紫式部日記 Last updated 5/1/2004
渋谷栄一翻字(C)(ver.1-1-1)

紫式部日記絵巻

凡例
1 本文は『紫式部日記絵詞』(1978年 日本絵巻大成9 中央公論社)により、五島美術館開館25周年記念特別展観図録『紫式部日記絵巻の王朝美』(1985年 五島美術館)にを参照した。
2 資料は各所蔵者毎に作品の順序に従って配列した。
3 作品名「紫式部日記絵巻」はローマ字大文字2文字MUと所蔵者名2文字の計4文字で記した。
4 次に題詞及び和歌の途中行は0000とし、和歌の冒頭には0005から0018まで4桁の数字で記した。なお、歌番号は紫式部日記の歌番号に合わせた。
5 次に段数は2桁、行数は3桁、字数は2桁で記した。
6 人名注記また官職注記は< >で記した。

作品 歌段行 123456789012345678901234567890字
「蜂須賀家本」(重要文化財 蜂須賀家蔵 1巻)
MUHA000001001 三日にならせ給よは宮つかさ大夫
MUHA000001002 よりはしめて御うふやしなひつか
MUHA000001003 うまつる右衛門督<大夫斉信>御まへの事
MUHA000001004 ちんのかけはんしろかねの御さらなと
MUHA000001005 くはしくは見す源中納言<権大夫俊賢>藤
MUHA000001006 宰相<権亮実成>は御そ御むつきこ
MUHA000001007 ろもはこのをたていれかたひらつゝみ
MUHA000001008 おゝいしたつくゑなとおなしことの
MUHA000001009 をなしゝろさなれともしさま人の
MUHA000001010 こゝろ/\見えてしつくしたりあ
MUHA000001011 ふみのかみはおほかたのことゝもをや
MUHA000001012 つかうまつる覧ひんかしのたいの
MUHA000001013 にしのひさしはかんたちめのさき
MUHA000001014 たをかみにて二きやうに南のひ
MUHA000001015 さしに殿上人のさはにしをかみなり
MUHA000001016 しろきあやの御ひやうふもやの
MUHA000001017 すみにそへてとさまにたてわた
MUHA000001018 したり」(第1段詞)
(第1段絵)
MUHA000002001 五日の夜は殿の御うふやしなひ
MUHA000002002 十五日の月くもりなくおもし
MUHA000002003 ろきにいけのみきはちかくかゝり火
MUHA000002004 ともこのしたにともしつゝとしき
MUHA000002005 ともたてわたすあやしきしつの
MUHA000002006 おのさゑつりありくけしきとも
MUHA000002007 まていろふしにたちかおなりと
MUHA000002008 のもりかたちわたれるけはひを
MUHA000002009 こたらすひるのやうなるにこゝか
MUHA000002010 しこのいはのかくれこのもとにう
MUHA000002011 ちむれつゝおるかんたちめのすい
MUHA000002012 しんなとやうのものともさへおの
MUHA000002013 かしゝかたらふへかんめることはか
MUHA000002014 かる世中のひかりいておはしまし
MUHA000002015 たることをかけにいつしかとおもひ
MUHA000002016 しもおよひかをにそすゝろにう
MUHA000002017 ちゑみこゝちよけなるやまいて
MUHA000002018 殿の中の人はなにはかりのかすに
MUHA000002019 しもあらぬもこしうちかゝめて
MUHA000002020 ゆきちかひいそかしけなるさまし
MUHA000002021 てときにあひかほなり」(第2段詞)
(第2段絵)
MUHA000003001 おものまいるとて女房八人ひとつの
MUHA000003002 いろにさうそきてかみあけしろき
MUHA000003003 もとゆひして白き御はんとり
MUHA000003004 つゝきまいるこよひ御まかなひは
MUHA000003005 みやの内侍いともの/\しくあさやか
MUHA000003006 なるやうたいもとゆひはへしたる
MUHA000003007 かみのさかりはつねよりもあらま
MUHA000003008 ほしきさましてあふきにはつれ
MUHA000003009 たるかたはらめなといときよけに
MUHA000003010 侍りしかなかみあけたる女房は源
MUHA000003011 式部<加賀守しけのふか女>小左衛門<故備中守みちときか女>
MUHA000003012 小兵部<左京かみあきまさか女とそいひける>大輔<伊勢斎主すけちかゝ女>
MUHA000003013 大むま<左衛門大夫よりのふか女>こむま<左衛門佐みちのふか女>
