First updated 02/24/2003
Last updated 07/05/2024

桐壺

【凡例】
1.『源氏物語(明融本)T』(東海大学出版会 1990年6月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。
3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。
4.変体仮名はその字母で翻字した。
5.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記や付箋等は小字体で表示した。
8.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。


「きりつ本」(題箋)

「上冷泉殿為和卿御息明融〔定家卿字形/御似せ候哉〕琴山(印)」(遊紙表貼紙)

  伊徒れの御時尓可女御更衣あ満多佐布
  らひ个るな可尓いとやむことなきゝは尓ハ
0001【いとやむことなきゝは】−きハめて上臈の品をいふ 無止事と書
  あらぬ可春くれてめきあり个りはしめより
0002【すくれて時めき給ありけり】−桐壺更衣也
0003【はしめより我はと】−桐壺更衣より前に入内して我こそ寵を得んと思也
  者とあ可りへる御方/\め佐ま志き
0004【御方/\】−弘徽殿の女御抔也
0005【めさましき】−妬さま也

  もの尓おとしめそねみしほとそれより
0006【おとしめそねみ】−わひ消して妬む心也
0007【おなしほと】−桐壺の更衣と同し位也

  らうの更衣多ち者満してや春可ら
  あ佐ゆふの徒可へ尓徒遣ても
0008【人の心をのみうこかし】−下臈の更衣嫉妬の心をうごがす也
  のみうこかしうらみをおふ徒もり尓やあり/个ん」(1オ・大成5D)
0009【うらみをおふつもりに】−人の恨をおひぬれハ苦しき事ある習也

  伊とあ徒しくな里ゆき物心ほそ遣尓佐と
0010【いとあつしく】−更衣也
0011【あつしく】−異例かち也
0012【さとかちなるを】−里住がちにある也

  かちなるをいよ/\あ可春あ者れな尓お
0013【いよ/\あかす】−御門の御こゝろ
  ほしてのそし里をも(も#も)えはゝからせ者す
  堂めし尓もな里ぬへきてな
  かむたち免うへともあいなくめをそ
0014【かむたちめ】−公卿をいふ也
0015【うへ人】−殿上人をいふ也
0016【あいなく】−あぢきなき心也 愛なき也

  者めつゝいと万者ゆきほえなりも
0017【いとまはゆき】−人のそねみてうちもむかはぬ形也
  ろこし尓もかゝることのおこり尓こそ
0018【かゝることの】−好色を愛する事也
0019【おこりに】−起と驕と両儀也 起よし

  み堂れあし可り个れとやう/\あめの志多尓も」(1ウ・5H)
0020【やう/\】−心をつくへし

  あちきなのもてなやみくさ尓なりて
0021【あちきなう】−セン方ナキ心也
0022【くさ】−種

  楊貴妃の堂めしも飛きいて徒へく(く=う)なりゆ
0023【楊】−\アクル
  く尓いと者し多なきことおほ可れとか多し
0024【かたしけなき御心はへ】−帝の御氣色ひとつを頼むはかり也
  遣な御心者への堂くひなきをたのみ尓て
0025【御】−ミ
  満しらひちゝ能(能$)大納言者なくなりて者ゝ
0026【ましらひ】−交の字也
0027【大納言】−ヂヤウ 津云よみくせ口伝あり
0028【はゝ北の方】−更衣の母きたの方をいふ事也

  むい尓しへののよしある尓てお
0029【人のよしあるにて】−故ありてたゝならぬ人にてといふ心也
0030【おやうちくし】−句をきりてよむ也

  うちくし佐しあ多りて能おほえ者那や可な
0031【はなやか】−聲花
  御方/\尓もい多うおとらすな尓ことのきし
                     きをも」(2オ・5M)
0032【きしき】−儀式

  もてな个れとゝり多てゝ者可/\しき(+うしろ
  みしな个れ者(+と)あるより本そ
0033【事とある時は】−と晴わさなとある時なるべし
  遣佐きの尓もちきりや布可ゝり个ん
0034【さきの世にも】−\(合点)
  なくきよらなる堂万のをのこみこ佐へう万れ
0035【きよらなる】−清の字也 ほめたる詞也
0036【たま】−玉
0037【たまのをのこみこ】−光源氏也 誕生也

  日ぬい徒し可ともとな可らせていそき万い
0038【いつしかと】−御門御心也 いつかと云心也
0039【まいらせて御覧するに】−源氏の君を御門の御覧する也

  らせて御覧する尓めつら可なるちこの可多ち
  なのみこ者右大臣女御者ら尓てよせ
0040【よせ】−縁也
  越もくう多可ひなき満う个の尓もてか
              しつきゝこゆれと」(2ウ・6D)

  この尓ほひ尓者ならひへくもあら佐り个れ
  者おほ可多のやむことなもひ尓てこの
  を者わ多くし尓お本しかし徒き給事かき
  里な(+者ゝ者しめよりをしなへてのうへ徒可へ志
  へきゝは尓ハあら佐りきおほえいとやむことな
  くすめ可し个れとわ里なく万つ者させあ万り
0041【上すめかし】−シタリカホナル事也
  尓佐るへきあそひのお里/\な尓こと尓も
  へあることの布し/\尓者まつ満うの本らせ
0042【ふし/\】−節々
0043【まうのほらせ給】−マイリノホル也

  ある尓者おほとのこもり春くしてや可て」(3オ・6I)
0044【おほとのこもり】−寝事也
0045【やかて】−其マヽ宮ツカヱ給也


  佐布ら者せ多まひなとあな可ち尓おまへさらす
  もてなさせしほと尓をのつ可らかろき
  尓もえしをこのみこう万れてのち者いと
  こと尓お本しをきて多れ者尓もようせす
0046【坊にも】−東宮ヲ申也
  者このみこのゐへきなめりとのみこの女御
  おほしう多かへりより佐き尓万いり
  やむことなもひなへてならすみこ多ちな
0047【やむことなき】−か春志らす可よ者ひを/の者へ徒ゝな多ゝるやとのつ遊と/ならなん(付箋@)
  と者し万せ者この御方いさめをのミそ」(3ウ・7@)
0048【この御方の御いさめ】−更衣ノ御イサメ也

