First updated 02/24/2003
Last updated 08/01/2024

帚木

【凡例】
1.『源氏物語(明融本)T』(東海大学出版会 1990年6月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。
3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。
4.変体仮名はその字母で翻字した。
5.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「1」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「2」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記や付箋等は小字体で表示した。
8.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形が並ぶ場合は緑色で表示した。


「者ゝ々」(題箋)

「上冷泉殿為和卿御息明融 琴山(印)」(見返貼紙)

  飛かる源氏名みこと/\しうい飛遣多れと可
0001【名のみこと/\しう】―\(合点) 名ノミコト/\シウハヨキ事也
0002【いひけたれ】―\(合点) イヒケタレタルハワロキ也

  おほ可(+ンナル)なる(る$カ)尓いとゝかゝる春きことゝもを春ゑの
0003【すきこと】―\(合点) スキ/\シキ事也
  尓もきゝ徒多へてかろ飛多るをやな可さむと
0004【かろひたる】―\(合点) カロ/\シキ也
  志の个るかくろへことを佐へか多り徒多へ个ん
0005【かくろへこと】―\(合点) カクシ事也
  ひとのものいひ佐可なさよ佐る者いとい堂くを者ゝ
  か里満免多ち堂万ひ个るほとなよひ(=ヒ)可尓お可しき
0006【まめたち】―\(合点) マコトタツ也
0007【おかしき】―\(合点) コレハ物ノヲカシキニハアラス面白クヨキ事ヲ云ホメタル心也 又口フヒタル所モアルヘシ

  こと者なくてか多の少将尓者わら者れ个む
0008【かたのゝ少将】―\(合点) 業平ヲ云ト云説アリ 心ヲ云説アリ 業平ノ中将カタノニトマリタル事アリ 是ヲ交野ノ少将ト云ヘシ
  かしま多中将と尓もし多まひし
0009【また中将なとに】―\(合点) 十六
  尓のみ佐布らひよう志多万ひて大殿尓は」(1オ・35E)
0010【さふらひ】―\(合点) 内リニ侍カヨキト云心也
0011【よう】―イヨキト也(左)
0012【大殿】―オホイトノ


  え/\万可てしのふのみ多れやと
0013【しのふのみたれ】―\(合点)
  可ひきこゆるあ里し可とさしも
  あ堂免き免なれ多るうちつ遣の春き/\
  しさなとはこのまし可らぬ御本上尓て
0014【御本上】―\(合点) モトノ心也 ムマレツキノ心 性
  万れ尓者あ那可ち尓ひき多可へつくしなる
  こと越御心尓おほしとゝむるくせなむあや
0015【くせ】―\(合点) 人ノクセヲ云
0016【あやにくにて】―ワリナキ

  尓く尓てさるましきおほむ布るまひも
  うちまし里个累な可あ免者れまなき
0017【なかあめ】―\(合点) 三日ニ過ル雨ヲハ長雨ト云 五月雨ノ事
  ころうち能御物いみさしつゝきていとゝな」(1ウ・35I)
0018【御物いみ】―(合点) ツヽシム日ヲ云 神鬼ノ名也

  可ゐさ布らひ大殿尓はおほつ可な
  うら免しくおほし堂れとよろつ
0019【御よそひ】―\(合点) 御シヤウソクノ事也
  そひな尓くれと免つらしき佐ま尓てうし
0020【なにくれと】―\(合点) ナニヤカヤト云詞也
  いてつゝむすこのきみ多ち堂ゝこの
  の井とろのつ可へをつ給宮
  らの中将尓し多しくなれきこえ
  あそひ多者ふれをもよりハや春くなれ/\
  しくふる万ひ堂りおとゝのい多者り
0021【右のおとゝのいたはり】―二条大臣四君
  かしつき春み可はこのきみもいとう」(2オ・36@)
0022【すみか】―\(合点) 人ノメヲ云

  くして春き可満しきあ多人也佐と尓ても
0023【あた人なり】―\(合点) △△(△△#)
  可多のしつらひま者ゆくしてきみのい
  ていりし尓うちつれきこえつゝよるひ累
  可くもんをもあそひをもゝろと尓して
  おさ/\堂ち越くれすいつく尓ても万つ
0024【おさ/\】―\(合点) ヤウヤクト云心也 又スコブルナト云心也 ヲサ/\シキト云アリケレハ心カハル也
0025【まつはれ】―\(合点) ナレムツブルヽヲ云
  れきこえ本と尓をの可らかしこ万りも
0026【かしこまり】―インキンナラサル也
  を可すのうち尓おもふこと越も可くしあへ須
  なむゝつれきこえ遣るつれ/\とふりくら
  して志免や可なるよひのあめ尓殿上尓も」(2ウ・36E)

  おさ/\春く那尓のゐれいより者
0027【御とのゐ所】―桐壺也
  のとや可なるち春る尓おほとなふらち可
  くてともなとみ多まふ(+ニ)ち可きみつ
0028【文】―書
  なるいろ/\の可みなる布ミともをひきいてゝ
  中将わ里那くゆ可し可れハさ里ぬへき春こ
0029【さりぬへき】―源氏
  しはみせむ可多わ(わ=ハ)なるへきもこそゆるし
0030【かたわなる】―\(合点) ミクルシキヲ云
  ハね者そのうちと遣て可堂者らい多しとお
0031【そのうちとけて】―中将ノ詞
0032【かたはらいたしと】―真実ノヲ

  されむこゆ可し遣れをしなへ堂るおほ可
  多の者可春那らねと本と/\尓つ遣て可き可ハ
                   しつゝも」(3オ・36J)

  み者へりなむをの可しゝうら免しきおり/\
0033【をのかしゝ】―\(合点) ヲノレカ心ザシ也
  万ち可本ならむゆふくれなとのこみところ者
  あら免とゑんすれ者やむこと那くせち尓可く
0034【ゑんすれは】―\(合点) ウラムル心也
  へきな者可やう尓おほそうなるみつ
0035【おほそうなる】―\(合点) ウチハナレタルタル也
0036【みつし】―△△△ノコト

  なと尓うち越きちらしへくもあら春
  ふ可くとりをきへ可免れハ(+コレハ)まちの
0037【二のまち】―\(合点) ニ ツギト云心也
  春きなるへし可多者しつゝみる尓可く
  佐ま/\なるもこそ者へり遣れとてこゝろあ
0038【こゝろあてに】―ヲシアテ也
  て尓それ可かれ可なとゝふな可尓いひあつるも」(3ウ・37A)

  あ里もて者那れ堂ること越も日よ勢て
  う多可ふも(越=お可しとほ勢とと春く那
  てと可く万きらはしつゝとり可くし
0039【そこにこそ】―中将ヲ云
  ほくつら免春こしみハやさて
  なむこのしもき(き#)よくひらくへきと
  へはこ(こ=らむしあらむこ可多く者へら免
0040【こらむし所あらむこそ】―中将詞
  なときこえいて尓これ者しも
0041【女のこれは】―中将雨夜品定事(右) 第一段(左)
  つく満しき者可堂くもある可那とやう/\な
  みへしる多ゝう者へ者可りのさ遣尓て者」(4オ・3F)
0042【はしりかき】―\(合点) サウニ文カクヲ云

  し里可きお里ふしのいらへえてうちし
0043【おりふしのいらへ】―哥ヨムコト也
  なと者可りはすいふん尓よろしきもほ可り
  とふれとそ万こと尓そ能可多越とりいてむ
  えらひ尓可なら須もるましき者いと可多しや
  我心え(え=エ)多ることハ可り越ゝの可しゝ越や里て
  をはおとし免なと可多者らい多きことおほ可り
  おやなと堂ちそひもてあ可免ておひさきこ
0044【おやなと】―玉カツラノ内侍ノカミ当此品(玉カツラノ内侍ノカミ当此品$) 不用
0045【おひさきこもれるまとのうち】―\(合点) 草ナトノオヒ出タルハシメノヤウニ人ノイトケナキ時ヲ云 窓ノ内トハ親ノ家ニアル程ヲ云 生尖

  もれるまとのうちなる本とは堂ゝ可多可と
0046【まとのうちなるほと】―\(合点)
0047【かたかと】―\(合点) 一ノカド也

  きゝつ堂へて越うこ可す(+ン)免リ可」(4ウ・37K)

  多ちお可しくうちおほときわ可や可尓てまき
0048【おほとき】―\(合点) 大ヤウニ長楽ナル也
0049【まきるゝことなき】―カサラスアリノマヽナル也

  るゝことなき本と者可那き春万(万#さ)ひをもまね
0050【すさひ】―ナヲサリ事也
  尓をいるゝある尓をのつ可らひとゆへ
0051【ゆへつけて】―無用ナルコト也
  つ遣てしいつることもあ里みるをくれ堂
  る可多越者いひ可くしさてあ里ぬへき可多
  越はつくろひて万ね日い多春尓それ志可
  あらしとそらにい可ゝ者をしハ可り日くたさ
0052【思ひくたさむ】―\(合点) 思ヒマヘル也 又心ニクタス也
  む万こと可とみもてゆく尓み越とりせぬやう者
  なくなむあるへきとう免き堂る遣しきも」(5オ・38B)
0053【うめきたる】―\(合点) ウソブキタル心也

  者つ可し遣なれハいとなへて者あらねと(+モ)ほし
0054【いとなへては】―源氏(右) 第二段(左)
  あ者春ることやあらむうち本お(お=本)ゑみてそ能可多
0055【かたかと】―片廉
  可ともなきハあらむやとのへ者いとさ者可
0056【いとさはかりならむあたりには】―中将 第三段
  りならむあ堂り尓者堂れ可ハ春可されより
  らむとる可多なく具ち越(越=お)しきゝ者というな
  りとおほゆ者可りすくれ堂るとハ可春ひと
  くこハへらめしな多可くむまれぬれハ
  尓もて可しつ可れて可くるゝほくしねん
  尓そ遣者ひこよな可るへししな尓」(5ウ・38H)
0057【中のしな】―中品(次丁表「お」の右側)

  な/\をの可しゝ能堂て多累お
  むきもみえてわ可るへきこと可多/\おほ可る
  へき志ものきさみといふき者尓なれハこと尓
0058【しものきさみ】―下品(左)
  みゝ堂ゝす可志とていとくま那遣那る个し
  きなるもゆ可しくてそ能しな/\やい可に
0059【そのしな/\やいかに】―源氏 第四段
  いつれ越みつしな尓をきて可わくへき
  もとのしな多可くむまれな可らハし
  つみくら井みし可くて遣那きな越
0060【なを人】―\(合点) イタク上ラフニテモナキシナノ人也
  の1かむ堂ち免なとまてまて(まて$)なりの本り」(6オ・38L)
0061【かむたちめなと】―上達部殿上人也(左)

