まもいとことわりに可多し
  けな命婦のきみそ本しなとハ可きあ
  つめもてき多る殿尓おハしてなきね尓ふし」(32オ)

  くらし多まひつふみなともれいのらむし
  れぬよしのみあれハつねのことな可らもつらう
  みしうおほし本れてへもまいらて二三日
  もりおハすれハい可なる尓可と御心うこ可せ
  可免るもおろしうのみおほえ給宮
  いとうきりけりとお本しな个く尓な
  ましさも満さり多まひてとくまいりへき
  つ可ひしきれとおほしも堂ゝすまことに御心
  れいのやう尓もお者しまさぬ者い可なる尓可と」(32ウ)

  しれすおほすこともあり个れハうくい可
  ならむとのみお本しみ多るあつきほとハいとゝ
  おきもあ可り多ま者す三月尓なり多まへは
  いとし累き本と尓て/\ミ多てまつりと可むる
  尓あ佐ましきすくせのほとうし
  おもひよらぬことなれハこ能まてそう勢させ
  多ま者佐り个ることゝおとろきゝこゆわ可御心
  とつ尓はしるうおほしわくこともあり遣り
  ゆ殿とにもし堂しう徒可うまつりてなに」(33オ)

  ことの个しきをもしるくみ多てまつりし
  れるめ能とこの弁命婦とそあやしとお
  もへと可多み尓いひあ者すへき尓あらねハ
  可れ可多かり个るすくせをそ命婦ハあ佐ましと
  おもふうちに者御物のけのまきれ尓てとみ尓
  しきなうお者しまし个るやうにそゝうし
  む可しみるも佐のミおもひ个りいとゝあハ
  れ尓可きりなうおほされてつ可日なとのひ
  ま那きもそらおろしうをおほすこと」(33ウ)

  ひまな中将のきみもおとろ/\しう佐ま
  ことなるゆ免をみ多まひてあ者する
  めしてと者せ多まへハをよひなうおほしも
  可遣ぬすち能ことをあ者せ遣りそに多可
  ひめありてつゝしませ多まふへきことなると
  いふ尓わつらハしくおほえてつ可らのゆ免尓ハ
  あらすとを可多るなりこのゆめあふ
  まて又人尓まねふなとの多まひてのう
  ち尓者い可なること那らむとおほしわ多るに」(34オ)

  この女宮ときゝ堂まひてもし佐るやう
  もやとおほしあ者せ多まふ尓いと(+と)しくいみし
  きことの者つくしきこえ堂まへと命婦もおもふ
  尓いとむく徒个うわつらハしさま佐りてさら
  に堂者可るへき可多なし者可那きひとく多り
  の可へりの堂ま佐可なりしも堂え者て
  尓多り七月尓なりてそまいり多まひ个る
  めつらしうあ者れ尓ていとゝしきもひの本と
  可きりなしすこしふくら可になてうち」(34ウ)

  なやミおもや勢多まへるハ多遣尓ゝる
  めて堂しれいのあ个くれこな多にのミおハし
  ましてあそひもやう/\お可しきそらなれハ
  しのもいとま那くめしまつハしつゝ
  ふえなと佐ま/\につ可うま徒らせ多まふいミ
  しうつゝみ多まへとしのひ可多き个しきの
  もりい徒るおり/\もさす可なることゝもを
  おほくお本しつゝけゝり可のやまてらの
  よろしくなりていて堂まひ尓个り
  み可堂つねて/\のせうそこなとありお/し」(35オ)

  佐ま尓のみあるもこと者りなるうちにこの
  ころ者ありしにまさるもひ尓こと/\
  なくてすきゆくのす衛つ可多いと物心ほそ
  くてな个き給月能お可しきよしのひ多る
  可らうしておもひ多ち堂まへるをしくれめいて
  うちそゝくお者する六条京こくわ多り
  尓てよりなれハすこしほとゝ本きちす
  る尓あれ多るいゑのこ堂ちいとふりてこく
  らくみえ堂るありれいのともに者なれぬ
  これミつなむこあせちの大納言のいゑ尓り」(35ウ)