  わつら者しうくるしう日きこえ佐せ
  个るかしこき可个を者堂のみきこえな可ら
  おとしめきすをもとめ給人者おほくわ可
0049【わか身は】−更衣
  かよ者く者可那きあ里さ万尓て/\な
  日をそ給御つ本ね者きりつ本あ万多
0050【御】−ミ
  の御方/\を春きさせてひ万なきまへわ
  多里尓御心を徒くしも个尓こと者リ
0051【御】−ミ
  とえ多里万うのほり多万ふ尓もあ万りうち
  しきるおり/\者うちはしわ多とのゝ古ゝ」(4オ・7E)

  かしこのみち尓あやしきわさを志徒ゝをくり
  む可へののきぬの春そ堂へ可多くまさな
  こともありある尓者え佐らぬめ多うのとを
  佐しこめこな多かなをあ者せて者し多
  なめわつら者せ給時もおほ可り尓布れてかす
  志らすく累しきことのみ万され者いとい多う
  わひ多るをいとゝあ者れと御覧して後涼殿
0052【涼】−ラウ
  より佐布らひ給更衣の佐うしをほ可に」(4ウ・7J)
0053【さうし】−ツホネ

  う徒させ多まひてうへ徒本ね尓たま者すそ
  満してやらむしこのみこみ徒尓な
  里給年御者可万きのことの多て万つりし
  尓おとらすくらつ可佐おさめ殿を徒くして
0054【おとらす】−ルケチメナク
0055【くらつかさ】−内蔵寮
0056【おさめ殿】−納殿

  いみしうせさせれ尓つ个てものそ
  里のみおほ可れとこのみこのおよすけもてお
0057【およすけ】−オトナヒタル也
  者春る可多ち者へあり可多くめつらしき万て
  え多万ふをえそねみあへ多ま者す
  こゝろし里給人者かゝる尓いて」(5オ・8A)

  お者するり个りとあ佐ましき万てめをお
  とろかしみやす者可那き
0058【みやす所】−桐壺更衣事
  心地尓わつらひてま可てなんとしをいと万
  らにゆるさせ者すころ徒ねのあつし
  尓なり多万へれ者めなれてしはし
  よとのみの多ま者する尓ゝ尓をもり
  堂ゝ五六日の本と尓いとよ者うなれ者はゝ
  なく/\そうして満可てさせ多て万つり多万ふ」(5ウ・8E)

  かゝるおり尓もある満しき者ちもこそ徒可日
  してみこを者とゝめ堂て万つりて志のひてそ
  いてかきりあれ者佐のみもえとゝめさせハす
  御覧し多尓をくらぬお本つ可な佐をいふ
  くおもほさるいと尓本ひやか尓う徒くし遣
  のい多うおもやせていとあ者れと
  日しみな可ら尓いてゝもきこえやらす
0059【事にいてゝ】−\(合点)
  ある可なき可尓きえいりつゝも御覧
  春累尓きしゆくすゑお本しめされす」(6オ・8J)

  よろ徒のことをなく/\ちきりの多ま者すれと
  いらへもえきこえ者す万みなともいとた
  ゆ遣尓ていとゝなよ/\とわれ可の个しき尓て
  布し多れ者い可佐万尓とおほしめし万とハる
  てくる万の宣旨との多ま者せてもいらせ
  (+ハ)さらにえゆるさせ者すかきりあらむ
  みち尓もをくれさき多ゝしとちきらせ个るを
  佐里ともうちすてゝ者えゆきやらしとのた万
                  者するを」(6ウ・9A)

  いといみしと多て万つりて
0060【いみし】−フカキ心
    かき里とてわ可るゝかなしき尓
  伊可万本しき者いのちなり个りいと可く
  堂万へ満し可はといきも堂えつゝきこえ万
  ほし遣な者ありけなれといとくるし
  遣尓堂ゆけなれハかくな可らともかくもな
0061【たゆけ】−タヘカタキ也
  むを御覧し者てむとおほしめす尓遣ふ
0062【けふはしむへきいのり】−更衣ノ里ニテノ御祈也
  者しむへきいのりとも佐るへき/\う个多万
                     者れる」(7オ・9E)

  こよ飛よりときこえいそ可せ者わ里なくお
  ほしな可ら満可てさせ多万ふむね(+のミ)徒と布
  堂可りて徒ゆ万とろ万れすあ可しかねさせ
  徒可ひの遊きかふ本ともなき尓いふせ
0063【いふせさ】−不審也
  さをかきりなくの多ま者せ徒るを夜中うち
  春くる本と尓なむ堂え者てぬるとてな
  佐者个者つ可ひもいとあえ(え$遍)くてかへり万
0064【あへなくて】−センナキ心也
  いりぬきこしめす御心万とひな尓ことも」(7ウ・9J)
0065【御】−ミ

  ほしめしわ可れすこもりお者しま春みこは
0066【みこは】−源氏君三歳ノ時也
  かくてもいと御覧せ万ほし遣れとかゝる本と尓
  佐布らひれいなれ者ま可て
  むとすな尓こと可あらむともおほし多らす
0067【なにことかあらむ】−御子ノ思心也
  佐布らふ/\のなき満とひうへもみ多
  のひ万なくな可れお者し万すをあやしと
  多て万つりへるをよろしきこと尓多尓かゝ
  累わ可れのかなし可らぬ者なきわさなるを
  ましてあ者れ尓い布可ひなしかきりあれハ」(8オ・10A)
0068【ましてあはれに】−死別聲ヲノム ナカレモセヌ也

  れいのさほう尓おさめ多て万つるを者ゝ
  おし个ふりに(+もほりなむとなきこ可れ
  てをくりの女房のくる万尓志多ひのり
  てお多きといふ尓いとい可めしうそのさ本
0069【おたきといふ所】−御ヲクリノ女房車ニシタヒノリ給テ
  うしたる尓お者しつき多る心地い可者可り可ハ
  あり个むゝなしきからをる/\者する
  とおもふ可いとかひな个れ者はひ尓な
0070【はひになり】−\(合点)
  多万者むを多て万つりていま者なと」(8ウ・10E)

  飛多ふる尓りなんと佐可しうの多万ひつれ
  とくる万よりもおちぬへう万ろひへは
  佐者徒可しと/\もてわつらひきこゆ
  よりつ可ひあり三位のくら飛をくり
0071【三位】−ミツ
  よし勅使きてそ宣命よむなんかな
0072【宣命よむ】−少納言墓所ニテヨムサホウアリ
  きことなり个る女御と多尓い者せすなりぬる
  かあ可すくちおしうお本さるれ者い万ひと
  きさみのを多尓とをくらり个り」(9オ・10J)

