紫式部日記First updated 05/01/2004
Last updated 08/31/2008(ver.2-1)
渋谷栄一翻字(C)

紫式部日記絵巻

凡例
1 本文は『紫式部日記絵詞』(1978年 日本絵巻大成9 中央公論社)により、五島美術館開館25周年記念特別展観図録『紫式部日記絵巻の王朝美』(1985年 五島美術館)を参照した。
2 資料は各所蔵者毎に作品の順序に従って配列した。
3 人名注記また官職注記は< >で記した。割注は/で改行を表した。
4 和歌には黒川本「紫日記」の歌番号を記した。

「蜂須賀家本」(重要文化財 蜂須賀家蔵 1巻)

 三日にならせ給よは宮つかさ大夫
 よりはしめて御うふやしなひつか
 うまつる右衛門督<大夫斉信>御まへの事
 ちんのかけはんしろかねの御さらなと
 くはしくは見す源中納言<権大夫俊賢>藤
 宰相<権亮実成>は御そ御むつきこ
 ろもはこのをたていれかたひらつゝみ
 おゝいしたつくゑなとおなしことの
 をなしゝろさなれともしさま人の
 こゝろ/\見えてしつくしたりあ
 ふみのかみはおほかたのことゝもをや
 つかうまつる覧ひんかしのたいの
 にしのひさしはかんたちめのさき
 たをかみにて二きやうに南のひ
 さしに殿上人のさはにしをかみなり
 しろきあやの御ひやうふもやの
 すみにそへてとさまにたてわた
 したり」(第1段詞)

(第1段絵)

 五日の夜は殿の御うふやしなひ
 十五日の月くもりなくおもし
 ろきにいけのみきはちかくかゝり火
 ともこのしたにともしつゝとしき
 ともたてわたすあやしきしつの
 おのさゑつりありくけしきとも
 まていろふしにたちかおなりと
 のもりかたちわたれるけはひを
 こたらすひるのやうなるにこゝか
 しこのいはのかくれこのもとにう
 ちむれつゝおるかんたちめのすい
 しんなとやうのものともさへおの
 かしゝかたらふへかんめることはか
 かる世中のひかりいておはしまし
 たることをかけにいつしかとおもひ
 しもおよひかをにそすゝろにう
 ちゑみこゝちよけなるやまいて
 殿の中の人はなにはかりのかすに
 しもあらぬもこしうちかゝめて
 ゆきちかひいそかしけなるさまし
 てときにあひかほなり」(第2段詞)

(第2段絵)

 おものまいるとて女房八人ひとつの
 いろにさうそきてかみあけしろき
 もとゆひして白き御はんとり
 つゝきまいるこよひの御まかなひは
 みやの内侍いともの/\しくあさやか
 なるやうたいもとゆひはへしたる
 かみのさかりはつねよりもあらま
 ほしきさましてあふきにはつれ
 たるかたはらめなといときよけに
 侍りしかなかみあけたる女房は源
 式部<加賀守しけのふか女>小左衛門<故備中守みち/ときか女>
 小兵部<左京かみあきまさか/女とそいひける>大輔<伊勢斎主すけ/ちかゝ女>
 大むま<左衛門大夫よりのふか女>こむま<左衛門佐/みちのふか女>
 小兵部<蔵人なるちかたゝか女>小木工<もくのせう/たいらの>
 <のふよしといひ侍なる/人の女なり>かたちなとおかし
 きわか人のかきりにてさしむかひ
 つゝゐわたりたりしはいと見るか
 ひこそ侍しか夜ふくるまゝに月
 くまなきにいきのおものはうねへ
 ともまいるとのもりかんもりの女
 くわんかほもみしらぬをりみかと
 つかさなとやうのものにやあらん」(第3段詞第1紙)

 おろそかにさうそきけさうし
 つゝおとろのかんさしおほやけ/\
 しきさましてしんてんのひん
 かしのらうわた殿のくちまて
 をしこみてゐたれは人もえ
 とをりかよはす」(第3段詞第2紙)

(第3段絵)

(第4段絵)

(第5段絵)

 おものまいりはてゝ女房みすの
 もとにいてゐたりほかけに
 きら/\と見えわたる中におほ
 しきふのおもとのもからきぬを
 しをのやまのこまつはらを
 ぬいたるさまいとおかしおほし
 きふはみちのくにのかみのめ
 殿のせんしなり」(第4段詞)

(第6段絵)

