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Last updated 04/19/2022(ver.3-3)
渋谷栄一翻字(C)

  

桐 壺

凡例

1.『大島本 源氏物語』(角川書店 平成8年5月)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。

2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。

3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。

4.変体仮名はその字母で翻字した。

5.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。

6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「と付記した。

7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記等は小字体で表示した。

8.本文中の朱点及び朱書きは朱色で表示した。

9.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。


「き里徒本」(題箋)

   伊徒連のと起尓可女御更衣阿ま多佐ふらひ
0001【いつれの御とき】−延喜ノ御門ニなすらふへし
0002
【女御更衣】−我朝ニハシマリタル名ノリ也
  希るいと屋ん古と那き起者尓は阿ら怒可
0003【いとやんことなききは】−上臈ヲ云
  春く連て登き免き个りハし免よりハ/と
0004【ハしめより我ハと】−上
  日阿可里たまひ徒(ひ徒$、△+遍)類可多/\免さまし起
0005【めさましき】−目モヲトロクハカリナルコトヲ云
  おとしめ(め)そねお那しそ連より希らうの
0006【おとしめ】−人ヲ見ヲトス心也
0007
【そねみ】−猜
0008
【おなし程】−中
0009
【それよりけらう】−下
0010
【けらう】−非参議
  たちハましてや春可ら春朝夕ミや徒可へに徒希
  ても能古ゝろ越のミう古可しうら見をおふ徒もり丹や
  阿り気むいと阿徒しく那り遊き物心本そ希尓さ/と
0011【あつしく】−病コトナリ
  可ちなる越伊よ/\阿可春あ者れ那類尓おも本し
  て能そし里越も盈はゝ可ら勢者寿能ためし/尓も」(1オ・5F)

  ぬへきて那しなり可む多ち免うへ悲と那登も
0012【かむたちめ】−公卿
0013
【うへひと】−殿上人
  阿い那く免越そはめ徒ゝいとま者遊きお本え
  那りろ古し丹も可ゝる古との古り尓こそもみ多れ
0014【おこりに】−式嬌
  阿し可り希連とやう/\能した尓も阿ちき那う
0015【あちきなう】−センカタナキ心也
  のて那や見くさに楊貴妃ためし裳
  いて徒へく那りいとハしたな支古とお本可れ
0016【ハしたなきこと】−コハ/\シキコトヲ云
  登可多し希那きお本可連(お本可連$御心者へのたくひ那き
  をたのミ尓てましらひちゝの大納言ハ那く/て
  はゝ能可多那ん伊尓しへの悲と能よし阿類尓ておや
  うちくし佐し阿多りてお本えや可那る可多/\」(1ウ・5L)
0017【うちくし】−二親

  丹もいたうおとら寿な尓農支しき越ももてな/し
  ひ希連と登りたてゝは可/\しきうしろミしな
  希連ハ古とゝ阿類より那く本そ希那り
  佐きの尓も千き里や布可ゝり希む尓那く起よら
0018【御ちきりやふかゝりけむ】−<朱合点> 君ト我イカナルコトヲ契ケン昔ノ世コソキカマホシケレ
0019
【きよら】−清
  那類能お子御子佐へむま連ひ怒い徒し可/と
0020【玉のおの子御子】−光源氏ナリ
  もと那可ら勢ひていそき満いらせて御覧春る
  に免徒ら可那類ち古の可多ち那り御子
0021【めつらかなる】−<朱合点> 梅豆邏珍愛 古今 めつらしキ人ヲミントヤシカモセン我下紐ノトケワタルラン
  右大臣女御ハら尓てよ勢おもくう多可ひ那支まう
0022【右大臣】−二条
0023
【まうけの君】−儲君
  希の尓もて可し徒き起古遊連と古能尓本ひ
  耳ハならひたまふへくも阿ら佐り希連ハお本可多能やむ」(2オ・6E)

  ことなおもひ尓て古の越ハわ多くし尓おも本し可
  し徒きふ古と可きり那しはし免よりをし那へての
0024【はしめより】−更衣ノ事
  うへ徒可へしふへき起者尓ハ阿ら佐りきお本えいとや
0025【うへ宮つかへ】−典侍
  む古と那く春免可し希れわり那くまつ者(+さ)勢
0026【上すめかし】−したりかほなる事なり
0027
【わりなく】−無別同
0028
【まつはさせ】−纏
  まり尓佐るへき阿そひのおり/\な古と尓裳ゆへ
  類古との布し/\にハまつまうの本り(り$
ら)せ阿類とき
0029【まうのほらせ】−マイリノホルナリ
  尓はお本と能古もりしてや可て満いらせ(満いらせさふ△せ、さふ△せ#さふらハせ、まいらせ#)たまひ那登
0030【おほとのこもり過して】−夜者専夜昼同車ト長恨哥ニイヘル心ニカヨフ也
  阿那可ち尓おまへ佐ら寿もて那さ勢ひしをの
  徒可ら閑ろき可多丹もえしを古の御子むまれ
  いとこと尓おも本しをきてた連ハ丹もよう」(2ウ・6K)
0031【をきて】−掟
0032
【坊にも】−東宮ヲ申也

  せ春ハ古の御子能ゐ(い&ゐ)多まふへ起那めりと御子女御
  ハしうた可へりより佐き尓満いひて屋ん
  こと那きおもひ那へて那ら春御子たちなと裳
  越者しま勢ハ古の可多能(+
イ、イ#)いさ免越のミそ王つ
0033【いさめ】−諌
  ら者しうくるしうおもひき古え佐勢たまひ希る閑/し
0034【かしこき御かけを】−<朱合点>
  古き可けをたのミ起古え那可ら登しめ起春越もと
0035【御かけ】−勅ナレハイトモカシコシ鴬ノ
0036
【おとしめ】−見ヲトサントスル心也
0037
【きすをもとめ】−<朱合点> 後ナヲキ木ニマカレル枝モ 漢武[+]摧抑諸侯王美ス其遇悪吹毛求疵
  免多まふハお本く我身ハ可よ者くハ可那き
  さ満尓て中/\なるおもひ越そし徒本年
0038【御つほね】−御曹司
  ハきり徒本那り阿ま多の可多/\を佐勢ひて
0039【きりつほ】−淑景舎ヲ云
0040
【あまたの御かた/\】−桐壺御殿艮過弘徽殿涼京殿宣曜殿
  日満那きまへわ多里に御心越徒くしふも」(3オ・7D)