  これ尓つ个てもにくみ給人/\おほかり物思
  志り者佐万可多ちなとのめて多か里し
  者せのな多ら可にめやすくにくみか多(か多$可り
  しことなといまそほしいつる佐万あしき
  てなしゆへこそ春けなうそねみ
  志可からのあ者れ尓な佐遣ありし御心
  うへの女房ともこひしのひあへりなくて
0073【なくてそとは】−\(合点) ある者ありのすさひ尓にく可り/き/なくてそハこ飛し可りける(付箋A)
  そと者かゝるおり尓やとえ多り者可なく」(9ウ・11@)

  ころすきてのちのわさなと尓もこ満(+や)可尓
0074【のちのわさ】−弔ノコト也
  とふら者せほと布る満ゝ尓せむ
  かなしうお本さるゝ尓御方/\のとのゐな
0075【とのゐ】−宿直也
  も堂えて(堂えて$)し者す堂ゝなみ多尓飛ちて
  あ可しくら佐せたまへハ多て万つるさへ
  徒ゆ个き秋也なきあと万てのむねあ
0076【つゆけき秋也】−\(合点)
  くましかり个るほえかなとそ
0077【弘】−コウ
  徽殿と尓はゆるしなうの多万日个る」(10オ・11D)

  多て万つらせ尓もわ可こ飛
  し佐のみお本しいて徒ゝ志多しき女房
  めのとなとを徒可者しつゝありさまをきこ
  しめすわき多ちて尓は可尓者たさむき
0078【野わきたちて】−清濁両説
0079【はたさむき】−清濁両義清用

  ゆふくれのほと徒ねよりもおほしい徒るこ
  おほくてゆ个ひの命婦といふをつ可者須ゆ
0080【ゆけひの命婦】−左衛門女
0081【命婦】−\(合点)

  布徒くよのお可しき本と尓い多し多てさせ
  てや可てな可めお者しますかう(う=カ)やうのおりハ」(10ウ・11I)

  あそひなとせさせし尓となのねを
0082【こと】−琴
  かきならし者可なくきこえいつるの者も
  より者ことな里しけ者ひか多ちの可个
  尓徒とそひてお本さるゝ尓(尓$)もやみのうつゝ尓ハ
0083【やみのうつゝにハ】−\(合点) む者多満のやみのうつゝハ佐多可/なる/尓いくらも万佐らさり个り(付箋B)
  とり个り(り$流、流#)命婦かしこ尓満(+可)て徒きて
  かと飛きいるゝより遣者ひあ者れやも
0084【かと】−門
0085【ひきいるゝ】−車事也

  春みなれと飛とりのかしつき尓と可くつ
0086【人ひとりの御かしつき】−更衣一人ニテツクロイ給シ也
  くろひ堂てゝめや春きほと尓て春くしつる」(11オ・11M)
0087【めやすきほと】−目安程ハ無見苦ホト也(左)

  やみ尓くれて布しゝ徒みへるほと尓もた可
  くなわき尓いとゝあれ多る心地して月影
  者可リそやへむくら尓も佐者らす佐しいり多る
0088【やへむくらにも】−\(合点) ときやとれとくるハ/やへむくら尓もさハらさり个り(付箋C)
  ミ那み越もて尓おろして者ゝもとみ尓え
0089【とみに】−急
  もの多ま者すいまゝてと満り可いとうきを
0090【とまり侍】−ナカラウルコト也
  かゝる徒可ひのよもきふの徒ゆわ个いり尓つ
  遣てもいと者徒可しうなんとて遣尓え堂ふ万
0091【たふましく】−堪マシキ也
  しくな万いりて者いとゝくるしうきもゝ
0092【まいりては】−命婦詞
  徒具るやう尓なんと内侍のす个のそうし志」(11ウ・12E)

  を(ふ$ひ)多まへしらぬ心地尓も个尓こそ
  いと志のひかたう个れとてやゝ堂めらひて
  おほせこと徒多へきこゆ志はし者ゆめ可とのみ
0093【しはしは】−勅院
  多とられしをやう/\ひしつ万る尓しもさむ
  へきく堂へ可多き者い可尓春へきわさ尓可
  ともとひあ者すへき多尓なきを志のひて
  者満いり日なんやわ可のいとお本つ可な
  徒ゆ个きな可尓春くしくるしうお本さ
  累ゝをとく万いりへなと者可/\しうもの多万
                        者せ」(12オ・12J)

  やら春むせ可へらせつゝか徒者よ者く
  多てまつるらんとおほしつゝ万ぬ尓しもあら
  ぬ个しきのくるし佐尓う个多ま者り(+も)
  てぬやう尓てなん満可てぬるとて布み多て
0094【御ふみ】−勅書
  万つるめもらぬ尓かくかしこきおほせこ
0095【めも見え侍らぬに】−母君コト
  を飛可り尓てなんとて見給本とへ者春こしう
  ち満きるゝこともやと万ち春くす月日尓そへて
  いと志のひ可多き者わ里なきわさ尓なんい者
                  けな(を$も)」(12ウ・13A)

  伊可尓と日やりつゝもろとも尓者くゝ万ぬお
  徒可なさをいま者む可しのか多み尓なすら
  へてもし多満へなとこ満や可尓かゝせ多万へり
    宮木のゝ徒ゆ布きむすふのをと尓
  こ者き可もとを日こそやれとあれとえ
  多万ひ者て春いのちな可佐のいと徒らう
  思給へ志らるゝ尓者むこと多尓者つ
0096【松のおもはむこと】−\(合点) 北方住セ給アタリノ様也
  かしう思給れ者もゝしき尓ゆき可ひ
  らむこと者満していと者ゝかりお本くなん」(13オ・13G)

