凡例
1.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名字母と区別するために太字で表示した。
2.通行の平仮名の字母はそのまま平仮名で翻字した。
3.変体仮名はその字母で翻字した。
4.片仮名はそのまま片仮名で翻字した。
5.字母の崩し字形が複数あるものについては、その崩しレベルに応じて、もっとも漢字の字形を留めている字体群はその仮名または字母の後に「1」と表示し、次いでもっとも崩した字形との中間的字形を保っている字体群はその字母の後に「2」と表示し、大きく漢字字形1群―中間字形2群―仮名字形群の3段階群に区分して表示し分けた。
6.本行本文は10.5ポイントで表示し、書入注記や付箋等は9ポイントで表示した。
7.なお本文と一筆の親本に有った書き入れをそのまま書承したと考えられる書き入れは太字で表示したので注意されたい。
【概要】
54「夢浮橋」
・大島本「夢浮橋」帖(古代学協会蔵)は聖護院道澄筆である。
・本文中の引き歌箇所には朱筆による合点(掛け点)があり、その行間に墨筆で注記している。
・奥入は存在しない。
・本文訂正の方法は朱筆による細字訂正と墨筆による細字訂正とがある。
「夢能う起橋」(題箋)
や満尓おハして連いせ佐勢給ふ屋う尓1・経佛な2登
0001【やまにおはして】−月の八日中堂にてかほる経供養し給ふ事手習巻にも見えたり
具屋う勢させ給ま多の1日ハよか者尓おはした連ハ
楚うつおとろきかし古ま里起こえ給ふ・登しころ御
い能りな1と・つ遣可多らひ給飛け連と・こと尓1いと志多し支1
ことハな可里ける越・此多ひ一品の1宮能御心ちの程尓
さ婦らひ給へ類尓・すくれ1給へ類个む物し給个りと
見たまひて1よ里古よな1うたうとひ給て1い満春こし
婦可き契くは遍(+1給<朱>)て1け連は・をも1/\しうおハ春流
とのゝかくわさとおハしましたることゝ・もて1さハ起きこ
え給ふ御物可多里な1と古満や可尓1してお者す連は」(1オ・2055F)
御ゆつ遣な1と満いり給ふ・すこし人々志つ1ま里ぬる尓1
をのゝわ多里尓1志り給へ類屋と里や侍るととひ給へ者・
0002【をのゝわたりに】−かほる御詞
志可侍るいと古とやうなる所尓なむな2尓1可し可はゝ
0003【しか侍る】−僧都返答
なる・くちあまの侍る越京尓は可/\しからぬすミ可も1
侍らぬうち尓1・かくて・古も1り侍るあひ多ハ・夜中暁尓1
裳あひとふらハむと思給へをきて侍るな1と申給ふ・
楚のわ多里尓ハたゝち可起ころをひまて1・人お1本う・
す見侍ける越い満ハいとかす可尓1こそな里ゆく免連
なとの給て1・いますこしち可くゐよ里て・志能ひや可尓
いとう起多類心ちも1し侍・ま多た徒ね1きこえむ尓つ」(1ウ・2055M)
0004【またたつねきこえむに】−かほる心中
けて1ハ・い可な2里け1ること尓1閑登心え春お1本佐連ぬへき(き#2)
起尓・か多/\はゝ可られ1侍連と・かの1山佐と尓1志るへ起
人の閑く路遍て1侍る屋う尓きゝ侍里しを・たしか
尓てこそハ・い可な2流佐ま尓1て1な1と裳・も1羅しきこえ
免な1とおもひたまふるほと尓1・御てし尓1な里て1・いむ
0005【御てしになりて】−かほる詞
こと那登さつ遣給ひて1个りときゝ侍累ハ満こと可・
また年裳わ可くお1屋なともあ里し人な連は・古ゝ尓
うしなひ多類屋う尓1かこと閑く流ひとな2ん侍る越
0006【かことかくる】−かこつ心也
なとのたまふ・そうつ1佐連はよたゝ人とみえさ里し
0007【されはよたゝ人と】−返答心中
ひと能佐ま楚可し・か具まて1の給ふハ・可ろ/\しくハお」(2オ・2056E)
ほされ1佐里ける人尓こそあめれ1とおもふ尓・ほうし登
いひな1可ら心もな1くたちま地尓かたちを屋徒して