  一日物の多よりにとふらひてりし可ハ可能
  あまうへい堂うよ者り多まひ尓堂れ者
  な尓こともおほえすとなしてりしと
  きこゆれハあ者れのことやとふらうへ可り个るを
  なと可佐なむとものせさりしいりてせうそ
  せよとの多まへハいれてあないせさすわさ
  とかう堂ちより多まへることゝい者せ多れハ
  いりて可くとふらひ尓なむおハしまし堂る
  といふ尓おとろきていと可多わらい多きこ」(36オ)

  このひころむ遣尓いと多のもしけなくな
  らせ多まひ尓堂れハ堂いめんなともあ
  るましといへともし堂てまつらむハかし
  こしとてみなミのひさしひきつくろひていれ
  堂てまつるいとむつ可し遣尓れとかしこまり
  を多尓とてゆくりなうふ可きおまし
  なむときこゆ遣尓可ゝるハれい尓堂可ひてお
  ほさるつね尓おもひ多まへ堂ちな可ら可ひな
  きさ満尓のミもてなさせ多まふ尓つゝまれ」(36ウ)

  りてなむなやま勢多まふことおもくとも
  う遣者らさり个るおほつ可な佐なときこ
  えみ多りちはいつともなくのミる可ゝ
  きりのさ満尓なりていと可多しけな
  堂ちよらせ多まへる尓つ可らきこえ佐せ
  ぬことの多ま者することのすち堂ま佐可にも
  おほしめし可者らぬやうらハ可くわりな
  よ者ひすきりて可ならす可春まへさせ
  多まへいみしうほそ遣尓み堂まへをく/なむ」(37オ)

  ね可ひるみちのほ多し尓おもひへられ
  ぬへきなときこえ多まへりいとち可个れハ
  そけなこ衛堂え/\きこえていと可多し
  けなきわさ尓もこの多尓かしこ
  まりもきこえ堂ま徒へきほとならまし
  可ハとのあ者れ尓きゝてな尓可あ佐う
  まへむことゆへ可うすき/\しき佐まをみえ
  てまつらむい可なるちきりに可み多てまつり
  そ免しよりあハれ尓おもひきこゆるもあやし」(37ウ)

  きまてこののことにハおほえらぬなとの
  多まひて可ひなちのミし者へるを可能
  者けな給御ひとこ衛い可てとのへハ
  てやよろつおほしゝらぬさ満尓おほとのこ
  もりいりてなときこゆるおりしもあ那多より
  くるをとしてうへこそこのてら尓ありし
  こそ者し堂なれなとみ多ま者ぬと
  堂まふを/\いと可多者らい多しとおもひて
  あ那可まときこゆいさみし可ハちのあし佐」(38オ)

  なくさみきとの多まひし可ハそ可しとかしこき
  こときゝえ多りとおほしての堂まふいとお可しと
  きい多まへと/\のくるしおもひ多れハき可ぬ
  やう尓てまめや可なとふらひをきこえをき
  て可へり日ぬ遣尓いふ可ひな能け者ひや佐り
  ともいとようをしへてむとおほすのひも
  いとまめや可にとふらひきこえれいのちひさく/て
    い者けなき堂徒のひとこ衛きゝしより
    あしまになつむふねそえならぬ」(38ウ)

  尓やとこと佐らおさ那く可きな
  堂まへるもいミしうお可しけなれハや可て
  ほん尓と/\きこゆ少納言きこえ堂ると
  者せ堂まへるは个ふをもすくし可堂けな
  さま尓ててらにま可りわ多るほと尓て可
  うと者せ堂まへるかしこまりハこのらても
  きこえ佐せむとありいとあ者れとおほ春
  のゆふへハましてのいとま那くおほしみ多るゝ
  あ多りにを可けてあ那可ちなるゆ/可りも」(39オ)

  堂つねまほしきまさり堂まふなるへし
  きえむそらなきとありしゆふへおほしいてられ
  てこひしくもみ者おとりやせむとさす可に
  あやふし
   て尓つみていつし可もみむゝら佐きの
   ね尓可よひ个るのへのわ可くさ
  十月尓す佐く可うあるへしまひ
  なとやむこと那きいゑのことも可む多ちめ殿上人
  ともなともその可多につき/\しきはミ那えらせ」(39ウ)