  者可本尓ていゑのうち越可さり尓おとらしと
  おもへるそ遣ちめをはい可ゝわくへきとゝひ
  本と尓ひ多りのむ万の可みしきふの
0062【藤しきふのせう】―藤式部丞 蔵人也
  う御物いみ尓こもらむとて万いれりよの春き
  もの尓てものよくいひと(本=を)れる越中将
0063【中将】―頭
  ちとりてこのしな/\をわき万へさ多免あらそ
  ふいときゝ尓くきほ可りな里の本れと
0064【なりのほれとも】―コレヨリ馬頭ノ詞 第一段
  もとよりさるへき春ち那らぬ者よ(よ=ノ)
  へるさ者いへ登なをこま多(ま多=」(6ウ・39C)
0065【さはいへと】―世上ニヨシトハオモハネトモ官タカキナレハ申也(左)
0066【本】―性也


  者やむこと那き春ちなれとよ尓ふる多つ
0067【たつき】―\(合点) タヨリ也
  き春く那くときよ(よ=)尓(尓$)うつろひておほえ
0068【たつきすくなく】―末摘花当此品
  おとろへぬれ者としてこと堂ら須わろ
  ひ堂ることゝもいてくるわさな免れ者とり/\
  尓こと者りてのしな尓そをくへき春
0069【す両】―受領 リヤウ歟 領
  いひてく尓の尓可ゝつらひいとな
  みてしなさ多まり多る(こ$尓$)きさみ/\
  あ里てな可のしな能遣しう者あらぬえりい
0070【けしうはあらぬ】―\(合点) ケスシクハアラヌ心也
  てつへきころほひま/\の可む多ち免」(7オ・39H)
0071【なま/\のかむたちめよりも】―ナミ/\也 ナマキンダチナトノヤウナル心也 空蝉夕顔当此品

  よりも非参議四位ものよのおほえくち越(越=お)
0072【参議】―サンキ
  し可ら須もねさしいやし可らぬ(+可)や春ら
0073【もとのねさし】―\(合点) 其人ノ本ノホンジヤウ也
  可尓越もてなし布る万ひ多るいと可はら可
0074【かはらかなり】―\(合点) サハヤカナル也
  なりやいゑのうち尓堂らぬなと者多な
0075【いゑのうちにたらぬ事なと】―明石上当此品
  めるまゝ尓者ふ可すま者ゆき万てもて可しつ
  遣るむす免なとのとしめ可多くおひいつ
  るもあま多あるへしつ可へ尓いて多ちて
  可个ぬさい者ひ(ひ=ゐ)とりいつる堂免しと
  おほ可り可しなといへハすへて尓き者ゝしき」(7ウ・39M)
0076【すへてにきはゝしき】―源氏 第二段
0077【にきはゝしき】―\(合点) タノシキヲ云

  尓よるへきな(+ん)ゝりとてわらひをこのい者む
0078【こと人のいはむやうに】―中将
  やう尓えすおほせらると(+て)中将尓くむもと能
0079【もとのしな時よのおほえ】―馬頭 第三段 上ノ品女三宮当此品(右) 第八段(第八段$)(左)
  し那よのおほえうちあ日(日=ひ)やむきあ
  りのうち/\能もてなし个者ひをくれ
  らむ者さらにもい者須な尓越して可く
0080【なにをして】―無能ノコト也
  おひいて个むといふ可ひなくおほゆへしう
  ちあひて春くれ堂らむもこと者里これこ
  そ者(者$)さるへきほえてめつら可なるこ
  ともおとろくましな尓可し可をよふへき」(8オ・40D)

  本と那らねハ可み可ゝみ尓(+うち)をきぬさてよ(よ=
0081【さてよにありと】―下品也
  尓あ里と尓しられす(+さ)ひしくあ者れ堂ら
  むゝくらの可と尓の本可尓らう多遣ならむひ
  とちられ多らむこ可きり那く免つらし
  く者おほえめい可て者多可ゝり遣むとおもふ
  より堂可へることなむあやしくまる
  わさなるちゝのとしおむつ可し遣尓
  とり春きせうとの可本尓く个尓やりこと那
0082【せうと】―兄弟也
  るきねやのうち尓いとい堂くあ」(8ウ・40I)

  可り者可那くしいて多ることわさもゆへな可
0083【ゆへなからす】―ヨキ也
  らすみえ堂らむ可多可と尓てもい可ゝの本可
  尓お可し可らさらむ春くれてき春那き可多
  のえらひ尓こをよはさら免さる可多尓て
  すて可多きものを者とて式部をみやれ者わ可
  いもうとゝも能よろしきゝこえあるをおもひて
  の尓やとうらむもい者すいてや可みの
0084【かみのしな】―上々ノニモ上品ナキ也
  しなとおもしつ(しつ$婦)尓多尓可多遣なるよをときみ
  者おほすへし志ろ支ともなよ(+ら(右)、よ(左))かな」(9オ・41@)

  る尓なおし者可り越しと遣なくきなし
  ひもなともそ2(そ$う)ちすてゝそひ布し多まへる
  本可遣いと免て多く尓てみ多てまつらま本
0085【御ほかけ】―\(合点) 火ノ影也
  しこの堂め尓者可み可ゝみをえりいてゝも
  な越あくましくみえさま/\ののうへと
  もを可多りあ者せつゝおほ可多のよ尓つ遣て
0086【おほかたのよに】―第五段
  みる尓はと可なきもわ可ものとうち多のむへ
  き越えらむ(む=ん)におほ可る尓もえなむ
  多むまし可り遣るをのこのほや遣尓つ可う」(9ウ・41E)

  まつり者可/\しきの可多免となるへきも万こ
  のうつ者な累へき越とりい多さむニ者(ニ者=尓ハ)可多
0087【うつは物】―器也
   可るへしかしされと可しこ志とてもひとり布多
  りよのを万つりこちしるへきならね者可み者
  しも尓堂す遣られしも者可み尓なひきて
  日ろき尓ゆつろふらむせ者きいゑのうち
  のあるしとすへきひとり越めくら春尓堂
  ら者てあし可るへき大事もなむ可多/\
  おほ可るとあれ者可ゝりあふさきるさ尓て」(10オ・41K)
0088【あふさきるさにて】―\(合点) アフサマクルサマ也 又トスルモカクスルモト云心モ有ヘシ

  なのめ尓さてもありぬへきすく那き越
0089【なのめに】―十分ナラヌコト也
  すき/\しき春さひ尓てのあ里さま
  をあま多みあ者せむのこのみならねとひと
  へ尓さ多むへきよるへと春者可り尓お那し
0090【よるへ】―\(合点) ヨル所也
  くはわ可ち可らい里をしなお(お=を)しひきつくろふ
  へきところなく尓可那布やう尓もやとえり
  そ免つさ堂まり可多きなるへし可な
  らすしもわ可おもふ尓可な者ねとみそめつる
  ちきり者可り越春て可多くおもひと万る」(10ウ・42B)

  まめや可なりとみえさて多も堂るゝ多免
  も尓くし(し=く)をし者可らるゝされとな尓可よ
0091【なにかよの】―ナニカシカト云也
  のあ里さ万をみへあつむるまゝ尓尓をよ
  者すいとゆ可しきなしやきむ堂ちの可
  みなえらひ尓者ましてい可者可りのひと可
  ハ堂ら(ら=く)ひ多ま者む(+せくへぬ尓多尓)可多ちき堂那遣なくわ可
  や可なる本とのをの可志ゝ者ちりも可しと
  もて那し布ミ越可遣とほと可尓ことえりを
0092【ことえりをし】―\(合点) 文ヲカクニ詞ヲエラビテ書ヲ云
  し春みつき本の可尓もと那く者せつ」(11オ・42G)

  さや可尓もみてし可なと春へなくま多せわつ可
0093【すへなく】―\(合点) ヒンナキヲ云
  なるこゑきく者可りいひよれといきのし堂尓ひ
  きいれことすく那なる可いとよくもてかくす
0094【もてかくす也】―ツカロウ体也
  个りなよひ可尓しとみれ者あまり那さ遣尓
0095【女しとみれは】―ヲンナ 源内侍当此品
  ひきこ免られてとりなせ者あ多免くこれを者し
0096【これをはしめのなん】―第一ノナン也
  免のなんと春へしこと可那可尓なの免なるまし
0097【ことかなかに】―\(合点) コトナルカ中ニト云心也
  きのうしろみの可多者のあ者れし里春く
  し者可なきついてのなさ遣あ里越(越=お可しき尓
0098【をかしきに】―善
  すゝめる可多なくてもよ可るへしとみえ多る尓」(11ウ・42L)
0099【よかるへし】―セタイカタヨリミヘタル也

  万め/\しきすち越堂てゝみゝ者さみ可ち尓
0100【まめ/\しき】―直也
0101【みゝはさみかち】―カヒ/\シキスカタ

  ひさうなきいゑとうしのひとへ尓うちとけ多
0102【ひさうなき】―\(合点) ヒンサウナキ也 フク/\シキ心也
0103【いゑとうし】―\(合点) 家ノメヲ云

  るうしろみ者可り越してあさゆふのいていり尓つ
0104【あさゆふのいていり】―奉公ナト男ノスル方也
  遣てもほや遣王多くしのの堂ゝす万ゐよ
  きあしき能免尓もみゝ尓もとまるあ里さ
0105【あしき事】―人ニ恨ナトアルコト也
  ま越うと支尓わさとうちまね者むやは
0106【うとき人】―ウチトケヌ女房也
  ち可え(え$く)てみむきゝわきしる遍可らむ
  尓可多りもあ者せ者やとうちもゑまれなミ多
  もさしくみもし者あやなきおほや遣者ら(者ら$)」(12オ・43C)
0107【おほやけはらたゝしく】―上ニヘモ恨ノアルコト也(左)

  者ら堂ゝしく日とつあ万ることなむとお
  可累をな尓ゝ可者き可せむともへハうちそむ可れ
  てしれぬいてわらひもせられあ者れともうち
0108【思いてわらひ】―語モセス人シレスヲカシキコトナトモアル体也
  日とりこ堂るゝ尓なにことそとあ者つ可尓
0109【あはつかに】―\(合点) アハ/\シキ也
  さしあふきね(ね=ゐ)多らむ者い可ゝ者くち越し可らぬ
  堂ゝひ多ふるにこめきてや者ら可ならむ
0110【こめきて】―\(合点) フシメカシキ心也 コマヤカニヨキ也 オサナクカタホナル心也
  をと可くひきつくろひて者なと可みさらむ
0111【ひきつくろひて】―引タテヽソフ也
  もとなくともな越しとろあるちすへし
  遣尓さしむ可ひてみむ本と者さてもらう多」(12ウ・43H)
0112【さしむかひて】―ヨキ中ニワロキ事アリ