MUHA000003014 小兵部<蔵人なるちかたゝか女>小木工<もくのせうたいらの>
MUHA000003015 <のふよしといひ侍なる人の女なり>かたちなとおかし
MUHA000003016 きわか人のかきりにてさしむかひ
MUHA000003017 つゝゐわたりたりしはいと見るか
MUHA000003018 ひこそ侍しか夜ふくるまゝに月
MUHA000003019 くまなきにいきのおものはうねへ
MUHA000003020 ともまいるとのもりかんもりの女
MUHA000003021 くわんかほもみしらぬをりみかと
MUHA000003022 つかさなとやうのものにやあらん」(第3段詞第1紙)
MUHA000003023 おろそかにさうそきけさうし
MUHA000003024 つゝおとろのかんさしおほやけ/\
MUHA000003025 しきさましてしんてんのひん
MUHA000003026 かしのらうわた殿のくちまて
MUHA000003027 をしこみてゐたれは人もえ
MUHA000003028 とをりかよはす」(第3段詞第2紙)
(第3段絵)
(第4段絵)
(第5段絵)
MUHA000004001 おものまいりはてゝ女房みすの
MUHA000004002 もとにいてゐたりほかけに
MUHA000004003 きら/\と見えわたる中におほ
MUHA000004004 しきふのおもとのもからきぬを
MUHA000004005 しをのやまのこまつはらを
MUHA000004006 ぬいたるさまいとおかしおほし
MUHA000004007 きふはみちのくにのかみのめ
MUHA000004008 殿のせんしなり」(第4段詞)
(第6段絵)
MUHA000005001 そのよの御まへのありさまいと
MUHA000005002 ひとに見せまほしけれはよいの
MUHA000005003 さうのさふらふひやうふをゝ
MUHA000005004 しあけてこのよにはかうい
MUHA000005005 とめてたきことまた見たま
MUHA000005006 はしといひ侍しかはあなかしこ/\
MUHA000005007 とほんそんをはおきて手をすり
MUHA000005008 てよろこひ侍し」(第5段詞)
(第7段絵)
MUHA000006001 宮のおまへにて文しゆの所/\よま
MUHA000006002 せ給なとしてさるさまのことしろし
MUHA000006003 めさまほしけにおほいたりしかは
MUHA000006004 いとしのひて人候はぬもの/\ひま/\に
MUHA000006005 おとゝしの夏ころより楽府といふゝみ
MUHA000006006 二巻をそしとけなゝからおしへたてき
MUHA000006007 こえさせて侍るかくし侍り宮もしのひ
MUHA000006008 させ給しかとも殿もうちもけしきを
MUHA000006009 しらせ給て御文ともをめてたうかゝせ給
MUHA000006010 てそとのはたてまつらせ給」(第6段詞)
MUHA000007001 きぬにあをいろをゝしかへしきたる
MUHA000007002 ねたけなりわらはのかたちもひとりはいと
MUHA000007003 まほに見えす宰相の中将はわらはいとそ
MUHA000007004 ひやかにかみともおかしなれすきたる
MUHA000007005 一人をそいかにそや人のいひしみなこ
MUHA000007006 きあこめにうはきはこゝろ/\なりかさ
MUHA000007007 みはいつえなるなかにおはりはたゝゑひ
MUHA000007008 そめをきせたり中/\ゆへ/\しく
MUHA000007009 心あるさましてものゝいろあひつやなと
MUHA000007010 いとすくれたりしもつかへの中にいとか
MUHA000007011 ほすくれたる扇とるとて六位のくら人
MUHA000007012 ともよるに心となけやりたるこそやさし
MUHA000007013 きものからあまり女にはあらぬかと見ゆ」(第7段詞)
(第8段絵)

「藤田家本」(国宝 藤田美術館蔵 1巻)
MUFU000001001 上達部の座をたちて御はしの
MUFU000001002 うへにまいり給殿をはしめたてま
MUFU000001003 つりてたうち給かみのあらそひい
MUFU000001004 とまさなしうたともあり女房さかつ
MUFU000001005 きなとあるをりいかゝはいふへきなと
MUFU000001006 くち/\思こゝろみる
MUFU000501007  めつらしきひかりさしそふさか月は
MUFU000001008  もちなからこそちよもめくらめ
MUFU000001009 四条の大納言もさしいてんほとうたを
MUFU000001010 はさるものにてこはつかひよういゝ
MUFU000001011 るへしなとさゝめきあらそふほと
