First updated 6/9/2002(ver.1-1)
Last updated 4/21/2009(ver.2-2)
更新内容:翻刻を見やすくし、注記には番号を付けた。朱書に関する注記は、モノクロ版からの推測によったために、墨書との区別を外した。
渋谷栄一翻字(C)

  

花 宴


《概要》
 明融臨模本は、藤原定家筆の青表紙本の臨模本とはいうものの、現状では、後人の筆によるさまざまな本文校訂跡や本文書き入れ注記、句点、声点、濁点等をもつ。そうした現状の様態をそのままに、以下の諸点について分析していく。
1 明融臨模本と青表紙本との関係 鎌倉期書写青表紙本(池田本・伏見天皇本等)を補助的資料として
2 明融臨模本本文と大島本本文との関係 青表紙本復元と大島本親本復元を比較して
3 明融臨模本の本文校訂に対校された本文系統
4 明融臨模本の句点の関係
5 明融臨模本の後人書き入れ注記
  大島本の書き入れ注記との関係
  その他の書き入れ注記との関係

《書誌》
 「花宴」の筆跡は、全文定家自筆本を臨模したものと見える。

《翻刻資料》
凡例
1 本稿は、『源氏物語(明融本)氈x(東海大学蔵桃園文庫影印叢書 1990(平成2)年6月 東海大学出版会)を現状のまま翻刻した。よって、後人の筆が加わった本文様態である。後人の筆を除いた青表紙本復元本文は別途に作成した。
2 行間注記は【 】− としてその頭に番号を記した。また付箋注記は、付箋番号を記した。
3 小字及び割注等は< >で記した。/は改行を表す。また漢文の訓点等は< >で記した。
4 合(掛)点は、\<朱(墨)合点>と記した。朱句点は「・」で記した。
5 本文の校訂記号は次の通りである。
 $(ミセケチ)・#(抹消)・+(補入)・&(ナゾリ)・=(併記)・△(不明文字)
 ( )の前の文字及び( )内の記号の前の文字は、訂正以前の文字、記号の後の文字が訂正以後の文字である。ただし、なぞり訂正だけは( )の前の文字は訂正後の文字である。訂正以前の本行本文の文字を尊重したことと、なぞり訂正だけは元の文字が判読しにくかったための処置である。
6 朱・墨等の筆跡の相違や右側・左側・頭注等の注の位置は< >と( )で記した。私に付けた注記は(* )と記した。
7 各丁の終わりには」の印と丁数とその表(オ)裏(ウ)を記した。
8 なお、該本には、朱点で濁点符号が付いているが、省略した。また、朱・墨の区別については、影印本(モノクロ写真)に拠ったために、必ずしも正確ではない。原典を直接に調査する機会ができたら正確を期したい。利用者は注意されたい。

「花の宴 八」(題箋)

「上冷泉殿為和卿御息明融 琴山(印)」(遊紙表貼紙)

  きさらきのはつかあまり南殿のさくら
  の宴せさせ給后春宮の御つほね左右
0001【后】−藤壺(大島本0001)
0002【春宮】−朱雀院(大島本0002)
  にしてまうのほり給弘徽殿の女御中宮の
  かくておはするをおりふしことにやすからす
0003【ことに】−毎也(大島本0003)
  おほせと物見にはえすくし給はてまいり給
  日いとよくはれてそらのけしきとりのこゑも
  心地よけなるにみこたちかむたちめよりはし
  めてその道のはみなたむゐんたまはりて」1オ
0004【たむゐん】−探韻也 各分一字詩也(大島本0004)

  ふみつくり給宰相中将春といふもし
0005【ふみつくり】−作文(大島本0005)
0006【宰相中将】−源氏(大島本0006)
  たまはれりとのたまふこゑさへれいの人に
  ことなりつきに頭中将人のめうつしも
  たゝならすおほゆへかめれといとめやすくも
  てしつめてこはつかひなともの/\しくすく
  れたりさての人/\はみなおくしかちにはな
0007【おくしかち】−臆(大島本0007)
0008【はなしろめる】−世俗ニオクシタル事ヲ鼻シロムト云(大島本0008)
  しろめるおほかり地下の人はましてみかと
  春宮の御さえかしこくすくれておはし」1ウ

  ますかゝる方にやむことなき人おほくもの
  し給ころなるにはつかしくはる/\とくも
  りなき庭にたちいつるほとはしたなくて
  やすきことなれとくるしけ也年おいたるはかせ
0009【はかせ】−博士(大島本0009)
  とものなりあやしくやつれてれいなれたるも
  あはれにさま/\御覧するなむおかしかりける
  かくともなとはさらにもいはすとゝのへさせ給へり
0010【かく】−楽(大島本0011)
  やう/\いり日になるほとはるのうくひすさへつると」2オ