  き可多尓つミゆるしみるへき越堂ちハ那れ
0113【たちハなれ】―ヨソヨリ云 ヲコスル用ナトモ不トヽノヘナル体也
  てさるへきをもい日やりお里ふし尓し
  いてむわさのあ多尓も万めこと尓も我心
0114【我心とおもひうる事なく】―人ニヲシヘラレテ我ニ思ヨルフシナキ也
  おもひうるなく布可支い多りな可らむ者
  いとくち越しく堂のもし遣なきと可やな越
  くるし可らむつね者すこしそは/\しくつき
0115【そは/\しく】―\(合点) タヽシカラヌ心也 思フヤウナラヌ体也
  な里ふし尓つ个ていて者え(え=へ)す累や
  うもあ里可しなとくま那きい飛もさ多免可
0116【くまなき物いひ】―馬頭事
  ねてい多くうちなけくいまは堂ゝしな尓も」(13オ・43M)

  よらし可多ち越者さらにもい者し(し$春)いとくち越(越=お)
  くねち个可ましきおほえ堂尓なく者多ゝひと
0117【ねちけかましき】―\(合点) ヨカラヌ心也
  尓万免や可尓しつ可なるもむきならむ
  よるへをそゐの多のみ尓はおもひをくへ
  可り遣るあまりのゆへよし者せうちそへ堂らむ
  を者よろこひ尓日すこしをくれ多る可多
  あらむをもあな可ちにもと免く者へしうしろ
  や春くの遣き堂尓つよく者う者へのな
  さけ者をのつ可らもてつ遣つへきわさをや」(13ウ・44E)

  え(え=ゑ)む尓者可り(可り$チ)してうらみいふへき越もみし
0118【えむに】―\(合点) ウツクシクヤサシキ也 ウツクシキヲモエナラヌト云也
  らぬさま尓しのひてうへ者つれなくみさを
0119【うへはつれなく】―\(合点)
  つくり日とつ日あまる者い者む可多那
0120【心ひとつに】―恨也
  くすこき者あハれなるう多越よみ
  をき志の者るへき可多み越とゝ免て布可き
  さと(+の)者那れ堂るうみつらなと尓者ひ可
  くれぬる(る=可し)りわら者に時女房なと能もの
  可多りよみしをきゝていとあ者れ尓可な
  くふ可き可なとなみ多越さへなむ」(14オ・44J)

  おとししいまふ尓者いと可る/\しくことさら(ら=ラ)
  堂るこさしふ可ゝらむおとこをゝきてみる
  免のまへ尓つらきあ里とこゝろを
0121【めのまへにつらき事】―ソトシタル恨ナトヲ恨家出ナトスル女ノコト也
  しらぬやう尓ゝ遣可くれてをまと者し
  むとする本と尓な可支よの物思日尓なるいとあ
  ちき那き事也心ふ可しやなと本免多てられて
  あ者れすゝみぬれ者や可てあま尓なりぬ可し
  日堂つ本と者いと春めるやう尓てよ尓可へり
  みすへくももへらすいてあ那可なしかくは」(14ウ・45A)

  多おほしなり尓遣るよなとやう尓あひし
  れるきとふらひ飛多すら尓うしともおもひ
  ハ那れぬおとこきゝつ遣てなみ多おとせ者つ
  可ふ布るこ多ちなときみの御心者あ者れな里
0122【こたち】―女房惣名
  遣るものをあ多ら御身越なといふつ可らひ堂
  ひ可み越可きさくりてあへな本そ遣れハ
  うちひそみぬ可し志のふれとなみ多こ本れ
0123【うちひそみぬ】―ナク体
  そ免ぬれ者お里/\ことにえねむしえすくや
  しきほ可め累尓本とけも/\き多」(15オ・45F)

  しとへし尓こり尓し免る本とよりも
0124【にこりにしめるほとよりも】―\(合点)
  まう可ひ尓て者可へりてあしき尓も堂
  堂よひぬへくそほゆる堂えぬすくせあ
  さ可らてあま尓もなさて堂つねとり堂
  らむもや可てあひそひてとあらむお里も可
  可らむきさみをもみ春くし堂らむ
  こちきりふ可くあ者れなら免われも
  うしろめ多くを可れしや者免尓う
  つろふ可多(+あらむをうらミて氣しき者みそむ可ん者多をこ可満し可りなハうつろふあ里ともみそめしさしいと越し」(15ウ・45L)

  くおも者ゝさる可多能よす可尓てもあ里
  ぬへき尓さ(+ル)やうならむ堂ちろき尓堂えぬへ
  きわさすへてよろつ多ら可尓ゑ(+ン)
  きことをハみしれるさま尓本のめ可しうら
  可らむ布し越もく可らすかす免なさ者そ
  れ尓つ遣てあ者れもまさ里ぬへしおほく
  者わ可もみる可らおさまりもすへしあまり
0125【あまりむけに】―夕顔上此品
  む遣尓うちゆるへみ者那ち多るもや春く
  らう多きやうなれとをの可ら可ろき可多」(16オ・46D)

  尓そほえ可しつな可ぬふねのうき多る
0126【つなかぬふねのうきたるためしも】―\(合点)
  多免しも遣尓あやなしさ者ぬ可といへは
  うなつくさしあ多りてお可しともあ者れとも
0127【さしあたりて】―中将ノ詞也
  尓いらむの堂のもし遣なきう多可ひあらむ
0128【心にいらむ人】―第六段
  こ大事なるへ个れ我心あやまちなくてみす
0129【我心あやまちなくて】―女ノ心也 又男ノ心ニシテモ也
  くさ者さしなおしてもなと可みさらむと
  え堂れとれさしもあらしとも可くも堂可ふ
0130【さしもあらし】―サウモアラシト也
0131【ともかくも】―コレヨリ惣テノヒハン也
0132【たかふへきふし】―男ノタカイ目也

  へき布しあらむをのとや可尓みしの者むより
  本可尓ますあるまし可り遣里といひてわ」(16ウ・46I)

  可いもうとのひ免きみ者このさ多め尓可なひ
  へりともへ者きみのうちねふりてこと者万
  せ者ぬをさう/\しくやましとむまの
  みものさ多免の者可せになりてひゝらきゐ
  多り中将者この者りきゝ者てむと(+尓)いれてあ
0133【あへしらひゐ給へり】―第八段
  へしらひゐへりよろつ尓よそへてお
0134【よろつの事】―馬頭
  せきのみち能堂くみのよろつ尓万可せ
  てつくりい(+多)すもりむしのもてあそひものゝそ
  あとも佐多万らぬハそ者つき佐れ者み多るも」(17オ・47@)

  个尓可うもしつへ可り遣りと尓つ遣つゝさま越
  可へていま免可しき尓めうつも(も=り)てお可しきもあり
  大事して万こと尓うる者しきのてうとの可さ
  りとするさ多万れるやうある越なん那くしいつ
  るなむな越万こと能(ゝ=の)上手者さまことに
  みえわ可れ侍又上手ほ可れとすミ可き
  尓えら者れてつき/\尓さら尓おとりまさるけちめ
  布としもみえわ可れすかゝれとのみをよ者ぬ本う
  らいのあらうみのい可れるいをの春可多可らく尓」(17ウ・47F)

  の者遣しき个多(ゝ=の)可多ちめ尓みえぬお尓の可本
  なとのおとろ/\しくつくり多る尓ま可せて
  ひとき者め越とろ可して志ち尓は尓さらめとさ
  てありぬへしよのつねのの堂ゝすまひのな
  れ免尓ち可きいゑゐあ里さ満个尓とみえ
  なつ可しくや者らい(い=ひ)堂る那とをしつ可尓可
  きませて春くよ可ならぬ遣しきこふ可く
0135【すくよか】―スクミタル心
  よ者那れて堂ゝみなし个ち可きま可きの
  うち越者そしらひをきてなと越な」(18オ・47K)

  す者いといきひ本ひこと尓わろ(ろ=ル)者をよ者ぬ
  可めるて越可き堂る尓も布可支こと者那くて
  こゝ可しこのてむな可尓者しり可きそこ者可と
  く个しき者める者うちみる尓可と/\しく个し
  き堂ち多れとな越万ことのすち越こまや可尓
  可きえ多る者う者へのふてきえてみゆれといま
  ひと堂ひとりならへてみれ者なをしちになむ
  よりける者可那き堂尓可くこれまして
  き尓あ堂りて个しき者めらむみる」(18ウ・48B)

  免のなさ遣越者え(え=エ)多のむましくおもふへえて
  者しめ能春き/\しくと申侍らむ
  とてち可くゐよれ者きみも免さまし給中将
  いみしく志んしてつらつゑ越つきてむ可ひゐ
  へリの里のしの者りときゝかせむ
  ちするも可つ者お可し遣れと可ゝるついて者を
  /\むつともえしのひとゝめすなむあ里遣
  るはやうま多い(い=イ)らう尓あ者れと
0136【はやうまたいと下らうに】―馬頭サキニト云詞也
  ふ人侍きゝこ(ゝこ=えさせつるやう尓可多ちなといと」(19オ・48H)
0137【きこえさせつるやうに】―マヘ品定ニ申ツル也

  まお尓も(+ら)さりし可者わ可支本と能すき尓は
  このひと(ひと=越とま里尓ともおもひとゝ免(+ラ)すよ
  るへとな可らさう/\しくてと可くまきれ者
  へ里しをゑんし越い多くし侍し可はつきな
  くいと可ゝらておいら可なら満し可者ともひつ
  あまりいとゆるしなくう多可ひしもうるさくて
  可く可す那らぬをみも者那多てなと可くしも
  おもふらむとくるしきお里/\も(+て)しねん尓
  さめらるゝやう尓なむしこのあるやう」(19ウ・48M)

  もとよりおもひい多らさり个る尓もい可てこ
0138【いかてこの】―馬頭也
  のの多免尓(+者)(い$)となきてをい多しをくれ堂る
  すちのをもな越くち越しく者みえしと
  者けみつゝと尓可く尓つ遣て万めや可尓うしろみ
  つゆ尓ても尓多可ふ者那くも可那とへり
  し本と尓すゝめる可多ともひし可とゝ可(ゝ可=と可)く尓
  なひき(+き)てなよひ(ひ=ヒ)ゆきみ尓くき可多ち越も
  この尓みやうと満れむとわ里那くおもひつく
  ろひうとき尓みえ者おもてふせ尓やハ=え)む/と」(20オ・49E)
0139【おもてふせ】―面目モアルマシキ也

  者ゝ可り者ちてみさ越尓もてつ遣てみ那るゝ
  まゝ尓も个しう者あらすし可と多ゝこの尓
  くき可多ひとつなむさ免すしその可み
  (+ツ)しやう可うあな可ち尓し多可ひをち多
  るな免れ(れ$)りい可てこる者可りのわさしてをとし
  てこの可多もすこしよろしくもなりさ可なさも
0140【このかた】―物ノ方
  や免むとて万ことにうしなとも日て多えぬへ
  き个しきならは可者可りわれ尓し堂可ふ
  らは日こりなむと(ふ=ひ)(へ=ヒ)えてことさらにな」(20ウ・49J)

