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桐壺

 

【凡例】

1.『源氏物語(明融本)T』(東海大学出版会 1990年6月)に拠って漢字仮名字母翻字した。

2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。

3.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。

4.変体仮名はその字母で翻字した。

5.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。

6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、それより元の漢字に近い字形には「と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し字形には「と付記した。

7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記や付箋等は小字体で表示した。

8.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。

 

「きりつ本」(題箋)

 

「上冷泉殿為和卿御息明融<定家卿字形/御似せ候哉>琴山(印)」(遊紙表貼紙)

 

  伊徒れの御時尓可・女御更衣あ満多佐布
  らひ个るな可尓・いとやむことなきゝは尓ハ
0001【いとやむことなきゝは】−きハめて上臈の品をいふ無止事と書
  あらぬ可・春くれてめきあり个り・はしめより
0002【すくれて時めき給ありけり】−桐壺更衣也
0003
【はしめより我はと】−桐壺更衣より前に入内して我こそ寵を得んと思也
  者とあ可りへる御方/\・め佐ま志き
0004【御方/\】−弘徽殿の女御抔也
0005
【めさましき】−妬さま也
  もの尓おとしめそねみ・おしほと・それより
0006【おとしめそねみ】−わひ消して妬む心也
0007
【おなしほと】−桐壺の更衣と同し位也
  らうの更衣多ち者・満してや春可ら
  あ佐ゆふの
徒可へ尓徒遣ても
0008【人の心をのみうこかし】−下臈の更衣嫉妬の心をうごがす也
  のみうこかし・うらみをおふ徒もり尓やあり个ん・」(1オ・5D)
0009【うらみをおふつもりに】−人の恨をおひぬれハ苦しき事ある習也

 

  伊とあ徒しくな里ゆき・物心ほそ遣尓佐と
0010【いとあつしく】−更衣也
0011
【あつしく】−異例かち也
0012
【さとかちなるを】−里住がちにある也
  かちなるを・いよ/\あ可春あ者れな尓お
0013【いよ/\あかす】−御門の御こゝろ
  ほして・のそし里をも(もえはゝからせ者す・
  
堂めし尓もな里ぬへきてな
  かむたち免・うへ
とも・あいなくめをそ
0014【かむたちめ】−公卿をいふ也
0015
【うへ人】−殿上人をいふ也
0016
【あいなく】−あぢきなき心也 愛なき也
  者めつゝ・いと万者ゆきほえなり・も
0017【いとまはゆき】−人のそねみてうちもむかはぬ形也
  ろこし尓もかゝることのおこり尓こそ
0018【かゝることの】−好色を愛する事也
0019
【おこりに】−起と驕と両儀也 起よし
  み堂れあし可り个れと・やう/\あめの志多尓も」(1ウ・5H)
0020【やう/\】−心をつくへし

 

  あちきなう・のもてなやみくさ尓なりて・
0021【あちきなう】−セン方ナキ心也
0022
【くさ】−種
  楊貴妃の堂めしも飛きいて徒へく(く=う)なりゆ
0023【楊】−\<合点> アクル
  く尓・いと者し多なきことおほ可れと・か多し
0024【かたしけなき御心はへ】−帝の御気色ひとつを頼むはかり也
  遣な御心者への堂くひなきをたのみ尓て
0025【御】−ミ
  満しらひ・ちゝ能(能$大納言者なくなりて・者ゝ
0026【ましらひ】−交の字也
0027
【大納言】−ヂヤウ 津云よみくせ口伝あり
0028
【はゝ北の方】−更衣の母きたの方をいふ事也
  む・い尓しへののよしある尓て・お
0029【人のよしあるにて】−故ありてたゝならぬ人にてといふ心也
0030
【おやうちくし】−句をきりてよむ也
  うちくし佐しあ多りて能おほえ者那や可な
0031【はなやか】−声花
  御方/\尓もい多うおとらす・な尓ことのきし
                     きをも」(2オ・5M)
0032【きしき】−儀式

  

てな个れと・ゝり多てゝ者可/\しき(き+)うしろ
  みしな个れ者・
と)あるより本そ
0033【事とある時は】−と晴わさなとある時なるべし
  遣・佐きの尓もちきりや布可ゝり个ん・
0034【さきの世にも】−\<合点>
  なくきよらなる・堂万のをのこみこ佐へう万れ
0035【きよらなる】−清の字也 ほめたる詞也
0036
【たま】−玉
0037
【たまのをのこみこ】−光源氏也 誕生也
  日ぬ・い徒し可ともとな可らせて・いそき万い
0038【いつしかと】−御門御心也 いつかと云心也
0039
【まいらせて御覧するに】−源氏の君を御門の御覧する也
  らせて御覧する尓・めつら可なるちこの可多ち
  な
り・のみこ者右大臣女御者ら尓てよせ
0040【よせ】−縁也
  越もくう多可ひなき満う个の尓もてか
               しつきゝこゆれと」(2ウ・6D)

 

・この尓ほひ尓者ならひへくもあら佐り个れ
  者お
ほ可多のやむことなもひ尓て・この
  を者わ多くし尓お
本しかし徒き給事かき
  里な
し・(し+者ゝ)者しめよりをしなへての・うへ徒可へ志
  へきゝは尓ハあら佐りき・お
ほえいとやむことな
  くすめ可し个れと・わ里なく万つ者させあ万り
0041【上すめかし】−シタリカホナル事也
  尓・佐るへきあそひのお里/\な尓こと尓も
  へあることの布し/\尓者まつ満うの本らせ
0042【ふし/\】−節々
0043
【まうのほらせ給】−マイリノホル也
  ・ある尓者おほとのこもり春くしてや可て」(3オ・6I)
0044【おほとのこもり】−寝事也
0045
【やかて】−其マヽ宮ツカヱ給也

  

佐布ら者せ多まひなとあな可ち尓おまへさらす
  も
てなさせしほと尓をのつ可らかろき
  尓もえしを・このみこう万れてのち者いと
  こと尓お
本しをきて多れ者・尓もようせす
0046【坊にも】−東宮ヲ申也
  者このみこのゐへきなめりとのみこの女御
  お
ほしう多かへり・より佐き尓万いり
  やむことな
もひなへてならす・みこ多ちな
0047【やむことなき】−か春志らす可よ者ひを/の者へ徒ゝな多ゝるやとのつ遊と/ならな(付箋01
  とも者し万せ者この御方いさめをのミそ」(3ウ・7@)
0048【この御方の御いさめ】−更衣ノ御イサメ也

 