 そのよの御まへのありさまいと
 ひとに見せまほしけれはよいの
 さうのさふらふひやうふをゝ
 しあけてこのよにはかうい
 とめてたきことまた見たま
 はしといひ侍しかはあなかしこ/\
 とほんそんをはおきて手をすり
 てよろこひ侍し」(第5段詞)

(第7段絵)

 宮のおまへにて文しゆの所/\よま
 せ給なとしてさるさまのことしろし
 めさまほしけにおほいたりしかは
 いとしのひて人候はぬもの/\ひま/\に
 おとゝしの夏ころより楽府といふゝみ
 二巻をそしとけなゝからおしへたてき
 こえさせて侍るかくし侍り宮もしのひ
 させ給しかとも殿もうちもけしきを
 しらせ給て御文ともをめてたうかゝせ給
 てそとのはたてまつらせ給」(第6段詞)

 きぬにあをいろをゝしかへしきたる
 ねたけなりわらはのかたちもひとりはいと
 まほに見えす宰相の中将はわらはいとそ
 ひやかにかみともおかしなれすきたる
 一人をそいかにそや人のいひしみなこ
 きあこめにうはきはこゝろ/\なりかさ
 みはいつえなるなかにおはりはたゝゑひ
 そめをきせたり中/\ゆへ/\しく
 心あるさましてものゝいろあひつやなと
 いとすくれたりしもつかへの中にいとか
 ほすくれたる扇とるとて六位のくら人
 ともよるに心となけやりたるこそやさし
 きものからあまり女にはあらぬかと見ゆ」(第7段詞)

(第8段絵)

「藤田家本」(国宝 藤田美術館蔵 1巻)

 上達部の座をたちて御はしの
 うへにまいり給殿をはしめたてま
 つりてたうち給かみのあらそひい
 とまさなしうたともあり女房さかつ
 きなとあるをりいかゝはいふへきなと
 くち/\思こゝろみる
0005  めつらしきひかりさしそふさか月は
    もちなからこそちよもめくらめ
 四条の大納言もさしいてんほとうたを
 はさるものにてこはつかひよういゝ
 るへしなとさゝめきあらそふほと
 にことおほくて夜いたうふけぬ
 れはにやとりわきてもさゝてまか
 て給ろくともかんたちめには女の
 さうそくに御そむつきやそひ
 たらん殿上の四位はあはせひとかさ
 ねはかま五位はうちき一かさね六位
 ははかまひとくそ見えし」(第1段詞)

(第1段絵)

 またのよ月いとおもしろし比
 さへおかしきにわかき人はふねに
 のりてあそふいろ/\なるおりよ
 りもおなしさまにさうそきた
 るやうたいかみのほとくもりなく
 見ゆこ大輔けんしきふみやき
 の侍従五せち弁うこむ小ひやうゑ
 小衛門むまやすらい伊勢人なと
 はしちかくゐたるを左さい将の中将
 <経房>とのゝ中将のきみ<教通>いさなひ
 いてたてまて右のさい将の中将<兼隆>
 にさをさゝせてふねにのせ給か
 たへはすへりとゝまりてさすか
 うらやましくやみいたし
 つゝいたり」(第2段詞)

(第2段絵)

 北の陣に車あまたありといふは
 うへ人ともなりけり藤三位をは
 しめにて侍従の命婦藤少将の
 命婦むまの命婦ちくせんのみやうふ
 せうの命婦あふみの命婦なとそ
 きゝ侍しみもしらぬひと/\なれは
 ひかことも侍らんかし舟のひともま
 とひいりぬ殿いてゐ給ておほすこと
 なき御けしきにもてはやしたはふれ
 給おくり物ともしな/\にたまふ」(第3段詞)

(第3段絵)

 七日よはおほやけの御うふやしなひ
 くら人の少将みちまさを御つかひにて
 ものゝかす/\かきたるふみやないはこに
 いれてまいれりやかて返給勧学院の
 衆ともあゆみつゝきてまいれるけさむ
 の文又けいすかへし給ろくとも給へ
 しこよひのきしきはことにまさ
 りておとろ/\しくのゝしるに御丁
 の中をのそきまいらせたれはかく国
 のおやともてさはかれ給うるはしき
 御気しきにも見えさせ給はすゝこし
 うちなやみおもやせておほんとのこも
 れる御ありさまつねよりもあえかに
 わかくうつくしけなりちいさきとう
 ろを御帳の中にかけたれはくもりな
 きにいとゝしき御いろあひそこひも
 しらすきよらなるにこちたき御く
 しはゆひてまさらせ給わさなりけりと
 思かけまくもいとさらなれはえそかきつゝけ
 侍らぬおほかたのことゝもはひと夜のおなし
 こと上達部のろくはみすの中より女のさう
 そく宮の御そなとそへていたす殿上人
 とうふたりをはしめてよりつゝとる」(第4段詞)