  さけなくつれなきさ万越みせてれいの者ら堂
  ちゑんするに(に=を)可くおそましく者いみしきちき
0141【おそましく】―ヲソ/\シキ也
  里ふ可くとも堂えてみし可き里とも者ゝ可く
  わ里那きものう多可ひ者せよゆくさきな可く
  みえむとも者ゝつらきあ里ともねむして
  なの免尓日那里て可ゝる堂尓うせ那者いと
  あ者れとなむふへきひとなみ/\尓もなり春
  こしおと那ひむ尓そへてならなくあるへ
  きやうなと可しこくをしへ堂つる可那と思給へ/て」(21オ・50A)

  われ堂遣くい日(日=ひ)(+徒)尓春こしうちわらひてよ
  ろつ尓み多て那く个那き本と越みすくして
  可春那るもやと万つ可多者いとのと可尓日な
  されてやましくもあら須つらき越志のひ
  て日なお1らむお1里越みつ1遣むとゝし
  可さねむあいな多のみ者いとくるしくなむある
  へ个れ者か多み尓そむきぬへきゝさみ尓なむある
0142【かたみに】―タカヒニ也
  とね多个尓いふ(+尓者ら堂ゝしくな里て尓く遣な
0143【はらたゝしく】―男
  るも越い日者けましもえおさ免ぬ」(21ウ・50G)

  すち尓ておよひ飛とつをひきよせてく日てハ(+ン)
  りしをおろ/\しく可こちて可ゝるきすさへ
  つきぬれ者いよ/\ましらひをすへき尓もあ
  ら須者つ可し免めるつ可さくらゐいとゝしく
  な尓ゝつ遣て可はめ可むよ越そむきぬへき
  (+ン)めりな(+ン)といひをとしてさらは个ふこ
  可きりなめれとこのよひ越可ゝ免てま可てぬ
    て越ゝりてあひみしこと越可そふれ者これ
    日とつや者きみ可うき布し」(22オ・50L)

  えうらみしなとい可(可=ヒ)れ者さす可尓うちなきて
    うきふし越日とつ尓可そへきてこやき
0144【うきふしを―女返し
    み可て越わ可るへきお
  なといひしろひ志可と万こと尓ハ可ハるへき
  ことゝも思給へ春な可らころふる万てせうそ
0145【せうそこ】―書ナラテ物イフヲモ消息ト云
  もつ可者さ須あく可れ万可りありく尓里(+む)しの
0146【りむしのまつり】―十一月午日
  まつりのてう可く尓布遣ていみしうみそ
  れ布るよこれ可れ万可りあ可るゝ尓て
  くらせ者な越いゑちと者む可多者な可り」(22ウ・51D)
0147【又】―まだトモ

  遣りうちわ堂りの堂ひね(+も)すさまし可るへく个
  しき者めるあ堂りはそゝろさむくやと思給
  られし可はい可ゝおもへると个しきもみ可てら
  ゆき越うち者らひつゝ(+ま可てゝ)なまわろくつ免く
  者るれとさりともこよひろのうらみはと
  むとおもふへし耳本の可尓可へ尓そむ遣
  え多るきぬとものあつこえ多るおほいなる
0148【あつこえたる】―ワタノ入タル也
  こ尓うち可けてひきあくへき(ゝ=の可多ひら
  なとうちあ遣てこよひ者可りやとまち个る」(23オ・51I)

  さ万され者よとこりする尓さうしみ者な
  しさるへき女方も者可りとまりておやのいゑ尓
  このよさりなむわ多りぬるとこ堂遍はへりえむ
  なるう多もよま須遣しき者免るせうそこも
  せていとひ多やこもり尓なさけな可里し可は
0149【ひたやこもり】―ヤカテコモリワタル也
  あえ那きちしてさ可なくゆるしな可りしも
  をうとみねとふ可多のやあ里遣むと
  しもへさりしなれとやましきまゝ
  尓し尓きるへきつねよりもゝめ」(23ウ・52@)

  堂るいろあひしさまいとあらま本しくてさす可
  尓わ可みすてゝむのち越さへなむおもひや里
  うしろみ多りしさ里とも堂えて日者那つ
0150【さりともたえて】―女房ノ心ニ馬頭思タエマシト思カト思也
  やう者あらしとふ多まへてと可くいひ
0151【かくいひ侍】―男ヨリ云コト
  しをそむきも勢須と(と$)堂つ年万とはさむと
  も可くれしのひ須可ゝや可し可ら須いらへつ
  堂ゝあ里し(+可ら者えなむみすく春ましき
0152【たゝありしなから】―女房ノカタカラ
  あら多免てのと可尓日なら者なむあひみる
  へきなとい日し越さりとも日者那れしと」(24オ・52E)
0153【さりとも】―男也

  思給へし可は志者しこらさむの尓てし可あら堂
  免むともい者須い多くつひきてみせしあひ
  堂尓いとい多く日な遣きて者可那くな里
  尓し可は堂者ふれ尓くゝなむおほえ者へりし
  ひとへ尓うち堂のみ堂らむ可多者さ者可り尓
  てあ里ぬへくなむ思給へいてらるゝ者可那き
  あ多をも万ことの大事越もいひあ者勢堂
  る尓可いな可らす堂つ多ひ免とい者む尓もつ
  き那可らす多な者多能て尓もおとるましく」(24ウ・52J)

  そ可多もくしてう累さくなしとてい
  とあ者れといて堂り中将の堂那者多の堂ち
  ぬふ可多越のと免てな可支ちきり尓そあえまし
0154【なかきちきりに】―第十四段
  个尓その多つ堂ひ免の尓しき尓はま多(ま多=しく
  あらし者可那き者那もみちといふも里ふしの
  いろあひつきなく者可/\し可らぬ者つゆの者え
  なくきえぬるわささある尓より可多き
0155【かたき世とはさためかね】―カタキ世ト云コトハ上品ヲ定カヌル也
  者さた免可ね堂るそやとい日者やしさて
0156【さて又】―第十五段
  おしころ万可り可よ日しも堂ちまさ/り」(25オ・53B)
0157【おなしころ】―馬頭

  者せ万こと尓ゆへあ里とみえぬへくうちよみ者
0158【うちよみ】―哥事
  しり可き可いひくつま越とてつきくちつ
  み那堂と/\し可ら須みきゝ王多りきみ
  る免もこともなし可はこのさ可那
0159【こともなく】―難ナキ
0160【このさかな物】―サキノ女也

  うちと遣多る可多尓てとき/\可くろへ(+
  本とはこよなくまりきこのうせて
  のちい可ゝ者せむあ者れな可らもすきぬる者可ひ
  なくて志者/\万可りなるゝ(+満ゝ)尓はすこしまハゆく
  えむ尓このましきことは免尓つ可ぬある尓」(25ウ・53G)

  うち多のむへく者みえす可れ/\尓のみゝせ者へる
  本と尓しのひて可者せるあ里遣らし
  なのころ本ひもしろ可りしうちより
  ま可て尓あるうへきあひてこのくる万尓
  あひの里てれハ大納言のいゑ尓ま可りとま
  らむとする尓こ能いふやうこよひまつら
  やとなむあやしくくるしき(+とて)この(+の)者多
  よきぬなり个れ者あれ多るくつれよ里
  い遣の可个みえてつき多尓やとるすみ可を」(26オ・53L)
0161【つきたにやとる】―\(合点)

  すきむもさす可尓ておりぬ可しもとよりさる
0162【おり侍ぬ】―馬頭車ヨリ
  を可者せる尓やあり遣むこのとこい多く春ゝろ
  きて可とち可支らうのすのこ多つ尓し里可
  けてと者可り(+を)みるきくいと越もしろくうつろ
  ひ王多り(+て)尓き本へるもみちのみ堂れなとあ
  者れとけ尓みえ堂り布ところな里遣る布えと
  りいてゝ布きならしよしなとつゝし里う
0163【景】―\(合点) カゲ
  多ふ本と尓よくなるわこむ越志らへとゝのへ堂り
  个るうる者しく可きあ者勢堂りし本と遣し
                     うハ」(26ウ・54C)

  あらす可しリちのしらへ者や者ら可に可き
  ならしてすのうちよりきこえ多るもいま免き
  堂るのこゑなれ者きよくすめる尓お
  里つきな可らすおとこい堂く免てゝすのもと
  尓あゆみきて尓者能もみちこ布みわ遣堂る
  あとも那遣れなとね多万須きく越ゝ里て
    ことのねもえならぬやと那可らつれ
0164【ことのねも】―カヨフ男
    なをひきやと免遣る
  わろ可免りなといひていまひとこゑきゝ者やす」(27オ・54I)

  へきのある(+尓)のこいなとい多くあされ
  かゝれ者(+い堂うこゑつくろひて
    こ可らしに布きあ者須免る布え能ねを
0165【こからしに】―女返シ
    ひきとゝむへきことのハそなき
  と那ま免き可者すにゝくゝなるをもしらて
  さうのこと越者んしきてう尓志らへていま免
0166【又さうのことを】―女
  可しく可いひき堂るつまをと可と那き尓者あ
  らねと万者ゆ支ちなむしし堂ゝとき/\う
  ち可多らふつ可へなとのあくまてされ者み」(27ウ・55@)

  すき堂る者さてもみる可き里はお可しくもあ
  里ぬへし/\尓てもさ累とろ尓て王すれぬよす
  可と思給へむ尓者堂のし遣那くさしすくい多り/と
  越可れてそのよ能尓ことつ遣てこ万可り多え
  尓し可このふ多つのことをゝもふへあ者する尓わ可
  きときの尓多尓さやう尓もていて多ることは(+いと)あ
  やしく堂のもし遣那くおほえきいまよりの
  ち者ましてさのみなむ思給へらるへき御心まゝ
0167【御】―ミ
  尓おらはおちぬへき者きのつゆ日ろ者ゝきえ」(28オ・5F)

  なむ登み(+ゆ)累堂まさゝのうへのあ者(者=ら)れなとのえむ
0168【たまさゝのうへ】―\(合点)
  尓あえ可なる春き/\しさのみこ可しくお
  ほさるら免いまさりともなゝとせあまり可本と尓
  おほしゝ里者へなむな尓可し可いやしきいさ
  め尓てすき堂者免らむを可せへあや
0169【すき】―数寄
  あや(あや#)まちしてみむ(のイ)可多くなゝるをも
  多てつへき物也いましむ中将れいのうなつくき
0170【中将れいの】―第十二段(左)
0171【きみ】―源氏

  み春こし可多ゑみてさ累(事=こと)はおほすへ可
  めりいつ可多につ遣ても王ろく者し多那可り遣る」(28ウ・55K)