  わつら者しうくるしう日きこえ佐せ
  个る・かしこき可个を者堂のみきこえな
可ら
  お
としめきすをもとめ給人者おほく・わ可
0049【わか身は】−更衣
  かよ者く者可那きあ里さ万尓て/\な
  日をそつ本ね者きりつ本あ万多
0050【御】−ミ
  の御方/\を春きさせてひ万なきまへわ
  多里尓御心を徒くしも个尓こと者り
0051【御】−ミ
  とえ多里・万うのほり多万ふ尓もあ万りうち
  しきるお
り/\者うちはしわ多とのゝ古ゝ」(4オ・7E)

  

かしこのみち尓あやしきわさを志徒ゝ・をくり
  む可への
のきぬの春そ堂へ可多くまさな
  こともあり・ある尓者え佐らぬめ多うのとを
  佐しこめこな
多かなをあ者せて者し多
  な
めわつら者せ給時もおほ可り・尓布れてかす
  志らすく累しきことのみ万され者いとい多う
  わひ多るをいとゝあ者れと御覧して・後涼殿
0052【涼】−ラウ
  より佐布らひ給更衣の佐うしをほ可に」(4ウ・7J)
0053【さうし】−ツホネ

 

  う徒させ多まひてうへ徒本ね尓たま者す・そ
  満してやらむ
し・このみこみ徒尓な
  里給年御者可万きのことの多て万つりし
  尓お
とらす・くらつ可佐おさめ殿を徒くして
0054【おとらす】−ルケチメナク
0055
【くらつかさ】−内蔵寮
0056
【おさめ殿】−納殿
  いみしうせさせ・それ尓つ个てものそ
  里の
みおほ可れと・このみこのおよすけもてお
0057【およすけ】−オトナヒタル也
  者春る可多ち者へあり可多くめつらしき万て
  え多万ふをえそねみあへ多ま者す・
  こゝろし里給人者かゝる
尓いて」(5オ・8A)

 

  お者するり个りとあ佐ましき万てめをお
  とろかし・そみやす者可那き
0058【みやす所】−桐壺更衣事
  心地尓わつらひてま可てなんとしをいと万
  らにゆるさせ者す・ころ徒ねのあつし
  尓なり多万へれ者めな
れてしはし
  よとのみの
多ま者する尓ゝ尓をもり
  堂ゝ五六日の本と尓いとよ者うな
れ者・はゝ
  な
く/\そうして満可てさせ多て万つり多万ふ・」(5ウ・8E)

  

かゝるおり尓もある満しき者ちもこそ徒可日
  してみこを者とゝめ堂て万つりて志のひてそ
  いて・かきりあれ者佐のみもえとゝめさせハす
  ・御覧し多尓をくらぬお
本つ可な佐をいふ
  
くおもほさる・いと尓本ひやか尓う徒くし遣
  のい多うお
もやせていとあ者れと
  日しみな
可ら尓いてゝもきこえやらす
0059【事にいてゝ】−\<合点>
  ある可なき可尓きえいりつゝも御覧
  春累尓きしゆくすゑお
本しめされす」(6オ・8J)

  

よろ徒のことをなく/\ちきりの多ま者すれと
  いらへもえきこえ者す・万みな
ともいとた
  ゆ遣尓ていとゝな
よ/\とわれ可の个しき尓て
  布し多れ者い可佐万尓とお
ほしめし万とハる
  ・てくる万の宣旨
との多ま者せてもいらせ
  て(て+ハ)さらにえゆるさせ者す・かきりあらむ
  みち尓もをくれさき多ゝしとちきらせ个るを・
  佐里ともうちすてゝ者えゆきやらしとの
た万
                  者するを」(6ウ・9A)

  

いといみしと多て万つりて
0060【いみし】−フカキ心
    かき里とてわ可るゝかなしき尓
  伊可万本しき者いの
ちなり个り・いと可く
  堂万へ満し可はといきも堂えつゝきこえ万
  ほし遣な
者ありけなれと・いとくるし
  遣尓堂ゆけな
れハかくな可ら・ともかくもな
0061【たゆけ】−タヘカタキ也
  むを御覧し者てむとおほしめす尓・遣ふ
0062【けふはしむへきいのり】−更衣ノ里ニテノ御祈也
  者しむへきいのりとも・佐るへき/\う个多万
                     者れる」(7オ・9E)

 

こよ飛よりときこえいそ可せ者わ里なくお
  ほしな
可ら満可てさせ多万ふ・むね(ね+のミ)徒と布
  堂可りて徒ゆ万とろ万れす・あ可しかねさせ
  ・徒可ひの遊きかふ本ともな
き尓いふせ
0063【いふせさ】−不審也
  さをかきりなくの多ま者せ徒るを・夜中うち
  春くる本と尓な
む堂え者てぬるとてな
  佐者个者・つ可ひもいとあえ(え$
遍)なくてかへり万
0064【あへなくて】−センナキ心歟
  いりぬ・きこしめす御心万とひ・な尓ことも」(7ウ・9J)
0065【御】−ミ

  

ほしめしわ可れすこもりお者しま春みこは
0066【みこは】−源氏君三歳ノ時也
  かくてもいと御覧せ万ほし遣れとかゝる本と尓
  佐布らひ・れいな
れ者ま可て
  むとす・な尓こと可あらむともおほし多らす
0067【なにことかあらむ】−御子ノ思心也
  ・佐布らふ/\のなき満とひうへもみ多
  の
ひ万なくな可れお者し万すをあやしと
  多て万つりへるを・よろしきこと尓多尓かゝ
  累わ可れのかな
し可らぬ者なきわさなるを
  ・ましてあ者れ尓い布可ひな
し・かきりあれハ」(8オ・10A)
0068【ましてあはれに】−死別声ヲノム ナカレモセヌ也

  

れいのさほう尓おさめ多て万つるを・者ゝ
  お
し个ふりに(に+)のほりなむとなきこ可れ
  てをくりの女房のくる万尓志多ひのり
  てお
多きといふ尓いとい可めしうそのさ本
0069【おたきといふ所】−御ヲクリノ女房車ニシタヒノリ給テ
  うしたる尓お者しつき多る心地い可者可り可ハ
  あり个む・ゝな
しきからをる/\お者する
  とお
もふ可・いとかひな个れ者はひ尓な
0070【はひになり】−\<合点>
  多万者むを多て万つりていま者なと」(8ウ・10E)

  