  かしこきおほせことを堂ひ/\う个多万者りな
  らみ徒可ら者えな多万へ堂徒万しきわ可
  者い可尓おもほしゝる尓可万いり多ま者む
  のみなんお本しいそくめれ者ことはり尓かな
  しう多て万つりとうち/\尓多万ふ(ふ$へ)
0097【うち/\に】−内/\也
  さ万をそうしへゆゝしきれ者かくて
0098【ゆゝしき】−イマ/\シキ心也
  お者し万すもい万/\しうか多し个なくなんと
  の多万ふ者おほとのこもり尓个り多て万
  徒りてくはしう(う=く)ありさ万もうし」(13ウ・13L)
0099【御】−ミ

  ら万本しきを満ちお者しますらむ尓
  遣ぬへしとていそく具れ万とふのやみも
0100【心のやみも】−北方詞 \(合点) ひとのおやの者や見尓あらねとも/こを思道ぬる(付箋D)
  堂へ可多きか多はしを多尓者るく(く$流)尓きこえ
0101【たへかたき】−カタエハルヽ
0102【かたはしをたに】−少ナリトモト也
0103【きこえまほしう侍を】−物語聞マホシキ也

  満本しうをわ多くし尓もと可尓万可て
0104【わたくしにも】−命婦私ニ也
  多まへころうれしくおも多ゝしき徒い亭
0105【おもたゝしき】−面目シキ心也
  尓て堂ちよりをかゝるせうそこ尓て
  多て万つる/\徒れなきいのち尓も可な
  む万れしよりありし尓て故大
0106【むまれし時より】−更衣生シ時也
  納言いま者となる万て堂ゝこの」(14オ・14C)
0107【いまはとなるまて】−又遺言ニハ我ナクナリヌトモ大内ヘ宮ツカヘニマイラセヨト也(左)

  徒可への本いかならすと个させ多て万つれ
  なりぬとてくちおしうく徒をるなゝい
  さめを可れし可者は可/\しうゝしろみ
  へき(へき$)きましらひ者な可/\なるへき
  思給へな可ら堂ゝかのゆいこんを堂可へしと
  い多し多てしを尓あ万る万ての御心さしの
  よろ徒尓か多し个なき尓けなき者ちをかく
0108【かくし】−隠
  し徒ゝましらひふめりつ(りつ$)るをのそねみ
0109【つゝ】−乍
  布可く徒もりや春可らぬことおほくなりそ日」(14ウ・14H)

  つ(つ$)る尓よこ佐万なるやう尓て徒ゐ尓かく
  なりぬれ者かへりて者徒らくなむかしこき
  御心さしを思給へられ(られ$)これもわ里な
0110【御】−ミ
  やみ尓なむといひもやらすむせ可へり本と尓
  も布个ぬうへも志可なんわ可御心可らあ
0111【うへもしかなん】−命婦詞
0112【御】−ミ

  な可ち尓めおとろくほされしも可ゝ
  る満しきなり个りと者徒ら可り个るのち
0113【人のちきりに】−命婦北方ヘ返答ノ詞也
  きり尓な尓いさゝ可もを万遣多累
  者あらしとふを多ゝこののゆへ尓て」(15オ・14M)

  あ満多佐累ましきのうらみをおひし者て/\
  者かう(かう$)ゝち春てられてさめむき尓
  いとゝわろうか多くな尓なり者つ(つ$へ)るも佐き
  のゆ可しうなむとうちし徒ゝし本
  堂れ可ち尓のみお者しますとか多りて徒き
  せすなく/\い多う布遣ぬれ者こよひ
  春くさす御返(+り)うせむといそき万いる
  者い里可多のらきよう春みわ多れる尓」(15ウ・15D)

  いとすゝしくな(なり$てく佐むらのむしのこゑ/\
  もよ本しかほなるもいと堂ち者なれ尓くき
  のも
    春ゝむしのこゑのかきりを徒くしても
0114【すゝむしの】−ユケイノ命婦
  な可きあ可す布累なみ多盈も
  のりやらす
0115【のりやらす】−車
    伊とゝしくのねし个きあ佐ちふ尓
0116【いとゝしく】−更衣ノ母
  徒ゆをきそふるくものうへ」(16オ・15H)
0117【くものうへ人】−昇殿シタル人ヲ男女ニカヨハシ云也

  かこともきこえ徒へくなむとい者せふお
  しきをくりとあるへきお里尓もあらねハ
  堂ゝかの可多み尓とてかゝるようもやとの
  し多万へり个るさうそく飛とく多りくし
0118【御】(後出)−ミ
  あ遣のてうとめくふわ可き/\
  かなしきこと者佐ら尓もい者春王多りを
  佐ゆふ尓ならひていとさう/\しくうへの
  りさ万な日いてきこゆれ者とく万いり
0119【とくまいりたまはん事】−若宮ノ参給コト也
  多万者んをそゝのかしきこゆれとかく」(16ウ・15M)

  いま/\しきひ多て万つらむもいと
  きゝう可るへし又見たてまつらて志はしも
  あらむ者いとうしろめ多う日きこ江
  春可/\ともえ万いらせ多て万つり者ぬなり个リ
  命婦者満多おほとのこもらせ多ま者佐り
  遣ると(と=を)あ者れ尓多て万つるおまへの徒本
  せんさいのいとおもしろき佐可りなるを御覧
  春るやう尓て志のひや可尓尓くきかきりの
  女房四五人佐ふら者せ御物可多りせさせ」(17オ・16E)

  り个りこのころあ遣くれ御覧する
  恨哥亭子院のかゝせ伊勢つらゆき
0120【亭子院】−宇多院ノ御事也 テイジノイン
  尓よ万せへるや万とことの者をもゝろこしの
  う多をも多ゝそのすちをそ満くらこと尓せ
0121【まくらことに】−\(合点)
  させいとこ満や可尓ありさ万(+を)と者せ多万ふ
  あ者れなりつる志のひや可尓そう春御返(+り)
  御覧すれ者いともかしこき者をきらす
0122【いともかしこき】−北方文章
0123【所】−トコロ

  かゝるおほせこと尓徒遣てもかきくらすみ多り」(17ウ・16I)

  心地尓な
    あらき布せきしか个のかれしより
0124【あらき風】−更衣母返し
  こ者き可うへそ志徒きなとやう尓み多
  里可はしきをさめ佐り个るほとゝ御覧
  ゆるすへしいとかうしもえしとお
  ゝ徒むれと佐ら尓え志のひあへさせハす
  御覧し者しめし年月さへかきあ
  徒めよろ徒尓おほし徒ゝ遣られて
  まもほつ可な可りしをかくても月日者」(18オ・17@)