(第4段絵)

 行幸ちかくなりぬとてとのゝうちを
 いよ/\つくろひみかゝせ給よにをも
 しろきゝくのねをたつねつゝ
 ほりてまいるいろ/\うつろひたるも
 きなるかみ所あるもさま/\にうゑ
 たてたるもあさきりのたえまに
 みわたしたるはけにおひもしそき
 ぬへき心ちするになそやまいて思事
 のすこしもなのめなる身ならましかは
 すき/\しくもゝてなしわかやきてつ
 ねなきよをもすくしてましめて
 たき事おもしろきことをみきく
 につけてもたゝ思かけたりし心の
 ひくかたのみつよくて物うくおもはすに
 なけかしきことのまさるそいとくる
 しきやいかていまはなをものわす
 れしなんおもふかひもなしつみもふ
 かゝんなりなとあけたてはうちなか
 めて水とりともの思事なけに
 あそひあへるをみる
0006  水とりを水の上とやよそにみん
    われもうきたる世をすくしつゝ」(第5段詞)

(第5段絵)

「藤田家別本」(田中親美模本 田中家蔵 1葉)

 かれもさこそ心をやりてあそ
 ふとみゆれと身はいとくるし
 かんなりとおもひよそへらる少将
 のきみふみおこせ給へる返事
 かくにしくれのさとかきくらせは
 つかひもいそく又そらのけし
 きも心ちさはきてなんとてこ
 しをれたる事やかきませ
 たりけんくらうなりにたるに
 たちかへりいたうかすみたるこせ
 んしに
0007  くもりなくなかむるそらもかき
    くらしいかにしのふるしくれなるらん
 かきつらんこともおほえす
0008  ことはりの時雨のそらは雲まあれと
    なかむるそてそかはくまもなき
 あたらしくつくられたるふね
 ともさしよせて御覧す龍頭
 鷁首のいけるかたちおもひやら
 れてあさやかにうるはし」(第6段詞)

「旧森川家本(国宝 五島美術館蔵 額装6面)

 くれて月いとおもしろきに宮
 のすけ女房にあひてとりわき
 たるよろこひもけいせさせんと
 にやあらんつまとのわたりも御
 ゆとのゝけはひにぬれ人のおとも
 せさりけれはこのわたとのゝひ
 むかしのつまなる宮のないしの
 つほねにたちよりてこゝにやとあん
 ないし給さい将はなかのまによりて
 またさゝぬかうしのかみおしあけて
 おはすやなとあれといらへもせぬに大夫の
 こゝにやとの給にさへきゝしのひんもこ
 と/\しきやうなれははかなきいらへなと
 すいと思事なけなる御気色ともなり我
 御いらへはせす大夫を心ことにもてなし
 きこゆことはりなからわろしかゝる所に上下
 らうのけちめいたうはわくものかとあは
 め給今日のたうとさなとこゑおかしう
 うたふ夜ふくるまゝに月いとあかしかうしの
 もとゝりさけよとせめ給へといとくたりて
 かんたちめのゐ給はんもかゝる所といひなからかた
 はらいたしわかやかなる人こそものゝほとしらぬ
 やうにあたえたるもつみゆるさるれなにかあさ
 れはましをおもへはゝなたす」(第1段詞)

(第1段絵)

 御いかはしもつきのつひたちの日
 れいの人/\のしたてゝまうのほ
 りあひたる御前のありさまゑに
 かいたるものあはせの所にそいとよ
 うにて侍し御帳のひんかしなるを
 ましのきはにみ木丁をおくの御し
 やうしよりひさしのはしらまてひま
 もあらせすたてきりて南おもてに
 おまへのものはまいりすへたり西
 によりて大宮のおものれいのちんの
 おしきなにくれのたいなりけんかし
 そなたは見す御まかなひ宰相のきみ
 さぬきとりつく女房さいしもとゆひ
 なとしたりわかみやの御まかなひは
 大納言のきみひんかしによりてまいり
 すへたりちひさき御たい御さら
 とも御はしのたいすはまなともひゝな
 あそひのくと見ゆそれよりひんか
 しのひさしのみすゝこしあけて弁内侍
 中つかさの命婦小中将の君なとさる
 へきかきりとりつゝまいるおくに
 ゐてくはしくは見侍らす」(第2段詞)

