First updated 07/10/2002
Last updated 04/11/2024
渋谷栄一翻字(C)

  

明 石

《翻刻資料》
凡例
1 底本には、大橋寛治氏蔵本『源氏物語 奥入』(複刻日本古典文学館 昭和46年10月)を使用し、自筆本の欠脱は、高野本(日本古典文学影印叢刊19)により、また判読不明箇所等は、池田亀鑑『源氏物語大成』巻七「研究資料篇」所収の「奥入(第二次)定家自筆本」を参照し、漢字仮名字母翻字法によって翻字した(翻刻資料の凡例を参照)。ただし、巻尾本文は省略した。
2 頁数は、池田亀鑑『源氏物語大成』巻七「研究資料篇」に従って、復元した「自筆本奥入」の頁数となっている。
3 青表紙本「源氏物語」の「奥入・付箋」に見られる注記には、その注記番号を付けた。
4 行間書き入れ及び割注等は〔 〕で記した。改行は/で記した。朱書は、その語句の冒頭に(朱)と記した。
5 墨筆による末尾本文の削除符号や朱筆による掛点符号は、それぞれ(墨)\、(朱)と記した。
6 私による注記や定家自筆本、明融臨模本、大島本等において、奥入また付箋に引用されている注釈は( )で記した。
7 本文の校訂記号は次の通りである。
 $(ミセケチ)・#(抹消)・+(補入)・&(ナゾリ)・=(併記)・△(不明文字)
( )の前の文字と( )内の記号の前の文字は訂正前の本文を表し、記号の後の文字はその訂正後の本文を表す。
8 訓点や送り仮名は〈 〉で記した。
9 作字した文字は[ ]で記した。
10 各丁の終わりには」の印と丁数とその表(オ)裏(ウ)を記した。

明石(後補筆)」(35オ)

01 尓能見ぬれつる吹風
  多よりうれしきあ万の徒り
02 あさりす累よさのあ万ほこる/ら
  浦風ぬるみ可すミわ多れ里
03 ほとふるもおほつ可なく者おも本え
  いひし尓多可ふと者しも
04 あは地尓てあ者と者る可尓
  ち可きこよ日者可ら可も
05 (墨)嵆叔〈ケイカウ〉夜夢伶人教廣陵散(朱)あき尓て多二(大島本奥入05)
06 ま多よ井尓うちきて多ゝくゝひな可那
  たかゝとさしていれぬなる(この行、自筆本は切断により不明、東山乙本による、大成注記)」(35ウ)

07 伊勢の宇美乃 支与支名支左尓
  之保加比尓 名乃利曽や川末牟
  加比や比呂波牟や 多末や比呂波牟(大島本奥入01)
08 うられ多るやうら浦風者ふ可ね
  とも佐ゝらなみ多徒 此哥返やう
09 ふ尓者しのふるまけ尓个る
  いろ尓者いてしと日し
10 うれしさ者ニ徒ゝみ个り
  こよ日者尓もあ万りぬる可那」(36オ)

11 あ里ぬやと心見可てらあひ年者
  多者ふれ尓くき万てそこひしき
12 多らとをおしくハ
  はれしれらせ者や(大島本付箋01)
13 久方のつきけのこ万をうちハやめきぬらむとのミきミをまつ可那〕(後補書き入れ)
14 ふとちいさ尓ゆ可む玉津嶋
  入江のそこ尓し徒む月影
15 万きのとをやすら日尓こそ佐ゝさら
  い可尓あく(け&く)つる
16 わすれしとち可日しをあや万多す
  み可さのもこと者れ(大島本付箋02)」(36ウ)

17 日本世紀 故略之
  二男蛭児生而體如蛭及三年
  不起其父母之乗葦船而流
(大島本奥入02)
  (約4行分空白)
18 わすら累ゝを者おも者すち可ひてし
  のいのちのおしくもある可那」(37オ)