飛多ふる尓りなんと佐可しうの多万ひつれ
  とくる万よりもお
ちぬへう万ろひへは
  ・佐者徒・可しと/\も
てわつらひきこゆ
  ・よりつ可ひあり三位のくら飛をくり
0071【三位】−ミツ
  よし勅使きてそ宣命よむなんかな
0072【宣命よむ】−少納言墓所ニテヨムサホウアリ
  きことなり个る・女御と多尓い者せすなりぬる
  かあ可すくちお
しうお本さるれ者い万ひと
  きさみのを多尓とをくら
り个り」(9オ・10J)

  

・これ尓つ个てもにくみ給人/\おほかり物思
  志り者・佐万可多ちな
とのめて多か里し
  者せのな
多ら可にめやすくにくみか多(か多$)可り
  しことなといまそ
ほしいつる・佐万あしき
  
てなしゆへこそ春けなうそねみ
  志可・人からのあ者れ尓な
佐遣ありし御心を・
  うへの女房
ともこひしのひあへり・なくて
0073【なくてそとは】−\<合点>ある者ありのすさひ尓にく可り/き/なくてそハこ飛し可りける(付箋02
  そと者かゝるおり尓やとえ多り・者可なく」(9ウ・11@)

  

ころすきて・のちのわさなと尓もこ満(満+や)可尓
0074【のちのわさ】−弔ノコト也
  とふら者せ・ほと布る満ゝ尓せむ
  かな
しうお本さるゝ尓御方/\のとのゐな
0075【とのゐ】−宿直也
  も堂えて(堂えて$)し者す・堂ゝなみ多尓飛ちて
  あ可しくら佐せたまへハ多て万つるさへ
  徒ゆ个き秋也・なきあと万てのむねあ
0076【つゆけき秋也】−\<合点>
  くましかり个るほえかなとそ
0077【弘】−コウ
  徽殿と尓はゆるしなうの多万日个る・」(10オ・11D)

  

多て万つらせ尓もわ可こ飛
  し佐のみお
本しいて徒ゝ志多しき女房
  めのとな
とを徒可者しつゝ・ありさまをきこ
  しめす・わき多ちて・尓は可尓者たさむき
0078【野わきたちて】−清濁両説
0079
【はたさむき】−清濁両義清用
  ゆふくれのほと徒ねよりもおほしい徒るこ
  お
ほくてゆ个ひの命婦といふをつ可者須・ゆ
0080【ゆけひの命婦】−左衛門女
0081
【命婦】−\<合点>
  布徒くよのお可しき本と尓い多し多てさせ
  てや可てな
可めお者しますかう(う=カ)やうのおりハ」(10ウ・11I)

  

あそひなとせさせし尓ことなのねを
0082【こと】−琴
  かきならし・者可なくきこえいつるの者も
  より者ことな
里しけ者ひ・か多ちの可个
  尓徒とそひてお
本さるゝ尓(尓$)も・やみのうつゝ尓ハ
0083【やみのうつゝにハ】−\<合点>む者多満のやみのうつゝハ佐多可/なる/尓いくらも万佐らさり个り(付箋03
  とり个り(り$流、流#)・命婦かしこ尓満(満+可)て徒きて
  かと飛きいるゝより遣者ひあ者れ・やも

0084【かと】−門
0085
【ひきいるゝ】−車事也
  春みなれと飛とりのかしつき尓と可くつ
0086【人ひとりの御かしつき】−更衣一人ニテツクロイ給シ也
  くろひ堂てゝめや春きほと尓て春くしつる」(11オ・11M)
0087【めやすきほと】−目安程ハ無見苦ホト也<>

 

  ・やみ尓くれて布しゝ徒みへるほと尓もた可
  くな
わき尓いとゝあれ多る心地して月影
  者可りそやへむくら尓も佐者らす佐しいり多る
0088【やへむくらにも】−\<合点>とふきやとなれとくるハ/やへむくら尓もさハらさり个り(付箋04
  ミ那み越もて尓おろして者ゝもとみ尓え
0089【とみに】−急
  もの多ま者す・いまゝてと満り可いとうきを
0090【とまり侍】−ナカラウルコト也
  かゝる徒可ひのよもきふの徒ゆわ个いり尓つ
  遣てもいと者徒可しうな
んとて・遣尓え堂ふ万
0091【たふましく】−堪マシキ也
  しくな・万いりて者いとゝくるしうきもゝ
0092【まいりては】−命婦詞
  徒るやう尓なんと・内侍のす个のそうし志」(11ウ・12E)

  

を・ふ(ふ$ひ)多まへしらぬ心地尓も个尓こそ
  いと志のひかたう个れとてやゝ堂めらひて
  お
ほせこと徒多へきこゆ・志はし者ゆめ可とのみ
0093【しはしは】−勅院
  多とられしをやう/\ひしつ万る尓しもさむ
  へき
く堂へ可多き者・い可尓春へきわさ尓可
  とも
・とひあ者すへき多尓なきを・志のひて
  者満いり日な
んや・わ可のいとお本つ可な
  徒ゆ个きな
可尓春くしも・くるしうお本さ
  累ゝを・とく万いりへな
と・者可/\しうもの多万
                        者せ」(12オ・12J)

  

やら春・むせ可へらせつゝ・か徒者・よ者く
  多てまつるらんとお
ほしつゝ万ぬ尓しもあら
  ぬ个しきのくるし佐尓う个多ま者り(り+
も)者
  てぬやう尓てな
ん・満可てぬるとて・布み多て
0094【御ふみ】−勅書
  万つる・めもらぬ尓・かくかしこきおほせこ
0095【めも見え侍らぬに】−母君コト
  を飛可り尓てなん・とて見給・本とへ者春こしう
  ち満きるゝこともやと・万ち春くす月日尓そへて
  いと志のひ可多き者・わ里な
きわさ尓なん・い者
                  けなを(を$も)」(12ウ・13A)

 

伊可尓と日やりつゝもろとも尓者くゝ万ぬお
  徒可な
さを・いま者む可しのか多み尓なすら
  へても
し多満へなとこ満や可尓かゝせ多万へり
    宮木のゝ徒ゆ布きむすふのをと尓
  こ者き可も
とを日こそやれとあれと・え
  多万ひ者て春・いのちな
可佐のいと徒らう
  思給へ志らるゝ尓
者むこと多尓者つ
0096【松のおもはむこと】−\<合点> 北方住セ給アタリノ様也
  かしう思給れ者・もゝしき尓ゆき可ひ
  らむこと者満していと者ゝかりお
本くなん」(13オ・13G)

  