(第2段絵)

「旧森川家本」(重要文化財 大倉家蔵 1幅)

 こよひ少輔のめのといろゆる
 さるこゝしきさまうちし
 たり宮いたきたてまつり
 御帳のまにて殿のうへいたき
 うつしたてまつり給てゐさ
 りいてさせ給へるほかけの御さ
 まけはひことにめてたし
 あかいろのからの御そちすり
 の御もうるはしくさうそき給
 へるもかたしけなくもあはれに
 もみゆ大宮はえひそめのい
 つへの御そすわうの御こう
 ちきたてまつれりとのもち
 ゐはまいりたまふ」(第3段詞)

(第3段絵)

「旧森川家本」(国宝 五島美術館蔵 額装6面続き)

 宮の大夫みすのもとにまいりてかん
 たちめをまへにめさんとけいし給
 きこしめしつとあれは殿よりはしめたて
 まつりてみなまいり給はしのひんかし
 のまを上にて東の妻戸の前まてゐ給へ
 り女房ふたへみへつゝゐわたりてみすとも
 をそのまにあたりてゐ給へる人/\より
 つゝ巻あけ給大納言の君宰相の君小少将
 君宮の内侍とゐ給へるに右のおとゝよりて御木
 帳のほころひ引たちみたり給さたすきたり
 とつきしろふもしらす扇をとりたわふれ
 ことのはしたなきもおほかり大夫かはらけとりて
 そなたにいて給へりみの山うたひて御あ
 そひさまはかりなれといとおもしろしその
 つきのまの東のはしらもとに右大将<実資>よりて
 きぬのつまそてくちかそへ給へるけしき
 人よりことなりゑいのまきれをあなつり
 きこえまたゝれとかはなとおもひ侍てはか
 なきことゝもいふにいみしうされいまめく
 人よりもけにいとはつかしけにこそおはす
 めりしかさか月のすんのくるを大将はおち
 給へとれいのことなしひのちとせよろつよ
 にてすきぬ左衛門の督あなかしこゝのわ
 たりわかむらさきや候とうかゝ給源氏に
 にるへき人も見え給はぬにかのうへ
 はまいていかてものし給はんと
 きゝゐたり」(第4段詞)

(第4段絵)

「旧森川家本」(重要文化財 森川家蔵 1幅)

 おそろしかるへきよの御ゑいな
 めりとみてことはつるまゝに宰
 相のきみにいひあはせてかくれな
 むとするにひんかしおもてにとのゝ
 君たち宰相の中将なといりてさはか
 しけれはふたり御帳のうしろにゐ
 かくれたるをとりはらはせ給てふた
 りなからとらへすへさせ給へり和哥
 ひとつつかうまつれさらはゆるさんと
 の給はすいとわひしくおそろしけれは
 きこゆ
0009  いかにいかゝかそへやるへきやちとせの
    あまりひさしき君か御よをは
 あはれつかうまつれるかなとふたゝ
 ひはかりすうせさせ給ていとゝうの
 給はせたる
0010  あしたつのよはひしあらは君かよの
    ちとせのかすもかそへとりてん
 さはかりゑい給へる御心ちにもおほ
 しけることのさまなれはいとあは
 れにことはりなり」(第5段詞)

(第5段絵)

「旧久松家本」(重要文化財 日野原家蔵 1巻)

 りむしのまつりのつかひはとのゝ
 権中将のきみなりその日は御
 ものいみなれは殿御とのいせさせ
 給へりかんたちめもまい人のき
 みたちもこもりてよひとよほそとの
 わたりいとものさはかしきけはひ
 したりつとめてとのゝうへも
 まうのほりてものこらんすつかひ
 の君のふちかさしていともの/\
 しうおとなひ給へるくらの命婦
 はまひ人にめもみやらすうち
 まほり/\そなきける御ものいみ
 なれはみやしろよりうしの時に
 そかへりまいれはみかくらなともさ
 まはかりなりかねときかこそまては
 いとつき/\しかりしをこよなくお
 とろへたるふるまひそ見しるま
 しき人のうゑなれとあはれに思
 よそへらるゝことおほくはへる」(第1段詞)

(第1段絵)

 しはすの廿九日にまいるはし
 めてまいりしもこよひの事そ
 かしいみしうもゆめちにまとは
 れしかなとおもひいつれはこよな
 くたちなれにけるもうとましの
 身のほとやとおほゆよいたうふ
 けにけり御ものいみにおはしま
 しけれはおまへにもまいらす
 こゝろほそくてうちふしたるに
 まへなる人/\うちわたりはなを
 いとけはひことなりけりさとに
 てはいまはねなましものをさもいさ
 ときくつのしけさかなといろめ
 かしくいひゐたるをきく
0014  としくれてわかよふけゆく風のをとに
    心のうちのすさましきかな
 とそひとりこたれし」(第2段詞)