けることゝ・むね1徒ふ連て1いら遍き古えむやうおもひ
満ハさ類・たし可尓1きゝ給へ類尓こそあめれ1・かは可り
心えたまひて1うかゝひたつ1ね1給ハむ尓・閑くれあ累
邊起こと尓1もあら春・中/\阿ら可ひかくさむ耳・阿い
な可る邊しな2と・ゝは可里おもひえて・い可な2類こと尓1可侍り
个む・この1月ころうち/\尓1あ屋し見思ふ給ふ類ひ
との御こと尓1屋とて・かしこ尓侍るあまともの1者つ勢尓1
く王ん侍りてまうてゝ可遍りけるみち耳・うち濃」(2ウ・2056K)
院登い婦所尓登ゝま里て1侍りける尓1はゝの1あまの・
羅う遣・尓1ハ可尓1おこりてい多くな2む・わつら婦と・つ遣尓
ひとの満うてき多里しかは・満可里む可ひ堂里し尓1・
まつあ屋し起ことな2むと佐ゝめ起て1お1屋能志耳
可遍るをはさしをき(き=0き)て・もて1あつ可ひなけきて1
なむ侍里し・この人も1な1くな2り給へ類佐まな1可ら・
さす可尓1・いきハかよひて1おハしけ連は・む可し物可多り
尓1た万殿尓を起多里个むひとのたとひ越おもひ
0008【たま殿にをきたりけむひとのたとひ】−\<朱合点> 入棺して火屋なとにをきたる人のよみかへりたる事の有へきなり
いてゝ・さやうなること尓やと・め徒らし可り侍て1・てし
はらのな1可尓1个んあ累物とも越よひよ勢徒ゝ・か者り」(3オ・2057D)
0009【はら】−原
か者里尓1可ちせさ勢な1となむ・し侍け1る・な2尓1可しハ
お1しむ遍きよハひならね1と・はゝの多ひの1空尓1て1屋
まひをも1起をたす遣て念仏をも1心み多れ春勢さ
せむと佛をね1むしたて1満津りおもふたま遍し程
尓・そ濃人の1あり佐まくハしう裳見たまへ春な2む
者遍りし・ことの心をしは可里おもふ堂ま婦る尓・てん
0010【てんく】−天狗といふハ星の名也 本朝ニハ天魔の類にいへり
具・こたまな1と屋う能も1のゝあさむきいて1多て満つり
多里ける尓1やとな2む・う気給ひ(ひ$1ハり)したす遣て1京尓・ゐて
多て満徒りて1能ち裳・三月は可里ハな起人尓1て1
0011【三月】−み
な2むも1のし給ひける越・な尓1可し可いもう登・こゑもんの」(3ウ・2057J)
可見の北の1か多尓て1侍里し可・あ満尓な里て1侍な2む・
ひとりもちて1者遍里し・女古越うしな2ひて能ち月
日ハお1ほくへ多て侍しか登・かな2しひたえ春なけき
おもひ給遍る尓1・お1那し年の程とみゆる人の可く
か多ちいとう類ハしく・きよらなる越見いて1多て満
つ里て・くハんをむの給へ類と・よろ古ひおもひて1この
人・い多徒ら尓1な1し多て満つらしとまとひいられ1て1・な1
具/\いミし起ことゝも1越申佐連しか者・能ち尓な2む可能
佐可もと尓1ミ津可らお1り侍りて1・こしむな2と徒可万つ1
0012【さかもとにミつからおり侍りて】−恵心千日山籠時西坂下マテ下山事
0013【こしむ】−護身
里し尓1・屋う/\い起い1てゝ人とな里給へりけ連と・猶この」(4オ・2058B)
羅うし多里けるも1のゝ身尓1はな2連ぬ心ちな2むする・この1
0014【らう】−霊
阿し起も1のゝ佐ま多けを・能可連て後の世を・思者んなと
可那し遣尓1の給ふこと(+1と<朱>)もの者遍里しかは・ほうし尓てハ
すゝ免も申徒遍起こと尓こそハとて・満こと尓1す遣せ/し
0015【すけ】−出家
め多て満津里てし尓1な2む侍る・佐ら尓1志ろしめ春へ支1
0016【てし】−弟子(弟子#4)
ことゝハいかて1可・そら尓1佐とり侍らん・免徒らしきことの
佐ま尓1もある越・よか多り尓1も1し侍ぬ遍可里し可登き
古え阿りて1・わつらハし可類へ起こと尓1もこそと・このお
い人ともの登可く申て古の月ころをとな1くて侍つる尓