・かしこきおほせことを堂ひ/\う个多万者りな
  らみ徒可ら者えな
多万へ堂徒万しき・わ可
  者い可尓お
もほしゝる尓可万いり多ま者む
  の
みなんお本しいそくめれ者・ことはり尓かな
  しう多て万つりとうち/\尓多万ふ(ふ$へ)る
0097【うち/\に】−内/\也
  さ万をそうしへ・ゆゝしきれ者・かくて
0098【ゆゝしき】−イマ/\シキ心也
  お者し万すもい万/\しうか多し个なくなんと
  の
多万ふ・者おほとのこもり尓个り・多て万
  徒りてくはしう(う=
く)ありさ万もうし」(13ウ・13L)
0099【御】−ミ

 

  ら万本しきを・満ちお者しますらむ尓
  遣ぬへしとていそく・
れ万とふのやみも
0100【心のやみも】−北方詞 \<合点>ひとのおやの者や見尓あらねとも/こを思道ぬる(付箋05
  堂へ可多き・か多はしを多尓・者るく(く$流)尓きこえ
0101【たへかたき】−カタエハルヽ
0102
【かたはしをたに】−少ナリトモト也
0103
【きこえまほしう侍を】−物語聞マホシキ也
  満本しうを・わ多くし尓もと可尓万可て
0104【わたくしにも】−命婦私ニ也
  多まへころうれしく・おも多ゝしき徒い亭
0105【おもたゝしき】−面目シキ心也
  尓て堂ちよりを・かゝるせうそこ尓て
  多て万つる/\徒れな
きいのち尓も可な
  ・む万れしよりありし尓て故大
0106【むまれし時より】−更衣生シ時也
  納言いま者となる万て堂ゝこの」(14オ・14C)
0107【いまはとなるまて】−又遺言ニハ我ナクナリヌトモ大内ヘ宮ツカヘニマイラセヨト也<>

  

徒可への本いかならすと个させ多て万つれ・
  なりぬとてくちお
しうく徒をるなと・ゝい
  さめを可れし可者・は可/\しうゝしろみ
  へき(へき$
きましらひ者・な可/\なるへき
  思給へな
可ら・堂ゝかのゆいこんを堂可へしと
  い多し多てしを尓あ万る万ての御心さしの
  よろ徒尓か多し个な
き尓・けなき者ちをかく
0108【かくし】−隠
  し徒ゝ・ましらひふめりつ(りつ$)るを・のそねみ
0109【つゝ】−乍
  布可く徒もりや春可らぬことおほくなりそ日」(14ウ・14H)

  

つ(つ$)る尓よこ佐万なるやう尓て・徒ゐ尓かく
  なりぬれ者かへりて者徒らくな
む・かしこき
  御心さしを思給へられ(られ$
これもわ里な
0110【御】−ミ
  やみ尓なむといひもやらす・むせ可へり本と尓
  も布个ぬ・うへも志可な
んわ可御心可らあ
0111【うへもしかなん】−命婦詞
0112
【御】−ミ
  な可ち尓めおとろくほされしも・な可ゝ
  る満しきな
り个りと者徒ら可り个るのち
0113【人のちきりに】−命婦北方ヘ返答ノ詞也
  きり尓なん・尓いさゝ可もを万遣多累
  者あらしとふを・多ゝこの
のゆへ尓て」(15オ・14M)

  

あ満多佐累ましきのうらみをおひし者て/\
  者・かう(かう$
)ゝち春てられて・さめむき尓
  ・いとゝ・わろう・か多くな
尓なり者つ(つ$へ)るも・佐き
  の
ゆ可しうなむと・うちし徒ゝし本
  堂れ可ち尓のみお
者しますとか多りて徒き
  せすな
く/\い多う布遣ぬれ者・こよひ
  春くさす御返り)そうせむといそき万いる・
  者い里可多の
らきよう春みわ多れる尓」(15ウ・15D)

 

いとすゝしくなり(なり$)てく佐むらのむしのこゑ/\
  も
よ本しかほなるもいと堂ち者なれ尓くき
  のも

    春ゝむしの
こゑのかきりを徒くしても
0114【すゝむしの】−ユケイノ命婦
  な可きあ可す布累なみ多盈も
  の
りやらす
0115【のりやらす】−車
    伊とゝしくのねし个きあ佐ちふ尓
0116【いとゝしく】−更衣ノ母
  徒ゆをきそふるくものうへ」(16オ・15H)
0117【くものうへ人】−昇殿シタル人ヲ男女ニカヨハシ云也

  

かこともきこえ徒へくなむとい者せふ・お
  しきをくり
とあるへきお里尓もあらねハ
  ・堂ゝかの可多み尓とてかゝるようも
やとの
  し多万へり个る・さうそく飛とく多り・くし
0118【御】(後出)−ミ
  あ遣のてうとめくふ・わ可き/\
  かな
しきこと者・佐ら尓もい者春・王多りを
  佐ゆふ尓な
らひていとさう/\しくうへの
  りさ万な
日いてきこゆれ者とく万いり
0119【とくまいりたまはん事】−若宮ノ参給コト也
  多万者んをそゝのかしきこゆれと・かく」(16ウ・15M)

 

いま/\しきひ多て万つらむもいと
  きゝう可るへし・又見たてまつらて志はしも
  あらむ者いとうしろめ多う日きこ江
  ・春可/\ともえ万いらせ多て万つり者ぬな
り个り・
  命婦者満多お
ほとのこもらせ多ま者佐り
  遣ると(と=
を)あ者れ尓多て万つる・おまへの徒本
  せんさいのいとお
もしろき佐可りなるを御覧
  春るやう尓て志のひや可尓尓くきかきりの
  女房四五人佐ふら者せ御物可多りせさせ」(17オ・16E)

  

り个り・このころあ遣くれ御覧する
  恨哥亭子院のかゝせ伊勢つらゆき
0120【亭子院】−宇多院ノ御事也 テイジノイン
  尓よ万せへるや万とことの者をもゝろこしの
  う多をも多ゝそのすちをそ満くらこと尓せ
0121【まくらことに】−\<合点>
  させ・いとこ満や可尓ありさ万(万+を)と者せ多万ふ
  あ者れな
りつる志のひや可尓そう春・御返(返+り)
  御覧すれ者いともかしこき者をきらす
0122【いともかしこき】−北方文章
0123
【所】−トコロ
  かゝるおほせこと尓徒遣てもかきくらす・み多り」(17ウ・16I)

  