  へ尓个りとあさ満しうお本しめさる故大
  納言のゆいこんあや万多す徒可へのほい布可
  くもし多りしよろこひ者かひある佐万尓
  とこそ(+わ多り)つれい布かひなしやとうちの多万者
  せていとあ者れ尓おほしやるかくてもをのつ可ら
  わ可とおひいて者ゝ佐るへき徒いても
  里なむいのちな可くとこそねむせめなとの
  多ま者すかのをくり物御覧せさ春な
0125【なき人のすみか】−\(合点)
  の春み可多つねいて多り个ん志るしのかむ」(18ウ・17E)

  佐しならまし可はとおもほすもいと可ひな
    堂つねゆく万本ろしも徒て尓ても
0126【たつねゆく】−御門
0127【まほろし】−方士

  堂万のありかをそこと志るへく
  ゑ尓か个る(个る$き多る)楊貴妃のか多ち者いみしきゑしと
  いへとも布てかきりあり个れ者伊と尓本ひす
  くな大液芙蓉未央柳も遣尓かよひ
0128【大液芙蓉未央柳】−\(合点)
0129【央】−ワウ(右) ヤウ(左)

  堂里しか多ちをからめい多るよそひ者うる
0130【から】−唐
  わしうこそあり个めあり个め(あり个め$)な徒可しうらう
0131【らうたけなりし】−ホケ/\トシタル也
  た遣なりしをお本しいつる尓とりのいろ」(19オ・17J)

  尓もね尓もよそふへききあ佐ゆふの
  ことく佐尓者ねをならへをか者さむとち
0132【はねをならへ枝をかさはむ】−\(合点) 在天願作比翼鳥/在地願為連理枝(付箋E)
  きらせし尓かな者さり个るいのちのほと
  所徒きせ春うらめしきのをとむしのね尓
  つ遣てのみかなしうおほさるゝ尓弘徽殿
  尓者飛佐しく(く$う)うへのつ本ね尓もまうの本り
0133【うへの御つほねにもまうのほり給はす】−御門へ参給ハヌ也
0134【御】−ミ

  ハすのおもしろき尓布くる万てあそ
  飛をそるいと春さ万しうものしと
  きこしめ春このころの个しきを多て」(19ウ・18@)
0135【御】−ミ

  満つるうへ人女房と者か多者らい多しときゝ
0136【かたはらいたしときゝけり】−笑止ト思也
  个りいとをし多ちかと/\しきものし堂万ふ
0137【をしたちかと/\しき所ものしたまふ御方】−コウキテンノ御心カト/\シキ也
  御方尓て尓もあらすお本し个ちても
0138【事にもあらす】−御門ノ愁歎ヲ事ニモアラス思ケチ給也
  なるへしいりぬ
    のうへもなみ多尓くるゝ
  い可て春むらんあさちふのやとおほしめし
  やり徒ゝともしをかゝけ徒くしておきお
0139【ともし火をかゝけつくして】−\(合点) 夕殿蛍飛思悄然/秋燈挑盡未能眠(付箋F)
  者しま春右近の徒可さのとのゐのこゑ
0140【右近のつかさのとのゐ申】−\(合点)
0141【申】−マウシ

  きこゆる者うし尓なりぬるなるへし」(20オ・18E)

  めをおほしてよるのおとゝ尓いらせても
  満とろ万せと可多しあし多尓おきさせ
  とてもあくるも志らてとお本しいつる尓も
0142【あくるもしらて】−\(合点) 堂万す多れあくるもしらすねし/を/ゆめ尓もしと日可けきや(付箋G)
  あ佐まつりこと者>をこ多らせ日ぬへ可めり
0143【あさまつりことは】−\(合点) 春宵苦短日高起/従此君王不早朝(付箋H)
  ともきこしめさすあ佐可れ日の个しき
  布れさせ大正しののなと者いと
0144【正し】−床子
0145【おもの】−御膳

  者る可尓お本しめし多れ者はいせん尓佐布
  らふかきり者くるしき个しきを多て
0146【御】−ミ
  万つりな个く春へてち可う佐布らふかきりハ」(20ウ・18J)

  おとこいとわ里なきわさかなといひあ者せつゝ
  なけく佐るへきちきりこそはお者し満し个め
  そこらののそし里うらみをも者ゝからせ
  者すこの御事尓布れ多るをは堂う
  里をもうしな者せひいま者多かく世中
  のとをもおもほしすて堂るやう尓な
  ゆく者いとたい/\しきわさなりとのみ
0147【たい/\】−退々
  かとの多めし万てひきいて佐ゝめきな个き
0148【さゝめき】−耳言
  个り月日へてわ可万いり日ぬいとゝ」(21オ・19A)

  このらすきよら尓およすけへれ者
  いとゆゝしうお本し多里あくる春坊
  多満り尓もいと飛きこさ満本しうお本せ
  とうしろみ春へ起又世
  遣ひく満しきり个(り个$)れ者な可/\あやう
  くおほし者ゝかりていろ尓もい多させハす
  なりぬるを佐者可りお本し多れとかきりこそ
  里个れと(+の)もきこえ御心ちゐた
0149【世の人】−口伝
0150【御】−ミ

  まひぬかのを者くさむく」(21ウ・19F)
0151【をは】−ウハヲ云

  おほしゝつみてお者すらむ尓多に堂つねゆ
  かむとね可ひひしゝるし尓や徒ゐ尓うせ
  ぬれ者これをかなしひおほすことかきりな
  みこむ徒尓な給年れ者この多ひ者お
  ほしゝ里てこ飛な給年ころなれむつひ
  きこえ(つ=へ)るを多て万つりをくかなしひを
  なゝの多まひ个るいま者尓のみさふ
  らひゝつ尓なへ者布み者しめな
  せさせ尓志らす佐とうかしこく」(22オ・19K)

  お者すれ者あ満り(+尓)ろしき万て御覧
  いま者堂れも/\え尓くみ者し者ゝきみ
  なくて多尓らう多うしへとて弘徽殿
  尓もわたらせ給御とも尓者や可てみすの
  いれ多て万つりいみしきの布あ多可多きな
  里ともて者うちゑ万れぬへきさ満のし
  へれ者え佐し者な者す$)みこ多ち布
  多この者ら尓お者し万せとなすらひ
  へき多尓そ可り个る御方/\もかくれ者す」(22ウ・20B)