MUFU000001012 にことおほくて夜いたうふけぬ
MUFU000001013 れはにやとりわきてもさゝてまか
MUFU000001014 て給ろくともかんたちめには女の
MUFU000001015 さうそくに御そむつきやそひ
MUFU000001016 たらん殿上の四位はあはせひとかさ
MUFU000001017 ねはかま五位はうちき一かさね六位
MUFU000001018 ははかまひとくそ見えし」(第1段詞)
(第1段絵)
MUFU000002001 またのよ月いとおもしろし比
MUFU000002002 さへおかしきにわかき人はふねに
MUFU000002003 のりてあそふいろ/\なるおりよ
MUFU000002004 りもおなしさまにさうそきた
MUFU000002005 るやうたいかみのほとくもりなく
MUFU000002006 見ゆこ大輔けんしきふみやき
MUFU000002007 の侍従五せち弁うこむ小ひやうゑ
MUFU000002008 小衛門むまやすらい伊勢人なと
MUFU000002009 はしちかくゐたるを左さい将の中将
MUFU000002010 <経房>とのゝ中将のきみ<教通>いさなひ
MUFU000002011 いてたてまて右のさい将の中将<兼隆>
MUFU000002012 にさをさゝせてふねにのせ給か
MUFU000002013 たへはすへりとゝまりてさすか
MUFU000002014 うらやましくやみいたし
MUFU000002015 つゝいたり」(第2段詞)
(第2段絵)
MUFU000003001 北の陣に車あまたありといふは
MUFU000003002 うへ人ともなりけり藤三位をは
MUFU000003003 しめにて侍従の命婦藤少将の
MUFU000003004 命婦むまの命婦ちくせんのみやうふ
MUFU000003005 せうの命婦あふみの命婦なとそ
MUFU000003006 きゝ侍しみもしらぬひと/\なれは
MUFU000003007 ひかことも侍らんかし舟のひともま
MUFU000003008 とひいりぬ殿いてゐ給ておほすこと
MUFU000003009 なき御けしきにもてはやしたはふれ
MUFU000003010 給おくり物ともしな/\にたまふ」(第3段詞)
(第3段絵)
MUFU000004001 七日よはおほやけの御うふやしなひ
MUFU000004002 くら人の少将みちまさを御つかひにて
MUFU000004003 ものゝかす/\かきたるふみやないはこに
MUFU000004004 いれてまいれりやかて返給勧学院の
MUFU000004005 衆ともあゆみつゝきてまいれるけさむ
MUFU000004006 の文又けいすかへし給ろくとも給へ
MUFU000004007 しこよひのきしきはことにまさ
MUFU000004008 りておとろ/\しくのゝしるに御丁
MUFU000004009 の中をのそきまいらせたれはかく国
MUFU000004010 のおやともてさはかれ給うるはしき
MUFU000004011 御気しきにも見えさせ給はすゝこし
MUFU000004012 うちなやみおもやせておほんとのこも
MUFU000004013 れる御ありさまつねよりもあえかに
MUFU000004014 わかくうつくしけなりちいさきとう
MUFU000004015 ろを御帳の中にかけたれはくもりな
MUFU000004016 きにいとゝしき御いろあひそこひも
MUFU000004017 しらすきよらなるにこちたき御く
MUFU000004018 しはゆひてまさらせ給わさなりけりと
MUFU000004019 思かけまくもいとさらなれはえそかきつゝけ
MUFU000004020 侍らぬおほかたのことゝもはひと夜のおなし
MUFU000004021 こと上達部のろくはみすの中より女のさう
MUFU000004022 そく宮の御そなとそへていたす殿上人
MUFU000004023 とうふたりをはしめてよりつゝとる」(第4段詞)
(第4段絵)
MUFU000005001 行幸ちかくなりぬとてとのゝうちを
MUFU000005002 いよ/\つくろひみかゝせ給よにをも
MUFU000005003 しろきゝくのねをたつねつゝ
MUFU000005004 ほりてまいるいろ/\うつろひたるも
MUFU000005005 きなるかみ所あるもさま/\にうゑ
MUFU000005006 たてたるもあさきりのたえまに
MUFU000005007 みわたしたるはけにおひもしそき
MUFU000005008 ぬへき心ちするになそやまいて思事
MUFU000005009 のすこしもなのめなる身ならましかは
MUFU000005010 すき/\しくもゝてなしわかやきてつ
MUFU000005011 ねなきよをもすくしてましめて