  希尓古と王り登えたりまうの本りふ尓も阿まり
  うちしきる折/\うちハし和多と能ゝ古ゝ可し古の
0041【うちはし】−日本記 下於天ノ安川又造打橋 村上ノ御時宣耀殿ノ女御藤ツホノ御物ネタミノアリシヲヨソヘ云ヘリ
  に阿やしき越し徒ゝ御送りむ可への能き怒
  の春楚たへ可多くまさ那き古とも阿りま多阿類
0042【まさなきこと】−<朱合点>
  ハ盈佐ら怒免たう能と越佐し古めこな多可那た
  を阿者勢てハした那めわつら者勢ふと起もお本
  可りこと尓布れしら寿くるしきミまされ
  ハ伊とい多う日わひた類越いとゝ阿者れ御覧して
  後涼殿耳もとより佐ふらひ可ういの佐うしを本可尓
0043【後涼殿】−コウラウテンハ御テンノニシニアタレル殿ナレハ常ノ御前ニチカキ也
  うつさ勢うへ徒本年尓者寿そ能うら見まして屋ら/ん」(3ウ・7J)
0044【うへつほね】−非対屋号上ニ局昼御座ノ傍二間号上局是中宮ナト参昇時用之

  那し古の御子三多まふ登し者可満き能
  のミや能多てまつ里しにおとら寿くら徒可さおさ免殿
0045【くらつかさ】−内蔵寮
0046
【おさめ殿】−納殿有後涼(&2涼)殿
  を徒くして伊ミしうせさ勢ふそれに徒希て裳
  能そし里のミお本可連と古の御子およ春けもて越ハ
0047【およすけ】−ヲトナヒタル也
  春る可多ち者へ可多く免徒らしきまてみえふを
  盈そねミ阿え者寿志りたまふ可ゝる悲とも
  尓いて越者春る物成个りと阿さましきまて免越お
  登ろ可しそ能登しの見や春んハ可那き
0048【みやすん所】−キリツホ更衣事
  に王つらひてま可て那んとしふ越いと満佐ら尓ゆる
  佐勢者寿登しころ阿徒しさ尓那りへ連者」(4オ・8C)

  免那連て志者しみよ(し&よ)と能ミの多ま者春類
  耳日々におもりてたゝ五六日いとよ者く(く$
う)
  那連ハはゝき見那く/\そうして満可て佐勢たてまつ
  り可ゝるも阿類ましきはち裳こそと
  可ひして御子越ハ登ゝ免多てまつりてひてそ
  まふか支り阿連ハさのミ裳盈登ゝ免さ勢者寿
  御覧し多尓ら怒お本つ可那さをいふ可多那くお
  本さ類いと尓本ひや可尓うつくし希那類能伊たう
  おもやせていと阿者連と日し見那可ら古とに
0049【ことにいてゝ】−<朱合点> 古今 言にいてゝいはぬはかりそ水無瀬川下ニかよひて恋しき物を
  いてゝ(+も)起古えやら寿阿る可那き閑尓起えい里徒ゝも能/し」(4ウ・8J)

  ふを御覧春るにし可多春ゑをお本しめされ/連
  春よろつ古と越那く/\能多まハ春れとい/ら
  へ裳え起古え者寿ま見なともいとた遊け丹て
0050【まみ】−目見
  伊登ゝ那よ/\と可の希し起尓て布した連ハい可
0051【なよ/\と】−タユケナルスカタ也
0052
【我かのけしき】−人心モナキテイ也
  さ満耳とお本し免しまとはるく類満のせむ/し
0053【手くるま】−輦
  なと能多ま者勢てもまたいら勢ひてハ(ハ$)佐ら尓裳(裳$
  盈ゆるさ勢者寿可支り阿らんみちにもをくれ
  佐きたゝしと千きら勢ひ希る越佐り登もうち春て
  てハ盈ゆきやらし登能多ま者春るを裳いと伊ミ/し
  登み多てまつりて」(5オ・9A)

    可支りとてわ可るゝ見ちの可那しき尓い可満本しきハ
0054【かきりとて】−更衣
  い能ち那り个りいと可く日たまへまし可ハ(+と)い支もたえ
0055【思ひたまへましかは】−ヲモフヤウナラマシカハノ心也
  徒ゝ起古え満本し希那類古とハ阿り希なれといとくる
  し希那連ハ(那連ハ$
)に堂遊希那連ハ可く那可ら(+と)も可く裳な
  御覧し者てんとお本しめ春に个ふハしむへき
  
<>)い能り登も佐るへき人々うけたま者れ類古よひ/よ里
  と起古えいそ可勢ハ王り那くおも本し那可らま可てさ勢
  たまふ(+
徒イ、イ#む年徒とふ多可りてまとろまれ春阿可し可年
  さ勢徒可ひの可ふ裳那支いふせさ
0056【いふせさ】−不審(不審#1)<> 不審トカケリ<>
  を可支り那くの多ま者勢徒類越夜中うち春くる」(5ウ・9H)

  尓那んたえ者てぬるとて那支佐者けハ徒可ひ/も
  いと阿え那くて可へり満いり怒き古しめ寿御心まと/日
  な裳お本し免し古もり越者しま春
0057【御子はかくても】−源氏君三歳之時ナリ
  ハ可くて裳いと御覧せ満本し希れと閑ゝる
  佐ふらひ多まふな支古と那連ハ満可てひ那ん
0058【例なきこと】−ならひ別出之
  登春な尓古と可阿らむと裳お本したら寿佐ふらう人々
0059【なにことか】−御子ノ心
  の那きまとひうへ裳御涙日満那く那可れ越ハ/し
  ま春を阿やしと多てまつりへ類越よろしき
  古と尓多尓可ゝ類わ可連のし可ら怒ハな支わさなるを
  ましてにいふ可ひ那し可支り阿連ハ連い能さ本うにおさ」(6オ・10A)

  免多てまつ類をはゝ可多お那しにの本りな/ん
  登な支古可れひて御送りの者う能丹し多ひ
  能りひてお多起といふところ尓伊とい可めしうその
0060【おたき】−愛宕
  さ本うした類尓越者し徒きた類ち伊可ハ可り閑者
0061【さほう】−火ヤナト用意シタル事也
  阿り気む無那しき可ら越みる/\越者寿類
0062【御からをみる/\】−<朱合点> 古今 空蝉ハカラヲミツヽモナクサミ<>
  ふ可いと可ひなけ連ハ者ひに那り者んをみ多てまつ
0063【はひになり給はん】−<朱合点> 拾遺 モエイテヽハヒニ成ナン時ニコソ人ヲオモヒノヤマンコニセメ
  りてい満ハな支と飛多布るに日那りな無と佐可/し
0064【ひたふるに】−<朱合点> 伊せ みよしのゝたのむの雁もひたふるに君か方にそよると鳴なる
  う能多まへ連とよ里もぬへうまろひへ者
  (+
さハ)日徒可しと人々て王つらひきこ遊よ里御使
0065【思ひつかし】−思ツル也
  阿り三位能くらひ(+をイ、をイ#ふよし勅使多り(多り$)て/その」(6ウ・10H)
0066【三位】−従三