  万よりな万め可しう者徒かし个尓お者すれハ
  とお可しうゝちと个ぬあそひくさ尓た
  れも/\きこえへりわさとのかくもんハ
  さる尓てこと布えのね尓もくもゐをひゝ
  かし春へてい飛つゝけ者こと/\しうゝ多てそ
0152【こと/\しう】−イト
  な里ぬへきさ満なり个るそのころ
  こ満うとの満いれるな可にかしこき佐う尓ん
  あり个るをきこしめしてのうち尓めさむ
                 こと者」(23オ・20F)

  宇多のみ可とのいまし免あれ者いみし
0153【宇多のみかと】−\(合点) 寛平法皇
  う志のひてこのみこをこうろくわん尓徒可
0154【こうろくわん】−鴻臚舘
  者し多里うしろみ多ちて徒可う万つ累
  右大弁のやう尓おも者せてゐて多て万
0155【ゐて】−将
  徒る尓相人とろきてあ万多ゝひか多ふき
  あやしふ(ふ=ウ)く尓のおやとなりて帝王のかみな木
  くらゐ尓の本るへき佐うお者し万すのそ
  な多尓てれ者み多れうれ布るやあらむ
  おほやけのか多めとなりて天下を(を$)多すくる」(23ウ・20K)
0156【天】−アメ

  尓てれ者の佐う堂可ふへしといふ
  もいと佐えかしこき者可せ尓ていひ可ハ
  し堂るともなむいと遣うあり个る布
  みなと徒くりか者して个ふあすかへり佐り
  なむとする尓かくあ里可多き尓たいめん
  し堂るよろこひかへりて者かなしかるへき
  者へをおもしろく徒くり多る尓みこもいと
  あ者れなを徒くり多万へるをかき里
  なうめてたてまつりていみしきをくり
                   もを」(24オ・21B)

  佐ゝ遣多て万つるおほや遣よりもお本くの
  堂万者すをのつ可らひろこりてもら佐せ
  者ねと春宮ほちおとゝなとい可な
  尓可とおほしう多可ひてなんあり个累
  み可とかしこき御心尓や万と佐うをお本せて(て=て)
0157【御】−ミ
0158【やまとさう】−我国ニツタヘテ人ヲ相スル事也

  おほしより尓个るすちなれ者いまゝてこの
  をみこ尓もな佐せ多ま者佐リ个るを相人
  万ことにかしこかり个りとお本して無品の(の$)
  外尺イ)のよせなき尓て者多ゝよ者さし」(24ウ・21G)
0159【外尺】−ケ(戚=サヱ)(右) クワイセキ(左)

  わ可御世もいと佐多めなきを多ゝ尓てお
0160【人】−ウト
  や遣のうしろみをするなむゆくさきも
  堂のもしけなめ(め$)ることゝおほし佐多めて
  いよ/\みち/\の佐えをなら者さ(さ$)せきは
0161【さえ】−才
  こと尓かしこくて堂ゝ尓ハ伊とあ多らし
0162【人】−ウト
  遣れとみことなのう多可ひお
  ぬへくものしへ者春くえうのかしこき
0163【すくえう】−宿曜師事
  みちの尓かむ可へさせ尓もおしさ万尓
  せは源氏尓なし多て万つるへくお本し」(25オ・21L)
0164【源氏になしたてまつる】−姓ヲ給ハリテ只人ニナリ給事サカノ天皇ノ御時ヨリ始マレリ

  きて多里年月尓そへてみやす御事
  ほしわするゝお里なしなくさむやと
  るへき/\(+を)万いらせへとなすらひ尓お
  累ゝ多尓いと可多き可那とうとましうの
  みよろ徒尓おほしなりぬる尓先帝
0165【帝】−タイ
0166【四の宮】−薄雲ノ女院御事

  の可多ち春くれへるきこえ多可く
  お者します者ゝ后世尓なくかし徒きゝこ
  え多万ふをうへ尓さ布らふ内侍のす个者
  先帝御時尓てかの尓も志多」(25ウ・22C)

  う万いりなれ多り个れ者い者遣なくお
  万しゝより多て万つりいまも本の
  堂て万つりてうせ尓しみやす可多
  ち尓ゝ多万へる三代のみや徒可へ尓徒
0167【三代】−光孝 宇多 醍醐
  多者りぬる尓え多て万つり徒遣ぬを(を=尓)
  佐いののひめこそいとようお本えて
  おひいてさせへり个れあ里可多き
  多ち尓なんとそうし个る尓まこと尓や
  と御心と万りてねむころ尓きこえさせ个り」(26オ・22G)

  者ゝきさきあなろしや春宮女御
  いと佐可なくてきりつ本のかういのあらは尓
0168【いとさかなくて】−御心
  者可なくもてな佐れ尓し多めしもゆゝしう
0169【ゆゝしう】−アシキコト也
  とおほしつゝみて春可/\しうも本し多ゝ
  リ个る本と尓もうせ日ぬ本そ
  満尓てお者します尓多ゝわ可みこみこ$
  ちのしつら(おしつら$やう)きこえむといとねむ
  ころ尓きこえさせさ布らふ/\うしろ
0170【さふらふ】−候
  み多ちせうとの兵部卿のみこなとかく」(26ウ・22L)
0171【御せうと】−薄雲ノ女院ノアニ也
0172【みこ】−宮


  本そくてお者し万佐むより者うちすみ
0173【うちすみ】−内住
  せさせ御心もなくさむへくなとお本し
  なりて万いらせ多て万つりへリ布ちつ本と
  きこゆ遣尓可多ちありさ万あやしき万て
  そほえへるこれ者き者万佐り
  て日なしめて多くえおとしめきこえ
  者ねハう遣者りてあ可ぬことなしかれハ
0174【うけはりて】−承諾
0175【かれは】−更衣

  のゆるしきこ江さりし尓御心さしあや
  尓くなりしそ可しお本し万きるとは」(27オ・23C)