MUFU000005012 たき事おもしろきことをみきく
MUFU000005013 につけてもたゝ思かけたりし心の
MUFU000005014 ひくかたのみつよくて物うくおもはすに
MUFU000005015 なけかしきことのまさるそいとくる
MUFU000005016 しきやいかていまはなをものわす
MUFU000005017 れしなんおもふかひもなしつみもふ
MUFU000005018 かゝんなりなとあけたてはうちなか
MUFU000005019 めて水とりともの思事なけに
MUFU000005020 あそひあへるをみる
MUFU000605021  水とりの水の上とやよそにみん
MUFU000005022  われもうきたる世をすくしつゝ」(第5段詞)
(第5段絵)
「藤田家別本」(田中親美模本 田中家蔵 1葉)
MUFU000006001 かれもさこそ心をやりてあそ
MUFU000006002 ふとみゆれと身はいとくるし
MUFU000006003 かんなりとおもひよそへらる少将
MUFU000006004 のきみふみおこせ給へる返事
MUFU000006005 かくにしくれのさとかきくらせは
MUFU000006006 つかひもいそく又そらのけし
MUFU000006007 きも心ちさはきてなんとてこ
MUFU000006008 しをれたる事やかきませ
MUFU000006009 たりけんくらうなりにたるに
MUFU000006010 たちかへりいたうかすみたるこせ
MUFU000006011 んしに
MUFU000706012  くもりなくなかむるそらもかき
MUFU000006013  くらしいかにしのふるしくれなるらん
MUFU000006014 かきつらんこともおほえす
MUFU000806015  ことはりの時雨のそらは雲まあれと
MUFU000006016  なかむるそてそかはくまもなき
MUFU000006017 あたらしくつくられたるふね
MUFU000006018 ともさしよせて御覧す龍頭
MUFU000006019 鷁首のいけるかたちおもひやら
MUFU000006020 れてあさやかにうるはし」(第6段詞)

「旧森川家本(国宝 五島美術館蔵 額装6面)
MUMO000001001 くれて月いとおもしろきに宮
MUMO000001002 のすけ女房にあひてとりわき
MUMO000001003 たるよろこひもけいせさせんと
MUMO000001004 にやあらんつまとのわたりも御
MUMO000001005 ゆとのゝけはひにぬれ人のおとも
MUMO000001006 せさりけれはこのわたとのゝひ
MUMO000001007 むかしのつまなる宮のないしの
MUMO000001008 つほねにたちよりてこゝにやとあん
MUMO000001009 ないし給さい将はなかのまによりて
MUMO000001010 またさゝぬかうしのかみおしあけて
MUMO000001011 おはすやなとあれといらへもせぬに大夫の
MUMO000001012 こゝにやとの給にさへきゝしのひんもこ
MUMO000001013 と/\しきやうなれははかなきいらへなと
MUMO000001014 すいと思事なけなる御気色ともなり我
MUMO000001015 御いらへはせす大夫を心ことにもてなし
MUMO000001016 きこゆことはりなからわろしかゝる所に上下
MUMO000001017 らうのけちめいたうはわくものかとあは
MUMO000001018 め給今日のたうとさなとこゑおかしう
MUMO000001019 うたふ夜ふくるまゝに月いとあかしかうしの
MUMO000001020 もとゝりさけよとせめ給へといとくたりて
MUMO000001021 かんたちめのゐ給はんもかゝる所といひなからかた
MUMO000001022 はらいたしわかやかなる人こそものゝほとしらぬ
MUMO000001023 やうにあたえたるもつみゆるさるれなにかあさ
MUMO000001024 れはましをおもへはゝなたす」(第1段詞)
(第1段絵)
MUMO000002001 御いかはしもつきのつひたちの日
MUMO000002002 れいの人/\のしたてゝまうのほ
MUMO000002003 りあひたる御前のありさまゑに
MUMO000002004 かいたるものあはせの所にそいとよ
MUMO000002005 うにて侍し御帳のひんかしなるを
MUMO000002006 ましのきはにみ木丁をおくの御し
MUMO000002007 やうしよりひさしのはしらまてひま
MUMO000002008 もあらせすたてきりて南おもてに
MUMO000002009 おまへのものはまいりすへたり西
MUMO000002010 によりて大宮のおものれいのちんの
MUMO000002011 おしきなにくれのたいなりけんかし