なむと申給へハ・佐て1こそあな1連と・ほのきゝ給(給#1<朱>)て1かく」(4ウ・2058I)
0017【さてこそあなれと】−かほる心中詞
まて1裳・とひいて1給へ類ことな1連とむ遣尓1な1き人
とおもひ者て尓1しひと越・さ者満こと尓ある尓こそ
ハと・お1本春程ゆ免の心ちしてあさましけ連ハ・徒ゝミも1
0018【ゆめの心ちして】−此巻の名これによれり
あ遍春涙く満連給ひぬる越・そうつ1の者つ可し遣な2る
尓・閑くまて1みゆ遍きこと可はと・おもひか遍して
徒連な1くもてなし給遍と・かくお1本しけること越この
0019【かくおほしけること越】−僧都心中詞
世尓ハな起人とお1那し屋う尓1な2したることゝ・あやまち
志多流心ちして・徒ミふ可け連ハ・あしき物尓・羅うせら連
給ひ个むも1さるへき・佐きの世能契な2里・思ふ尓た可き
いゑのこ尓こそも1のし給け免・い可な2るあ屋まり尓て」(5オ・2059B)
かくまて1者ふ連給个む尓1可と・登ひ申たま遍ハ・な1満
0020【とひ申たまへは】−問
0021【なまわかむと越り】−かほる御詞
わ可むと越りな1とい婦へきすち尓やあり个ん・こゝ
0022【こゝにも】−僧都詞
尓も1もとよ里・わさ登おもひしこと尓1も侍ら春・も1の者
可那くて・み徒気そめて1ハ侍里しか登・又いと閑く
まて1お1ちあ婦るへき起ハと・おもひ給遍さ里しを・
め徒ら可尓1阿ともな1くきえうせ尓1し可は・身越な1気
多る尓やな1と・さ満/\尓うた可ひお1ほくて・たし可な2る
ことは盈きゝ侍らさ里徒る尓1なむ・徒ミかろめて1もの
すな1連ハ・いとよし登心屋すくな2ん・み徒可らハおもひた
ま遍な2りぬる越・はゝな2る人なむいみしく古ひ・可な2し婦」(5ウ・2059H)
なる越・可くな2むきゝいて1たると・徒遣志らせま本しく者へ
連登・月ころかく佐せ給ける・ほいた可ふ屋う尓も1のさ
ハ可しくや侍らん・お1屋古の1な1可のおもひたえ春・可な1し
ひ尓た遍て1・と婦らひも1のしな1とし侍な2ん可しな2との1
給て1・さていと・ひな1き志るへとハお1ほ春とも1・かの佐可
もと尓1お1りたまへ・かハ可りきゝて・な1の1め尓1おもひすく須
遍くハ思侍らさ里し人なる越・夢の屋うな2ることゝも1
裳・いま多尓1か多りあ者せんとな2むおもひたまふると
のたまふ・けしきいと阿は連登おもひたま遍連ハ・閑
0023【いとあはれと】−僧都心中詞
多ちをか遍よをそむき尓1起と・お1ほえた連登・可ミひ遣」(6オ・2060A)
をそ里たるほうした尓あ屋しき心盤う勢ぬも1阿
な2り・まして女の1御身ハい可ゝあらむ・いとお1しう徒ミえぬ
へきわさ尓1もある遍き可な1と・阿ち起なく・古ゝろみ
た連ぬ・満可里お1りむこと・个婦あ春はさハ里侍・月た
ちて1の程尓・御せうそこ越申佐せ侍らんと申給ふ・
いと心もとな1け連と・な越/\とうち徒遣尓1・いら連むもさ満
0024【いと心もとなけれと】−かほる
0025【いられむも】−いそかんもなり
あしけ連ハ・佐らはとてか遍り給ふ・かの1御せうとの王ら
0026【かの御せうとのわらハ】−うき舟の連枝也 たねハ別也
ハ御とも尓1いて1・おハし堂里个り・ことはらからとも1よ里
盤・か多ち裳・きよ遣なる越よひいて1給て・古連なむ
0027【これなむ】−かほる御詞
その1人のち可起ゆ可里な2る越・古連を・かつ1/\も1のせん」(6ウ・2060G)
御布見ひとく多りたま遍・その人とハなくて・たゝ堂つ
ね1き古遊る人な2むあるとは可り能心越志ら勢給へと
の給へハ・な尓1可し古の1志る遍尓1て1可な2ら春・徒ミえ侍な2ん
0028【なにかしこの】−僧都詞
ことのあり佐まは・くハしくと里申つ1・い満ハ御み津可ら
たちよらせ給ひて1阿るへからむことハ物せ佐勢給ハむ