  宣命よ無那ん可那しき事成希る女御と多尓い者勢春
0067【宣命よむ】−少納言墓所ニテヨムサホウアリ
  那りぬる可(可<>、か#<>)阿可春くち越しうお本さ類連ハい満
  佐ミ能くらひ越多尓とら勢ふ那り个り
  徒けて裳にく見人々お本可りおもひ志り
  ハ佐万可多ち(+
と)のめて多可里し者勢の那多ら
0068【心はせの】−<朱合点> 古今 いさゝめに時まつまにそ日ハへぬる心
  可尓めや春く丹く見可多閑里し古と那とい満そお本/し
  い徒類さ満阿しきて那しゆへこそ春け那うそ
0069【すけなう】−無人気
  ねひし可可らの阿者連に情有御心/うへ
  の者うなともし能ひ阿へり那くてそとハ閑ゝる
0070【なくてそとは】−<朱合点> ある時ハありのすさミにゝくかりきなくてそ人ハ恋しかりける
  尓やとみえ多りハ可那くころて能ちのわさなと(<>)裳」(7オ・11@)

  古満可尓登ふ(<>)者勢本と布るまゝにせむ可多那う可な/し
  うお本さるゝに可多/\能(+
殿井なともたえてし
  春たゝ日ちて阿可しくらさ勢へハみ多てまつる
0071【ひちて】−<朱合点> 古今 ねに泣テひちにしかとも春雨にぬれにし袖とゝハゝこたへん
  佐へけき那りな支まて能む年阿/く
0072【露けき秋】−<朱合点> 後 人ハいさことそともなきなかめにそ我ハ露けき秋としく(く$1ら)るゝ
  まし可り希るお本え可那とそ弘徽殿とに
  ハ遊類し那う能多まひ希るをみ多てまつ
  ら勢ふ丹もわ可古ひしさ越(越$
)能ミおも本し出
  徒ゝ志多しき女房御免のと那と越徒可者し徒ゝ
  さ満を起古しめ春野分たちてにハ可尓は多佐むき
0073【野分たちて】−達也野分ノヤウナル風也
0074
【はたさむき】−<朱合点> 拾遺 朝ほらけ荻の上葉ノ露みたれ良はたさむし秋の初かせ
  夕暮程常よ里もお本しいつる古とお本くてゆ希」(7ウ・11G)
0075【ゆけいの命婦】−衛門督<ユケイノカミ><> <ミカキモリ><> 靭負<ユキヲウ>トカキテゆつけとよめり 靭ハ矢を入るシコヲ云 左衛門督ハ弓矢ヲ帯スルツカサ/ナルニヨリテゆけいといへり 円融院御時此名のりせし女房アリキ 新古今集ノ詞ニ見えたり

  いの命婦といふ越徒可ハ寿夕附夜お可しき
  し多てさ勢や可て那可め越者しま春閑うやう
  のりハあそひなとせ佐勢ひしに古と那る
  越可き那らしハ可那く起古えい徒類古との
  よ里ハ古とし希者ひ可多ちのおも可け尓徒とそひてお
  本佐るゝ丹もや見能うつゝ尓ハおとり个り命婦可し古
0076【やみのうつゝには】−<朱合点> 古今 むは玉のやみのうつゝはさたかなる夢にいくらもまさらさりけり
  にまて徒きて日支いるゝより希者ひ阿者れ那りやも/め
0077【ひきいるゝ】−車事也
0078
【やもめ】−鰥女 寡男
  春見那連と悲とり能可し徒きに登可く徒くろひ
  たてゝめや春き尓てしたまひ(ひ=
△△をイ、△△をイ#)つやみ尓くれて
  布し志徒ミたまへ類本と尓くさ裳た可く成暴風」(8オ・12@)

  伊登ゝ阿連た類ちして可けハ可りそ八重むくら/尓
0079【月かけはかりそ】−<朱合点> 拾遺 八へむくらしけれる宿ノさひしきニ人こそみえね秋ハきにけり 貫之集 とふ人もなきやとなれとくる春ハ八へむくらにもさハらさりけり 此二首ノ心をとりてかけり
  佐者ら寿さしいりた類おもてにおろしてはゝき見
  裳と見に(+
裳の多ま者寿いまゝて登まりる可
  いとう支越可ゝ類徒可ひの蓬生いり
0080【蓬生のつゆ】−<朱合点> 拾いかてかハ尋きぬらん蓬生ノ人もかよハぬ我宿ノ道
  耳徒希て裳いと者つ可しう那んとて希尓(+盈)たふまし/く
0081【たふましく】−絶
  那いたまふ満いりてハ伊とゝくるしう<><>)きもゝ徒くるやう
0082【まいりては】−命婦内侍ノスケノ奏セシ事ヲ心中ニおもひあハせ侍る心也
  に那んと内侍典侍そうし給しを物おもふ多/まへ
0083【内侍の典侍のそうし】−命婦よりさきニ御使シタル人也いまの典侍<スケ>ノ事也
  しら怒ち尓も希尓こそい登し能ひ可多く(く<><>希連と
  てやゝためらひてお本せ徒多へ起こ遊志者しハ
0084【ためらひて】−扶行<タメライ>白氏
0085
【しはしハ】−命婦詞勅定
  閑とのミたとら連しをやう/\日し徒まる丹/し」(812G)

  裳佐むへき(+那くたへ可多起ハ、ハ#)ハ伊可尓春へきわさに閑とも登ひ
  阿者春へき悲と多尓な支ひてハ満い
  や若宮能いとお本つ可那くけき尓春く/し
  ふ裳くるしうお本さるゝを登く満いりたまへな/と
  は可/\しう裳能多ま者勢やら春むせ可へら勢徒ゝ
  可つハ悲ともよ者くみ多てまつらんとお本し徒ゝま怒
  丹し裳阿ら怒希しき能くるし佐尓うけ者り
  者て怒やう尓て那ん満可てりぬるとて布ミ多て
  満徒類めもみえらぬ尓可く閑し古き古と越/尓て
0086【めもみえ侍らぬに】−母君詞
  那無とて多まふへハ春古しま支るゝ古ともや」(9オ・13@)
0087【程へハすこし】−御書ノ詞