MUMO000002012 そなたは見す御まかなひ宰相のきみ
MUMO000002013 さぬきとりつく女房さいしもとゆひ
MUMO000002014 なとしたりわかみやの御まかなひは
MUMO000002015 大納言のきみひんかしによりてまいり
MUMO000002016 すへたりちひさき御たい御さら
MUMO000002017 とも御はしのたいすはまなともひゝな
MUMO000002018 あそひのくと見ゆそれよりひんか
MUMO000002019 しのひさしのみすゝこしあけて弁内侍
MUMO000002020 中つかさの命婦小中将の君なとさる
MUMO000002021 へきかきりとりつゝまいるおくに
MUMO000002022 ゐてくはしくは見侍らす」(第2段詞)
(第2段絵)
「旧森川家本」(重要文化財 大倉家蔵 1幅)
MUMO000003001 こよひ少輔のめのといろゆる
MUMO000003002 さるこゝしきさまうちし
MUMO000003003 たり宮いたきたてまつり
MUMO000003004 御帳のまにて殿のうへいたき
MUMO000003005 うつしたてまつり給てゐさ
MUMO000003006 りいてさせ給へるほかけの御さ
MUMO000003007 まけはひことにめてたし
MUMO000003008 あかいろのからの御そちすり
MUMO000003009 の御もうるはしくさうそき給
MUMO000003010 へるもかたしけなくもあはれに
MUMO000003011 もみゆ大宮はえひそめのい
MUMO000003012 つへの御そすわうの御こう
MUMO000003013 ちきたてまつれりとのもち
MUMO000003014 ゐはまいりたまふ」(第3段詞)
(第3段絵)
「旧森川家本」(国宝 五島美術館蔵 額装6面続き)
MUMO000004001 宮の大夫みすのもとにまいりてかん
MUMO000004002 たちめをまへにめさんとけいし給
MUMO000004003 きこしめしつとあれは殿よりはしめたて
MUMO000004004 まつりてみなまいり給はしのひんかし
MUMO000004005 のまを上にて東の妻戸の前まてゐ給へ
MUMO000004006 り女房ふたへみへつゝゐわたりてみすとも
MUMO000004007 をそのまにあたりてゐ給へる人/\より
MUMO000004008 つゝ巻あけ給大納言の君宰相の君小少将
MUMO000004009 君宮の内侍とゐ給へるに右のおとゝよりて御木
MUMO000004010 帳のほころひ引たちみたり給さたすきたり
MUMO000004011 とつきしろふもしらす扇をとりたわふれ
MUMO000004012 ことのはしたなきもおほかり大夫かはらけとりて
MUMO000004013 そなたにいて給へりみの山うたひて御あ
MUMO000004014 そひさまはかりなれといとおもしろしその
MUMO000004015 つきのまの東のはしらもとに右大将<実資>よりて
MUMO000004016 きぬのつまそてくちかそへ給へるけしき
MUMO000004017 人よりことなりゑいのまきれをあなつり
MUMO000004018 きこえまたゝれとかはなとおもひ侍てはか
MUMO000004019 なきことゝもいふにいみしうされいまめく
MUMO000004020 人よりもけにいとはつかしけにこそおはす
MUMO000004021 めりしかさか月のすんのくるを大将はおち
MUMO000004022 給へとれいのことなしひのちとせよろつよ
MUMO000004023 にてすきぬ左衛門の督あなかしこゝのわ
MUMO000004024 たりわかむらさきや候とうかゝ給源氏に
MUMO000004025 にるへき人も見え給はぬにかのうへ
MUMO000004026 はまいていかてものし給はんと
MUMO000004027 きゝゐたり」(第4段詞)
(第4段絵)
「旧森川家本」(重要文化財 森川家蔵 1幅)
MUMO000005001 おそろしかるへきよの御ゑいな
MUMO000005002 めりとみてことはつるまゝに宰
MUMO000005003 相のきみにいひあはせてかくれな
MUMO000005004 むとするにひんかしおもてにとのゝ
MUMO000005005 君たち宰相の中将なといりてさはか
MUMO000005006 しけれはふたり御帳のうしろにゐ
MUMO000005007 かくれたるをとりはらはせ給てふた
MUMO000005008 りなからとらへすへさせ給へり和哥
MUMO000005009 ひとつつかうまつれさらはゆるさんと
MUMO000005010 の給はすいとわひしくおそろしけれは
MUMO000005011 きこゆ