  堂まへれハみこ多ち大臣より者しめてとり/\
  の佐えともならひ堂まふいとまなしやま
  さと尓もひさしくをとつれ多ま者佐りけ
  るをおほしいてゝふり者へつ可ハし堂り遣れハ
  そうつの可へりことのみ(+あり)堂ちぬる廿日
  本と尓なむつ井尓むなしくみ多まへなして
  せ遣んの多うりなれと可なしひおもひ多まふ
  累なとあるをみ多まふ尓世中の者可那さ
  もあ者れ尓うしろめ堂遣尓おもへりしも」(40オ)

  い可ならむおさ那きほとにこひやすらむこ
  す尓をくれ堂てまつりしなとは可/\し可らね
  とおもひいてゝあ佐可らすとふらひ多まへり少納言
  ゆへな可らす可へりなときこえ多りいみな
  すきて殿尓なむときゝ堂まへハ本とへて
  みつ可らのと可なるよお者し堂りいとすこけ
  尓あれ多るすくなゝるにい可におさ那
  きろしからむとみゆれいのところ尓
  いれ多てまつりて少納言御ありさ満なとうち」(40ウ)

  なきつゝきこえ徒ゝくる尓あいな
  ても堂ゝならす尓わ多し堂てまつらむと
  めるをこひめのいと那さけなくうき
  尓おもひきこえ堂まへりしにいとむけ尓
  ちこならぬよ者ひの者可/\しう
  おもむ遣をもみしり堂ま者すな可そらな
  本と尓てあま多し多まふな
  あ那つらハしき尓てやましり堂ま者む
  なとすき堂まひぬるもよとゝも尓おほし」(41オ)

  なけき徒ることしるきことおほくる尓
  可く可多しけなきな个能との者ゝのち
  の御心も堂とりきこえさせすいとうれしう
  おもひ多まへられぬへきおり婦し尓りな可ら
  すこしもなすらひなる佐ま尓もゝのしハす
  としよりもわ可ひてならひ多まへれハいと可多
  者らい多くるときこゆなに可ゝうくり可へし
  きこえしらするのほとをつゝみ多まふらむ
  そのいふ可ひなありさ満のあ者れ尓ゆ可」(41ウ)

  しうおほえもちきりことにな可ら
  おもひしられ个るひとつてならてきこえし
  らせハや
    あしわ可能うらに見る免ハ可多くとも
 06 あしわ可の尓きよするみの/志らしなもふとも(付箋06)
    こ者堂ちな可ら可へる(+な)み可ハ め佐まし
  からむとの多まへハ遣尓こそいと可しこ个れとて
    よ累なミ能もしらてわ可のうらに
    堂まもなひ可むほとそうき堂累
  わりなきことゝきこゆる佐まのなれ多る尓
  すこしつミゆるされ多まふこひさらむ/と」(42オ)

  □ちすし堂まへるをみにしミてわ可き/\
  おもへりきみ者うへをこひきこえてな
  ふし堂まへる尓あ(+そ)ひ可多きとものな
  き多まへ(まへ$)るのお者するのお者します
  なめりときこゆれ者おきいて堂まひて
  納言よなしき多りつらむハいつらのお
  する可とてよりおハし多るこゑいとらう多
  し尓者あらねとほし者な徒へう
  もあらすこちとの堂まふを者つ可しかりし
  とさす可にきゝなしてあしうい日て遣りと」(42ウ)

  おほして免のと尓佐しよりていさ可しねふ
  き尓と能堂まへハいま佐ら尓なとしのひ
  まふらむこのひさのうへ尓おほとのこも
  れよいますこしより堂まへとのへハめの
  とのされ盤こそ可うよつ可ぬほと尓て
  なむとてをしよせ堂てまつり多れハな
  もなくゐ多まへる尓てを佐しいれてさ
  くり堂まへれハなよゝかなに可みハ
  つや/\とかゝりてす衛のふさや可にさくりつけ」(43オ)

  られ多るいとうつくしうおもひやら累てをとら
  へ堂まへれハう多てれいならぬの可くち可つ
  き多まへるはおろしうてねなむといふ
  をとてしひてひきいり多まふ尓つきて
  すへりいりていまはまろそもふへき
  うとみ多まひそとのめのといてあ那う多て
  やゆゝしうもる可那きこえさせしらせ
  も佐ら尓な尓のしるしもらし
  てくるし遣尓おもひ多れハさりともかゝる」(43ウ)