  と春く春月日そへていとひ可多起ハ王りな
  わさに那んい者気希那きをい可尓と日やり徒ゝもろ
  登も尓はくゝ満怒お本つ可那佐越む可しの
  可多見尓那春らへて能したまへなと古まや可尓可ゝせた
  まへり
    宮城野遊布支む春ふ古者支/を
0088【宮城野の】−御門更衣母ノモトヘ 宮禁ニたとふ
0089
【つゆ】−涙をいふ
0090
【こはきか本】−若宮ノ御事也
  日こそや連と阿連とみ多まひ者て春い能ちな/可さ
  のいと徒らうふ多まへ志ら類ゝにまつの者ん古と
0091【まつの思はんこと】−<朱合点> いかにしてあるとしられしたかさこの松のおもはん事もはつかし
  た尓はつ可しうおもふ多まへ連ハゝし起尓可ひ
0092【もゝしきに】−もゝのつかさの座ヲシク心也
0093
【行かひ侍らんことハ】−<朱合点> 古今 からきめのゆきかひちとそ思こし<>
  らん古とハましていとはゝ可りお本く那無可し古き」(9ウ・13G)

  お本せを堂ひ/\う希那可ら徒可らハえ
  日たまへ堂つましきミやハい可尓おも本し志るに可/万
  いり者ん古と越のミ那んお本しいそく免連ハ古とハり
  に可那しうみ多てまつりるなうち/\にふ多まへ
  類さ満をそうしたまへ遊ゝし起連ハ可く/て
0094【ゆゝしき身に】−<朱合点> こゝにハいま/\しき心也 又よき事にもいへり 拾ー ゆゝしとていむとも今ハかひもあらしうきをハ風ニつけてやミなん
  越者しま春も伊満/\しう可多し希那くな無との
  たまふミやハお本との古もりに个りみ多てまつりてく者し
  う阿りさ満裳そうしら満本しき越者し/万
  春布けぬへしとていそくくれ満とふ
0095【くれまとふ】−母君詞
0096
【心のやみも】−<朱合点> 後撰集 人のおやの心ハやみにあらねとも子をおもふ道にまよひぬるかな
  やみもたへ可多きハし越多尓はるくハ可りにき古え」(10オ・14@)
0097【片はし】−諸をかたへとよむハ別もろ/\の心也 こゝのかたへハかたはしの心也

  満本しうわ多くしに裳と可尓ま可てたまへ/とし
  ころうれしくおもたゝしき徒いて尓(尓
<>)に亭よ里ひ/し
0098【おもたゝしき】−面目しき心也
  可ゝるせうそ古尓てみ多てまつる可へ春/\徒連那き
  伊能ち尓もる可那むま連しより心有
  尓て故大納言い満者となるまて堂ゝ古の能ミや徒可へ
  能本い可那ら寿とけ佐せたてまつ連わ連なく怒/と
  てくち越しう日く徒を類那と返々いさ免を可連
  し可ハは可/\しううしろミも那きましらひ
  ハ中/\成へき古とゝ日たまへ那可らたゝ可のゆい古無
  をた可へしとハ可りにい多したてしをに阿まる/まて」(10ウ・14F)

  の御心佐し能よろ徒尓可多し希那きに希那きはちを
  くし徒ゝましらひたまふめり徒類を悲とのそねミ布
  く徒もや春可ら怒古とお本く那りそひり徒類尓
  よ古佐万なるやう尓て徒井尓可く成侍ぬ連ハ可へりてハ
0099【よこさま】−しぬへき年にてもなきも横死ナリ
  徒らく那ん可し古き御心さしを日多まへられはへる
  古連裳王り那き古ゝろのやみ尓那んといひもやら寿
  むせ可へり給程尓よも布け怒うへも志可那ん我御心
0100【うへもしかなん】−命婦詞
  那可ら阿那可ち尓めおとろくハ可りお本されしも那可ゝ
  類ましき那り个りとい満ハ徒ら可り希る悲と能
  耳那無尓い佐ゝ可も悲と能越まけた類古とハ阿」(11オ・14M)
0101【まけ】−曲

  らしとふ越たゝ古の能ゆへ尓て阿ま多佐るましき
  うら見をおひし者て/\ハ可う春てられて
  おさめ無可多那きにいとゝ王ろう可多く那尓なり
  類裳佐きのゆ可しう那無とうち可へし徒ゝし本
  た連可ち尓能ミ越者しま寿と可多里て徒きせ春那く/\
  いたう布けぬ連ハ古よひ春く佐春御返そうせ無
  といそ起満い類ハいり可多にそら起よう春見わ多
  れ類尓いと春ゝ敷成てくさむらの能こゑ/\もよ本/し
  可本なるもいとたちはなれ丹くきくさの那り
    むしのこゑ能可支りを徒くしてもな可き阿可春」(11ウ・15F)
0102【鈴むしの】−ゆけいの命婦

  布る那みた可那盈も能りやら寿
0103【えものりやらす】−車ノ事也
    伊登ゝしくし希き浅茅生を支そふる
0104【いとゝしく】−更衣母
  能うへ悲と閑ことも起古え徒へく那無とい者勢
0105【雲のうへひと】−昇殿シタル人を男女ニかよハし云なり
0106
【かことも】−<朱合点> アマタノ心アリ 一ハかこつ事也 二ニハちかき事也 三ニハいさゝかの事也 こゝにハかこつことを云へり 伊せ あつさ弓ま弓つき弓年をへて
  しき御送へき尓も阿らね多ゝ閑能
  可多見にとて可ゝるようもやとしたまへり希る佐うそ/く
  く多里くし阿希のてう登めくそへたまふわ可き人々
0107【くたり】−領事也
0108
【わかき人々】−若宮ノかいしやくの人々を云
  しき古とハ佐ら尓もい者寿うちわ多里を)阿さゆふ尓
  那らひて伊と佐う/\しくうへ能阿りさ満なとお
0109【さう/\しく】−寂寞<サウサウシ>
  いてき古遊連ハ登く満いりたま者ん古と越そゝ能可し
  ゆ連と可くい満/\しき能そひ多てまつらんもいと」(12オ・16@)
0110【かくいま/\しき身の】−母君心中詞

  支ゝう閑るへしま多多てまつらて志者し裳阿ら無者
  いとうしろめたう日き古え春可/\登も満いらせ
0111【うしろめたう思ひきこえ給て】−<朱合点> 古今 女郎花うしろめたくも見ゆる哉あれたる庭に<>
0112
【すか/\】−ハヤ/\也
  多てまつり者怒那り个り命婦ハま多お本と能古もら
  せハ佐り希ると阿者連にみ多てまつるまへ能徒本前栽
0113【おまへのつほ前栽】−清涼殿三方草花うへられたるをいふ
  のいとおもしろき佐可りなる越御覧春るやう尓てひや
  丹くき可支り能女房四五人佐ふら者勢御物
  多里せ佐勢个り古能ころく連御覧春る
  恨哥亭子院可ゝせせ徒ら遊支によ
0114【亭子院】−宇多院ノ御事也
0115
【伊せつらゆきに】−もみちはの色ニわかれすふる物ハ物おもふ秋ノ涙成ケリ 玉スタレあくるもしらすねし物を夢にも見しとおもひけるかな 此二首ハ伊勢カヨメル長恨哥ノ哥也貫之にもあるへし<>
  ま勢たまへるやまとをもろ古しの越/も
  堂ゝその春ち越そ満くらことにせ佐せいと古まや可尓」(12ウ・16G)
0116【まくらことに】−あけくれのことくさをいへり枕双紙なといふかことし<>