心地尓な
    あらき布せきしか个のかれしより
0124【あらき風】−更衣母返し
  こ者き可うへそ志徒きなとやう尓み多
  里可はしきを
さめ佐り个るほとゝ御覧
  ゆるすへし・いとかうしも
えしと・お
  ゝ徒むれと佐ら尓え志のひあへさせハす・
  御覧し者しめし年月
さへ・かきあ
  徒めよろ徒尓お
ほし徒ゝ遣られて・
  まも
ほつ可な可りしをかくても月日者」(18オ・17@)

 

  へ尓个りとあさ満しうお本しめさる・故大
  納言のゆいこんあや万多す・徒可へのほい布可
  くも
し多りしよろこひ者・かひある佐万尓
  とこそ
わ多り)つれ・い布かひなしやとうちの多万者
  せて・いとあ者れ尓お
ほしやる・かくてもをのつ可ら
  わ可
とおひいて者ゝ・佐るへき徒いても
  里な
むいのちな可くとこそねむせめなとの
  多ま者す・かのをくり物御覧せさ春な
0125【なき人のすみか】−\<合点>
  の春み可多つねいて多り个んるしのかむ」(18・17E)

佐しらまし可はとおもほすもいと可ひな
    堂つねゆく万本ろしも
徒て尓ても
0126【たつねゆく】−御門
0127
【まほろし】−方士
  堂万のありかをそこと志るへく
  ゑ尓か个る(个る$
き多る)楊貴妃のか多ち者いみしきゑしと
  いへとも布てかきりあり个れ者伊と・尓本ひす
  くなし・大液芙蓉未央柳も遣尓かよひ
0128【大液芙蓉未央柳】−\<合点>
0129
【央】−ワウ<> ヤウ<>
  堂里しか多ちを・からめい多るよそひ者・うる
0130【から】−唐
  わしうこそあり个めあり个め(あり个め$)・な徒可しう・らう
0131【らうたけなりし】−ホケ/\トシタル也
  た遣なりしを・お本しいつる尓とりのいろ」(19オ・17J)

  

尓もね尓もよそふへききあ佐ゆふの
  ことく佐尓ねをならへをかとち
0132【はねをならへ枝をかさはむ】−\<合点>在天願作比翼鳥/在地願為連理枝(付箋06
  きらせし尓かな者さり个るいのちのほと
  所徒きせ春うらめしき・のをとむしの
ね尓
  つ遣てのみかなしうお
ほさるゝ尓・弘徽殿
  尓者・飛佐しく(く$
う)うへのつ本ね尓も・まうの本り
0133【うへの御つほねにもまうのほり給はす】−御門へ参給ハヌ也
0134
【御】−ミ
  ハすのおもしろき尓布くる万てあそ
  飛をそ
る・いと春さ万しうものしと
  きこしめ春・このころの个しきを多て」(19ウ・18@)
0135【御】−ミ

  

満つる・うへ人女房と者か多者らい多しときゝ
0136【かたはらいたしときゝけり】−笑止ト思也
  个り・いとをし多ち・かと/\しきものし堂万ふ
0137【をしたちかと/\しき所ものしたまふ御方】−コウキテンノ御心カト/\シキ也
  御方尓て尓もあらす・お本し个ちても
0138【事にもあらす】−御門ノ愁歎ヲ事ニモアラス思ケチ給也
  なるへしいりぬ
    のうへもな
み多尓くるゝ
  い可て春むらんあさちふのやとお
ほしめし
  やり徒ゝともしをかゝけくして
きお
0139【ともし火をかゝけつくして】−\<合点>夕殿蛍飛思悄然/秋燈挑盡未能眠(付箋07
  者しま春・右近徒可さのとのゐのこゑ
0140【右近のつかさのとのゐ申】−\<合点>
0141
【申】−マウシ
  きこゆる者・うし尓なりぬるなるへし・」(20オ・18E)

  

めをおほしてよるのおとゝ尓いらせても
  満とろ万せと可多し・あし多尓お
きさせ
  とてもあくるもらてと・お
本しいつる尓も
0142【あくるもしらて】−\<合点>堂万す多れあくるもしらすねし/を/ゆめ尓もしと日可けきや(付箋08
  まつりことをこらせ日ぬへ可めり・
0143【あさまつりことは】−\<合点>春宵苦短日高起/従此君王不早朝(付箋09
  ともきこしめさすあ佐可れ日の个しき
  布れさせて・大正しの
のなと者いと
0144【正し】−床子
0145
【おもの】−御膳
  者る可尓お本しめし多れ者はいせん尓佐布
  らふかきり者くるしき个しきを多て
0146【御】−ミ
  万つりな个く・春へてち可う佐布らふかきりハ」(20ウ・18J)

 

  おとこいとわ里なきわさかなといひあ者せつゝ
  な
けく・佐るへきちきりこそはお者し満し个め
  そこらののそし里うらみをも者ゝからせ
  者す・この
御事尓布れ多るをは堂う
  里をもうしな
者せひいま者多かく世中
  の
とをもおもほしすて堂るやう尓な
  ゆく者・いとたい/\しきわさな
りとのみ
0147【たい/\】−退々
  かとの多めし万てひきいて佐ゝめきな个き
0148【さゝめき】−耳言
  个り・月日へてわ可万いり日ぬいとゝ」(21オ・19A)

  

このらすきよら尓およすけへれ者
  いとゆゝしうお
本し多里・あくる春坊
  多満り尓もいと飛きこさ満本しうお
本せ
  とうしろみ春へ起
又世
  遣ひく満しき
り个(り个$)れ者な可/\あやう
  くお
ほし者ゝかりていろ尓もい多させハす
  な
りぬるを佐者可りお本し多れとかきりこそ
  里个れと
の)もきこえ女御御心ちゐた
0149【世の人】−口伝
0150
【御】−ミ
  まひぬ・かのを者くさむく」(21ウ・19F)
0151【をは】−ウハヲ云

  

ほしゝつみてお者すらむ尓多に堂つねゆ
  かむとね可ひひしゝるし尓や徒ゐ尓うせ
  ぬれ者これをかな
しひおほすことかきりな
  ・みこむ徒尓な
給年れ者この多ひ者お
  ほしゝ里てこ飛な給年ころなれむつひ
  きこえつ(つ=
へ)るを多て万つりをくかなしひを
  な
ゝの多まひ个る・いま者尓のみさふ
  らひ・な
ゝつ尓なへ者布み者しめな
  せさせ尓志らす佐とうかしこく」(22オ・19K)

  

者すれ者あ満り(り+尓)おろしき万て御覧す・
  いま者堂れも/\え尓くみ者し・者ゝきみ
  な
くて多尓らう多うしへとて弘徽殿
  尓もわたらせ給御とも尓者や可てみすの
  いれ多て万つり・いみしきの布あ多可多きな