  み可多り可なとてうちわらひお者さうす中将
0172【おはさうす】―オハシマス也
  な尓可しはしれ(+ものゝ)可多り越せむとていとしのひて
  みそ免堂りしのさてもみつへ可りし遣者ひ
  なりし可はな可らふへきしも思給へさ里し
  可となれゆくまゝ尓あ者れとほえし可は堂
  え/\わ春れぬもの尓思給へし越さ者可り尓な
  者うち多の免る个しきもみえき多のむ尓つ
  遣て者うらめしと思事あらむとな可ら
  おほゆるお里/\もしをみしらぬやう尓て」(29オ・56C)

  ひさしきと多えをも可う多まさ可なる
  多ら須多ゝあさゆふ尓もてつ个多らむあ里
  さま尓みえてくるし可りし可は多の免王多る
  こと那ともありき可しおやもなくいと本そ
0173【おやもなく】―女ノ有様
  遣尓てさらはこの者と尓ふれてお
  へるさま(さま=けしき)もらう多遣那リき可うのとけき尓
  お多しくてひさしく万可らさりしころこのみ
0174【このみ給ふるわたりより】―四君方ヨリ
  
ふるわ多りよりなさけなくう多てある
  那むさる多よりありて可すめい者せ堂り个る」(29ウ・56H)

  のち尓こきゝし可さるうきやあらむと
  もしらす尓者わすれす那可らせうそこなとも
  せて日さしくし尓む遣尓日し本れて
  本そ可り遣れ者おさ那きともあ里し尓
0175【おさなき物なとも】―玉カツラノ内侍ノカミト後ニミエケリ
  わつらひてなてしこのハ那越ゝ里てをこせ
  りしとてなみ多くみ堂りさてそのふみのこ
0176【なみたくみたり】―中将
  者ゝとゝひへはいさやことなる可りき/や
0177【いさや】―中将
    可つ可き本あるともお里/\尓あ者れ
0178【山かつの】―女
    盤可遣よなてしこのつ遊」(30オ・56M)

  おもひいてしまゝ尓万可り堂里し可ハれいのうらも
  なき可らいと物思可本尓てあれ多るいゑのつゆ
  个きをな可免てむしのね尓き本へる个
  きむ可しもの可多り免きておほえ
    佐きましるいろ(いろ=イ)はいつれとわ可ねと
0179【さきましる】―中将返シ
    なをと尓(尓$)那つ尓しく
  と那てしこ越者佐しをきて万つちりを
0180【ちりをたに】―\(合点) ちりを多尓春へしとそおもふ/しより/いもと王可ぬるとこ(付箋@)
   堂尓なとお1やの1をとる
    うち者らふそても遣きとこ那つ尓」(30ウ・57E)
0181【うちはらふ】―又女房

    あらし布きそもき尓个りと者可
  那遣尓いひなしてまめ/\しくうらみ多るさま
  もみえすなみ多越もらしおとしてもいと者つ
  しくつゝまし个尓万きら者し可くしてつ
  き越もし里遣りとみえむ者わ里那くゝる
  しきものと堂りし可はや春くてま多と
  堂えをきし本と尓あとも那くこ可き
  个ちてうせ尓し可よ尓あらは者可那きよ尓そ
0182【又】―マダ
  さすらふらむあ者れとし本と尓わつら者し个尓」(31オ・57J)

  万と者す个志きみえまし可は可くもあく可ら/さゝ(ゝ$)
  らましこよなきと多えを可須さる尓し
  なしてな可くみるやうもまし可のなて
  しこのらう多くし可はい可て堂つねむ
  と(+ヒ)ふる越いまもえこきゝつ遣者へら
  ねこれこ(ヘ=ツ)る者可那き堂免しな免れ
  つれなくてつらしと遣るもしらてあ者れ堂え
  さ里しもやく那き可多なり遣りいまやう/\
  わ春れゆくき者に可れ者多えしも者那」(31ウ・58A)

  れすおり/\や里那らぬむねこ可るゝゆふへ
  もあらむとおほえこれなむえ多もつ
  しく多のもし遣なき可多なり遣るされ者
0183【されはかの】―第十四段(左)
  可のさ可那いてある可多尓わ春れ可多个
  れとさしあ多りてみむ尓はわつら者しくよ(よ$)
  よくせ須者あき堂きこともあ里なむや
  ことのねすゝめ个む可と/\しさもすき堂
  るつミをも可るへしこのこ(ころ=もと那きも
  多可ひそふへ个れ者いつれとゐ尓さ堂」(32オ・58F)

  めすなりぬるこ世中や堂ゝ可くこり/\
  尓くらへくるし可るへきこのさま/\能よき可
  きりをとり具しなん春(+つ、つ$)へきくさ者ひ(者ひ=ワイ)ませ
  ぬ者いつこ尓可はあらむきち上天女をゝも
  ひ可遣むと春れ者本う遣つき具すし可らむ
0184【くすしからむ】―クスムコト
  こわ日し可りぬへ个れとてみ那わらひぬ
  志きふ可=トコロ)尓そ个しきあることはあらむす
0185【しきふか所にそ】―第十五段(左)
  こしつゝ可多りせとせ免らるしも可志もの(の$)
  $)尓者なてうこと可きこしめし所侍らむといへ」(32ウ・58K)

  とのきみ万免や可尓をそしとせ免へは
  な尓(+可)さむと免くら春尓ま多
0186【なに事をとり】―式部 第十六段
  文上可しこき多免しを
  なむ見給へし可のむまの可みの申給へるや
  う尓おほや遣こと越もいひあ者勢王多くし
  さまの尓すまふへきをきてをゝもひ
  免くらさむ可多もい堂りふ可くさえのきは
  なま/\の者可せ者つ可しくすへてくちあ可す
  へくなむらさ里しそれ者ある者可勢の」(33オ・59B)

  もと尓可くもんなとして万可り可よひ/し
  本と尓あるしのむすめともおほ可りときゝ(へ=フ)
  者可なきついて尓い日よりてしをおやきゝ
  つ遣てさ可もていてゝわ可布多つのう多
0187【ふたつの道うたふ越きけ】―\(合点)
  ふ越き个となむきこえこちし可とおさ/\
  うちと遣てもま可らす可のやのこゝろを者ゝ
  可りてさす可尓可ゝつらひし本と尓いとあ者れ
  尓うしろみねさめの可多らひ尓ものさえ
  つきおほや个尓つ可うまつるへきみち/\しき」(33ウ・59H)

  こと越ゝしへていときよけ尓せうそこ布み尓
  も可んなといふ可き万せ須むへ/\しくいひま
  者し尓をのつ可らえ万可り堂えてそ
  しとしてなむわつ可なるこしをれ布みつく
0188【しとして】―師
  るなとならひし可者いま尓そんは
  王すれらねとなつ可しきさいしとうち多の
  まむ尓は(は$)むさいのひとなまわろならむ布
  るまいなと(なと$)みえむ尓者つ可しくなむみえ
  しまいてきむ堂ちの多免者可/\しくし」(34オ・59M)

  多し(し$た)可なるうしろみはな尓ゝ可せ佐せ
  者む者可那しくち越しと可つみつゝも堂ゝわ
  可尓つきすくせのひく可多(+へ)めれ者(者$)をのこし
  もむしさいなハゝへ免るとせ者の
  こりをい者勢むとてさて/\お可し可り遣る可那
  とす可い者えな可らハ那の王多り越こつ
  きて可多里那すさていと日さしく万可らさり
  し尓ものゝ堂より尓堂ちよりて者へれ者つ年
  のうちと遣ゐ多る可多尓は者へらてこゝろやま」(34ウ・60D)

  しきものこし尓てなむあいて(+り)布春ふる
  尓やとこ可ましくもよきふしなりとも
  思給ふる尓このさ可し者多可ろ/\しきものゑ
  んしすへき尓もあらすよの堂うり越とりてう
  らみさり个りこゑも者やり可尓ていふやう
  布日やうをもき尓多へ可ねてこくねち(ち=ツ)
  うやく越布くしていとくさき尓よりなむえ多い
  めん者らぬまのあ多りなら須ともさるへ可らむ
  さうしらはうけ多まハらむといとあハれ尓むへ/\」(35オ・60I)

  しくいひ(+リ)いらへ尓な尓と可は堂ゝう遣多ま
  者りぬとて多ちいて尓さう/\しくやおほえ遣
  むこの可うせなむ尓多ちよりへと堂可や可尓
  いふをきゝすくさむもいと越し志者しや春らふ
  へき尓者多らね者个尓その尓本ひさへ者那
  や可尓堂ちそへるもすへなくて尓け免をつ可ひて
    佐ゝ可尓の布るまひしるきゆふくれ尓
0189【さゝかにの】―式部
    ひるますくせといふ可あやなさい可なる
  ことつ个そやといひも者てす者し里いて」(35ウ・61A)

  ぬる尓をひて
0190【をひて】―追
    あふこと能よ越しへ多てぬならは
0191【あふことの】―女返シ
    ひ累まもな尓可万者ゆ可らまし
  さ春可尓くちとくなとはゝつ(つ=へ)りきとしつ/\ニ(ニ=登)
  せはきみ多ちあさましとてそてわ
0192【きみたちあさましと思て】―第十七段(左)
  らひいつこのさる可あるへきおいら可尓越尓とこそ
  む可ひゐ多らめむくつ遣きこととま者しきを
0193【むくつけき】―オソロシキ心也
  してい者む可多なしと式部をあ者免尓くみて
  すこしよろし可らむせとせめへとこれ」(36オ・61F)

  よりめつらしきハ佐ふらひなむやとてをりすへて
0194【すへておとこもをむなも】―馬頭
  おこもをむ那もわろ(+ワ)わつ可尓しれる可多の
  をのこりなくみせくさむとへるこいと
  おし遣れ三史五経(+の)みち/\しき可多越あきら
0195【三史五経】―\(合点)
0196【史】―シ

  可尓さとりあ可さむこそあい(+可)ら免なと可者
0197【行】―ギヤウ
  い者む可らによ尓あるほや遣王多く/し
  尓个てむけ尓しらすい多らすしもあらむわ
  さとならひま年者ねと(+も)春こしも可とあらむ
  みゝ尓も免尓もとまることしねん尓おほ可るへ/し」(36ウ・61K)

  さるまゝ尓は万ん那を者しり可きてさるましき
  とちのふみ尓な可者すきて可きすゝめ多る
0198【とち】―中
  あなう多てこの$可多)の多越や可ならまし可はと
  え多りち尓はさしも者さら免とをのつ可ら
  こ者/\しきこゑ尓よみなされなとしつゝことさ
  らひ堂り(+これハ)らうの尓もおほ可る可しう
  堂よむともへるのや可てう多尓まつ者れ
  お可しき布ること越も者しめよりとりこみつゝす
  さましきおり/\よみ可け多るこものしき」(37オ・62C)