  阿りさ満登者勢阿者れ那り徒類古とひや可尓そう/春
  御返御覧春連ハいとも閑し古きハをきら寿
0117【いともかしこき】−御返事詞
  可ゝ類お本勢こと尓徒希て裳可支くら寿み多り古ゝち尓那無
    阿らき可勢布勢支し可けのしよ里小萩可うへ楚
0118【あらきかせ】−更衣母返し
0119
【ふせきしかけ】−更衣
  し徒古ゝろ那きなとやう尓み多里可者しきをおさ免佐り希
  類御覧しゆる春へしいと可うし裳えしと/し
  志徒む連と佐ら尓えし能ひ阿へさ勢者寿御覧しハし
  免し登し古と佐へ可き阿徒めよろつにお本し徒ゝ
  希られてとき能まもお本徒可那可里しを可くて裳月日
  へに个りと阿さましうお本し免さ類故大納言ゆい」(13オ・17@)

  む阿やま多春徒可への本い布可くし多里しよろ
  ひハ可ひ阿類さ満にとこそ日わ多里徒連いふ可ひな/し
  やとうち能多満者勢ていと阿者れ尓お本しや類可くても
  を能徒可らミや那とおひ多ま者ゝ佐るへき徒井て/も
  那んい能ち那可くとこ楚ひねんせ免なと能多万/ハ
  春閑の物御らんせ佐寿な支能春見可多つ年い/て
  たり希無志るしの可む佐しならまし可ハとおも本春裳い
0120【かむさし】−金釵
  登可ひ那し
    た徒ねゆくま本ろし裳可那徒て尓ても阿り可を(者&
を、を#<><>
0121【たつねゆく】−御門
  そ古と志るへくゑ尓可け類楊貴妃可多ちハいみしき/し」(13ウ・17G)

  登いへとも可支希れハ伊と尓本ひ春く那し
  液芙蓉未央柳裳希尓可よひ多里し可多ちを
  可らめいた類よそひハう類ハしうこそ希め徒可/し
0122【からめいたる】−からやうのをんなのかたち也
  うらうた希しをお本しい徒類尓登りのいろ尓/も
0123【らうたけ成し】−ほけ/\とシタル也
0124
【花とりの】−<朱合点> 後撰 花鳥の色をも音をもいたつらに物うかる身ハすくはかりなり 玄宗美人をもとめられし時の使ヲ花鳥とめされし也
  丹もよそ(+布)へき可多楚那き阿さ古とく佐尓は年
0125【かたそなき】−滅後をいへり
  を那らへを可者佐んとらせひしに可那ハ佐り希る
  い能ちのそ徒きせ春うら免しき可勢のむしの
  尓徒けてミ可那しうお本さ類ゝに弘徽殿
  ハしくうへ能徒本年丹もまうの本りたま者寿
  のおもしろきによふく類まて阿そひ越そしふ(
ナルイ<>いと春」(14オ・18@)

  さましうしと起古しめ寿古のころ能希しき越み
  たてまつるうへ人女者う那とハ可た者らい多しと个り
  伊と越したち閑と/\しき能し可多尓て
0126【いと越したち】−最 押 立
0127
【かと/\しき】−才 カト/\シ日本
  こと尓裳阿ら寿お本し希ちてもて那し遍/し
  裳いり怒
    能うへ裳尓くるゝい可尓(尓
<>ら舞
0128【雲のうへも】−御門
  浅茅生宿お本しめしや李徒ゝともし越可ゝ希つ
  くしておき越者しま寿右近徒可さ能との
  こゑき古遊類ハうしにぬるなるへしめ越お本して
  よるの登ゝにいら勢たまひても満とろませふ古と可多/し」(14ウ・18F)

  阿した尓お支佐勢ふとて裳阿く類もしらてとお本しい
0129【あくるもしらて】−<朱合点> 玉スタレアクルモシラスねしものを夢にも見しとおもひかけきや 伊せ
  徒類尓も猶朝まつり古とハを古多ら勢ぬへ可免り
  那とも起古し免さ春阿さ可れ井の希しきは可り布れ
0130【あさかれゐ】−アサカレイノマ二間アリ 日ニ三ト御センヲ供スル也
  さ勢たまひて大正しのおものとハいとはる閑尓お本/し
0131【大正しのおもの】−はれの御せんをすゆる物也 日ニ二ト昔ハタテマツリシ也<> 供御也 膳ヲモノ<>
  免した連ハはいせん耳佐ふらう閑き里ハくるしき
  希し起越み多てまつり那希く春へてち可う佐ふらう閑
  きりハ男女いと王り那き可那といひ阿者勢徒ゝ
  な希く佐るへき千きりこそハ越者し希免そ古らの
  そし里うら見をもはゝ可らせふ(ふ$
)は春古のこと尓布連
  た類こと越ハたう里越裳うし那者勢ふ(ふ
ひイ<>い満者た」(15オ・18M)

  可く世中こと越もおも本し春てた類やうに成行
  伊とたい/\しきわさ那りとみ可と能ためしまて
0132【たい/\しき】−たえ/\しきといふ心也
0133
【人のみかと】−漢朝
  いて佐ゝめ支けき个り月日へてミや満い
0134【さゝめき】−さゝやきこと也 耳言万
  いとゝ古の那ら寿起よら尓およ春希たまへ連
  ハいとゆゝしうお本し堂り阿く類登しの春坊さ多
  まり尓もいと古さ満本しうお本勢とうしろミ
  春へき那く又世う希ひくましき古と希れハ
  な可/\阿やうくお本しはゝ可りて尓もい多佐勢
  は寿ぬるを佐者可りお本した連と可支りこそ希/連
  登世人起古え女御御心越(越$
)をち井閑能」(15ウ・19F)
0135【世人も】−のもしをそへてよむ也 世人後宇多御諱