  本とをい可ゝハあらむ堂ゝよ尓志らぬ
  さしのほとを者て多まへとのあられ
  ふりあれてすこきよの佐まなりい可て可う
  すくなほそうてすくし堂まふらむと
  うちない堂まひていとみすて可多きほと
  れハみ可うし万いりねろしきよのさま
  めるをとの井尓てらむ/\ち可うさ
  ふら者れよ可しとていとなれ可ほ尓みのうち
  尓いり堂まへハあやしうおもひの本可尓もとあ/きれて」(44オ)

  堂れも/\ゐ多りめ能とはうしろめ多な
  わりなしとおもへとあらましうきこえ佐わく
  へきならねハうちな个きつゝゐ多りわ可きみハ
  いとおろしうい可ならむとわなゝ可れていと
  うつくしき者多つきもそゝろさむ遣尓お
  ほし堂るをらう堂くおほえてひとへ者可り
  をゝしくゝみてわ可御心ちも可つハう多てお
  え多まへとあ者れ尓うち可多らひ日ていさ
  堂まへよお可しきゑなほくひゝなあ」(44ウ)

  そひなとする尓と尓つくへきことをの
  遣者ひのいとなつ可しきをゝ佐なち尓も
  いとい多うをちすさす可に(+むつ可しう)ねもいらすおほえて
  みしろきふし堂まへりひとよ可勢ふきあ
  るゝに遣尓可うお者せさらまし可ハい可尓ほそ
  からましおしくハよろしきほと尓お者し
  まさ満し可ハと佐ゝめきあへりめのとはうしろ
  め多さ尓いとち可う佐布ら婦可せすこしふき
  やミ堂累尓よふ可ういてもことあり可ほなりや」(45オ)

  いとあ者れ尓み多てまつるあり佐まをいまは
  まして可多のまもおほつ可な可るへしあ个く
  れな可免尓わ多し堂てまつらむ可くてのミ
  はい可ゝをちし堂ま者佐り个りとのへハ
  みやもむ可へ尓なときこえの多まふめれとこ
  の御四十九日すくしてやなとおもひ多まふると
  きこゆれハ堂のもしきすちな可らもよそ/\
  尓てならひ多まへるはおしうこそうと
  うおほえ堂ま者めいまよりみ多てまつれと」(45ウ)

  あさ可らぬさしハま佐りぬへくなむとて可い
  なてつゝミ可ち尓ていて堂まひぬいミしう
  きりわ多れるそらも堂ゝならぬ尓志もハ
  いとしろうをきてまこと能遣佐うもお可し
  かりぬへき尓佐う/\しうおもひお者すいとし
  のひてかよひ堂まふところのみちなり个る
  をおほしいてゝかとうち堂ゝ可せへときゝ
  つくるし可ひなくてとも尓こ衛ある
  してう多者せ堂まふ」(46オ)

    あさほら遣きり堂徒そらのまよひ尓も
    ゆきすき可多きいも可ゝと とふ多可へり
  者(+可)りう多ひ堂る尓よしあ累しも徒可へを
  い堂して
    堂ちと満りきり能ま可き能すきうくハ
    くさのとさしに佐者りしもせし
 08 ち者やふるのい可きもこゆるハ/くさのと佐しもな尓可さはらむ(付箋⑧)
  といひ可个ていりぬ又人もいてこね者可へるも
  なさけな个れとあ遣ゆくそらもはし多なくて
  殿へお者しぬお可しかりつるのなこりこひしく」(46ウ)

  ひとりゑ(+ミ)しつゝ婦し多まへりひ多可うお
  とのこもりおきてふみやり堂まふ尓可く
  へきことはもれいならねハふてうちをきつゝ
  すさひゐ多まへりお可しきゑなとをやり
  可しこ尓は遣ふしもみやわ多り多まへり
  としころよりもこよ那うあれまさりひろう
  ふり堂累のいとゝすくな尓佐ひさし
  遣れハみわ多し堂まひて可ゝる尓者い可て
  可し者しもおさ那きのすくし多ま□む」(47オ)