  なれ(し==コト)せね者那さけなしえせ佐らむ
  者し多那可らむさるへきせちゑなと五月せち
  尓いそき万いるあし多な尓のあやめもしつめられ
  ぬ尓え那らぬね越ひき可遣九日えん尓まつ
0199【えならぬ】―エナラヌ夕立旦アリ
0200【ねをひきかけ】―菖蒲ノ哥ヲヨミカヘル也
0201【九日】―コヽヌカ

  可多きしのこゝろをめくらして(て$)いとまな
  おり尓きくのつゆ越可こちよせな(+ン)とやうの
  きいと那ミ尓あ者せさならてもをのつ可ら遣尓
  ち尓へハお可しくもあ者れ尓もあへ可り遣る
  のお里尓つきなく免尓と万らぬな(+ン)と越」(37ウ・62H)

  越し者可ら須よみいて堂る/\越くれてみゆ
  よろつ尓なと可はさてもとほゆるお
  可らとき/\王可ぬ者可りの尓傳者よし者み
  なさけ堂ゝさらむなむめや春可るへきすへて
  尓しれらむこと越もしらす可本尓もてなしい
  満本し可らむをもひと布多つ布し
  すくすへくなむあへ可り个るといふ尓もきみ
  ひと日とりのあ里さまをのうち尓
  遣(+フ)これ者堂ら須さしすき堂ること那くも」(38オ・62M)
0202【これは】―藤壺ノコト
0203【たらす】―不足


  のし个る可那とあり可多き尓もいとゝむねふ多
  可るいつ可多尓より者つも那く者て/\ハあやし
  き尓なりてあ可しつ可らうして个ふ
0204【からうして】―ヤウ/\シテ
  者の遣しきもな越れり可くのみこもりさ布
  らひ大殿御心いと越し个れ者万可てへり
  おほ可多の个しきの遣者ひもけさや可尓个多
0205【おほかたのけしき】―アフヒノ上
  くみ多れ堂るましらすな越これこ
  /\のすて可多くとりいてし万免ひと尓者堂
  のまれぬへ个れと本す可らあまりうる者しき」(38ウ・63E)

  あ里さまのけ可多く者つ可し个尓しつま
  里へるをさう/\しくて中納言のきみつ可
  さなとやうのをしなへ堂らぬわ可
0206【人】―ウト
  堂者ふれなとの多まひつゝあつ万(万#さ)尓み多
  れへるあ里さまをみる可ひあ里と
  こえ多りおとゝも王多りてうちとけへれ者
  へ多てゝお者しまして御物可多りきこえ
0207【御き丁】―ミ
  越あつき尓と尓可みへ者/\わらふあ那可まと
0208【あなかま】―アナカシカマシ也
  て个うそく尓より越者須いとやすら可那る」(39オ・63J)

  ふる万ひなりやくらくなる本と尓こよひな可
0209【なかかみ】―\(合点) 天一方事
  可みうちよりはふ多可りて遣りときこゆさ可し
  れい者いみ可多な里遣里二条院尓もお
  しすちにていつく尓可多可へむいとなやましき
  尓とておほとのこもれりいとあしき事也これ
  可れきこゆきの可み尓て志多しくつ可ふまつ
  るのな可ゝ者能わ多りなり(り=ル)いゑなむこのころ
  せきいれてすゝしき可け尓きこゆいと
  よ可な2りなやましき尓うしな可らひきいれ」(39ウ・64A)

  徒へき(き$)可らむ越と(+フ)しのひ/\の可多ゝ可へ
  者あま多あ里ぬへけ个れとひさしく本とへて
  王多りへる尓可多ふ多遣てひき堂可へ本可さ
  まへとほさむ者いと越しきなるへしきの
  可み尓おほせ事給へハう遣=多ま)者りな可らし里(里$)
  そきていよの可みのあそ(む=ン)のいゑ尓つゝしむ
  者うなむ万可りうつれるころ尓てせ者き
  れ者な免遣なるらむとし
  堂尓な遣く越きゝ(+フ)てそち可(可#)ゝら(ら$)むなむ(む$ル)」(40オ・64G)

  うれし可るへき越き堂ひね者
  しきちすへき越多ゝそのきのうしろ尓
  との多まへは个尓よろしき越まし尓も
  者しらせやるいとしのひてことさら尓古と/\し
  可らぬ越といそきいてへハおとゝ尓もきこ
  え者す尓もむつましき可きりして
  お者しましぬ(+可ミ)尓者可尓とわふれともきゝいれ
  す心殿日む可し越もて者らひあ遣さ勢て可り
0210【心】―シン
  そ免のしつらひし多り者えなとさ」(40ウ・64L)

  る(る=ル)可多尓お可しく志なし堂りゐいゑ多つ
  し者可きしてせんさいなとと免てうへ堂り
  春ゝしくてそこ者可と那きむしのこゑ/\き
  こえ本堂るし个くとひま可ひてお可しき本と
  /\わ多殿よりいて多るいつみ尓のきゐてさ
  けのむあるしもさ可なもとむとこゆるきのいそ
0211【さかなもとむ】―\(合点)
  きあ里く本ときみ者のとや可尓な可免
  のしな尓と(+い)てゝいひしこのなみなら
  しとほしいつ日あ可れる个しき尓きゝをき」(41オ・65C)

  へるむ春免なれ者ゆ可しくて見ゝとゝめ多ま
  へる尓この尓しをもて尓その遣者ひするきぬ
  のをとなひ者ら/\としてわ可きこゑとも尓く
  可ら須さす可尓志の日て(+いひえ)わらひなとするを(を$け者ひ)
  さらひ堂り可うし越あ遣多り遣れと可み
  しとむつ可りておろしつれ者もし堂るす
  き可けさうしの可みよりも里多るにやをら
  よりてみゆやとほ勢とひまも(も=し)遣れ者し
  者しきゝ尓このち可きもや尓つとひゐ多累」(41ウ・65H)

  なるへしうちさゝめきいふとも越きゝ
  はわ可うへなるへしいとい多う万免多ちてま多き
  尓やむことなきよす可さ多まりへるこさう/\
0212【よすか】―\(合点) 人ノメヲ云
  し可免れされとさるへきくま尓はよくこ可く
  れあ里きなれなといふ尓もおほ春ことの
0213【おほすことのみ】―\(合点) 藤ツホノ事
  尓可ゝり(+レ)者万つむねつふれて可やうのいて
  尓ものいひもらさむをきゝつ遣堂らむ
  とおほえとなる遣れ者きゝさし堂
  まひつしきふひめきみ尓あさ可本」(42オ・66@)
0214【ひめきみ】―\(合点) 槿斎院ナリ源氏ニ心ツヨクテヤミニシ人也

  多て万つり多まひしう多なとをすこし本ゝゆ
  可免て可多るもきこゆくつろき可ましく
0215【くつろきかましく】―\(合点) カル/\シクシトケナキ心也
  う多すし可ち尓もある可那(+と)な越みをとり者し
  なむ可しとほす可みいてきてとうろ可けそ
0216【かみ】―\(合点) 紀伊守
  あ可く可ゝけなとしてく多者可り万いれり
  と者りもい可尓そ者さる可多能もと那くて者
0217【とはり長も】―\(合点)
  免さましきあるしならむとへ者な尓よ
  遣むともえうけ多ま者らすと可しこまりて
  佐ふら婦者しつ可多のまし尓可りなるやう尓て」(42ウ・66E)

  おほとのこもれ者/\も(も$)しつまりぬあ累しの
0218【あるし】―\(合点) 紀伊守
  ことも可し个尓てありわら者那る殿上本と
0219【ことも】―子
  尓らむしなれ多るもありいよのす遣のこも
  あ里あま多ある尓いとけ者ひあて者可尓て
0220【いとけはひあてはかにて】―小君故衛門督丶子空蝉ノオト丶($)
  十二三者可りなるもありいつれ可いつれなとゝひ多
0221【十二三はかりなる】―小君故衛門督ノ子空蝉ノオトヽ
  まふ尓これ者こゑもんの可みのすゑのこ尓て
  いと可なしくしける越ゝさ那き本と尓をく
  れてあねなるのよす可尓かくてなりさ
0222【よすか】―タヨリ也
  え那ともつきハへりぬへく个しうはゝへらぬを
                        とも」(43オ・66J)

  思給へ可遣な可らす可/\しう者えましらひ
  らさ免ると(+ニ)あ者れのやこのあねき
0223【あはれの事や】―\(合点) 源氏
  みやまうとのゝちのおやさなむすに
  に遣那きおやをもまうけ堂り遣る可那
  うへ尓もきこしめ志をきてつ可へ尓い多し堂
0224【宮つかへに】―\(合点) 此女ヲ
  てむともらしそうせしい可尓な里尓个むといつ
0225【いつそや】―\(合点) 御門
  そやの者せしよこさ多免なきものな
  といとをよすけの多まふ布い尓可くて侍也
0226【をよすけのたまふ】―\(合点) 思ノ外也
  世中いふさのみこいまもむ可しもさ堂」(43ウ・67A)

  まり多る事侍(ね$ラヌ)尓ついて(ついて$)すくせ者う可
  日(日=ミ)多るなむあ者れ尓累なときこえ佐すいよ
  のすけは可しつくやきみとふらむない可ゝ
  は王多くしの志うと(者$)(+ヘ)める越すき/\
  しきことゝな尓可しより者し免てうけひき者
  へら須なむと春さ里とも万うと多ちの
0227【さりとも】―\(合点) 源氏
  き/\しくいま免き堂る(る$ら)む尓おろし堂てむ
  やは可のす遣はいとよしあ里て个しき者
  める越やなともの可多りし(て=つゝ)いつ可多尓そみ那」(44オ・67F)

  しもや尓おろしぬる越えや万可りお里あ
  へさらむときこゆゑひ春ゝ見てみな/\すのこ尓
  布しつゝ志つまりぬきみ者と遣てもねられ
  者すい多つらふしとほさ累ゝ尓免さめて
  このき堂のさうしのあ那多尓の遣者ひす
  る越こ那多や可くいふの可くれ堂る可多な
  らむあ者れやと御心ゝ免てやをらおきて堂
  ちきゝへ者あ里つるこのこゑ尓てもの
0228【ものけ給はる】―\(合点) ウケ給ルヽ也
  者るいつく尓お者しますそ可れ多るこゑのお可」(44ウ・67L)
0229【いつくに】―\(合点) 老女房

  しき尓ていへ者こゝ尓そ布し多る万らうとは
0230【こゝにそ】―コ君詞
0231【まらうとは】―女詞 源氏ノコトヲトフ也

  ね堂まひぬる可い可尓ち可ゝらむと日(日$)つる越さ
  れと遣と本(本=を)可り遣りといふね多り个るこゑの
  けなきいとよく尓可よひ多れ者いもうと
0232【いとよくにかよひ】―\(合点) サキノ十二三ノ子ニ似カヨフ也
0233【いもうと】―\(合点) アネヲモイモウトヽ云

