凡例
1.『大島本 源氏物語』(角川書店 平成8年5月)及び『大島本源氏物語DVD-ROM版』(角川学芸出版 2007年11月)に拠って漢字仮名字母翻字した。
2.漢字は漢字のまま翻字し、他の変体仮名と区別するため太字で表示した。
3.平仮名はそのまま平仮名で表示した。
4.変体仮名は字母で表示した。
5.片仮名はそのまま片仮名で表示した。
6.仮名や字母の崩し方が複数ある文字については、一般的な字形を基準にして、より元の字母の漢字に近い字形には「1」と付記し、また一般的な字形とも異なった別の崩し方には「2」と付記した。
7.本行本文は普通字体で表示し、書入注記等は小字体で表示した。
8.本文中の朱点及び朱書きは朱色で表示した。
9.行頭に同字が並ぶ場合、異なる字母字形は茶色、同じ字母字形は緑色で表示した。
「花ち流里」(題箋)
人志れぬ御心徒可らの1も能おも1ハしさハ・いつ1(△&つ1)
0001【人しれぬ】−榊巻夏此巻同
となきこ2とな1めれと・かくおほ可多の1世耳徒
氣てさへ・王つらハしうお1ほしみ多るゝこ2との
ミまされ者・も能心本そ2く世中な1へて2いとハし
う・お1ほしな1ら流ゝ尓・さす可なる事お1ほ可り・
麗景殿とき2こ盈しハ・宮多1ちもおハせ春・
0002【麗景殿】−花散姉
院可くれさせ給て2のち・いよ/\あハれなる御
ありさ満越・多1ゝこの1大将殿の御心耳・もてかく
されて2・すくし給ふなるへし・御おとうと農
三の1君・うち王多りにてハ(ハ#者<朱>)かなう・本のめ起給ひ」(1オ・387@)
0003【三の君】−花ちる里也始テ云
しな1こり能・連いの1御心な連ハ・さす可尓1王す
連も者て給者す・王さとも・ゝてなし給者ぬ尓・
人の1御心をのミ徒くし者て給ふへ可めるをも・
この1こ2ろのこる古となくおほしみ多るゝよ能あ
ハれのくさ者ひ尓ハ・おもひいて給尓ハ志のひか
多くて・さミ多れ能空めつらしく者れ多る雲
ま尓1わ多り給・な尓1ハ可りの1御よそ2ひなく・うちや
0004【御よそひ】−行粧
徒して2・こせ2むな1とも1なく志のひて2・な可
河の本とおハしすく類尓・佐ゝや可なるいゑ能こ多
ちな1とよし者める尓1・よくなるこ2と越・あつ万に(に=をイ<墨>、をイ#<朱>)」(1ウ・387E)
志らへて2かき2あハせ・耳きハゝ志くひき2な春
なり・御みゝと満りて2・かとち可なる所な2れハ・す
こし佐しいてゝ見いれ給へハ・おほきなる可つら
の木(+の)をひ可せ尓・まつりのこ2ろお1本しいてられ
て・そ2こ者可となく遣ハひを可しきを・多ゝひとめ
0005【たゝひとめ】−花散里へ出給道中川にての事也 是モ源氏君玉さかに通給し所ナリ 此巻にハしめていひ出せり
見多まひし・やとりなりと・み給・堂ゝならす
本とへ耳个る・お1ほめ可しくやと・徒ゝまし个れと・
す起可て尓1や春らひ給ふおりしも・本とゝき2春
0006【すきかてに】−\<朱合点> 難過 古今夜やくらき道やまたく(たく$とへ)るほとゝきすわか宿にしも過かてになく(古今154・古今六帖4440・寛平后宮歌歌合65・友則集11、異本紫明抄・河海抄・孟津抄)
なきて2王多る・もよ本しきこ盈可本なれ者・
御車をし可へさせて2・連いのこれみつ1いれ給ふ」(2オ・387K)
お1ち可遍りえそ2志のハれぬ本とゝき2春
0007【おちかへり】−源し 万葉に百千かへりとかけり
本の可多らひしやとの可き年尓志んてむ登お1
ほしき屋の1にしの徒万尓・人/\ゐ多り・さ起/\
もきゝしこ2ゑなれハ・こ王つくり遣しき2
とりて2・御せ2うそ2こき2こ遊・王可や可なる氣し
き2とも1志て2・おほめくなる遍し
本とゝき2すこ2ととふこ2ゑハそ2れな連と
0008【ほとゝきす】−返主不知
あな1お1本つ可那さみ多れの1空こ2と佐ら多1とる
とみ連ハ・よし/\うへし可起年もとて2いつる
0009【うへしかきねも】−\<朱合点> 奥入かこはねとよもきのまかき夏くれはうへしかきねもしけり合にけり<右>(好忠集158、奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄) 紫明花ちりしにわの(の+木の)はもしけりあひてうへしかきねも△(△#え)こそわすれね<左>(新古今186・好忠集381、異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