  可しこにわ多し堂てまつりてむなにの
  せきほと尓もあらすめ能とハ佐うしなとして
  さふらひなむきみ者わ可き/\なとあれハ
  もろともにあそひていとようし多まひ
  なむなとのち可うよひよせ多てまつり
  る尓可能うつりかのいみしうえむ尓しみ
  かへらせ多まへれ者お可しの尓本ひや
  いとなえてとくるし遣尓おほい多りとし
  ころもあつしくさ多すき多まへる尓」(47ウ)

  そひ堂まへるかしこ尓わ多りてみならし
  多まへなせしをあやしうゝとみ多まひて
  をくめりしを可ゝるおりにしもゝの
  し堂ま者むもくるしうなとの多まへハ
  な尓可ハ本そくともしハしハ可くてお
  しましなむすこしほしゝりな
  尓わ多らせ堂ま者むこそよくハへ个れ
  ときこゆよ累ひるこひきこえ堂まふ尓者
  可那きものもきこしめさすとて遣尓いとい多/う」(48オ)

  おもやせ多まへれといとあてにう徒くしく/\
  みえ尓可佐しもおほすいまはにな
  きとは可ひなしをのれあれハな
  可堂らひきこえ日てくるれ盤可へらせ
  をいとほそしとおほいてない多まへハ
  うちなき堂まひていと可うおもひないり
  堂まひそけふあすわ多し多てまつらむな
  可へす/\こしらへをきていて日ぬなこりも
  なくさ免可多うなき井多まへりゆくさ」(48ウ)

  きののあらむこと那とまてもおほしゝ
  らす堂ゝとしころ多ち者那るゝおりな
  まつハしならひていまはなとな
  尓个るとおほす可いミしき尓おさ那き御心
  ちなれとむねつとふ多可りてれいのやう尓もあ
  そひ堂ま者すひるはさても満きらハし
  まふをゆふくれとなれハいミしくゝし
  万へハ可くてハい可て可すくし堂ま者むと
  なく佐めわひて免のともなきあへりの」(49オ)

  もとよりハこれみつを堂てまつれ多まへり
  まいりくへきをよりめしあれハなくるし
  うみ多てまつりしも志徒くとてとの井
  堂て満つれ多まへりあちきなうもある
  可那多者ふれ尓てもの者しめ尓このとよ
  みやきこし免しつけ者佐ふら婦/\のを
  ろ可なる尓そ佐いなまむあ那可しこ
  ついてにい者けなくうちいてきこえさせ
  なゝといふもそれをはな尓ともおほし」(49ウ)

  堂らぬそあ佐ましきや少納言はこれみつ
  尓あ者れな可多りともしてありへてのちや
  佐るへきすくせの可れきこえ者ぬやうも
  あらむ堂ゝいまは可けてもいと尓个な
  とゝみ多てまつるをあやしうおほし
  の多ま者す累もい可な御心尓可日よる
  可堂那うみ多れる遣ふもわ多らせ
  うしろやすく徒可うまつれさ那くもて
  なしきこゆなとの多ま者せ徒るもいと」(50オ)

  わつらハしう堂ゝなるよりハかゝるすきことも
  おもひいてられりつるなといひてこの
  ことあり可ほ尓やおも者むなとあいな个れ者
  堂うな个可しけ尓もいひなさす堂いふも
  可なることに可あらむとえ可多うおもふ万いりて
  ありさ満なときこえ个れハあ者れ尓おほし
  やらるれとさて可よひ堂ま者むも佐す可に
  すゝろなちして可る/\しうもてひ可免多る
  ともやもりき可むなとつゝまし遣れハ堂ゝ」(50ウ)

  む可へてむとおほすふみハ多ひ/\堂てまつ
  れ堂まふくるれ盤れいの堂いふをそ多て
  まつれさ者ることゝものありてえまいりこ
  ぬをゝろ可尓やなとありよりあす尓は可に
  む可へ尓との多ま者せ多りつれハあ者堂ゝし
  くてなむとしころのよもきふを可れなむも
  さす可にほそく佐布ら婦/\もおもひみ
  堂れてとことすくな尓いひておさ/\あへしら
  者すぬひいと那む个者ひなとし累个れハ」(51オ)

