自筆本奥入First updated 7/14/2002(ver.1-1)
Last updated 5/27/2007(ver.2-1)
渋谷栄一翻字(C)

  

総角

《翻刻資料》
凡例
1 底本には、大橋寛治氏蔵本『源氏物語 奥入』(複刻日本古典文学館 昭和46年10月)を使用し、自筆本の欠脱は、高野本(日本古典文学影印叢刊19)により、また判読不明箇所等は、池田亀鑑『源氏物語大成』巻七「研究資料篇」所収の「奥入(第二次)定家自筆本」を参照した。ただし、巻尾本文は省略した。
2 頁数は、池田亀鑑『源氏物語大成』巻七「研究資料篇」に従って、復元した「自筆本奥入」の頁数となっている。
3 青表紙本「源氏物語」の「奥入・付箋」に見られる注記には、その注記番号を付けた。
4 行間書き入れ及び割注等は< >で記した。改行は/で記した。朱書は、その語句の冒頭に<朱>と記した。
5 墨筆による末尾本文の削除符号や朱筆による掛点符号は、それぞれ<墨>\、<朱>\と記した。
6 私による注記や定家自筆本、明融臨模本、大島本等において、奥入また付箋に引用されている注釈は( )で記した。
7 本文の校訂記号は次の通りである。
 $(ミセケチ)・#(抹消)・+(補入)・&(ナゾリ)・=(併記)・△(不明文字)
( )の前の文字と( )内の記号の前の文字は訂正前の本文を表し、記号の後の文字はその訂正後の本文を表す。
8 訓点や送り仮名は< >で記した。但し、返り点、朱点は省略した。
9 作字した文字は[ ]で記した。
10 各丁の終わりには」の印と丁数とその表(オ)裏(ウ)を記した。

角総(後書加)