  な个れとをのつから御心う徒ろひてこよな(う$く)
  おほし(おほし$)なくさむやうなるもあ者れなるわさ
  なり个り源氏のきみ者あ多り佐り者ぬ
  を満して志けくわ多らせ給御方者え者ち
  あへ多ま者すいつれの御方我人尓おとらむ
  とおほい多るや者あるとり/\尓いとめて多け
  れとうちおとなへる尓いとわ可うゝ徒くし
0176【いとわかう】−藤壺
  个尓てせち尓かくれへとをのつ可らも
0177【もり見たてまつる】−源氏
  て万つる者ゝみやすもか个多尓おほえた」(27ウ・23H)

  ま者ぬをいとよう尓へりと内侍のすけの
  きこえ个るをわ可き御心地尓いとあ者れと
0178【わかき御心地】−源氏
  きこ江て徒ね尓万いら万ほしく(く=う)
0179【なつさひ】−ナレムツフ也
  佐ひ多て万つら者やとおほえうへも
  かきりなきもひとち尓てなうとみ
0180【とち】−共
  そあやしくよそへきこ江(江=え)(+へ)遍き心地
  春るなめしとお本さてらう多くしへ徒
0181【なめし】−無礼
0182【らうたく】−イタハル労

  ら徒き満みなとハ伊と(伊と$)ように多里しゆへ
0183【ゆへ】−由
  かよひてもに个な可らすなむなと」(28オ・23M)
0184【にけなからす】−ニクカラヌ也(左)

  きこえつけへれ者おさな心地尓も者可那き
  みち尓徒个てもさしをえ多て万
  徒る(る=リ)こよなよせきこ江(江=え)へれ者弘徽殿
  女御又このとも可そは/\しきゆへ
  うちそへてよりの尓くさも堂ちいてゝも
  しとおほし多り尓多くひなしと多て
  万徒り日な多可うお者する可多ち尓も
  尓本者しさ者堂とへむくう徒く
  し遣なるを飛可るきみときこゆ」(28ウ・24D)

  布ちつ本ならひほえもとり/\な
  かゝ(ゝ=ク)やくときこゆこのきみのわら
  す可多いとかへ万うくおほせと十二尓て
  御元服志多万ふゐ多ちお本しいとなみて
0185【ゐたち】−居ツタツツスル也
  かきりあるをそへさせひとゝせ
  の春宮御元服南殿尓てありしきしき
  よそほしかりしひゝき尓おとさ(さ$ら)ハす
  ところ/\のきやうなとくらつ可佐こく佐うゐん
                      なと」(29オ・24H)
0186【きやう】−饗
0187【こくさうゐん】−穀倉院


  おほやけこと尓徒可う万つれるおろそ可なる
  ことも(+古)とゝ里わきおほせことありてきよ
  らを徒くして徒可う万つれり(り=ル、ル$)者し万す
0188【おはします殿】−おハします殿ハ清涼殿
  殿の飛む可しの飛佐し飛む可しむき尓いし
0189【殿】−テン
0190【いし】−御門ノ御座事 イスト云モノヽコト

  堂てゝん佐の御座ひきいれの大臣
0191【火んさの御座】−クハン 元服スル人ノ座也 冠者
  御前尓ありさるの尓て源氏万いり
  徒らゆひ多まへる徒らつきか本の尓本ひ
  佐万かへ多万者むしけ也大蔵卿」(29ウ・25L)

  くらひ(ひ=ウ)と徒可う万つるいときよらなる
0192【御くしをそく】−理髪
  しをそくほとくるし遣なるをうへは
  みやす(+ハ)まし可はとおほしい徒る尓
  堂へ可多きを徒よくねむしかへさせ
  かうふりしやすみ尓万可て多万日て
  堂て万つりかへてお里て(お里て$)者いし多て万つり
  さ万尓み那み多おとしみ可と者
  多ましてえ志のひあへ者すおほし万き
  るゝおりもありつるむ可しのことゝりし」(30オ・25C)

  かなしくおほさるいとかうきひわ(わ=ハ)る本とハ
0193【きひわ】−イトケナキ心也
  あ遣越とりやとう堂可はしくお本され
0194【あけをとり】−元服シテワルクナルヲ云
  つるをあさ満しうゝ徒くしけさそ
  へリひきいれの大臣のみこはら尓堂ゝひと
  里かし徒きほむ女春宮よりも
0195女】−ムスメ 葵上事
0196【御】−ミ

  しきあるをおほしわつらふあり个る(+ハ)この
  きみ尓堂て万つらむの御心り个り
  尓も御个しき堂万者らせへり(へり$)个れハ」(30ウ・25G)
0197【御】−ミ

  佐ら者このお里のうしろみな可めるをそ
  飛布し尓もともよ本させ个れ者佐お
  し多里佐布らひ尓満可て/\お
0198【さふらひ】−内殿上事
  みきなと万いる本とみこ多ちのさのす
0199【みこたちの御さ】−\(合点)
  ゑ尓源氏徒きへりおとゝ个しき者み
  きこ江給事あれとの徒ゝまし起本と尓て
  とも可くも(+え)あへしらひきこ江者すお万へ
  より内侍せんしう个多満者り徒多へて
        おとゝ万いり多万ふへき」(31オ・25K)

  免しあれ者万いり給御ろくのうへの
0200【うへの命婦】−内命婦也
  命婦とりてたまふ志ろきお本うちき尓
  ひとく多りれいの事也御さ可徒きの
  徒いて尓
    伊ときなき者つもとゆひ尓な可き
0201【いときなき】−御門
  ちきる者むすひこめ徒や
  御心者えありておとろ可させ
0202【御】−ミ
    むすひつるも布可きもとゆひ尓」(31ウ・26B)
0203【むすひつる】−おとゝ

  こきむらさきのしあせす者
  とそうしてな可はしよりおりてふ多
  うしひ多りの徒可佐のむ万くら
0204【人】−ウト
  の堂可春へて堂万者りみ者しの
  もと尓みこ多ちかむ多ちめ徒らねて
  ろくとも志な/\尓堂万者り
  おまへのおりひつものこものな右大弁
0205【おまへ】−御
  なむう个多万者りて徒可う万つらせ个る」(32オ・26F)

  とんしきろくのからひつともなせき万て
0206【とんしき】−ツカミイヽトテキシキノ時シヨシニクメルハヽ也
  春宮御元服のおり尓もかす万佐れり
  な可/\かきりもなくい可めしうなんそ
  とゝのさと尓源氏のきみ万可て
  佐せ多万ふさ本う尓めつらしき万ても
  てかし徒きゝこえへりいときひ者尓て
  お者し多るをゆゝしうゝ徒くしときこ江
  へりきみ者春こしすくしへる本と/尓」(32ウ・26J)
0207【女きみはすこしすくし給へるほと】−源氏ハ十二葵ノ上ハ十六ナル事ヲ云