  いふまひいとおもしろく見ゆるに源氏の御
  もみちの賀のおりおほしいてられて春宮
  かさしたまはせてせちにせめのたまはするに
  のかれかたくてたちてのとかにそてかへす所を
  ひと越れけしき許まひたまへるにゝるへき
  物なく見ゆ左のおとゝうらめしさもわすれて
0011【左のおとゝ】−摂政(大島本0013)
0012【うらめしさ】−葵上事(大島本0014)
  なみたおとし給頭中将いつらをそしとあれハ
  柳花苑といふまひをこれはいますこし」2ウ
0013【花】−クワ

  すくしてかゝることもやと心つかひやしけむ
  いとおもしろけれは御そたまはりていとめ
  つらしきことに人おもへりかむたちめみなミ
  たれてまひたまへと夜にいりてはことにけ
  ちめも見えすふみなとかうするにも源
  氏のきみの御をはかうしもえよみやらす
0014【御をは】−御詩也(大島本0018)
  句ことにすしのゝしるはかせともの心にも
0015【すし】−誦(大島本0019)
  いみしうおもへりかうやうのおりにもまつこの」3オ

  きみをひかりにしたまへれはみかともいかてか
  をろかにおほされむ中宮御めのとまるに
  つけて春宮の女御のあなかちにゝくみ
0016【春宮の女御】−春宮ノ母女御也(大島本0020)
  給らんもあやしうわかゝうおもふも心うし
0017【おもふも心うし】−「おもはしと思ふも物をおもふなり/思はしとたにおもはしやなそ」(付箋01)
  とそみつからおほしかへされける
    おほかたに花のすかたを見ましかは
0018【おほかたに】−藤壺(大島本0021)
  つゆも心のをかれましやは御心のうちなり
  けむこといかてもりにけん
  夜いたうふけてなむことはてける」3ウ

  かむたちめをの/\あかれきさき春宮かへらせ
0019【あかれ】−分散也(大島本0022)
  給ぬれはのとやかになりぬるに月いとあかう
  さしいてゝおかしきを源氏のきみゑい心地に
  見すくしかたくおほえ給ひけれはうへの
  人/\もうちやすみてかやうにおもひかけぬ
  ほとにもしさりぬへきひまもやあるとふち
  つほわたりをわりなうしのひてうかゝひ
  ありけとかたらふへきとくちもさしてけれは」4オ

  うちなけきてなをあらしに徽殿のほ
0020【弘徽】−コキ
0021【ほそとの】−細殿也 廊ヲ細殿ト云一説扉ヲ云(大島本0024)
  そとのにたちよりたまへれは三のくちあ
0022【三】−サン<朱>
0023【三のくち】−弘徽殿ニ北南ヘホソクトヲリタルアリ是ハ北ヨリ第三間ニアタル戸ナリ格子ヤリ戸也(大島本0025)
  きたり女御はうへの御つほねにやかてまう
0024【御】−ミ
  のほり給にけれは人すくなゝるけはひ也
  おくのくるゝともあきて人をともせす
  かやうにて世中のあやまちはするそかし
  と思てやおらのほりてのそき給人はみな
  ねたるへしいとわかうおかしけなるこゑの」4ウ
0025【いとわかうおかしけなるこゑの】−源氏君通朧月夜尚侍事(大島本0027)

  なへての人とはきこえぬおほろ月よにゝる
0026【おほろ月よにゝる物そなき】−\<合点>「てりもせすくもりもはてぬ春の夜/に/おほろ月よにゝるものそなき」(付箋02)
  物そなきとうちすしてこなたさまには(は$)く
0027【は】−不用
  るものかいとうれしくてふとそてをとらへ
  給女おそろしとおもへるけしきにてあな
  むくつけこはたそとのたまへとなにかうとま
  しきとて
    ふかき夜のあはれをしるもいる月の
0028【ふかき夜の】−宵灯共憐深夜月(大島本0029)
  おほろけならぬちきりとそ思とてやおら
  いたきおろしてとはをしたてつあさま」5オ

  しきにあきれたるさまいとなつかしうおか
  しけなりわなゝく/\こゝに人とのたまへと
  まろはみな人にゆるされたれはめしよせ
  たりともなんてうことかあらんたゝしのひ
  てこそとの給こゑにこの君なりけりときゝ
  さためていさゝかなくさめけりわひしとお(わひしとお$)
  わひしとおもへる物からなさけなくこわ/\し
  うは見えしとおもへりゑひ心地やれいならさ」5ウ