  まいりぬきみ者大殿尓お者し个る尓れいの女君
  とみ尓も堂いめんし堂ま者すむつ可しくお
  ほえてあつまをす可ゝきてひ堂ちに者堂
  をこそつくれといふう多をこ衛者いとなまめきて
  す佐日井多まへり万いり堂れ者めしよせてあり
  さ満とひ堂まふし可/\なむときこゆれ者
  くちおしうおほして可の尓わ多りなハわさと
  む可へいてむもすき/\し可るへしおさ那き
  ぬすミいて多りともときおひなむそのさきに」(51ウ)

  はし尓もくち可多めてわ多してむとお
  てあ可可しこにせむくるまの佐うすく
  さな可らすいしんひとりふ多りおほ勢をき多れ
  との多まふう遣者りて堂ちぬい可尓せまし
  きこえありてすき可満しきやうなるへきこ
  のほと多尓をゝもひしり可者し
  遣累ことゝをし者可られぬへくハよのつねなりちゝ
  の堂つねいてつらむもハし多なうすゝろ
  なるへきをとおほしみ多るれと佐て者つしてむハ」(52オ)

  いとくちおし可へ个れハま多よふ可ういて給女君れい
  のしふ/\にもとけすし堂まふ可しこにいと
  せちにるへきことのるをおもひ多まへいてゝ
  多ち可へりまいりきなむとていて堂まへハ佐布ら婦
  /\もしら佐り遣りわ可可多尓て
  なとは多てまつるこれみつ者可りをむま尓のせて
  お者しぬ可とうち堂ゝかせ多まへハしらぬものゝ
  あ个多る尓くるまをやおらひきいれさせて
  堂いふ徒まとをならしてし者ふ个は少納言
  きゝしりていてき多りこゝにお者しますといへハ」(52ウ)

  おさ那きとのこもりてなむなと可いと
  よふ可う者いてさせ堂まへるの多よりとおもひて
  いふへわ多らせ多まへ可なるをその佐き尓き
  こえを可むとてなむとのへハな尓こと尓可らむ
  い可尓者可/\しきいらへきこえ佐せ多ま者むと
  てうちわらひて井多りいり多まへハいと可多わら
  い堂くうちとけてあやしきふるとものる尓
  ときこえ佐すま多おとろい多ま者しないて
  めさましきこえむ可ゝるあ佐きりを志らてハ」(53オ)

  ぬる可とていり堂まへハやともえきこえす
  なもなくね多まへるをい多きおとろ可し
  まふ尓おとろきてみやのむ可へ尓お者し
  るとねをひれておほし多りくし可きつく
  ろひなとし堂まひていさ堂まへつ可日
  尓てまいりきつるそとの尓あらさり个りとあ
  きれておろしとおもひ多れハあ那うまろも
  おとて可きい多きていて多まへハ堂いふ
  少納言とこはい可尓ときこゆこゝにハつね尓も」(53ウ)

  えまいらぬ可おほつ可な个れハやすき尓と
  きこえしをうくわ多り堂まふへ可なれハま
  してきこえ可多可へ个れハひとりまいられよ可/し
  との堂まへハあ者多ゝしくてけふハいとひん
  なくなむへきのわ多らせ多ま者む尓ハ
  い可さ満尓可きこえやらむをのつ可らほとへて
  さへき尓お者しまさはとも可うもりな
  をいとおもひやりなき本とのことにれハさふら
  婦/\くるしうるへしときこゆれ者」(54オ)

  よしのち尓も者まいりなむとてくるまよせ
  させ堂まへハあ佐ましうい可さ満尓と日あへり
  わ可もあやしとおほしてな給少納言とゝ
  めきこえむ可多な个れハよへぬ日しとも
  ひき佐个てつ可らもよろしきゝぬき可へての
  りぬ二条者ち可个れハま多あ可うもならぬ
  ほと尓お者して尓しの堂い尓くるまよせて
  わ可きみをはいと可ろら可に可きい多きて
  ろし堂まふ少納言猶いとゆ免のちし」(54ウ)