を・人し連ぬ心尓は・ね1多うもあハれ丹も思个り・」(2ウ・388D)
さも徒ゝむへき2こ2とそ可し・ことハり尓1も1あれ者・
佐す可なり・かやうの1きハ尓・徒くし能五せ2ち可
0010【つくしの五せち】−大弐のむすめ也 源しのあひ給ひし人ナリ 須磨巻に見えたり
らう多1け那りしハやと・まつお1ほしい徒・い可
なる尓(尓#に<朱>)つ氣ても・御心のいと満なくくるし遣
な1り・とし月をへても猶可やうに・みしあ多り
なさけ・春くし給者ぬ尓志も・中/\あま多能
人の物おもひなくさなり・可能本いの・とこ2ろハお本し
0011【ほいのところ】−花ー
屋り徒るも志るく・人めな1くし徒可尓て・お者す
類ありさ満越見給ふもいとあハれなり・まつ1・
女御能(△△&御能)御可多尓て・む可し能御物語なとき2こ盈給尓」(3オ・388J)
0012【女御の御かた】−麗景
夜ふけ尓1个り・廿日の1月佐しい徒る本と耳・
いとゝこ多可き2可氣とも1・こくら具みえ2王多りて2・
0013【こくらく】−事/\しき心にや 木立の大なるをいふへし
ち可起多1ち花の1可本りなつ1可しく尓本ひて2・
女(+御イ、イ#)の御遣ハひ・ね1日尓1多れと・あ具まてようい
ありあて尓・羅う多1け那り・すくれて2者な1や
可なる御お1ほえ2こ2そな1可りしかと・む徒まし
うなつ可しき可多尓1ハ・お1ほし多1りしも能を
な1と・思ひいてき2こ盈給尓徒氣ても・む可し能
こ2と可起徒らね1お本されて2う地な起給・郭公
0014【郭公ありつる垣ねのにや】−中川のやとのかきねなり
あり徒る垣年の1尓や・お那しこ2ゑ尓うちな1く・」(3ウ・389B)
志多ひき尓个るよと・おほさるゝ本とも1盈んな1り
閑し・い可尓1志りて可な1と・志のひや可尓1うちすんし給
0015【いかにしりてか】−\<朱合点> いにしへのことかたらへハほとゝきすいかにしりてかなくこゑのする<朱>(古今六帖2804・兼輔集31、源氏釈・奥入・異本紫明抄・紫明抄・河海抄)
多1ち者那の1香越なつ可し見本とゝきす
0016【たちはなの】−源氏
花ちる里を多つ年て2そとふい尓1しへの1忘連
0017【いにしへの】−源氏のことはナリ
可多きな1くさめ尓は・な1越万いり侍ぬへ可り个り・
こよな1う古そ2ま起るゝ事裳・可すそ2ふこ2とも
侍个連・お1ほ可多の1よ尓1志多可ふも能な連ハ(+者可な2きイ)・む
可し可多り裳・か起くつ1春へき2人春く那うな1り
遊くを・まして2つれ/\も満きれなくおほさる
らむときこ盈給尓・いとさらなるよな1れと」(4オ・389G)
0018【いとさらなるよ】−女御の事を源しのこゝろに思ひ給ふナリ
も能を・いとあハれ尓お1ほしつゝ氣多る御个し
き2能・あさ可らぬ裳人の1御さ満可ら尓や・おほく
あハれそそ2ひ尓个る
人めなくあ連多1るやとは多1ち者那の
0019【人めなく】−女御
花こ2そ2軒の1徒まとな1り个れとハ可り能多万
へる・さハいへと人尓ハいとこ2となり氣りと・お1ほ
しくらへらる・にしおもて尓ハわさとなく志
0020【にしおもて】−三の君のすミ給ふ方也
のひや可尓1・うちふるまひ給日てのそ2き給へるも・
免つらしき2尓そ遍て2・世尓めな連ぬ御佐万
な連者・徒らさも王すれぬへし・な尓や」(4ウ・390@)
かやと連いの1な2つ可しく・か多らひ給も・おほさぬ
事尓ハあらさるへし・かり尓も1見給ふかきりハ・
をしな1へて2のきハ尓はあらす・さ満/\尓徒个て
いふ可ひな2しとおほさるゝハな2け連ハ尓や・にく氣
なく王れも人裳な1さけを可ハし徒ゝ春くし
給な1り个り・そ2れをあいな2しと思ふ人ハ・と尓可く
0021【とにかく】−左右<トニカク>
耳・可ハる裳こ2とハりのよ能さ可とおもひな1し給・
阿りつる可き年裳・さやう尓てありさ満・か者り
0022【かきねも】−中川の宿の事也
に多るあ多里な李个り」(5オ・390F))
花ちる里<墨> 二校畢<朱>」(前遊紙1オ)
一校畢<朱>」(後見返し)