  りけんゆるさむことはくち越しきに女もわか
  うたをやきてつよき心もしらぬなるへし
  らうたしと見給にほとなくあけゆけは心
  あわたゝし女はましてさま/\におもひみ
  たれたるけしき也猶なのりし給へいかてか
  きこゆへきかうてやみなむとはさりともお
  ほされしとのたまへは
    うき身世にやかてきえなはたつねても
0027【うき身世に】−朧月夜(大島本0031)
  草のはらをはとはしとや思といふさま」6オ

  えむになまめきたりことはりやきこえたか
  へたるもしかなとて
    いつれそとつゆのやとりをわかむまに
0028【いつれそと】−源氏 イツレソトウチネン程モ猶オホツカナカルヘシト云也(大島本0033)
  こさゝかはらに風もこそふけわつらハ
  しくおほすことならすはなにかつゝまむ
  もしすかい給かともいひあへす人/\越きさハ
  きうへの御つほねにまいりちかふけしきとも
0029【御】−ミ
  しけくまよへはいとわりなくてあふきはかりを」6ウ

  しるしにとりかへていて給ぬきりつほには
  ひと/\おほくさふらひておとろきたるもあ
  れはかゝるをさもたゆみなき御しのひあり
  きかなとつきしろひつゝそらねをそしあへ
  るいり給ひてふし給へれとねいられすおか
  しかりつる人のさまかな女御の御越とうと
  たちにこそハあらめまたよになれぬは五六
0030【よになれぬ】−世 ヌシナキヲ云(大島本0035)
  の君ならんかし帥宮の北のかた頭中将のすさめぬ」7オ

  四の君なとこそよしときゝしか中/\それなら
  ましかはいますこしおかしからまし六は春宮
0031【六は】−朧月夜是也(大島本0037)
  にたてまつらんと心さし給へるをいとおしうも
  あるへいかなわつらはしうたつねんほとも
  まきらはしさてたえなんとはおもはぬけ
  しきなりつるをいかなれはことかよはすへきさ
  まをゝしへすなりぬらんなとよろつに思も
  心のとまるなるへしかうやうなるにつけても」7ウ

  まつかのわたりのありさまのこよなうおくまりたる
  はやとありかたう思ひくらへられ給その日は
  後宴のことありてまきれくらし給つさう
  のことつかうまつり給昨日の事よりもなまめ
  かしうおもしろしふちつほはあかつきに
  まうのほり給にけりかのありあけいてやし
0032【ありあけ】−尚侍(大島本0040)
  ぬらむと心もそらにて思ひいたらぬくまなき
  よしきよこれみつをつけてうかゝはせ給けれは」8オ
0033【よしきよこれみつ】−良清 惟光(大島本0041)

  おまへよりまかて給けるほとにたゝいま北のちん
  よりかねてよりかくれたちて侍りつるくるまとも
  まかりいつる御方/\のさと人侍つる中に四位の
0034【四位の少将右中弁】−両人二条太政大臣子(大島本0042)
  少将右中弁なといそきいてゝをくりし侍つる
  や弘徽殿の御あかれならむと見たまへつる
0035【御あかれ】−女御ノ御里ヘ出給也(大島本0043)
  けしうはあらぬけはひともしるくてくるま
  みつはかり侍つときこゆるにもむねうちつふ
  れたまふいかにしていつれとしらんちゝおとゝ」8ウ

  なときゝてこと/\しうもてなさむもいかにそ
  やまた人のありさまよく見さためぬほとハ
  わつらはしかるへしさりとてしらてあらむ
  はたいとくちおしかるへけれはいかにせまし
  とおほしわつらひてつく/\となかめふし給
  へりひめ君いかにつれ/\ならん日ころにな
0036【ひめ君】−紫上(大島本0044)
  れはく(く+ツ)してやあらんとらうたくおほしやる
  かのしるしのあふきはさくらかさねにてこき/かたに」9オ

  かすめる月をかきて水にうつしたる心ハへ
  めなれたれとゆへなつかしうもてならし
  たり草のはらをはといひしさまのミ心に
  かゝり給へは
    世にしらぬ心地こそすれありあけの
0037【世にしらぬ】−源氏(大島本0046)
  月のゆくゑをそらにまかへてとかきつけ給
  てをきたまへりおほいとのにもひさしうな
  りにけるとおほせとわかきみも心くるしけれハ」9ウ
0038【わかきみ】−紫上(大島本0047)