  るをい可尓しるへきこと尓可とやすらへハそ
  なゝり御身つ可らわ多し堂てまつりつれハ可へりな
  とあらはをくりせむ可しとの尓わらひておりぬ
  尓は可尓あさましうむねもしつ可ならすのお
  ほしの堂ま者むことい可尓なり者て多まふへき
  ありさ満尓可とても可くても堂のもしき/\
  尓をくれ堂まへる可いミし佐とおもふ尓なみ
  堂のとまらぬをさす可にゆゝし遣れハねむし
  ゐ多りこな多はすミ者ぬ多いなれハみ」(55オ)

  ともな可り个りこれみつめしてみ帳御ひやうふ
  とあ多り/\し堂て佐せ給御の可多ひら
  ひきおろしおましなと多ゝひきつくろふ
  者可り尓てあれハひむ可しの堂い尓との井
  めし尓つ可ハしておほとのこもりぬわ可きみいと
  むく徒个くい可尓することならむとふる者れ
  堂まへとさす可にこ衛多てゝもえなハす
  少納言可もとにねむとのこゑいとわ可しいまハ
  佐者おほとのこもるましきそよとをしへ」(55ウ)

  きこえ多まへハいとわひしくてなきふしへり
  免のとはうちもふされすもおほえすお
  きゐ多りあ个ゆくまゝ尓みわ多せはおとゝ
  の徒くりさ満しつらひさ満さらにもい者す
  尓者のすなこも堂まを可さね多らむやう尓
  みえて可ゝやくちする尓者し堂那く
  井多れとこな多尓はとも佐布らハさりけり
  けうときまらうとなと能まいるおり婦し
  の可多なり个れハおとこともそみすのとに」(56オ)

  あり遣累可くむ可へ堂まへりときく堂れ
  ならむおほろ遣尓ハあらしと佐ゝめくてう
  つ可ゆなとこな多にまいるひ多可うねをき
  多まひてなくてあし可免るを佐るへき/\
  ゆふつけてこそハむ可へさせ多ま者めとのて堂い
  尓わらハへめしにつ可ハすちゐさき可きりこと佐ら
  にまいれとあり个れハいとお可しけ尓て四人まいり
  多りにまと者れてふし堂まへるを
  せめておこしてかううくな者せそすゝろ」(56ウ)

  ハ可うはありなむやや者ら可な
  むよき(+な)といまよりをしへきこえ給御可多ちハ
  さし者なれてみしよりもいミしうきよらにて
  なつ可しうゝち可多らひつゝお可しきゑあそ
  ともとりにつ可ハしてみせ堂てまつり御心尓つく
  ことゝもをしやう/\おきゐてみ堂まふ尓
  尓ひいろのこまや可なる可うちなえ堂累とも
  をきてなくうちゑミなとして井
  堂まへる可いとうつくしき尓われもうちゑ
  まれてミひむ可しの堂い尓わ多り多まへる尓」(57オ)

  堂ちいてゝ尓者のこ多ちい遣の可多多なとのそ
  き多まへハしも可れのせんさい衛尓可けるやう
  尓おもしろくてみもしらぬ井こき満
  せにひま那ういていりつゝ遣尓お可しき可那と
  おほすひやう婦ともなといとお可しきゑを
  みつゝなく佐めてお者するも者可那しや
  二三日内へもまいり堂ま者てこのをなつ
  け可多らひきこえや可てほん尓とおほす
  尓やてならひゑなと佐ま/\に可きつゝみせ」(57ウ)

  てまつりいみしうお可し遣尓可きあつめ
  まへりむさしのといへハ可こ堂れぬとむら
 07志らねともむさしのといへ者かこ多れぬ/よしやさこそハむらさきのゆへ(付箋07)
  佐きの可み尓可い堂まへるすミ徒きのいとこ
  なるをとりてみ井多まへりすこしちゐさく/て
    ね者みねとあ者れとそむさしのゝ
    つゆわ个わふるくさのゆ可りを
  とありいてきみも可い堂まへとあれハま多
  ようハ可ゝすとてミあけ多まへる可な尓な/く」(58オ)

  うつくし遣なれハうちほゝゑミてよ可らねと
  む遣尓可ゝぬこそわろ个れをしへきこえむ
  可しとのへハうちそはみて可い多まふてつ
  きふてとり多まへる佐まのおさな个なるも
  らう堂うのミおほゆれハ可らあやしと
  おほす可きそこ那日つと者ちてかくし
  せめてみ多まへハ
    可こ徒へきゆへをしらねハおほつ可な
    い可なるく佐のゆ可りなるらむといとわ可个れと」(58ウ)