MUMO000905012  いかにいかゝかそへやるへきやちとせの
MUMO000005013  あまりひさしき君か御よをは
MUMO000005014 あはれつかうまつれるかなとふたゝ
MUMO000005015 ひはかりすうせさせ給ていとゝうの
MUMO000005016 給はせたる
MUMO001005017  あしたつのよはひしあらは君かよの
MUMO000005018  ちとせのかすもかそへとりてん
MUMO000005019 さはかりゑい給へる御心ちにもおほ
MUMO000005020 しけることのさまなれはいとあは
MUMO000005021 れにことはりなり」(第5段詞)
(第5段絵)

「旧久松家本」(重要文化財 日野原家蔵 1巻)
MUHI000001001 りむしのまつりのつかひはとのゝ
MUHI000001002 権中将のきみなりその日は御
MUHI000001003 ものいみなれは殿御とのいせさせ
MUHI000001004 給へりかんたちめもまい人のき
MUHI000001005 みたちもこもりてよひとよほそとの
MUHI000001006 わたりいとものさはかしきけはひ
MUHI000001007 したりつとめてとのゝうへも
MUHI000001008 まうのほりてものこらんすつかひ
MUHI000001009 の君のふちかさしていともの/\
MUHI000001010 しうおとなひ給へるくらの命婦
MUHI000001011 はまひ人にめもみやらすうち
MUHI000001012 まほり/\そなきける御ものいみ
MUHI000001013 なれはみやしろよりうしの時に
MUHI000001014 そかへりまいれはみかくらなともさ
MUHI000001015 まはかりなりかねときかこそまては
MUHI000001016 いとつき/\しかりしをこよなくお
MUHI000001017 とろへたるふるまひそ見しるま
MUHI000001018 しき人のうゑなれとあはれに思
MUHI000001019 よそへらるゝことおほくはへる」(第1段詞)
(第1段絵)
MUHI000002001 しはすの廿九日にまいるはし
MUHI000002002 めてまいりしもこよひの事そ
MUHI000002003 かしいみしうもゆめちにまとは
MUHI000002004 れしかなとおもひいつれはこよな
MUHI000002005 くたちなれにけるもうとましの
MUHI000002006 身のほとやとおほゆよいたうふ
MUHI000002007 けにけり御ものいみにおはしま
MUHI000002008 しけれはおまへにもまいらす
MUHI000002009 こゝろほそくてうちふしたるに
MUHI000002010 まへなる人/\うちわたりはなを
MUHI000002011 いとけはひことなりけりさとに
MUHI000002012 てはいまはねなましものをさもいさ
MUHI000002013 ときくつのしけさかなといろめ
MUHI000002014 かしくいひゐたるをきく
MUHI001402015  としくれてわかよふけゆく風のをとに
MUHI000002016  心のうちのすさましきかな
MUHI000002017 とそひとりこたれし」(第2段詞)
(第2段絵)
MUHI000003001 わた殿にねたる夜とをたゝく
MUHI000003002 人ありときけとおそろしさに
MUHI000003003 おともせてあかしたるつとめて
MUHI001703004  よもすからくひなよりけになく/\そ
MUHI000003005  まきのとくちにたゝきわひつる
MUHI000003006 かへし
MUHI001803007  たゝならしとはかりたゝく
MUHI000003008  くひなゆへあけてはいかに
MUHI000003009  くやしからまし」(第3段詞)
(第3段絵)
MUHI000004001 二宮の御いかは正月十五日そのあか
MUHI000004002 月にまいるに小少将のきみあけはてゝ
MUHI000004003 はしなくなりにたるにまいり給
MUHI000004004 へり例のおなし所にゐたりふたりの
MUHI000004005 つほねをひとつにあはせてかたみに
MUHI000004006 さとなるほともすむひとたひにまいり
MUHI000004007 ては木帳はかりをへたてにてあり殿そ
MUHI000004008 わらはせ給かたみにしらぬ人もかたら
MUHI000004009 はゝなときゝにくゝされとたれも
MUHI000004010 さるうと/\しきことなけれは心やす
MUHI000004011 くてなん日たけてまうのほるかの
MUHI000004012 きみはさくらのおり物のうちきあか
MUHI000004013 いろのからきぬれいのすりもき給