尓・な尓1の1登可ゝ者遍らむと申給へハ・うちわらひて1徒ミ
0029【うちわらひて】−かほる心中詞
えぬへき志るへとおもひな1したまふらんこそ者つ可しけ連・
古ゝ尓ハ・楚くの1か多ち尓ていまゝてすく須1な2む・いとあ屋
志き・い者気な1可里しよりおもふ心さし婦可く侍る越・三条
の1宮の心ほそけ尓1て1たのも1し遣な1き身日とつを・よ春」(7オ・2061@)
可尓1お1本し堂る可・佐りか多起ほ多し尓1・お1本え侍りて
かゝ徒らひ侍つる程尓・をのつ可らくら井な2とい婦ことも1・
た可くな2り・身の1をきても心尓可な2ひか多くな1として・お
もひな1可らすき侍る尓ハ・又え佐らぬことも1・か春のミ・楚
ひ徒ゝハすく勢と・お1本や気わ多くし尓1・の可連可多起こと
尓つ遣て1こそ・さも1侍ら免・さらてハ・ほと遣能せいし給ふ
か多のこと越・わ徒可尓も1・きゝをよ者むハ・い可て1あ屋ま多/し
登・徒ゝしミて心のうちハ・ひし里尓おとり侍らぬも1の越・
ましていとは可な1起こと尓1つ遣てしも・をも1起徒ミうへ
きことハな1とて1可おもひたま遍む・佐ら尓あ類まし支1」(7ウ・2061G)
こと尓1侍り・うた可ひお1ほ春まし・たゝいとおしきお1やの
おもひなと越・きゝあ起ら免侍らんは可里な2む・う連し
う古ゝろ屋春かるへきな1と・む可しよ里婦可ゝ里しか多能
心越か多り給ふ・そうつも1遣尓1とうな1徒きて・いとゝたう
と起ことな1登き古えたまふほと尓・日も1く連ぬ連ハ・な1
0030【なかやとりも】−かほる
可屋と里も1いとよ可里ぬへけ連と・う者の空尓ても1のし
たらんこそ・な越ひな1可るへ个れと・おもひわつらひて1可へ
里給ふ尓・古のせうと能わらハ越・楚うつ1めと免て1ほめ
たまふ・古れ1尓つ遣て1まつほのめ可し給へと・きこえ給へハ・
0031【これにつけて】−かほる詞
文かきてとら勢給・時/\ハ・山尓お者してあそひたまへ」(8オ・2062@)
0032【文かきて】−僧都
0033【時/\ハ山におはして】−童に僧都物語し給ふなり
よ登・すゝろな累屋う尓ハお1ほ春ましきゆ遍もあり
个里登・うちか多らひたまふ・古の1こハ心も1えね1と・ふ見
とりて・お1ほんとも尓1いつ1・佐可もと尓1な2連ハ・御せんの人々・
すこしたちあ可れて1・志のひや可尓をとの給ふ・をの1尓盤
0034【あかれて】−別也
0035【をのには】−後のありさま
いと婦可く志个り多るあ越葉の1山尓む可ひて1・ま起るゝ
ことな1く・屋り水の1ほ多る者可里越・無可しお1本ゆるな1く
さ免尓てな可免ゐ多ま遍る尓1・連いの1者る可尓1み屋ら
累ゝ・谷の1軒者よ里佐き心こと尓をひて1・いとお本うとも/し
0036【谷の軒はより】−谷にある家よりむかひの山をくたる人の軒のはつれより見ゆるなるへし
堂る火能・のと可な2らぬ日可里越みるとて1・あま君多ち
裳・はし尓1いて1ゐ多り・た可お者する尓1可阿らん・御せんな1と」(8ウ・2062F)
いとお1本くこそみゆ連・ひ累あな1多尓・ひきほし多て満
0037【ひきほし】−海草
徒連多里徒る・か遍りこと尓1・大将殿おハしまして・御ある
志の1こと・尓1王可尓す類をいとよ起お1りな2里登こそ阿り
つ連・大将殿とハこの1女二宮の御おとこ尓やお1ハしつらん
な2といふも1・いと古のよと越くゐ中ひ尓多りや・満こと尓1
0038【いとこのよと越く】−尼君達の物語をうき舟きゝ給ふて心中におかしくおもひ給ふなり
さ尓やあらん・時/\可ゝ流山ち・わ遣おハせし時・いと志る閑
0039【いとしるかりし】−うき舟君の聞知給ふ心也
里しすい志んのこゑもうち徒気尓1まし里てきこ遊・
月日の1過ゆくまゝに・む可しのこと能可くおもひわす連ぬ
も1・い満ハな尓1ゝす遍きこと楚登・心うけ連ハ・あ見多仏