19 あき尓て多尓布ることきゝはやす
  文集 琵琶引
  今年歓笑〈セウ〉〈マタ〉明年 秋月春風等閑〈ナヲサリカテラニ〉〈タル〉
  〈オトヽ〉〈ハシテ〉〈カヒ〉〈イクサ〉〈アヽ母也〉〈トシ〉〈シシタリ〉 〈ヘ〉〈リ〉〈タ〉〈テ〉顔色〈ソク〉〈フリヌ〉
  門前〈セン〉零落〈レイラクシテ〉鞍馬〈アンハ〉〈マレナリ〉 老大〈ニシテ〉トツイテ〉〈ナリタリ〉〈シヤウ〉〈ノ〉〈メ〉
  商人重〈ヲモウシ〉〈ヲノミ〉〈カロクシケレハ〉離別〈ヘツヲ〉 〈サキ〉月浮梁〈フリヤウ〉〈カフテ〉〈チヤ〉〈イヌ〉
  〈インシヨリ〉〈コノカタ〉江口〈カウコウ〉〈マモル〉〈キ〉 遶〈メク〉船月明〈ニシ〉江水寒〈シ〉
  夜深〈フケ〉〈タチマチニ〉〈ニミル〉少年事 夢啼〈ナク〉〈ヨソオイ〉涙紅〈ニシ〉闌干〈ランカンタリ〉
  我聞〈タニモ〉琵琶已嘆息〈タンソクスル〉 又聞〈テ〉此語重〈ネテ〉[口+即]〈シチ/\ス〉
  同
〈ク〉〈コレ〉天涯〈カイニ〉〈リン〉〈セル〉〈ナレハ〉 相〈ヒ〉〈シフコト〉〈ヘス〉〈シモ〉〈ムカシ〉相識〈レルノミナラム〉(この行、継紙上の後補筆)」(37ウ)

  我従〈ヨリ〉去年〈コソ〉〈シセシ〉帝京〈テイケイ〉 謫居〈テキキヨシ〉〈ヒシ〉〈セリ〉尋陽城〈セイ〉
  尋陽小
〈スコシキナル〉〈所〉〈シ〉音樂 終〈ヲフルマテニ〉歳不〈キカ〉〈シ〉〈ノ〉
  (約2行分空白)
  今夜聞君琵琶語 如〈シ〉〈キク〉仙樂〈カク〉耳暫〈シハラク〉〈ナリ〉
  莫
〈レ〉〈シスルコト〉更坐〈ヰ〉〈ヒク〉一曲 為君翻〈カヘシテ〉〈ツクラ〉琵琶行〈カウ〉
  感
〈シ〉我此言〈ヤヽ〉〈ヒサシク〉〈テリ〉 却〈カヘリ〉〈ヰ〉〈スミヤカニシテ〉絃々〈クエン〉〈ウタヽ〉〈キウナリ〉
  悽
〈セイ〉〈トシ〉〈ニス〉似向〈サキ〉前聲 満〈マン〉座重〈カサ〉聞皆淹〈ヲホフ〉〈タヲ〉
  就
〈コノ〉中泣下〈クタルコトハ〉誰最〈モトモ〉〈オホキ〉 江州司馬〈シハ〉青衫〈セイ〉〈みとりそて〉湿〈ウルヘリ〉(大島本奥入03)」(38オ)

20 まくなき 可尋勘 但凡俗之詞有之云々(大島本奥入04)
21 晋書嵆康傳
  嵆康
〈ケイカウ〉〈フ〉洛西〈ラクセイ〉 暮〈ユフヘ〉宿〈ス〉美陽亭〈テイ〉 引琴弾〈ス〉
  夜分
〈ニシテ〉〈タチマチニ〉〈テ〉〈カク〉〈イタル〉 云〈イツテ〉〈ス〉〈シ〉古人〈コシム〉与康〈ト〉〈トモ〉
  談
〈タム〉音律〈イムリツ〉〈コトハ〉〈イタス〉清辨〈ヘンヲ〉〈テ〉〈トリ〉琴弾之而〈シカウシテ〉
  為
〈ス〉広陵散聲〈セイ〉調絶倫〈セツリム〉〈ツイ〉以授〈サツケ〉〈カウニ〉
  仍
〈ヨテ〉〈チカフ〉〈ツタヘ〉人亦不〈ス〉〈イハ〉其姓字(大島本奥入05)」(38ウ)