  こしらへむとおほして二条院へおはしぬ見る
0039【見るまゝに】−紫上十二歳也(大島本0048)
  まゝにいとうつくしけにおひなりてあい
  行つきらう/\しき心はへいとこと也あかぬ所
  なうわか御心のまゝにをしへなさむとお
  ほすにかなひぬへしおとこの御をしへなれハ
0040【おとこ】−式部宮(式部宮$)
  すこし人なれたることやましらむと思(思+フ)こ
  そうしろめたけれ日ころの御ものかたり御
  ことなとをしへくらしていて給をれいのと」10オ

  くち越しうおほせといまはいとようならは
  されてわりなくはしたひまつはさすおほい
  殿にはれいのふともたいめんし給はす
0041【たいめん】−葵上(大島本0049)
  つれ/\とよろつおほしめくらされてさうの
  御ことまさくりてやはらかにぬる(る+夜)はなくて
0042【やはらかにぬる夜はなくて】−\<合点>(大島本0050)
  うたひ給おとゝわたり給てひと日のけうあり
  しこときこ江給こゝらのよはひにてめいわ
  うの御世四代をなむ見侍ぬれとこのたひの」10ウ

  やうにふみともきやうさくにまひかく物の
0043【きやうさくに】−(辷-一+景)迹也 アラハナル心也 一云サトクシルキ心也 一説散言策也(大島本0051)
  ねともとゝのほりてよはひのふることなむ侍
  らさりつるみち/\のものゝ上手ともおほかる
  ころをひくはしうしろしめしとゝのへ
  させたまへるけ也おきなもほと/\まひいてぬ
  へき心地なむし侍しときこえ給へはことに
0044【ことに】−源氏(大島本0053)
  とゝのへをこなふことも侍らすたゝおほやけこ
  とにそしうなる物のしともをこゝかしこに」11オ

  たつね侍し也よろつのことよりは柳花苑
  まことにこうたいのれいともなりぬへく見給へ
  しにましてさかゆくはるにたちいてさせたま
0045【さかゆくはるに】−\<合点>「今こそあれわれも昔ハおとこ山/さか行時もあり(り+こ)し物を」(付箋03 古今889・新撰和歌353、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄 大島本0054)
  へらましかは世のめんほくにや侍らまし
  ときこ江給弁中将なとまいりあひてかうら
  んにせなかをしつゝとり/\にものゝねとも
  しらへあはせてあそひ給いとおもしろし
  かのありあけのきみははかなかりしゆめを」11ウ
0046【ありあけのきみ】−朧月夜尚侍(大島本0055)

  おほしいてゝいと物なけかしうなかめたまふ
  春宮にはう月許とおほしさためたれは
  いとわりなうおほしみたれたるをおとこも
  たつねたまはむにあとはかなくはあらねと
  いつれともしらてことにゆるしたまはぬあ
  たりにかゝつらはむも人わるく思わつらひ
  給にやよひの廿よ日右大殿のゆみのけちに
0047【右大殿のゆみのけち】−二条右大臣藤花宴事(大島本0056)
0048【けち】−結也(大島本0057)
  かむたちめみこたちおほくつとへたまひて」12オ

  やかてふちの宴し給花さかりはすきにたる
  をほかのちりなむとやをしへられたりけん
0049【ほかのちりなむ】−「ミる人もなき山里の桜はな/ほかのちりなむ後そさかまし」(付箋04)
  越くれてさくさくらふた木そいとおもしろ
  きあたらしうつくり給へる殿を宮たちの
0050【殿】−ヲトヽ
0051【宮たちの御裳き】−弘徽殿女御ノ御腹ノ宮達也(大島本0059)
  御裳きの日みかきしつらはれたりはな/\と
  ものし給とのゝやうにてなにこともいまめかし
  うもてなし給へり源氏の君にもひとひ
  内にて御たいめんのついてにきこえ給しかと」12ウ

  おはせねはくちおしうものゝはえなしとお
  ほして御この四位少将をたてまつり給
0052【四位少将】−軒ハノ荻ノ夫也(大島本0062)
    わかやとの花しなへてのいろならは
0053【わかやとの】−右大臣(大島本0063)
  なにかはさらに君をまたまし
  内におハするほとにてうへにそうし給
  したりかほなりやとわらはせ給てわさと
  あめ(め+る)をはやうものせよかし女みこたち
0054【女みこたち】−弘徽殿ノ御腹ノ宮達也(大島本0064)
  なともおいゝつるところなれはなへての」13オ