尓おもひ満きらハして・いとゝ物もい者てゐ多り・よか者尓1」(9オ・2063@)
かよ婦人のミな2む・この1わ多り尓ハ・ち可起たよ里な2りける1・
可の登能ハ古濃子をや可て1屋らんとおほしけ連と・人免
0040【この子】−童事
お1本くてひんな1け連ハ・殿尓か遍り給て1・ま多の日こ登
佐ら尓そ・い多したて1給・むつましくお1本春人の1・こと/\し
からぬ二三人をくり尓て・む可しも1つね1尓・徒可ハしゝ・すい
志んそ遍給へり・人き可ぬま尓1よひよ勢給て1・あこ可
0041【あこかうせにし】−かほる御詞
う勢尓1し・いも1うとの可本ハお1本ゆや・い満ハよ尓1な1起人と
おもひはて1尓1し越・いとたし可尓1こそも1のし給な2連・うと
き人尓ハき可勢しと・おもふを・いきて堂つ1ね1よ・者ゝ尓1
いまたし起尓い婦な1・中/\おとろ支1さハ可むほと耳・」(9ウ・2063F)
志累まし起人も志りな2む・そのお屋の1ミ・お1もひ能い登
お1し佐尓こそ・かくも堂つぬ連と・またき尓1・いとくち
かため給越・をさな1き心ち尓も1・はらからハお1本可連と・
0042【ををさなき心ちにも】−童心中
0043【はらから】−連枝也
古の君の1か多ちをハ尓1る物な2しとおもひ志ミ多里し尓・うせ
給ひ尓个りときゝて・いと可な1し登お1も1ひわ多る尓1・可くの
給へハ・うれ1し起尓もなみ多のお徒る越者つ可しとおもひ
0044【なみたのおつるを】−なくへき事になかるゝもはつかし(し+0キ)物なり
て・をゝとあらゝか尓き古えゐ多り・かしこ尓1ハ又徒とめて・
0045【をゝとあらゝかに】−領掌の心なり唯也
そうつの1御も登よ里・よへ・大将殿の1御徒可ひ尓て1・こ君
0046【大将殿の御つかひにて】−小野へ状の詞也
屋まうてたま遍りし・ことの心う遣給ハ里し尓1・あちきな1
具・可へりておくし侍て1な2むと・ひ免君尓き古え給へ・見」(10オ・2063M)
徒可らき古え佐春遍起ことも1お1本可れ1と・个婦あ春す
くして・佐婦ら布へしとか起給へり・古連ハな尓1ことそと
あま君おとろきて・こな1多へも1て1わ多りて・みせ多てまつ
里給へハ・お1もて1うちあ可ミて・も1のゝき古え能ある尓や登・
0047【おもてうちあかミて】−うき舟気色心中
くるしう・物かくし志けると・うら見ら連んを・おもひ徒ゝくる
尓・いら遍む可多なくて・ゐ給へ流尓・猶のたまハせよ・心うく
0048【猶のたまはせよ】−尼君詞気色
お本しへ多つることゝ・いミしく・うら見てこと能古ゝろを志らね1
者・あ者たゝしきまて1おもひ多る程尓・山よ里そうつ1の1
0049【山よりそうつの】−昨日の僧都文童のもてきたる也
御せう楚こ尓て・満いり多る人な2むあるといひい連多り・阿
屋しけ連と・古連こそハ・さは多しかなる御せう楚こな2ら」(10ウ・2064F)
免とて・古な1た尓とい者勢た連ハ・いと起よ遣尓1志な1
0050【しなやかなる】−差是 白
屋可な2流わらハの・えなら春佐うそきたるそ・あ遊見
き多る・わらうたさしいて1た連ハ・すた連の1もと尓1徒いゐ
て・か屋う尓てハさふら婦ましくこそハ・そうつ1ハの給し可と
い遍ハ・あま君そいらへな1とし給ふ・文と里い連て1み連ハ・
入道の1ひ免きミの御可た尓山よ里とて・名可起給へり・
0051【入道のひめきミ】−かほるのふミのうハかきをいへり
あらしな1と・阿ら可ふへきやうもな1し・いと者したなくお1
0052【あらしなと】−うき舟
ほえて・いよ/\ひきいら連て・ひと尓可本裳みあ者せ春・
徒ね1尓・ほこりかな2ら須1も1のし給ひと可らな1連と・いとう多て
古ゝろうしな1といひて1・そうつ1の1御ふミみ連ハ・けさ古ゝ尓1・」(11オ・2064M)