(第2段絵)

 わた殿にねたる夜とをたゝく
 人ありときけとおそろしさに
 おともせてあかしたるつとめて
0017  よもすからくひなよりけになく/\そ
    まきのとくちにたゝきわひつる
 かへし
0018  たゝならしとはかりたゝく
     くひなゆへあけてはいかに
      くやしからまし」(第3段詞)

(第3段絵)

 二宮の御いかは正月十五日そのあか
 月にまいるに小少将のきみあけはてゝ
 はしたなくなりにたるにまいり給
 へり例のおなし所にゐたりふたりの
 つほねをひとつにあはせてかたみに
 さとなるほともすむひとたひにまいり
 ては木帳はかりをへたてにてあり殿そ
 わらはせ給かたみにしらぬ人もかたら
 はゝなときゝにくゝされとたれも
 さるうと/\しきことなけれは心やす
 くてなん日たけてまうのほるかの
 きみはさくらのおり物のうちきあか
 いろのからきぬれいのすりもき給
 へりこうはいにもえきやなきのから
 きぬものすりめなといまめかしけれは
 とりもかへつへくそわかやかなるうへ人
 とも十七人そみやの御方にまいりたる
 いとみやの御まかなひは橘三位とりつく
 人はしにはこたいふけんしきふ内には
 小少将みかときさき御帳のうちには
 ふた所なからおはしますあさひのひかり
 あひてまはゆきまてはつかしけなる」(第4段詞第1紙)

 おまへなりうへは御なをしこくち
 たてまつりて宮はれいのくれなゐ
 の御そこうはいもへきやなきやま
 ふきの御そうへにゑひそめのお
 りものゝ御そこうちきもんもいろも
 めつらしくいまめかしきたてまつれり
 あなたはいとけそうなれはこのおくに
 やをらすへりとゝまりてゐたり中
 つかさのめのとみやいたきたてま
 つりて御丁のはさまより南さまに
 いてたてまつるこまかにそひ/\しく
 なともあらぬかたちのたゝゆるゝかにもの/\
 しきさまうちしてさるかたに人を
 しへつへくかと/\しきけはひそした
 るえひそめのおり物のうちきむも
 むのあをいろにさくらのからきぬきた
 りその日の人のさうそくいつれと
 なくつくしたるをそてくちのあは
 ひわろうかさねたる人しも御まへの
 ものとりいるとてそこらのかんたち
 め殿上人にさしいてゝまほられつる事
 とそのちにさい将のきみなとくち
 をしかり給めりし」(第4段詞第2紙)

(第4段絵)

 ひさしの御すあくるきはにうゑの
 女房は御帳の西をもてひのおまし
 にをしかさねたるやうにてなみゐ
 たり三位をはしめて内侍のすけた
 ちもあまたまいれり宮の人/\はわか
 うとはなけしの下ひんかしのひさしの
 南のさうしはなちてみすかけたるに
 上臈はゐたり御帳のひんかしのは
 さまたゝすこしあるに大納言のきみ小
 少将のきみゐ給へる所にたつねきて
 みるうへはひらしきのをさにおもの
 まいりすへたりおまへのものしたるさ
 まいひつくさんかたなし簀子に北向に
 西を上にて上達部左右内の大臣殿春宮の
 傅中宮大夫四条大納言それより下は見え侍
 さりき御遊あり殿上人はこの対の辰巳に
 あたりたる廊にさふらふ地下はさたまれり
 かけまさのあそんこれかせのあそんゆきよ
 しとをまさなとやうの人/\うゑに四条大納言
 はうしとり頭弁ひわことは経房朝臣左さい将の
 中将さうのふゑとそそうてうのこゑにてあ
 なたふとつきにむしろたこの殿なとう
 たふかくはとりのはきうあそふ座にても
 てうし猶ふくうたにはうしうちたかへ
 てとかめられたりしはいせのかみ
 にそありし」(第5段詞)

(第5段絵)

 右のおとゝわこんいとおもしろく
 なときゝはやし給され給めり
 しはてにいみしきあやまちの
 いとをしきをこそ見る人の身
 さへひへはへりしか御をくり
 ものふゑふたつはこにいれて
 とそ見はへりし」(第6段詞)

(第6段絵)