  里ともて者うちゑ万れぬへきさ満のし
  へれ者え佐し者な
者す・)みこ多ち布
  多この
者ら尓お者し万せとなすらひ
  へき多尓そ
可り个る・御方/\もかくれ者す」(22ウ・20B)

  

万よりな万め可しう者徒かし个尓お者すれハ
  とお
可しうゝちと个ぬあそひくさ尓た
  れも/\きこえへり・わさとのかくもんハ
  さる尓てこと布えのね尓もくも
ゐをひゝ
  かし春へてい飛つゝけ者こと/\しうゝ多てそ
0152【こと/\しう】−イト
  な里ぬへきさ満なり个る・そのころ
  こ満うとの
満いれるな可にかしこき佐う尓ん
  あり个るをきこしめしてのうち尓めさむ

                 と者」(23オ・20F)

  

宇多のみ可とのいまし免あれ者いみし
0153【宇多のみかと】−\<合点> 寛平法皇
  う志のひてこのみこをこうろくわん尓徒可
0154【こうろくわん】−鴻臚舘
  者し多里・うしろみ多ちて徒可う万つ累
  右大弁のやう尓お
も者せてゐて多て万
0155【ゐて】−将
  徒る尓・相人とろきてあ万多ゝひか多ふき
  あやしふ(ふ=
ウ)く尓のおやとなりて帝王のかみな
  くらゐ尓の
本るへき佐うお者し万すのそ
  な
多尓てれ者み多れうれ布るやあらむ
  お
ほやけのか多めとなりて天下を(を$)多すくる」(23ウ・20K)
0156【天】−アメ

  

尓てれ者の佐う堂可ふへしといふ
  もいと佐えかしこき者可せ尓ていひ可ハ
  し堂るともな
むいと遣うあり个る布
  みな
と徒くりか者して个ふあすかへり佐り
  なむとする尓かくあ里可多き尓たいめん
  し堂るよろこひかへりて者かな
しかるへき
  者へをお
もしろく徒くり多る尓・みこもいと
  あ者れな
を徒くり多万へるをかき里
  な
うめてたてまつりていみしきをくり
                   もを」(24オ・21B)

  

佐ゝ遣多て万つる・おほや遣よりもお本くの
  堂万者す・をの
つ可らひろこりてもら佐せ
  者ねと春宮
ほちおとゝなとい可な
  尓可とお
ほしう多可ひてなんあり个累
  み可とかしこき御心尓や万と佐うをお
本せて(て=て)
0157【御】−ミ
0158
【やまとさう】−我国ニツタヘテ人ヲ相スル事也
  おほしより尓个るすちなれ者いまゝてこの
  をみこ尓もな
佐せ多ま者佐り个るを相人
  万ことにかしこかり个りとお
本して無品の(の$
  外尺
イ)のよせなき尓て者多ゝよ者さし」(24ウ・21G)
0159【外尺】−ケ(戚=サヱ)<> クワイセキ<>

  

わ可御世もいと佐多めなきを多ゝ尓てお
0160【人】−ウト
  や遣のうしろみをするなむゆくさきも
  堂のもしけな
め(め$)ることゝおほし佐多めて・
  いよ/\みち/\の佐えをな
ら者さ(さ$)せ・きは
0161【さえ】−才
  こと尓かしこくて堂ゝ尓ハ伊とあ多らし
0162【人】−ウト
  遣れとみことなのう多可ひお
  ぬへく・も
のしへ者・春くえうのかしこき
0163【すくえう】−宿曜師事
  みちの尓かむ可へさせ尓もおしさ万尓
  せは・源氏尓な
し多て万つるへくお本し」(25オ・21L)
0164【源氏になしたてまつる】−姓ヲ給ハリテ只人ニナリ給事サカノ天皇ノ御時ヨリ始マレリ

 

  きて多里・年月尓そへてみやす御事
  
ほしわするゝお里なし・なくさむやと
  るへき/\(/\+
を)万いらせへとなすらひ尓お
  累ゝ多尓いと可多き可那とうとましうの
  みよろ徒尓お
ほしなりぬる尓・先帝
0165【帝】−タイ
0166
【四の宮】−薄雲ノ女院御事
  の可多ち春くれへるきこえ多可く
  お
者します者ゝ后世尓なくかし徒きゝこ
  え多万ふをうへ尓さ布らふ内侍のす个者
  先帝御時尓てかの
尓も志多」(25ウ・22C)

 

  う万いりなれ多り个れ者い者遣なくお
  万しゝより多て万つりいまも本の
  堂て万つりてうせ尓しみやす可多
  ち尓ゝ多万へる三代のみや徒可へ尓徒
0167【三代】−光孝 宇多 醍醐
  多者りぬる尓え多て万つり徒遣ぬを(を=尓)・き
  佐いののひめこそいとようお
本えて
  お
ひいてさせへり个れあ里可多き
  多ち尓な
んとそうし个る尓まこと尓や
  と御心と万りてねむころ尓きこえさせ个り・」(26オ・22G)

  

者ゝきさきあなろしや春宮女御
  いと佐可なくてきりつ本のかういのあらは尓
0168【いとさかなくて】−御心
  者可なくもてな佐れ尓し多めしもゆゝしう
0169【ゆゝしう】−アシキコト也
  とおほしつゝみて春可/\しうも本し多ゝ
  り个る本と尓もうせ日ぬ・本そ
  満尓てお
者します尓多ゝわ可みこ(みこ$)多
  ちの
しつら(おしつら$やう)尓きこえむといとねむ
  ころ尓きこえさせさ布らふ/\うしろ
0170【さふらふ】−候
  み多ちせうとの兵部卿のみこなとかく」(26ウ・22L)
0171【御せうと】−薄雲ノ女院ノアニ也
0172
【みこ】−宮

  

本そくてお者し万佐むより者・うちすみ
0173【うちすみ】−内住
  せさせ御心もなくさむへくなとお本し
  な
りて万いらせ多て万つりへり・布ちつ本と
  きこゆ・遣尓可多ちありさ万あやしき万て
  そ
ほえへる・これ者き者万佐り
  て日な
しめて多くえおとしめきこえ
  者ねハう遣者りてあ可ぬことな
し・かれハ
0174【うけはりて】−承諾
0175
【かれは】−更衣
  のゆるしきこ江さりし尓御心さしあや
  尓くな
りしそ可し・お本し万きるとは」(27オ・23C)

  