大将殿の1も1のし給て1・御あり佐またつね1とひ給ふ尓・
はし免よ里・あ里し屋う具ハしくき古え侍りぬ・御心
さし婦可ゝりける御中をそむき給ひて1・あ屋しき山
閑つの1中尓出家し給へ類ことか遍りてハ・佛のせ免
0053【せめそふ】−咫
そ婦へきことな2る越な2む・う気た満者里おとろき侍る
い可ゝハせむ・もとの御ちきりあやまち給ハて1・あいし婦の
つミ越者類可(+1し<朱>)き古え給て1・一日の1出家の倶とくハ者
可里な1きものな連は・な2越堂のま勢給遍とな2む・古登
0054【ことことにハ】−悉
こと尓ハみ徒可らさふらひて1・申侍らん・可つ1/\この古君
きこえ給てんと・かい多り・満可ふへくも1あら春・可起阿きら」(11ウ・2065F)
0055【まかふへくも】−うき舟心中
免たま遍連と・古と人ハ心も1え春・古の1君ハた連尓1可
0056【この君はたれにか】−うき舟ニ尼君のたつね給ふ詞也
お者すらんな越いと心うし・い満さへ可くあな1可ち尓・遍
多て佐せ給ふとせ免られて1・すこしとさ満尓むきて・
0057【すこしとさまにむきて】−うき舟気色心中
見給へハ古の1子ハい満ハとよ越おもひな里し夕暮尓・
いと恋しとおもひし人な里个り・お那し所尓てみし
程ハ・いとさ可那く・あ屋尓1く尓おこ里て・尓1具可里しかと・
はゝのいと可な2しく志て1・うち尓1も時/\ゐて1おハせし可は・
すこしおよす遣し満ゝ尓か多見尓・おも1遍り・わらハ心越・
おもひい徒る尓1も・夢の屋うな2里・まつはら(ら$1ハ<朱>)能ありさ満
いとと者満ほしく・こと人々のう遍ハ・をの徒可ら屋う/\と」(12オ・2065L)
き遣(遣=0ケ)登・お1屋の1お者すらむ屋うハ・ほの可尓1もえき可須1
かしと・中/\古連越みる尓いと可な1しくて・ほろ/\とな1可連
ぬ・いとお可し遣尓1て1・すこしうちお1ほえ給へ類心ち裳
す連ハ・御はらから尓こそお者すめれ1・き古えま本しく
0058【きこえまほしく】−尼君達の詞
お1本須1こともあらむ・うちにい連たて1万つらんといふを・な1
0059【なにかいまハ世に】−うき舟心中詞尼君にかたり侍る也
尓1可い満ハ世尓あ累物とも思ハさらむ尓・阿屋しきさ満尓
お1も1か者里して・ふとみえむも1者つ可しとおも遍ハ・と斗
ためらひて1・け尓へ多てありとお本しな春らん可・く類し
佐尓も1のもい者れて1な2む・あさましか里个んあり佐まは・
め徒ら可な2ることゝ見給て1个んを・う徒し心も1うせ・た満」(12ウ・2066E)
志ひな2とい婦らむ物も1・あらぬ佐ま尓な2りに个る尓や・あらん
い可尓1も/\過尓1しか多能こと越わ連な1可ら佐ら尓えお1
もひいて1ぬ尓・きの可ミ登可あ里し人の・よ能物可多り△(△&2須1)
0060【きのかミとかありし人】−紀伊守浮母中将君ノ兄小野尼孫也
め里しな1可尓1な2む・みしあ多りのこと尓やとほの可尓・おもひ
いてらるゝことある心ちせし・そ能ゝちとさ満かう佐ま尓お1
もひ徒ゝく連と佐ら尓は可/\しくも1お1ほえぬ尓・たゝひとり
も1のし給し人のいかて1とをろ可な2ら春・おもひため里し越・
0061【ものし給し人】−母の事
ま多やよ尓1お者すらんと・そ連は可りな2む・心尓者な1れ春・か
な2しきお1り/\侍る尓・个婦み連ハ・古のわらハの1可本ハ・ちい
さくてみし心ちする尓1も・いと志能ひか多け連と・い満さら尓」(13オ・2066M)
かゝ流人尓も1・あ里とは志ら連てや見な2むとなん思日侍る・
閑の人も1し世尓物し給ハゝ・そ連ひと里尓なむ・たいめんせ満
ほしくおもひ者遍る・この1そうつ能の給へ流人な2と尓1ハ・さ
0062【そうつのの給へる人なとにハ】−かほる事
羅尓志ら連たて1まつらしとこ楚おもひ侍つ連・かま遍て1・