MUHI000004014 へりこうはいにもえきやなきのから
MUHI000004015 きぬものすりめなといまめかしけれは
MUHI000004016 とりもかへつへくそわかやかなるうへ人
MUHI000004017 とも十七人そみやの御方にまいりたる
MUHI000004018 いとみやの御まかなひは橘三位とりつく
MUHI000004019 人はしにはこたいふけんしきふ内には
MUHI000004020 小少将みかときさき御帳のうちには
MUHI000004021 ふた所なからおはしますあさひのひかり
MUHI000004022 あひてまはゆきまてはつかしけなる」(第4段詞第1紙)
MUHI000004023 おまへなりうへは御なをしこくち
MUHI000004024 たてまつりて宮はれいのくれなゐ
MUHI000004025 の御そこうはいもへきやなきやま
MUHI000004026 ふきの御そうへにゑひそめのお
MUHI000004027 りものゝ御そこうちきもんもいろも
MUHI000004028 めつらしくいまめかしきたてまつれり
MUHI000004029 あなたはいとけそうなれはこのおくに
MUHI000004030 やをらすへりとゝまりてゐたり中
MUHI000004031 つかさのめのとみやいたきたてま
MUHI000004032 つりて御丁のはさまより南さまに
MUHI000004033 いてたてまつるこまかにそひ/\しく
MUHI000004034 なともあらぬかたちのたゝゆるゝかにもの/\
MUHI000004035 しきさまうちしてさるかたに人を
MUHI000004036 しへつへくかと/\しきけはひそした
MUHI000004037 るえひそめのおり物のうちきむも
MUHI000004038 むのあをいろにさくらのからきぬきた
MUHI000004039 りその日の人のさうそくいつれと
MUHI000004040 なくつくしたるをそてくちのあは
MUHI000004041 ひわろうかさねたる人しも御まへの
MUHI000004042 ものとりいるとてそこらのかんたち
MUHI000004043 め殿上人にさしいてゝまほられつる事
MUHI000004044 とそのちにさい将のきみなとくち
MUHI000004045 をしかり給めりし」(第4段詞第2紙)
(第4段絵)
MUHI000005001 ひさしの御すあくるきはにうゑの
MUHI000005002 女房は御帳の西をもてひのおまし
MUHI000005003 にをしかさねたるやうにてなみゐ
MUHI000005004 たり三位をはしめて内侍のすけた
MUHI000005005 ちもあまたまいれり宮の人/\はわか
MUHI000005006 うとはなけしの下ひんかしのひさしの
MUHI000005007 南のさうしはなちてみすかけたるに
MUHI000005008 上臈はゐたり御帳のひんかしのは
MUHI000005009 さまたゝすこしあるに大納言のきみ小
MUHI000005010 少将のきみゐ給へる所にたつねきて
MUHI000005011 みるうへはひらしきのをさにおもの
MUHI000005012 まいりすへたりおまへのものしたるさ
MUHI000005013 まいひつくさんかたなし簀子に北向に
MUHI000005014 西を上にて上達部左右内の大臣殿春宮の
MUHI000005015 傅中宮大夫四条大納言それより下は見え侍
MUHI000005016 さりき御遊あり殿上人はこの対の辰巳に
MUHI000005017 あたりたる廊にさふらふ地下はさたまれり
MUHI000005018 かけまさのあそんこれかせのあそんゆきよ
MUHI000005019 しとをまさなとやうの人/\うゑに四条大納言
MUHI000005020 はうしとり頭弁ひわことは経房朝臣左さい将の
MUHI000005021 中将さうのふゑとそそうてうのこゑにてあ
MUHI000005022 なたふとつきにむしろたこの殿なとう
MUHI000005023 たふかくはとりのはきうあそふ座にても
MUHI000005024 てうし猶ふくうたにはうしうちたかへ
MUHI000005025 てとかめられたりしはいせのかみ
MUHI000005026 にそありし」(第5段詞)
(第5段絵)
MUHI000006001 右のおとゝわこんいとおもしろく
MUHI000006002 なときゝはやし給され給めり
MUHI000006003 しはてにいみしきあやまちの
MUHI000006004 いとをしきをこそ見る人の身
MUHI000006005 さへひへはへりしか御をくり
MUHI000006006 ものふゑふたつはこにいれて
MUHI000006007 とそ見はへりし」(第6段詞)
(第6段絵)