  をハ可多那く佐む那くお本し志徒ミて越者春/らん
0136【をは】−うはをいふ
  た徒ねゆ可むとね可ひひし志るし尓や徒井尓
  う勢ひぬ連ハま多古れをしひお本寿可き
  り那し御子む徒尓那りふ登しなれハ古能多ひハ
  お本し志りて古ひなきたまふころ那連む徒ひき
  古えたまへ類越み多てまつりをくし飛をな返々
  ひ希る尓のミ佐ふらひたまふ那ゝ徒尓成給
0137【なゝつに】−七歳御書始例村上一条ー
  ハ(+イ)布ミハしめなとせ佐勢たまひて丹しら寿佐とう可/し
0138【ふみはしめ】−こちう孝経或貞観政要なと儒者タル人さつけ奉ル
  古く越者春れハ阿まりおそろしきまて御覧い満ハ
  た連裳/\盈丹く見者しき見那くて多尓らう」(16オ・19L)

  たうしへとて弘徽殿と尓裳わ多ら勢たまふ
  登も尓ハや可て見春の尓い連多てまつりい見
  しきも能ゝ布阿多可たき那り登もみてハうちゑ/万
0139【あた】−敵
  れぬへき佐万の(+、△&し)たまへ連ハ盈佐し者那ちたまハ寿
0140【女御子たち】−一品宮前斎院
  御子たち布多古の者ら尓越者しま勢と春(<>)ひ
  へきた尓そ那可り希る可多/\裳可くれたま者寿
  より那満め可しうはつ可し希尓お者春連ハ伊とお可/し
0141【なまめかしう】−<朱合点> 二ノ心アリ嬌タルことをなまめくと云 又生ノ字もなまめくといふ<> 古今 秋のゝになまめきたてる女郎花あなかしかまし花も一時<>
  うとけ怒阿そひくさに堂連裳/\日きこ盈
  たまへりわさとの可くもんハ佐類尓て古と
  丹もくも井を日ゝ可し春へていひ徒ゝ希ハ古と/\しう」(16ウ・20E)

  たてそぬへき佐万希るそ能ころ古満うと能満
  い連類(+
那可)尓可し古き佐う人有希る越起古しめして
  の尓め佐ん古とハ宇多能見可とのいまし免阿連ハ
0142【宇多のみかとの御いましめ】−寛平遺誡曰 外蕃之人必可召奥者在簾中見之不可直対耳
  伊ミしうひて古能御子を古うろく王んに徒可者寿(す$し)た
0143【こうろくわん】−玄蕃寮ノコト也 七条しゆしやくニアリ ホツシマラウトノツカサ也
  りうしろ多ちて徒可うまつる右大弁(の<>能やう尓
  ハせてゐてたてまつるに佐うおとろきて阿ま多たひ
0144【ゐてたてまつる】−つれたてまつる心也
  可多布支阿やし布おやと帝王可ミな
0145【国のおやと成て】−太上天皇の尊号をえ給へる事をいへり
  くら井尓の本るへき佐う越者しま寿そ那多尓て
  れハみ多れう連ふる古とや阿ら無お本や希能可多めと
0146【みたれうれふること】−須磨ノ浦へうつされ給へると也
  をた春く類可多尓てみ連ハその佐うた可ふ遍しと」(17オ・20L)

  裳いと佐え(え<>)可し古支は可せ尓ていひ可者した類古とゝ
  裳那無いと希う阿りける布ミなと徒具里閑者して
0147【ふみ】−詩文
  个ふ明日可へり(+佐り)那んと春るに可く阿り可多起悲と尓たい
  めむした類よろ古ひ可へりてハし可るへき者へ越
  おもしろく徒く李た類尓御子裳いと阿者連なる
0148【御子】−親王をいふ
  徒くりたまへ類を可支り那うめて多てまつりていみしき
0149【めてたてまつりて】−感情 メテ玉フ<>
  とも越佐ゝ希多てまつるお本や希よ里もお本くの
  も能多満は春を能徒可ら古と日ろ古りてら(+
さ)勢たま者年/と
  春宮お本ちおとゝ那とい可那類古とに可とお本し/う
0150【おとゝ】−二条右
  た可ひて那ん希るみ可と閑し古き古ゝろ尓やまとさ/う」(17ウ・21E)
0151【やまとさう】−我国ニツタヱテ人を相スル事也 藤仲直ハ光孝天相 廬平ハ高明公相

  をお本せてしより尓希る春ち那連ハ伊まゝて古の
  御子尓裳な佐せ者佐り希る越佐う人ハ満古/と
  に可し古可り个りとお本して無品親王外戚
0152【無品の親王】−五位也
0153
【外戚】−母方ノ事也
  よせ那き尓てハたゝよ者佐し我御世裳いと佐ため
0154【よせ】−縁也
  な支多ゝ尓てお本や希のうしろみ越春る那無
  佐き裳多能もし希那める古とゝお本し佐多めて
  よ/\みち/\の佐えを那ら者勢起ハこと尓可し古/く
  てたゝ耳ハいと阿多らしき(き$
)希連と見古と多万
  飛那ハう多可ひ越(越$
)をひぬへくへ者
  春くようの可し古き悲と尓可む可へさ勢たまふ尓も」(18オ・21K)
0155【すくよう】−宿曜師事廿八宿ハ九曜行度助人運命

  那しさ満尓せハ希むし尓那し多てまつりて(りて$る)へ/く
0156【けむしになしたてまつる】−姓を給てたゝ人ニなり給事さかの天皇ノ御時ヨリハしまれり延喜御時高明御子ト申ハ更衣周<チカ>子ノ御腹ニテ源ノ姓を給り侍りそれをひかる源氏ニなそらへ侍り
  本しをきてたり登し尓そへてミや春こと/を
  本しるゝ那し那く佐むやと佐るへき人々
  を満いら勢たまへと春らひ耳お本さるゝた尓いと
  可多支可那とう登ましうのミよろつにお本し
  ぬるに先帝可多ち春く連たまへ類き古え
0157【先帝】−光孝
0158
【四の宮】−薄雲女院御事
  た可くをハしま寿き佐き尓那く可し徒き支古え
  ふ越うへ尓佐ふらう内侍春希ハ先帝とき能
  尓て閑能丹もしたしう満いり那連多り希れハい者希
  那く越者しましゝよりみ多てまつりいまも本のみ多て」(18ウ・22D)

  まつりてう勢ひ丹しミや春可多ち尓丹多まへ
  類三代ミや徒可へに徒多はりぬるに盈み多て
0159【三代】−光孝 宇多 醍醐
  まつり徒希ぬ越起さいの姫君)ミやこそいとよう
  お本えてをいり(り$
て佐勢へり希連阿り可多起
  可多ち耳那んとそうし希るに満こと尓やと御心と/万
  李てねんころ尓起古え佐勢ひ个りはゝ起さきあ
  那おそろしや春宮女御いと佐可那くてき里
  能更衣能阿ら者尓は可那くもてなされ丹しためし裳
  ゆゝしう登し徒ゝみて春可/\しう裳お本したゝ
  佐り希る起さきもう勢ひ怒本そきさ満」(19オ・22J)