ひ可ことな2里个りと起こえな2して・もて1かくし給へとの給へハ・
いとかたいこと可な1そうつの1御心ハ・ひし里といふな1可尓1裳・
0063【いとかたいことかな】−尼君返答
あま里くま那くも1のし給へハ・満さ尓1・のこひて1ハき古え給
ひてんや・のち尓1かくれあらし・な1の1め尓1可ろ/\し起御程
尓も1おハし満さ春な1と・いひさハ起て1よ尓1志ら春古ゝろ
徒よくおはしま春こ楚と・みな1いひあハ勢て1・も1やのき」(13ウ・2067F)
者尓1・木丁多てゝい連多り・古の1子も1さハ起き徒連とを
さな1个れハ・婦といひよらむも1徒ゝましけ連登・又者遍る御
0064【又はへる御ふミ】−童詞 かほる御文なり
婦ミいかて1たて1満徒らん僧都の御志類へハ・たし可な2流
を閑くお1ほつ可な1く侍こそと・婦し免尓てい遍ハ・そゝや・あな1
0065【そゝや】−尼公詞 驚破<ソヽヤ>
う徒くしな1といひて1・御ふミ御らんす遍き人ハ・古ゝ尓も1の
せ佐勢給めり・気そうの1人なむい可な2ること尓1可登・心え
0066【けそうの人】−見証也 そはあたりの人をいふ
か多く侍る越・猶の給ハ勢よ・をさな1起御ほとな1連登・可ゝる
御志る遍尓た能ミき古え給ふ屋うも1あらむな2とい遍登・
お1本しへ多てゝ・お本/\しく・もてな1佐せ給ふ尓ハ・な尓1こと
0067【おほしへたてゝ】−童詞
を可き古え侍らん・うとくお1本しな里尓1け連ハ・きこゆ遍」(14オ・2067M)
きことも1侍ら春・たゝこの御婦ミ越人徒て1ならてたて1満
徒連とて侍りつる・いかて1多て満つらむとい遍ハ・いとことハり
0068【いとことハりなり】−尼公返答
な里・な2越いと可くう多てな1・お1者せそ・佐す可尓・むくつ遣起
0069【なをいとかく】−尼公うき舟に申詞
御心尓こそ登き古えうこかして・木丁の1もと尓1をし
0070【をしよせたてまつり】−童をおしよせたるなり
よ勢多て満徒りた連ハ・あ連尓1も阿らてゐ給へ類気
ハひ・こと人尓ハ尓1ぬ心ちすれハ・楚こもと尓1よ里て1・た
て満徒りつ1・御可遍りとく給て1満いりな2む・と可く・う登
うとしき越古ゝろうしとおもひて1いそく・あま君御
ふ見ひきと起て1みせ多て満つる・あ里しな1可ら能御て
0071【ありしなからの御て】−\<朱合点> 奥入 取かへす物にもかなや世の中を有しなからの我身とおもはん
尓1て1・かミの・香な1と連いの1よつ可ぬまて1志見多り・ほ」(14ウ・2068E)
の可尓みて1連いの1物めて1能さしす起人いとありか多くお
可し登おもふ遍し・佐ら尓き古えむ可たなくさ満/\尓
0072【さらにきこえむかたなく】−ふみの詞
徒ミをも起御古ゝろをは楚うつ尓おもひゆるしきこえ
て・い満ハい1可て1あさましか里しよの夢か多りをた尓と・
いそ可類ゝ心の1わ連な1可ら・もと可し起にな2ん・まして人めハい
可尓1と・可起も1屋り給者春
法のしと堂つぬるみちを志類遍耳て
0073【法のしと】−かほる
おも1者ぬ山尓婦見まとふ可な1この1人ハミやわす連
給ひぬらん・古ゝ尓ハゆくゑな2き御か多ミ尓1みる物尓
てな2んなと・こ満やかな2り・かく徒ふ/\と可起給へ累」(15オ・2068L)
さ満の1ま起らハさむか多な1き尓1・さ里とて・そ能人
尓も1あらぬ佐ま越おもひの本可尓み徒个ら連きこ
えたらん程の1者したなさ那とを・おもひみ多れて1・いとゝ
者れ/\しからぬ古ゝろハ・いひ屋るへきかたもな1しさ
す可尓うちな1きて・ひ連ふしたま遍連ハ・いとよつ可ぬ
御ありさま可な1と・見わつらひぬ・い可ゝきこえんな1と勢
0074【いかゝきこえん】−返事を
めら連て・心ちの1可起み多る屋う尓1し侍るほとためらひて1・
い満きこえむ・無可しのことおもひい徒連登・佐ら尓お本遊