  きゝひさし尓そほとのこもりぬる
0234【ひさしにそおほとのこもりぬる】―\(合点) 源氏ノ事
  をと尓きゝつるあ里さま越堂てまつ
  りつるけ尓こめて多可里遣れとみそ可尓いふ
  ひるならまし可はのそきてみ多て万つりてま
0235【ひるならましかは】―女
  しとねふ多遣尓いひて可本ひきいれつるこゑ」(45オ・68C)

  すね多うゝめてもとひき遣可しとあちきな/く
  おほすまろ者ゝし(ゝし=こゝ)尓ねらむあなくるしと
0236【まろは】―\(合点) 小君
  て日可ゝけなとすへしきみ者堂ゝこのさう
  しくち春ち可ひ多る本と尓そ布し多るへき
  中将きみ者いつく尓そ遣と越きちして
  おそろしといふなれ者な遣しのしも/\
  布していらへ須しも(尓$や尓)ゆ尓おりて堂ゝいま
  まいらむといふみ那しつまり堂る(多る=ヌ)遣者ひ
  なれハ可遣可ね越み尓ひきあ遣へれ者あ那」(45ウ・68H)

  堂より者さゝさり遣りきをさうしくち尓
  者多てゝ者本のくらき尓みへは可らひつ
  つもをゝき堂れ者み堂り可者しき
  王遣いり(+てけ者ひ志徒る入給へ連ハ)へれ者(へれ者$)堂ゝ日とりいとさゝや可尓て布
  多りなま王つら者しけ个れとうへなるきぬを
  やる万てもと免つるへり中将免しつ
0237【もとめつる人】―\(合点) 中将君
0238【中将】―\(合点) 源氏官中将也
  者なしれぬ日のしるしあるちして
  と越と可くも日王可れす尓をそハるゝ
  ちしてやとをひゆれと可を尓きぬのさ者りて」(46オ・69@)

  をとにも多て須うちつ遣尓ふ可ゝらぬの本とゝ
  みらむ者り那れとゝしこ日わ多る
  のうちもきこえしらせむとてなむ可ゝる越
  里越まちいて堂るもさらにあさく者あらし
  となしへハ(ハ$と)いとや者ら可尓のてお尓可みも
  あらたつましき个者ひなれ者ゝし堂那くこ
  こ尓(+の)もえのゝしらすち者多わ日(日=ひ)しくある
  ましきへ者あさましく堂可へ尓こ
  そめれといふもいきのし堂きえまとへ」(46ウ・69E)

  る遣しきいとくるしくらう多遣なれ者越可
  志とて多可ふへくもあらぬのしるへを
  者須尓もおほ免い可那すき可ましきさ万
  尓者よ尓(尓=も)みえ多てまつらしおもふ春こし
  きこゆへきそていとちゐさや可なれ者可き
  い堂きてさうしのもと(+ニ)いて尓そもと免つる
  堂つきあひ堂るやゝと尓あやしくて
  さくりより多る尓そいみしく尓本ひみちて可
  本尓もくゆり可ゝるちする尓おもひよりぬあさ
                         ましう」(47オ・69J)
0239【あさましう】―\(合点) 中将

  こ者い可なるとおもひ万と者るれときこえむ
  可多なしなみ/\のならはこあらゝ可尓も
0240【なみ/\の人】―\(合点) 次々人也
  ひき可なくらめそれ堂尓のあま多しらむ者
  い可ゝあらむさ者きて志多ひ(ひ=イ)き堂れとゝう
  もなくておくなるおまし尓いりぬさうし越
  ひき堂てゝあ可む可へ尓ものせよとの
  者者このらむさへしぬ者可りわ里
0241【この人】―\(合点) 女中将
  那き尓な可るゝまてあせ(せ=せ)尓なりていとなやま
  し个那るいと越し个れとれいのいつこよりとうて」(47ウ・70B)
0242【いとをしけれと】―\(合点) 源氏

  給事の者尓可あらむあ者れしらる(る$流ゝ)者可りなさけ
  なさけしくの(つ=ツ)く春へ可めれとな越いとあ
  さましき尓うつゝともおほえ須こ可春那ら
  ぬ可らもほしく堂し遣る御心者えの本
  ともい可ゝあさく者ふ多まへさらむいと可やう
  なるき者ゝき者と(+ル)なれとて可くを
  し堂ちへるを布可くなさけなくうしと
  いり多るさまも个尓いと越しく者つ可しき
  个者ひなれ者そのき者/\をま多しらぬうひ」(48オ・70G)
0243【そのきは/\】―\(合点) 源氏

  /\をしなへ堂るつ(つ=ふ)ら尓なしへる
  なむう多てあり遣るをのつ可らきゝ多まふや
  うもあらむあ那可ちなるすき者さらにな
  者ぬをさるへき尓や个尓可くあ者められ(れ=ふ)多て
  万つるもこと者りなる万とひをつ可らもあやし
  きまてなむなと万め多ちてよろつ尓のへと
  いと多くひなきあ里さまのいよ/\うちと遣
  きこえむわ日し个れ者すくよ可尓きな
  しと者みえ堂て万つるとさる可多のいふ可ひ」(48ウ・70L)

  き尓てすくしてむとてつれなくのミもて
  し堂り可らの堂をやき堂る尓つよき
  越しゐてく者へ堂れ者なよ堂遣のちして
  さす可尓おるへくもあら須万ことにやましくて
  あな可ち那る御心者え越いふ可多なしと(+て)
  さまなといとあ者れくるしく者あれとみさら
0244【心くるしく】―\(合点) 源氏
  まし可はくち越し可らましとほ須なくさめ可
  多くうしとへれ者なと可くうと満しき
  しもほすへきおほえなき佐まなるしも」(49オ・71C)

  こそちきりあるとは日堂ま者免むけ尓
  よ越しらぬやう尓をほゝれむいとつ
  きとうらみられていと可くうきの本とのさ多
0245【いとかく】―\(合点) 女
  まらぬあ里しな可らの尓て可ゝる御心者え越
  みまし可はあるましき堂のみ尓てみな
  おのちせ越も(越も=モヤト)思給へなくさめましを
0246【のちせをも】―\(合点)
  いと可う可りなるうきね能本と越思侍尓多く
  ひなくおもふへ万とはるゝよしいまはみ
0247【みきとなかけそ】―(合点)
  きと那可个そへる佐ま个尓いとこと者り」(49ウ・71I)

  な里をろ可ならすちきりなくさめとお
  ほ可るへしと里もなきぬ/\越きいてゝ
  といき多な可り遣る可那くる万ひき
0248【いきたなかりける】―\(合点) ツヨクネラレタル也
  てよなといふ可みもいてきてなとの可多
  多可へこよふ可くいそ可せへき可者那といふ
  ありきみはま多可やうのついてあらむ
  いと可多く(く$し)さし者えて者い可て可ふみな
  とも可よ者むことのいとわ里那き越おほす
  尓いとむねい多しおくの中将もいてゝいとくるし」(50オ・72@)

  可れ者ゆるしてもひきとゝ免多まひつゝ
  い可て可きこゆへきよ尓しらぬ御心のつらさもあ
  者れもあさ可らぬいて者さ万/\めつら可な
  るへき堂免し可なとてうち那き个しきいと
  なま免き堂りとりもし者/\なく尓あ者多ゝ
  しくて
    つれなき越うらみも者てぬしのゝめ尓
0249【つれなきを】―源氏
    と里あへぬ万ておとろ可すらむ女身のあ里
  さま越おもふ尓いとつきなくま者ゆきち」(50ウ・72F)

  してめて多きもて那しもな尓ともおほえす
  つね者いとすく/\しくきなしとあなつるいよ
  の可多の(+ミ)やられてゆめ尓やみゆらむとおそ
  ろしくつゝまし
    うさ越な遣く尓あ可てあくる
0250【身のうさを】―女返し
    とり可さねてそねもな可れ遣る
  ことゝあ可くなれ者さうしくちまてをくり
  うちもとさ者可し个れ者ひき堂てゝわ可れ(+
  本と本そくへ多つるせきとみえ多りなをし」(51オ・72J)
0251【へたつるせき】―\(合点)

  なときてみ那見の可うらん尓し者しうち那
  可免尓しをもての可うしそゝきあ遣て/\
  のそくへ可めるすのこのの本と尓多て堂るこさ
  うしの可みより本の可尓みえへるあ里さま越
  尓しむ者可りへるすきもあめり
  あ里阿遣尓て日可りおさまれる可ら可本(本$遣个さ
  や可尓みえて/\越可しきあ遣本のな尓
  そらの遣しきも堂ゝみる可らえむ尓もすこ
0252【えむに】―艶
  くもみゆる个りしれぬ御心尓者いとむねい堂」(51ウ・73B)

  くことつてやらむよす可堂尓なき越と可へり
  可ち尓ていて返給てもとみ尓も万
  とろ万れ者すあひみるへき可多那き越ま
  して可の布らむのうち(+を)い可ならむと
0253【かの人】―\(合点) 空蝉
  くるしく日やりすくれ多る者な遣れと免
  や春くもてつ个てもありつるな可の志な可那
  くまなくみあつ免多るい日しことは个尓と
  ほしあ者勢られ个りこの本とは大殿尓のみ
  者しますなをいと可き堂えてふらむ」(52オ・73G)
0254【いとかきたえて】―\(合点) 空蝉

  のいとおしく御心尓可ゝりてくるしくおほしわひて
  きの可み越めした里かのあ里し中納言のこ者え
0255【中納言】―右衛門督同人也
0256【こは】―小君

  佐せてむやらう多遣尓みえし越ち可くつ可ふ
  尓せむうへ尓われ堂て万つらむと多まへは
  いと可しこきおほせ(+ル)りあねなる尓の
  多まひみむとすもむねつ布れておほせ
  そあねきみ者朝臣うとやも多るさも
  ら須この年ん(年ん$とせ)者可りそ可くてものへれと
  おやのをきてに多可へ里ともひな遣きて」(52ウ・73L)

  ゆ可ぬやう尓なむきゝふるあ者れのやよろ
  しくきこえし可し万ことによしやとへ/者
  遣しう者ゝへらさるへしもて者那れてうと/\し
0257【もてはなれて】―紀伊守詞
  く(く=ウ)へれ者よの多とひ尓てむつら須と
  すさて五六日あ里てこのこゐて万いれリこ万や可
  尓お可しと者な遣れとなまめき多るさまし
  てあてみえ堂りめしいれていとなつ可しく可多
  らひわら者ち尓いとめて多くうれしとふい
  もうとのきみのく者しくとさるへき」(53オ・74D)