个れとをのつから御心う徒ろひてこよなう(う$く)
  お
ほし(おほし$)なくさむやうなるもあ者れなるわさ
  な
り个り・源氏のきみ者あ多り佐り者ぬ
  を満して志けくわ多らせ給御方者・え者ち
  あへ多ま者す・いつれの御方我人尓お
とらむ
  とお
ほい多るや者ある・とり/\尓いとめて多け
  れとうちお
となへる尓いとわ可うゝ徒くし
0176【いとわかう】−藤壺
  个尓てせち尓かくれへとをのつ可らも
0177【もり見たてまつる】−源氏
  て万つる・者ゝみやすもか个多尓おほえた」(27ウ・23H)

  

ま者ぬをいとよう尓へりと内侍のすけの
  きこえ个るをわ可き御心地尓いとあ者れと
0178【わかき御心地】−源氏
  きこ江て徒ね尓万いら万ほしく(く=う)な
0179【なつさひ】−ナレムツフ也
  佐ひ多て万つら者やとおほえ・うへも
  かきりなき
もひとち尓て・なうとみ
0180【とち】−共
  そあやしくよそへきこ江つ(つ+へ)遍き心地
  春る・な
めしとお本さてらう多くしへ徒
0181【なめし】−無礼
0182
【らうたく】−イタハル労
  ら徒き満みなとハ伊と(伊と$)ように多里しゆへ
0183【ゆへ】−由
  かよひて給)もに个な可らすなむなと」(28オ・23M)
0184【にけなからす】−ニクカラヌ也<>

  

きこえつけへれ者・おさな心地尓も者可那き
  
みち尓徒个てもさしを・え多て万
  徒る(る=
り)こよなよせきこ江へれ者・弘徽殿
  女御このとも
可そは/\しきゆへ
  うちそへてよりの尓くさも堂ちいてゝも

  しとお
ほし多り・尓多くひなしと多て
  万徒り日・な
多可うお者する可多ち尓も
  尓本者しさ者堂とへむ
くう徒く
  し遣な
るを・飛可るきみときこゆ」(28ウ・24D)

  

布ちつ本ならひほえもとり/\な
  かゝ(ゝ=
ク)やくときこゆ・このきみのわら
  す可多いとかへ万うくお
ほせと十二尓て
  御元服志多万ふ・ゐ多ちお
本しいとなみて
0185【ゐたち】−居ツタツツスル也
  かきりあるをそへさせ・ひとゝせ
  の
春宮御元服南殿尓てありしきしき
  よそほしかりしひゝき尓お
とさ(さ$ら)せハす・
  ところ/\のきやうな
とくらつ可佐こく佐うゐん
                      と」(29オ・24H)
0186【きやう】−饗
0187
【こくさうゐん】−穀倉院

 

  おほやけこと尓徒可う万つれるおろそ可なる
  ことも(も+
古)そとゝ里わきおほせことありてきよ
  らを徒くして徒可う万つれり(り=
ル、ル$)・お者し万す
0188【おはします殿】−おハします殿ハ清涼殿
  殿の飛む可しの飛佐し飛む可しむき尓いし
0189【殿】−テン
0190
【いし】−御門ノ御座事 イスト云モノヽコト
  堂てゝん佐の御座・ひきいれの大臣
0191【火んさの御座】−クハン 元服スル人ノ座也 冠者
  御前尓あり・さるの尓て源氏万いり
  徒らゆひ多まへる徒らつきか本の尓本ひ

  佐万かへ多万者むしけ大蔵卿」(29ウ・25L)

 

  くらひ(ひ=ウ)と徒可う万つるいときよらなる
0192【御くしをそく】−理髪
  しをそくほとくるし遣なるを・うへは
  みやす
ハ)まし可はとおほしい徒る尓
  堂へ可多きを徒よくねむしかへさせ
  かうふりして・やすみ尓万可て多万日て
  堂て万つりかへてお
里て(お里て$)者いし多て万つり
  さ万尓み那
み多おとし・み可と者
  多ましてえ志のひあへ者すお
ほし万き
  るゝお
りもありつるむ可しのことゝりし」(30オ・25C)

  

かなしくおほさる・いとかうきひわ(わ=ハ)なる本とハ
0193【きひわ】−イトケナキ心也
  あ遣越とりやとう堂可はしくお本され
0194【あけをとり】−元服シテワルクナルヲ云
  つるを・あさ満しうゝ徒くしけさそ
  へりひきいれの大臣のみこはら尓堂ゝひと
  里かし徒き・お
ほむ女春宮よりも
0195【女】−ムスメ 葵上事
0196
【御】−ミ
  しきあるをおほしわつらふあり个る(る+ハ)この
  きみ尓堂て万つらむの御心
り个り・
  尓も
御个しき堂万者らせへり(へり$)个れハ」(30ウ・25G)
0197【御】−ミ

 

  佐ら者このお里のうしろみな可めるをそ
  飛布し尓もとも
よ本させ个れ者佐お
  し多里・佐布らひ尓満可て/\お
0198【さふらひ】−内殿上事
  みきなと万いる本と・みこ多ちのさのす
0199【みこたちの御さ】−\<合点>
  ゑ尓源氏徒きへり・おとゝ个しき者み
  きこ江給事あれとの徒ゝまし起本と尓て
  とも
可くも(も+え)あへしらひきこ江者す・お万へ
  より内侍せんしう个多満者り徒多へて
        とゝ万いり多万ふへき」(31オ・25K)

  

免しあれ者万いりろくのうへの
0200【うへの命婦】−内命婦也
  命婦とりてたまふ志ろきお本うちき尓
  ひとく多りれいの事也御さ可徒きの

  徒いて尓
    伊ときなき者つもとゆひ尓な
可き
0201【いときなき】−御門
  ちきる者むすひこめ徒や
  御心者えありてお
とろ可させ
0202【御】−ミ
    むすひつるも布可きもとゆひ尓」(31ウ・26B)
0203【むすひつる】−おとゝ

  

こきむらさきのしあせす者
  とそうして・な
可はしよりおりてふ多
  うし・ひ多りの徒可佐のむ万くら
0204【人】−ウト
  の堂可春へて堂万者り・み者しの
  もと尓みこ多ちかむ多ちめ徒らねて
  ろくとも志な
/\尓堂万者り・そ
  お
まへのおりひつものこものな右大弁
0205【おまへ】−御
  なむう个多万者りて徒可う万つらせ个る」(32オ・26F)

 

  とんしきろくのからひつともなせき万て
0206【とんしき】−ツカミイヽトテキシキノ時シヨシニクメルハヽ也
  春宮御元服のおり尓もかす万佐れり・
  な
可/\かきりもなくい可めしうなん・そ
  