類ことな1く・あやしうい可な2りける夢尓1可とのミ古ゝろも1
え春なむ・すこし志徒ま里て1や・この1御ふ見な1と裳」(15ウ・2069E)
みし羅るゝことも1あらむ・个ふハな越もて1満いり給
ひ年・ところた可遍尓も1阿らん尓・いと可たハらい多可る遍/し
とて・ひろ遣な2可らあま君尓さし屋り給へ連ハ・いとみくる
0075【いとみくるしき】−尼公詞
志き御こと可な1・あま里个しからぬハみ多て満徒る人も1つミさり
所な2可類遍しなと・いひさハくも・うたて1きゝ尓1くゝお本遊
0076【うたてきゝにくゝ】−うき舟
連ハ・可本もひきい連て1ふし給へり・あ類しそこの君尓物
0077【あるしそ】−尼公の事
か多りすこしき古えて・ものゝ気尓やおハすらん・連いのさ満
尓みえ給ふお1りなく・な屋ミわ多り給て1・御か多ちもこと
尓1なりたま遍る越・た徒ね1きこえ給人あらハ・いとわつらハし
可類へきことゝみ多て満徒り・な2けき侍しも・志るくかくいと哀尓」(16オ・2069L)
心くるし起御ことゝも侍ける越・い満な2むいとかたし遣那く
おもひ者遍る・日ころもうちは遍なやませ給める越・いとゝ
かゝ流ことゝも尓1・お1ほしみ多類ゝ尓や・徒ね1よ里もも1のお1本え
佐せ給ハぬさ満尓1て1な2むときこ遊・ところ尓徒遣てお1可し
きあ類しな2と志多れと・をさな1起心ちハ・そこは可とな1く阿
者て多類心ちして・わさとたて1満徒連させ給へ類志るし尓・
な尓1こと越可ハき古えさ勢むとすらん・たゝひとこと越の
給ハ勢よかしな2とい遍ハ・遣尓なといひて1・かくな2むと・う
0078【うつしかたれと】−尼公童の詞をうつしかたる也
徒しか多れと・物もの給ハね1ハ・可ひな2くて・たゝ可くお1ほつ可な2
き御あり佐ま越きこえさせ給へきな2め里・くもの者類」(16ウ・2070E)
0079【くものはるかに】−古今 逢事ハ雲井はるかになる神のをとにきゝつゝ恋やわたらん
可尓1へ多ゝらぬほと尓1も侍るめ類を・山可勢婦くとも1又裳
かな2ら須1たちよら勢給な2む可しとい遍ハ・すゝろ尓・井くら
0080【すゝろに】−童気色心中
さんもあ屋しかるへけ連ハ・か遍りなむと春・人志れ1春
ゆ可しき御ありさ満をも1・盈み春な2りぬる越お本つ可
なく具ちお1しくて・心ゆ可春な1可ら満いりぬ・い津し閑登
まちお1者する尓1・可くたと/\し具てか遍りきた連ハ・春
0081【すさましく】−かほる御心中
佐ましく中/\な里とお1本春ことさ満/\尓て人の可くし
す遍多類尓やあらむと・わ可御古ゝろの1おもひよらぬく満
なく・お1としを起たまへ里しならひ尓1とそ本尓者へめる」(17オ・2027K)
0082【おとしをきたまへりし】−かくしすへたる人ニおとされて返事をもし給ハぬと我心ならひにおもひ給ふ也
巻名無哥詞 一名法の師 薫廿四歳自春至夏
定家卿春のよの夢の 凡盛者必衰之理無非夢事
涅槃経生死無常猶如昨日夢 大円覚経始知衆生
本来成仏死涅槃猶如昨日夢 唯我論未得真
覚恒処夢中故仏説為生死長夜
五ケ所ニ夢ト云詞アリ 人間事譬夢経文多之
卅七夢浮橋 或表卅七尊
源氏一部五十四帖雖為新写之本依有数奇之
志附属良鎮大僧正者也
文正元年十一月十六日 桃華老人在判
うつしをくわかむらさきの一本は
いまもゆかりの色とやハみぬ
右光源氏一部五十四帖令附属政弘朝
臣以庭訓之旨加首筆用談義之處」(17ウ)
秘本也堅可被禁外見者也
延徳二年六月十九日 前大僧正在判
あはれこのわかむらさきの一本に
心をそめてみる人もかな 右言書奥書異本
夢浮橋新御門跡様道澄御手跡也
長門府中長福寺御在寺之時也同巻
桐壺者大御門跡道増様御手跡也
聖護院殿様之事也
永禄七年七月八(△&2八)日 吉見大蔵大輔正頼(花押)」(後見返し)