  者いらへきこえなとして者つ可し个尓しつまり
  堂れ者うちいて尓く志されといとよくいひしら勢
  かゝることこ者と本のうるも日の本可なれと
  おさなち尓布可くしも堂とら須御文をもて
  き堂れ者あさましき尓なみ多もいてきぬ
  このこのもふらむも者し堂那くてさす可尓
  ふみをゝも可くし尓日ろ遣堂りいとおほくて
    みしゆ免越あふよあ里やとな遣くま尓
    免さへあ者てそころもへ尓遣る」(53ウ・74I)

  ぬるよな遣れ者なと免もをよ者ぬ可き佐
0258【ぬるよなけれは】―\(合点) しさのな尓ゝ徒个て可な/くさ満ん/多(多$)尓(+モ)ミえ春ぬるよな个れハ/レテモアル(付箋02)
  まもき里ふ多可りてえぬすくせうちそへり个る
0259【きりふたかりて】―目モキリテ
  (+を)おもひつゝ遣て布しへり个る(个る$)ま多のひ
  こきみ免し堂れ者万いるとて御返こふ可ゝる
  御文みるへきもなしときこえよとへ者う
  ちゑみて堂可ふへくもの者さりしをい可ゝ
  さ者さむといふ尓やましくのこり那くの
  堂ま者勢しらせて遣るともふ尓つらき
  可き里なしいて越よすけ堂るはい者ぬ
                  そよき」(54オ・75A)

  さ者な万いり$)そとむつ可(+ら)れてめす尓者い可て可と
  いりぬきの可みすき尓このまゝ者ゝ能あ里さ
  をあ多らしきもの尓てついそうしあ里遣
  はこのこ越もて可しつきてゐてあ里くきみ
  免しよ勢てきのふまちくらしゝをなをあひ
  ふましきな免りとゑんしへは可本うちあ
  可めてゐ多りいつらとの堂まふ尓し可/\とすに
  いふ可ひなやあさましとへりあこ
  者しらしなのいよのき那よりはさき尓」(54ウ・75F)

  みしされと堂のもし遣那くゝひ本そ
  とてふつゝ可なるうしろみまうけて可くあなつ
0260【ふつゝかなる】―\(合点) ケスシキ也
  りな免里さりともあこ者わ可こ尓てを(を$)あれ
  よこ(こ=可)多のも者ゆくさきみし可ゝりな
  とへ者さもやあ里遣むい見し可り遣る
  可なへるお可しとほすこのこ越万つ者し
  てうち尓もゐて万いりなとしわ可$)みく
  し遣殿尓の堂まひてさうそくなとも
  せ佐せ万こと尓おやめきてあつ可ひ給御ふみ者」(55オ・75K)

  つ年尓あ里されとこ能こもいとおさ那しより
0261【されと】―女
  本可尓ちりもせは可ろ/\しきさへとりそへむ/
  のほえ越いとつきな可るへくへ者免て多き
  こともわ可可らこてうちとけ多るいらへ
  もきこえす本の可な里し遣者ひあ里さま
  者遣尓那へて尓や者といてきこえぬ尓はあ
  らねと可しき佐まをみえ堂て万つりてもな
  尓ゝ可者那るへきなと可へ須なり遣りきみ
  者おほしをこ多るのまもなくるしく」(55ウ・76C)

  もこ飛しくもほしいつへりし気しき
  なと能いと越しさも者る遣む可多なくお
  し王多る可ろ/\しく者ひまきれ堂ちよ
  り者むも免し遣可らむとろ尓ひんな
  布る万ひやあら(+者れ)むと日との堂免もいとおしく
  とほし王つらふれいのうち尓可すへ
  さるへき可多のいみ万ちいて堂まふ尓者可尓万
  可て万ねしての本とよりお者しまし堂り
  きの可みおとろきてやりの免(+い)本くと可しこ万り」(56オ・76H)

  よろこ布こきみ尓は(は$)日る(日る=ヒル)より可くなむ
  れると(+ヒ)ちきれりあ遣くれまつ者しならし
  遣れ者こよひもまつ免しいて多りもさ
  るうそこあり遣る尓おほし多者可りつらむ
  本と者あさくしもなされねとさりとてう
  ちと遣个那きあ里さまをみえ多て万つりて
  もあちきなくゆめのやう尓てすき尓しなけき
  越やく者へむとみ多れてなをさて万ち
  つ遣きこえ(+さ勢)ま者ゆ遣れ者こきみ可」(56ウ・76M)

  てゝいぬる本と尓いと遣ち可遣れ者可多者ら
  多しなやまし个れ者しのひてうち多ゝ可せ
  なとせむ尓本と者那れてをとてわ多殿中将
  とい日し可つ本年し堂る可くれ尓うつろひぬさ
  るしてくしつめてうそこあれとこき
  み者(+え)多つねあ者須よろつと免あ里き
  てわ多殿尓わ遣いりて可らうして多とりき堂り
  いとあさましくつらしとてい可尓可ひなしと
  おほさむときぬハ可りいへ者可く个し可らぬ)」(57オ・77D)

  者え(者え$)はつ可ふ可おさ那きの可ゝるい日(日=ひ)
  堂ふる者いミしくいむなるをとい日をと
  ちなやまし个れ者/\さけすをさへさせ
  むときこえさ勢よあやしと堂れも/\
  みるらむとい日者那ちてのうち尓はいと可くし
  なさ多まりぬるのお本え那らてすき尓し
  おやの遣者ひと万れる布るさと那可ら堂
  まさ可尓も万ちつ遣多て万つらはお可しうも
  やあらましゝゐて日しらぬ可本尓み遣つ」(57ウ・77I)

  い可尓本としらぬやう尓おほすらむとな可らも
  むねい多くさ春可尓日み多るとても可くても
  いま者いふ可ひなきすくせ个れ者むしむ尓
  つきなくてやみなむと者て多りきみは
0262【きみは】―源氏
  い可尓多者可りなさむと万多越さ那き越うし
  ろ免多く万ちふしへる尓布ようなるよし
  をきこゆれ者あさましくめつら可なり遣る
  の本と越いと者つ可しくこなりぬれと
  いと/\おしき个しき者可りもの者須」(58オ・78A)

  い堂くうめきてうしとほし堂り
    者ゝきゝのをしらてそ能者らの
0263【はゝきゝの】―源氏
    あやなく万とひぬる可な
  きこえむ可多こ遣れとへりもさ
  す可尓万とろ万さり个れ者
    可春那らぬ布せや尓おふるの1うさ尓
0264【かすならぬ】―空蝉返し
    ある尓もあら須きゆる者ゝ
  ときこえ堂りこきみいと/\越しさ尓ねふ
  多くもあらて万とひあ里く越あやしと」(58ウ・78F)

  みるらむと(+イ)わ日れいの/\者いき多那き尓ひ
  と春ゝろ尓春さましくおほしつゝ遣らる
  れと尓ゝぬさま能な越きえす多ちの
0265【人にゝぬ】―女ノコト
  本れり个るとね多く可ゝる尓つ遣てこ
  とまれと可つ者おほしな可らめさ満しく
  つら遣れ者さ者れとほせともさもほし
0266【さはれと】―\(合点) サラハニテアレトイフ心也
  者つましく可くれ堂らむ尓な越ゐてい遣
  とのへといとむつ可し个尓さしこ免られて
  あま多めれ者可しこ个尓ときこゆいとおしと」(59オ・78L)

  おもへりよしあこ堂尓なすてそ多万ひて
  可多者ら尓布勢へりわ可くなつ可しき
  あり佐まをうれしくめて多しとおもひ堂
  れ者つれなよりは/\あ者れ尓おほさ
0267【つれなき人】―\(合点) 空蝉
  ると」(59ウ・79@)

【奥入01】万とのうちなるほとハ
     長恨哥
     楊家有女初長成 養在深宮人未識

     伊行注
【奥入02】かす可のゝわ可むらさきのすり
     しのふのみ多れ可きりしられす
【奥入03】志可りとてとすれ者可ゝりかくすれハ
     あないひしらすあふさきるさ尓」(60オ)

【奥入04】はちすハの尓こり尓し万ぬもて
     な尓可ハつゆを多万とあさむく
【奥入05】観身岸額離根草 論命江頭不繋舟
【奥入06】飛きよせ者多ゝ尓ハよらて春駒
     つなひきするそ者多つときく
【奥入07】あす可尓やとりハすへしかけもよく
     みも日もさむしみ万くさもよし
【奥入08】いつら尓可やとりとらむあさひこの
     さすやを可への多まさゝのうへ」(60ウ)

【奥入09】ちりを多尓すへしとそさきしより
     いもとわ可ぬるとこなつの
【奥入10】それを多尓ふことゝてわ可やとを
     きとなかけそのき可く尓
【奥入11】あふさ可のをハ多のみてこし可とも
     へ多つるせきのつらくもある可那
【奥入12】こひしきをな尓ゝつ个て可なくさ万む
     多尓みえすぬるよなけれハ
  *01 すゝ可いせをのあ万のぬれ
     志本なれ多りとるらむ(空蝉01 竄入)
  *02 とり可へす尓も可那や世中
     ありしな可らのわ可とおも者ん(空蝉02 竄入)」(61オ)

【奥入13】風俗
     たれのかめをな可尓すへてあるし者もや
     さ可那もり尓佐可那もとめ尓こゆるきのいそ尓
                  わ可めかりあけ尓
【奥入14】催馬楽
     我家ハと者り多れ多るをおほきミき万せ
     むこ尓せむみさ可な尓な尓よ个むあハひさ多を可
     かせよ个んあは飛佐多を可かせよ个む
【奥入15】二道
     父家居住
せハ孝心可有男家居住せハ
     嫂仕ヲせよといふ事也」(61ウ)

【奥入16】三史 史記 漢書 後漢書
     五経 毛詩 礼記 左傳 周易 尚書
     三道 紀傳 明経 明法

                已上伊行所注也
【奥入17】布多つのみち 両途
     文集 秦中吟
     天下無正聲 悦耳即為娯 人間無正色
     悦目即為妹
〈カホヨキ〉 顔色非相遠〈ヒカレル〉 貧富則有殊〈ナルコト〉
     貧為時所〈ラル〉弃 富為時所〈ラル〉趁 紅楼富家女」(62オ)

     金縷繍羅襦 見人不斂手 矯癡二八二八十六
     母兄未開口 已
〈ニ〉〈テハ〉須臾 緑窓貧家女
     寂寞二十餘 荊釼不直銭 衣上無真珠
     幾廻人欲娉
〈ヨハムト〉 臨日又踟躊 主人會良媒
     置酒満玉壺 四座且勿飲 聴我歌両途
     富家女易
〈ヤスシ〉嫁 嫁早軽其夫 貧家女難嫁
     嫁晩孝於姑
〈シウトメ〉 聞若欲〈ナラハ〉〈トラムト〉婦 娶〈トラムコト〉婦意女何」(62ウ)

(白紙)」(後見返)