  尓て越者しま寿に堂ゝわ可たち能お那し徒
  ら(+
に)日き古えんといとねんころに起古え佐せたまふ
  佐ふら布人々御うしろ多ちせう登の兵部卿
0160【御せうと】−薄雲女院御あになり
  御子御子△△イ、△△イ#)なと(と+イ、△イ#可く本そくて越者しまさむよ里ハ春見
  せ佐勢古ゝろも那く佐むへく那とお本し
  満いら寿(寿$
)せ多てまつ李へり徒本と起こ遊希尓
  可多ち阿りさ満阿やしきまてそお本えたまへ類古連ハ
  きハまさりてそお本えたまへ類(そお本えたまへ類$
日那しめて/多
  く悲ともえおとし免起古え者年ハうけ者りて阿可怒
0161【うけはりて】−うけ引心也 承諾<ウケハリ>
  裳(裳$)那し可れハゆ類しき古えさ里しに御心」(19ウ・23B)
0162【かれは】−更衣

  佐し阿や丹くしそ閑しお本し満支るとハなけ連登
0163【おほしまきる】−御門御気色
  を能つ可ら御心うつろひて古よなうお本し那く佐むやうな
  類耳(耳$
)裳阿者連なるわさ个り希むしの
  阿多り佐りたま者怒をまして志けくわ多ら勢たまふ
  可多ハえはち阿へたま者寿いつ連の可多裳我人
  耳お登らんとお本い多るやハ阿類登り/\にいとめて
  た希連とうちおとなひたまへ類尓いとわ可うう徒くし希
  尓てせち尓可くれへとを能徒可らもりみ多てまつるはゝ
  ミや春裳可け多尓お本え者ぬ越いとよう丹多まへり
0164【かけたにおほえ給はぬ】−<朱合点> 後撰 なき人のかけたにみえぬやり水ノソコハ涙をなかしてそこし
  と内侍春け能起古え希るをわ可き御心ち尓いと登」(20オ・23I)
0165【わかき御心ち】−源氏

  日起古え尓満いらま本しくなさい(い=ひイ、ひイ#)み多て/万
0166【なつさい】−なるゝ心也 昵近
  徒ら者やとお本えたまふうへも可支り那きおもひとちに
0167【御おもひとち】−おもふとし也 共也万
  て那うと見そ阿やしくよ楚へ起古え徒へきちな/ん
  春る那めしとお本さてらうたくし徒らつき万
0168【なめし】−無礼 軽
  見那とハいとよう丹多里しゆへ可よひてみえふ裳
  尓け那可ら春な無なと起古え徒け徒連ハさな
  古ち丹もハ可那きもみち尓徒希て裳那しと(那しと$
さしをイ、イ#)みえ多て
  まつる古よなよせ起古えたまへ連ハこ起てん能女御
  古の登も那可そハ/\しきゆへうちそへてよ里
  の丹くさ裳たちいてゝ(+
能し)と(と+お本し多り尓たくひなしとイ、イ#)み多てまつりたまひた可う」(20ウ・24B)

  越ハ春るミやの可多ち丹も丹本者しさハたとへん
  那くうつくし希那る越悲と飛可るき見とき/こ遊
0169【ひかるきみ】−亭子院第四ノ御子アツヨシノ親王玉ヒカル宮ト申ニタトフル也
  徒本那らひ多まひてお本え裳登り/\なれ者
  可ゝやくと起こ遊古の王らハ春可多いと可へ
0170【かゝやく日の宮】−上東門院世人カヽヤク藤ツホト申
  満うくお本勢と十二尓て希んふくしゐ多ちお本
0171【十二にて御けんふく】−漢朝十二冠為本一条院十二宇治関白十二歳ヲ一周源氏准親王元家
0172
【ゐたち】−いつたちつする也
  しいとな見て可きり阿類古と尓をそへ佐勢
  飛登ゝせの春宮御元服南殿尓てし起しき
0173【南殿】−於紫宸殿例冷泉院花山院
  よそ本し可里し日ゝきにおとら(ら<>)せは春ところ
0174【よそほしかりし】−粧
  /\のとくら徒可さ古く佐うとお本や希/こと
0175【くらつかさ】−内蔵寮
0176
【こくさう院】−穀倉院
  に徒可うまつ連類おろそ可なるそ登とり王支」(21オ・24I)

  お本せ阿りて起よら越徒くして徒可うまつ(+連)り越
  ハしま寿殿飛む可し能日佐し飛ん可しむ支にいし
0177【殿】−テン
0178
【ひんかしむきに】−親王元服ニハ大床子立二脚出御源氏元服ニハ移殿上侍子シ
0179
【いし】−御門御座事也
  たてゝく王んさの御座飛きい連の大臣御座
0180【くわんさの御座】−元服スル人ノ座也
0181
【ひきいれの大臣】−加くわんの人ナリ 摂政
  まへ尓阿り佐る能耳△(△&亭)源氏満いりたまふ見徒
0182【みつら】−総角
  らゆいたまへる徒ら徒き可本のさ満可へ者ん
  おし希那り大蔵卿くら徒可うまつるいと起よらな
0183【大蔵卿くら人】−蔵人頭の大蔵卿と云心也理髪ノ人をいふ一説両人歟
  類くしをそく程心くるし希那るをうへハミや春
  まし可ハとお本しい徒類尓たへ可多起越徒よくねん/し
  可へ佐勢閑う布里し春(
やすミ<>)ところ尓ま可て
0184【御やすみところ】−休所 下侍殿上 無明門脚也
  てそ多てまつり可へておりて者いしたてまつりふ」(21ウ・25A)
0185【御そたてまつりかへて】−童体赤闕腋無為袍黄本式云説アリテ近代用之 アサキ黄ナルヲ浅黄トヨム 源氏時代黄袍宜歟

  さ満耳ミ那人涙おとし閑とは多まして盈
  ひ阿えは春お本し満きるゝ裳阿り徒類
  の登り可へししくお本さ類いと可う起ひハ
0186【きひは】−いとけなき心也 稚
  那るハ阿けおと里やとう多閑者しくお本され徒類
0187【あけおとり】−元服してわるくなるをいふ
  を阿さましうう徒くし希さそひへり飛きいれ
0188【うつくしけさ】−愛常<ウツクシ>
  の大臣御子はら尓多ゝ飛登り可し徒きたまふむ春め
0189【御子はら】−御門姓也
0190
【御むすめ】−葵上事也
  春宮よ里も希しき阿る越し王つらふあり
  希り古(+
の)き見丹多てまつらんの御心那り个りうち尓裳
  希しき者らせへり希連ハ佐らハ古のおり能うしろミ
  那可める越そひふしにもとよ本佐勢希連ハさ」(22オ・25H)