  いとわ可うお者すれ者に遣なく者つ可しと
  おほい多りこのとゝのほえいとやむ
  ことなき尓者ゝ宮内ひとつきさいは
  ら尓なむお者し个れ者い徒可多尓つ个ても
  いと者なや可(いと者なや可$ものあさや可)る尓このさへかくお者し
  そひぬれ者春宮ほち尓て徒ゐ尓
  世中を志りへきのおとゝのいきを日ハ
0208【をひ】−ホヒ
  尓もあらすをされへりともあ万多」(33オ・27@)

  はら/\尓ものし給宮者ら者蔵人
0209【蔵人少将】−ウトノ 後致仕太政大臣
  少将尓ていとわ可うお可しきをのおとゝ
  の可者いとよ可らねとえすくし
  者てかし徒き給四尓あ者せへり
  おとらすもてかし徒き多る者あら万本
  しきあ者ひとも尓な源氏
  者うへの徒ね尓めし満つ者せ者やすく
  佐とすミもえし者すのうち尓は」(33ウ・27D)

  堂ゝ布ちつ本のありさ満を堂く飛な
  しときこえて佐やうならむをこそ
  めにるくもお者し遣る可那お
  いとのゝきみいとおかし个尓かし徒可れ
  堂ると者ゆれと尓も徒可すおほえ
  ておさなきほとの(+ヒトヘ)こゝろひとつ(ひとつ$)尓かゝりて
  いとくるし起万てそ者し遣流おとな
  なてのち者あ里しやう尓みすの
                  尓も」(34オ・27H)

  いれ堂万者春あそひのお里/\こと布えの
  ね尓きこえ(こえ$き)かよひほの可なるこゑをな
  佐免尓てすみのミ(のミ$)こ能ましうおほえ
  五六日佐布らひてお本いとの尓二三日
  と堂え/\尓満可てへと堂ゝいま者お
  なきほと尓(+よろ徒)徒みなくおほしなして
  いとなみかし徒き支こ江給御方/\の/\
  世中尓をしなへ多らぬをえりとゝのへす」(34ウ・27L)

  具里て佐布ら者せ給御心尓徒くへき$)
  あそひをしおほな/\お本しい多徒く
0210【おほな/\】−ワサトカマシキ事
  尓者もとのしけいさをさうし尓て
0211【しけいさ】−淑景舎
0212【御】−ミ

  者ゝみやす御方(+/\)の/\満可てちらす
  佐布らはせ佐との殿者春りしきた
0213【さとの殿】−二条院
0214【すりしき】−修理職

  くみ徒可さ尓宣旨く多りてになうあら
  堂めつくらせ多万ふもとのこ多ちの多ゝ
  春万ひおしろきり个(り个$)るを」(35オ・28B)

  こゝろ飛ろく志なしてめて多く徒くりの
  志るかゝる尓おもふやうならむをすへ
  て春満者やとのみな遣可しうおほし
  わ多る飛かるきみといふ(+者こ満うとの
  めてきこえて徒遣多て万つり个るとそ
  飛徒多へ多るとなむ」(35ウ・28E)

【奥入01】對此如何   芙蓉似面柳如眉
【奥入02】在天願作比翼鳥 在地願為連理枝
【奥入03】堂万す多れあくるもしらすねし
     ゆめ尓もしと日可けきや
  書加之
【奥入04】寛平遺誡
     外蕃之人安所召見〈シム〉〈モノ〉簾中見之
     不可直〈タヽチニ〉〈ムカフ〉耳李環〈クワイニ〉朕已失〈セリ〉之慎之」(36オ)

     古哥也可用此一両首
     今更尓とふへきおもほえす
     やへむくらしてかとさせりてへ
     ときやとなれとくる
     やへむくら尓も1さハらさり个り
【奥入06】万(万=マ)くらこと尓 あ个くれのことくさといふ心也
【奥入07】か多ミの可むさし
     長恨哥 傳
     指碧衣女取金釵鈿合各折其中
     授使者曰為我謝太上皇謹献是物尋
」(36ウ)

【奥入08】ともしをかゝけつくして 同長恨哥
     夕殿螢飛思悄然 秋燈挑盡未能眠
【奥入09】あさ万つりことハをこ多らせ
     春夜苦〈イト〉〈ミシカクシテ〉日高〈タケテ〉 〈オク〉 従是〈コレヨリ〉君王不早朝〈アサマツリコトシタマ〉
【奥入10】右近のつ可さ能とのゐ
     亥一刻左近衛夜行官人初奏時終子四刻
     丑一刻右近衛宿申事至卯一刻
     内竪亥一刻奏宿簡
」(37オ)

【奥入11】延長七年二月十六日當代源氏二人元服垂
     母屋壁代撤晝御座其所立倚子御座孫庇第
     二間有引入左右大臣座其南第一間置円座二枚
     為冠者座
並西面円座前置円座又其下置理髪具皆盛柳筥先両大臣被召
     着円座引入訖還着本座次冠者二人退下
     於侍所改衣装此間両大臣給禄於庭前拝
     舞
不着出仙華門於射場着沓撤禄次冠者二人
     入仙華門於庭中拝舞退出参仁和寺帰参先是
     宸儀御侍所倚子親王左右大臣已下同候有盃酒御遊
」(37ウ)

     両源氏候此座候四位親王之次依仰也深更大臣已下給禄両源
     氏宅各調屯食廿具令分諸陣所々
【奥入12】天慶三年親王元服日屯食事
     内蔵寮十具穀倉院十具已上検校太政大臣仰調之衛府
     五具
督仰調之列立南殿版位東其東春興殿西立辛櫃
     十合件等物有宣旨自長楽門出入上卿仰弁官分所々
     史二人勾當其事仰検非違使令分給弁官三大政官二
     左右近三左右兵衛二左右衛門二蔵人所二内記所一薬殿一
     御書所一内竪所一校書殿一作物所一内侍所四
     采女一内教坊一糸所一匣殿一
」(38オ)

  (白紙)」(38ウ)