  おひさきみえてふくよ可に可い堂まへりこあま
  きみの尓そに多り个るいま免可しきてほん
  ならハゝいとよう可いてんとみひゝなゝと
  わさとやともつくり徒ゝ遣てもろともにあそ
  ひつゝこよ那きもひのまきらハしな
  可能とまり尓し/\わ多り堂まひて
  堂つねきこえ遣る尓きこえやる可多
  なくてそわひあへり个るしハし尓志ら
  せしときみもの給少納言もおもふことなれハ」(59オ)

  勢ちにくち可多免やり多り堂ゝゆくゑも
  しらす少納言可ゐて可くしきこえ多るとのみ
  きこえ佐する尓もいふ可ひなうおほして
  こあまもかしこにわ多り多ま者むことを
  いとしとおほし堂りしことなれハめのとのいと
  しすくし堂る者せのあまり(+お)ひら可にわ多
  むをひんなしなとはい者て尓ま可勢て
  井て者ふらかし徒るなめりとなく/\可へり
  堂まひぬもしきゝいて多てまつらハつけよとの/」(59ウ)

  もわつらハしくそうつのもとにも多つね
  きこえ堂まへとあと者可那くてあ多らし可り
  し可多ちなとこひしく可なしとおほす
  き多の可多も者ゝを尓くしとおもひきこ
  え日遣累もうせてわ可尓ま可勢徒へ
  うおほし个る尓堂可ひぬるハくちおしう
  おほし遣りやう/\まいりあつまりぬあそ
  可多きのわらハへちこともいと免つら可にいま
  め可しきありさ満ともなれハおもふことなくて/あそひあへり」(60オ)

  きみ者おとこのお者せすなとして佐う/\しき
  ゆふくれなと者可りそあまきみをこひきこえ
  堂まひてうちなきなとし堂まへと
  をはことにおもひいてきこえハすもと
  よりみならひきこえ者てならひ多まへれハ
  いま者堂ゝこのゝちのおやをいミしうむつひ
  まつハしきこえも能よりお者すれハまついて
  む可ひてあ者れ尓うち可多らひふところ尓
  いりゐていさゝ可うとく者つ可しともおもひ多ら/す」(60ウ)

  る可多にいミしうらう堂きわさなり遣り
  可しうありな尓くれとむつ可しきすちに
  なりぬれハわ可ちもすこし堂可ふゝ志も
  いてくやとを可れもうらみ可ちにおもひの
  ほ可のこと越のつ可らいてく累をいとお可しき
  もてあそひなりむす免なと者多可者可り
  尓なれハやすくうちふるまひへ多てな
  さ満尓ふしおきなとハえしもすましきを」(61オ)

  これ者いとさ満可者り堂累かしつきくさ
  なりとおほい堂免り」(61ウ)

(白紙)」(62オ)

  伊行
【奥入01】あ万のすむそこの見るめも者つ可しく
     いそ尓おい多るわ可めをそ可る
【奥入02】従冥入於冥 法華経
【奥入03】可川良支乃天良乃末戸名留や止与良乃
     天良乃尓之な留や 江の波ゐ尓之良太万之
     川久や末之良た万し徒くや於之止と於之止々
     之可之天波久尓曽左可江无や和伊戸曽止之
     せむ也於之止々止之屯とお々之屯止と屯と」(62ウ)

【奥入04】\すみそめのくらふのや万尓ひとは
     多とる/\そ可へるへらなる
       此哥くらまの山也惣此哥之心更不叶
      くらふの本哥尤有事故歟 未勘出
【奥入05】\みなといりのあしわけをさハりおほミ
     お尓やこ日むと
【奥入06】しれぬ者いそけともとしをへてなとこえ可多きあふさ可のせき
【奥入07】風俗常陸哥
     飛多ち尓ハをこそつくれを可ねやまをこえ
     をもこえ可あ万多き万せる」(63オ)

【奥入08】なこひさらむ 未勘
【奥入09】ゆ本ひ可
     ミよしのゝおほ可者のへ(のへ&)のゆ本ひ可尓
     あらぬもの可らなミの多つらむ」(63ウ)