とゝのさと尓源氏のきみ万可て
  佐せ多万ふさ本う尓めつらしき万ても

  てかし徒きゝこえへり・いときひ者尓て
  お
者し多るをゆゝしうゝ徒くしときこ江
  へり・きみ者春こしすくしへる本と
                    尓」(32ウ・26J)
0207【女きみはすこしすくし給へるほと】−源氏ハ十二葵ノ上ハ十六ナル事ヲ云

 

  いとわ可うお者すれ者に遣なく者つ可しと
  お
ほい多り・このとゝのほえいとやむ
  ことな
き尓・者ゝ宮内ひとつきさいは
  ら尓な
むお者し个れ者い徒可多尓つ个ても
  いと者なや可(いと者なや可$
のあさや可)なる尓・このさへかくお者し
  そひぬれ者・春宮
ほち尓て徒ゐ尓
  世中を志りへきのお
とゝのいきを日ハ
0208【をひ】−ホヒ
  尓もあらすをされへり・ともあ万多」(33オ・27@)

 

  はら/\尓ものし者ら者蔵人
0209【蔵人少将】−ウトノ 後致仕太政大臣
  少将尓ていとわ可うお可しきを・のおとゝ
  の
可者いとよ可らねとえすくし
  者てかし徒き給四尓あ者せへり・
  お
とらすもてかし徒き多る者あら万本
  しきあ者ひとも尓な
ん・源氏
  者うへの徒ね尓めし満つ者せ者やすく
  佐とすミもえし者す・のうち尓は」(33ウ・27D)

  

堂ゝ布ちつ本のありさ満を堂く飛な
  しときこえて佐やうならむをこそ
  めにる
くもお者し遣る可那・お
  いとのゝきみいとお
かし个尓かし徒可れ
  堂ると者ゆれと尓も徒可すお
ほえ
  てお
さなきほとの(の+ヒトヘ)こゝろひとつ(ひとつ$)尓かゝりて
  いとくるし起万てそ
者し遣流・おとな
  な
てのち者あ里しやう尓みすの
                  尓も」(34オ・27H)

  

いれ堂万者春・あそひのお里/\こと布えの
  ね尓きこえ(こえ$
き)かよひほの可なるこゑをな
  佐免尓てすみのミ(のミ$
)こ能ましうおほえ
  五六日佐布らひてお
本いとの尓二三日
  と堂え/\尓満可てへと堂ゝいま者お
  なきほと尓(尓+
よろ徒)徒みなくおほしなして
  いとな
みかし徒き支こ江御方/\の/\
  世中尓をしな
へ多らぬをえりとゝのへす」(34ウ・27L)

  

里て佐布ら者せ御心尓徒くへき
  あそひをしお
ほな/\お本しい多徒く・
0210【おほな/\】−ワサトカマシキ事
  尓者もとのしけいさをさうし尓て・
0211【しけいさ】−淑景舎
0212
【御】−ミ
  者ゝみやす御方/\)の/\満可てちらす
  佐布らはせ・佐との殿者春りしきた
0213【さとの殿】−二条院
0214【すりしき】−修理職
  くみ徒可さ尓宣旨く多りてになうあら
  堂めつくらせ多万ふ・も
とのこ多ちの多ゝ
  春万ひお
しろきり个(り个$)るを」(35オ・28B)

 

  こゝろ飛ろく志なしてめて多く徒くりの
  志る・かゝる尓お
もふやうならむをすへ
  て春満者やとの
みな遣可しうおほし
  わ多る・飛かるきみといふ(ふ+
者こ満うとの
  めてきこえて徒遣多て万つり个るとそ
  飛徒多へ多るとな
む」(35ウ・28E)

 

【奥入01対此如何 芙蓉似面柳如眉
【奥入02在天願作比翼鳥 在地願為連理枝
【奥入03】堂万す多れあくるも
しらすねし
     ゆめ尓もしと日可けきや

書加之
【奥入04寛平遺誡
     外蕃之人安所召見<シム><モノ>在簾中見之
     不可直<タヽチニ><ムカフ>耳李環<クワイニ>朕已失<セリ>之慎之」(36オ)

 

【奥入05古哥也可用此一両首>(小字)
     今更尓とふへき
おもほえす
     やへむくらしてかとさせりてへ
     とふ
きやとなれとくる
     やへむくら尓も
さハらさり个り
【奥入06】万(万=
マ)くらこと尓 あ个くれのことくさといふ心也
【奥入07】か多ミの可むさし
     長恨哥 傳
     指碧衣女取金釵鈿合各折其中
     授使者曰為我謝太上皇謹献是物尋
」(36ウ)

 

【奥入08ともしをかゝけつくして 同長恨哥
     夕殿螢飛思悄然 秋燈挑盡未能眠
【奥入09】あさ万つりことハをこ多らせ
     春夜苦<イト><ミシカクシテ>日高<タケテ> <オク> 従是<コレヨリ>君王不早朝<アサマツリコトシタマ>
【奥入10右近のつ可さ能とのゐ
     亥一刻左近衛夜行官人初奏時終子四刻
     丑一刻右近衛宿申事至卯一刻
     内竪亥一刻奏宿簡
」(37オ)

 

【奥入11長七年二月十六日當代源氏二人元服垂
     母屋壁代撤晝御座其所立倚子御座孫庇第
     二間有引入左右大臣座其南第一間置円座二枚
     為冠者座
並西面円座前置円座又其下置理髪具皆盛柳筥先両大臣被召
     着円座引入訖還着本座次冠者二人退下
     於侍所改衣装此間両大臣給禄於庭前拝
     舞
不着
出仙華門於射場着沓撤禄次冠者二人
     入仙華門於庭中拝舞退出参仁和寺帰参先是
     宸儀御侍所倚子親王左右大臣已下同候有盃酒御遊
」(37ウ)

 

     両源氏候此座候四位親王之次依仰也深更大臣已下給禄両源
     氏宅各調屯食廿具令分諸陣所々
【奥入12天慶三年親王元服日屯食事
     内蔵寮十具穀倉院十具已上検校太政大臣仰調之衛府
     五具
督仰調之列立南殿版位東其東春興殿西立辛櫃
     十合件等物有宣旨自長楽門出入上卿仰弁官分所々
     史二人勾當其事仰検非違使令分給弁官三大政官二
     左右近三左右兵衛二左右衛門二蔵人所二内記所一薬殿一
     御書所一内竪所一校書殿一作物所一内侍所四
     采女一内教坊一糸所一匣殿一
」(38オ)

 

(白紙)」(38ウ)