01 身をうしと思ふにきえぬ物なれは
  かくてもへぬるものにそありける
02 よりあはせてなくなるこゑをいとにして
  わかなみたをはたまにぬかなむ
     <七条后崩之時伊勢哥也>
03 いとによる物と(と+は)なしにわかれちの
  心ほそくもおもほゆる哉
04 かたいとをこなたかなたによりかけて
05 おく山のはれぬけしきそわひ人の
  そてのいろをはいとゝましける」107ウ
06 王昭君 朝綱卿
  辺風吹断秋心緒隴水流添夜/涙行
07 <文集>
  晨鶏再<フタゝヒ>鳴<テ>残月没<インヌ>征馬連<シキリニ>嘶<テ>/行人出
08 角総<呂>
  安介万支也止宇々々比呂波可利や
  止宇々々左加利天祢田礼止毛万呂
  比安比介利と宇々々加与利安比
  介利と宇々々(大島本奥入01)」108オ
09 いなせともいひはなたれすうき物は
  身を心ともせぬ世なりけり 伊勢
10 世中をうしといひてもいつくにか
  身を(を+は)かくさむ山なしの花
11 なかしとも思そはてぬむかしより
  あふ人からの秋の夜なれは
12 たつねくる身をしとはすはよ(よ+さ)のうみに
  身もなけつへき心ちこそすれ
13 ほり江こくたなゝしを舟こきかへり
  おなし人にやこひわたりなむ」108ウ
14 若草のにゐ(ゐ+手)枕を巻そめて
15 山しろのこはたのさとにむまはあれと
16 世中をなにゝたとへむあさほらけ
17 いその神ふるの山さといかならむ
  をちのさと人かすみ(み&み)へたてゝ
18 夢にたに見ゆとは見えしあさな/\」109オ
19 雲井にてとを山鳥のはつかにも
  ありとしきけはこひつゝもをらむ
20 いかなれはあふみのうみの(の$そ)かゝりてふ
  人を見るめのたえておひねは
21 いて人は事のみそよき月草は(は$の)
  うつし心はいろことにして
22 とりかへすものにもかなや世中を
23 うらわかみねよけに見ゆるわかくさを
  人のむすはむ事をしそ思ふ」109ウ
24 はつ草のなとめつらしき事のはそ
  うらなく物を思ひける哉
25 楽府 李夫人
  漢武帝初喪<ウシナヘリ>李夫人<ヲ>々々病<セシ>時<ニ>
  不肯<カヘンス>別<ワカレ>死後留得生前恩
  君恩未<サレハ>尽<ツキ>念未已<ヤマ>甘泉殿
  裏令<シム>写<ウツサ>真<カタチヲ>丹青画出<カキイタシテ>竟<ツヒニ>
  何<ナンノ>益<エキカアル>」110オ
  不言<モノイハ>不<レハ>笑<ワラハ>愁<ウレヘ>殺<ソマシム>君<ヲ>又令方士<ヲ>
  合<アハセ>霊<レイ>薬<ヲ>玉釜<フ>煎練<センレンシテ>金炉<ロニ>焚<タク>
  九華<キウクワ>帳深<フカウシテ>夜悄々<タリ>反魂<ノ>香<カウ>
  反<カヘス>夫人魂<ヲ>夫人之魂在<アル>何<イツレノ>許<トコロニカ>
  香<カウノ>煙<ケフリニ>引<ヒカレテ>到<イタル>焚<タク>香<ヲ>処<トコロニ>既来<テ>何<ソ>
  苦<クルシフ>不<サルコトヲ>須臾<シハラクタモ>縹眇悠揚<トシテ>還<テ>
  滅<キエ>去<サンヌ>去<コト>何<ソ>速<スミヤカニ>兮来<コト>何<ソ>遅<キ>」110ウ
  是<ソレ>邪<カ>非<アラヌ>邪<カ>両<ナカラ>不知翠娥<ハ>
  髣髴<ハウヒタレトモ>平生<ヘイセイノ>顔<カタチニ>不似昭陽<ニ>寝<フセン>
  疾<ヤマヒニ>時<ニタモ>魂之不<サル時ニモ>来君心苦<シフ>
  魂之来<キタヌル時ニモ>兮君思悲<フ>背<ケ>灯<ヲ>
  隔<ヘタテゝ>帳<ヲ>不得語<モノカタリスルコト>安<イツクンソ>用<モテ>暫<ク>
  来<テ>遥<ハルカニ>見<ミタルヲ>」111オ
  傷<イタマシムルコト>心不<アラス>独武皇帝<ノミニ>自<イ>古及<ヲヨフマテニ>
  今多<ク>若<コトシ>斯<カクノ>君不<ヤ>見穆王三日
  哭<センヲ>重璧台前傷<ムシヲ>感姫
  又不<ヤ>見秦陵一椈<ノ>涙<ヲ>馬
  嵬<ノ>路上<ホトリニ>念<フシテ>楊妃<ヲ>縦令妍
  姿艶骨<ヲ>化<シテ>為<ナラ>土此恨長在<テ>
  無銷期生思惑<マトハス>死思惑<マトハス>」111ウ
  尤<ケヤケキ>物感人忘不得人非<レハ>木
  石皆有情不如不<サラムニハ>遇傾城<ケイセイノ>色(大島本奥入02)
26 あすしらぬわか身と思へとくれぬまの
  けふは人こそかなしかりけれ
27 いはそゝく山井の水をむすひあけて
  たかためおしきいのちとかしる
28 いにしへも今もむかしもゆくすゑも
  かくそてひつるおりはあらしを」112オ
29 みなといりのあしわけをふねさはり/おほみ
30 遺愛寺鐘[奇+攴]枕聴香鑪
  峯雪撥簾看
31 涅槃経
  雪山童子半偈投身
  諸行無常是生滅法生滅々已
  寂滅為楽(大島本奥入03)」112ウ
32 いかて猶つれなき人に身をかへて
  くるしき物と思ひしらせむ」113オ
33 伊勢集
  つねにやましくせさせ給けるをつゐに
  六月にかくれたまひにけるあさましく
  いみしくかなしくてつかうまつりし人
  さなからあつまりてよるひるなきかな
  しひこひたてまつるにのちの御わさの
  おりにやう/\なりぬあめのふる日心う
  しといひし人しもになむこもりゐ
  たりけるうへの人あつまりて御わさ
  のくみをなむしけるしもなる」113ウ
  人いとはよりはてたまうつなり
  たゝいまなにわさをかしたまふ
  こゝにはあめをなむ見いたして
  なかめ侍といひあけたりけれは
  うへのおもとたちのかへしには
  いとはよりはてゝいまはねをなむ
  よりあはせてなき侍といひをこせ
  たれはしもなる人
  よりあはせてなくなるこゑをいとに/して
  わかなみたをはたまにぬかなむ(大島本奥入04)」114オ
(白紙)」114ウ