  さまには思ふましきをなとのたまはす
  御よそひなとひきつくろひ給ていたう
0055【御よそひ】−粧(大島本0065)
  くるゝほとにまたれてそわたり給さくらの
  からのきの御な越しえひそめのしたかさね
0056【からのき】−綺 ウスキカラアヤ也(ウスキカラアヤ也$)(大島本0066)
0057【えひそめ】−葡萄染(大島本0067)
  しりいとなかくひきてみな人はうへのきぬ
0058【しり】−裾(大島本0069)
  なるにあされたるおほきみすかたのなま
0059【あされたる】−鮮也又宿老之義歟アイタスケ詞也宿ノ字ヲサレタルトイヘリ(大島本0070)
  めきたるにていつかれいりたまへる御さま
  けにいとことなり花のにほひもけをさ」13ウ

  れて中/\ことさましになんあそひなといと
  おもしろうし給て夜すこしふけゆく
  ほとに源氏のきみいたくゑいなやめるさ
  まにもてなし給てまきれたちたまひぬ
  しむてんに女一宮女三宮のおはします
0060【女一宮女三宮】−皆弘徽殿女御ノ御腹也(大島本0071)
  ひんかしのとくちにおはしてよりゐたま
0061【とくち】−妻戸口也(大島本0072)
  へりふちはこなたのつまにあたりて
  あれはみかうしともあけわたして人/\」14オ

  いてゐたりそてくちなとたうかのおりおほ
0062【たうか】−男踏哥(大島本0073)
  えてことさらめきもていてたるをふさ
0063【ふさわしからす】−不祥日本記(大島本0074)
  わしからすとまつふちつほわたりおほ
  しいてらるなやましきにいといたうしひ
  られてわひにて侍りかしこけれとこのお
0064【わひにて】−ワヒタル也二八詞也(大島本0075)
0065【かしこけれ】−ヲソレニト也(大島本0076)
  まへにこそハかけにもかくさせたまはめ
  とてつまとのみすをひきゝたまへはあな
  わつらはしよからぬ人こそやむことなき」14ウ

  ゆかりはかこち侍なれといふけしきを見給
0066【ゆかりは】−源氏ノイモウトノ宮達オハシマス也(大島本0078)
  におも/\しうはあらねとをしなへての
  わかうとゝもにハあらすあてにおかしき
  けはひしるしそらたき物いとけふたう
  くゆりてきぬのをとなひいとはなやかに
  ふるまひなして心にくゝおくまりたる
  けはひはたちをくれいまめかしきこと
  をこのみたるわたりにてやむことなき」15オ

  御方/\もの見たまふとてこのとくちはしめ
  給へるなるへしさしもあるましきこと
  なれとさすかにおかしうおもほされて
  いつれならむとむねうちつふれてあふき
0067【いつれならむ】−有明君(大島本0079)
0068【あふきをとられて】−\<合点> 石川ノコマウト(ウト=人)ニオヒヲトラレテカラキヽヒスルイカナル帯ソ花田ノ帯ノ中ハ綿タルト云々催馬楽石川(大島本0080)
  をとられてからきめを見る
うちおほ
  とけたるこゑにいひなしてよりゐたまへり
  あやしくもさまかへけるこまうとかなといら
  ふ(ふ=ウ)るは心しらぬにやあらんいらへはせて」15ウ

  たゝ時/\うちなけくけはひする方によりかゝ
  りて木丁こしにてをとらへて
    あつさゆみいるさの山にまとふ哉
0069【あつさゆみ】−源氏 弓ノ結ノ日ナレハカクヨメリ(大島本0082)
    ほの見し月のかけや見ゆると
  なにゆへかとをしあてにのたまふをえし
  のはぬなるへし
    心いる方ならませはゆみはりの
0070【心いる】−朧月夜(大島本0083)
  月なきそらにまよはましやはといふこゑ
  たゝそれ也いとうれしきものから」16オ

(白紙)」16ウ

【奥入01】なをあらしに詞 万葉集第七
     黙然不有 なをあらしと事なしくさにいふ事ウ
           きゝしれハすくなかりけり(戻)
【奥入02】貫河律
     ぬ支可波乃世々乃や波良多末久良
     也波良加尓 奴留与波名久天 於也左
     久留川末於や左久留川末波末之天留
     波之 之加左良波也波支乃伊知尓久川
     加比尓加牟 久川加波々 千加伊乃保曽之支乎」17オ

     可戸 左之波支天 宇波毛と利支天
     美や知加与波牟(戻)
【奥入03】石川呂
     伊之加波の己末宇と尓於比乎と良礼天
     可良支久以須留 己比須留
     伊可奈留以可奈留於比曽波奈多の於比の
     奈可波多伊礼太留加可也留可あ也留加
     奈可波太伊礼太留可(戻)」17ウ