  お本したり佐ふらひに満可て人々お本ミ起なと満い
0191【さふらひ】−内殿上事
0192
【おほみき】−御酒<ミキ>
  類耳(耳<>、耳<>御子たちのさの春ゑ尓希むし徒きた万
  遍りおとゝ希しきは見き古え阿連と
  徒ゝましき尓て登も閑く裳阿へしらいき古えた万
  ハ春まへより内侍宣旨う希多満者り徒多へて
  登満いりたまへきめし阿連ハ満いりたまふろく能
  うへのミやう布登りて志ろきお本うちきに
0193【うへのみやうふ】−うへの女房なといふにおなし
0194
【しろきおほうちき】−白大褂ニ女房ノ衣一領そへて加冠の禄に給ふなり
  飛とく多り連いの古と那り佐可徒井てに
    いと支那きはつもとゆひ尓那可きる古ゝろハ
0195【いときなき】−御門
0196
【いとき】−或け
  む春飛こめつ御心者へ阿りておとろ可佐せ布」(22ウ・26A)
0197【むすひ】−副臥

    む春ひ徒類裳ふ可きもとゆひ尓古支むら佐支
0198【むすひつる】−おとゝ
0199
【もとゆひにこきむらさきの】−本結色昔男女共以累糸
  いろし阿せ春ハとそうして那可ハしよりお里て布たう
0200【あせす】−替
0201
【なかはしよりおりて】−清殿より南殿へかよふ廊をいふ 下階アリ
  し飛多りの徒可さ能御馬蔵人ところ能た可春へ
0202【ひたりのつかさ】−左馬寮
0203
【たかすへて】−於禁中鷹引御事無例歟 以私之儀書之歟
  て満(満$)たま者りみ者しのもと尓御子多ち可む多ちめ
  徒ら年て路くとも品々にたま者りそ能ひのまへ
  のおり日つ右大弁那んう希たま者りて
0204【おりひつ】−折櫃
0205
【こ物】−籠物
  徒可うまつらせ希るとむしきろくの可ら日つとも那と
0206【とむしき】−屯食のつゝミいゝとてきしきの時しよしにくめるいゝナリ
  せ起まて春宮御元ふく能おり丹もまされ
  り那可/\可きりも那くい可免しう那無そ能おとゝ
  の佐と尓希むし能き見満可て佐せ佐本う尓/めつ」(23オ・26H)

  らしきまてて可し徒き起古えへりいとき飛者
0207【きひは】−稚
  尓て越者した類をゆゝしう徒くしと日き古え
  たまへりき見ハ春古し春古(古
<>クイ、イ#)したまへ類いと王
0208【女きみはすこしすくしたまへる程】−源氏ハ十二あふひの上ハ十六なる事をいふ
  閑うをハ春連ハ尓希那ふ者つ可しとお本い堂り
  登ゝのお本えいとやむこと那きに者ゝ宮内飛と徒
  き佐い者ら尓那んをハし希れハい徒可多に徒希て裳
  いとや可那るに古の佐へこ(こ
<>)く越者しそひぬれハ
  東宮お本ち尓て徒井尓世中を志りへき
0209【御おほち】−二条
  おとゝ能いきをひハ尓も阿ら寿おされたまへり古とも
  阿ま多はら/\にも能したまふ者らハ蔵人少将尓て」(23ウ・27A)
0210【御はら】−兄弟
0211
【蔵人の少将】−後致仕太政大臣

  いとわ可うお可しきを登ゝの那可ハ伊とよ可らね
0212【右のおとゝ】−二条
  盈見過したま者て可し徒き尓阿者勢へり
  お登ら春もて閑し徒きた類ハ阿ら満本しき阿者ひとも尓な/ん
  希むしのハうへ能尓免し満徒ハせ者や春く佐と春見も
  え者寿うちにハ多ゝ徒本の阿りさ満をたくひ
  那しと日き古えて佐やう那らん越こそ丹類
  裳をハし希る可那本いと能ゝいとを可し希尓可し徒可れ
  た類悲とゝハみ遊連と丹も徒可春お本えおさなき本と
  の徒可(徒可$
)ひと徒尓閑ゝりて伊とくるしきまてそ越ハし希る
  おとな成給しやう尓み春能うち丹もいれ多満者春」(24オ・27H)
0213【有しやうに】−此段詞十二ヨリ後事含也

  阿そひの折/\古と起古え可よひ本の可な御声
  を那くさ免尓てうち春見のミ古能ましうお本え五六日
  布らひ本い殿二三日とたえ/\(
<>)満可てへとたゝ
0214【今は】−源氏<>
  おさな御程尓徒ミ那くし那していとなミ閑し徒き
  可多/\能人々世中尓をし那へたら怒をえり登ゝ能へを(を
<>)くりてさふ
  ら者勢御心尓徒くへき阿そひをしお本な/\お本しい多
0215【おほな/\】−わさとかましき事
  徒くうち尓ハ能し希いしや(<>佐うし尓てはゝミや春
0216【しけいしや】−淑景舎
0217
【さうし】−曹司
  可多の人々満可てちら春佐ふら者勢佐とのと能ハ修理修理もくす里イ)
0218【さとのとの】−法興院 二条京極之様也
0219
【修理】−ー寮
  しきたくミ徒可さに宣旨く多里てに那う阿らため徒く
0220【たくみつかさ】−内匠<タクミ>
  ら勢もとの多ち能たゝ春まひおもしろき」(24ウ・28B)

  那り希る越い希の日ろく志那してめて多く徒くり
0221【いけの心ひろく】−<朱合点> ちりぬともかけをやとハん藤の花池の心そあるかひもなき 躬恒
0222
【いけの心】−池ノ中をいふ
  能ゝ志類閑ゝるところ尓ふやう那らんを春へて春満者や
0223【かゝるところに】−つゐにハねかひのことく紫上のちにハ二条院にすみ給へるなり
  登能ミ那希可しうお本しわ多る飛可る云名ハ古
0224【こまうと】−高麗人
  満うとの免て起古えて徒希たてまつり希る登そいひ
  徒多へた類とな無」(25オ・28E)

彼源氏物語事於長府書畢従京都豊藝為和談上使
聖護院殿様御下向候然者人々御在府候桐壺巻大門跡
様御筆候夢(△&
夢)浮橋巻新門跡様御筆候大門跡
様御名道増様與申新門跡様御名道澄様與申也
永禄七年七月八日 吉見大蔵大輔正頼(花押)」(25ウ)

二校了<>(表表紙蓋紙)
桐ツボヨリ梅かえ迄/巻一校了(16丁袋綴中紙片)